説明

画像形成装置

【課題】モノクロ印字の場合とカラー印字の場合における印字位置ずれの発生を抑える。
【解決手段】主走査方向に単独で移動可能な第一キャリッジ5aと、主走査方向に第一キャリッジ5aと一体で移動可能な第二キャリッジ5bとを備えるインクジェット記録装置において、第一キャリッジ5a及び第二キャリッジ5bの主走査方向における位置検出に用いられる、エンコーダシート32と、第一キャリッジ5aに取り付けられた遮蔽板34aと、第二キャリッジ5bに取り付けられた遮蔽板34bと、遮蔽板34a及び遮蔽板34bを検知するホームポジションセンサ35と、第一キャリッジ5aに備えられ、エンコーダシート32を読取って該第一キャリッジ5aの位置を検出する位置検出センサ33aおよび第一位置カウンタ112aと、第二キャリッジ5bに備えられ、エンコーダシート32を読取って該第二キャリッジ5bの位置を検出する位置検出センサ33bおよび第二位置カウンタ112bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。さらに詳述すると、モノクロ印字の場合の印字位置とカラー印字の場合の印字位置の印字位置ずれの解消に好適な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む装置を用いて、媒体(以下用紙ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、インクともいう)を用紙に付着させて画像形成(以下、記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる)を行なう、いわゆるインクジェット方式の画像形成装置がある。
【0003】
例えば、カラーのインクジェット方式のプリンタでは、黒(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の4色以上の液体吐出ヘッド(以下、記録ヘッド、ヘッドともいう)またはノズル列があるヘッドを搭載したキャリッジを走査させて印字している。しかしながら、このようなカラープリンタにおいて、モノクロ印字を主として使用していると、モノクロ印字の際、印字を行わない複数のカラー印字のヘッドの印字面が大気中にさらされるので、ノズル表面でのインクの乾燥による目詰まり、固着、ゴミなどがノズル詰まることにより、カラー印字ヘッドが吐出不良が発生するおそれがある。このため、通常は印字を行わないカラーヘッドに対しても、モノクロ印字中に、カラーインク空吐出等の維持回復処理を行わなければならない。
【0004】
この維持回復処理によりカラーインクを無駄に消費させてしまうという問題があり、また、無駄な電力の浪費や、印字時間が増大するといった問題があった。さらに、維持回復処理が不十分な際は、インク吐出不良が発生して画像品質が劣化するという問題が生じていた。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、カラーヘッド群を搭載するキャリッジ(第1キャリア)と黒ヘッドを搭載するキャリッジ(第2キャリア)とをそれぞれを設け、カラー印字においては2つのキャリッジを結合機構により結合し走査、印字させ、一方、モノクロ印字では第2キャリアのみ走査印字し、第1キャリアはヘッドが乾燥しないように保湿させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、2つのキャリッジを分割、結合する構成においては、カラー印字の場合、2つのキャリッジを結合して走査するため、結合状態におけるそれぞれのヘッドの結合位置ずれ(以下、結合ガタという)が生じるおそれがあり、これにより印字品質の低下が生じるという問題があった。しかしながら、特許文献1には、キャリッジの結合時の結合ガタについての課題及びその解決方法については何ら開示されていなかった。
【0007】
そこで本発明は、第一キャリッジと第二キャリッジとを備える画像形成装置において、第一キャリッジおよび第二キャリッジそれぞれに、エンコーダシートに基づいてキャリッジの主走査方向における位置情報を取得する位置検出手段と、ホーム位置の検知に用いるホーム位置基準部とを備えることにより、第一キャリッジと第二キャリッジの結合ガタに起因した、第一キャリッジを単独で走査した場合の印字位置と第一キャリッジと第二キャリッジとを一体で走査した場合の印字位置との印字位置ずれの発生を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の画像形成装置は、主走査方向に単独で移動可能な第一キャリッジと、主走査方向に第一キャリッジと一体で移動可能な第二キャリッジとを備える画像形成装置において、第一キャリッジ及び第二キャリッジの主走査方向における位置検出に用いられる、エンコーダシートと、第一キャリッジに取り付けられた第一ホーム位置基準部と、第二キャリッジに取り付けられた第二ホーム位置基準部と、第一ホーム位置基準部及び第二ホーム位置基準部を検知するホーム位置検出手段と、第一キャリッジに備えられ、エンコーダシートを読取って該第一キャリッジの位置を検出する第一位置検出手段と、第二キャリッジに備えられ、エンコーダシートを読取って該第二キャリッジの位置を検出する第二位置検出手段と、を備え、第一位置検出手段からの出力及びホーム位置検出手段が第一ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて第一キャリッジに搭載されたヘッドの吐出を制御し、第二位置検出手段からの出力及びホーム位置検出手段が第二ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて第二キャリッジに搭載されたヘッドの吐出を制御するものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、第一キャリッジを単独で移動させることにより印字を行う際、第一キャリッジおよび第二キャリッジを一体として、側方に設けられた突き当て部材に第一位置検出手段および第二位置検出手段からの出力が変化しなくなるまで押し付けてから第一位置検出手段および第二位置検出手段からの出力をクリアし、第一のキャリッジを単独で印字可能領域に向けて移動させて、ホーム位置検出手段が第一ホーム位置基準部を検知した際に、第一キャリッジの印字位置を初期化するものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、第一キャリッジおよび第二キャリッジを一体として移動させることにより印字を行う際、第一キャリッジおよび第二キャリッジを一体として、側方に設けられた突き当て部材に第一位置検出手段および第二位置検出手段からの出力が変化しなくなるまで押し付けてから第一位置