説明

画像形成装置

【課題】転写部前後の用紙搬送手段の影響による画像の位置ずれを防止する。
【解決手段】用紙が転写手段4と、レジスト手段3または定着手段5の、両方の影響を受けて搬送される第1の状態と、用紙が、少なくとも前記第1の状態で用紙に影響を与えているレジスト手段3または定着手段5の影響を受けずに搬送される第2の状態における用紙速度の差をセンサ6で検出する。その用紙速度の差を低減するように、レジスト手段3または定着手段5の速度を制御する。これにより、第1の状態と第2の状態における用紙速度の差を無くして画像の位置ずれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像形成装置の代表的なものとして、複数の像担持体をベルト転写手段(転写搬送ベルト)に対向させて並べて配置したタンデム方式のものが知られている。直接転写方式の場合、レジスト手段によって作像ユニットの像担持体上のトナー像とのタイミングを取られて用紙が転写搬送ベルトに向けて送り出され、用紙は転写搬送ベルトに保持された状態で搬送され、各色作像ユニットの像担持体との転写位置を通過し、各像担持体から各色トナー像が用紙上に順次重ねて転写される。
【0003】
トナー像が転写された用紙は、定着装置を通過することによって未定着トナー像が用紙上に定着される。現在、定着装置は熱定着装置が広く用いられており、用紙は定着部材と加圧部材に挟持されて搬送され、熱と圧力によって未定着トナー像が用紙上に定着される。
【0004】
ここで、転写搬送ベルトは用紙を搬送する機能を有しており、転写部用紙搬送手段ということができる。また、一般的にはローラ対として構成されるレジスト手段も用紙を搬送する機能を有しており、転写部の前(用紙搬送方向上流側)に位置する転写前用紙搬送手段ということができる。そして、定着手段も用紙を搬送する機能を有しており、転写部の後ろ(用紙搬送方向下流側)に位置する転写後用紙搬送手段ということができる。
【0005】
そして、転写部用紙搬送手段と、転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段との間に用紙搬送速度の差が存在する場合、用紙が転写部用紙搬送手段と転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の影響を受けている第1の状態と、用紙が転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段(少なくとも第1の状態で用紙に影響を与えている転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段)の影響を受けていない第2の状態とで、用紙の搬送速度が異なることがある。その場合は、それぞれの状態で転写された画像に位置ずれが生じる。これは、部品精度のばらつきや、用紙種類ごとの定着手段の温度条件の違いによる定着回転体(定着ローラ等)の径の変動が原因として挙げられる。
【0006】
用紙搬送速度の変動による画像の位置ずれに関しては、例えば特開2009−098267号公報(特許文献1)や特開2007−199342号公報(特許文献2)に記載がある。
【0007】
上記特許文献1には、カラー画像を形成するタンデム方式の画像形成装置において、無端状の転写ベルトに沿って、順次異なる色のトナー像を形成する画像形成部を配置し、転写ベルトにて、用紙を搬送していない状態で、第1の画像形成部によって形成したパターンを転写ベルトに転写し、用紙を搬送している状態で、別の第2の画像形成部によって形成したパターンを通常印刷時の所定の転写タイミングで転写ベルトに転写し、両パターンの相対的な位置ずれ情報を検出し、用紙への実際の印刷時に、位置ずれ情報に基づいて用紙の搬送速度を補正する技術が開示されている。これは、用紙を搬送していない状態で、転写ベルト上の位置合わせパターンを検出し、位置合わせ補正を実施した際と、用紙を転写ベルトにて搬送している通常印刷時のベルトの速度が異なることによる、画像の位置ずれを防止することを目的とするものである。この文献に記載の発明においては、通常印刷時に、用紙が転写ベルトの前に位置する搬送ローラのブレーキ負荷を受け、用紙を吸着している転写ベルトの速度も同時に影響を受けることで、搬送ローラの負荷を受けながら、用紙を搬送している転写ベルトの速度が、用紙を搬送していない状態の転写ベルトの速度よりも低下することを課題としている。
【0008】
