説明

画像形成装置

【課題】定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルからの磁束により発熱させることにより定着部材を加熱し、加熱された定着部材により、シート上の未定着画像を熱定着させる画像形成装置において、励磁コイルのショートの検出精度をより向上すること。
【解決手段】励磁コイル104の巻き線の数本程度がレアショートしたときに生じる放電により高周波電流が励磁コイル104に流れる電流に重畳する場合に、その重畳した高周波電流をフィルタ86で取り出し、取り出した信号を増幅器87で増幅し、増幅した信号の電圧を比較器88において、レアショートによる高周波電流の発生を判断するためのしきい値と比較し、その比較結果からレアショートの発生の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルからの磁束により発熱させ、搬送されて来るシート上の未定着画像を前記定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機などの画像形成装置の分野では、電磁誘導加熱方式の定着部を備えるものが提案されている。電磁誘導加熱方式の定着部は、定着ローラや定着ベルトなどの定着部材に電磁誘導発熱層を設けると共に、定着部材から一定の距離だけ離れた位置に励磁コイルを配置し、交番電流の供給により励磁コイルから発せられた磁束により電磁誘導発熱層を発熱させ、搬送される記録紙などのシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する構成が一般的である。
【0003】
励磁コイルは、通常、金属線を樹脂で被膜して構成される素線を多数本、例えば100本程度を縒り合わせて1本にしたものからなるリッツ線を何重にも巻き回したものが用いられるが、励磁コイルへの異物混入により素線の絶縁皮膜に外傷が発生したり、素線の絶縁皮膜の経時劣化により絶縁耐圧が低下したりして、巻き線(リッツ線)間にショートが発生する場合がある。
【0004】
巻き線間にショートが発生すると、ショートが発生していないときに比べて励磁コイル全体の電気抵抗値が低下し、電気抵抗値の低下に伴って励磁コイルに流れる電流量が増大して、巻き線が発熱し、この発熱した状態が長時間に亘って継続すれば、発熱により巻き線の温度が上昇して高温になり、絶縁被膜の溶融や発煙に至るおそれがある。
そこで、特許文献1には、励磁コイルの巻き線間のショートを検知する構成として、励磁コイルに交番電流を供給するための電源部に設けられたスイッチング素子のオンデューティ値が、正常時には励磁コイルの自己発熱によりサンプリング期間の初期から最後にかけて徐々に上がっていくが、ショート発生時には励磁コイルの自己発熱量が少ないことにより、ほとんど変化しないという励磁コイルの特性の変化を利用して、サンプリング期間でのスイッチング素子におけるオンデューティ値の変化の大きさに基づいて、励磁コイルの巻き線間のショートを検知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−264085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、巻き線の素線の数本程度がショートした場合に、ショートの検出精度が悪いという問題がある。これは、次の理由による。
すなわち、素線の数本程度のショートでは、ショートした部分に巻き線に流れる電流の一部が流れ込むだけなので、素線が数十本の単位で接触してショートした場合のように多量の電流が流れ込んで過電流になるといったことが生じ難い。このため、正常時と同様に励磁コイル全体で見れば自己発熱量が少なくなってオンデューティ値が徐々に上がってしまい、ショートを検出できないことが生じ易くなるからである。
【0007】
素線の数本程度のショートでも、そのショートしている部分への電流集中により局所的にその部分が高温になることに変わりはなく、発煙するおそれがないとはいえない。
また、高温になっている部分が初期には局所的であっても、熱により絶縁被膜の破れや絶縁耐圧の低下が進んで、やがてショートしている部分が広がり高温になる部分も広がっていくこともあり得る。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、励磁コイルのショートの検出精度をより向上することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルから発せられる磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を前記定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置であって、前記励磁コイルにおける巻き線間のショート時の放電に伴う高周波電流に相当する周波数の交番電流を検出する検出手段と、前記検出手段により前記電流が検出されると、前記励磁コイルにトラブルが生じている旨を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記検出手段は、前記電流の検出を、前記未定着画像の、前記シート上への定着動作中以外の所定の期間内に、前記励磁コイルに電力を供給するとしても良い。
さらに、前記定着動作中には、前記励磁コイルに第1の大きさの電力を供給して前記定着部材の温度を定着動作に必要な定着温度に維持し、前記検出手段は、前記第1の大きさよりも多い第2の大きさの電力を前記励磁コイルに供給して、前記電流の検出を行うとしても良い。
【0011】
ここで、前記定着動作中以外の期間に、前記励磁コイルに供給する電力を前記第1の大きさよりも少ない第3の大きさの電力に抑制して、前記定着部材の温度を前記定着温度よりも低い節電温度に低下させる節電モードを実行可能であり、前記定着動作中以外の所定の期間は、前記節電モードの実行中の期間であり、前記検出手段は、前記節電モードの実行中に、前記電流の検出を行う際に、前記励磁コイルに供給する電力の大きさを所定時間だけ前記第3の大きさから前記第2の大きさに切り替えた後、第3の大きさに戻させるとしても良い。
【0012】
また、前記検出手段は、前記励磁コイルに流れる電流を検出することにより、前記高周波電流に相当する周波数の電流を検出するとしても良い。
さらに、外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、前記励磁コイルに直列接続され、前記交流電圧の周波数よりも高い所定の周期で開閉されるスイッチ素子と、を有する電源部を備え、前記電源部は、前記スイッチ素子が閉のときに前記励磁コイルと当該スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、閉から開の状態に切り替わることにより、当該スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、前記検出手段は、前記励磁コイルに流れる電流の検出として、前記共振回路に流れる電流を検出するとしても良い。
【0013】