検出手段および第二位置検出手段からの出力をクリアし、第一キャリッジおよび第二キャリッジを一体として印字可能領域に向けて移動させて、ホーム位置検出手段が第一ホーム位置基準部を検知した際に、第一キャリッジの印字位置を初期化し、ホーム位置検出手段が第二ホーム位置基準部を検知した際に、第二キャリッジの印字位置を初期化するものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3までのいずれかに記載の画像形成装置において、第一キャリッジおよび第二キャリッジのうち、いずれか一方のキャリッジは主走査方向の位置を検出可能に設けられた相対位置エンコーダシートを、他方のキャリッジは相対位置エンコーダシートを読取る第三位置検出手段を備え、第一位置検出手段、第二位置検出手段および第三位置検出手段の出力に基づいて、第一キャリッジと第二キャリッジとの相対傾きを検知するものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、検知された相対傾きに基づいて、印字位置補正を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一キャリッジと第二キャリッジの結合ガタに起因する、第一キャリッジを単独で走査した場合の印字位置と、第一キャリッジと第二キャリッジとを一体で走査した場合の印字位置との印字位置ずれの発生を抑えて、印字品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部の概略構成図である。
【図2】ロック機構により連結された第一キャリッジと第二キャリッジの概略構成図である。
【図3】制御部の機能ブロック図である。
【図4】従来の一体型のキャリッジの模式図である。
【図5】第一キャリッジおよび第二キャリッジの結合状態の模式図である。
【図6】印字処理における印字初期動作のフローチャートである。
【図7】モノクロ印字時におけるインクジェット記録装置の模式図である。
【図8】カラー印字時におけるインクジェット記録装置の模式図である。
【図9】インクジェット記録装置の機構部の概略構成図の他の例である。
【図10】制御部の機能ブロック図の他の例である。
【図11】印字処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】傾き算出処理の説明図(1)である。
【図13】傾き算出処理の説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る構成を図1から図13に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、主走査方向に単独で移動可能な第一キャリッジ5aと、主走査方向に第一キャリッジ5aと一体で移動可能な第二キャリッジ5bとを備えるインクジェット記録装置において、第一キャリッジ5a及び第二キャリッジ5bの主走査方向における位置検出に用いられる、エンコーダシート32と、第一キャリッジ5aに取り付けられた第一ホーム位置基準部(遮蔽板34a)と、第二キャリッジ5bに取り付けられた第二ホーム位置基準部(遮蔽板34b)と、第一ホーム位置基準部及び第二ホーム位置基準部を検知するホーム位置検出手段(ホームポジションセンサ35)と、第一キャリッジ5aに備えられ、エンコーダシート32を読取って該第一キャリッジ5aの位置を検出する第一位置検出手段(第一位置検出センサ33aおよび第一位置カウンタ112a)と、第二キャリッジ5bに備えられ、エンコーダシート32を読取って該第二キャリッジ5bの位置を検出する第二位置検出手段(第二位置検出センサ33bおよび第二位置カウンタ112b)と、を備え、第一位置検出手段からの出力及びホーム位置検出手段が第一ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて第一キャリッジ5aに搭載されたヘッドの吐出を制御し、第二位置検出手段からの出力及びホーム位置検出手段が第二ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて第二キャリッジ5bに搭載されたヘッドの吐出を制御する(制御部100)ものである。
【0016】
[第一実施形態]
(画像形成装置の構成)
図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部の概略構成図である。このインクジェット記録装置の機構部は、両側の側板1,2(左側板1,右側板2を指す)間に主支持ガイドロッド3及び従支持ガイドロッド4を略水平な位置関係で横架し、主支持ガイドロッド3及び従支持ガイドロッド4によりモノクロ用である第一キャリッジ5a、カラー用である第二キャリッジ5bを主走査方向に摺動自在に支持している。なお、本実施形態では、右側板2をキャリッジ押しつける突き当て部材としている。
【0017】
また、側板1,2間の第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとの移動領域の全域に跨って、位置検出用のエンコーダシート(第一エンコーダシート)32が配置されている。なお、本実施形態では、エンコーダシート32として印字解像度に相当する単位で縞状の模様が描かれるシートを用いているが、これに限られるものではなく、その他、公知または新規のエンコーダシートが適用可能である。また、エンコーダシートを読み取って位置情報を取得するためのセンサ制御については、公知手法を用いればよく、説明は省略する。
【0018】
第一キャリッジ5aは、黒(K)インク吐出する2個のヘッド6k1,6k2を、その吐出面(ノズル面)を下方に向けて搭載している。また、第一キャリッジ5aはモノクロ印字用ヘッド6a(ヘッド6k1,6k2の総称を指す)の上側にヘッド6k1,6k2の各々にインクを供給するためのインク供給体であるインクカートリッジ7k1,7k2を交換可能に搭載している。さらに、エンコーダシート32を読み取ることで第一キャリッジ5aの位置情報を検出する第一位置検出センサ33aと、ホームポジションセンサ35により検知され、制御部100が第一キャリッジ5aのホーム位置(ホームポジション)を検知するための遮蔽板(第一ホーム位置基準部)34aとを搭載している。なお、本実施形態では、ホーム位置基準部として遮蔽板を用いてホームポジションセンサ35により検知するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、キャリッジ側に発光部を設け、受光部を備えたセンサにより検知を行うようにしても良い。
【0019】
