説明

画像形成装置

【課題】潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる画像形成装置を得る。
【解決手段】画像形成装置10は、表面層18Bを有する感光体18と、感光体18を帯電させる帯電部20と、感光体18を露光する露光部14と、感光体18の潜像にトナーを付与して現像する現像部22と、トナー像を中間転写ベルト28に転写させる転写部30と、制御部70とを有している。ここで、制御部70は、帯電部20によって減少される表面層18Bの膜厚の予測値と、転写部30の転写によって減少される表面層18Bの膜厚の予測値とを合計した値に基づいて、表面層18Bの膜厚を予測する。これにより、帯電部20のみで膜厚の減少量を見積もったものに比べて、表面層18Bの膜厚の減少量を精度良く予測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の画像形成装置は、感光体を帯電させる帯電部に印加する電圧と、この電圧を印加したときに帯電部に流れる電流と、を用いて感光体表面の静電容量の関係式を得ており、この関係式により感光体の膜厚を検知している。
【0003】
特許文献2の画像形成装置は、感光体の非露光時と露光時のそれぞれの場合において帯電部の定電流制御を行い、この時に電源から出力された電圧値の差に基づいて感光体の膜厚を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−223513号公報
【特許文献2】特開2004−233422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、筐体内に回転可能に設けられ表面層で潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体との間に電位差を形成して該潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記潜像保持体に潜像が形成されるように露光する露光手段と、前記潜像保持体の潜像に現像剤を付与して現像する現像手段と、前記潜像保持体との間に電位差を形成して現像剤像を被転写部材に転写させる転写手段と、前記帯電手段の帯電によって減少される前記表面層の膜厚の予測値と、前記転写手段の転写によって減少される前記表面層の膜厚の予測値と、に基づいて、前記表面層の膜厚を予測する予測手段と、を有する。
【0007】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、前記予測手段は、前記帯電手段で印加される第1電圧を前記表面層の膜厚の帯電による減少量に換算した第1換算値と、前記転写手段で印加される第2電圧を前記表面層の転写による膜厚の減少量に換算した第2換算値とに基づいて、前記表面層の膜厚を予測する。
【0008】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、前記予測手段は、前記第1電圧を前記帯電手段の電気抵抗の変化に基づいて求め、前記第2電圧を前記転写手段の電気抵抗の変化に基づいて求める。
【0009】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、前記予測手段は、前記筐体の内側又は外側の温度及び湿度を検知する検知手段と、温度及び湿度に応じて設定された、前記帯電手段による前記表面層の膜厚の減少量と前記転写手段による前記表面層の膜厚の減少量とを記憶する記憶手段と、を有し、前記検知手段で検知された温度及び湿度を前記記憶手段に記憶された温度及び湿度と照合するとともに、得られた前記表面層の膜厚の減少量を累積して、前記表面層の膜厚を予測する。
【0010】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、前記露光手段は、転写後の前記潜像保持体の表面を露光する。
【0011】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、前記転写手段は、転写後の前記潜像保持体の表面の電位が0に近づくように印加電圧が設定されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、帯電側だけの膜厚減少量に基づき予測する構成に比べて、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる。
【0013】
請求項2の発明は、第2電圧で膜厚の減少量を予測しない構成に比べて、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる。
【0014】
請求項3の発明は、第2電圧で膜厚の減少量を予測しない構成に比べて、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる。
【0015】
請求項4の発明は、温度及び湿度の検知手段と潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を記憶する記憶手段とを用いない構成に比べて、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を簡単な構成で予測することができる。
【0016】
請求項5の発明は、潜像保持体の除電を行う除電器に代えて露光手段で除電する構成において、潜像保持体の表面層の膜厚の減少量を精度良く予測することができる。
【0017】
請求項6の発明は、潜像保持体の除電を行う除電器を設ける構成に比べて、簡単な構成で潜像保持体の除電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の部分構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御部及び各動作部のブロック図である。
【図4】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係る制御部における帯電電圧と転写電圧の設定状態を示すグラフである。
【図5】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係る制御部における感光体膜厚の予測グラフの一部である。