上記特許文献2には、定着手段に突入した直後の記録媒体の搬送速度を検出する速度検出手段と、定着手段を通過する用紙の搬送速度を変更する速度変更手段を具備し、速度検出手段によって検出された定着手段に突入した直後の用紙の速度に基づき、速度変更手段によって、定着手段を通過中の用紙の搬送速度を変更して目標速度に合わせる技術が記載されている。これは、用紙の種類により、定着手段における用紙の搬送速度が変動してしまうことによる画像の位置ずれを防止することを目的とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、別々の画像形成部にてパターンを形成する為、転写ベルトにて用紙を搬送している状態としていない状態の、転写ベルトの速度差による位置ずれ以外の、別の要因による位置ずれを合わせて補正している可能性がある。その為、別の要因による位置ずれが、ユーザーが装置を使用する際に、補正時と全く同じ条件では無い場合、ユーザーが装置を使用する際に、その要因の位置ずれ分が増幅してしまう可能性がある。別の要因のひとつに、転写ベルト1周内のベルトの厚みばらつきがある。転写ベルトの速度は、転写駆動ローラにベルトを巻き付けた状態の回転半径によって決まる。その為、ベルトの厚みにばらつきが生じると、回転半径がばらつき、ベルトの速度に変動が生じる。このように、ベルトの厚みばらつきによって生じる第1の画像形成部によるパターン形成時のベルトの速度と、第2の画像形成部によるパターン形成時のベルトの速度差を特許文献1の発明における補正に含めた場合、補正時のベルトの位置による第1の画像形成部によるパターン形成時のベルト速度と第2の画像形成部によるパターン形成時のベルトの速度が、ユーザーが装置を使用中に、ベルトの位置によって変動した際に、ベルトの厚みばらつきによる位置ずれが、補正時と逆側となる可能性があり、補正時に設定した位置ずれ補正量のうち、ベルトの厚みばらつき分の位置ずれ量を、ベルトの厚みによって生じる位置ずれ分に増幅した位置ずれを発生させる可能性がある。また、異なるトナー像の転写ベルトの速度差による位置ずれ分と転写ベルトの厚みばらつきによる位置ずれ分が逆側にずれた状態にて補正を実行した際、両者が打ち消しあうことで、位置ずれが発生していないと検出する可能性があり、この場合も、パターンを形成して検出する時とユーザーが装置を使用時の条件が異なれば、用紙が搬送ローラの影響を受けている状態と受けていない状態の転写ベルトの速度差による画像の位置ずれが発生してしまう。
【0010】
更に、像担持体同士の回転速度のばらつきや、転写駆動ローラの周期的な回転変動により、第1の画像形成部にてパターンを形成時と第2の画像形成部にてパターン形成時に、パターンをベルトに転写するタイミングにばらつきが生じる。よって、ベルトに形成したパターン幅がばらつき、ベルトの厚みばらつきと同様に位置ずれに影響を及ぼす。
【0011】
そして、上記特許文献2に記載のものでは、用紙の長さのばらつきや、用紙の搬送状態(斜めに搬送されている場合や、用紙後端部が上下に動くなど不安定な状態で搬送される)によって、検出した用紙の通過タイミングと他の用紙の通過タイミングにばらつきが生じ、画像の位置ずれが改善されない可能性がある。
【0012】
本発明は、従来の画像形成装置における上述の画像の位置ずれが発生するという問題を解決し、画像の位置ずれを防止して高品質な出力画像を得ることのできる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明により、像担持体上に形成した画像を転写部にて用紙に転写させる画像形成装置であって、前記転写部で用紙を搬送する転写部用紙搬送手段と、前記転写部の用紙搬送方向直上流側で用紙を搬送する転写前用紙搬送手段と、前記転写部の用紙搬送方向直下流側で用紙を搬送する転写後用紙搬送手段を有する画像形成装置において、用紙が前記転写部用紙搬送手段と、前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段の影響を受けて搬送される第1の状態と、用紙が、少なくとも前記第1の状態で用紙に影響を与えている転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の影響を受けずに搬送される第2の状態における用紙速度の差を検出する速度検出手段を設け、前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減するように、前記転写部用紙搬送手段、前記転写前用紙搬送手段、前記転写後用紙搬送手段のいずれかの速度を制御することにより解決される。
【0014】
また、前記用紙速度差の低減は、前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段を制御して行うと好適である。