第二キャリッジ5bにはシアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ吐出する3個のヘッド6c,6m,6yを、その吐出面を下方に向けて搭載している。また、第二キャリッジ5bは、カラー印字用ヘッド6b(ヘッド6c,6m,6yの総称を指す)の上側に3個のヘッド6c,6m,6yの各々インクを供給するための各色のインク供給体であるインクカートリッジ7c,7m,7yを交換可能に搭載している。さらに、エンコーダシート32を読み取ることで第二キャリッジ5bの位置情報を検出する第二位置検出センサ33bと、ホームポジションセンサ35により検知され、制御部100が第二キャリッジ5bのホーム位置(ホームポジション)を検知するための遮蔽板(第二ホーム位置基準部)34bとを搭載している。
【0020】
ここで、ホームポジションセンサ35は、第一キャリッジ5aおよび第二キャリッジ5bに設けられた遮蔽板を検知した時を、それぞれのキャリッジのホーム位置として検知するものである。また、印字領域入り口センサ36は、主走査方向における印字領域との境界に設けられ、キャリッジ5a,5bが印字領域内にあるかどうかを検知するものである。なお、本実施形態では、第一キャリッジ5aの基準位置とする基準ヘッド(モノクロ基準ヘッド)をヘッド6k1とし、第二キャリッジ5bの基準位置とする基準ヘッド(カラー基準ヘッド)を6cとしており、ヘッド6k1の組付け位置とエンコーダシート32との位置関係(距離等)とヘッド6cの組付け位置とエンコーダシート32との位置関係(距離等)とを同じものとしている。
【0021】
また、第一キャリッジ5aは、主走査モータ8で回転される駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)9と従動プーリ(アイドラプーリ)10との間に張装したタイミングベルト11に連結して、主走査モータ8を駆動制御することによって第一キャリッジ5aのヘッド6aが主走査方向に移動するようにしている。
【0022】
また、図2に示すように第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bはロック機構(連結手段)37により連結され、第一キャリッジ5aの駆動に従動して、第二キャリッジ5bのヘッド6bが主走査方向に移動するようにしている。なお、ロック機構37としては、公知または新規の結合手段を用いればよく特に限られるものではないが、例えば、連結レバー、係合ピン等を用いることができる。
【0023】
また、側板1,2をつなぐ底板12上にサブフレーム13,14を立設し、このサブフレーム13,14間に用紙16を主走査方向と直交する副走査方向に送るための搬送ローラ15を回転自在に保持している。そして、サブフレーム14側方に副走査モータ17を配設し、この副走査モータ17の回転を搬送ローラ15に伝達するために、副走査モータ17の回転軸17aに固定したギヤ18と搬送ローラ15の軸15aに固定したギヤ19とを備えている。
【0024】
さらに、側板2とサブフレーム13との間には、モノクロ印字用ヘッド6aのサブシステム(維持回復機、維持回復手段ともいう)21aと、カラー印字用ヘッド6bのサブシステム21bを配置している。
【0025】
モノクロ印字用のヘッド6aのサブシステム21aは、モノクロ印字用ヘッド6aの吐出面をキャッピングする2個のキャップ手段22aをホルダ23aで保持し、このホルダ23aをリンク部材24aで揺動可能に保持して、第一キャリッジ5aの主走査方向の移動でホルダ23aに設けた係合部25aに第一キャリッジ5aが当接することで、第一キャリッジ5aの移動に従ってホルダ23aがリフトアップしてキャップ手段22aでヘッド6aの吐出面をキャッピングし、第一キャリッジ5aが印写領域側へ移動することで、第一キャリッジ5aの移動に従ってホルダ23aがリフトダウンしてキャップ手段22aがヘッド6aの吐出面から離れるようにしている。
【0026】
なお、キャップ手段22aは、それぞれ吸引チューブ26aを介して吸引ポンプ27aに接続すると共に、大気開放口を形成して、大気開放チューブ及び大気開放バルブを介して大気に連通している。また、吸引ポンプ27aは吸引した廃液(廃インク)をドレインチューブ等を介して図示しない廃液タンクに排出する。
【0027】
さらに、ホルダ23aの側方には、ヘッド6aの吐出面をワイピングする繊維部材、発泡部材或いはゴム等の弾性部材からなるワイピング手段であるワイパーブレード30aをブレードアーム31aに取付け、このブレードアーム31aは揺動可能に軸支し、図示しない駆動手段で回動されるカムの回転によって揺動させるようにしている。
【0028】
なお、カラー印字用のヘッド6bのサブシステム21bもサブシステム21aと同様に構成され、ヘッド6bの吐出面をキャッピングする3個のキャップ手段22b、ホルダ23b、リンク部材24b、係合部25b、吸引チューブ26b、吸引ポンプ27b、ワイパーブレード30b、ブレードアーム31bを備えている。
【0029】
以上のように構成した本実施形態に係る画像形成装置によれば、モノクロ印字を行う場合は、モノクロ印字用のヘッド6aを搭載した第一キャリッジ5aを主走査方向に移動走査させながら、用紙16を副走査方向に搬送して、各ヘッド6k1,6k2のノズルからインク滴を吐出させることによって、用紙16上にモノクロ画像を記録することができる。
【0030】
また、カラー印字を行う場合は、第一キャリッジ5aとカラー印字用のヘッド6bを搭載した第二キャリッジ6aをロック機構37により結合した状態で、主走査方向に移動走査させながら、用紙16を副走査方向に搬送して、各ヘッド6k1,6k2,6y,6m,6cのノズルから所要の色のインク滴を吐出させることによって、用紙16上にカラー画像を記録するものとする。
【0031】
(制御部構成)
図3に本実施形態の画像形成装置の制御システム(制御部)100の機能ブロック図を示す。制御部100は、画像形成装置の全体の制御を司る駆動制御手段を兼ねたマイクロコンピュータ(CPU)101、所要の固定データを格納するROM102、ワーキングメモリ等として使用するRAM103、ホスト側から転送される画像データ等を処理したデータを格納するための画像メモリ104、ホストなどの上流側のデバイスからのパラレル入出力およびが可能なパラレル入出力ポート(PIO)105と入力バッファ106、下流側の外部デバイスへ入出力が可能であるパラレル入出力ポート(PIO)107、各ヘッドにアナログ素子を駆動するために必要な駆動波形を生成する波形生成回路108、各ヘッドを制御するための制御信号を生成するヘッド制御回路109、主走査モータ8を駆動するドライバ(モータドライバ)110や、副走査の搬送ローラ15を駆動する副走査モータ17やその他駆動源を動作させるドライバ111等を備えている。
【0032】