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)本発明の第1実施形態に係る感光体の帯電前、帯電時、露光時、現像時、転写時、転写後の表面電位を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の他の実施例を示す部分構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の制御部及び各動作部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
【0020】
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、画像形成装置10の本体を構成する筐体12内に、現像剤の一例としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビーム16を出射する露光手段の一例としての露光部14Y、14M、14C、14Kが固定されている。また、露光部14Kに隣接する位置(図の左側)には、画像形成装置10の各部の動作を制御すると共に後述する感光体18の膜厚を予測する予測手段の一例としての制御部70が設けられている。なお、以後の説明では、Y、M、C、Kを区別する必要がある場合は、数字の後にY、M、C、Kのいずれかの英字を付して説明し、同様の構成でY、M、C、Kを区別する必要がない場合は、Y、M、C、Kの記載を省略する。
【0021】
露光部14は、光源から出射された光ビームを図示しない回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査すると共に反射ミラーを含む複数の光学部品で反射して、各トナーに対応した光ビーム16を出射する構成となっている。また、露光部14の下方側には、各露光部14と対応して配置されると共に、各露光部14の露光により形成された潜像を保持する潜像保持体の一例としての感光体18がそれぞれ設けられている。
【0022】
図2に示すように、感光体18は、アルミニウムなどで構成され導電性を有する円筒状の基材18Aと、基材18Aの外周面で径方向に順次積層された電荷発生層、電荷輸送層、及び保護層(図示省略)を含む表面層18Bとで構成されており、基材18Aの両端部に形成された軸部(図示省略)が筐体12内で回転可能に支持されている。また、感光体18は、モータ及びギア(図示省略)からなる駆動手段によって、矢印A方向(図の時計回り方向)に回転するようになっており、露光部14から出射された光ビーム16がそれぞれ対応する感光体18の表面層18Bに導かれるようになっている。なお、基材18Aは接地されている。
【0023】
感光体18の表面層18Bと対向する部位で光ビーム16の照射位置に対する回転方向(矢印A方向)の上流側には、感光体18の表面を帯電する帯電手段の一例としての帯電部20が設けられている。帯電部20は、感光体18の表面層18Bを帯電させる帯電ロール19と、帯電ロール19に電圧を印加する第1電圧印加部21と、を含んで構成されている。
【0024】
帯電ロール19は、一例として、ステンレス鋼製の軸部の周囲に導電性弾性層、中間層、及び表面樹脂層を含む複数の層(いずれも図示省略)が形成された構成となっている。導電性弾性層の一例としては、シリコーンゴム等のゴム材料にカーボンブラックを分散したものがあり、中間層の一例としては、ポリエステル樹脂がある。また、表面樹脂層の一例としては、フッ素樹脂を多孔質化して孔内に導電性微粒子を充填したものがある。また、帯電ロール19は、外周面が感光体18の表面層18Bと接触して従動するように軸部が回転可能に設けられており、第1電圧印加部21からの出力電圧が配線を介して該軸部(図示省略)供給されるようになっている。
【0025】
第1電圧印加部21は、制御部70からの信号により帯電ロール19への出力電圧(トナーTNと同極性)が変更可能となっている。ここで、第1電圧印加部21によって帯電ロール19に電圧が印加されたとき、感光体18の接地された基材18Aと帯電ロール19との間で電位差が形成され、この電位差によって帯電ロール19と表面層18Bとの間で放電が生じる。この放電により、一例として、表面層18Bの外周面にトナーTNの帯電極性と同極性の電荷が付与されるようになっている。
【0026】
一方、感光体18の回転方向で光ビーム16の照射位置よりも下流側には、帯電部20による帯電及び露光部14による露光で形成された表面層18Bの潜像(静電潜像)を各トナーTNで現像する現像手段の一例としての現像部22が設けられている。現像部22は、一例として、磁性体からなるキャリア粒子とトナーTNが混合されており、内側に複数の磁極のマグネットが設けられた現像スリーブ22Aが回転することで感光体18と対向する部位で磁気ブラシを形成するようになっている。そして、現像スリーブ22Aには図示しない電圧印加手段により現像バイアスが印加されるようになっており、この現像バイアスによって、感光体18における表面層18Bの潜像をトナーTNで顕在化させてトナー像を形成するようになっている。
【0027】
感光体18の回転方向で現像部22よりも下流側には、現像部22で現像されたトナー像が一次転写される被転写部材の一例としての中間転写ベルト28が配置されている。中間転写ベルト28は、一例として、ポリイミドあるいはポリアミドといった樹脂にカーボンブラック(帯電防止剤)を含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。また、感光体18と中間転写ベルト28とが対向する位置には、感光体18上に形成されたトナー像を中間転写ベルト28に転写する転写手段の一例としての転写部30が設けられている。
【0028】
転写部30は、トナー像を感光体18から中間転写ベルト28へ一次転写させる一次転写ロール24と、一次転写ロール24に電圧を印加する第2電圧印加部25と、を含んで構成されている。
【0029】
一次転写ロール24は、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とを含んで構成されている。シャフトは、一例として、ステンレス鋼などの金属で構成された円柱棒であり、スポンジ層は、一例として、カーボンブラック(導電剤)を配合したゴムで形成されている。また、一次転写ロール24は、感光体18とで中間転写ベルト28を挟んでおり、前述の制御部70により電圧出力が可変とされた第2電圧印加部25が配線で接続されている。