また、前記転写部用紙搬送手段が前記像担持体から画像の転写が可能に構成され、前記像担持体上にそれぞれ少なくとも2箇所に同一間隔にて形成した画像からなる第1のパターンと第2のパターンを形成し、前記第2の状態で前記転写部用紙搬送手段に転写した前記第1のパターンと、前記第1の状態で前記転写部用紙搬送手段に転写した前記第2のパターンを、前記速度検出手段で検出することにより、前記用紙速度差を検出すると好適である。
【0015】
また、前記第2のパターンが、前記第1の状態において、用紙搬送に影響を与える前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段の他方の影響を受けずに形成されると好適である。
【0016】
また、前記第1のパターンと第2のパターンを複数組作成して前記速度検出手段で検出し、各組で検出した速度差を平均して前記用紙速度の差とすると好適である。
また、前記第1のパターンと第2のパターンが前記転写部用紙搬送手段の同位相領域に転写されると好適である。
【0017】
また、前記第1のパターンと第2のパターンが、前記像担持体周長の整数倍の領域に形成されると好適である。
また、前記第1のパターンと第2のパターンが、前記転写部用紙搬送手段を駆動する駆動ローラの周長の整数倍の領域に転写されると好適である。
【0018】
また、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを前記速度検出手段で検出するタイミングは、用紙が前記転写前用紙搬送手段及び前記転写後用紙搬送手段の影響を受けていない状態であると好適である。
【0019】
また、用紙種類の設定が可能に設けられ、用紙種類設定が変更された場合に、前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減させる制御を実施すると好適である。
また、前記転写後用紙搬送手段が新品に交換されたことを入力可能な入力手段を有し、前記入力手段により前記転写後用紙搬送手段が新品に交換されたことが入力された場合、前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減させる制御を実施すると好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像形成装置によれば、転写部において用紙搬送に影響を受けている第1の状態と、影響を受けていない第2の状態における用紙速度の差を低減させることによって、画像の位置ずれを防止して高品質な出力画像を得ることができる。
【0021】
請求項2の構成により、転写部用紙搬送手段の速度を変えないことで、像担持体と転写部の速度関係を維持し、画像の位置ずれを防止するように転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段を制御した場合でも、位置ずれ以外の画像品質の低下を発生させることがない。
【0022】
請求項3の構成により、画像形成装置の構成を複雑にすることなく、低価格なセンサを用いて、第1の状態と第2の状態における用紙速度の差を検出することが可能となる。
【0023】
請求項4の構成により、パターン形成時に、第1の状態で影響を与えている搬送手段ではないほうの搬送手段による影響を受けることがなく、画像位置ずれ低減効果を低下させることがない。
【0024】
請求項5の構成により、複数組のパターンを作成して、各組で検出した速度差を平均して制御(補正)に用いることで、用紙搬送手段のばらつきの影響を低減させ、精度の良い検出が可能となる。
【0025】
請求項6の構成により、転写部用紙搬送手段の走行性による影響を排除して、画像位置ずれ低減効果の低下を防ぐことができる。
請求項7の構成により、像担持体が周期的な回転変動を持っていたとしても、その影響を排除して、画像位置ずれ低減効果の低下を防ぐことができる。
【0026】
請求項8の構成により、転写部用紙搬送手段を駆動する駆動ローラが周期的な回転変動を持っていたとしても、その影響を排除して、画像位置ずれ低減効果の低下を防ぐことができる。
【0027】
請求項9の構成により、転写前用紙搬送手段及び転写後用紙搬送手段の影響を受けずにパターンの検出を行うことができ、用紙速度差の検出を正確に行うことができる。
請求項10の構成により、用紙種類を変更した際に生じる画像の位置ずれを防止することができる。
【0028】
請求項11の構成により、用紙速度に影響を与える転写後用紙搬送手段を交換した場合でも画像の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例であるカラープリンタの概略を示す断面構成図である。