パラレル入出力ポート107には、ホスト側からの画像データなどの各種情報、操作パネルからの維持回復指示情報等の各種指示情報、用紙の始端、終端を検知する紙有無センサからの検知信号、第一キャリッジ5aの遮蔽板34a等を認識するホームポジションセンサ35などの各種センサからの信号が入力される。また、上流側のパラレル入出力ポート105を介してホスト側や操作パネル側に対して所要の情報が送出する。
【0033】
また、第一キャリッジ5aに設けられた第一位置検出センサ33aのA相と、それに対して90度位相のずれたB相の入力を処理し、各相の分解能の4逓倍の分解能で位置を検出できる第一位置カウンタ(第一キャリッジ位置カウンタ)112aを備えている。また、同様の機能を備えた第二位置カウンタ112(第二キャリッジ位置カウンタ)b、搬送ローラ15に設けられた搬送ローラ回転角検出センサ29用の搬送ローラ位置カウンタ112cをそれぞれ備えている。
【0034】
波形生成回路108は、ヘッド内の圧電素子に印加する駆動波形を生成して出力を行っている。本実施形態では、波形生成回路108にはD/A変換器を用い、CPU101から与えられる電圧データをD/A変換することにより、大ドットを形成するための第1駆動波形、小ドットを形成するための第2駆動波形、微小ドットを形成するための第3駆動波形を生成出力するようにしている。また、波形生成回路108を各印字ヘッドに対して個別に設けることで、ヘッドごとのタイミングで駆動波形の生成を可能としている。
【0035】
ヘッド制御回路109は、下流側入出力ポート107を介して与えられる各種データ及び信号に基づいて、ヘッドの各ノズルに対応する圧電素子に対して波形生成回路108から出力された駆動波形を印加したり、CPU101が画像メモリ104から出力した画像データを各ノズルに対して画像データを転送する等のヘッド制御に必要な信号を生成してヘッド制御を行う。
【0036】
モータドライバ110、ドライバ111は、下流側入出力ポート107を介して与えられる駆動データに応じてそれぞれ主走査モータ8及び副走査モータ17を各々駆動制御することで、第一キャリッジ5aを主走査方向に移動走査し、搬送ローラ15を回転させて用紙16を所定量搬送させる。
【0037】
(キャリッジの結合ガタについて)
ここで、図4に示すように、黒インク用とカラーインク用の双方のヘッドを備える一体型のキャリッジ5では、基準となるモノクロ印字ヘッド(図中のヘッド6k1)に対する各ヘッドの理論上の相対的な組付け距離が固定であるので、印字時のキャリッジ速度と相対的な組付け距離からエンコーダの最高分解能に相当する画素単位で、印字タイミングの調整することにより印字を行うようにすれば良い。なお、図4および図5中のモノクロヘッド間距離はヘッド6k1とヘッド6k2との組付け距離、カラーヘッド間距離1はヘッド6cとヘッド6mとの組付け距離、カラーヘッド間距離2はヘッド6mとヘッド6yとの組付け距離、キャリッジ間組付理想距離はヘッド6k1とヘッド6cとの組付け距離を指す。
【0038】
しかしながら、図5に示す本実施形態に係る画像形成装置のように、モノクロ印字用の第一キャリッジ5aとカラー印字用の第二キャリッジ5bがロック機構37により連結、分離し、モノクロ印字の際には、カラー印字のための第二キャリッジ5bは、サブシステム22b上でキャッピング等の維持回復処理を行う構成の場合、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bを結合させてカラー印字をする際、キャリッジ間に結合ガタが生じてしまうので、キャリッジ間理想距離分の距離に結合ガタが加わるため所望の印字位置からずれる場合が生じる。
【0039】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置は、この結合ガタが影響する印字ずれを軽減することを目的として、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bにそれぞれ取り付けた第一、第二位置検出センサ33a,33bからの出力を、それぞれ2つのキャリッジ独自のものとして読み出し処理をして、カウントアップ/ダウンするための第一、第二位置カウンタ112a,112bを備えることにより、各キャリッジの主走査方向における絶対位置を取得可能として、各キャリッジが印字位置系(ホーム位置からの距離)を独自にもつことができ、制御部100から要求された印字位置に対して、この印字位置系から判断される位置において第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとがそれぞれ印字することにより、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとを結合した際に発生する結合ガタの影響を受けることなく印字を行うことを可能とし、これにより第一キャリッジ5aを単独で走査した場合(モノクロ印字の場合)の印字位置と、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとを一体で走査した場合(カラー印字の場合)の印字位置との印字位置ずれの発生を抑えるものである。
【0040】
(画像形成方法)
<印字初期設定>
以下、本実施形態に係る画像形成装置による印字処理(画像形成方法)について説明する。先ず、図6に印字処理における印字初期動作のフローチャートを示す。
【0041】
先ず、キャッピングを解除して、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとを結合させる(S101)。結合させた後、結合したキャリッジ5a,5bを装置にダメージを与えない所定の速度で復路方向(図1中の右方向)へ移動させ、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bの位置カウンタ112a,112bの値が共にカウント値が変化しなくなるまで、結合したキャリッジ5a,5bを移動させる(S102〜104)。ここで、カウント値が変化しない状態は、結合したキャリッジ5a,5bが側板2へ押し当あてられている状態である。この第一キャリッジ5aおよび第二キャリッジ5bを右側板2に押し当てた状態で各キャリッジの第一、第二位置カウンタ112a,112bをクリアする(S105)。
【0042】
ここで、モノクロ印字であると判断した場合(S106:モノクロ印字)は、位置カウンタクリア後に、第二キャリッジ5bのキャッピング位置まで結合したキャリッジ5a,5bを移動させ、キャッピング位置で第二キャリッジ5bを分離し、キャッピング状態にする(S121〜S123)。なお、通常、キャッピング位置合わせにおいては、結合ガタ程度の差は許容範囲であって動作に影響しない。
【0043】