【0030】
第2電圧印加部25は、制御部70からの信号により一次転写ロール24への出力電圧(トナーTNの極性と逆極性)が変更可能となっている。ここで、第2電圧印加部25によって一次転写ロール24に電圧(一次転写電圧)が印加されたとき、感光体18の接地された基材18Aと一次転写ロール24との間で電位差が形成され、一例として、中間転写ベルト28にトナーの帯電極性と逆極性の電荷が付与されるようになっている。
【0031】
このような構成により、各感光体18上のトナー像は、中間転写ベルト28に順次、静電吸引され、中間転写ベルト28上において重ねられたトナー像が形成されるようになっている。なお、感光体18の回転方向で一次転写ロール24よりも下流側には、感光体18上の一次転写後の残留トナーを除去するクリーニングロール26Aを含み、制御部70からの信号に基づいて除去したトナーを廃トナータンク(図示省略)に排出するクリーニング部26が設けられているが、クリーニング部26から帯電ロール19までの間には、残留トナー除去後の感光体18の外周面に残った電荷を取り除く除電ランプは設けられていない。
【0032】
一方、図1に示すように、中間転写ベルト28の内側には、モータ(図示省略)により駆動され中間転写ベルト28を移動させる駆動ロール31(図示の右側配置)と、各感光体18の配置方向に沿って直線状に延び中間転写ベルト28を支持する支持ロール32(図示の左側)とが設けられている。この構成により、中間転写ベルト28は、矢印E方向(図の反時計回り方向)に循環移動されるようになっている。
【0033】
また、中間転写ベルト28の内側で且つ中間転写ベルトの移動方向における支持ロール32よりも下流側には、中間転写ベルト28に対して張力を付与すると共に中間転写ベルト28の蛇行を防止する補助ロール34が設けられている。さらに、中間転写ベルト28の移動方向で補助ロール34よりも下流側には、中間転写ベルト28上のトナー像を記録用紙P上に転写する二次転写部42が設けられている。
【0034】
二次転写部42は、中間転写ベルト28のトナー像保持面(外周面)側に配置される二次転写ロール38と、中間転写ベルト28の裏面側に配置された支持ロール36とによって構成されている。二次転写ロール38は、一例として、一次転写ロール24と同様の層構成及び材質となっている。また、二次転写ロール38は、支持ロール36とで中間転写ベルト28を挟むように支持ロール36に向けて中間転写ベルト28に接触配置されている。
【0035】
さらに、支持ロール36は、二次転写ロール38の対向電極を形成しており、支持ロール36と接触配置された金属製の給電ロール40を介して二次転写電圧が印加されるようになっている。ここで、二次転写ロール38は、接地されるとともに支持ロール36との間に二次転写電圧が印加されることにより、二次転写部42に搬送される記録用紙P上に中間転写ベルト28上のトナー像を二次転写するようになっている。
【0036】
中間転写ベルト28の移動方向における二次転写部42よりも下流側には、二次転写後の中間転写ベルト28上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ46が、図示しない移動機構により中間転写ベルト28に対して接離自在に設けられている。また、中間転写ベルトクリーナ46と対向する部位の中間転写ベルト28の内側には、支持ロール44が設けられている。そして、中間転写ベルト28の移動方向における一次転写ロール24Yよりも上流側で且つ中間転写ベルト28の内側の位置には、各トナーによる画像形成のタイミングを合わせるための基準信号を発生する位置センサ48が設けられている。
【0037】
位置センサ48は、中間転写ベルト28の裏側に設けられた検出用マーク(図示省略)からの反射光を検知して基準信号を発生するようになっている。この基準信号に基づいて、前述の制御部70が画像形成装置10の各部を動作させ、画像形成を開始するようになっている。また、一次転写ロール24Kの下流側で中間転写ベルト28の外側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が設けられている。
【0038】
一方、画像形成装置10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙収納部50が設けられている。用紙収納部50の一方端(記録用紙Pの送り出し側)には、記録用紙Pを設定されたタイミングで送り出して搬送する送出ロール52が設けられており、送出ロール52の上方には、モータ及びギアを含む駆動手段(図示省略)で回転駆動され、送出ロール52によって送り出された記録用紙Pを二次転写部42に搬送する複数の搬送ロール54、56が設けられている。また、記録用紙Pの搬送方向における搬送ロール56の下流側には、記録用紙Pを二次転写部42へ送り込むための板状のガイドからなる搬送部58が設けられている。
【0039】
また、二次転写部42における記録用紙Pの送出方向には、トナー像の二次転写が終了した記録用紙Pを後述する定着部80へ搬送する搬送ベルト60が設けられている。搬送ベルト60は、支持ロール57、駆動ロール59、及び図示しないモータ及びギアを有する駆動手段によって、定着部80へ記録用紙Pを搬送するように循環移動可能に設けられている。さらに、定着部80の入口側には、記録用紙Pを定着部80内に案内するガイド62が設けられており、定着部80の出口側には、画像形成装置10の筐体12に固定された用紙集積部64が設けられている。
【0040】
定着部80は、定着装置本体を構成するカバー部材86を有している。カバー部材86の内部上方には、内側に熱源を有し、回転可能に支持されると共に制御部70で回転制御され、外周面の温度(熱源の温度を含む)が温度センサ(図示省略)からの出力に基づいて制御部70により制御される定着ロール82が設けられている。また、カバー部材86の内部下方には、回転可能に支持され定着ロール82の外周面と接触して定着ロール82を加圧する加圧ロール84が設けられている。そして、定着ロール82と加圧ロール84は、軸方向が揃えられると共に接触部(ニップ部)を形成している。
【0041】
筐体12内で現像部22Y及び中間転写ベルト28に近い部位には、筐体12内の温度及び湿度を検知(測定)するための検知手段の一例としての温湿度検知部27が設けられている。温湿度検知部27は、一例として、感光体18の1回転(1周期)毎に筐体12内の温度及び湿度を測定して、得られた温度及び湿度の信号を制御部70へ伝達するようになっている。