【図2】定着装置の影響を受けている場合と受けていない場合の用紙速度を示すグラフである。
【図3】本発明を適用して第1の状態と第2の状態の速度差を無くした様子を示すグラフである。
【図4】速度差の検出に用いるパターンを説明するための模式図である。
【図5】異なる色のパターンを異なる像担持体にて形成する場合に、パターン形成位置に影響が出ることを示す模式図である。
【図6】転写搬送ベルトの厚みばらつきによる画像位置ずれ分の増大を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるカラープリンタの概略を示す断面構成図である。この図に示すカラープリンタはタンデム方式を採用してフルカラー画像を形成可能な直接転写方式のカラープリンタであり、装置本体のほぼ中央部に4組の作像ユニット1(a,b,c,d)を備えている。各作像ユニット1は転写手段4に対向して並設されている。各作像ユニット1は扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であり、像担持体としての感光体ドラム2を具備している。この感光体ドラム2の周りには図示しない帯電手段、現像装置、クリーニング手段等が配置される。また、図示しない光書き込み装置が設けられる。
【0031】
転写手段4は、駆動ローラを含む複数の支持ローラに巻き掛けられた搬送ベルト4a,その搬送ベルト4aのループ内で各感光体ドラム2に対向するように配置される転写ローラ4b等で構成されている。搬送ベルト4aは、図示しない駆動源により駆動ローラを回転駆動することで、図中反時計回りに走行駆動される。また、転写ローラ4bには図示しない電源部より転写バイアスが印加される。用紙搬送機能を備える転写手段4は、本発明における転写部用紙搬送手段である。
【0032】
装置本体の下部には、用紙Pを積載する給紙トレイ8が配設されている。給紙トレイ8の右側には給紙トレイに積載された用紙を送り出す給紙ローラ9があり、用紙を一枚ずつに分離して給送する。給紙ローラ9の斜め上方(用紙搬送方向の下流側)には搬送ローラ10が配置されている。さらに、その搬送ローラ10の下流にレジストローラ対3が設けられている。用紙搬送機能を有するレジストローラ対3は、転写手段4の前(用紙搬送方向上流)に位置する転写前用紙搬送手段である。
【0033】
転写手段4を挟んでレジストローラ対3と反対の側に定着装置5が設けられている。用紙搬送機能を有する定着装置5は、転写手段4の後(用紙搬送方向下流)に位置する転写後用紙搬送手段である。本例の定着装置5は定着ローラ及び加圧ローラを有する構成であり、両ローラで用紙を挟持して搬送し、熱と圧力により用紙上に転写された未定着トナー像を用紙に定着させる。なお、ベルト定着装置でも良い。
【0034】
上記のように構成されたカラープリンタにおける画像形成動作について簡単に説明する。
上記作像ユニット1の感光体ドラム2が図中時計回りに回転駆動され、その感光体ドラム2の表面が帯電手段によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された感光体表面には、光書き込み装置からの走査光が照射され、これによって感光体ドラム2表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム2に露光される画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及び黒の色情報に分解した単色の画像情報である。このように形成された静電潜像に現像装置から各色トナーが付与され、トナー像として可視化される。
【0035】
一方、給紙トレイ8から用紙が給送され、レジストローラ対3によって、感光体ドラム2上に形成されたトナー像とのタイミングを取って転写手段4に向けて送出される。転写手段4は、ベルト表面に用紙を吸着保持して搬送し、その用紙上に各色作像ユニットの感光体ドラム2から各色のトナー像が順次重ねて転写され、用紙上にフルカラー画像が形成される。なお、作像ユニット1のいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、複数の作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。トナー像を転写された用紙は、定着装置5を通過するとき、熱と圧力によってトナー像が用紙に熔融定着される。トナー像定着後の用紙は搬送ローラ11により搬送され、排紙ローラ12により装置本体の上面に構成された排紙トレイ13に排出されてスタックされる。
