画像形成装置
【課題】複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供する。
【解決手段】記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、前記ヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、を備える。
【解決手段】記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、前記ヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、ヘッドからインク等の吐出液を吐出して記録媒体上に像を形成するインクジェット方式を採用する画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出するヘッドにより印字を行うインクジェット方式の画像形成装置において、ヘッドのノズルをメンテナンスする技術が知られる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
具体的に、特許文献1では、ヘッドのノズル付近のインクを吸い取る吸引装置を、ヘッドのノズルが形成されている面に押し当てながら走査させて不要なインクを吸引(サクション)する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、吸引装置の吸引口がヘッドのノズル面に押し当てられた状態で走査するため、ヘッドのノズル面が擦られて傷む、といった問題がある。
【0005】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、この明細書は、記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、前記ヘッドのうち1つのヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、を備える画像形成装置 に関する。
【0007】
この明細書は、記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドから、廃インクを回収するインク回収経路と、前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドから、前記インク回収経路とは異なる経路で廃前処理液を回収する廃前処理液回収経路と、前記インク回収経路を通じて回収される廃インクを収容する廃インクタンクと、前記廃前処理液回収経路を通じて回収される廃前処理液を収容する廃前処理液タンクと、を備えてなる画像形成装置に関する。
【0008】
この明細書は、吐出液をノズルから吐出するヘッドの前記ノズルを下方からキャッピングする画像形成装置において、前記ノズルをキャッピングする際に前記ノズルと対向する側に開口が形成されているとともに、前記キャップ部によって前記ノズルをキャッピングしている状態で前記キャップ部内と大気とを連通させる部分に撥水処理が施されている大気連通孔部が壁面に形成されている箱状の本体部と、前記本体部の前記開口が形成されている側に設けられ、前記ノズルのキャッピング時に前記ヘッドのノズル周囲に当接し、前記本体部と協働して該ノズルを密閉するキャップ部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態による画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図4は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図6】図6は、媒体搬送部20の構成について説明するための図である。
【図7】図7は、媒体搬送部20の構成について説明するための図である。
【図8】図8は、媒体搬送部20におけるベルトの構成について説明するための図である。
【図9】図9は、媒体搬送部20の構成について説明するための断面図である。
【図10】図10は、媒体搬送部20に備わる天板23aの構成について説明するための図である。
【図11】図11は、媒体搬送部20に備わる天板23aの構成について説明するための図である。
【図12】図12は、媒体搬送部20に備わる吸着ダクトの構成について説明するための図である。
【図13】図13は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図14】図14は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図15】図15は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図16】図16は、ヘッド搭載部30の構成について説明するための図である。
【図17】図17は、ヘッド搭載部30の構成について説明するための図である。
【図18】図18は、ヘッドのノズル周辺の詳細を示す斜視図である。
【図19】図19は、ヘッド付近に設けられるスターホイールの配置例を示す図である。
【図20】図20は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図21】図21は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図22】図22は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図23】図23は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図24】図24は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図25】図25は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図26】図26は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図27】図27は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図28】図28は、ワイプ部の構成について説明するための図である。
【図29】図29は、ワイプ部の構成について説明するための図である。
【図30】図30は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系の他の構成例について説明するための図である。
【図31】図31は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系の他の構成例について説明するための図である。
【図32】図32は、メンテナンス部50における動作を示すタイミングチャートである。
【図33】図33は、ヘッド31がメンテナンス可能な位置まで引き出されている状態を示す断面図である。
【図34】図34は、ヘッド31とキャップ部53とが一体となっている状態を示す概略図である。
【図35】図35は、本実施の形態におけるヘッドメンテナンス動作の一例を示す図である。
【図36】図36は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図37】図37は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図38】図38は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図39】図39は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図40】図40は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図41】図41は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図42】図42は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図43】図43は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図44】図44は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図45】図45は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図46】図46は、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図47】図47は、ヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図48】図48は、ヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図49】図49は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1の実施例について説明するための図である。
【図50】図50は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2の実施例について説明するための図である。
【図51】図51は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3の実施例について説明するための図である。
【図52】図52は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4の実施例について説明するための図である。
【図53】図53は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図54】図54は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図55】図55は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図56】図56は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図57】図57は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態による画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。図2〜図5は、本実施の形態による画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の内部構成を模式的に示す縦断面図である。図3および図5は、図1における紙面右側から装置内部を見た(記録媒体搬送方向)図である。
【0013】
画像形成装置1は、画像形成装置1を構成する各要素を収容する筐体10、媒体搬送部20、ヘッド搭載部30、インク供給部40、メンテナンス部50、媒体搬送部20に記録媒体Pを供給する媒体供給部60、媒体を排出する媒体排出部70、記録媒体Pを保管する媒体保管部80a〜80d、制御部90(圧力制御部、搬送制御部、保守要否判定部、吸引制御部、退避制御部、情報取得部などに相当)により構成されている。
【0014】
制御部90は、画像形成装置における各種処理を行う役割を有しており、またプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。当該コンピュータプログラムは不図示のプロセッサによる画像形成装置の処理に伴い実行される。制御部90に含まれているメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)等から構成されることができ、画像形成装置において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0015】
次に、各構成要素の構成の詳細について述べる。
【0016】
まず、媒体搬送部20の構成について、図2〜図15を用いて述べる。
【0017】
図2〜図7に示すように、媒体搬送部20は、記録媒体Pを搬送する機能を持つ搬送部20aと、搬送部20aをヘッド搭載部30に対して当接・離間させるための移動部20bと、から構成されている。搬送部20aについて図6〜図12を用いて説明をする。記録媒体Pを担持して搬送するためのベルト21と、このベルト21が巻架される駆動ローラ22a、従動ローラ22b、従動ローラ22cおよびテンションローラ22dと、搬送ベルト21を介して記録媒体Pをベルト21に吸着させるダクト23と、駆動ローラ22aを駆動するための駆動部24と、を備えている。従動ローラ22bは、駆動ローラ22aと同じ大きさで記録媒体搬送方向に対して駆動ローラ22aと反対の位置に配置されている。
【0018】
ベルト21は、駆動部24により回転駆動される駆動ローラ22aの作用によって回転駆動され、従動ローラ22bおよび従動ローラ22cは、駆動ローラ22aの回転動作に連動して従動回転する(図9)。また、ベルト21は、テンションローラ22dの作用によって適切な張力を付与されている。
【0019】
これらベルト21、駆動ローラ22a、従動ローラ22b、従動ローラ22c、テンションローラ22d、ダクト23および駆動部24は、筐体25内に収容されている。
【0020】
また、筺体25には、搬送ベルト21に適切な張力を付与するために、テンションローラ22dを支持するテンショナ22eおよびテンションバネ22fが設けられている(図7)。
【0021】
ベルト21は、繊維にゴムを積層した無端ベルトであり、全面に孔21aが開けられている。(図8)。
【0022】
また、ダクト部23は、多数の孔23bが形成されている天板23a(図9〜図11)と、吸引ファン23cと、を備えている(図6、図12)。
【0023】
駆動ローラ22aは駆動部24により回転駆動され、ベルト21を所望の方向に回転させる。このとき、ダクト部23の天板23aにより、ベルト21が媒体搬送面を構成する位置が規定される(図9)。
【0024】
吸引ファン23c(図6、図12)により発生する吸引力は、ダクト23d、天板23a、ベルト21の孔21aを通して、記録媒体Pをベルト21の媒体搬送面に吸着させる。このような構造により、記録媒体Pは、ベルト21の走行に伴って所望の速度で搬送される。
【0025】
移動部20bについて図2、図13〜図15を用いて構成を述べる。移動部20bは、搬送部20aを支持する支持部26と、支持部26を昇降させるためのリンク機構(昇降リンク長腕27a,昇降リンク短腕27b,昇降リンク27c,昇降サブリンク27dを含む)と、リンク支持台27eと、リンクガイド27fと、リンク機構を駆動するためのリンク駆動カム28と、リンク駆動カム28を動作させるための駆動部29と、を備えている(図13〜図15)。
【0026】
続いて、図2及び図16〜図19を用いて、ヘッド搭載部30の構成について述べる。
【0027】
媒体搬送部20 の上方に位置するヘッド搭載部30には、それぞれが異なる色のインク(吐出液に相当)を吐出する複数のヘッド(上流側から、ヘッド31P(前処理液用)、ヘッド31C(シアン用)、ヘッド31M(マゼンタ用)、ヘッド31Y(イエロー用)、ヘッド31K(ブラック用)の順)が搭載されている。図16及び図17においてヘッド31P、ヘッド31C、ヘッド31M、ヘッド31Y、ヘッド31Kは同一構造のため一つのみを示し、ヘッド31としている。
【0028】
ヘッド搭載部30は、画像形成範囲、解像度、色数などにより必要個数が決定される1個ないし複数のヘッド31と、ヘッドを固定するヘッドベース32と、記録媒体Pを検知するセンサ33と、を備えている(図16,図17)。一つのヘッドベース32に対して、一つのインク供給部40がある。ヘッド31は、ベルト21の媒体搬送面に対向するとともにインク吐出のための複数のノズル孔が形成されたノズル部31aと(図18)、このノズル部31aからインクを吐出させる吐出機構と、を有している。ヘッド31はインク組成物の小滴を、微細なヘッドノズルから、搬送部20aによって搬送される記録媒体Pに飛翔させ、記録媒体P上に画像を形成する。ヘッド搭載部30は、不図示のリニアガイド等によりガイドされて、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向に、メンテナンス部50と一体的に移動可能となっている。
【0029】
ヘッド搭載部30が複数のヘッドを搭載している場合、それぞれのヘッドは、ヘッド間での相対位置を調整した状態を維持できるように、バネ座金が組み込まれたネジ34によってヘッドベース32に対して固定されている。また、ヘッドベース32が複数配置されている場合には、ヘッドベース間での相対位置を調整するために、ヘッド間の相対位置を調整する場合と同様に、それぞれのヘッドベース32はバネ座金34によって画像形成装置本体に対して固定されている。ヘッド間の相対位置の調整方法の詳細については後述する。
【0030】
また、ヘッドベース32の記録媒体Pと対向する側には、図19に示すように、記録媒体Pの搬送方向におけるヘッド31の下流側近傍に、用紙搬送方向と平行に回動自在なスターホイール110が設けられている。また、スターホイール110は、媒体搬送部20の磨耗や損傷を回避するため、媒体搬送部20には接触しない位置に配置されている。このように、スターホイール110を設けることにより、媒体搬送部20により搬送される記録媒体Pがヘッド31に衝突することを回避している。
【0031】
本実施の形態による画像形成装置では、一例として、ヘッド31のインク吐出機構として「ピエゾ方式」を採用している。「ピエゾ方式」によりインク吐出を行うヘッド31は、圧電効果を有するピエゾ素子と周辺壁とによってインク流路が構成されている。ピエゾ素子に電流を流すことによってピエゾ素子が変形し、その変形に基づくポンピング作用によってノズル部31aからインクが吐出される。もちろん、他のインク吐出方式として、いわゆる「サーマル方式(thermal type)」を採用することも可能である。「サーマル方式」では、インク流路内に設けられているヒータによってインクを加熱し、膜沸騰させる。この膜沸騰による気泡の成長または囑縮により、インクに圧力変化が生じる。この圧力変化によってノズル部31aからインクを吐出させることにより、記録媒体P上にインク画像を形成する。
【0032】
次に、図20〜図23を用いて、ヘッド31にインクを供給するインク供給部40について説明する。
【0033】
図20は、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給ブロックを示す図である。インク供給部40は、インクを貯留するインクタンク41と、インクタンク41からのインク供給を受け、ヘッド31にインクを供給する供給部42(後述の、上流側チャンバ42a、上流側搬送チューブ42b、フィルタ42c、下流側搬送チューブ42d、下流側チャンバ42e、戻搬送チューブ42f、ワンウェイバルブ42g、上流側ポンプ42h、下流側ポンプ42i、上流側大気開放弁42j、下流側大気開放弁42k、センサ42m、ワンウェイバルブ42wを備える)と、インクタンク41からインクを導入する導入部43と、を備えている。導入部43は、チューブもしくはそれに相当する部材からなり、導入部43の経路中には任意に開閉することのできる弁43aが設けられている。尚、上流側及び下流側はインクの流動方向を基準にして定義している。さらに、上流側を前、下流側を後と定義してもよい。
【0034】
上流側チャンバ42aは、インクタンク41からヘッド31に供給されるインク(ヘッドに供給されるべき吐出液)を、ヘッド31に供給される前に一時的に貯留する。
【0035】
フィルタ42cは、上流側チャンバ42aとヘッド31の間の前搬送チューブ42b(循環経路における上流側チャンバ42aとヘッド31との間)に設けられている。フィルタ42cは、 上流側チャンバからヘッドへ向かう流れを許容するとともにヘッドから上流側チャンバへ向かう流れを抑制する逆流抑制機構としての機能を有している。
【0036】
下流側搬送チューブ42dは、ヘッド31の中を通過して、ヘッド31から排出されるインクを搬送する。
【0037】
下流側チャンバ42e(下流側チャンバ)は、ヘッド31から排出されたインクを一時的に貯留する。
【0038】
戻搬送チューブ42fは、下流側チャンバ42eから上流側チャンバ42aにインクを還流させる。
【0039】
ワンウェイバルブ42gは、戻搬送チューブ42f(循環経路における後チャンバ42eと上流側チャンバ42aとの間)に設けられており、「チャンバ間逆流防止機構」としての役割を有している。
【0040】
ワンウェイバルブ42wは、後搬送チューブ42d(循環経路におけるヘッド31と下流側チャンバ42eとの間)に設けられており、下流側チャンバ42e側からヘッド31へのインクの逆流を防止する「ヘッド下流側逆流防止機構」としての役割を有している。
【0041】
上流側ポンプ42h(上流側正圧加圧部)は、上流側チャンバ42a内に正圧をかけて、パージなどのようにヘッドに強制的にインクを送り込む動作を行う。
【0042】
下流側ポンプ42i(下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部に相当)は、下流側チャンバ42eを加圧及び減圧する。
【0043】
上流側大気開放弁42jは、上流側チャンバ42aを大気圧に開放した状態と大気と遮断した状態とを切り替える役割を有する。
【0044】
上流側大気開放弁42kは、下流側チャンバを大気圧に開放した状態と大気と遮断した状態とを切り替える役割を有する。
【0045】
センサ42mは、上流側チャンバ42aや下流側チャンバ42eのインクの液面を検知する上限センサや下限センサである。
【0046】
ここでは、下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部としての機能が単一の下流側ポンプ42iによって実現されている構成を例示しているが、下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部それぞれに対応するポンプを個別に設ける構成としてもよい。
【0047】
ここでは、上流側搬送チューブ42b、下流側搬送チューブ42d、戻搬送チューブ42fは「循環経路」を構成し、ヘッド31内に吐出されずに残留している吐出液を回収し、再びヘッド31に循環供給する。
【0048】
本実施の形態では、ポンプとして、チューブポンプを採用した構成を例示しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、ダイヤフラムポンプ等の様々な種類のポンプを採用することもできる。また、ポンプのチャンバ内の開放端は液面に触れないようになっている。
【0049】
また、ここではセンサ42mとして、赤外線を用いた光学式センサを採用した構成を例示しているが、液面を検知することができるものであれば、他の方式(フロートによるメカニカル方式など)を採用したセンサでもかまわない。