次に、第一キャリッジ5aだけを往路方向(図1中の左方向)へ移動を開始すると同時に、位置検出センサ33aがエンコーダシートを検知して信号を出力するので、第一位置カウンタ112aは第一位置検出センサ33aがエンコーダを検知して出力した信号のカウントを開始する(S124)。遮蔽板34aがホームポジションセンサ(HPセンサ)35で検知されると(S125)、そのときの第一位置カウンタ112aのカウント値をオフセット値として書き込んで、第一位置カウンタ112aを初期化する(S126)。ここで、書き込み先は、例えば、第一位置カウンタ112aのレジスタに書き込むものである。なお、電源起動時に各キャリッジの位置カウンタは起動時の初期値から、往路に移動させたときもマイナス方向へカウントダウンできるものとする。
【0044】
一方、カラー印字であると判断した場合(S106:カラー印字)は、第一キャリッジ5a及び第二キャリッジ5bが移動を開始すると同時に、第一位置検出センサ33a及び第二位置検出センサ33bがエンコーダシートを検知して信号を出力するので、第一位置カウンタ112a及び第二位置カウンタ112bも同時に、第一位置検出センサ33a及び第二位置検出センサ33bが出力した信号のカウントを開始する(S111)。遮蔽板34aがホームポジションセンサ35に検知されると(S112)、そのときの第一位置カウンタ112aのカウント値を第一キャリッジのオフセット値として書き込み、第一位置カウンタ112aを初期化し(S113)、さらに移動し(S114)、遮蔽板34bをホームポジションセンサ35が検知すると(S115)、そのときの第二位置カウンタ112bのカウント値を第二キャリッジのオフセット値として書き込み、第二位置カウンタ112bを初期化する(S116)。なお、各位置カウンタの初期化後は、各キャリッジの印字位置系が確立されるので、任意の位置でキャリッジを停止させればよい。また、電源起動時に各キャリッジの各位置カウンタは起動時の初期値から、往路に移動させたときもマイナス方向へカウントダウンできるものとする。以上が印字初期動作である。
【0045】
<モノクロ印字動作>
次に、図3及び図7を参照しつつモノクロ印字について説明する。上述のように、初期動作において第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aの初期化(S126)により、制御部100は第一キャリッジ5aに対してモノクロヘッド印字位置系を認識する。
【0046】
この状態では、モノクロ印字の場合には、図7に示すように、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bは分離し、第二キャリッジ5bはキャッピング状態であって、モノクロ印字中の維持動作をしなくても良い状態となっているため、以降は、第一キャリッジ5aのみを動作させて印字を行う。
【0047】
本実施形態では、モノクロ基準ヘッド6k1は、第一キャリッジ5aの第一位置検出センサ33aからのA相出力の立上り検知時に毎回カウントアップする値(位置カウンタ分解能の1/4単位)を基準として、画像の印字位置を照らし合わせて、印字を行う。なお、印字タイミングの微調整は4逓倍の第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aの値を用いて可能である。
【0048】
図3に示したように、CPU101はヘッド6k1が画像を印字開始する位置の一つ前の位置を認識したら、画像メモリ104から最初にヘッド6k1で印字するデータ群を読み出し、ヘッド6k1用のヘッド制御回路109k1を介してヘッド6k1へ転送する。
【0049】
そして、次の第一位置検出センサ33aからのA相出力タイミングを基準にして、着弾位置の微調整をするために、第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aを用いて、任意の印字タイミングでヘッド6k1用の波形生成回路108k1から駆動波形を出力し、ヘッド制御回路109k1により、その他の各ヘッドが印字するために必要な信号やデータを転送して、最初の印字動作を実行する。
【0050】
この時、次のカウント位置で印字する画像データも同時に転送している。ヘッド6k1は第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aが印字終了の位置カウントになるまで、この動作を繰り返して印字を行っていき、画像印字を行う。
【0051】
また、ヘッド6k2は、図5に示したように、ヘッド6k1に対して、モノクロヘッド間距離(以下、距離A)だけ離れた位置に組付けられているので、この値を考慮して、第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aが距離Aに相当する分進んだ値から上述したようなヘッド6k2用の波形生成回路108k2、ヘッド制御回路109k2の動作させることにより、モノクロ基準ヘッド6k1と合うように調整して印字を行うものである。
【0052】
このようにすることにより、モノクロ印字を行う際には、印字しないヘッドを維持するためのインクおよび電力消費の軽減、印字時間の短縮を図ることができる。
【0053】
<カラー印字動作>
次に、図3及び図8を参照しつつカラー印字について説明する。上述のように、初期動作において第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bの位置カウンタ112a,112bの初期化(S113,S116)により、制御部100は第一キャリッジ5aに対してモノクロ印字位置系を、第二キャリッジ5bに対してはカラー印字位置系をそれぞれ認識する。
【0054】
この状態から、カラー印字の場合は、図8に示すように、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとを結合させて、結合した状態で印字を実施する。
【0055】
本実施形態では、カラー基準ヘッドであるシアンヘッド6cは、第二キャリッジ5bの第二位置検出センサ33bからのA相出力の立上り検知時に毎回カウントアップする値(位置カウンタ分解能の1/4単位)を基準として、画像の印字位置を照らし合わせて、印字を行う。
【0056】
このシアンヘッド6cに対して、他のカラー印字ヘッド6m,6yの印字タイミングを生成することで、カラー側の印字位置を合わせることができる。ここで、モノクロ側のヘッドの印字制御は、上述したように、第一キャリッジ5aのモノクロ印字位置系を用いて自身のタイミング印字を行うものであるので、重複する説明は省略する。
【0057】
図3に示したように、CPU101はシアンヘッド6cが画像を印字開始する位置の一つ前の位置を認識したら、画像メモリ104から最初にシアンヘッド6cで印字するデータ群を読み出し、シアンヘッド6c用のヘッド制御回路109cを介してヘッド6cへ転送する。