【0036】
さて、転写部用紙搬送手段(転写手段4)と転写前用紙搬送手段(レジストローラ対3)または転写後用紙搬送手段(定着装置5)に用紙搬送速度の差が存在する場合は、用紙が転写部用紙搬送手段と、転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の、両方の影響を受けて搬送される第1の状態と、用紙が転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の影響を受けずに(少なくとも前記第1の状態で用紙に影響を与えている転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の影響を受けずに)搬送される第2の状態とで、用紙速度が異なることがある。
【0037】
そこで、本発明では、上記第1の状態と第2の状態の速度差(用紙速度の差)を検出し、画像の位置ずれを低減するように、転写部用紙搬送手段、転写前用紙搬送手段、転写後用紙搬送手段のいずれかを制御する。上記第1の状態と第2の状態の速度差は、図1の構成例では、搬送手段4の下側に設けたセンサ6(速度検出手段)にて検出する。本例の場合、このセンサ6(例えば反射型光センサを用いる)で転写手段4のベルト速度を検知することで、上記速度差を検出する。
【0038】
ここでは、転写後用紙搬送手段である定着装置5による影響を用紙が受けている場合を例にとって本発明の特徴を説明する。また、速度差の低減は、定着装置5の制御によって行う場合で説明する。
【0039】
図2は、定着装置の影響を受けている場合と受けていない場合の用紙速度を示すグラフである。グラフの縦軸は用紙速度、横軸は用紙位置であり、太線で各用紙位置における用紙速度を示してある。このグラフに示すように、定着装置突入前の用紙速度はV0であるが、定着装置に用紙が突入した時点から定着装置の影響が出始め、ある時点で用紙速度はV1となっている。
【0040】
図示例は、定着装置による用紙搬送速度が転写手段による用紙搬送速度よりも大きい例である。すなわち、第1の状態における定着装置5の用紙搬送速度が転写手段4の用紙搬送速度よりも速い状態の場合、用紙Pが定着装置5に突入後、定着装置5の影響で引っ張られ、第2の状態(ここでは定着突入前)における用紙速度よりも速い速度で搬送される。これにより、狙いの画像位置に対し、用紙Pに画像を転写する位置にずれが生じる。
【0041】
そこで、本例では、第1の状態と第2の状態における転写手段4の速度差をセンサ6にて検出し、第1の状態における定着装置5の速度をフィードバック制御し(この場合、定着装置5の速度を遅くして)、第1の状態と第2の状態の速度差を無くす。これにより、定着装置5による画像位置ずれへの影響を防止することができる。図3のグラフに、本発明を適用して第1の状態と第2の状態の速度差を無くした様子を示す。図3のグラフにおいて、定着装置突入前後で用紙速度が同じ(V0)になっていることが分かる。
【0042】
なお、本実施形態では、転写手段4(の搬送ベルト4a)に用紙Pを静電吸着しているため、用紙Pが定着装置5によって影響を受けることで転写手段4の速度も同時に影響を受けることを利用し、第1の状態と第2の状態における転写手段4の速度差をセンサ6にて検出している。なお、転写手段4の速度は、後述する所定のパターンを転写手段4(のベルト上に)転写し、そのパターンをセンサ6にて検出して求めている。
【0043】
速度差の検出に用いるパターンとしては、図4に示す例のような1組のパターン(パターン7a、パターン7b)を用いる。パターン7aは上記第2の状態で、パターン7bは上記第1の状態で、像担持体である感光体ドラム(2a〜2d)から選ばれる一つの(同一の)感光体ドラム2にて、少なくとも2箇所に同一間隔にて形成する(図示例では、少なくとも2本の同一間隔のライン画像からなるパターンを形成する)が、転写手段4にパターンを転写する際に、第1の状態では、定着装置5に用紙Pが引っ張られ、第2の状態よりも用紙Pおよび転写手段4の速度が速くなるため、第1の状態で転写されたパターン7bのライン間隔が第2の状態で転写されたパターン7aのライン間隔よりも広くなる。このパターン7aと7bをセンサ6にて検出し、そのタイミング(ライン画像を検出したタイミング)に基づき、第1と第2の状態における転写手段4の速度差を検出し、第1の状態における定着装置5の速度にフィードバックする。この例では第1の状態における定着装置5の速度を遅くすることで、第2の状態と第1の状態の速度差をなくし、それによって形成する画像の位置ずれを防止することができる。