【0050】
続いて、メンテナンス部50の構成について、図24〜図29を用いて説明する。
【0051】
メンテナンス部50は、実際のメンテナンスを行うメンテナンス本体部51と、そのメンテナンス本体部51全体を移動させるメンテナンス駆動部52と、を備えている。
【0052】
メンテナンス部50では、メンテナンス動作として、ヘッドからインクを強制吐出させる「パージ動作」、パージされたインクを吸引する「サクション動作」、インクを吸引されたヘッドのノズル付近を拭き取る「ワイプ動作」、上記パージ動作、サクション動作およびワイプ動作によってクリーニングされたヘッドのノズルの乾燥を防ぐためにノズル付近を密閉する「キャップ動作」が行われる。
【0053】
メンテナンス本体部51は、ヘッド31を密閉するためのキャップ部53と、ヘッド31がパージしたインクを吸引するサクション部54と、パージ後のヘッド31についたインクを拭取るワイプ部55と、各機構を動作させるカム機構部56と、を備えている。なお、キャップ部53とサクション部54は、同じステージ57上に配置され一体的に上下動作を行う(図25,図26)。
【0054】
図26〜図29を用いてメンテナンス本体部51の構成について詳細に説明する。
【0055】
まず、キャップ部53は、ヘッド31に当接するゴム部53aと、ゴム部53aを固定するための本体部53bと、ヘッド31に対してゴム部53aと本体部53bを適当な押圧力で押圧するためのスプリング部53cと、キャップ部53を上下に摺動させるための支持部53dと、を備えている。
【0056】
なお、本体部53bには、ヘッド31のノズルを密閉したキャッピング状態において、外気とキャップ部53内とを連通させるための大気連通孔部が形成されている。この大気連通孔部は、キャップ部53によってヘッド31のノズル面をキャッピングした状態において、温度変化などに起因してキャップ部内の圧力が変化し、ヘッド31のノズルのオリフィスの気液界面で僅かな負圧により保持されるメニスカス(Meniscus)が崩されるなどの不具合が発生することを回避する目的で備えられている。
【0057】
サクション部54は、ヘッド31に当接するゴム部(リップ部)54aと、ゴム部54aを固定するための本体部54bと、ヘッド31に対してゴム部54aと本体部54bを適当な押圧力で押圧するためのスプリング部54cと、サクション部54を上下に摺動させるための支持部54dと、インクを吸引するためのチューブ54eと、を備えている。
【0058】
なお、サクション部54は、インク吐出部を保護するためのキャッピング機構のキャップ部53に吸引機能を備える構成とすることにより実現することもできる。このような構成とすることにより、キャップ部53とサクション部54とは一体的に形成されている。サクション機能の一部を構成することになるキャップ部53によってヘッド31のノズル面をキャッピングすることもできる。
【0059】
ワイプ部55は、ヘッド列毎に配置されインクを拭取るブレード55aと、ブレード55aと一体的に上下動するブロック55bと、ブレード55aを固定する固定板55cと、常に下方へ力を与えるスプリング55d、ワイプ部55を上下方向に摺動させるための支持部55eと、拭取ったインクをしごくための固定シャフト55fと、可動シャフト55gと、可動シャフト55gを支持し支点シャフト55hを中心に回転動作を行う可動部55iと、可動部55iに対してブレード55aと反対側へ退避する方向に力を加えるスプリング55jと、を備えている。
【0060】
カム機構部56(当接離間機構に相当)は、駆動源モータ56aと、減速機構部56bと、各カムを一体的に回転させるシャフト56cと、ワイプ部55の可動部55iを動作させる立体カム56dと、ワイプ部55のブレード55aを上下動させる平面カム56eと、ステージ57を上下動させる平面カム56fと、カムの位置検知を行うセンサ56gおよびセンサ56hと、を備えている。つまり、カム56d、カム56eおよびカム56fは、シャフト56cの回転角度位置に対応して、ブレードの清掃動作、ワイプ動作、キャップ(サクション)動作を行わせる。ここで、サクション動作とは、吸引動作に相当する。
【0061】
メンテナンス駆動部52は、駆動源モータ52aと、メンテナンス本体部51全体を吊り下げるリニアシャフト52bと、メンテナンス本体部51を移動させるための駆動ベルト52cと、位置検出センサ52dと、位置検出センサ52eと、を備えている(図24、図25)。また、メンテナンス部50全体としては、サクション用のポンプ52fと、廃インクを貯留する廃インクタンク2eと、廃前処理液を貯留する廃前処理液タンク2fと、をさらに備えている。
【0062】
上述のような構成の本実施の形態による画像形成装置における全体的な動作の概略について説明する。
【0063】
画像形成装置の記憶領域にて保持している画像データもしくは画像形成装置にて外部機器から取得した画像データに基づく印刷指示が制御部90からなされると、メンテナンス部50はヘッドの吐出面から退避する。メンテナンス部50が退避した後、媒体搬送部20は移動部20bによって画像形成位置に移動する。その後、シート状の記録媒体Pが媒体保管部80a〜80dの内のいずれかから1枚ずつピックアップされ、媒体供給部60(レジストローラに相当)を通して媒体搬送部20に供給される。媒体搬送部20に供給される記録媒体Pは、媒体供給部60にて搬送タイミングの調整および斜行補正が施された状態で媒体搬送部20に受け渡される。
【0064】
媒体搬送部20に記録媒体Pが到達すると、当該記録媒体Pは負圧の作用によって媒体搬送部20のベルト21(図7および図8を参照)に吸着される。そして、ベルト21に吸着された記録媒体Pは、ベルト21のベルト面の移動に伴ってヘッド31P〜ヘッド31Kの下方を、ヘッド31P〜ヘッド31Kとの間隔を一定に保ちつつ矢印方向に搬送される。ヘッド搭載部30のセンサ33は、記録媒体Pの通過を検知し、検知信号を制御部90に送信する。
【0065】
検知信号の受信から所定の時間が経過すると、記録媒体Pがヘッドに対して所定の位置に到達したと判断し、ヘッドが制御信号によって駆動される。駆動されたヘッドはインクを吐出し、記録媒体P上の所望の位置に画像を形成する。画像が形成された記録媒体Pは、ベルト21によりさらに搬送され、媒体排出部70を通過し、装置外に排出される。
【0066】
画像形成処理が終了すると、媒体搬送部20は、移動部20bによってヘッド正面から退避する。媒体搬送部20の退避後、所定のシーケンスに基づき、メンテナンス部50がヘッドのインク吐出性能を維持するためのメンテナンスを行う。メンテナンス終了後、ヘッド31のノズル面31aはメンテナンス部50により密閉状態となり、印刷指示待ちの状態になる。
【0067】
続いて、移動部20bの動作について述べる。制御部90から発せられる動作信号によって駆動部29が所定の方向に回転駆動され、カム駆動シャフト29bおよびリンク駆動カム28が回転する。リンク駆動カム28の回転に伴い昇降サブリンク27dが移動するが、リンクガイド27fにより垂直方向への移動が制限されているため、昇降リンク27cは水平移動する。昇降リンク27cの水平移動に伴い、昇降リンク長腕27aの支点も水平移動する。このとき、昇降リンク長腕27aと昇降リンク短腕27bとの作用によって、支持部26とともに搬送部20aが垂直方向に移動する。このような構成により、搬送部20aのベルト21は、ヘッド搭載部30に対して当接・離間する(図2〜図5、図14、図15)。
【0068】
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給系の動作について説明する。図21は、本実施の形態におけるインク供給系の動作を示すタイミングチャートである。
【0069】
まず、インク充填時として制御部90(圧力制御部)は、インク供給系へのインク補給として、上流側大気開放弁42jを開くことで、上流側チャンバ42aの内部を大気圧にする。このとき、インク供給弁43aを開放すると、インクタンク41内の圧力は大気連通口によって大気圧と等しくなる。従って、インクタンク41内のインクと上流側チャンバ42a内のインクとの水頭差によって、インクタンク41から上流側チャンバ42aにインクが供給される。
【0070】
上流側チャンバ42a内のインク量が適量に達したことをセンサ42mが検知すると、制御部90(圧力制御部)は、下流側大気開放弁42Kを開放させる。このとき下流側大気開放弁42Kを開放させておくだけでなく、下流側ポンプ42iを動作させて下流側チャンバ42e側にインクを吸引させて、インクを上流側チャンバ42a外に排出させることもよい。また、下流側ポンプ42iのみによって下流側チャンバ42e側にインクを吸引させる代わりに、下流側ポンプ42iを動作させて下流側チャンバ42e側にインクを吸引させるとともに、上流側ポンプ42hを動作させて上流側チャンバ42a内に正圧を加えるようにすることもできる。
【0071】
上流側チャンバ42aと下流側チャンバ42eの間にはワンウェイバルブ42gが設けられており、インクは上流側チャンバ42aから下流側チャンバ42eへは流れず、一方でインクはヘッド31を必ず通過するため、ヘッド31内にインクが充填されてゆく。
【0072】
この段階では、下流側大気開放弁42kが開放されているため、ヘッド31を通過したインクは下流側チャンバ42e内に流れ込む。下流側チャンバ42e内のインクが適量に達したことがセンサ42mにて検知されると、制御部90(圧力制御部)は、上流側ポンプ42hおよび下流側ポンプ42iを停止させ、インクの初期充填は完了となり、待機状態になる。
【0073】
印字動作が開始されると、制御部90(圧力制御部)は、上流側大気開放弁42jを開放させ、下流側ポンプ42iにより下流側チャンバ42e内に負圧を発生させ、上流側チャンバ42aからヘッド31を通して下流側チャンバ42e内にインクを流れ込ませる。ここで、上流側大気開放弁42jが開放されていることにより、ヘッド31内の負圧は適正に保たれ、ヘッド31における印字性能に大きく影響を与えることはない。このタイミングで印字制御をONさせる。
【0074】
なお、ヘッド31に微細な塵埃や気泡が侵入した場合でも、ヘッド31内を流れるインクによってヘッド31外に流し出されるため、塵埃や気泡に起因する印字抜けが一時的に発生したとしても、間もなく回復することになる。
【0075】
下流側チャンバ42e内のインク量が適量を越えると、印字動作を中断させるとともに、そして下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧にする。これとは別に上流側大気開放弁42jを閉め、上流側ポンプ42hを動作させ上流側チャンバ42a内を負圧にさせてもよい。下流側ポンプ42iは一旦停止し、上流側大気開放弁42jが閉じられ、下流側大気開放弁42kが開放される。そして上流側ポンプ42h(上流側負圧加圧部に相当)が動作し、上流側チャンバ42a内の空気が排出される。これにより、上流側チャンバ42a内の負圧が高まり、下流側チャンバ42e内のインクが、戻搬送チューブ42fおよびワンウェイバルブ42gを通して、上流側チャンバ42aへ向けて還流する。もちろん、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧とすることにより、後チャンバ42e内のインクを上流側チャンバ42aへ向けて還流させることもできる。
【0076】
本実施の形態では、循環経路におけるヘッド31よりも下流側かつ下流側チャンバ42eよりも上流側にワンウェイバルブ42w(ヘッド下流側逆流防止機構)が配置されている。
【0077】
ここでは、「ヘッド下流側逆流防止機構」および「チャンバ間逆流防止機構」としてワンウェイバルブを採用した構成を例示しているが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、結果として所望のタイミングにおいて所望の方向への流れを形成することができる構成であればよく、ピンチコック等を採用することもできる。また、吐出液の逆流を緩和する構成(逆流抑制機構)として、フィルタの流路抵抗を利用するようにしてもよい。これによれば、双方向の流れを許容しつつ、いずれかの方向に急激な圧力が加わった場合でも、急激な流れを生じさせることがなく、結果として緩やかに逆流を抑制する効果を奏する。
【0078】
なお、上流側大気開放弁42jおよび下流側大気開放弁42kが開放されている状況下においては、ヘッド31内の負圧はヘッド31内のインクと上流側チャンバ42a内のインクとの水頭差で決定されるため、印字に影響が及ぶことはない。下流側チャンバ42e内のインク量が適量であることがセンサ42mによって検知されると、上流側ポンプ42hおよび下流側ポンプ42iは停止する。このとき、上流側チャンバ42a内のインク量が足りなければ、インクタンク41から適宜インクが補給される。このインクタンク41からのインク補給は水頭差を利用して行われるため、上流側大気開放弁42jが開放され且つ下流側大気開放弁42kが閉じられている必要があるが、このとき、循環の時間を長く確保するためには、上流側チャンバ42a内のインク量が多く、下流側チャンバ42e内のインク量が少ないことが望ましい。
【0079】
したがって、上述のインク補給動作では、制御部90は、下流側チャンバ42e内から上流側チャンバ42a内にインクが移動しているときに同期してインク補給を行わせている。以後、この動作を繰り返し、インク循環を行う。
【0080】
なお、上流側ポンプ42hによって上流側チャンバ42a内を正圧とすることにより、インクをヘッド31に供給する構成も考えられるが、正圧によってインクをヘッド31に押し込む構成とすると、ヘッド31内の圧力が正圧になり、ヘッド31のノズルからインクが流れ出してしまう。よって、本実施の形態では、少なくともヘッド31よりも下流側に下流側ポンプ42iを設け、負圧によってヘッド31内に残留しているインクを下流側チャンバ42e内に引き込んで回収する構成を採用している。
【0081】
このように、圧力差調整機構に相当する、上流側ポンプ42h、下流側ポンプ42i、上流側大気開放弁42j、下流側大気開放弁42k、ワンウェイバルブ42g、ワンウェイバルブ42wによって、上流側チャンバ42a内の圧力よりも下流側チャンバ42e内の圧力の方が低い「第1の圧力状態」と、下流側チャンバ42e内の圧力よりも上流側チャンバ42a内の圧力の方が低い「第2の圧力状態」と、を選択的に切り替えることにより、インクの循環動作を実現している。
【0082】
これにより、上流側大気開放弁42jにより上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放し、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にし、下流側大気開放弁42kにより下流側チャンバ42e内を大気圧に開放した状態で上流側ポンプ42hによって上流側チャンバ42a内を負圧にする、という手順により、インクを循環させることができる。
【0083】
以上述べたように、下流側ポンプ42iは制御部90 からの制御信号に基づいて正圧と負圧を切り替えるが(圧力状態の切り替え)、当該切り替えは、チャンバ内の圧力変動がヘッド31内に伝播し印字性能に影響するのを防止するため、ヘッド31が印字動作をしていないときに行われることが望ましい。
【0084】
下流側ポンプ42iにおける正圧と負圧の具体的な切り替えタイミングとしては、ヘッド31が第1の記録媒体と第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体との間(いわゆる、紙間)に位置するタイミングになる。
【0085】
また制御部90(圧力制御部)は、下流側ポンプ42iにおける正圧と負圧の切り替えを、制御部90(搬送制御部)によって通常よりも拡げられた第1の記録媒体と第2の記録媒体との間(紙間)にヘッド31が位置している期間や、ヘッド31のノズル面を用紙搬送清掃するメンテナンス動作が行われている期間や、原稿の読取動作中などに実行させることもできる。
【0086】
なお、本実施の形態による制御部90では、ポンプにおける正圧と負圧の切り替えだけでなく、印字していないヘッド(ブラックインクしか使用しないモノクロ印字モードでの印刷時におけるカラー用ヘッド)や、カラー印字モードでの印刷時に使用しないブラック用ヘッドに対してインク供給する系の切り替えを行う(吐出動作を行っていない状態のヘッドだけについての、圧力状態の切り替え)こともできる。
【0087】
インクジェット方式の画像形成装置においては、用紙の波打ちを防いだり画像濃度を確保したりする目的で、インクの記録媒体Pへの浸透をコントロールするために、前処理液(吐出液に相当)を記録媒体Pに塗布する場合がある。このとき、無色透明な前処理液はインクとは異なり、記録媒体P上では不可視であるため、ヘッド内の異物などの影響が現れにくい。そのため、制御部90 は、前処理液を吐出するヘッドについては、他のインクを使用するヘッドよりも循環流量または循環圧力を減らして、上述の循環方向切り替え動作の回数(単位時間当たりの切り替え回数)を減らすように制御することも可能である。
【0088】
このように、インクを変質させることなく、かつポンプの脈動の影響が画質に影響を及ぼさないようにしつつ、ヘッドにインクを循環供給することが可能となる。また、インク吐出によるヘッド内のインク量の減少に伴って新しいインクをヘッドに供給する場合に、長い循環時間を確保することができる。また、循環動作の切り替えの際に生じる圧力変動が、画質に与える影響を最小限にすることができる。
【0089】
なお、図20および図21では、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給系の一構成例を示したが、必ずしもこれに限られるものではない。図30は、図20にて示した例とは異なる構成のインク供給ブロックを示す図であり、図31は、図30にて示す構成のインク供給系における動作を示すタイミングチャートである。
【0090】
図30に示す構成では、ヘッド31の上流側に位置する上流側チャンバ42aに圧力調整するためのポンプが接続されておらず、ヘッド31からのインクの回収およびヘッド31へのインクの循環供給は、基本的に下流側チャンバ42eに接続されている正逆転可能な下流側ポンプ42iによって行われる。
【0091】
図31に示すように、図30に示す構成のインク供給系では、制御部90は、まずインク供給弁43aを開放させ、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放した状態で、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせる。これにより、インクをヘッド31内に供給する(インク充填)。
【0092】
制御部90は、所定の待機時間の経過後、印字動作の開始に伴い、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させた状態で、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせ、ヘッド31に安定的なインク供給を行わせる(印刷中循環1)。
【0093】
続いて、制御部90は、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させたままで、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧にさせ、下流側チャンバ42e内のインクを上流側チャンバ42aに送り込ませる(印刷中循環2)。
【0094】
そして、制御部90は、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させたままで、インク供給弁43aを開放させ、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせる(印刷中循環1)。
【0095】
その後、待機状態を経て、初期状態へと戻る。
【0096】
もちろん、図20および図21、図30および図31にて例示したインク供給系の構成に限らず、図20および図30に示す構成ではポンプに担わせていたような動作の一部を、ポンプを利用することなく水頭差を利用して実現するような構成を採用することもできることは言うまでも無い。
【0097】
図32は、メンテナンス部50における動作を示すタイミングチャートである。
【0098】
本実施の形態における動作は、以下のようになる。
【0099】
通常待機状態(初期状態)では、ヘッド31のインク吐出面はキャップされている状態である(図32における「キャップ状態」)。メンテナンス動作開始の指示が制御部90から与えられると、まずカム機構部56(当接離間機構に相当)における駆動源モータ56aを駆動してステージ57を下降させる(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「全退避状態」)。これでメンテナンス本体部51は、ヘッド吐出面から退避した状態で、リニアシャフト52bに沿って水平移動可能となる。このような当接離間機構の機能により、キャップ部53およびサクション部54と、ヘッド31のノズル面とを、当接離間可能に相対移動させることができる。
【0100】
続いて、制御部90は、駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51をサクション位置まで移動させてから(図32における「サクション位置まで移動」)、駆動源モータ56aを駆動してステージ57を上昇させて、ヘッド吐出面にサクション用ゴム部54aを押し当てる(図32における「サクション状態」)。そして、制御部90は、ヘッド31におけるパージ動作時もしくはパージ動作後に、ポンプ52fを動作させてサクション処理を実行させる(図32における「サクション」)。サクションされた廃インクは、チューブ54eを通って廃インクタンク2eに溜まる。
【0101】
このとき、上記サクション動作は、制御部90(保守要否判定部)にて、把握可能なヘッド31の使用状況(稼動状態に関する情報)に応じて実行回数(各ヘッドにおけるメンテナンスの要否)を増減させるようにしてもよい。モノクロ印字しか行われなかった場合には、制御部90(吸引制御部)は、当該モノクロ印字動作の直後に、ブラックのインクを吐出するヘッドについてのみサクション動作を行わせる。この他、所定期間以上インクを吐出することなく放置されていたヘッドについてのみサクション動作を行わせるようにしてもよい。また、所定期間内に印字動作を行ったヘッドについてのみサクション動作を行わせるようにしてもよい。
【0102】
なお、本実施の形態のように前処理液を塗布する構成を採用する場合において、上記前処理液を吐出するヘッドにおける吐出不良が発生しても画質に致命的な問題を及ぼすことはないため、制御部90にて、前処理液を吐出するヘッドのサクション動作回数を、インクを吐出するヘッドよりも少なくするように制御してもよい。