ここで、前記共振回路に流れる電流の、前記スイッチ素子が開になっているオフ時間における電圧波形は、前記オフ時間の始まりから上昇し、ピークを経て下降に転じ、オフ時間の終わりに至る山型の波形になっており、前記上昇し始めの時点をα1、下降の終わりの時点をα2、前記時点α1から所定の時間β1が経過する時点をγ1、前記時点α2から所定の時間β2だけ時間を遡った時点をγ2としたとき、前記検出手段は、前記スイッチ素子のオフ時間における電圧波形において、前記時点γ1から時点γ2までの間における波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行い、前記時点α1から時点γ1までの間、および、前記時点γ2から時点α2までの間における波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行わないとしても良い。
【0014】
ここで、前記所定の時間β1とβ2は、前記オフ時間の10%に相当する時間であるとしても良い。
また、前記共振回路に流れる電流の、前記スイッチ素子が開になっているオフ時間における電圧波形は、前記オフ時間の始まりから上昇し、ピークを経て下降に転じ、オフ時間の終わりに至る山型の波形になっており、前記検出手段は、前記スイッチ素子のオフ時間における電圧波形において、前記ピークまたは所定値以上の電圧である波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行うとしても良い。
【0015】
また、外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、前記励磁コイルに直列接続されるスイッチ素子と、前記励磁コイルとスイッチ素子との直列回路の、当該励磁コイルとスイッチ素子の間に介在され、前記スイッチ素子よりも耐電圧が高い高耐圧スイッチ素子と、を有する電源部を備え、前記電源部は、前記スイッチ素子が開の状態かつ前記高耐圧スイッチ素子が閉の状態から、前記スイッチ素子が開から閉に切り替えられることにより前記励磁コイルから前記高耐圧スイッチ素子を介して前記スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、前記切り替えから所定時間の経過時に前記高耐圧スイッチ素子が閉から開に切り替わることにより、前記高耐圧スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、前記検出手段は、前記励磁コイルに流れる電流の検出として、前記共振回路に流れる電流を検出するとしても良い。
【0016】
ここで、前記共振回路に流れる電流の、前記高耐圧スイッチ素子が閉から開に切り替わった時点以降の電圧波形は、前記切り替わり時点から上昇し、ピークを経て下降に転じる山型の波形になっており、前記検出手段は、前記電圧波形において、前記ピークまたは所定値以上の電圧である波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行うとしても良い。
【0017】
さらに、前記励磁コイルからの磁束を打ち消すための磁束を発生させる消磁コイルを備え、前記励磁コイルは、シート搬送方向に直交するシート幅方向に沿って延設されており、前記消磁コイルは、前記励磁コイルの延設方向端部側であり、前記延設方向において、使用されるシートのうち、所定サイズ以下のシートの通紙領域に対して外側の非通紙領域に対応するコイル部分に臨設されており、前記検出手段は、前記消磁コイルに流れる電流を検出することにより、前記放電に伴う高周波電流に相当する周波数の電流を検出するとしても良い。
【0018】
ここで、外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、前記励磁コイルに直列接続され、前記交流電圧の周波数よりも高い所定の周期で開閉されるスイッチ素子と、を有する電源部を備え、前記電源部は、前記スイッチ素子が閉のときに前記励磁コイルと当該スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、閉から開の状態に切り替わることにより、当該スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、前記検出手段は、前記共振回路に電流が流れたときに電磁誘導により前記消磁コイルに流れる電流を検出するとしても良い。
【0019】
また、前記検出手段は、前記電流の検出を、前記所定の期間内、かつ、前記励磁コイルへの給電時間の累積値を指標する値が所定値に達したときにだけ行うとしても良い。
【発明の効果】
【0020】
このようにすれば、励磁コイルのショートが初期時に巻き線の数本程度などの極めて小さな局所的な部分で生じている場合であっても、そのショートによる放電に伴う高周波電流に相当する周波数の交番電流を検出することにより、そのショートを早期に精度良く検出することができるようになり、励磁コイルにショートによるトラブルが生じている旨をユーザ等に知らせたり、励磁コイルへの電力供給を遮断したりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係るプリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタに設けられる制御部の構成を示す図である。
【図3】通常モードでのプリント実行中における電力供給の様子を示す図である。
【図4】節電モード(スリープ時)における電力供給の様子を示す図である。
【図5】プリンタに設けられるインバータ電源部の回路構成の概略を示す図である。
【図6】通常モード時のプリント中にインバータ電源部のスイッチ素子がスイッチングされている間におけるスイッチ素子のコレクタ−エミッタ間に流れるコレクタ電流Icと、コレクタに印加されるコレクタ電圧Vcの波形の例を示す図である。
【図7】コイル異常検知時にスイッチ素子がスイッチングされている間におけるコレクタ電流Icとコレクタ電圧Vcの波形の例を示す図である。
【図8】プリンタの定着部に設けられる励磁コイルの全体の外観と励磁コイルにショートが発生している様子の例を示す図である。
【図9】スイッチ素子におけるスイッチング周波数の1周期Tの区間において、インバータ電源部に設けられたフィルタにより取り出された高周波電流の周波数成分の電圧波形などを例示する図である。
【図10】励磁コイルにレアショートが発生したことの有無を判断するための処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】コイル異常検知処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】コイル異常検知処理時における電力供給の様子を示す図である。
【図13】実施の形態2に係る励磁コイルと消磁コイルの構成を示すと共に、励磁コイルと消磁コイルと通紙されるシートの幅との大小関係を模式的に示す図である。
【図14】実施の形態2に係るインバータ電源部の回路構成を示す図である。
【図15】実施の形態3に係るインバータ電源部の回路構成を示す図である。
【図16】実施の形態3においてコイル異常検知時にスイッチ素子がスイッチングされている間におけるコレクタ電流Icと高耐圧リレーにかかる電圧Vaの波形と、スイッチ素子と高耐圧リレーのタイミングチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1)プリンタの全体構成
図1は、プリンタ1の全体の構成を示す図である。
【0023】