【0058】
そして、次の第二位置検出センサ33bからのA相出力タイミングを基準にして、着弾位置の微調整するために、第二キャリッジ5bの第二位置カウンタ112bを用いて、任意の印字タイミングでシアンヘッド6c用の波形生成回路108cから駆動波形を出力し、ヘッド制御回路109cにより、その他の各ヘッドが印字するために必要な信号やデータを転送して、最初の印字動作を実行する。
【0059】
この時、次のカウント位置で印字する画像データも同時に転送している。シアンヘッド6cは第二キャリッジ5bの第二位置カウンタ112bが印字終了の位置カウントになるまで、この動作を繰り返して印字を行っていき、画像印字を行う。
【0060】
また、マゼンタヘッド6mは、図5に示したように、シアンヘッド6cに対して、カラーヘッド間距離1(以下、距離B)だけ離れた位置に組付けられているので、この値を考慮して、シアンヘッド6cの印字したタイミングより第二キャリッジ5bの第二位置カウンタ112bが距離Bに相当する分進んだ値からマゼンタヘッド6m用の波形生成回路108m、ヘッド制御回路109mの動作をさせることにより、カラー基準ヘッド6cと合うように調整して画像の印字を行うものである。
【0061】
同様に、マゼンタヘッド6mは、第二キャリッジ5bの第二位置検出センサ33bからのA相出力の立上り検知時に毎回カウントアップする値(位置カウンタ分解能の1/4単位)を基準として、画像の印字位置を照らし合わせて、印字を行う。
【0062】
さらに、イエローヘッド6yは、図5に示したように、シアンヘッド6cに対して、カラーヘッド間距離1(距離B)およびカラーヘッド間距離2(距離C)だけ離れた位置に組付けられているので、この値を考慮して、シアンヘッド6cの印字したタイミングより第二キャリッジ5bの第二位置カウンタ112bが距離B+Cに相当する分進んだ値からイエローヘッド6y用の波形生成回路108y、ヘッド制御回路109yの動作をさせることにより、カラー基準ヘッド6cと合うように調整して画像の印字を行うものである。
【0063】
同様に、イエローヘッド6yは、第二キャリッジ5bの第二位置検出センサ33bからのA相出力の立上り検知時に毎回カウントアップする値(位置カウンタ分解能の1/4単位)を基準として、画像の印字位置を照らし合わせて、印字を行う。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、第一キャリッジ5a、第二キャリッジ5bそれぞれが位置カウンタ112a,112bを有しており、これらを別々に初期化をし、それぞれの印字位置系を有するので、第二キャリッジ5bは自身の第二位置カウンタ112bの値を基準に印字を行うことにより、カラー印字の際の結合ガタ分のタイミング調整を行うことなく印字を行うことができる。例えば、モノクロヘッド6k1が主走査のn(nは任意の整数とする)位置で印字を行う場合、第一キャリッジ5aの第一位置カウンタ112aがカウントnとなったエンコーダ分解の範囲で印字を行うが、シアンヘッド6cを同じ位置で印字したければ、第二キャリッジ5bの第二位置カウンタ112b についてカウントnとなった時に、同様に印字を行えば良く、その他のヘッドに対しては各キャリッジ基準ヘッドに対して、組付け位置を考慮した分タイミングをずらして印字してやれば良い。
【0065】
このようにすることにより、第一キャリッジと第二キャリッジの結合ガタから生じるモノクロ印字の印字位置とカラー印字の印字位置ずれの発生を抑えることができる。
【0066】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態(第二実施形態)について図9〜図13を参照しつつ説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、上述の構成に加えて、第一キャリッジ5aおよび第二キャリッジ5bのうち、いずれか一方のキャリッジは主走査方向の位置を検出可能に設けられた相対位置エンコーダシート40を、他方のキャリッジは相対位置エンコーダシート40を読取る第三位置検出手段(第三位置検出センサ41および第三位置カウンタ42)を備え、第一位置検出手段、第二位置検出手段および第三位置検出手段の出力に基づいて、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとの傾き(相対傾き)を検知するものである。なお、上記第一実施形態と同様の点についての説明は省略する。
【0067】
(画像形成装置の構成)
図9は本実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部の概略構成図である。図9に示すインクジェット記録装置は、第一実施形態で説明したインクジェット記録装置の構成に加えて、第一キャリッジ5aに相対位置エンコーダシート(第二エンコーダシート)40、第二キャリッジ5bに第三位置検出センサ(エンコーダセンサ)41が設けられている。
【0068】
相対位置エンコーダシート40は、ガイドロッド3と略平行となるように、支持部材43により載置台39上に保持されている。相対位置エンコーダシート40は、第一、第二キャリッジ5a,5bの結合時において、第三位置検出センサ41の読取可能範囲に移動するものである。したがって、第三位置検出センサ41により相対位置エンコーダシート40を読み取ることで、第二キャリッジ5bと第一キャリッジ5aとの位置(相対位置)を求めることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、第一キャリッジ5aが相対位置エンコーダシート40、第二キャリッジ5bが第三位置検出センサ41を備える例について説明するが、いずれか一方のキャリッジに対する他方の相対位置を検知することが目的であるので、逆に、第一キャリッジ5aが第三位置検出センサ41、第二キャリッジ5bが相対位置エンコーダシート40を備えるようにしても良い。
【0070】
また、図10は本実施形態の画像形成装置の制御システム(制御部)100の機能ブロック図を示している。図10は、図3に示した制御部100に加え、CPU101は、第三位置検出センサ41による相対位置エンコーダシート40の読取結果としての出力信号を処理するものである。なお、第三位置カウンタ42は、第一位置カウンタ112aと同様の機能を有する。
【0071】
(画像形成方法)
以下、図11のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置によるカラー印字処理の一例について説明する。なお、第一実施形態において説明した処理と重複する処理についての説明は省略する。
【0072】