【0103】
次に、各ヘッドに対するサクション動作が終了したら、カム機構部56における駆動源モータ56aを駆動してブレード55aを上昇させる(同時にステージ57は下降する)(図32における「ステージ57下がる」)。駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51をワイプ開始位置まで移動させる(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「ワイプ位置に移動」)。制御部90は、駆動源モータ52aを駆動して、メンテナンス本体部51をそのままワイプ終了位置まで移動させることで、ヘッド吐出面の廃インクを拭取る(図32におけるメンテナンス部51の(4)の「ワイプ終了」)。
【0104】
ここで、制御部90は、メンテナンス本体部51を停止させて、駆動源モータ56aを駆動してカム機構部56によりブレード55aを下げる。このとき、ブレード55aは、可動部55iにより55fと55gのシャフトに挟まれてしごかれ(図32における「ブレード55a清掃」)、廃インクがブロック55bに溜まる。
【0105】
続いて、サクション部54aを下降させ、次にメンテナンスすべき隣のヘッドへ向けて移動する。このような処理を繰り返すことにより、すべてのヘッドに対してメンテナンス処理を施す。
【0106】
最後に、制御部90は、駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51を初期位置(キャップ/サクション位置)に移動させて(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「初期位置に移動」)、駆動源モータ56aを駆動してすべてのヘッド31をキャップ状態にする(図32における「キャップ状態」)。ただし、制御部90(退避制御部)は、印刷開始時には、メンテナンス本体部51を退避位置に移動させて待機させる(図32における「待機位置」)。
【0107】
図32においてステージ57の(1)は上昇状態を示し、(2)は下降状態を示している。また、ブレード55aの(1)は下降状態を示し、(2)は上昇状態を示している。さらに稼動シャフト55gの(1)は固定シャフト55fとの間が開放状態を示し、(2)は閉鎖状態を示している。
【0108】
なお、通常は、ヘッド31は画像形成装置本体に対して相対移動しないように固定的に配置されている。しかしながら、ヘッド31の交換作業など、画像形成装置の保守点検等を行う際には、ヘッド搭載部30をメンテナンス可能な位置(印字位置および待機位置以外の他の位置)まで引き出す(ヘッド移動機構)必要がある。ここでは、一例として、駆動源モータ52a、メンテナンス本体部51、リニアシャフト52b、駆動ベルト52c等によって「ヘッド移動機構」が構成されているものとする。
【0109】
図33は、ヘッド31がメンテナンス可能な位置まで引き出されている状態を示す断面図であり、図34は、ヘッド31とキャップ部53とが一体となっている状態を示す概略図である。このように、本実施の形態では、複数のヘッド31の全てのノズル面を、複数のキャップ部53によって同時にキャッピングすることが可能となっている。
【0110】
本実施の形態による画像形成装置では、画像形成動作を行わない待機時には、メンテナンス本体部51はキャップ状態となっており、ヘッド31のノズル面をキャップ部53が密閉している。本実施の形態では、ヘッド31をメンテナンス可能な位置まで引き出す際に、キャップ部53がヘッド31のノズル面に密着した状態のままで、リニアシャフト52bに沿ってメンテナンス本体部51と一体的に移動する。このように、制御部90(退避制御部)は、ヘッド31により印字動作が実行されているときにのみ、当接離間機構によってキャップ部53をヘッド31のノズル面から退避させることができる。
【0111】
ここでは、キャップ部53が搭載されているメンテナンス本体部51が、当接離間機構によって、ヘッド31と一体的に移動する構成が例示されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、当接離間機構の機能により、キャップ部53単体がヘッド31と一体的に移動する構成を採用することもできることは言うまでもない。
【0112】
図35は、本実施の形態におけるヘッドメンテナンス動作の一例を示す図である。
【0113】
本実施の形態による画像形成装置が備えるサクションノズルは、図35に示すように、ヘッドのノズルを構成する複数のノズル孔全てを同時に吸引することができる。すなわち、本実施の形態によれば、ヘッドの複数のノズル孔を走査する必要がないため、ヘッドにおけるノズル孔が形成されている面を傷つけることがない。また、複数のノズル孔の内の一部の孔しか一度に吸引できない構成の従来のサクションノズルによるサクション動作に比べて短い時間でサクション動作を完了することができる。
【0114】
また、本実施の形態による画像形成装置では、ノズル面の乾燥を防ぐためのキャップ部のみをヘッドの個数と同数配置するスペース効率の良い構成を採用することにより、必要最小限の構成で高効率なメンテナンス動作を実現している。また、メンテナンス時にキャップ部によってヘッドのノズルをキャップしたままの状態でメンテナンス位置まで移動させることのできる構成となっており、ノズル面を乾燥させることなくメンテナンス操作を実行することができる。
【0115】
続いて、制御部90の構成について、図36〜図39を用いて説明する。制御部90は、本実施の形態による画像形成装置における動作シーケンスを制御する第1の制御部91と、記録媒体P上に形成すべき画像データを生成し、当該画像データをヘッド31に送信する画像形成基板である画像形成部92と、本実施の形態による画像形成装置に備わる各種機構系を駆動するモータの駆動制御を行う主制御部93と、を備えている。第1の制御部91は、画像形成部92や主制御基盤である主制御部93における動作シーケンスの制御、画像データの送信制御などを行う。
【0116】
画像形成部92は、送信されてきた画像データを、ヘッド31における印字動作を制御するための印字信号に変換し、ヘッド31に送信する。ヘッド31は、画像形成部92から送信される印字信号に基づいて駆動され、記録媒体P上にインク画像を形成する。主制御部93は、本実施の形態による画像形成装置に備わるモータやセンサ類と接続されており、画像形成装置が備える各ユニットに所望の動作をさせるための制御を行う。また、主制御部93には、上記モータ類の駆動に利用される電源供給部やドライバなども含まれている。主制御部には、メンテナンス部50、媒体搬送部20、インク供給部40の構成要素である、モータやセンサ類がそれぞれ接続されている。
【0117】
<キャッピング機構>
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるキャップ部53の構成の詳細について説明する。
【0118】
本実施の形態による画像形成装置では、ヘッドのノズル内のインクが乾燥することによる目詰まりや、塵による目詰まりからノズルを保護するために、ノズルを外気から遮断するためのキャップ部53を用いたキャッピング機構が採用されている。
【0119】
図40〜図45は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53(キャップ装置)の構成について説明するための図である。
【0120】
図40は、ヘッド31とキャップ部53の構成を模式的に表した斜視図である。
【0121】
具体的に、キャップ部53は、ヘッド31に当接するゴム部53aと、ゴム部53aが固定される本体部53bと、大気連通孔部53gと、保湿材53hと、を備えている。
【0122】
キャップ部53は、メンテナンス動作の終了時、メンテナンス動作の待機時、印字動作終了時、などにヘッド31のノズルオリフィスを保護(乾燥防止など)するために矢印方向に摺動し、ヘッド31の下面に密着(キャッピング)するようになっている。
【0123】
本体部53bは、ヘッド31のノズルをキャッピングする際にノズル31と対向する側(上側)に開口が形成されているとともに、ノズル31をキャッピングしている状態においてキャップ部53内と大気とを連通させる大気連通孔部53gが壁面に形成されている箱状の部材である。
【0124】
ゴム部53a(キャップ部)は、本体部53bの開口が形成されている側に設けられ、ノズルのキャッピング時にヘッド31のノズル周囲に当接し、本体部53bと協働してノズルを密閉する。
【0125】
大気連通孔部53gは、本体部53bの壁面からキャップ内へ向けて筒状に突出しており、該筒状部分の外周面および端面の内の少なくともいずれかの面の少なくとも一部に撥水処理が施されている。
【0126】
図41は、ヘッド31とキャップ部53が離間している状態における縦断面図であり、図42は、ヘッド31とキャップ部53が密着している状態における縦断面図である。
【0127】
例えば図41に示すように、大気連通孔部53gの外周上部縁は、本体部53b内部の底面よりも高い高さ位置になるように形成されている。なお図44、図45からわかるように、大気連通孔部53gの筒状部分の外周面の少なくとも一部は、本体部53bの壁面と一体的に形成してもよい。
【0128】
また図43に示すように、大気連通孔部53gは、ヘッド31のノズルから吐出されるインクの吐出方向と直交する平面上において、インクの吐出位置53iとは異なる位置に位置するように形成されている。本体部53b内部の底面には、ノズルオリフィスの乾燥を防止するためのシート状保湿材53hが敷設されている。ここでのシート状保湿材53hとしては、吸液力の高いスポンジや不織布にグリセリンやエチレングリコールなどの保湿剤を含浸させたシートを採用することができる。
【0129】
大気連通孔部53gの表面や内面には、水性インクをはじくように撥水化処理が施されている。ここで、大気連通孔部53gの撥水性を高める手法としては、撥水性の高い材料によって大気連通孔部53gを成型加工する手法や、ABSやアクリルなどを成型して形成されるキャップ部53の大気連通孔部53g部分の表面や内面に撥水膜を付着させる手法などが挙げられる。撥水膜の材料としては、例えば、シリコンオイル、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フラーレン化合物、シリコンーアクリルブロック共重合体などが挙げられるが、これに限られるものではなく、同様の撥水効果を発揮することのできる材料であれば採用可能である。
【0130】
本体部53b内部の底面における、大気連通孔部53gが形成されていない領域の少なくとも一部(少なくとも大気連通孔部53gの周囲)には、ノズルオリフィスの乾燥を防止するためのシート状保湿材53h(保湿シートに相当)が敷設されている。シート状保湿材53hとしては、吸液力の高いスポンジや、不織布にグリセリンやエチレングリコールなどの保湿剤を含浸させたシートなどを採用することができる。
【0131】
図45に示すキャップ部の構成では、本体部53bの内側の大気連通孔部53gの通気口を塞ぐように大気連通孔ガス透過膜53jが設けられている。
【0132】
ここでの大気連通孔ガス透過膜53jは、水性インク等の水分をはじく撥水化処理を施すことにより形成されている。具体的に、大気連通孔ガス透過膜53jは、水分を通さず、且つ、空気は通す膜のことを意味しており、脱気膜モジュールなどによく利用されている材料から形成されている。
【0133】
ここでの大気連通孔ガス透過膜53jとしては、例えば、三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社(登録商標)製の「MHF三層複合中空糸膜」を面上に形成したものや、日東電工株式会社(登録商標)製の「超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム サンマップ」や、株式会社ナック(登録商標)製の「モノトランフィルム」や、ジャパンゴアテックス株式会社(登録商標)製の「XCR(登録商標)」などを採用することができるが、必ずしもこれらに限られるものではなく、同様の効果を得られる材料であれば採用可能である。また、必要に応じて、大気連通孔ガス透過膜53jの表面に撥水性能を持たせることも考えられる。
【0134】
本実施の形態におけるキャッピング機構によれば、ヘッド31のノズル面をキャップし、ヘッド31のノズルの吐出口を密閉する際にも、大気連通孔部53gによりヘッド31内の圧力が外部に開放される。よって、ヘッド31のノズル面をキャップし、ヘッド31のノズルの吐出口を密閉する際、吐出口の気液界面で僅かな負圧により保持されるメニスカスが崩されてしまうといった不具合が発生することもない。
【0135】
また、本実施の形態によれば、シート状保湿材53hをキャップ部53内部の底面に敷き詰められているため、ヘッド31のオリフィスにおける気液界面での乾燥も防ぐことができる。
【0136】
また、キャップ部53の内部底面よりも高い高さ位置とした大気連通孔部53gの全周の縁表面を、水性インクを弾くように撥水化処理を施すことで、キャップ内部で飛び散った霧状のインクが、大気連通孔部53gの孔内に進入することを抑制することができる。
【0137】
また、大気連通孔部53gの上面部入口付近に蓋をするように撥水化処理を施すことにより、キャップ内部で飛び散ったミスト状のインクが大気連通孔部53gの孔内に進入することを抑制することができるという効果も奏する。
【0138】
メンテナンス部50のキャップ部53を上述のような構成とすることにより、キャップ部53内部の底面に形成されている大気連通孔部53gの外周面等にヘッドのノズル近傍から飛び散ったり偶然垂れたりしたインクが付着した場合でも、撥水性を有する表面によってはじかれる。これにより、キャップ部53内にインク溜りが生ずることが無く、大気連通孔部53g内部へのインクの侵入を防ぐことができるため、大気連通孔部をインクで塞れて大気と連通しなくなるといった事態を回避することができる。
【0139】
また、キャップ部53によって密閉されたノズルは、常に高湿環境を維持することができ、且つ大気とは常に連通しているため、温度変化等に起因するキャップ内の圧力変化によりヘッドのノズルのオリフィス内部の気液界面であるメニスカスが破壊されるといったこともない。また、ヘッド31のノズルにおける気泡の巻き込みやインクの垂れなどによって次の吐出動作に影響を及ぼしてしまうといった問題も発生することがない。ひいては、間欠吐出性能および連続吐出性能に優れたインクジェット記録装置を提供するこができる。
【0140】
<ヘッド位置調整機構>
【0141】
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッド位置の調整機構について、詳細に説明する。
【0142】
図46〜図48は、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【0143】
ヘッド31は、ノズルが主走査方向(記録媒体Pを搬送する方向と直交する方向)と平行になるように、ヘッドベース32上に配置されている。記録媒体P上に画像を形成する範囲はヘッド31の幅よりも広いため、主操作方向に複数のヘッド31を配置する必要がある。
【0144】
これら複数のヘッド31は、隣接するヘッド31間に印字できない領域が発生することを回避するため、ヘッド31のノズル方向に、所定のノズル数分だけオーバラップさせた状態で配置されている。
【0145】
また、本実施の形態では、図46 に示すように、記録媒体P上に形成する画像の解像度を向上させるために、同一形状のヘッドを、主走査方向に1ドット分だけ位置をずらすようにして配列している(いわゆる、千鳥状の配列)。ヘッドベース32上に配列される複数のヘッドの内の少なくとも1つは、そのヘッドベース32上における各ヘッドの位置決め等を行うための基準となる基準ヘッドに設定されている。
【0146】
ヘッドベース32上における各ヘッドの位置調整としては、記録媒体Pの搬送方向に対する傾き、ヘッド間の相対傾き、主走査方向におけるヘッド同士の相対位置の3つがある。
【0147】
各ヘッドの位置調整の手順としては、以下のような手順が挙げられる。
【0148】
まず、各ヘッドを、ヘッドベース32上の調整センタ位置(ヘッド位置決め部)に合わせて、治具などを用いて概ね位置調整した状態でヘッドベース32上に仮固定する。次に、記録媒体Pの搬送方向に対して、若しくはヘッドベース32に形成されている基準穴に対して、基準ヘッド31Aの傾きを調整する(ヘッド角度調整機構)。主走査方向におけるヘッドベース32に対する基準ヘッド31Aの位置は、ヘッドベース32に設けられた位置決めピン101(基準ヘッド位置決め部に相当)を基準ヘッド31Aに形成された嵌合孔101h(位置決め用孔部、被位置決め部に相当)に挿嵌することによって決められている。すなわち、基準ヘッド31Aの主走査方向の位置決めについては無調整になっている。固定ピン101は、中心にネジ穴があいており、ここにネジ(図示しない)を固定することによってヘッドベース32にヘッド31を固定する構造になっている。
【0149】
基準ヘッド31Aの位置決め部103に調整治具を当接または勘合させ、基準ヘッド31Aを固定ピン101を中心として回動させ、インク吐出方向と直交する水平面内における基準ヘッド31Aの角度(主走査方向に対する傾き)を調整する。
【0150】
次に、基準ヘッド31Aに対して、他のヘッド31Bの、主走査方向の位置を調整する。基準ヘッド31A以外のヘッドでは、固定ピン101が、ヘッドベース32に対して移動可能な調整部材104に固定されており、ヘッドのノズル孔が配列されている方向に移動可能となっている(ヘッド位置調整機構)。
【0151】
まず、調整部材104に調整治具(図示しない)を当接させた状態で移動させ、主走査方向におけるヘッド位置調整を行なう。その後、基準ヘッド31Aに対する傾き調整を行う(ヘッド角度調整機構)。この傾き調整は基準ヘッド31Aの傾き調整と同じ方法で行う。
【0152】
もし、この調整で主走査方向の基準位置がずれた場合、再度主走査方向位置と傾きを調整するという作業を繰り返す。ヘッドの位置が所望の位置に到達した時点で、ネジなどを用いてヘッド31Bをヘッドベース32上のヘッド位置決め部に固定する。このように、本実施の形態では、基準ヘッド31Aが装着されるべき部位(基準ヘッド位置決め部)が、基準ヘッド31Aの被位置決め部と協働して、基準ヘッド31Aを他のヘッド31Bよりも低い位置調整自由度で位置決めする。
【0153】
ヘッド31に形成されているノズル孔と、ヘッド31のヘッドベース32への位置決めを行う部材との間での位置決め精度を十分に確保することができる場合、記録媒体Pの搬送方向に対する基準ヘッド31Aの傾きについて、ピンなどによる機械的な位置決めのみを行い、傾き調整を行うことなく無調整で、ヘッド31をヘッドベース32に対して固定することも可能である。なお、本実施の形態では、ヘッド搭載部30においてヘッドベース32が別部材となっているが、必ずしもこれに限られるものではなく、一体的に形成してもよい。また、本実施の形態においては、ヘッドベースおよびヘッド搭載部のいずれもが、請求項における「ヘッドベース」もしくは「基準ヘッドベース」に相当し得るものとする。
【0154】
また、本実施の形態による画像形成装置では、カラー画像を形成するために、複数のヘッド31が搭載されているヘッド搭載部30を複数備えているため、これらヘッド搭載部間での位置調整が必要である。これら複数のヘッド搭載部の中でも、基準となるヘッド搭載部(ここでは、ヘッド搭載部30A)が決められており、ヘッド31の位置決めと同様に、基準ヘッド搭載部30A(請求項における基準ヘッドベースに相当)を基準として、他の複数のヘッド搭載部30Bの、主走査方向におけるヘッド搭載部間での位置調整や傾き調整を行う。基準ヘッド搭載部30Aは、画像形成装置本体に固定されている位置決めピン106(基準ヘッドベース保持部)を、基準ヘッド搭載部30Aに形成されている嵌合孔106h(ベース側被位置決め部、位置決め用孔部)に挿嵌することによって画像形成装置本体に対して位置決めされる。また、基準ヘッド搭載部30Aの、記録媒体Pの搬送方向に対する傾きをカム109によって調整する(ベース角度調整機構)。
【0155】
その他のヘッド搭載部30Bについては、画像形成装置本体に対して固定されているピンが、単なる位置決めのためだけではなく、ヘッドについての傾き調整の回動中心107としても利用される構成となっている。当該回動中心107に設定されているピンは、カム108によって主走査方向の位置を調整する構造を持っている(ベース位置調整機構)。
【0156】
ヘッド搭載部についても同様に、ヘッド搭載部に形成される孔に、画像形成装置本体に固定されている位置決めピン106を挿入することによるヘッド搭載部の位置決め精度が十分である場合、記録媒体Pの搬送方向に対する基準ヘッド搭載部30Aの傾きについて、位置決めピン106などによる機械的な位置決めのみを行い、傾き調整を行うことなく無調整で、ヘッド搭載部30を画像形成装置本体に対して固定することも可能である。
【0157】
ヘッドおよびヘッド搭載部の位置決めを上述のような構成によって実現することにより、強い衝撃が画像形成装置に加わった場合でも、基準ヘッドがピンによってヘッド搭載部に位置決めされているため、ヘッド位置のズレが発生することがない。また、ヘッド位置やヘッド搭載部の位置を再度調整したい場合には、基準となるヘッドやヘッド搭載部に合わせた調整を行えばよく、再調整を容易に行うことができる。
【0158】
なお、本実施の形態では、ヘッド、ヘッドベース、ヘッド搭載部に嵌合孔が形成され、ヘッドベースや画像形成装置本体側に位置決め用のピンが設けられている構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ヘッド、ヘッドベース、ヘッド搭載部にピンが設けられ、ヘッドベースや画像形成装置本体側に位置決め用の嵌合孔(位置決め用孔部)が形成されている構成を採用することも可能である。
【0159】
このように本実施の形態によれば、以下のような構成を有する画像形成装置を提供することができる。
(1).記録媒体を搬送する媒体搬送部と、
前記媒体搬送部に対向する側に形成されるノズルから、前記媒体搬送部により搬送される記録媒体上に吐出液を吐出するヘッドと、
前記媒体搬送部による記録媒体の搬送方向における前記ヘッドの下流側近傍であり且つ前記ヘッドのノズルよりも前記媒体搬送部に近接する位置に配置され、前記記録媒体の前記媒体搬送部側から前記ノズル側へ向かう反りを規制する規制部材と、
を備える画像形成装置。
(2).(1)に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドは、前記媒体搬送部に対して所定の位置関係を保持可能なヘッドベースに装着されるものであり、
前記規制部材は、前記ヘッドベースに装着されている画像形成装置。
(3).(1)に記載の画像形成装置において、