同図に示すように、プリンタ1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、作像部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50と、操作パネル60と、低圧電源部70と、インバータ電源部80を備え、ネットワーク(例えば、LAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0024】
作像部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y〜10Kを備えている。作像ユニット10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラ15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えており、公知の帯電、露光、現像工程を経て感光体ドラム11Y上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像ユニット10M〜10Kについて同様であり、対応する色のトナー像が感光体ドラム11M〜11K上に作像される。
【0025】
中間転写部20は、矢印方向に循環走行される中間転写ベルト21を備える。
給送部30は、給紙カセットから記録用のシートSを搬送路35に1枚ずつ繰り出す。給紙カセットは、例えば一定サイズのシートSを収容する構成や、異なるサイズのシートSをサイズ毎に切り替えて収容可能な構成とすることもできる。
感光体ドラム11Y〜11K上に作像されたトナー像は、感光体ドラム11Y〜11Kの転写位置において、転写ローラ15Y〜15Kと感光体ドラム11Y〜11K間に生じる電界による静電力の作用を受けて、循環走行する中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、中間転写ベルト21上において同じ位置に多重転写されるようにタイミングをずらして実行される。
【0026】
この作像動作のタイミングに合わせて、給送部30からは、シートSが搬送されて来ており、そのシートSは、中間転写ベルト21と、これに圧接された二次転写ローラ22の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ22に印加された二次転写電圧により生じる電界による静電力の作用を受けて、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括してシートS上に二次転写される。二次転写後のシートSは、定着部40に送られる。
【0027】
定着部40は、電磁誘導加熱方式によるものであり、定着ローラ101と、加圧ローラ102と、定着ベルト103と、励磁コイル104、定着モータ105などを備える。
定着ベルト103は、略円筒状をした電磁誘導発熱層108(図3)と、これの外周面に積層される離型層109(図3)などからなる。
定着ローラ101は、定着ベルト103の周回経路の内側に配置されている。
【0028】
加圧ローラ102は、定着ベルト103の周回経路の外側から定着ベルト103を介して定着ローラ101にバネなどの付勢力により圧接されており、定着ベルト103の表面との間に定着ニップを確保する。ここでは、加圧ローラ102が定着モータ105からの駆動力を受けて回転駆動されることにより、定着ローラ101と定着ベルト103が従動回転するようになっている。なお、加圧ローラ102が駆動側、定着ローラ101と定着ベルト103が従動側の構成を説明したが、駆動側と従動側の関係が逆の構成であっても良い。また、定着ローラ101と加圧ローラ102の両方を回転駆動するとしても良い。
【0029】
励磁コイル104は、定着ベルト103の周回経路の外側であり、定着ベルト103から一定距離だけ離れた位置に配置されており、インバータ電源部80からの電力供給により、定着ベルト103の電磁誘導発熱層108を発熱させるための磁束を発生させる。この励磁コイル104からの磁束により電磁誘導発熱層108が発熱して、定着ベルト103が定着に必要な定着温度まで昇温される。
【0030】
励磁コイル104は、金属線を樹脂で被膜して構成される素線を多数本、ここでは100本程度を縒り合わせて1本にしたものからなるリッツ線を何重にも巻き回してなり、定着ローラ101の軸方向に沿って長尺状に延設されるように形成されている(図8)。
定着ローラ101、加圧ローラ102、定着ベルト103が回転している状態で、二次転写後のシートSが、定着ベルト103と加圧ローラ102の圧接により確保される定着ニップを通過して搬送路35を搬送方向に沿って搬送されつつ、定着ニップの通過の際に、加熱された定着ベルト103により加熱、加圧されて、シートS上の各色トナー像(未定着画像)が定着される。定着後のシートSは、排出ローラ対38を介して機外に排出され、収容トレイ39上に収容される。
【0031】
操作パネル60は、装置本体の前面であり、ユーザが操作し易い位置に配置され、ユーザにより入力操作されるキー群、例えばジョブの選択を受け付けるためのキー、記録用のシートサイズの選択などを受け付けるためのキーなどに加えて、各種メッセージを含む画面を表示させると共にユーザによるタッチ入力を受け付けるタッチパネル式の液晶表示部61が設けられている。
【0032】
低圧電源部70は、制御部50からの指示により、外部の商用電源からの交流電圧を直流に変換して、作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などに供給する。
インバータ電源部80は、制御部50からの指示により、商用電源からの交流電圧を、励磁コイル104に供給するための所定周波数の交番電流に変換して、定着部40の励磁コイル104に供給する。
【0033】
(2)制御部50の構成
図2は、制御部50の構成を示す図である。
同図に示すように、制御部50は、主な構成要素として、通信インターフェース(I/F)部51と、CPU52と、ROM53と、RAM54と、定着実行時間計測部55と、定着累積時間記憶部56と、タイマー57などを備え、各部は相互に信号やデータのやりとりを行えるようになっている。
【0034】
通信I/F部51は、ネットワーク、ここではLANと接続するためのLANカード、LANボードといったインターフェースであり、外部端末からLANを介して送られてくるプリントジョブのデータを受信する。
CPU52は、ROM53から必要なプログラムを読み出し、通信I/F部51を介して受信したプリントジョブのデータに基づき、作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などを制御して画像形成動作を円滑に実行させる。
【0035】
また、CPU52は、操作パネル60におけるユーザによる入力操作や、画像形成動作、通信処理等の所定のイベントが発生しない状態が一定時間続くと、節電モードへの移行条件を満たしたとして節電処理を実行する。
この節電処理は、低圧電源部70に指示して作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などの各モジュールへの電力供給を遮断させると共に、インバータ電源部80に指示して励磁コイル104への電力供給を遮断させ、待機中の消費電力を節約する節電モード(スリープ)に自動的に移行する処理である。
【0036】