【0042】
次に、制御部70の構成について説明する。
【0043】
図3に示すように、制御部70は、画像形成装置10(図1参照)の各部の動作プログラム及び後述する表面層18B(図2参照)の膜厚を予測するための設定テーブルが記憶された記憶手段の一例としての記憶部72と、記憶部72の設定テーブルから必要な信号を得て表面層18Bの膜厚を予測する演算を行う演算処理部74と、演算処理部74で演算された結果や画像形成装置10の各部から得られた信号が一時的に記憶される一時記憶部76とを含んで構成されている。
【0044】
一例として、制御部70は、記憶部72がフラッシュメモリ、演算処理部74がCPU(Control Prosessing Unit)、一時記憶部76がRAM(Random Access Memory)で構成されている。なお、記憶部72の他の例としてハードディスクが挙げられる。また、制御部70は、感光体18を回転駆動するモータ及び感光体18の回転量(1回転)を得るためのエンコーダ(いずれも図示省略)を含む感光体駆動部35と、帯電部20と、露光部14と、現像部22と、転写部30と、クリーニング部26と、定着部80と、温湿度検知部27とに電気的に接続されている。
【0045】
ここで、図3に示すように、感光体駆動部35の制御では、制御部70が感光体駆動部35のモータを駆動して感光体18を決められた周速で回転させるようになっている。また、制御部70は、感光体駆動部35のエンコーダから感光体18の回転の1周期(後述するΔt)の信号を得て、感光体18における表面層18B(図2参照)の膜厚予測に用いるようになっている。
【0046】
帯電部20の制御では、制御部70が、記憶部72の設定テーブルに基づいて帯電ロール19に印加する電圧を決定し、第1電圧印加部21(図2参照)から帯電ロール19へ電圧を印加するようになっている。なお、帯電ロール19へ印加する電圧の決定方法は後述する。
【0047】
露光部14の制御では、制御部70が、画像信号に基づいて露光部14内に設けられた光源(図示省略)を駆動すると共に回転多面鏡を回転させて光走査し、感光体18へ向けて光ビーム16(図1参照)を出射させるようになっている。また、制御部70は、感光体18の外周面のトナー像が中間転写ベルト28(図1参照)に転写された後、第1電圧印加部21から帯電ロール19への電圧の印加を感光体18が1回転する間で停止させると共に光源を駆動して、転写後の感光体18の外周面に光ビームを照射させ、感光体18の除電を行うようになっている。なお、光源からの光ビーム16の出射状態は、光ビーム16の一部を受光素子(図示省略)で受光し、その受光量の信号を制御部70へ伝えることで管理される。
【0048】
現像部22の制御では、制御部70が、現像スリーブ22A(図2参照)の駆動手段(図示省略)を動作させて現像スリーブ22Aを回転させるようになっている。また、制御部70は、現像部22内に設けられたトナー濃度センサ(図示省略)からの出力に基づいて、現像部22内へトナー供給させる。
【0049】
転写部30の制御では、制御部70が、記憶部72の設定テーブルに基づいて一次転写ロール24に印加する電圧を決定し、第2電圧印加部25(図2参照)から一次転写ロール24へ電圧を印加するようになっている。なお、一次転写ロール24へ印加する電圧の決定方法は後述する。
【0050】
クリーニング部26の制御では、制御部70が、クリーニング部26内に設けられたトナーの回収量を検知する検知センサ(図示省略)の出力に基づいて、トナーの搬送手段(例えばオーガ)を作動させ、画像形成装置10の筐体12内に設けられた廃トナータンクに回収したトナーを搬送させるようになっている。
【0051】
定着部80の制御では、制御部70が、定着ロール82(図2参照)の熱源(例えばハロゲンランプ)に給電するための電源(図示省略)を作動させて熱源を発熱させると共に、定着ロール82の外周面の温度を温度センサ(図示省略)で検知して、予め設定した温度となるように熱源への給電量を制御するようになっている。また、制御部70は、定着ロール82を回転させる駆動手段(図示省略)を作動させる。
【0052】
温湿度検知部27については、温湿度検知部27で検知された画像形成装置10の筐体12内の温度及び湿度の信号が制御部70に伝達され、一時記憶部76に記憶されるようになっている。
【0053】
次に、帯電ロール19及び一次転写ロール24へ印加する電圧の決定方法について説明する。
【0054】
図4(a)には、感光体18(図2参照)を時点tから1回転させて時点tとなるまでに、第1電圧印加部21から帯電ロール19に印加される帯電電圧がV1からV3へ変更される状態が示されている。なお、感光体18の1周期Δt=t−tであり、時点tにおける帯電電圧がV1、時点tにおける帯電電圧がV3である。
【0055】
ここで、制御部70(図3参照)では、時点tにおいて、感光体18が1回転する間の第1電圧印加部21から帯電ロール19に印加される帯電電圧V3を、係数をKaとしてV3=Ka×V1の演算により設定している。なお、一例として、係数Kaは定数ではなく、予め、記憶部72(図3参照)の設定テーブルに、温度及び湿度又は電圧印加時点での感光体18における表面層18Bの径方向の厚さに合わせた複数の係数Kaが記憶されている。そして、演算処理部74(図3参照)が、一時記憶部76(図3参照)に記憶された筐体12内の温度及び湿度の信号、又は後述する表面層18Bの径方向の厚さに合わせて、記憶部72から係数Kaを選択し、ある時間における印加電圧(帯電電圧)に係数Kaを掛けて、感光体18が1回転する間の帯電ロール19への印加電圧を決定するようになっている。
【0056】
なお、図4(a)の設定では、時点tに帯電電圧がV1であるとして、係数Kaを用いてV3=Ka×V1を求め、得られた帯電電圧V3を時点tから時点tまでで印加するようになっている。このように、帯電ロール19への印加電圧は、感光体18の1周期Δt毎に制御部70により変化されるので、得られるグラフは階段状となる。
【0057】