前記規制部材は、前記媒体搬送部によって搬送される記録媒体に対して点接触しながら、前記記録媒体の前記媒体搬送部側から前記ノズル側へ向かう反りを規制する画像形成装置。
(4).(3)に記載の画像形成装置において、
前記規制部材は、前記媒体搬送部による記録媒体の搬送方向と直交する方向の回転軸を中心として回転自在に支持されるスターホイールを備える画像形成装置。
【0160】
<ヘッドからの廃液の分別回収>
次に、本実施の形態による画像形成装置における、インクの廃液を分離回収する機構について、詳細に説明する。
【0161】
インクジェット方式を採用する画像形成装置において、ヘッドをメンテナンスする際に生ずる廃インク等を所定のタンク内に収容することが考えられる。
【0162】
しかしながら、ヘッドから回収されるのがインクだけでなく前処理液も含む場合、これらインクと前処理液が混ざり合うと固化してしまうという問題がある。そこで、本実施の形態による画像形成装置では、以下のような構成により、上記問題点を解決することとしている。
【0163】
(第1実施例)
まず、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1実施例について説明する。図49は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1の実施例について説明するための図である。
【0164】
本実施の形態による画像形成装置は、ヘッド31の近傍に廃インク受け1iを備えており、この廃インク受け1iにより、ヘッド31のメンテナンス動作に伴って廃棄されるインク(廃インク)を受ける。具体的に、廃インク受け1iは、サクション部54aによるサクション動作によってヘッド31から吸い取られるインク等を受ける。
【0165】
廃インク受け1iには、インク回収経路1aが接続されている。廃インク受け1iへと排出された廃インクは、インク回収経路1aを通じて廃液タンク1dへと排出される。
【0166】
また、本実施の形態による画像形成装置は、ヘッド31の近傍に廃前処理液受1sを備えており、この廃前処理液受1sにより、ヘッド31のメンテナンス動作に伴って廃棄される前処理液(廃前処理液)を受ける。
【0167】
廃前処理液受1sには、廃前処理液回収経路1bが接続されている。廃前処理液受1sへと排出された廃前処理液は、廃前処理液回収経路1bを通じて廃液タンク1dへと排出される。
【0168】
また、本実施例における廃液タンク1dは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、圧力開放弁1cを備えている。
【0169】
このような構成によれば、インク回収経路1aを通じて回収される廃インクと、廃前処理液回収経路1bを通じて回収される廃前処理液とを個別の収容口から収容するため、廃インクと廃前処理液とが廃液タンク1dに到達するまでの経路において接触することがなく、回収経路中で廃インクと廃前処理液とが接触することにより固化し、回収経路が詰まってしまう事態の発生を回避することができる。
【0170】
(第2実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2実施例について説明する。図50は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2の実施例について説明するための図である。以下、上述した第1実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。
【0171】
本実施の形態による画像形成装置では、上記第1実施例とは異なり、廃インク受け1iから廃インクを受け入れる廃インクタンク2eと、廃前処理液受1sから廃前処理液を受け入れる廃前処理液タンク2fとが、個別に用意されている。
【0172】
具体的に、第2実施例においては、廃インク受け1iには、インク回収経路2aが接続されている。廃インク受け1iへと排出された廃インクは、インク回収経路2aを通じて廃インクタンク2eへと排出される。
【0173】
また、廃前処理液受1sには、廃前処理液回収経路2bが接続されている。廃前処理液受1sへと排出された廃前処理液は、廃前処理液回収経路2bを通じて廃前処理液タンク2fへと排出される。
【0174】
また、本実施例における廃インクタンク2eおよび廃前処理液タンク2fは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、それぞれが圧力開放弁2cおよび圧力開放弁2dを備えている。
【0175】
このような構成によれば、第1の実施例と同様の効果が得られる。また、廃インクと廃前処理液とは、それぞれが個別の専用タンクに受け入れられるため、廃インクと廃前処理液とがタンク中で混ざり合って固化してしまうといった事態を回避することができる。
【0176】
また、廃インクと廃前処理液とを、それぞれ別々のタンクに回収するため、これら回収した液をフィルタ等を介して再度ヘッドまで循環供給させることにより、後の画像形成処理にて再利用することも可能である。
【0177】
(第3実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3実施例について説明する。本実施例は、上述した第2実施例の変形例である。図51は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3の実施例について説明するための図である。以下、上述した第2実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。
【0178】
本実施例による画像形成装置では、上記第2実施例とは異なり、廃インクタンク3eにおける廃インクを受け入れ可能な容量と廃前処理液タンク3fにおける廃前処理液を受け入れ可能な容量とが異なっている。
【0179】
シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のインクを吐出する記録用のヘッドでは画像を形成する関係上、前処理液用のヘッドから排出される廃前処理液の量と比較すると多量の廃インクを排出する。
【0180】
一例を挙げると、ヘッドにて形成可能な像の色がCMYKの4色である場合、廃インクの量は廃前処理液の約4倍となる。この場合、廃インクタンク3eの容積を廃前処理液タンク3fの4倍とする(廃前処理液タンクの容量を、廃インクタンクよりも少なくする)ことが好ましい。
【0181】
このように、本実施例によれば、上記第2実施例の構成による効果に加え、廃インクタンク3eと廃前処理液タンク3fの容積の比が、廃インクの量と廃前処理液の量の比と同様に設定されているため、それぞれの廃インクタンクの交換タイミングを略同じ時期に揃えることができる。また、本実施例の構成とすることにより、廃インクタンクの交換頻度を低くすることもできるという効果を奏する。
【0182】
(第4実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4実施例について説明する。図52は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4の実施例について説明するための図である。以下、上述した第2実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。本実施例は、上記第2実施例の変形例である。
【0183】
第4実施例による画像形成装置においても、廃インク受け1iから廃インクを受け入れる廃インクタンク4eと、廃前処理液受1sから廃前処理液を受け入れる廃前処理液タンク4fとが、個別に用意されている。
【0184】
また、本実施例における廃インクタンク4eおよび廃前処理液タンク4fは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、それぞれが圧力開放弁4cおよび圧力開放弁4dを備えている。
【0185】
このような構成とすることにより、第2実施例による効果に加え、廃インクタンク4eと廃前処理液タンク4fとがタンク内を連通させない状態で一体的に形成されているため、廃インクタンク4eおよび廃前処理液タンク4fの交換を同時に行うことができる
という効果を奏する。
【0186】
また、これら実施例において、画像形成装置内にヒータ等の熱源(熱源部)を配置し、廃液タンクを、当該熱源の近傍に配置することで、廃液タンク内の廃液を室温下での場合よりも早く蒸発させ、廃液タンクの容積を確保するようにしてもよい。
【0187】
<カバー開閉機構>
次に、本実施の形態による画像形成装置のカバー開閉機構について説明する。
【0188】
インクジェット方式を採用する従来の画像形成装置では、ヘッドをメンテナンスしたり、ノズルに近接して記録媒体を搬送したりする際に、メンテナンスユニットや搬送ユニットなどを機体内で移動するということが行われている。
【0189】
具体的には、本実施の形態による画像形成装置においては、メンテナンス部50や媒体搬送部20などが、画像形成装置にて実行される動作モードに応じて移動可能に構成されている。また、装置の動作モード以外に、紙詰まり等のエラーが発生した場合においても、当該エラーを解除するために、ヘッド31および媒体搬送部20の内の少なくともいずれかを移動して作業スペースを確保することも考えられる。
【0190】
本実施の形態による画像形成装置では、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)にライン状に配列されているヘッド群全体によって、記録媒体Pの幅方向における全範囲を一度に印刷することが可能となっている。このような構成においけるヘッド群全体としての幅方向におけるサイズは、記録媒体Pの幅方向における最大印字対象範囲と同じ大きさであり、このような大きいユニットをユーザが狭い装置内に手を入れて手動で動かすことは困難である。また、上記ユニットを自動で動かす構成を採用した場合においても、上記ユニットが移動している最中にカバーを開けてしまうと、インターロックが作動して移動していたユニットが移動途中で停止してしまう。このように移動途中で停止してしまったユニットをメンテナンスすることは困難であり、また、無理にその状態で作業することによって手を汚してしまうおそれがある。
【0191】
このような問題点に鑑み、本実施の形態による画像形成装置では、以下のような構成を採用している。
【0192】
図53〜図57を用いて、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明する。
【0193】
本実施の形態による画像形成装置では、画像形成装置の外壁をなす構造の固定カバー100、可動カバー101、が装置本体を覆っている。
【0194】
可動カバー101は、保守点検や装置内における紙詰まり解除などのために開閉可能な構造になっており、可動カバー100は画像形成装置本体に対して固定されている。
【0195】
可動カバー101と画像形成装置本体との間には、可動カバー101が開かないように装置本体に対してロックするためのロック機構Uが設けられている。
【0196】
ロック機構Uは、制御部90により制御されるソレノイドUa(またはこれに相当する機構部品)によって、係合部材Ubを所定の回転軸を中心として回転させ、可動カバー101に設けられている被係合部Ucと係合したロック状態と、係合を解除したロック解除状態とを切り替える。本発明の内容を逸脱しない範囲において、ロック機構Uはその他の形態でも構わない。
【0197】
通常、媒体搬送部は、「印字位置」もしくは「待機位置」のいずれか一方の位置にいるが、その状態ではカバーはロックされておらず、ユーザはカバー100を任意に開放することができる(図54)。
【0198】
一方、媒体搬送部が、「印字位置」から「待機位置」に、もしくは「待機位置」から「印字位置」に遷移しつつある過渡状態においては、カバーロック信号が制御部90から発信され、可動カバー101がロックされる(図53)。
【0199】
本実施の形態による画像形成装置のカバー開閉機構の動作について説明するためのフローチャートを図57に示す。
【0200】
まず、媒体搬送部やメンテナンス部50といった内部ユニットの移動開始を示す信号(Act101)に基づいて、可動カバー101のロック機構が動作し、可動カバー101が開かなくなる(Act102)。
【0201】
内部ユニットの移動(Act103)が終了すると(Act104,Y)、可動カバー101のロックが解除され(Act105)、カバーを開くことができるようになる。
【0202】
ユーザなどが可動カバー101を開いて作業を行い、その後、可動カバー101が再度閉じられたことを検知して(Act106)、待機状態に復帰するために内部ユニットが移動する。この間、さきと同様にカバーはロックされ続け(Act107)、待機状態になった時点(Act108,Y)で可動カバー101のロックが解除される(Act109)。
【0203】
本実施の形態における、これら一連の動作の具体的な例として、用紙詰まりが発生した場合に、媒体搬送部は、記録媒体Pの取り出しなどの作業スペースを確保するために下降する。この間、可動カバー101はロックされており、装置内部にアクセスすることはできない(図56)。
【0204】
完全に媒体搬送部が下降し、作業スペースが安全に確保できた時点で可動カバー101のロックが解除され、記録媒体Pを取り除くことができる。そして、エラーが解除され、媒体搬送部が「待機位置」もしくは「印字位置」に到達した時点で可動カバー101のロックが解除される(図55)。
【0205】
また、メンテナンス部50に関して、「初期位置」もしくは「退避位置」に到達して停止するまでの間、可動カバー101が装置本体に対してロックされた状態になり、インクで汚れたメンテナンス部50が中途半端な位置にある状態で触れることができないようにすることもできる。
【0206】
また、本実施の形態では、装置カバーを開閉可能な部分が可動カバー101のみである構成を例示したが、これに限られるものではなく、複数個所を開閉可能なように、複数の可動カバーを設けるようにしてもよい。この場合、装置内部の移動ユニットの現在位置あるいはメンテナンス部50(移動ユニット)がこれから移動すべき位置に応じて、メンテナンス作業に適した可動カバーを選択的に開閉できるようにしてもよい。ここでのメンテナンス部50がこれから移動すべき位置に関する情報は、制御部90(情報取得部)にて取得することができる。
【0207】
このように、本実施の形態によれば、媒体搬送部20やメンテナンス部50の移動が完了するまではカバーが開かないようにロックされている。これにより、装置内部で上記のようなユニットが移動中に強制停止させられて、本来停止すべきでない位置に停止してしまっているような場合でも、装置内部にユーザが手を入れて、インクが付着したヘッドやメンテナンス部などに触れて手を汚すといった事態を回避することができる。
【0208】
このように、本実施の形態によれば、以下のような構成を有する画像形成装置を提供することができる。
(1)複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像形成装置内部にて移動可能な移動ユニットと、
前記移動ユニットを含む前記画像形成装置本体の一部を固定的に覆う固定カバーと、
前記移動ユニットを含む前記画像形成装置本体の前記固定カバーにより覆われていない部分の少なくとも一部を開閉可能に覆う開閉カバーと、
前記開閉カバーを開けないようにロック可能なロック部と、
前記移動ユニットが移動している間は、前記ロック部により前記開閉カバーを開けないようにロックさせるロック制御部と、
を備える画像形成装置。
(2).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットは、前記記録媒体を前記ヘッドに対して移動させる媒体搬送ユニットである画像形成装置。
(3).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットは、前記ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンスユニットである画像形成装置。
(4).(1)に記載の画像形成装置において、
前記開閉カバーは、前記画像形成装置本体の異なる複数の部位を覆う複数のカバーから構成され、前記ロック部は、これら複数のカバーそれぞれに個別に設けられており、
前記移動ユニットが移動すべき位置に関する情報を取得する情報取得部をさらに備え、
前記ロック制御部は、前記情報取得部にて取得される情報に基づいて、前記複数のカバーの内の前記取得される情報に対応づけられているカバーのロックを解除させる画像形成装置。
(5).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットが移動すべき位置とは、記録媒体が詰まった場合に前記移動ユニットが位置すべき待機位置または保守点検時に前記移動ユニットが位置すべき待機位置である画像形成装置。
【0209】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【0210】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0211】
31 ヘッド、51 メンテナンス本体部、52a 駆動源モータ、52b リニアシャフト、52c 駆動ベルト、53 キャップ部、54 サクション部、55 ワイプ部、56 カム機構部、90 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0212】
【特許文献1】特開2005−169989号公報
【技術分野】
【0001】
この明細書は、ヘッドからインク等の吐出液を吐出して記録媒体上に像を形成するインクジェット方式を採用する画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出するヘッドにより印字を行うインクジェット方式の画像形成装置において、ヘッドのノズルをメンテナンスする技術が知られる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
具体的に、特許文献1では、ヘッドのノズル付近のインクを吸い取る吸引装置を、ヘッドのノズルが形成されている面に押し当てながら走査させて不要なインクを吸引(サクション)する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、吸引装置の吸引口がヘッドのノズル面に押し当てられた状態で走査するため、ヘッドのノズル面が擦られて傷む、といった問題がある。
【0005】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、この明細書は、記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、前記ヘッドのうち1つのヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、を備える画像形成装置 に関する。
【0007】
この明細書は、記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドから、廃インクを回収するインク回収経路と、前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドから、前記インク回収経路とは異なる経路で廃前処理液を回収する廃前処理液回収経路と、前記インク回収経路を通じて回収される廃インクを収容する廃インクタンクと、前記廃前処理液回収経路を通じて回収される廃前処理液を収容する廃前処理液タンクと、を備えてなる画像形成装置に関する。
【0008】
この明細書は、吐出液をノズルから吐出するヘッドの前記ノズルを下方からキャッピングする画像形成装置において、前記ノズルをキャッピングする際に前記ノズルと対向する側に開口が形成されているとともに、前記キャップ部によって前記ノズルをキャッピングしている状態で前記キャップ部内と大気とを連通させる部分に撥水処理が施されている大気連通孔部が壁面に形成されている箱状の本体部と、前記本体部の前記開口が形成されている側に設けられ、前記ノズルのキャッピング時に前記ヘッドのノズル周囲に当接し、前記本体部と協働して該ノズルを密閉するキャップ部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態による画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図4は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態による画像形成装置の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図6】図6は、媒体搬送部20の構成について説明するための図である。
【図7】図7は、媒体搬送部20の構成について説明するための図である。
【図8】図8は、媒体搬送部20におけるベルトの構成について説明するための図である。
【図9】図9は、媒体搬送部20の構成について説明するための断面図である。
【図10】図10は、媒体搬送部20に備わる天板23aの構成について説明するための図である。
【図11】図11は、媒体搬送部20に備わる天板23aの構成について説明するための図である。
【図12】図12は、媒体搬送部20に備わる吸着ダクトの構成について説明するための図である。
【図13】図13は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図14】図14は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図15】図15は、媒体搬送部20の移動部の構成について説明するための図である。
【図16】図16は、ヘッド搭載部30の構成について説明するための図である。
【図17】図17は、ヘッド搭載部30の構成について説明するための図である。
【図18】図18は、ヘッドのノズル周辺の詳細を示す斜視図である。
【図19】図19は、ヘッド付近に設けられるスターホイールの配置例を示す図である。
【図20】図20は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図21】図21は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図22】図22は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図23】図23は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系について説明するための図である。
【図24】図24は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図25】図25は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図26】図26は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図27】図27は、メンテナンス部50の構成について説明するための図である。