節電モードの実行中に、節電解除要因、例えば操作パネル60の節電解除キー(不図示)が押下された場合や、外部端末からのプリントジョブのデータを受信した場合などが発生すると、通常モードへの移行条件を満たしたとして、節電を解除する。ここでは、低圧電源部70とインバータ電源部80に指示して、作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などの各モジュールおよび励磁コイル104への電源供給の遮断を解いて、電源供給を再開させる。節電が解除されている状態を、通常モードという。
【0037】
図3は、通常モードでのプリント実行中における電力供給の様子を示す図であり、図4は、節電モード(スリープ時)における電力供給の様子を示す図である。
プリント時には、図3に示すように外部の商用電源99からの電力が低圧電源部70を介して作像部10〜操作パネル60などの各モジュールと制御部50に供給されると共に、インバータ電源部80を介して励磁コイル104にも供給される。各モジュールには、感光体ドラム11を回転駆動させるためのモータ(不図示)や加圧ローラ102を回転駆動するための定着モータ105、シート有無やシートサイズなどを検出するためのセンサなども含まれる。同図は、低圧電源部70から最大で800〔W〕の電力が出力され、インバータ電源部80から最大で700〔W〕の電力が出力されている様子を示している。
【0038】
スリープ時には、図4に示すように外部の商用電源99からの電力が低圧電源部70を介して制御部50に供給されると共に(矢印71)、操作パネル60に設けられている節電解除のユーザの入力を受け付けるためのモジュール部分(不図示)に供給され(矢印72)、他の作像部10などのモジュールには供給されず(遮断され)、インバータ電源部80を介して励磁コイル104にも供給されないようになっている。同図は、低圧電源部70から制御部50と操作パネル60に対して100〔W〕の電力が出力されるが、インバータ電源部80からは電力が出力されていない様子を示している。
【0039】
このように低圧電源部70は、通常モード時とスリープ時とで出力電力の供給先を切り替える機能を有し、スリープ時には、供給先が制御部50と操作パネル60だけになるので、通常時よりも大幅に少ない電力量を出力するように電力量を切り替える。
インバータ電源部80は、CPU52からの指示により励磁コイル104への電力の供給と停止を切り替える。スリープ時では電力の供給が停止されるので、定着ベルト103が発熱せず、定着ベルト103の温度は、定着温度に維持されず、スリープ状態が長時間続けば、プリンタ1の設置環境の温度(室温)付近まで低下することになる。
【0040】
図2に戻って、ROM53には、プリントジョブを実行するための画像形成動作に関する制御プログラム、励磁コイル104のショートを検出するコイル異常検知処理(後述)に関する制御プログラムなどが記憶されている。RAM54は、CPU52のワークエリアとして用いられる。
定着実行時間計測部55は、定着動作、ここでは画像形成動作により定着モータ105が回転駆動される毎に、その駆動時間jをタイマー57を用いて計測する。
【0041】
定着累積時間記憶部56は、定着実行時間計測部55により計測された駆動時間jの累積値(定着累積時間)hを記憶する。ここでは、定着実行時間計測部55が定着モータ105の駆動時間jを計測する毎に、その計測時間jを、現に定着累積時間記憶部56に記憶されている定着累積時間hに加算し、加算して得られた時間(j+h)を新たな定着累積時間hとして書き換える(更新する)。定着累積時間hは、コイル異常検知処理の実行の要否を判断するために用いられる。
【0042】
(3)インバータ電源部80の回路構成
図5は、インバータ電源部80の回路構成の概略を示す図である。
同図に示すように、インバータ電源部80は、主な構成要素として、整流回路81と、共振コンデンサ82と、スイッチ素子83と、スイッチングCPU84と、コイルショート検知部85を備え、入力端子91、92に外部の商用電源99が接続され、出力端子93、94に励磁コイル104の一方の端子118と他方の端子119が接続される構成になっている。
【0043】
整流回路81は、商用電源99からの交流電圧を入力端子91、92を介して入力して、入力された交流電圧を全波整流して出力する。整流回路81の一方の出力端子95は、出力端子93に接続され、全波整流された電圧は、出力端子93から励磁コイル104、出力端子94、スイッチ素子83を介して整流回路81の他方の出力端子96(接地)まで接続される直列回路に印加される。
【0044】
共振コンデンサ82は、励磁コイル104に並列接続されており、励磁コイル104との間で共振回路を構成する。
スイッチ素子83は、NPN型のトランジスタからなり、トランジスタのコレクタが励磁コイル104を介して整流回路81の一方の出力端子95に接続され、エミッタが整流回路81の他方の出力端子96に接続され、ベースがスイッチングCPU84の出力端子841に接続されている。
【0045】
スイッチングCPU84は、制御部50のCPU52からの指示信号112を入力するための入力端子840と、スイッチ素子83のベースに対してスイッチング動作を指示する信号を出力するための出力端子841と、コイルショート検知部85からの信号を入力するための入力端子842を備え、入力した指示信号112に基づいてスイッチ素子83を所定の周期でオン/オフスイッチングまたはオフ状態を維持させる。
【0046】
本実施の形態では、制御部50からの指示信号112には、通常モード時のスイッチング動作を指示するための信号Aと、スリープ時にオフ状態を指示するための信号Bと、コイル異常検知処理時のスイッチング動作を指示するための信号Cの3種類がある。
<通常モード時の信号Aが入力されたとき>
スイッチングCPU84は、指示信号112として信号Aが入力されると、パルス状の駆動信号(HレベルとLレベル(0V)を交互に繰り返す信号)を出力端子841から出力する。この信号Aの周波数fは、例えば40〔kHz〕に設定される。
【0047】
スイッチ素子83は、スイッチングCPU84の出力端子841から出力された駆動信号がベースに入力されると、その駆動信号に基づきオンオフスイッチングを行う。
図6は、通常モード時のプリント中にスイッチ素子83がスイッチングされている間におけるスイッチ素子83のコレクタ−エミッタ間に流れる電流(コレクタ電流)Icと、コレクタにかかる電圧(コレクタ電圧)Vcの波形の例を示す図である。なお、同図は、全波整流後の電圧波形において、半周期毎に、最大電圧付近でスイッチングされた場合の電流、電圧波形の例を示している。このことは、後述の図7なども同様である。
【0048】
図6に示すように、コレクタ電流Icは、スイッチング周期t(信号Aの周波数fの1周期に相当)において時間t1(例えば、25〔μsec〕)だけオンする電流波形になっている。同図の時間t1は、周期tにおいてスイッチ素子83がオンしている時間、時間t2がオフしている時間に相当する。ここでは、1周期tのうち、時間t2においてコレクタ電圧Vcが共振によるピーク値を有する電圧になるように、時間t2の長さが予め決められている。時間t2の長さは、例えば共振周波数の約半周期に相当する時間が設定される。
【0049】
スイッチ素子83がオン(閉)にされると、励磁コイル104とスイッチ素子83の直列回路にコレクタ電流Icが流れ、スイッチ素子83がオフ(開)にされると、コレクタ電流Icが遮断されて、励磁コイル104と共振コンデンサ82からなる共振回路に共振による電流が流れる動作がオンオフスイッチングにより繰り返される構成になっている。