一方、図4(b)には、感光体18(図2参照)を時点tから1回転させて時点tとなるまでに、第2電圧印加部25から一次転写ロール24に印加される転写電圧がV2からV4へ変更される状態が示されている。なお、前述のように感光体18の1周期Δt=t−tであり、時点tにおける転写電圧がV2、時点tにおける転写電圧がV4である。また、時点tは、帯電と転写で異なっていてもよい。
【0058】
ここで、制御部70(図3参照)では、時点tにおいて、感光体18が1回転する間の第2電圧印加部25から一次転写ロール24に印加される転写電圧V4を、係数をKbとしてV4=Kb×V2の演算により設定している。なお、一例として、係数Kbは定数ではなく、予め、記憶部72(図3参照)の設定テーブルに、温度及び湿度又は電圧印加時点での感光体18における表面層18Bの径方向の厚さに合わせた複数の係数Kbが記憶されている。そして、演算処理部74(図3参照)が、一時記憶部76(図3参照)に記憶された筐体12内の温度及び湿度の信号、又は後述する表面層18Bの径方向の厚さに合わせて、記憶部72から係数Kbを選択し、ある時間における印加電圧(帯電電圧)に係数Kbを掛けて、感光体18が1回転する間の一次転写ロール24への印加電圧を決定するようになっている。
【0059】
なお、図4(b)の設定では、時点tに転写電圧がV2であるとして、係数Kbを用いてV4=Kb×V2を求め、得られた転写電圧V4を時点tから時点tまでで印加するようになっている。このように、一次転写ロール24への印加電圧は、感光体18の1周期Δt毎に制御部70により変化されるので、得られるグラフは階段状となる。
【0060】
図5(a)には、感光体18(図2参照)を時点tから1回転させて時点tとし、さらに時点tから感光体18を1回転させて時点tとなるまでに、感光体18の表面層18B(図2参照)の膜厚の予測値(以後、感光体膜厚と記載する)がd、d、dと変わる状態が示されている。なお、時点tにおける感光体膜厚がd、時点tにおける感光体膜厚がd、時点tにおける感光体膜厚がdとなっている。また、感光体膜厚の初期値をd(図5(b)参照)とする。
【0061】
ここで、時点tから時点tまでの感光体膜厚の減少量をΔdとし、予め設定された係数をA、Bとして、Δdは、前述の帯電電圧V1と転写電圧V2を用いてΔd=A×V1+B×V2の演算式で得られるようになっている。同様にして、時点tから時点tまでの感光体膜厚の減少量をΔdとすると、Δdは、前述の帯電電圧V3と転写電圧V4を用いてΔd=A×V3+B×V4の演算式で得られるようになっている。
【0062】
この演算式において、係数Aは、帯電電圧を感光体膜厚の減少量に換算するための係数であり、感光体18と帯電ロール19との接触による機械的な摩耗分と、帯電電圧を付与することによる電気的な摩耗分とを含んでいる。また、係数Bは、転写電圧を感光体膜厚の減少量に換算するための係数であり、感光体18と一次転写ロール24との接触による機械的な摩耗分と、転写電圧を付与することによる電気的な摩耗分とを含んでいる。なお、係数A、Bは、本実施形態では一例として定数としており、予め実測された帯電電圧と感光体膜厚の関係、転写電圧と感光体膜厚の関係に基づいて制御部70(図3参照)に設定されている。
【0063】
制御部70(図3参照)では、時点t(iは感光体18の回転した回数(累積数)であり整数)における帯電電圧をVE(VE=V1、VE=V3に相当)、転写電圧をVT(VT=V2、VT=V4に相当)として、時点tにおける感光体膜厚の減少量Δdが、Δd=A×VE+B×VTで求められるようになっている。そして、時点tにおいて予測される時点t後の感光体膜厚di+1は、di+1=d−ΣΔdで得られるようになっている。なお、Δd=d−dである。
【0064】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0065】
まず、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。なお、図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)には、感光体18の帯電前、帯電時、露光時、現像時、転写時、転写後の表面電位(以後、感光体表面と記載する)が示されており、図1と合わせて説明する。図6のL1、L2は、光ビーム16の主走査方向(記録用紙Pの搬送方向と直交する方向)における感光体18の表面の2点を表しており、この2点L1、L2の間で光ビーム16が照射されるものとする。
【0066】
図1において、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータから出力された画像信号が、図示しない画像処理装置によって画像処理を施される。このとき、図6(a)に示すように、各感光体18(図1参照)の表面は帯電されていないため、感光体表面電位は0となっている。そして、図1に示すように、画像処理が施された画像信号は、Y、M、C、Kの4色の色材階調信号に変換され、露光部14Y、14M、14C、14Kにそれぞれ出力される。
【0067】
続いて、制御部70で帯電電圧が設定されることにより、帯電部20Y、20M、20C、20Kの各帯電ロール19に電圧が印加され、感光体18Y、18M、18C、18Kの表面が帯電する。このとき、図6(b)に示すように、各感光体18における感光体表面電位がVAになっているものとする。なお、ここでは一例として、帯電ロール19に印加される電圧を直流(DC)電圧として表示しているが、直流電圧に交流(AC)電圧が重畳されているものであってもよい。
【0068】
続いて、図1に示すように、露光部14Y、14M、14C、14Kが、入力された色材階調信号に応じて光ビーム16Y、16M、16C、16Kを感光体18Y、18M、18C、18Kに照射する。この光ビーム16Y、16M、16C、16Kによって、色材諧調信号に応じた部位の感光体18表面が露光され潜像が形成される。このとき、図6(c)に示すように、光ビーム16の照射範囲であるL1からL2までの間では、感光体表面電位がVAからVBに下がる。また、光ビーム16の照射範囲の外側では、感光体表面電位がVAのままとなる。
【0069】
続いて、図1に示すように、各感光体18の表面に形成された潜像は、現像部22Y、22M、22C、22Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。このとき、感光体18の帯電の極性とトナー像の極性とが同極性となっているため、図6(d)に示すように、光ビーム16の照射範囲であるL1からL2までの間では、感光体表面電位がVC(VB<VC<VA)に上がる。