先ず、第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとの連結動作を行う(S201)。連結動作は、例えば、第二キャリッジ5bはサブシステム21b上のホーム位置にて停止した状態から、印字動作を終了させた第一キャリッジ5aが、速度を低速にして第二キャリッジ5bに近づき連結レバー37a、連結機構受け部37b、連結駆動機構37c等からなる連結手段37により結合される。
【0073】
次に、上述のように、結合状態のキャリッジを右側板2に突き当てて、各キャリッジの第一、第二位置カウンタ112a,112bをクリアする。また、第一キャリッジ5aに配置された相対位置エンコーダシート40を第二キャリッジ5bに配置された第三位置検出センサ41により読み取ることで第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとの相対距離aを取得し、RAM103に記憶する(S202)。なお、結合ガタは、キャリッジの連結時(S201)に生じ、右側板2に押し当てても解消しないことが通常である。
【0074】
なお、相対距離aの取得タイミングは、特に限られるものではなく、例えば、印字動作直前のホーム位置で相対距離aの取得を行うことで、印字直前の相対位置に基づいて後述の印字位置補正(S205)を行うことができ、補正精度の向上を図ることができる。
【0075】
次に、取得した相対距離aと、結合ガタのない状態における第一キャリッジ5aと第二キャリッジ5bとの相対距離の理論値(理想値)Aとを比較して、差異があるか否かを判断する(S203)。なお、理論値Aは、例えば、印字結果の画像等から求めればよい。差異がある場合(S203:Yes)は、以下に述べるような傾き算出処理(S204)を行って、傾き算出処理(S204)の算出結果に基づいて印字の調整を行ったうえで印字動作を行うものである(S205)。一方、差異が無い場合(S203:No)は、通常の印字動作とすれば良い(S206)。
【0076】
<傾き算出処理>
キャリッジの相対傾きを算出する傾き算出処理(S204)について、図12および図13を参照しつつ説明する。図12(a)は両キャリッジが走査方向(吐出方向と直交する方向をいう)に傾きのない理想的な位置にある場合(以下、理想時)における第一位置検出センサ33aと第二位置検出センサ33bとの位置関係、および相対位置エンコーダシート40と第三位置検出センサ41との位置関係を示しており、図12(b)は第二キャリッジ5bが走査方向に傾きガタのある場合における第一位置検出センサ33aと第二位置検出センサ33bとの位置関係、および相対位置エンコーダシート40と第三位置検出センサ41とのホーム位置での位置関係を示している。
【0077】
図12(a)に示すように、理想時においては、連結時のキャリッジに搭載している第一位置検出センサ33aのセンシング位置と第二位置検出センサ33bのセンシング位置間のパルス数は、理論値のようにNパルス分となる。また、第三位置検出センサ41のセンシング値(第三位置カウンタ42のカウント値)は相対位置エンコーダシート40の0カウント値から理論値のようにAパルスとなる。なお、エンコーダシート32と相対位置エンコーダシート40との距離はK[μm]とする。
【0078】
しかしながら、図12(b)に示すように、第二キャリッジ5bにガタが発生した場合、第一位置検出センサ33aのセンシング位置と第二位置検出センサ33bのセンシング位置間のパルス数が、例えば、+n(n<N)パルスとなる場合がある。また、第三位置検出センサ41のセンシング値は相対位置エンコーダシート40の0カウント値から、例えば、+a(a>A)パルスとなる場合がある。
【0079】
以上から、第一位置検出センサ33aのセンシング位置と第二位置検出センサ33bのセンシング位置間におけるガタによるパルス変化分を、理想時のパルス数Nと、第二キャリッジ5bに結合ガタが発生した場合のパルス数+nより|N−n|と表わすことができる。同様に、第三位置検出センサ41によるセンシング位置におけるガタによるパルス変化分を、理想時のパルス数Aと、第二キャリッジ5bに結合ガタが発生した場合のパルス数+aより|A−a|と表わすことができる。
【0080】
よって、図13に示すように、第二位置検出センサ33bおよび第三位置検出センサ41のセンシング位置方向が傾いたことによる相対位置エンコーダシート位置でのx方向のパルス数変化は、(|N−n|+|A−a|)で表わすことができる。ここで、エンコーダ分解能を42.3[μm]とするとx方向の変化距離は(|N−n|+|A−a|)×42.3[μm]で表わすことができる。
【0081】
以上より、第二キャリッジ5bの第一キャリッジ5aに対する相対傾き角度θは、次式(1)より、次式(2)で表わされる。
tanθ=|N−n|+|A−a|)×42.3/K・・・(1)
θ=Tan−1((|N−n|+|A−a|)×42.3/K)・・・(2)
【0082】
このように算出した相対傾き角度θを用いることで、キャリッジを分割した際のホーム位置での両キャリッジの結合精度のバラツキによる印字品質の劣化を、吐出タイミングによる印字位置補正により補正することができる(S205)。
【0083】
この印字位置補正は、公知の手法によればよく、特に限られるものではないが、例えば、主走査方向については、第二位置検出センサ33b側の端部にあるノズルを基準とし、求めたθから他のノズルごとに対応する画像データをシフトさせ、副走査方向については、ノズルの吐出幅が狭くなるので、ノズルが吐出する画像データを変更(例えば、傾いた場合のノズル位置に対応する画像データを補間により作成)することにより、印字位置の補正が可能となる。
【0084】
以上説明した第二実施形態に係る画像形成装置によれば、第一キャリッジ5aおよび第二キャリッジ5bの結合時における結合時の各キャリッジの相対位置を検知することができる。また、第一〜第三位置検出センサが検出した値、および、画像等から得られる理想的な値とに基づいて、第一キャリッジと第二キャリッジの相対傾き角を算出することができる。さらに、求めた相対傾き角に基づいて、印字ばらつきを補正することができる。
【0085】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、第一キャリッジ5aは黒インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、第二キャリッジ5bはカラーインクを吐出するカラーヘッド群を搭載する構成について説明したが、これに限られるものではなく、第一キャリッジ5a、第二キャリッジ5bともにカラーインクを吐出する記録ヘッドを搭載しても、第一キャリッジ5a、第二キャリッジ5bともに黒インクを吐出する記録ヘッドを搭載するようにしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1 側板(左側板)