コレクタ電圧Vcの電圧波形は、共振作用により、1周期tごとに、スイッチ素子83のオン時間t1にはほとんど電圧が上がらず、オフ時間t2になると、オフ時間の始まりから上昇し、ピークを経て下降に転じてオフ時間の終わりに至るという山型の波形Gが発生する電圧波形になっている。コレクタ電圧Vcのピーク・ツー・ピークの値Vppは、例えば600〔V〕である。
【0050】
このスイッチ素子83のオンオフスイッチングにより、励磁コイル104に共振による電流(交番電流)が流れ、励磁コイル104から、定着ベルト103の電磁誘導発熱層108を発熱させるための磁束が発生して、電磁誘導発熱層108が発熱する。
制御部50のCPU52は、定着ベルト103の表面温度をセンサ(不図示)で常時検出しており、定着ベルト103の表面温度が定着温度よりも低下するとスイッチングCPU84に対して信号Aを出力させ、定着温度以上になると信号Aの出力を停止させる。
【0051】
スイッチ素子83は、信号Aが出力されている間にオンオフスイッチングを行い、信号Aの出力が停止されている間にはオンオフスイッチングを行わない。従って、信号Aの出力中には、励磁コイル104から磁束が発せられて電磁誘導発熱層108が発熱し、信号Aの出力の停止中には、励磁コイル104からの磁束の発生が停止されて電磁誘導発熱層108が発熱せず、電磁誘導発熱層108の発熱とその停止が繰り返されることにより、定着ベルト103の表面温度が定着温度に維持される。この信号Aの出力と停止の繰り返しにより定着ベルト103の表面温度を定着温度に維持する制御を定着温調制御という。
【0052】
<スリープ時の信号Bが入力されたとき>
スイッチングCPU84は、信号Bが入力されると、Lレベルの信号を出力し続ける。これにより、スイッチ素子83のスイッチングが停止されて、励磁コイル104に交番電流が流れず、定着ベルト103の電磁誘導発熱層108が発熱しない状態になる。
<コイル異常検知時の信号Cが入力されたとき>
スイッチングCPU84は、信号Cが入力されると、信号Aの入力時(通常モード時)よりもスイッチ素子83のオン時間が長い(1周期におけるオン/オフデューティのオンの比率が大きい)パルス信号を出力端子841から出力する。これにより、1周期において励磁コイル104に流れる電流量が通常モードのときよりも増えるので、共振によるコレクタ電圧のピーク値が高くなる、すなわち励磁コイル104にかかる電圧が高くなる。
【0053】
図7は、コイル異常検知時にスイッチ素子83がスイッチングされている間におけるコレクタ電流Icとコレクタ電圧Vcの波形の例を示す図である。
同図に示すように、コレクタ電流Icは、1周期Tにおいて、通常モード時の時間t1よりも長い時間t11(例えば、35〔μsec〕)だけオンし、時間t21については通常モード時(t2)と同じ長さだけオフする電流波形になっており、コレクタ電圧Vcのピーク・ツー・ピークの値(Vpp)が、通常モード時のVppよりも高い値、例えば1000〔V〕になっている。同図の例では、コレクタ電圧Vcの波形のピーク値を示す部分に放電波形Zが重畳されている。この放電波形Zは、励磁コイル104の巻き線間のショートにより発生したものを示している。
【0054】
図8は、励磁コイル104の全体の外観と励磁コイル104にショートが発生している様子の例を示す図である。
同図では、励磁コイル104の巻き線(リッツ線)115における隣り合う部分AとBに異物混入などにより素線の絶縁被膜に傷121が生じ、この傷121を介して部分Aにおける数本の素線の金属線と、部分Bにおける数本の素線の金属線とがわずかに接触することによりショートが発生する場合の例を示している。
【0055】
また、巻き線115における部分CとDに生じたほつれ122などにより絶縁被膜が薄くなりその部分の絶縁性が低下して、部分Cと部分D間でリーク電流が流れることによりショートが発生する場合の例も合わせて示している。このリーク電流は、素線の絶縁被膜に傷が入ることによっても生じ得る。通常は、いずれか一方のショートが発生する。以下、上記のショートをレアショートという。
【0056】
レアショートが発生する場合、ショートした瞬間に部分AとB間(部分CとD間)に放電が発生することが多く、放電が発生すると、その放電に伴うノイズが、特定の周波数領域、例えば300〔kHz〕〜300〔MHz〕の高周波の交番電流(高周波電流)として、ショートしている部分を介して励磁コイル104の巻き線115に入力され、励磁コイル104に流れる電流に重畳する。この重畳した高周波電流の電圧波形が図7の放電波形Zに相当する。
【0057】
図7では、コレクタ電圧Vcの波形において、ピークを示す3つの波形部分のうち、真ん中の波形部分だけに放電波形Zが現れている例を示しているが、他の波形部分については図示が省略されており、実際には同様に放電波形Zが現れる。ショートする巻き線(素線)間における放電は、その素線間の電位差が空気の絶縁破壊に至る以上の大きさにならないと発生しない。同図では、放電が発生する電位差の生じた時期が、コレクタ電圧Vc(励磁コイル104に掛かる電圧)のピークの部分である場合の例が示されている。
【0058】
なお、同図において、時間β10は、周期Tごとに、コレクタ電圧Vcの電圧波形のうち、スイッチ素子83がオフしているオフ時間(開時間)t21における山型波形Gの立ち上がり(上昇し)始めの時点α1を境に時間の前後にそれぞれ、時間t21の10%に当たる時間β1と時間β3をとった場合にその前後の時間β1とβ3を足し合わせた時間幅に相当する。
【0059】
また、時間β20は、周期Tごとに、山型波形Gの立ち下がり(下降)の終わりの時点α2を境に時間の前後にそれぞれ、時間t21の10%に当たる時間β2と時間β4をとった場合にその前後の時間β2とβ4を足し合わせた時間幅に相当する。
これら時間β10とβ20は、1周期T内において、放電波形Z、すなわちレアショートによる高周波電流を検出する検出時間の範囲から外される時間に相当する。これは、時間β10とβ20では、コレクタ電圧Vcの電圧値がピーク時よりも大幅に小さいために、放電による高周波電流が重畳することがほとんどなく、別のノイズ成分が重畳された場合に、時間β10とβ20を検出時間に含めておくと、この別のノイズ成分を放電による高周波電流と誤検出するおそれが生じ易くなるからである。
【0060】
時間β10とβ20の長さとそれぞれの開始時期と終了時期は、予め周期Tと時間t11、t21の比率などから求めることができるので、周期T毎に、時間β10とβ20におけるコレクタ電圧Vcの検出結果からは、後述のようにレアショートによる高周波電流の有無の判断が行われないようになっている。
なお、時間β1とβ2は、それぞれ所定時間として、時間t21の10%の長さとしたが、この値に限られない。また、例えば、検出に適した電圧値の範囲(別のノイズ成分による誤検知を回避できると想定される電圧の範囲)の下限値を予め決めておき、ピークを有する電圧波形Gのうち、当該下限値より電圧値が低い波形部分における電圧検出を行わない(換言すると、当該下限値(所定値)以上の波形部分における電圧検出を行う)とすることもできる。
【0061】
図5に戻って、スイッチングCPU84は、制御部50のCPU52からの信号A〜Cのそれぞれの入力に対して、予め決められた上記の駆動信号を出力端子841から出力できるように回路が構成される。