【図28】図28は、ワイプ部の構成について説明するための図である。
【図29】図29は、ワイプ部の構成について説明するための図である。
【図30】図30は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系の他の構成例について説明するための図である。
【図31】図31は、ヘッド31にインクを供給するインク供給系の他の構成例について説明するための図である。
【図32】図32は、メンテナンス部50における動作を示すタイミングチャートである。
【図33】図33は、ヘッド31がメンテナンス可能な位置まで引き出されている状態を示す断面図である。
【図34】図34は、ヘッド31とキャップ部53とが一体となっている状態を示す概略図である。
【図35】図35は、本実施の形態におけるヘッドメンテナンス動作の一例を示す図である。
【図36】図36は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図37】図37は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図38】図38は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図39】図39は、制御部90の構成について説明するための図である。
【図40】図40は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図41】図41は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図42】図42は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図43】図43は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図44】図44は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図45】図45は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53の構成について説明するための図である。
【図46】図46は、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図47】図47は、ヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図48】図48は、ヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【図49】図49は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1の実施例について説明するための図である。
【図50】図50は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2の実施例について説明するための図である。
【図51】図51は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3の実施例について説明するための図である。
【図52】図52は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4の実施例について説明するための図である。
【図53】図53は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図54】図54は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図55】図55は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図56】図56は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【図57】図57は、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態による画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。図2〜図5は、本実施の形態による画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の内部構成を模式的に示す縦断面図である。図3および図5は、図1における紙面右側から装置内部を見た(記録媒体搬送方向)図である。
【0013】
画像形成装置1は、画像形成装置1を構成する各要素を収容する筐体10、媒体搬送部20、ヘッド搭載部30、インク供給部40、メンテナンス部50、媒体搬送部20に記録媒体Pを供給する媒体供給部60、媒体を排出する媒体排出部70、記録媒体Pを保管する媒体保管部80a〜80d、制御部90(圧力制御部、搬送制御部、保守要否判定部、吸引制御部、退避制御部、情報取得部などに相当)により構成されている。
【0014】
制御部90は、画像形成装置における各種処理を行う役割を有しており、またプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。当該コンピュータプログラムは不図示のプロセッサによる画像形成装置の処理に伴い実行される。制御部90に含まれているメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)等から構成されることができ、画像形成装置において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0015】
次に、各構成要素の構成の詳細について述べる。
【0016】
まず、媒体搬送部20の構成について、図2〜図15を用いて述べる。
【0017】
図2〜図7に示すように、媒体搬送部20は、記録媒体Pを搬送する機能を持つ搬送部20aと、搬送部20aをヘッド搭載部30に対して当接・離間させるための移動部20bと、から構成されている。搬送部20aについて図6〜図12を用いて説明をする。記録媒体Pを担持して搬送するためのベルト21と、このベルト21が巻架される駆動ローラ22a、従動ローラ22b、従動ローラ22cおよびテンションローラ22dと、搬送ベルト21を介して記録媒体Pをベルト21に吸着させるダクト23と、駆動ローラ22aを駆動するための駆動部24と、を備えている。従動ローラ22bは、駆動ローラ22aと同じ大きさで記録媒体搬送方向に対して駆動ローラ22aと反対の位置に配置されている。
【0018】
ベルト21は、駆動部24により回転駆動される駆動ローラ22aの作用によって回転駆動され、従動ローラ22bおよび従動ローラ22cは、駆動ローラ22aの回転動作に連動して従動回転する(図9)。また、ベルト21は、テンションローラ22dの作用によって適切な張力を付与されている。
【0019】
これらベルト21、駆動ローラ22a、従動ローラ22b、従動ローラ22c、テンションローラ22d、ダクト23および駆動部24は、筐体25内に収容されている。
【0020】
また、筺体25には、搬送ベルト21に適切な張力を付与するために、テンションローラ22dを支持するテンショナ22eおよびテンションバネ22fが設けられている(図7)。
【0021】
ベルト21は、繊維にゴムを積層した無端ベルトであり、全面に孔21aが開けられている。(図8)。
【0022】
また、ダクト部23は、多数の孔23bが形成されている天板23a(図9〜図11)と、吸引ファン23cと、を備えている(図6、図12)。
【0023】
駆動ローラ22aは駆動部24により回転駆動され、ベルト21を所望の方向に回転させる。このとき、ダクト部23の天板23aにより、ベルト21が媒体搬送面を構成する位置が規定される(図9)。
【0024】
吸引ファン23c(図6、図12)により発生する吸引力は、ダクト23d、天板23a、ベルト21の孔21aを通して、記録媒体Pをベルト21の媒体搬送面に吸着させる。このような構造により、記録媒体Pは、ベルト21の走行に伴って所望の速度で搬送される。
【0025】
移動部20bについて図2、図13〜図15を用いて構成を述べる。移動部20bは、搬送部20aを支持する支持部26と、支持部26を昇降させるためのリンク機構(昇降リンク長腕27a,昇降リンク短腕27b,昇降リンク27c,昇降サブリンク27dを含む)と、リンク支持台27eと、リンクガイド27fと、リンク機構を駆動するためのリンク駆動カム28と、リンク駆動カム28を動作させるための駆動部29と、を備えている(図13〜図15)。
【0026】
続いて、図2及び図16〜図19を用いて、ヘッド搭載部30の構成について述べる。
【0027】
媒体搬送部20 の上方に位置するヘッド搭載部30には、それぞれが異なる色のインク(吐出液に相当)を吐出する複数のヘッド(上流側から、ヘッド31P(前処理液用)、ヘッド31C(シアン用)、ヘッド31M(マゼンタ用)、ヘッド31Y(イエロー用)、ヘッド31K(ブラック用)の順)が搭載されている。図16及び図17においてヘッド31P、ヘッド31C、ヘッド31M、ヘッド31Y、ヘッド31Kは同一構造のため一つのみを示し、ヘッド31としている。
【0028】
ヘッド搭載部30は、画像形成範囲、解像度、色数などにより必要個数が決定される1個ないし複数のヘッド31と、ヘッドを固定するヘッドベース32と、記録媒体Pを検知するセンサ33と、を備えている(図16,図17)。一つのヘッドベース32に対して、一つのインク供給部40がある。ヘッド31は、ベルト21の媒体搬送面に対向するとともにインク吐出のための複数のノズル孔が形成されたノズル部31aと(図18)、このノズル部31aからインクを吐出させる吐出機構と、を有している。ヘッド31はインク組成物の小滴を、微細なヘッドノズルから、搬送部20aによって搬送される記録媒体Pに飛翔させ、記録媒体P上に画像を形成する。ヘッド搭載部30は、不図示のリニアガイド等によりガイドされて、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向に、メンテナンス部50と一体的に移動可能となっている。
【0029】
ヘッド搭載部30が複数のヘッドを搭載している場合、それぞれのヘッドは、ヘッド間での相対位置を調整した状態を維持できるように、バネ座金が組み込まれたネジ34によってヘッドベース32に対して固定されている。また、ヘッドベース32が複数配置されている場合には、ヘッドベース間での相対位置を調整するために、ヘッド間の相対位置を調整する場合と同様に、それぞれのヘッドベース32はバネ座金34によって画像形成装置本体に対して固定されている。ヘッド間の相対位置の調整方法の詳細については後述する。
【0030】
また、ヘッドベース32の記録媒体Pと対向する側には、図19に示すように、記録媒体Pの搬送方向におけるヘッド31の下流側近傍に、用紙搬送方向と平行に回動自在なスターホイール110が設けられている。また、スターホイール110は、媒体搬送部20の磨耗や損傷を回避するため、媒体搬送部20には接触しない位置に配置されている。このように、スターホイール110を設けることにより、媒体搬送部20により搬送される記録媒体Pがヘッド31に衝突することを回避している。
【0031】
本実施の形態による画像形成装置では、一例として、ヘッド31のインク吐出機構として「ピエゾ方式」を採用している。「ピエゾ方式」によりインク吐出を行うヘッド31は、圧電効果を有するピエゾ素子と周辺壁とによってインク流路が構成されている。ピエゾ素子に電流を流すことによってピエゾ素子が変形し、その変形に基づくポンピング作用によってノズル部31aからインクが吐出される。もちろん、他のインク吐出方式として、いわゆる「サーマル方式(thermal type)」を採用することも可能である。「サーマル方式」では、インク流路内に設けられているヒータによってインクを加熱し、膜沸騰させる。この膜沸騰による気泡の成長または囑縮により、インクに圧力変化が生じる。この圧力変化によってノズル部31aからインクを吐出させることにより、記録媒体P上にインク画像を形成する。
【0032】
次に、図20〜図23を用いて、ヘッド31にインクを供給するインク供給部40について説明する。
【0033】
図20は、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給ブロックを示す図である。インク供給部40は、インクを貯留するインクタンク41と、インクタンク41からのインク供給を受け、ヘッド31にインクを供給する供給部42(後述の、上流側チャンバ42a、上流側搬送チューブ42b、フィルタ42c、下流側搬送チューブ42d、下流側チャンバ42e、戻搬送チューブ42f、ワンウェイバルブ42g、上流側ポンプ42h、下流側ポンプ42i、上流側大気開放弁42j、下流側大気開放弁42k、センサ42m、ワンウェイバルブ42wを備える)と、インクタンク41からインクを導入する導入部43と、を備えている。導入部43は、チューブもしくはそれに相当する部材からなり、導入部43の経路中には任意に開閉することのできる弁43aが設けられている。尚、上流側及び下流側はインクの流動方向を基準にして定義している。さらに、上流側を前、下流側を後と定義してもよい。
【0034】
上流側チャンバ42aは、インクタンク41からヘッド31に供給されるインク(ヘッドに供給されるべき吐出液)を、ヘッド31に供給される前に一時的に貯留する。
【0035】
フィルタ42cは、上流側チャンバ42aとヘッド31の間の前搬送チューブ42b(循環経路における上流側チャンバ42aとヘッド31との間)に設けられている。フィルタ42cは、 上流側チャンバからヘッドへ向かう流れを許容するとともにヘッドから上流側チャンバへ向かう流れを抑制する逆流抑制機構としての機能を有している。
【0036】
下流側搬送チューブ42dは、ヘッド31の中を通過して、ヘッド31から排出されるインクを搬送する。
【0037】
下流側チャンバ42e(下流側チャンバ)は、ヘッド31から排出されたインクを一時的に貯留する。
【0038】
戻搬送チューブ42fは、下流側チャンバ42eから上流側チャンバ42aにインクを還流させる。
【0039】
ワンウェイバルブ42gは、戻搬送チューブ42f(循環経路における後チャンバ42eと上流側チャンバ42aとの間)に設けられており、「チャンバ間逆流防止機構」としての役割を有している。
【0040】
ワンウェイバルブ42wは、後搬送チューブ42d(循環経路におけるヘッド31と下流側チャンバ42eとの間)に設けられており、下流側チャンバ42e側からヘッド31へのインクの逆流を防止する「ヘッド下流側逆流防止機構」としての役割を有している。
【0041】
上流側ポンプ42h(上流側正圧加圧部)は、上流側チャンバ42a内に正圧をかけて、パージなどのようにヘッドに強制的にインクを送り込む動作を行う。
【0042】
下流側ポンプ42i(下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部に相当)は、下流側チャンバ42eを加圧及び減圧する。
【0043】
上流側大気開放弁42jは、上流側チャンバ42aを大気圧に開放した状態と大気と遮断した状態とを切り替える役割を有する。
【0044】
上流側大気開放弁42kは、下流側チャンバを大気圧に開放した状態と大気と遮断した状態とを切り替える役割を有する。
【0045】
センサ42mは、上流側チャンバ42aや下流側チャンバ42eのインクの液面を検知する上限センサや下限センサである。
【0046】
ここでは、下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部としての機能が単一の下流側ポンプ42iによって実現されている構成を例示しているが、下流側正圧加圧部および下流側負圧加圧部それぞれに対応するポンプを個別に設ける構成としてもよい。
【0047】
ここでは、上流側搬送チューブ42b、下流側搬送チューブ42d、戻搬送チューブ42fは「循環経路」を構成し、ヘッド31内に吐出されずに残留している吐出液を回収し、再びヘッド31に循環供給する。
【0048】
本実施の形態では、ポンプとして、チューブポンプを採用した構成を例示しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、ダイヤフラムポンプ等の様々な種類のポンプを採用することもできる。また、ポンプのチャンバ内の開放端は液面に触れないようになっている。
【0049】
また、ここではセンサ42mとして、赤外線を用いた光学式センサを採用した構成を例示しているが、液面を検知することができるものであれば、他の方式(フロートによるメカニカル方式など)を採用したセンサでもかまわない。
【0050】
続いて、メンテナンス部50の構成について、図24〜図29を用いて説明する。
【0051】
メンテナンス部50は、実際のメンテナンスを行うメンテナンス本体部51と、そのメンテナンス本体部51全体を移動させるメンテナンス駆動部52と、を備えている。
【0052】
メンテナンス部50では、メンテナンス動作として、ヘッドからインクを強制吐出させる「パージ動作」、パージされたインクを吸引する「サクション動作」、インクを吸引されたヘッドのノズル付近を拭き取る「ワイプ動作」、上記パージ動作、サクション動作およびワイプ動作によってクリーニングされたヘッドのノズルの乾燥を防ぐためにノズル付近を密閉する「キャップ動作」が行われる。
【0053】
メンテナンス本体部51は、ヘッド31を密閉するためのキャップ部53と、ヘッド31がパージしたインクを吸引するサクション部54と、パージ後のヘッド31についたインクを拭取るワイプ部55と、各機構を動作させるカム機構部56と、を備えている。なお、キャップ部53とサクション部54は、同じステージ57上に配置され一体的に上下動作を行う(図25,図26)。
【0054】
図26〜図29を用いてメンテナンス本体部51の構成について詳細に説明する。
【0055】
まず、キャップ部53は、ヘッド31に当接するゴム部53aと、ゴム部53aを固定するための本体部53bと、ヘッド31に対してゴム部53aと本体部53bを適当な押圧力で押圧するためのスプリング部53cと、キャップ部53を上下に摺動させるための支持部53dと、を備えている。
【0056】
なお、本体部53bには、ヘッド31のノズルを密閉したキャッピング状態において、外気とキャップ部53内とを連通させるための大気連通孔部が形成されている。この大気連通孔部は、キャップ部53によってヘッド31のノズル面をキャッピングした状態において、温度変化などに起因してキャップ部内の圧力が変化し、ヘッド31のノズルのオリフィスの気液界面で僅かな負圧により保持されるメニスカス(Meniscus)が崩されるなどの不具合が発生することを回避する目的で備えられている。
【0057】
サクション部54は、ヘッド31に当接するゴム部(リップ部)54aと、ゴム部54aを固定するための本体部54bと、ヘッド31に対してゴム部54aと本体部54bを適当な押圧力で押圧するためのスプリング部54cと、サクション部54を上下に摺動させるための支持部54dと、インクを吸引するためのチューブ54eと、を備えている。
【0058】
なお、サクション部54は、インク吐出部を保護するためのキャッピング機構のキャップ部53に吸引機能を備える構成とすることにより実現することもできる。このような構成とすることにより、キャップ部53とサクション部54とは一体的に形成されている。サクション機能の一部を構成することになるキャップ部53によってヘッド31のノズル面をキャッピングすることもできる。
【0059】
ワイプ部55は、ヘッド列毎に配置されインクを拭取るブレード55aと、ブレード55aと一体的に上下動するブロック55bと、ブレード55aを固定する固定板55cと、常に下方へ力を与えるスプリング55d、ワイプ部55を上下方向に摺動させるための支持部55eと、拭取ったインクをしごくための固定シャフト55fと、可動シャフト55gと、可動シャフト55gを支持し支点シャフト55hを中心に回転動作を行う可動部55iと、可動部55iに対してブレード55aと反対側へ退避する方向に力を加えるスプリング55jと、を備えている。
【0060】
カム機構部56(当接離間機構に相当)は、駆動源モータ56aと、減速機構部56bと、各カムを一体的に回転させるシャフト56cと、ワイプ部55の可動部55iを動作させる立体カム56dと、ワイプ部55のブレード55aを上下動させる平面カム56eと、ステージ57を上下動させる平面カム56fと、カムの位置検知を行うセンサ56gおよびセンサ56hと、を備えている。つまり、カム56d、カム56eおよびカム56fは、シャフト56cの回転角度位置に対応して、ブレードの清掃動作、ワイプ動作、キャップ(サクション)動作を行わせる。ここで、サクション動作とは、吸引動作に相当する。
【0061】
メンテナンス駆動部52は、駆動源モータ52aと、メンテナンス本体部51全体を吊り下げるリニアシャフト52bと、メンテナンス本体部51を移動させるための駆動ベルト52cと、位置検出センサ52dと、位置検出センサ52eと、を備えている(図24、図25)。また、メンテナンス部50全体としては、サクション用のポンプ52fと、廃インクを貯留する廃インクタンク2eと、廃前処理液を貯留する廃前処理液タンク2fと、をさらに備えている。
【0062】
上述のような構成の本実施の形態による画像形成装置における全体的な動作の概略について説明する。
【0063】
画像形成装置の記憶領域にて保持している画像データもしくは画像形成装置にて外部機器から取得した画像データに基づく印刷指示が制御部90からなされると、メンテナンス部50はヘッドの吐出面から退避する。メンテナンス部50が退避した後、媒体搬送部20は移動部20bによって画像形成位置に移動する。その後、シート状の記録媒体Pが媒体保管部80a〜80dの内のいずれかから1枚ずつピックアップされ、媒体供給部60(レジストローラに相当)を通して媒体搬送部20に供給される。媒体搬送部20に供給される記録媒体Pは、媒体供給部60にて搬送タイミングの調整および斜行補正が施された状態で媒体搬送部20に受け渡される。
【0064】
媒体搬送部20に記録媒体Pが到達すると、当該記録媒体Pは負圧の作用によって媒体搬送部20のベルト21(図7および図8を参照)に吸着される。そして、ベルト21に吸着された記録媒体Pは、ベルト21のベルト面の移動に伴ってヘッド31P〜ヘッド31Kの下方を、ヘッド31P〜ヘッド31Kとの間隔を一定に保ちつつ矢印方向に搬送される。ヘッド搭載部30のセンサ33は、記録媒体Pの通過を検知し、検知信号を制御部90に送信する。
【0065】