【0070】
ここで、図1において、制御部70で転写電圧が設定されることにより、各転写部30の各一次転写ロール24に電圧が印加され、各感光体18と各一次転写ロール24との間で転写電界が形成される。そして、各感光体18上に形成されたトナー像は、この転写電界により中間転写ベルト28上に転写される。このとき、感光体18の帯電の極性及びトナー像の極性と転写電圧の極性とが逆極性となっているため、図6(e)に示すように、光ビーム16の照射範囲であるL1からL2までの間では、感光体表面電位が0とならずにVD(VD≒VC−VA)だけ残る。また、光ビーム16の照射範囲の外側では、感光体表面電位がほぼ0となる。そして、転写されたトナー像は、中間転写ベルト28によって二次転写部42に搬送される。
【0071】
一方、図1に示すように、中間転写ベルト28に転写されたトナー像が二次転写部42に搬送されるタイミングに合わせて送出ロール52が回転し、設定された大きさの記録用紙Pが用紙収納部50から送出される。そして、送出ロール52により送り出された記録用紙Pは、搬送ロール54、56により搬送され、搬送部58を経て二次転写部42に到達する。この二次転写部42に到達する前に記録用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト28の移動タイミングに合わせて位置合せロール(図示省略)が回転することで、記録用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合せが行われる。
【0072】
二次転写部42では、中間転写ベルト28を介して、二次転写ロール38が支持ロール36に押圧されている。ここで、トナー像の搬送に合わせて搬送された記録用紙Pは、中間転写ベルト28と二次転写ロール38との間に挟み込まれる。また、このとき、給電ロール40から支持ロール36へ二次転写バイアスが印加され転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト28上に保持された未定着のトナー像は、二次転写ロール38と支持ロール36とによって押圧され、記録用紙P上に一括して静電転写される。
【0073】
続いて、トナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト28から剥離された状態で搬送ベルト60へと搬送され、さらに定着部80まで搬送される。そして、定着部80に搬送された記録用紙P上の未定着のトナー像は、定着部80の接触部Nにおいて加熱及び押圧によって記録用紙P上に定着される。定着後の記録用紙Pは、矢印F方向に排出され、用紙集積部64に集積される。また、記録用紙Pへのトナー像の転写が終了した後、中間転写ベルト28上に残った残留トナーは、中間転写ベルト28の回転移動に伴って中間転写ベルトクリーナ46まで搬送され、中間転写ベルト28上から除去される。
【0074】
一方、転写部30における中間転写ベルト28へのトナー像の転写が終了した後、クリーニング部26によって感光体18表面の残留トナーが除去される。ここで、帯電部20における帯電ロール19への電圧印加、現像部22における現像スリーブ22Aへの電圧印加、転写部30における一次転写ロール24への電圧印加が停止され、クリーニング部26と対向する領域を通過した感光体18表面の一部は、帯電部20で帯電されない状態で帯電部20と対向する領域を通過する。そして、帯電部20を通過した感光体18の表面(主として画像形成領域)が、露光部14により露光される。このとき、図6(f)に示すように、感光体表面電位は0となる。
【0075】
このようにして、画像形成装置10の画像形成が行われる。なお、露光部14を用いてトナー像転写後の感光体18表面の除電を行うため、他の除電手段は不要となっている。
【0076】
次に、感光体18における表面層18Bの膜厚の予測について説明する。
【0077】
画像形成装置10における画像形成工程では、表面層18Bが接触している部材との相対変位(回転)により摩耗し、さらに、表面層18Bの摩耗量が、現像部22に比べて印加電圧の高い帯電部20及び転写部30の電気的なストレスで増加することになる。なお、電気的なストレスによる摩耗量増加の一因としては、例えば、表面層18Bの分子鎖の切断、大気中の酸素による酸化などが挙げられる。
【0078】
図5(b)に示すように、表面層18B(図2参照)の膜厚の初期値がdであるとする。また、帯電部20で初期設定された帯電電圧がVE、転写部30で初期設定された転写電圧がVTであるとする。ここで、感光体18が回転を始めるとき、制御部70(図3参照)が前述のΔd=A×VE+B×VT、di+1=d−ΣΔdの2式においてi=0として、Δd=A×VE+B×VE及びd=d−Δdを求める。そして、得られたdが、膜厚の限界値(ここではdとする)以下となっていない場合は、感光体18が次の1回転を行う。また、得られたdが限界値d以下のときは、感光体18の回転を停止して、画像形成装置10の図示しない表示部に感光体18を交換する内容の表示を行う。
【0079】
そして、感光体18が1回転したとき(時点t1とする)、制御部70は、VEi+1=Ka×VE、VTi+1=Kb×VTの2式において、i=0として帯電電圧VE、転写電圧VTを求め、帯電ロール19にVEの電圧を印加し、一次転写ロール24にVTの電圧を印加する。
【0080】
さらに、制御部70は、上記と同様の手順で、Δd=A×VE+B×VE及びd=d−(Δd+Δd)を求めて、時点t後の表面層18Bの膜厚dを求める。そして、得られたdが、膜厚の限界値(ここではdとする)以下となっていない場合は、感光体18が次の1回転を行う。また、得られたdが限界値d以下のときは、感光体18の回転を停止して、画像形成装置10の図示しない表示部に感光体18を交換する内容の表示を行う。これらの工程は、表面層18Bの膜厚が限界値dに到達するまでの時点tまで(区間tz−1から時点tまで)繰り返し行われる。
【0081】