コイルショート検知部85は、フィルタ86と、増幅器87と、比較器88を備える。
フィルタ86は、コレクタ電圧Vcに重畳されている高周波電流に相当する周波数成分を通過させ(取り出し)、これよりも低いおよび高い周波数成分を遮断(または減衰)させるバンドパスフィルタからなり、取り出した高周波電流の周波数成分を示す信号を増幅器87に出力する。
【0062】
図9(a)は、スイッチング周波数の1周期Tの区間において、フィルタ86により取り出された高周波電流の周波数成分の電圧波形191を例示する図であり、この電圧波形191は、放電波形Zに相当する信号成分になる。
高周波電流の周波数領域は、予め実験などから求められ(上記の例では、300kHz〜300MHz)、この領域外の周波数、例えばスイッチング周波数(上記の例では、40kHz程度)の成分などをカットするバンドパスフィルタが用いられている。なお、高周波電流の周波数成分を取り出すことができれば良く、例えば高周波電流を通過させるがスイッチング周波数の信号成分を遮断するハイパスフィルタを用いることもできる。
【0063】
増幅器87は、フィルタ86からの高周波電流の周波数成分を示す信号の電圧を増幅して比較器88に出力する。
比較器88は、増幅器87からの信号の電圧値を所定のしきい値Qと比較して、信号の電圧値がしきい値Q以上であればHレベルの信号を出力し、しきい値Qよりも小さければLレベルの信号を出力する。
【0064】
図9(b)は、増幅器87による増幅後の信号の電圧値がしきい値Qを超えている様子を示す図であり、図9(c)は、図9(b)に示す信号が比較器88に入力されたときに出力される信号波形192を示す図である。このように、レアショートに起因して発生する放電により励磁コイル104に流れる電流に重畳される高周波電流の増幅後の電圧がしきい値Q以上であれば、Hレベルの信号が比較器88から出力されることになる。
【0065】
ここで、しきい値Qは、レアショートによる高周波電流を検出することができ、かつ、レアショートとは関係のないノイズ成分などを排除することができる値が、増幅器87の増幅率の大きさとの関係を考慮して予め実験などから求められる。この意味で、フィルタ86、増幅器87、比較器88などは、励磁コイル104における巻き線間のショート時の放電に伴う高周波電流に相当する周波数の交番電流を検出する検出手段として機能するものといえる。
【0066】
比較器88の出力信号は、スイッチングCPU84の入力端子842に出力される。
スイッチングCPU84は、比較器88からの出力信号を受信すると、受信した信号波形192をスイッチング周期Tごとにモニターする。そして、スイッチ素子83のオフ時間t21の信号波形G(図7)において、時点α1から時間β1が経過した時点γ1(β1の終了時点に相当)から、時点α2から時間β2だけ時間を遡った時点γ2(β2の開始時点に相当)までの間の波形部分について、Hレベルの信号がスイッチング周期T毎に所定回数を超える回数で検出される場合には、レアショートが発生していることを判断し、そうでない場合には、レアショートが発生していないことを判断する。
【0067】
これにより、時間β10とβ20におけるコレクタ電圧Vcの電圧値による検出結果が反映されなくなって、レアショート発生の誤検出を抑制することができる。
図5に戻り、スイッチングCPU84は、この判断結果、すなわちレアショートが発生していること、または未発生であることを、検知結果信号113として出力端子843から制御部50のCPU52に出力する。CPU52は、スイッチングCPU84からの検知結果信号113により、レアショートの発生の有無を判断することができる。
【0068】
(4)レアショートの発生の有無を判断するための処理の内容
図10は、レアショートの発生の有無を判断するための処理の内容を示すフローチャートであり、制御部50のCPU52により不図示のメインルーチンにより所定時間、例えば数ミリ秒毎にコールされることにより繰り返し実行される。
同図に示すように、通常モードであるか否かを判断する(ステップS1)。通常モードであることを判断すると(ステップS1で「YES」)、節電モードの移行条件を満たすか否かを判断する(ステップS2)。節電モードの移行条件は、上記の所定のイベントが発生しない状態が一定時間続くことである。
【0069】
節電モードへの移行条件を満たしていないことを判断すると(ステップS2で「NO」)、リターンする。この場合、通常モードが継続される。
節電モードへの移行条件を満たしていることを判断すると(ステップS2で「YES」)、通常モードから節電モードに移行させて(ステップS3)、ステップS4に移る。この節電モードへの移行に伴い、インバータ電源部80に対してスイッチングを指示するための指示信号112として信号Bを出力する。インバータ電源部80は、信号Bの受信によりスイッチ素子83のスイッチングを停止する。これにより、励磁コイル104に交番電流が流れず、定着ベルト103の加熱が停止される。
【0070】
なお、ステップS1で通常モードではない、すなわち節電モードであることを判断すると(ステップS1で「NO」)、ステップS4に移る。
ステップS4では、フラグFが0であるか否かを判断する。このフラグFは、後述のステップS12において節電モードから通常モードに移行したときに0に設定される。
フラグF=0であることを判断すると(ステップS4で「YES」)、定着累積時間記憶部56に現に記憶されている定着累積時間hを示す情報を読み出す(ステップS5)。
【0071】
読み出した定着累積時間hが所定値h0以上であるか否かを判断する(ステップS6)。ここで、所定値h0は、コイル異常検知処理の実行の要否を定着累積時間hの長さに基づいて判断するためのしきい値として予め求められているものである。例えば、所定枚数(1000枚など)のシートSにプリントを実行するのに、駆動させるべき定着モータ105の駆動時間に相当する時間などとすることができる。レアショートは、例えば素線の絶縁被膜の絶縁抵抗が長期間に亘って徐々に低下することなどにより発生することが多く、ある程度の期間毎にコイル異常検知処理を実行するのが適しているからである。
【0072】
定着累積時間h≧所定値h0であることを判断すると(ステップS6で「YES」)、定着累積時間記憶部56に記憶されている定着累積時間hを0(ゼロ)にリセットして(ステップS7)、コイル異常検知処理を実行する(ステップS8)。
図11は、コイル異常検知処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
同図に示すように、インバータ電源部80に対して異常検知時のスイッチングを指示する(ステップS81)。ここでは、スイッチングを指示するための指示信号112を、スリープ時の信号Bから、異常検知時におけるスイッチングを指示するための信号Cに切り替える。この信号Cの出力は、所定時間tc(例えば、1≦tc≦10秒)だけ継続され、所定時間tcが経過すると、信号Bの出力に切り替える(元に戻される)。この所定時間tcの間は、励磁コイル104への供給電力だけを見ると、一時的に節電モードが解除された状態になったといえる。
【0073】
インバータ電源部80は、上記のように信号Cの受信によりスイッチ素子83のスイッチング(通常モードよりもオン時間が長いスイッチング)を所定時間tcだけ実行する。