【0044】
なお、パターン7aは転写手段4に用紙Pが到達する前に、パターン7bは用紙Pが定着装置5に突入しており且つ感光体ドラムを抜けている(転写手段4上にはある)タイミングで、それぞれ感光体ドラム2にて形成した例である。
【0045】
また、パターン7aは用紙Pが定着装置5に突入する前にセンサ6にて検出し、パターン7bは用紙Pが定着装置5を通過後にセンサ6にて検出することにより、パターン7aとパターン7bの検出を転写手段4が定着装置5の影響を受けていない同じ状態で検出することができる。
【0046】
さらに、一つの像担持体で速度検出用パターン7a及び7bを形成することにより、異なる色のトナー像のパターンを少なくとも2つの像担持体にて形成する際に生じる、像担持体同士の回転速度ばらつきや像担持体間の距離が離れていることで生じる、転写手段4のベルト厚みばらつきなどで発生する速度変動によるパターン形成タイミングのずれ、パターンをセンサ6にて検出する際の転写手段の速度変動による検出タイミングのずれなどを低減することが可能である。
【0047】
図5は、この異なる色のトナー像のパターンを少なくとも2つの像担持体にて形成する際、像担持体同士の回転速度ばらつきや転写手段4の速度変動によるパターン形成タイミングのずれ、パターンをセンサ6にて検出する際の転写手段4の速度変動による検出タイミングのずれが、第1の状態あるいは第2の状態における転写手段4の速度と合わさり、パターン形成位置に影響が出ることを示した例を示す模式図である。
【0048】
図5において、用紙が転写手段4に到達する前に形成した黒とシアンのパターンの間隔Bと(シアンのパターンは一点鎖線で示す)、用紙Pが定着手段5に突入した状態で形成される黒のパターンと用紙が定着手段を通過した状態で形成されるシアンのパターンの間隔Cに差が生じるため、その検出タイミングによって、速度差を検出するが、パターン形成時に転写手段4よりも定着手段5の速度が速く、パターンがその影響しか受けていない場合は、間隔Cを形成する黒のパターンが狙いの位置よりも後ろ側にずれる。しかしながら、後ろにずれた黒のパターンを形成後、シアンのパターン形成時に、例えば、転写手段4のベルトの厚みばらつきによって、狙いの速度よりも転写手段が早く回転している場合、シアンのパターンの位置が狙いの位置よりも後側に形成されることになる(間隔Dとなる)。これにより、黒パターンとシアンパターンの間隔Dが狙いの間隔Cよりも広くなり、更に例えば間隔Dが間隔Bと同じ間隔になった場合においては、位置ずれが発生していないと検出されてしまう。しかし、ユーザーが実際に装置を使用して画像を出力する際に、常にパターン形成時と同じ条件でないため、補正されなかった定着手段の影響による位置ずれが発生してしまう。
【0049】
また、図6に示す例のように、補正時のベルトの位置による黒パターン形成時の転写手段4の速度とシアンパターン形成時の転写手段4の速度が、ユーザーが装置を使用中に、ベルトの位置によって変動した場合に、ベルトの厚みばらつきによる位置ずれが補正時と逆側となる可能性があり、補正時に設定した位置ずれ補正量のうち、ベルトの厚みばらつき分の位置ずれ量を、ベルトの厚みによって生じる位置ずれ分に増幅した位置ずれを発生させる(間隔Fとなる)可能性もある。
【0050】
これに対し、パターン7bは、第1の状態において用紙Pが定着手段5の影響を受けている場合は、レジスト手段3の影響を受けないようにし、その負荷分の速度変動を含まない状態にて転写手段4の速度を検出することで、位置合わせ精度の低下を防止できる。
【0051】
また、転写速度検出用パターンを形成する際、ベルトの走行性による(ベルト1周内のベルトの厚みばらつきによって、ベルトの速度が1周内で変動することによる)転写手段4の速度ばらつきや像担持体の回転変動のばらつきを含んでいるため、2箇所のトナー像のみでは、ばらつきの一部分のみの速度を検知し、検出した速度差の精度が低い可能性がある。すなわち、1組だけのパターン7a及び7bにより用紙速度の差を求めた場合、用紙搬送手段の搬送速度のばらつきを含んでいる可能性がある。
【0052】
そこで、少なくとも2つの間隔を持つように、複数箇所にトナー像を形成する第1のパターン(7a)と第2のパターン(7b)を、それぞれトナー像の間隔毎に、センサ6にて検出し、トナー像の間隔毎の速度をそれぞれ平均化した速度の差を検出することで、検出精度を向上することが可能となる。つまり、パターン7a及び7bを複数組作成して、各組で検出した速度差を平均して制御(補正)に用いることで、上記のばらつきの影響を低減させ、精度の良い検出が可能となる。