検知信号の受信から所定の時間が経過すると、記録媒体Pがヘッドに対して所定の位置に到達したと判断し、ヘッドが制御信号によって駆動される。駆動されたヘッドはインクを吐出し、記録媒体P上の所望の位置に画像を形成する。画像が形成された記録媒体Pは、ベルト21によりさらに搬送され、媒体排出部70を通過し、装置外に排出される。
【0066】
画像形成処理が終了すると、媒体搬送部20は、移動部20bによってヘッド正面から退避する。媒体搬送部20の退避後、所定のシーケンスに基づき、メンテナンス部50がヘッドのインク吐出性能を維持するためのメンテナンスを行う。メンテナンス終了後、ヘッド31のノズル面31aはメンテナンス部50により密閉状態となり、印刷指示待ちの状態になる。
【0067】
続いて、移動部20bの動作について述べる。制御部90から発せられる動作信号によって駆動部29が所定の方向に回転駆動され、カム駆動シャフト29bおよびリンク駆動カム28が回転する。リンク駆動カム28の回転に伴い昇降サブリンク27dが移動するが、リンクガイド27fにより垂直方向への移動が制限されているため、昇降リンク27cは水平移動する。昇降リンク27cの水平移動に伴い、昇降リンク長腕27aの支点も水平移動する。このとき、昇降リンク長腕27aと昇降リンク短腕27bとの作用によって、支持部26とともに搬送部20aが垂直方向に移動する。このような構成により、搬送部20aのベルト21は、ヘッド搭載部30に対して当接・離間する(図2〜図5、図14、図15)。
【0068】
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給系の動作について説明する。図21は、本実施の形態におけるインク供給系の動作を示すタイミングチャートである。
【0069】
まず、インク充填時として制御部90(圧力制御部)は、インク供給系へのインク補給として、上流側大気開放弁42jを開くことで、上流側チャンバ42aの内部を大気圧にする。このとき、インク供給弁43aを開放すると、インクタンク41内の圧力は大気連通口によって大気圧と等しくなる。従って、インクタンク41内のインクと上流側チャンバ42a内のインクとの水頭差によって、インクタンク41から上流側チャンバ42aにインクが供給される。
【0070】
上流側チャンバ42a内のインク量が適量に達したことをセンサ42mが検知すると、制御部90(圧力制御部)は、下流側大気開放弁42Kを開放させる。このとき下流側大気開放弁42Kを開放させておくだけでなく、下流側ポンプ42iを動作させて下流側チャンバ42e側にインクを吸引させて、インクを上流側チャンバ42a外に排出させることもよい。また、下流側ポンプ42iのみによって下流側チャンバ42e側にインクを吸引させる代わりに、下流側ポンプ42iを動作させて下流側チャンバ42e側にインクを吸引させるとともに、上流側ポンプ42hを動作させて上流側チャンバ42a内に正圧を加えるようにすることもできる。
【0071】
上流側チャンバ42aと下流側チャンバ42eの間にはワンウェイバルブ42gが設けられており、インクは上流側チャンバ42aから下流側チャンバ42eへは流れず、一方でインクはヘッド31を必ず通過するため、ヘッド31内にインクが充填されてゆく。
【0072】
この段階では、下流側大気開放弁42kが開放されているため、ヘッド31を通過したインクは下流側チャンバ42e内に流れ込む。下流側チャンバ42e内のインクが適量に達したことがセンサ42mにて検知されると、制御部90(圧力制御部)は、上流側ポンプ42hおよび下流側ポンプ42iを停止させ、インクの初期充填は完了となり、待機状態になる。
【0073】
印字動作が開始されると、制御部90(圧力制御部)は、上流側大気開放弁42jを開放させ、下流側ポンプ42iにより下流側チャンバ42e内に負圧を発生させ、上流側チャンバ42aからヘッド31を通して下流側チャンバ42e内にインクを流れ込ませる。ここで、上流側大気開放弁42jが開放されていることにより、ヘッド31内の負圧は適正に保たれ、ヘッド31における印字性能に大きく影響を与えることはない。このタイミングで印字制御をONさせる。
【0074】
なお、ヘッド31に微細な塵埃や気泡が侵入した場合でも、ヘッド31内を流れるインクによってヘッド31外に流し出されるため、塵埃や気泡に起因する印字抜けが一時的に発生したとしても、間もなく回復することになる。
【0075】
下流側チャンバ42e内のインク量が適量を越えると、印字動作を中断させるとともに、そして下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧にする。これとは別に上流側大気開放弁42jを閉め、上流側ポンプ42hを動作させ上流側チャンバ42a内を負圧にさせてもよい。下流側ポンプ42iは一旦停止し、上流側大気開放弁42jが閉じられ、下流側大気開放弁42kが開放される。そして上流側ポンプ42h(上流側負圧加圧部に相当)が動作し、上流側チャンバ42a内の空気が排出される。これにより、上流側チャンバ42a内の負圧が高まり、下流側チャンバ42e内のインクが、戻搬送チューブ42fおよびワンウェイバルブ42gを通して、上流側チャンバ42aへ向けて還流する。もちろん、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧とすることにより、後チャンバ42e内のインクを上流側チャンバ42aへ向けて還流させることもできる。
【0076】
本実施の形態では、循環経路におけるヘッド31よりも下流側かつ下流側チャンバ42eよりも上流側にワンウェイバルブ42w(ヘッド下流側逆流防止機構)が配置されている。
【0077】
ここでは、「ヘッド下流側逆流防止機構」および「チャンバ間逆流防止機構」としてワンウェイバルブを採用した構成を例示しているが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、結果として所望のタイミングにおいて所望の方向への流れを形成することができる構成であればよく、ピンチコック等を採用することもできる。また、吐出液の逆流を緩和する構成(逆流抑制機構)として、フィルタの流路抵抗を利用するようにしてもよい。これによれば、双方向の流れを許容しつつ、いずれかの方向に急激な圧力が加わった場合でも、急激な流れを生じさせることがなく、結果として緩やかに逆流を抑制する効果を奏する。
【0078】
なお、上流側大気開放弁42jおよび下流側大気開放弁42kが開放されている状況下においては、ヘッド31内の負圧はヘッド31内のインクと上流側チャンバ42a内のインクとの水頭差で決定されるため、印字に影響が及ぶことはない。下流側チャンバ42e内のインク量が適量であることがセンサ42mによって検知されると、上流側ポンプ42hおよび下流側ポンプ42iは停止する。このとき、上流側チャンバ42a内のインク量が足りなければ、インクタンク41から適宜インクが補給される。このインクタンク41からのインク補給は水頭差を利用して行われるため、上流側大気開放弁42jが開放され且つ下流側大気開放弁42kが閉じられている必要があるが、このとき、循環の時間を長く確保するためには、上流側チャンバ42a内のインク量が多く、下流側チャンバ42e内のインク量が少ないことが望ましい。
【0079】
したがって、上述のインク補給動作では、制御部90は、下流側チャンバ42e内から上流側チャンバ42a内にインクが移動しているときに同期してインク補給を行わせている。以後、この動作を繰り返し、インク循環を行う。
【0080】
なお、上流側ポンプ42hによって上流側チャンバ42a内を正圧とすることにより、インクをヘッド31に供給する構成も考えられるが、正圧によってインクをヘッド31に押し込む構成とすると、ヘッド31内の圧力が正圧になり、ヘッド31のノズルからインクが流れ出してしまう。よって、本実施の形態では、少なくともヘッド31よりも下流側に下流側ポンプ42iを設け、負圧によってヘッド31内に残留しているインクを下流側チャンバ42e内に引き込んで回収する構成を採用している。
【0081】
このように、圧力差調整機構に相当する、上流側ポンプ42h、下流側ポンプ42i、上流側大気開放弁42j、下流側大気開放弁42k、ワンウェイバルブ42g、ワンウェイバルブ42wによって、上流側チャンバ42a内の圧力よりも下流側チャンバ42e内の圧力の方が低い「第1の圧力状態」と、下流側チャンバ42e内の圧力よりも上流側チャンバ42a内の圧力の方が低い「第2の圧力状態」と、を選択的に切り替えることにより、インクの循環動作を実現している。
【0082】
これにより、上流側大気開放弁42jにより上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放し、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にし、下流側大気開放弁42kにより下流側チャンバ42e内を大気圧に開放した状態で上流側ポンプ42hによって上流側チャンバ42a内を負圧にする、という手順により、インクを循環させることができる。
【0083】
以上述べたように、下流側ポンプ42iは制御部90 からの制御信号に基づいて正圧と負圧を切り替えるが(圧力状態の切り替え)、当該切り替えは、チャンバ内の圧力変動がヘッド31内に伝播し印字性能に影響するのを防止するため、ヘッド31が印字動作をしていないときに行われることが望ましい。
【0084】
下流側ポンプ42iにおける正圧と負圧の具体的な切り替えタイミングとしては、ヘッド31が第1の記録媒体と第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体との間(いわゆる、紙間)に位置するタイミングになる。
【0085】
また制御部90(圧力制御部)は、下流側ポンプ42iにおける正圧と負圧の切り替えを、制御部90(搬送制御部)によって通常よりも拡げられた第1の記録媒体と第2の記録媒体との間(紙間)にヘッド31が位置している期間や、ヘッド31のノズル面を用紙搬送清掃するメンテナンス動作が行われている期間や、原稿の読取動作中などに実行させることもできる。
【0086】
なお、本実施の形態による制御部90では、ポンプにおける正圧と負圧の切り替えだけでなく、印字していないヘッド(ブラックインクしか使用しないモノクロ印字モードでの印刷時におけるカラー用ヘッド)や、カラー印字モードでの印刷時に使用しないブラック用ヘッドに対してインク供給する系の切り替えを行う(吐出動作を行っていない状態のヘッドだけについての、圧力状態の切り替え)こともできる。
【0087】
インクジェット方式の画像形成装置においては、用紙の波打ちを防いだり画像濃度を確保したりする目的で、インクの記録媒体Pへの浸透をコントロールするために、前処理液(吐出液に相当)を記録媒体Pに塗布する場合がある。このとき、無色透明な前処理液はインクとは異なり、記録媒体P上では不可視であるため、ヘッド内の異物などの影響が現れにくい。そのため、制御部90 は、前処理液を吐出するヘッドについては、他のインクを使用するヘッドよりも循環流量または循環圧力を減らして、上述の循環方向切り替え動作の回数(単位時間当たりの切り替え回数)を減らすように制御することも可能である。
【0088】
このように、インクを変質させることなく、かつポンプの脈動の影響が画質に影響を及ぼさないようにしつつ、ヘッドにインクを循環供給することが可能となる。また、インク吐出によるヘッド内のインク量の減少に伴って新しいインクをヘッドに供給する場合に、長い循環時間を確保することができる。また、循環動作の切り替えの際に生じる圧力変動が、画質に与える影響を最小限にすることができる。
【0089】
なお、図20および図21では、本実施の形態による画像形成装置におけるインク供給系の一構成例を示したが、必ずしもこれに限られるものではない。図30は、図20にて示した例とは異なる構成のインク供給ブロックを示す図であり、図31は、図30にて示す構成のインク供給系における動作を示すタイミングチャートである。
【0090】
図30に示す構成では、ヘッド31の上流側に位置する上流側チャンバ42aに圧力調整するためのポンプが接続されておらず、ヘッド31からのインクの回収およびヘッド31へのインクの循環供給は、基本的に下流側チャンバ42eに接続されている正逆転可能な下流側ポンプ42iによって行われる。
【0091】
図31に示すように、図30に示す構成のインク供給系では、制御部90は、まずインク供給弁43aを開放させ、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放した状態で、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせる。これにより、インクをヘッド31内に供給する(インク充填)。
【0092】
制御部90は、所定の待機時間の経過後、印字動作の開始に伴い、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させた状態で、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせ、ヘッド31に安定的なインク供給を行わせる(印刷中循環1)。
【0093】
続いて、制御部90は、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させたままで、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を正圧にさせ、下流側チャンバ42e内のインクを上流側チャンバ42aに送り込ませる(印刷中循環2)。
【0094】
そして、制御部90は、上流側大気開放弁42jによって上流側チャンバ42a内の圧力を大気圧に開放させたままで、インク供給弁43aを開放させ、下流側ポンプ42iによって下流側チャンバ42e内を負圧にさせる(印刷中循環1)。
【0095】
その後、待機状態を経て、初期状態へと戻る。
【0096】
もちろん、図20および図21、図30および図31にて例示したインク供給系の構成に限らず、図20および図30に示す構成ではポンプに担わせていたような動作の一部を、ポンプを利用することなく水頭差を利用して実現するような構成を採用することもできることは言うまでも無い。
【0097】
図32は、メンテナンス部50における動作を示すタイミングチャートである。
【0098】
本実施の形態における動作は、以下のようになる。
【0099】
通常待機状態(初期状態)では、ヘッド31のインク吐出面はキャップされている状態である(図32における「キャップ状態」)。メンテナンス動作開始の指示が制御部90から与えられると、まずカム機構部56(当接離間機構に相当)における駆動源モータ56aを駆動してステージ57を下降させる(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「全退避状態」)。これでメンテナンス本体部51は、ヘッド吐出面から退避した状態で、リニアシャフト52bに沿って水平移動可能となる。このような当接離間機構の機能により、キャップ部53およびサクション部54と、ヘッド31のノズル面とを、当接離間可能に相対移動させることができる。
【0100】
続いて、制御部90は、駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51をサクション位置まで移動させてから(図32における「サクション位置まで移動」)、駆動源モータ56aを駆動してステージ57を上昇させて、ヘッド吐出面にサクション用ゴム部54aを押し当てる(図32における「サクション状態」)。そして、制御部90は、ヘッド31におけるパージ動作時もしくはパージ動作後に、ポンプ52fを動作させてサクション処理を実行させる(図32における「サクション」)。サクションされた廃インクは、チューブ54eを通って廃インクタンク2eに溜まる。
【0101】
このとき、上記サクション動作は、制御部90(保守要否判定部)にて、把握可能なヘッド31の使用状況(稼動状態に関する情報)に応じて実行回数(各ヘッドにおけるメンテナンスの要否)を増減させるようにしてもよい。モノクロ印字しか行われなかった場合には、制御部90(吸引制御部)は、当該モノクロ印字動作の直後に、ブラックのインクを吐出するヘッドについてのみサクション動作を行わせる。この他、所定期間以上インクを吐出することなく放置されていたヘッドについてのみサクション動作を行わせるようにしてもよい。また、所定期間内に印字動作を行ったヘッドについてのみサクション動作を行わせるようにしてもよい。
【0102】
なお、本実施の形態のように前処理液を塗布する構成を採用する場合において、上記前処理液を吐出するヘッドにおける吐出不良が発生しても画質に致命的な問題を及ぼすことはないため、制御部90にて、前処理液を吐出するヘッドのサクション動作回数を、インクを吐出するヘッドよりも少なくするように制御してもよい。
【0103】
次に、各ヘッドに対するサクション動作が終了したら、カム機構部56における駆動源モータ56aを駆動してブレード55aを上昇させる(同時にステージ57は下降する)(図32における「ステージ57下がる」)。駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51をワイプ開始位置まで移動させる(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「ワイプ位置に移動」)。制御部90は、駆動源モータ52aを駆動して、メンテナンス本体部51をそのままワイプ終了位置まで移動させることで、ヘッド吐出面の廃インクを拭取る(図32におけるメンテナンス部51の(4)の「ワイプ終了」)。
【0104】
ここで、制御部90は、メンテナンス本体部51を停止させて、駆動源モータ56aを駆動してカム機構部56によりブレード55aを下げる。このとき、ブレード55aは、可動部55iにより55fと55gのシャフトに挟まれてしごかれ(図32における「ブレード55a清掃」)、廃インクがブロック55bに溜まる。
【0105】
続いて、サクション部54aを下降させ、次にメンテナンスすべき隣のヘッドへ向けて移動する。このような処理を繰り返すことにより、すべてのヘッドに対してメンテナンス処理を施す。
【0106】
最後に、制御部90は、駆動源モータ52aを駆動してメンテナンス本体部51を初期位置(キャップ/サクション位置)に移動させて(図32におけるメンテナンス部51の(3)の「初期位置に移動」)、駆動源モータ56aを駆動してすべてのヘッド31をキャップ状態にする(図32における「キャップ状態」)。ただし、制御部90(退避制御部)は、印刷開始時には、メンテナンス本体部51を退避位置に移動させて待機させる(図32における「待機位置」)。
【0107】
図32においてステージ57の(1)は上昇状態を示し、(2)は下降状態を示している。また、ブレード55aの(1)は下降状態を示し、(2)は上昇状態を示している。さらに稼動シャフト55gの(1)は固定シャフト55fとの間が開放状態を示し、(2)は閉鎖状態を示している。
【0108】
なお、通常は、ヘッド31は画像形成装置本体に対して相対移動しないように固定的に配置されている。しかしながら、ヘッド31の交換作業など、画像形成装置の保守点検等を行う際には、ヘッド搭載部30をメンテナンス可能な位置(印字位置および待機位置以外の他の位置)まで引き出す(ヘッド移動機構)必要がある。ここでは、一例として、駆動源モータ52a、メンテナンス本体部51、リニアシャフト52b、駆動ベルト52c等によって「ヘッド移動機構」が構成されているものとする。
【0109】
図33は、ヘッド31がメンテナンス可能な位置まで引き出されている状態を示す断面図であり、図34は、ヘッド31とキャップ部53とが一体となっている状態を示す概略図である。このように、本実施の形態では、複数のヘッド31の全てのノズル面を、複数のキャップ部53によって同時にキャッピングすることが可能となっている。
【0110】
本実施の形態による画像形成装置では、画像形成動作を行わない待機時には、メンテナンス本体部51はキャップ状態となっており、ヘッド31のノズル面をキャップ部53が密閉している。本実施の形態では、ヘッド31をメンテナンス可能な位置まで引き出す際に、キャップ部53がヘッド31のノズル面に密着した状態のままで、リニアシャフト52bに沿ってメンテナンス本体部51と一体的に移動する。このように、制御部90(退避制御部)は、ヘッド31により印字動作が実行されているときにのみ、当接離間機構によってキャップ部53をヘッド31のノズル面から退避させることができる。
【0111】
ここでは、キャップ部53が搭載されているメンテナンス本体部51が、当接離間機構によって、ヘッド31と一体的に移動する構成が例示されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、当接離間機構の機能により、キャップ部53単体がヘッド31と一体的に移動する構成を採用することもできることは言うまでもない。
【0112】
図35は、本実施の形態におけるヘッドメンテナンス動作の一例を示す図である。
【0113】
本実施の形態による画像形成装置が備えるサクションノズルは、図35に示すように、ヘッドのノズルを構成する複数のノズル孔全てを同時に吸引することができる。すなわち、本実施の形態によれば、ヘッドの複数のノズル孔を走査する必要がないため、ヘッドにおけるノズル孔が形成されている面を傷つけることがない。また、複数のノズル孔の内の一部の孔しか一度に吸引できない構成の従来のサクションノズルによるサクション動作に比べて短い時間でサクション動作を完了することができる。
【0114】
また、本実施の形態による画像形成装置では、ノズル面の乾燥を防ぐためのキャップ部のみをヘッドの個数と同数配置するスペース効率の良い構成を採用することにより、必要最小限の構成で高効率なメンテナンス動作を実現している。また、メンテナンス時にキャップ部によってヘッドのノズルをキャップしたままの状態でメンテナンス位置まで移動させることのできる構成となっており、ノズル面を乾燥させることなくメンテナンス操作を実行することができる。
【0115】
続いて、制御部90の構成について、図36〜図39を用いて説明する。制御部90は、本実施の形態による画像形成装置における動作シーケンスを制御する第1の制御部91と、記録媒体P上に形成すべき画像データを生成し、当該画像データをヘッド31に送信する画像形成基板である画像形成部92と、本実施の形態による画像形成装置に備わる各種機構系を駆動するモータの駆動制御を行う主制御部93と、を備えている。第1の制御部91は、画像形成部92や主制御基盤である主制御部93における動作シーケンスの制御、画像データの送信制御などを行う。
【0116】
画像形成部92は、送信されてきた画像データを、ヘッド31における印字動作を制御するための印字信号に変換し、ヘッド31に送信する。ヘッド31は、画像形成部92から送信される印字信号に基づいて駆動され、記録媒体P上にインク画像を形成する。主制御部93は、本実施の形態による画像形成装置に備わるモータやセンサ類と接続されており、画像形成装置が備える各ユニットに所望の動作をさせるための制御を行う。また、主制御部93には、上記モータ類の駆動に利用される電源供給部やドライバなども含まれている。主制御部には、メンテナンス部50、媒体搬送部20、インク供給部40の構成要素である、モータやセンサ類がそれぞれ接続されている。