図12は、コイル異常検知処理時における電力供給の様子を示す図である。
同図に示すようにコイル異常検知処理時には、低圧電源部70についてはスリープ時と同じであるが、インバータ電源部80については、スイッチ素子83のスイッチング時間が通常時よりも多い分、消費電力も通常モードよりも多い、同図の例では最大で1400〔W〕の電力が供給されることが判る。
【0074】
これにより、励磁コイル104に交番電流が流れ、定着ベルト103の加熱が開始される。この時点で励磁コイル104にレアショートが発生していれば、励磁コイル104に流れる電流に重畳される高周波電流がインバータ電源部80のスイッチングCPU84とコイルショート検知部85などにより検出され、その検出結果を示す検知結果信号113がインバータ電源部80から制御部50のCPU52に出力される。
【0075】
図11に戻り、CPU52は、インバータ電源部80からの検知結果信号113を受信して(ステップS82)、受信した検知結果信号113からレアショートの発生の有無を判断する(ステップS83)。ここでは、上記のようにインバータ電源部80のスイッチングCPU84によるレアショート発生の判断結果から、検出の判断がなされている場合には、レアショートが発生していると判断し、未検出の判断がなされている場合には、レアショートが発生してないことを判断する。
【0076】
レアショートが発生していることを判断すると(ステップS84で「YES」)、励磁コイル104に異常(トラブル)が発生している旨を出力、ここでは異常の発生を示すメッセージを操作パネル60の液晶表示部61に表示させて(ステップS85)、リターンする。この場合、節電モード中ではあるが液晶表示部61にも電力供給がなされる。
ユーザは、液晶表示部61のメッセージ表示を目視することにより、励磁コイル104に異常(トラブル)が発生していることを知ることができ、点検や修理のためにサービスマンに通報することができる。
【0077】
レアショートが発生していないことを判断すると(ステップS84で「NO」)、ステップS95を実行せずに(スキップして)、リターンする。
図10に戻り、ステップS8のコイル異常検知処理を終了すると、フラグFを1に設定して(ステップS9)、ステップS10に移る。
ステップS6で定着累積時間h≧所定値h0ではない、すなわちh<所定値h0であることを判断すると(ステップS6で「NO」)、コイル異常検知処理の実行時期に達していないとして、コイル異常検知処理を実行せずに(ステップS7、S8をスキップして)、ステップS9に移り、フラグFを1に設定した後、ステップS10に移る。
【0078】
ステップS10では、節電モードから通常モードへの移行条件を満たしているか否かを判断する。通常モードへの移行条件は、上記の節電解除要因が発生したことである。
通常モードへの移行条件を満たしていないことを判断すると(ステップS10で「NO」)、リターンする。この場合、次回のコールにより当該処理が開始されると、ステップS1では節電モードと判断され(ステップS1で「NO」)、ステップS4ではF=0ではないと判断され(ステップS4で「NO」)、ステップS10では通常モードへの移行条件を満たしていないと判断されて(ステップS10で「NO」)、リターンする。これにより、節電モードが継続され、節電モード中には上記の処理が繰り返される。
【0079】
ステップS10で、通常モードへの移行条件を満たしていることを判断すると(ステップS10で「YES」)、節電モードから通常モードに移行させて(ステップS11)、フラグFを0に設定した後(ステップS12)、リターンする。この通常モードへの移行に伴い、上記の定着温調制御が実行される。
次回のコールにより当該処理が開始されると、ステップS1では通常モードと判断され(ステップS1で「YES」)、ステップS2で節電移行条件を満たさないと判断されると(ステップS2で「NO」)、リターンする。これにより、通常モードが継続される。
【0080】
以上、説明したように本実施の形態では、レアショートの検出を、レアショートによる放電に伴う高周波電流に相当する周波数の交番電流を検出する構成をとったので、放電が起き得る状態、すなわち励磁コイル104における数本程度の素線のショート、素線の絶縁抵抗の低下によるショートなどを早期に精度良く検出することができるようになる。
また、コイル異常検知時には、励磁コイル104にかかる電圧を通常モード時よりも高くしているので、励磁コイル104にレアショートが発生していればそのレアショートによる放電が起こり易くなり、通常モード時に検出するよりも検出精度をより向上させることができる。
【0081】
なお、上記では、スイッチ素子83のスイッチング周期において、時間β10とβ20におけるコレクタ電圧Vcの電圧値に基づくレアショート発生の有無の判断を行わない(判断を禁止する)としたが、これに限られない。装置構成によっては、時間β10とβ20の間にもレアショートによる高周波ノイズが重畳するという蓋然性がある程度、存在する場合もあり得る。このような場合には、時間β10とβ20をレアショート発生の有無の判断するための時間に含める構成をとるとしても良い。
【0082】
また、上記の図6や図7では、商用電源99の交流の周波数F(50または60Hz)のうち、半波の電圧波形のピーク部分をスイッチングした場合の例を説明したが、ピーク部分だけではなく、半波毎にその周期の始め(電圧の立ち上がりの開始点)からピークを介して終わり(電圧の立ち下がりの終了点)に至るまでの間、周期Tごとに励磁コイル104に流れる電流がスイッチングされ、スイッチングにより周期Tごとに共振電流が発生し、発生した共振電流が励磁コイル104に供給される。
【0083】
従って、レアショートが発生していればピーク時以外のときにもコレクタ電圧Vcに高周波電流が重畳されることから、その重畳された高周波電流を検出できることにはなるが、ピーク時に電圧値が最も高くなり、時点α1やα2(電圧の立ち上がり始め時点や立ち下がりの終わりの時点)の付近では電圧値が最も小さくなるので、電圧が最大になるピーク、またはピークを含む前後付近の時間帯の方が高周波電流を検出し易いといえる。
【0084】
また、上記では、励磁コイル104の巻き線間のレアショートによる放電で発生する高周波電流を検出するとしたが、放電の発生は、巻き線間のレアショートに限られない。
例えば、励磁コイル104の両端の接続端子118、119とインバータ電源部80の出力端子93、94とをネジなどにより締結する際の締め付け不足による接触不良により、端子間に放電が発生する場合があり得る。この場合も放電により発生した高周波ノイズが高周波電流として、励磁コイル104に流れる交番電流に重畳されることがあれば、この高周波ノイズをコイルショート検知部85で検出することができる。
【0085】
また、上記の締結時の接触不良だけでなく、例えば締結作業などの際に、励磁コイル104の巻き線115と接続端子118、119とを接続している被覆電線117(図8)の一部が装置フレーム(不図示)に噛み込み、被覆の一部が削れて、被覆の削れた部分の絶縁抵抗が低下して、絶縁抵抗が低下した部分において被覆電線117と装置フレーム(接地)間で放電が起きるような場合も接触不良と同様に検出対象になり得る。