2 側板(右側板)
3 主支持ガイドロッド
4 従支持ガイドロッド
5 キャリッジ
5a 第一キャリッジ
5b 第二キャリッジ
6a,6k1,6k2 ヘッド(第一キャリッジ)
6b,6c,6m,6y ヘッド(第二キャリッジ)
7k1,7k2 インクカートリッジ(第一キャリッジ)
7c,7m,7y インクカートリッジ(第二キャリッジ)
8 主走査モータ
9 駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)
10 従動プーリ(アイドラプーリ)
11 タイミングベルト
12 底板
13 サブフレーム(右)
14 サブフレーム(左)
15 搬送ローラ
15a 搬送ローラ軸
16 用紙
17 副走査モータ
17a 副走査モータ軸
18,19 ギヤ
21a,21b サブシステム
22a,22b キャップ手段
23a,23b ホルダ
24a,24b リンク部材
25a,25b 係合部
26a,26b 吸引チューブ
27a,27b 吸引ポンプ
29 搬送ローラ回転角検出センサ
30a,30b ワイパーブレード
31a,31b ブレードアーム
32 エンコーダシート(第一エンコーダシート)
33a 第一位置検出センサ(第一位置検出手段)
33b 第二位置検出センサ(第二位置検出手段)
34a 遮蔽板(第一ホーム位置基準部)
34b 遮蔽板(第二ホーム位置基準部)
35 ホームポジションセンサ(ホーム位置検出手段)
36 印字領域入り口センサ
37 ロック機構(連結手段)
37a 連結レバー
37b 連結機構受け部
37c 連結駆動機構
38 ベルト保持部
39 載置台
40 相対位置エンコーダシート(第二エンコーダシート)
41 第三位置検出センサ(第三位置検出手段)
42 第三位置カウンタ(第三位置検出手段)
43 支持部材
100 制御システム(制御部)
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 画像メモリ
105 パラレル入出力ポート(上流側)
106 入力バッファ
107 パラレル入出力ポート(下流側)
108,108k1,108k2,108c,108m,108y 波形生成回路
109,109k1,109k2,109c,109m,109y ヘッド制御回路
110 モータドライバ
111 ドライバ
112a 第一位置カウンタ(第一位置検出手段)
112b 第二位置カウンタ(第二位置検出手段)
112c 搬送ローラ位置カウンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開平2−1327号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に単独で移動可能な第一キャリッジと、主走査方向に前記第一キャリッジと一体で移動可能な第二キャリッジとを備える画像形成装置において、
前記第一キャリッジ及び前記第二キャリッジの主走査方向における位置検出に用いられる、エンコーダシートと、
前記第一キャリッジに取り付けられた第一ホーム位置基準部と、
前記第二キャリッジに取り付けられた第二ホーム位置基準部と、
前記第一ホーム位置基準部及び前記第二ホーム位置基準部を検知するホーム位置検出手段と、
前記第一キャリッジに備えられ、前記エンコーダシートを読取って該第一キャリッジの位置を検出する第一位置検出手段と、
前記第二キャリッジに備えられ、前記エンコーダシートを読取って該第二キャリッジの位置を検出する第二位置検出手段と、
を備え、
前記第一位置検出手段からの出力及び前記ホーム位置検出手段が前記第一ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて前記第一キャリッジに搭載されたヘッドの吐出を制御し、
前記第二位置検出手段からの出力及び前記ホーム位置検出手段が前記第二ホーム位置基準部を検出したときの位置に基づいて前記第二キャリッジに搭載されたヘッドの吐出を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第一キャリッジを単独で移動させることにより印字を行う際、
前記第一キャリッジおよび前記第二キャリッジを一体として、側方に設けられた突き当て部材に前記第一位置検出手段および前記第二位置検出手段からの出力が変化しなくなるまで押し付けてから前記第一位置検出手段および前記第二位置検出手段からの出力をクリアし、
前記第一のキャリッジを単独で印字可能領域に向けて移動させて、前記ホーム位置検出手段が前記第一ホーム位置基準部を検知した際に、前記第一キャリッジの印字位置を初期化することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一キャリッジおよび前記第二キャリッジを一体として移動させることにより印字を行う際、
前記第一キャリッジおよび前記第二キャリッジを一体として、側方に設けられた突き当て部材に前記第一位置検出手段および前記第二位置検出手段からの出力が変化しなくなるまで押し付けてから前記第一位置検出手段および前記第二位置検出手段からの出力をクリアし、
前記第一キャリッジおよび前記第二キャリッジを一体として印字可能領域に向けて移動させて、前記ホーム位置検出手段が前記第一ホーム位置基準部を検知した際に、前記第一キャリッジの印字位置を初期化し、
前記ホーム位置検出手段が前記第二ホーム位置基準部を検知した際に、前記第二キャリッジの印字位置を初期化することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一キャリッジおよび前記第二キャリッジのうち、いずれか一方のキャリッジは主走査方向の位置を検出可能に設けられた相対位置エンコーダシートを、他方のキャリッジは、前記相対位置エンコーダシートを読取る第三位置検出手段を備え、
前記第一位置検出手段、前記第二位置検出手段および前記第三位置検出手段の出力に基づいて、前記第一キャリッジと前記第二キャリッジとの相対傾きを検知することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
検知された前記相対傾きに基づいて、印字位置補正を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−131572(P2011−131572A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95941(P2010−95941)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】