このように、制御部70が、感光体18の1回転毎に帯電ロール19に印加する帯電電圧VEと一次転写ロール24に印加する転写電圧VTとを決定し、さらに表面層18Bの膜厚を予測するので、例えば、帯電電圧(帯電ロール19と感光体18との電位差)のみに基づいて表面層18Bの膜厚の減少量を予測する(見積もる)構成に比べて、転写部30での転写電圧による膜厚減少分も含めることになり、表面層18Bの膜厚の予測値が実測値に近い値となる。特に、中間転写ベルト28へのトナー像転写後の感光体18表面の除電を行わない構成では、転写電圧による膜厚減少分が大きくなるため、本実施形態の構成による膜厚の減少量の予測は有効である。
【0082】
ここで、帯電電圧VEと転写電圧VTの決定方法の他の実施例として、図7には画像形成装置90が示されている。画像形成装置90は、前述の画像形成装置10(図1参照)において、帯電部20が帯電部92、転写部30が転写部94に置き換えられた構成となっている。なお、画像形成装置10と同様の構成及び部材については同じ符号を付与して説明を省略する。また、露光部14の図示は省略している。
【0083】
帯電部92は、帯電ロール19と、設定された電流Ieを帯電ロール19に印加する第1電流印加部93と、電流Ieが印加された帯電ロール19の電圧Veを計測する第1電圧測定部95とを含んで構成されている。そして、制御部70は、第1電流印加部93を作動させて帯電ロール19に電流Ieの電流を印加すると共に、第1電圧測定部95で測定された電圧Veと電流Ieとから、帯電ロール19の抵抗Re=Ve/Ieを求めるようになっている。さらに、制御部70は、電圧Veに前述の係数Kaを乗じて帯電電圧VEを求め、次の感光体18の1回転で帯電ロール19に印加する電流Ie´(=VE/Re)を決定するようになっている。
【0084】
転写部94は、一次転写ロール24と、設定された電流Itを一次転写ロール24に印加する第2電流印加部97と、電流Itが印加された一次転写ロール24の電圧Vtを計測する第2電圧測定部99とを含んで構成されている。そして、制御部70は、第2電流印加部97を作動させて一次転写ロール24に電流Itの電流を印加すると共に、第2電圧測定部99で測定された電圧Vtと電流Itとから、一次転写ロール24の抵抗Rt=Vt/Itを求めるようになっている。さらに、制御部70は、電圧Vtに前述の係数Kbを乗じて転写電圧VTを求め、次の感光体18の1回転で一次転写ロール24に印加する電流It´(=VT/Rt)を決定するようになっている。
【0085】
このように、帯電ロール19の抵抗変化及び一次転写ロール24の抵抗変化に基づいて、帯電電圧VEと転写電圧VTを決定するようにしてもよい。
【0086】
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0087】
図8には、第2実施形態の画像形成装置100における制御部110と各動作部の接続状態がブロック図で示されている。画像形成装置100は、前述の画像形成装置10(図1参照)において、制御部70に代えて予測手段の一例としての制御部110を設けた構成となっている。
【0088】
制御部110は、画像形成装置100の各部の動作プログラム及び感光体18の表面層18B(図2参照)の膜厚を予測するための後述する表1、2が記憶された記憶手段の一例としての記憶部114と、記憶部114の表1、2から必要な信号を得て表面層18Bの膜厚を予測し又は画像形成装置100の各部の動作を制御する動作処理部112と、一時記憶部76とを含んで構成されている。また、制御部110は、感光体駆動部35、帯電部20、露光部14、現像部22、転写部30、クリーニング部26、定着部80、及び温湿度検知部27に接続されており、これらの動作制御を行うようになっている。なお、画像形成装置100では、制御部110に温湿度検知部27が含まれる構成となっている。
【0089】
ここで、記憶部114には、表1に示すように、温度及び湿度に応じて設定された帯電部20による表面層18Bの膜厚の減少量C1からC6(C1>C2>C3>C4>C5>C6)までと、表2に示すように、温度及び湿度に応じて設定された転写部30による表面層18Bの膜厚の減少量D1からD6(D1<D2<D3<D4<D5<D6)までとが記憶されている。
【0090】
なお、温湿度検知部27で検知される温度をT、湿度をHdとして、表1では、一例として、温度の境界値をT1、T2、T3とした4条件と、湿度の境界値をH1、H2、H3とした4条件との組合わせで、合計16通りの温度及び湿度の組合わせにおける表面層18Bの膜厚の減少量がC1からC6まで設定されている。また、表2では、一例として、温度の境界値をTA、TB、TCとした4条件と、湿度の境界値をHA、HB、HCとした4条件との組合わせで、合計16通りの温度及び湿度の組合わせにおける表面層18Bの膜厚の減少量がD1からD6まで設定されている。なお、C1からC6まで、D1からD6までは、いずれも感光体18と各部材との接触による摩耗量を含んだ値となっている。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
また、制御部110の動作処理部112では、感光体18の1回転毎に温湿度検知部27で検知された温度T及び湿度Hdを記憶部114に記憶された表1、2と照合して、帯電部20による表面層18Bの膜厚の減少量(C1からC6までのいずれか1つ)と、転写部30による表面層18Bの膜厚の減少量(D1からD6までのいずれか1つ)とを得て一時記憶部76に記憶すると共に、これらの減少量を累積して、表面層18Bの膜厚を予測するようになっている。なお、前述のように、表面層18Bの膜厚の初期値をdとする。
【0094】
さらに、制御部110では、帯電部20における帯電ロール19への印加電圧が一定値で設定されており、転写部30における一次転写ロール24への印加電圧が一定値で設定されている。なお、一次転写ロール24への印加電圧は、感光体18から中間転写ベルト28へのトナー像の一次転写後に感光体18の表面電位が0に近づくように予め設定されている。
【0095】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0096】
図8及び表1、2に示すように、画像形成装置100において画像形成工程が開始されると、制御部110は、温湿度検知部27で検知された温度T及び湿度Hdと表1、2を照合して、表1から帯電部20による膜厚の減少量、表2から転写部30による膜厚の減少量をそれぞれ取得する。ここでは一例として、帯電部20による膜厚の減少量がC2、転写部30による膜厚の減少量がD2であったとする。このとき、制御部110は、感光体18の1回転後の表面層18Bの予測される膜厚dをd=d−(C2+D2)で求める。