【0117】
<キャッピング機構>
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるキャップ部53の構成の詳細について説明する。
【0118】
本実施の形態による画像形成装置では、ヘッドのノズル内のインクが乾燥することによる目詰まりや、塵による目詰まりからノズルを保護するために、ノズルを外気から遮断するためのキャップ部53を用いたキャッピング機構が採用されている。
【0119】
図40〜図45は、メンテナンス本体部51におけるヘッド31とキャップ部53(キャップ装置)の構成について説明するための図である。
【0120】
図40は、ヘッド31とキャップ部53の構成を模式的に表した斜視図である。
【0121】
具体的に、キャップ部53は、ヘッド31に当接するゴム部53aと、ゴム部53aが固定される本体部53bと、大気連通孔部53gと、保湿材53hと、を備えている。
【0122】
キャップ部53は、メンテナンス動作の終了時、メンテナンス動作の待機時、印字動作終了時、などにヘッド31のノズルオリフィスを保護(乾燥防止など)するために矢印方向に摺動し、ヘッド31の下面に密着(キャッピング)するようになっている。
【0123】
本体部53bは、ヘッド31のノズルをキャッピングする際にノズル31と対向する側(上側)に開口が形成されているとともに、ノズル31をキャッピングしている状態においてキャップ部53内と大気とを連通させる大気連通孔部53gが壁面に形成されている箱状の部材である。
【0124】
ゴム部53a(キャップ部)は、本体部53bの開口が形成されている側に設けられ、ノズルのキャッピング時にヘッド31のノズル周囲に当接し、本体部53bと協働してノズルを密閉する。
【0125】
大気連通孔部53gは、本体部53bの壁面からキャップ内へ向けて筒状に突出しており、該筒状部分の外周面および端面の内の少なくともいずれかの面の少なくとも一部に撥水処理が施されている。
【0126】
図41は、ヘッド31とキャップ部53が離間している状態における縦断面図であり、図42は、ヘッド31とキャップ部53が密着している状態における縦断面図である。
【0127】
例えば図41に示すように、大気連通孔部53gの外周上部縁は、本体部53b内部の底面よりも高い高さ位置になるように形成されている。なお図44、図45からわかるように、大気連通孔部53gの筒状部分の外周面の少なくとも一部は、本体部53bの壁面と一体的に形成してもよい。
【0128】
また図43に示すように、大気連通孔部53gは、ヘッド31のノズルから吐出されるインクの吐出方向と直交する平面上において、インクの吐出位置53iとは異なる位置に位置するように形成されている。本体部53b内部の底面には、ノズルオリフィスの乾燥を防止するためのシート状保湿材53hが敷設されている。ここでのシート状保湿材53hとしては、吸液力の高いスポンジや不織布にグリセリンやエチレングリコールなどの保湿剤を含浸させたシートを採用することができる。
【0129】
大気連通孔部53gの表面や内面には、水性インクをはじくように撥水化処理が施されている。ここで、大気連通孔部53gの撥水性を高める手法としては、撥水性の高い材料によって大気連通孔部53gを成型加工する手法や、ABSやアクリルなどを成型して形成されるキャップ部53の大気連通孔部53g部分の表面や内面に撥水膜を付着させる手法などが挙げられる。撥水膜の材料としては、例えば、シリコンオイル、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フラーレン化合物、シリコンーアクリルブロック共重合体などが挙げられるが、これに限られるものではなく、同様の撥水効果を発揮することのできる材料であれば採用可能である。
【0130】
本体部53b内部の底面における、大気連通孔部53gが形成されていない領域の少なくとも一部(少なくとも大気連通孔部53gの周囲)には、ノズルオリフィスの乾燥を防止するためのシート状保湿材53h(保湿シートに相当)が敷設されている。シート状保湿材53hとしては、吸液力の高いスポンジや、不織布にグリセリンやエチレングリコールなどの保湿剤を含浸させたシートなどを採用することができる。
【0131】
図45に示すキャップ部の構成では、本体部53bの内側の大気連通孔部53gの通気口を塞ぐように大気連通孔ガス透過膜53jが設けられている。
【0132】
ここでの大気連通孔ガス透過膜53jは、水性インク等の水分をはじく撥水化処理を施すことにより形成されている。具体的に、大気連通孔ガス透過膜53jは、水分を通さず、且つ、空気は通す膜のことを意味しており、脱気膜モジュールなどによく利用されている材料から形成されている。
【0133】
ここでの大気連通孔ガス透過膜53jとしては、例えば、三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社(登録商標)製の「MHF三層複合中空糸膜」を面上に形成したものや、日東電工株式会社(登録商標)製の「超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム サンマップ」や、株式会社ナック(登録商標)製の「モノトランフィルム」や、ジャパンゴアテックス株式会社(登録商標)製の「XCR(登録商標)」などを採用することができるが、必ずしもこれらに限られるものではなく、同様の効果を得られる材料であれば採用可能である。また、必要に応じて、大気連通孔ガス透過膜53jの表面に撥水性能を持たせることも考えられる。
【0134】
本実施の形態におけるキャッピング機構によれば、ヘッド31のノズル面をキャップし、ヘッド31のノズルの吐出口を密閉する際にも、大気連通孔部53gによりヘッド31内の圧力が外部に開放される。よって、ヘッド31のノズル面をキャップし、ヘッド31のノズルの吐出口を密閉する際、吐出口の気液界面で僅かな負圧により保持されるメニスカスが崩されてしまうといった不具合が発生することもない。
【0135】
また、本実施の形態によれば、シート状保湿材53hをキャップ部53内部の底面に敷き詰められているため、ヘッド31のオリフィスにおける気液界面での乾燥も防ぐことができる。
【0136】
また、キャップ部53の内部底面よりも高い高さ位置とした大気連通孔部53gの全周の縁表面を、水性インクを弾くように撥水化処理を施すことで、キャップ内部で飛び散った霧状のインクが、大気連通孔部53gの孔内に進入することを抑制することができる。
【0137】
また、大気連通孔部53gの上面部入口付近に蓋をするように撥水化処理を施すことにより、キャップ内部で飛び散ったミスト状のインクが大気連通孔部53gの孔内に進入することを抑制することができるという効果も奏する。
【0138】
メンテナンス部50のキャップ部53を上述のような構成とすることにより、キャップ部53内部の底面に形成されている大気連通孔部53gの外周面等にヘッドのノズル近傍から飛び散ったり偶然垂れたりしたインクが付着した場合でも、撥水性を有する表面によってはじかれる。これにより、キャップ部53内にインク溜りが生ずることが無く、大気連通孔部53g内部へのインクの侵入を防ぐことができるため、大気連通孔部をインクで塞れて大気と連通しなくなるといった事態を回避することができる。
【0139】
また、キャップ部53によって密閉されたノズルは、常に高湿環境を維持することができ、且つ大気とは常に連通しているため、温度変化等に起因するキャップ内の圧力変化によりヘッドのノズルのオリフィス内部の気液界面であるメニスカスが破壊されるといったこともない。また、ヘッド31のノズルにおける気泡の巻き込みやインクの垂れなどによって次の吐出動作に影響を及ぼしてしまうといった問題も発生することがない。ひいては、間欠吐出性能および連続吐出性能に優れたインクジェット記録装置を提供するこができる。
【0140】
<ヘッド位置調整機構>
【0141】
次に、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッド位置の調整機構について、詳細に説明する。
【0142】
図46〜図48は、本実施の形態による画像形成装置におけるヘッドの配置および位置調整機構について説明するための図である。
【0143】
ヘッド31は、ノズルが主走査方向(記録媒体Pを搬送する方向と直交する方向)と平行になるように、ヘッドベース32上に配置されている。記録媒体P上に画像を形成する範囲はヘッド31の幅よりも広いため、主操作方向に複数のヘッド31を配置する必要がある。
【0144】
これら複数のヘッド31は、隣接するヘッド31間に印字できない領域が発生することを回避するため、ヘッド31のノズル方向に、所定のノズル数分だけオーバラップさせた状態で配置されている。
【0145】
また、本実施の形態では、図46 に示すように、記録媒体P上に形成する画像の解像度を向上させるために、同一形状のヘッドを、主走査方向に1ドット分だけ位置をずらすようにして配列している(いわゆる、千鳥状の配列)。ヘッドベース32上に配列される複数のヘッドの内の少なくとも1つは、そのヘッドベース32上における各ヘッドの位置決め等を行うための基準となる基準ヘッドに設定されている。
【0146】
ヘッドベース32上における各ヘッドの位置調整としては、記録媒体Pの搬送方向に対する傾き、ヘッド間の相対傾き、主走査方向におけるヘッド同士の相対位置の3つがある。
【0147】
各ヘッドの位置調整の手順としては、以下のような手順が挙げられる。
【0148】
まず、各ヘッドを、ヘッドベース32上の調整センタ位置(ヘッド位置決め部)に合わせて、治具などを用いて概ね位置調整した状態でヘッドベース32上に仮固定する。次に、記録媒体Pの搬送方向に対して、若しくはヘッドベース32に形成されている基準穴に対して、基準ヘッド31Aの傾きを調整する(ヘッド角度調整機構)。主走査方向におけるヘッドベース32に対する基準ヘッド31Aの位置は、ヘッドベース32に設けられた位置決めピン101(基準ヘッド位置決め部に相当)を基準ヘッド31Aに形成された嵌合孔101h(位置決め用孔部、被位置決め部に相当)に挿嵌することによって決められている。すなわち、基準ヘッド31Aの主走査方向の位置決めについては無調整になっている。固定ピン101は、中心にネジ穴があいており、ここにネジ(図示しない)を固定することによってヘッドベース32にヘッド31を固定する構造になっている。
【0149】
基準ヘッド31Aの位置決め部103に調整治具を当接または勘合させ、基準ヘッド31Aを固定ピン101を中心として回動させ、インク吐出方向と直交する水平面内における基準ヘッド31Aの角度(主走査方向に対する傾き)を調整する。
【0150】
次に、基準ヘッド31Aに対して、他のヘッド31Bの、主走査方向の位置を調整する。基準ヘッド31A以外のヘッドでは、固定ピン101が、ヘッドベース32に対して移動可能な調整部材104に固定されており、ヘッドのノズル孔が配列されている方向に移動可能となっている(ヘッド位置調整機構)。
【0151】
まず、調整部材104に調整治具(図示しない)を当接させた状態で移動させ、主走査方向におけるヘッド位置調整を行なう。その後、基準ヘッド31Aに対する傾き調整を行う(ヘッド角度調整機構)。この傾き調整は基準ヘッド31Aの傾き調整と同じ方法で行う。
【0152】
もし、この調整で主走査方向の基準位置がずれた場合、再度主走査方向位置と傾きを調整するという作業を繰り返す。ヘッドの位置が所望の位置に到達した時点で、ネジなどを用いてヘッド31Bをヘッドベース32上のヘッド位置決め部に固定する。このように、本実施の形態では、基準ヘッド31Aが装着されるべき部位(基準ヘッド位置決め部)が、基準ヘッド31Aの被位置決め部と協働して、基準ヘッド31Aを他のヘッド31Bよりも低い位置調整自由度で位置決めする。
【0153】
ヘッド31に形成されているノズル孔と、ヘッド31のヘッドベース32への位置決めを行う部材との間での位置決め精度を十分に確保することができる場合、記録媒体Pの搬送方向に対する基準ヘッド31Aの傾きについて、ピンなどによる機械的な位置決めのみを行い、傾き調整を行うことなく無調整で、ヘッド31をヘッドベース32に対して固定することも可能である。なお、本実施の形態では、ヘッド搭載部30においてヘッドベース32が別部材となっているが、必ずしもこれに限られるものではなく、一体的に形成してもよい。また、本実施の形態においては、ヘッドベースおよびヘッド搭載部のいずれもが、請求項における「ヘッドベース」もしくは「基準ヘッドベース」に相当し得るものとする。
【0154】
また、本実施の形態による画像形成装置では、カラー画像を形成するために、複数のヘッド31が搭載されているヘッド搭載部30を複数備えているため、これらヘッド搭載部間での位置調整が必要である。これら複数のヘッド搭載部の中でも、基準となるヘッド搭載部(ここでは、ヘッド搭載部30A)が決められており、ヘッド31の位置決めと同様に、基準ヘッド搭載部30A(請求項における基準ヘッドベースに相当)を基準として、他の複数のヘッド搭載部30Bの、主走査方向におけるヘッド搭載部間での位置調整や傾き調整を行う。基準ヘッド搭載部30Aは、画像形成装置本体に固定されている位置決めピン106(基準ヘッドベース保持部)を、基準ヘッド搭載部30Aに形成されている嵌合孔106h(ベース側被位置決め部、位置決め用孔部)に挿嵌することによって画像形成装置本体に対して位置決めされる。また、基準ヘッド搭載部30Aの、記録媒体Pの搬送方向に対する傾きをカム109によって調整する(ベース角度調整機構)。
【0155】
その他のヘッド搭載部30Bについては、画像形成装置本体に対して固定されているピンが、単なる位置決めのためだけではなく、ヘッドについての傾き調整の回動中心107としても利用される構成となっている。当該回動中心107に設定されているピンは、カム108によって主走査方向の位置を調整する構造を持っている(ベース位置調整機構)。
【0156】
ヘッド搭載部についても同様に、ヘッド搭載部に形成される孔に、画像形成装置本体に固定されている位置決めピン106を挿入することによるヘッド搭載部の位置決め精度が十分である場合、記録媒体Pの搬送方向に対する基準ヘッド搭載部30Aの傾きについて、位置決めピン106などによる機械的な位置決めのみを行い、傾き調整を行うことなく無調整で、ヘッド搭載部30を画像形成装置本体に対して固定することも可能である。
【0157】
ヘッドおよびヘッド搭載部の位置決めを上述のような構成によって実現することにより、強い衝撃が画像形成装置に加わった場合でも、基準ヘッドがピンによってヘッド搭載部に位置決めされているため、ヘッド位置のズレが発生することがない。また、ヘッド位置やヘッド搭載部の位置を再度調整したい場合には、基準となるヘッドやヘッド搭載部に合わせた調整を行えばよく、再調整を容易に行うことができる。
【0158】
なお、本実施の形態では、ヘッド、ヘッドベース、ヘッド搭載部に嵌合孔が形成され、ヘッドベースや画像形成装置本体側に位置決め用のピンが設けられている構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ヘッド、ヘッドベース、ヘッド搭載部にピンが設けられ、ヘッドベースや画像形成装置本体側に位置決め用の嵌合孔(位置決め用孔部)が形成されている構成を採用することも可能である。
【0159】
このように本実施の形態によれば、以下のような構成を有する画像形成装置を提供することができる。
(1).記録媒体を搬送する媒体搬送部と、
前記媒体搬送部に対向する側に形成されるノズルから、前記媒体搬送部により搬送される記録媒体上に吐出液を吐出するヘッドと、
前記媒体搬送部による記録媒体の搬送方向における前記ヘッドの下流側近傍であり且つ前記ヘッドのノズルよりも前記媒体搬送部に近接する位置に配置され、前記記録媒体の前記媒体搬送部側から前記ノズル側へ向かう反りを規制する規制部材と、
を備える画像形成装置。
(2).(1)に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドは、前記媒体搬送部に対して所定の位置関係を保持可能なヘッドベースに装着されるものであり、
前記規制部材は、前記ヘッドベースに装着されている画像形成装置。
(3).(1)に記載の画像形成装置において、
前記規制部材は、前記媒体搬送部によって搬送される記録媒体に対して点接触しながら、前記記録媒体の前記媒体搬送部側から前記ノズル側へ向かう反りを規制する画像形成装置。
(4).(3)に記載の画像形成装置において、
前記規制部材は、前記媒体搬送部による記録媒体の搬送方向と直交する方向の回転軸を中心として回転自在に支持されるスターホイールを備える画像形成装置。
【0160】
<ヘッドからの廃液の分別回収>
次に、本実施の形態による画像形成装置における、インクの廃液を分離回収する機構について、詳細に説明する。
【0161】
インクジェット方式を採用する画像形成装置において、ヘッドをメンテナンスする際に生ずる廃インク等を所定のタンク内に収容することが考えられる。
【0162】
しかしながら、ヘッドから回収されるのがインクだけでなく前処理液も含む場合、これらインクと前処理液が混ざり合うと固化してしまうという問題がある。そこで、本実施の形態による画像形成装置では、以下のような構成により、上記問題点を解決することとしている。
【0163】
(第1実施例)
まず、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1実施例について説明する。図49は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第1の実施例について説明するための図である。
【0164】
本実施の形態による画像形成装置は、ヘッド31の近傍に廃インク受け1iを備えており、この廃インク受け1iにより、ヘッド31のメンテナンス動作に伴って廃棄されるインク(廃インク)を受ける。具体的に、廃インク受け1iは、サクション部54aによるサクション動作によってヘッド31から吸い取られるインク等を受ける。
【0165】
廃インク受け1iには、インク回収経路1aが接続されている。廃インク受け1iへと排出された廃インクは、インク回収経路1aを通じて廃液タンク1dへと排出される。
【0166】
また、本実施の形態による画像形成装置は、ヘッド31の近傍に廃前処理液受1sを備えており、この廃前処理液受1sにより、ヘッド31のメンテナンス動作に伴って廃棄される前処理液(廃前処理液)を受ける。
【0167】
廃前処理液受1sには、廃前処理液回収経路1bが接続されている。廃前処理液受1sへと排出された廃前処理液は、廃前処理液回収経路1bを通じて廃液タンク1dへと排出される。
【0168】
また、本実施例における廃液タンク1dは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、圧力開放弁1cを備えている。
【0169】
このような構成によれば、インク回収経路1aを通じて回収される廃インクと、廃前処理液回収経路1bを通じて回収される廃前処理液とを個別の収容口から収容するため、廃インクと廃前処理液とが廃液タンク1dに到達するまでの経路において接触することがなく、回収経路中で廃インクと廃前処理液とが接触することにより固化し、回収経路が詰まってしまう事態の発生を回避することができる。
【0170】
(第2実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2実施例について説明する。図50は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第2の実施例について説明するための図である。以下、上述した第1実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。
【0171】
本実施の形態による画像形成装置では、上記第1実施例とは異なり、廃インク受け1iから廃インクを受け入れる廃インクタンク2eと、廃前処理液受1sから廃前処理液を受け入れる廃前処理液タンク2fとが、個別に用意されている。
【0172】
具体的に、第2実施例においては、廃インク受け1iには、インク回収経路2aが接続されている。廃インク受け1iへと排出された廃インクは、インク回収経路2aを通じて廃インクタンク2eへと排出される。
【0173】
また、廃前処理液受1sには、廃前処理液回収経路2bが接続されている。廃前処理液受1sへと排出された廃前処理液は、廃前処理液回収経路2bを通じて廃前処理液タンク2fへと排出される。
【0174】
また、本実施例における廃インクタンク2eおよび廃前処理液タンク2fは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、それぞれが圧力開放弁2cおよび圧力開放弁2dを備えている。
【0175】
このような構成によれば、第1の実施例と同様の効果が得られる。また、廃インクと廃前処理液とは、それぞれが個別の専用タンクに受け入れられるため、廃インクと廃前処理液とがタンク中で混ざり合って固化してしまうといった事態を回避することができる。
【0176】
また、廃インクと廃前処理液とを、それぞれ別々のタンクに回収するため、これら回収した液をフィルタ等を介して再度ヘッドまで循環供給させることにより、後の画像形成処理にて再利用することも可能である。
【0177】
(第3実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3実施例について説明する。本実施例は、上述した第2実施例の変形例である。図51は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第3の実施例について説明するための図である。以下、上述した第2実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。
【0178】
本実施例による画像形成装置では、上記第2実施例とは異なり、廃インクタンク3eにおける廃インクを受け入れ可能な容量と廃前処理液タンク3fにおける廃前処理液を受け入れ可能な容量とが異なっている。
【0179】
シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のインクを吐出する記録用のヘッドでは画像を形成する関係上、前処理液用のヘッドから排出される廃前処理液の量と比較すると多量の廃インクを排出する。
【0180】
一例を挙げると、ヘッドにて形成可能な像の色がCMYKの4色である場合、廃インクの量は廃前処理液の約4倍となる。この場合、廃インクタンク3eの容積を廃前処理液タンク3fの4倍とする(廃前処理液タンクの容量を、廃インクタンクよりも少なくする)ことが好ましい。
【0181】