【0053】
さらに、無端状ベルト転写手段4の同位相領域にて上記パターンを形成する(転写する)ことで、ベルトの速度変動による位置合わせ精度への影響を防止できる。
同位相領域にて上記パターンを形成するとは、ベルトの搬送方向における同じ位置に、第1のパターンと第2のパターンを形成する、という意味である。
更に、像担持体2あるいは、無端ベルト転写手段4に駆動を伝達して回転する転写駆動ローラ周長の整数倍の領域にてパターンを形成することにより、像担持体あるいは転写駆動ローラの回転変動による位置合わせ精度への影響を防止できる。
すなわち、第1のパターンと第2のパターンとの間隔を、像担持体2または転写駆動ローラの周長の整数倍に設定することで、像担持体2や転写駆動ローラの外径のばらつき(回転変動)の影響を除くことができる。
【0054】
また、本発明を適用した画像形成装置において、製造工程内にて、装置の仕様で設定されている用紙種毎に予め補正処理を実施し、転写手段の前後に位置する用紙搬送手段(レジスト手段や定着装置等)の速度を調整するようにすれば、市場において、装置使用時に補正処理が入ることがないため(定着手段交換時は補正処理する)、ユーザーの待ち時間を減らすことも可能である。但し、大量生産時には、製造工程の時間短縮のため、極力調整工程を減らす必要があり、転写手段前後の用紙搬送手段の調整を製造工程内にて実施しない場合に、市場でユーザーが用紙種の設定を変更する毎に、補正処理を実行することが有効となる。
【0055】
なお、上記説明では、用紙速度に影響を与える用紙搬送手段を転写手段4の後に位置する定着装置5としたが、転写手段4の前に位置する用紙搬送手段(実施例ではレジスト手段3)が影響を与える場合も、上記説明と同様にして第1の状態と第2の状態の速度差(用紙速度の差)を検出し、画像の位置ずれを低減するように制御(補正)してやれば良い。
【0056】
また、定着装置5が新品に交換された場合には、部品精度のばらつきによって、用紙速度に与える影響が交換前の定着装置とは異なったものとなり、画像の位置ずれが発生する可能性がある。そこで、画像形成装置の操作パネル(図示せず)等から定着装置5が新品に交換されたことを入力することで、定着装置5が新品に交換された場合には、上記の第1の状態と第2の状態の速度差(用紙速度の差)を検出し、画像の位置ずれを低減する制御(補正)を実施すると好適である。
【0057】
また、上記説明では、用紙速度の差を定着装置5(転写後用紙搬送手段)の制御で低減させる場合で説明したが、転写部用紙搬送手段、転写前用紙搬送手段(レジスト手段の影響を受けている場合)、前記転写後用紙搬送手段のいずれかで制御(補正)することができる。ただし、転写部用紙搬送手段で制御(補正)した場合は像担持体と転写部用紙搬送手段の速度関係が変動するため、画像の位置ずれは改善されるが位置ずれ以外の画像品質に影響を与える可能性がある。そのため、補正は転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段で行うのがより好ましい。
【0058】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、定着装置は定着ベルトや加圧ベルトを用いる構成でも良い。加熱方式も誘導加熱など任意の方式を採用可能である。転写手段を構成する無端状ベルトの張設形態も任意である。転写ローラに変えて転写チャージャを用いることも可能である。用紙速度を検出する構成も適宜な構成を採用可能であり、検出手段としてのセンサも適宜な構成・方式のものを使用可能である。検出に用いるパターンは2本の画像に限らず、3本以上の画像でも良い。なお、転写部と定着装置の間に別の用紙搬送手段があり、その用紙搬送手段が転写手段との間で用紙搬送に影響を与える場合は、その用紙搬送手段が転写後用紙搬送手段である。
【0059】
また、画像形成装置の作像部の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの色の順番などは任意である。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 作像ユニット
2 感光体ドラム(像担持体)
3 レジストローラ(転写前用紙搬送手段)
4 転写手段(転写部用紙搬送手段)
5 定着装置(転写後用紙搬送手段)
6 センサ(速度検出手段)
8 給紙トレイ
13 排紙トレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2009−098267号公報