【0097】
続いて、制御部110は、感光体18が1回転したときに温湿度検知部27で検知された温度T及び湿度Hdと表1、2を照合して、表1から帯電部20による膜厚の減少量、表2から転写部30による膜厚の減少量をそれぞれ取得する。ここでは一例として、帯電部20による膜厚の減少量がC3、転写部30による膜厚の減少量がD3であったとする。このとき、制御部110は、感光体18の1回転後(累積で2回転後)の表面層18Bの予測される膜厚dをd=d−(C3+D3)で求める。
【0098】
そして、制御部110は、この工程を繰り返し、感光体18の1回転毎に、表面層18Bの予測される膜厚を温湿度検知部27で検知された温度及び湿度と表1、2とを照合させて求め、得られた予測膜厚が前述の限界値dとなったとき、感光体18の回転を停止して、画像形成装置10の図示しない表示部に感光体18を交換する内容の表示を行う。
【0099】
このように、第2実施形態の画像形成装置100では、帯電電圧及び転写電圧を変更せず、温湿度検知部27で検知された温度及び湿度に基づいて膜厚を予測しているが、転写部30での転写電圧による膜厚減少分も含めて膜厚を予測しているので、表面層18Bの膜厚の予測値が実測値に近い値となる。ここで、画像形成装置100では、転写部30における中間転写ベルト28へのトナー像の転写が終了した後、図6(f)に示すように、感光体表面電位は0又は、ほぼ0に近い値となるので、除電手段は不要となっている。
【0100】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0101】
温湿度検知部27は、筐体12の内側に設けるだけでなく、筐体12の外側に設けて温度及び湿度を検知するものであってもよい。また、筐体12の内側及び外側の両方に設けて、筐体12の内側又は外側で切り換えて測定するようにしてもよい。さらに、表1、2における温度T及び湿度Hdの組み合せ数は、16と異なる数であってもよい。例えば、温度Tが2つの条件で湿度Hdが3つの条件の場合は、合計6条件となる。
【0102】
表面層18Bの膜厚の予測において、感光体18の単位回転数は1回転に限らず、複数回転(例えば10回転)で設定してもよい。また、第1実施形態の画像形成装置10において、トナー像転写後の感光体18の表面電位が0となるように設定してもよく、第2実施形態の画像形成装置100において、露光部14により転写後の感光体18の表面電位を0としてもよい。
【0103】
露光部14を用いて感光体18の除電を行うときに、現像部22の現像スリーブ22Aを停止してもよい。また、被転写部材の他の例として、中間転写ベルト28無しで記録用紙Pにトナー像の転写を行うものであってもよい。さらに、帯電部20及び転写部30は、帯電ロール19及び一次転写ロール24のように感光体18に接触する方式だけでなく、スコロトロン方式などのように感光体18に非接触の方式であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 画像形成装置
12 筐体
14 露光部(露光手段)
18 感光体(潜像保持体)
18A 表面層
20 帯電部(帯電手段)
22 現像部(現像手段)
27 温湿度検知部(検知手段)
28 中間転写ベルト(被転写部材)
30 転写部(転写手段)
70 制御部(予測手段)
72 記憶部(記憶手段)
100 画像形成装置
110 制御部(予測手段)
114 記憶部(記憶手段)
T トナー(現像剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に回転可能に設けられ表面層で潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体との間に電位差を形成して該潜像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記潜像保持体に潜像が形成されるように露光する露光手段と、
前記潜像保持体の潜像に現像剤を付与して現像する現像手段と、
前記潜像保持体との間に電位差を形成して現像剤像を被転写部材に転写させる転写手段と、
前記帯電手段の帯電によって減少される前記表面層の膜厚の予測値と、前記転写手段の転写によって減少される前記表面層の膜厚の予測値と、に基づいて、前記表面層の膜厚を予測する予測手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記帯電手段で印加される第1電圧を前記表面層の膜厚の帯電による減少量に換算した第1換算値と、前記転写手段で印加される第2電圧を前記表面層の転写による膜厚の減少量に換算した第2換算値とに基づいて、前記表面層の膜厚を予測する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記第1電圧を前記帯電手段の電気抵抗の変化に基づいて求め、前記第2電圧を前記転写手段の電気抵抗の変化に基づいて求める請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記予測手段は、
前記筐体の内側又は外側の温度及び湿度を検知する検知手段と、
温度及び湿度に応じて設定された、前記帯電手段による前記表面層の膜厚の減少量と前記転写手段による前記表面層の膜厚の減少量とを記憶する記憶手段と、を有し、
前記検知手段で検知された温度及び湿度を前記記憶手段に記憶された温度及び湿度と照合するとともに、得られた前記表面層の膜厚の減少量を累積して、前記表面層の膜厚を予測する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記露光手段は、転写後の前記潜像保持体の表面を露光する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写手段は、転写後の前記潜像保持体の表面の電位が0に近づくように印加電圧が設定されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−197567(P2011−197567A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66810(P2010−66810)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】