このように、本実施例によれば、上記第2実施例の構成による効果に加え、廃インクタンク3eと廃前処理液タンク3fの容積の比が、廃インクの量と廃前処理液の量の比と同様に設定されているため、それぞれの廃インクタンクの交換タイミングを略同じ時期に揃えることができる。また、本実施例の構成とすることにより、廃インクタンクの交換頻度を低くすることもできるという効果を奏する。
【0182】
(第4実施例)
続いて、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4実施例について説明する。図52は、本実施の形態におけるインクの廃液分離機構の第4の実施例について説明するための図である。以下、上述した第2実施例と同様な機能を有する部分には同一符号を付し、説明は省略する。本実施例は、上記第2実施例の変形例である。
【0183】
第4実施例による画像形成装置においても、廃インク受け1iから廃インクを受け入れる廃インクタンク4eと、廃前処理液受1sから廃前処理液を受け入れる廃前処理液タンク4fとが、個別に用意されている。
【0184】
また、本実施例における廃インクタンク4eおよび廃前処理液タンク4fは、廃インクおよび廃前処理液を受け入れ可能な適正な内圧を維持するために、それぞれが圧力開放弁4cおよび圧力開放弁4dを備えている。
【0185】
このような構成とすることにより、第2実施例による効果に加え、廃インクタンク4eと廃前処理液タンク4fとがタンク内を連通させない状態で一体的に形成されているため、廃インクタンク4eおよび廃前処理液タンク4fの交換を同時に行うことができる
という効果を奏する。
【0186】
また、これら実施例において、画像形成装置内にヒータ等の熱源(熱源部)を配置し、廃液タンクを、当該熱源の近傍に配置することで、廃液タンク内の廃液を室温下での場合よりも早く蒸発させ、廃液タンクの容積を確保するようにしてもよい。
【0187】
<カバー開閉機構>
次に、本実施の形態による画像形成装置のカバー開閉機構について説明する。
【0188】
インクジェット方式を採用する従来の画像形成装置では、ヘッドをメンテナンスしたり、ノズルに近接して記録媒体を搬送したりする際に、メンテナンスユニットや搬送ユニットなどを機体内で移動するということが行われている。
【0189】
具体的には、本実施の形態による画像形成装置においては、メンテナンス部50や媒体搬送部20などが、画像形成装置にて実行される動作モードに応じて移動可能に構成されている。また、装置の動作モード以外に、紙詰まり等のエラーが発生した場合においても、当該エラーを解除するために、ヘッド31および媒体搬送部20の内の少なくともいずれかを移動して作業スペースを確保することも考えられる。
【0190】
本実施の形態による画像形成装置では、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)にライン状に配列されているヘッド群全体によって、記録媒体Pの幅方向における全範囲を一度に印刷することが可能となっている。このような構成においけるヘッド群全体としての幅方向におけるサイズは、記録媒体Pの幅方向における最大印字対象範囲と同じ大きさであり、このような大きいユニットをユーザが狭い装置内に手を入れて手動で動かすことは困難である。また、上記ユニットを自動で動かす構成を採用した場合においても、上記ユニットが移動している最中にカバーを開けてしまうと、インターロックが作動して移動していたユニットが移動途中で停止してしまう。このように移動途中で停止してしまったユニットをメンテナンスすることは困難であり、また、無理にその状態で作業することによって手を汚してしまうおそれがある。
【0191】
このような問題点に鑑み、本実施の形態による画像形成装置では、以下のような構成を採用している。
【0192】
図53〜図57を用いて、本実施の形態におけるカバー開閉機構の詳細について説明する。
【0193】
本実施の形態による画像形成装置では、画像形成装置の外壁をなす構造の固定カバー100、可動カバー101、が装置本体を覆っている。
【0194】
可動カバー101は、保守点検や装置内における紙詰まり解除などのために開閉可能な構造になっており、可動カバー100は画像形成装置本体に対して固定されている。
【0195】
可動カバー101と画像形成装置本体との間には、可動カバー101が開かないように装置本体に対してロックするためのロック機構Uが設けられている。
【0196】
ロック機構Uは、制御部90により制御されるソレノイドUa(またはこれに相当する機構部品)によって、係合部材Ubを所定の回転軸を中心として回転させ、可動カバー101に設けられている被係合部Ucと係合したロック状態と、係合を解除したロック解除状態とを切り替える。本発明の内容を逸脱しない範囲において、ロック機構Uはその他の形態でも構わない。
【0197】
通常、媒体搬送部は、「印字位置」もしくは「待機位置」のいずれか一方の位置にいるが、その状態ではカバーはロックされておらず、ユーザはカバー100を任意に開放することができる(図54)。
【0198】
一方、媒体搬送部が、「印字位置」から「待機位置」に、もしくは「待機位置」から「印字位置」に遷移しつつある過渡状態においては、カバーロック信号が制御部90から発信され、可動カバー101がロックされる(図53)。
【0199】
本実施の形態による画像形成装置のカバー開閉機構の動作について説明するためのフローチャートを図57に示す。
【0200】
まず、媒体搬送部やメンテナンス部50といった内部ユニットの移動開始を示す信号(Act101)に基づいて、可動カバー101のロック機構が動作し、可動カバー101が開かなくなる(Act102)。
【0201】
内部ユニットの移動(Act103)が終了すると(Act104,Y)、可動カバー101のロックが解除され(Act105)、カバーを開くことができるようになる。
【0202】
ユーザなどが可動カバー101を開いて作業を行い、その後、可動カバー101が再度閉じられたことを検知して(Act106)、待機状態に復帰するために内部ユニットが移動する。この間、さきと同様にカバーはロックされ続け(Act107)、待機状態になった時点(Act108,Y)で可動カバー101のロックが解除される(Act109)。
【0203】
本実施の形態における、これら一連の動作の具体的な例として、用紙詰まりが発生した場合に、媒体搬送部は、記録媒体Pの取り出しなどの作業スペースを確保するために下降する。この間、可動カバー101はロックされており、装置内部にアクセスすることはできない(図56)。
【0204】
完全に媒体搬送部が下降し、作業スペースが安全に確保できた時点で可動カバー101のロックが解除され、記録媒体Pを取り除くことができる。そして、エラーが解除され、媒体搬送部が「待機位置」もしくは「印字位置」に到達した時点で可動カバー101のロックが解除される(図55)。
【0205】
また、メンテナンス部50に関して、「初期位置」もしくは「退避位置」に到達して停止するまでの間、可動カバー101が装置本体に対してロックされた状態になり、インクで汚れたメンテナンス部50が中途半端な位置にある状態で触れることができないようにすることもできる。
【0206】
また、本実施の形態では、装置カバーを開閉可能な部分が可動カバー101のみである構成を例示したが、これに限られるものではなく、複数個所を開閉可能なように、複数の可動カバーを設けるようにしてもよい。この場合、装置内部の移動ユニットの現在位置あるいはメンテナンス部50(移動ユニット)がこれから移動すべき位置に応じて、メンテナンス作業に適した可動カバーを選択的に開閉できるようにしてもよい。ここでのメンテナンス部50がこれから移動すべき位置に関する情報は、制御部90(情報取得部)にて取得することができる。
【0207】
このように、本実施の形態によれば、媒体搬送部20やメンテナンス部50の移動が完了するまではカバーが開かないようにロックされている。これにより、装置内部で上記のようなユニットが移動中に強制停止させられて、本来停止すべきでない位置に停止してしまっているような場合でも、装置内部にユーザが手を入れて、インクが付着したヘッドやメンテナンス部などに触れて手を汚すといった事態を回避することができる。
【0208】
このように、本実施の形態によれば、以下のような構成を有する画像形成装置を提供することができる。
(1)複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像形成装置内部にて移動可能な移動ユニットと、
前記移動ユニットを含む前記画像形成装置本体の一部を固定的に覆う固定カバーと、
前記移動ユニットを含む前記画像形成装置本体の前記固定カバーにより覆われていない部分の少なくとも一部を開閉可能に覆う開閉カバーと、
前記開閉カバーを開けないようにロック可能なロック部と、
前記移動ユニットが移動している間は、前記ロック部により前記開閉カバーを開けないようにロックさせるロック制御部と、
を備える画像形成装置。
(2).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットは、前記記録媒体を前記ヘッドに対して移動させる媒体搬送ユニットである画像形成装置。
(3).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットは、前記ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンスユニットである画像形成装置。
(4).(1)に記載の画像形成装置において、
前記開閉カバーは、前記画像形成装置本体の異なる複数の部位を覆う複数のカバーから構成され、前記ロック部は、これら複数のカバーそれぞれに個別に設けられており、
前記移動ユニットが移動すべき位置に関する情報を取得する情報取得部をさらに備え、
前記ロック制御部は、前記情報取得部にて取得される情報に基づいて、前記複数のカバーの内の前記取得される情報に対応づけられているカバーのロックを解除させる画像形成装置。
(5).(1)に記載の画像形成装置において、
前記移動ユニットが移動すべき位置とは、記録媒体が詰まった場合に前記移動ユニットが位置すべき待機位置または保守点検時に前記移動ユニットが位置すべき待機位置である画像形成装置。
【0209】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【0210】
複数のヘッドから吐出される吐出液により記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、複数のヘッドそれぞれのノズル面をメンテナンスする際に、ノズル面の傷みを防止し、良好な印字品質を維持することのできる技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0211】
31 ヘッド、51 メンテナンス本体部、52a 駆動源モータ、52b リニアシャフト、52c 駆動ベルト、53 キャップ部、54 サクション部、55 ワイプ部、56 カム機構部、90 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0212】
【特許文献1】特開2005−169989号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、
前記ヘッドのうち1つのヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、
前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記複数のヘッドそれぞれの稼動状態に関する情報に基づいて、各ヘッドにおけるメンテナンスの要否を判定する保守要否判定部と、
前記保守要否判定部にてメンテナンスが必要であると判定されるヘッドについてのみ吸引動作を行うように、前記サクション部による吸引処理を実行させる吸引制御部と、
をさらに備える画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記複数のヘッドは、前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドと、記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドとを含む画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記サクション部による吸引処理を施される回数が、インクを吐出するヘッドよりも前処理液を吐出するヘッドの方が少なくなるように、前記サクション部による吸引処理を実行させる吸引制御部をさらに備える画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドを、印字動作を行うときの印字位置と、印字動作を待機するときの待機位置と、前記印字位置および待機位置以外の他の位置と、の間を移動させるヘッド移動機構をさらに含む画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記当接離間機構は、前記ヘッド移動機構により前記ヘッドが前記他の位置に移動する際に、前記キャップ部を、前記ヘッドのノズル面をキャッピングさせた状態で前記ヘッドと共に移動させる画像形成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドにより印字動作が実行されている場合にのみ、前記当接離間機構によって前記キャップ部を前記ヘッドのノズル面から退避させる退避制御部をさらに備える画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドから、廃インクを回収するインク回収経路と、
前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドから、前記インク回収経路とは異なる経路で廃前処理液を回収する廃前処理液回収経路と、
前記インク回収経路を通じて回収される廃インクを収容する廃インクタンクと、
前記廃前処理液回収経路を通じて回収される廃前処理液を収容する廃前処理液タンクと、
を備えてなる画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記廃前処理液タンクは、前記廃インクタンクよりも容量が少ない画像形成装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記廃インクタンクと、前記廃前処理液タンクは、タンク内を連通させない状態で一体的に形成されている画像形成装置。
【請求項11】
吐出液をノズルから吐出するヘッドの前記ノズルを下方からキャッピングする画像形成装置において、
前記ノズルをキャッピングする際に前記ノズルと対向する側に開口が形成されているとともに、前記キャップ部によって前記ノズルをキャッピングしている状態で前記キャップ部内と大気とを連通させる部分に撥水処理が施されている大気連通孔部が壁面に形成されている箱状の本体部と、
前記本体部の前記開口が形成されている側に設けられ、前記ノズルのキャッピング時に前記ヘッドのノズル周囲に当接し、前記本体部と協働して該ノズルを密閉するキャップ部とを備えている画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記大気連通孔部は、前記本体部の壁面からキャップ内へ向けて筒状に突出しており、該筒状部分の外周面および端面の内の少なくともいずれかの面の少なくとも一部に撥水処理が施されている画像形成装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の内側の前記大気連通孔部の通気口は、前記ノズルをキャッピングしている状態において、前記本体部の底面における、前記ヘッドのノズルから落下する吐出液が入り込まない位置に形成されている画像形成装置。
【請求項14】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の底面における、前記大気連通孔部が形成されていない領域の少なくとも一部に敷設される保湿シートをさらに備える画像形成装置。
【請求項15】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の内側の前記大気連通孔部の通気口を塞ぐように設けられるガス透過膜をさらに備える画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数配列され、搬送される記録媒体上に、ノズル面に形成される複数のノズル孔から吐出液を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッド全てのノズル面を同時にキャッピングするキャップ部と、
前記ヘッドのうち1つのヘッドのノズル面の複数のノズル孔全てを同時に吸引するサクション部と、
前記キャップ部および前記サクション部と、前記ヘッドのノズル面とを、当接離間可能に相対移動させる当接離間機構と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記複数のヘッドそれぞれの稼動状態に関する情報に基づいて、各ヘッドにおけるメンテナンスの要否を判定する保守要否判定部と、
前記保守要否判定部にてメンテナンスが必要であると判定されるヘッドについてのみ吸引動作を行うように、前記サクション部による吸引処理を実行させる吸引制御部と、
をさらに備える画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記複数のヘッドは、前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドと、記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドとを含む画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記サクション部による吸引処理を施される回数が、インクを吐出するヘッドよりも前処理液を吐出するヘッドの方が少なくなるように、前記サクション部による吸引処理を実行させる吸引制御部をさらに備える画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドを、印字動作を行うときの印字位置と、印字動作を待機するときの待機位置と、前記印字位置および待機位置以外の他の位置と、の間を移動させるヘッド移動機構をさらに含む画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記当接離間機構は、前記ヘッド移動機構により前記ヘッドが前記他の位置に移動する際に、前記キャップ部を、前記ヘッドのノズル面をキャッピングさせた状態で前記ヘッドと共に移動させる画像形成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドにより印字動作が実行されている場合にのみ、前記当接離間機構によって前記キャップ部を前記ヘッドのノズル面から退避させる退避制御部をさらに備える画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体上に画像を形成するインクを吐出するヘッドから、廃インクを回収するインク回収経路と、
前記記録媒体上にインクを吐出する前に該記録媒体上に吐出すべき所定の前処理液を吐出するヘッドから、前記インク回収経路とは異なる経路で廃前処理液を回収する廃前処理液回収経路と、
前記インク回収経路を通じて回収される廃インクを収容する廃インクタンクと、
前記廃前処理液回収経路を通じて回収される廃前処理液を収容する廃前処理液タンクと、
を備えてなる画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記廃前処理液タンクは、前記廃インクタンクよりも容量が少ない画像形成装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記廃インクタンクと、前記廃前処理液タンクは、タンク内を連通させない状態で一体的に形成されている画像形成装置。
【請求項11】
吐出液をノズルから吐出するヘッドの前記ノズルを下方からキャッピングする画像形成装置において、
前記ノズルをキャッピングする際に前記ノズルと対向する側に開口が形成されているとともに、前記キャップ部によって前記ノズルをキャッピングしている状態で前記キャップ部内と大気とを連通させる部分に撥水処理が施されている大気連通孔部が壁面に形成されている箱状の本体部と、
前記本体部の前記開口が形成されている側に設けられ、前記ノズルのキャッピング時に前記ヘッドのノズル周囲に当接し、前記本体部と協働して該ノズルを密閉するキャップ部とを備えている画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記大気連通孔部は、前記本体部の壁面からキャップ内へ向けて筒状に突出しており、該筒状部分の外周面および端面の内の少なくともいずれかの面の少なくとも一部に撥水処理が施されている画像形成装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の内側の前記大気連通孔部の通気口は、前記ノズルをキャッピングしている状態において、前記本体部の底面における、前記ヘッドのノズルから落下する吐出液が入り込まない位置に形成されている画像形成装置。
【請求項14】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の底面における、前記大気連通孔部が形成されていない領域の少なくとも一部に敷設される保湿シートをさらに備える画像形成装置。
【請求項15】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記本体部の内側の前記大気連通孔部の通気口を塞ぐように設けられるガス透過膜をさらに備える画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図2】
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【図14】
【図15】
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【図43】
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【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【公開番号】特開2011−168041(P2011−168041A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63046(P2010−63046)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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