【特許文献2】特開2007−199342号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成した画像を転写部にて用紙に転写させる画像形成装置であって、前記転写部で用紙を搬送する転写部用紙搬送手段と、前記転写部の用紙搬送方向直上流側で用紙を搬送する転写前用紙搬送手段と、前記転写部の用紙搬送方向直下流側で用紙を搬送する転写後用紙搬送手段を有する画像形成装置において、
用紙が前記転写部用紙搬送手段と、前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段の影響を受けて搬送される第1の状態と、用紙が、少なくとも前記第1の状態で用紙に影響を与えている転写前用紙搬送手段または転写後用紙搬送手段の影響を受けずに搬送される第2の状態における用紙速度の差を検出する速度検出手段を設け、
前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減するように、前記転写部用紙搬送手段、前記転写前用紙搬送手段、前記転写後用紙搬送手段のいずれかの速度を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙速度差の低減は、前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段を制御して行うことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写部用紙搬送手段が前記像担持体から画像の転写が可能に構成され、
前記像担持体上にそれぞれ少なくとも2箇所に同一間隔にて形成した画像からなる第1のパターンと第2のパターンを形成し、
前記第2の状態で前記転写部用紙搬送手段に転写した前記第1のパターンと、前記第1の状態で前記転写部用紙搬送手段に転写した前記第2のパターンを、前記速度検出手段で検出することにより、前記用紙速度差を検出することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2のパターンが、前記第1の状態において、用紙搬送に影響を与える前記転写前用紙搬送手段または前記転写後用紙搬送手段の他方の影響を受けずに形成されることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1のパターンと第2のパターンを複数組作成して前記速度検出手段で検出し、各組で検出した速度差を平均して前記用紙速度の差とすることを特徴とする、請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1のパターンと第2のパターンが前記転写部用紙搬送手段の同位相領域に転写されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1のパターンと第2のパターンが、前記像担持体周長の整数倍の領域に形成されることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1のパターンと第2のパターンが、前記転写部用紙搬送手段を駆動する駆動ローラの周長の整数倍の領域に転写されることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンを前記速度検出手段で検出するタイミングは、用紙が前記転写前用紙搬送手段及び前記転写後用紙搬送手段の影響を受けていない状態であることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
用紙種類の設定が可能に設けられ、用紙種類設定が変更された場合に、前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減させる制御を実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写後用紙搬送手段が新品に交換されたことを入力可能な入力手段を有し、前記入力手段により前記転写後用紙搬送手段が新品に交換されたことが入力された場合、前記速度検出手段で検出した前記用紙速度の差を低減させる制御を実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−191629(P2011−191629A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59157(P2010−59157)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】