【0086】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、励磁コイル104に流れる電流に重畳される高周波電流をフィルタ86により取り出す構成としたが、本実施の形態2では、励磁コイル104ではなく、長尺形状の励磁コイル104における長手方向一方の端部に重なるようにして配置された消磁コイルに流れる電流に重畳される高周波電流をフィルタ86により取り出す構成としており、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0087】
図13は、励磁コイル104と消磁コイル250の構成を示すと共に、励磁コイル104と消磁コイル250と通紙されるシートSの幅との大小関係を模式的に示す図である。
同図では、定着ベルト103などの部材が省略されているが、同図の左右方向が定着ローラ101の軸方向(シート幅方向)に相当し、定着ベルト103のシート幅方向長さL0が最大サイズのシートS(大サイズ紙)のシート幅Lよりも長く、シート幅方向に沿って延設された励磁コイル104のシート幅方向長さが定着ベルト103の長さL0よりも長くなっている。これにより、大サイズ紙が通紙されても、定着ベルト103を大サイズ紙のシート幅方向全域に亘って定着温度まで昇温させることができるようになっている。
【0088】
本実施の形態では、搬送されるシートSが大サイズ紙でも、これよりもシート幅が短い所定サイズ以下のもの(小サイズ紙)でも、シート幅方向の一方の端縁S0がシート幅方向の片側に設けられた基準位置Rに合うように搬送路35上を通紙方向(同図の上方向)に沿って搬送される、いわゆる片側基準の搬送方式が採用されている。
従って、小サイズ紙が通紙される場合には、定着ベルト上では、そのシート幅L0の全域のうち、シート幅方向に小サイズ紙が通過する通紙領域L1と小サイズ紙が通過しない非通紙領域L2とができることになる。この場合、通紙領域L1では、搬送される小サイズ紙に熱を奪われるために定着温度よりも高くなることはないが、非通紙領域L2では、小サイズ紙に熱を奪われないために定着温度よりも高くなって過昇温になり、定着部40周辺に配置される部材を熱劣化させるなどの影響を与えるおそれが生じる。
【0089】
そこで、小サイズ紙が通紙される場合の非通紙領域L2における過昇温を防止するために、消磁コイル250が励磁コイル104の延設方向端部側である非通紙領域L2に対応する位置に配されている。
消磁コイル250は、励磁コイル104に密着するようにして励磁コイル104の非通紙領域L2に対応するコイル部分に臨設され、当該コイル部分から発せられる磁束を打ち消すための磁束を非通紙領域L2に相当する範囲で発生させる(消磁)。
【0090】
この消磁コイル250の消磁作用により、定着ベルト103の電磁誘導発熱層108のうち、シート幅方向に非通紙領域L2に相当する部分では発熱が起こらず、非通紙領域L2の過昇温が防止される。
消磁コイル250の巻き線251は、リッツ線からなり、一方の端子252と他方の端子253がインバータ電源部201に接続されている。
【0091】
図14は、本実施の形態2に係るインバータ電源部201の回路構成を示す図である。
同図に示すように、インバータ電源部201は、基本的に実施の形態1と同じ構成であるが、消磁コイル250を短絡、開放させるための回路202が設けられている点、およびフィルタ86に入力される電圧がコレクタ電圧Vcではなく、回路202に印加される電圧である点で相違している。
【0092】
回路202は、スイッチ203と、スイッチ203の一方の端子231と消磁コイル250の端子252に接続される端子211とを繋ぐ電路221と、スイッチ203の他方の端子232と消磁コイル250の他方の端子253に接続される端子212とを繋ぐ電路222を有する。ここで、電路221は、別の電路223を介してフィルタ86に電気的に接続されており、電路222は接地されている。
【0093】
スイッチ203は、制御部50のCPU52からのオン/オフ信号により開閉する。CPU52は、使用されるシートSが小サイズ紙の場合にはオン(閉)信号を出力する。
これにより、小サイズ紙の場合にはスイッチ203が閉じられて、消磁コイル250の一方端と他方端とが短絡状態かつ接地された状態になる。このようになると、励磁コイル104から磁束が発生したとき、これを打ち消す方向の磁束が消磁コイル250に生じ、励磁コイル104における非通紙領域L2に対応する巻き線部分から発せられる磁束が抑制されることになり、非通紙領域L2において定着ベルト103の加熱が抑制されて過昇温が防止される。このとき、電路221〜223が接地状態と同じになるので、フィルタ86への入力電圧が0Vになる。
【0094】
一方、CPU52は、使用されるシートSが大サイズ紙の場合には、オフ(開)信号を出力する。オフ(開)信号によりスイッチ203が開の状態になると、消磁コイル250が短絡状態にはならず、励磁コイル104から発せられる磁束を打ち消す消磁作用が働かない。これにより、定着ベルト103においてシート幅Lの全域に亘って加熱され、大サイズ紙の定着が良好に行われる。
【0095】
スイッチ203が開の状態になるときには、電路222(接地)から消磁コイル250、電路221、電路223を介してフィルタ86に至る直列回路が形成される。励磁コイル104に交番電流が流れている間、消磁コイル250には、励磁コイル104から発せられる磁束により誘導起電力が発生するので、発生した誘導起電力による電圧が電路221、223を介してフィルタ86に入力されることになる。
【0096】
励磁コイル104にレアショートが発生していると、励磁コイル104に流れる電流に高周波電流が重畳するが、この高周波電流が電磁誘導により励磁コイル104から消磁コイル250に伝達されて、消磁コイル250に流れる電流に、高周波電流と同様の高周波ノイズ波形の電流(この電流も「高周波電流」という。)が重畳される。
消磁コイル250に流れる電流に重畳した高周波電流は、消磁コイル250から電路221、電路223を介してフィルタ86に入力される。フィルタ86に入力される電圧に高周波電流が重畳されていることは、実施の形態1と同様であるので、フィルタ86、増幅器87、比較器88により高周波電流を検出して、その検出結果を示す検知結果信号113をCPU52に送ることができる。
【0097】
CPU52は、実施の形態1と同様にコイル異常検知処理(ステップS8)において、スイッチ203をオフ(開放)させると共に、励磁コイル104への供給電力を通常モードよりも大きくすることにより、レアショートによる放電を起こさせ易くして、消磁コイル250に流れる電流に重畳される高周波電流の検出結果をインバータ電源部201から取得して、レアショート発生の有無を判断することができる。
【0098】
なお、上記では、シート搬送を片側基準の搬送方式の例を説明したが、例えば搬送路35の幅方向中央の位置を基準に、その基準位置にシートSのシート幅方向中央の位置が合うようにしてそのシートSを搬送する、いわゆるセンター基準の搬送方式の構成にも適用できる。センター基準の搬送方式では、小サイズ紙を通紙する際、定着ベルト103においてシート搬送方向両側のそれぞれに非通紙領域が存在することになるので、それぞれの非通紙領域に対して消磁コイルをそれぞれ配置する構成をとることができる。
【0099】
この構成をとる場合、それぞれの消磁コイルに対して短絡と開放のための回路を設け、両方の回路または一方の回路をフィルタ86に接続する構成をとることができる。
<実施の形態3>
上記実施の形態1では、通常モード時でもコイル異常検知時でも、インバータ電源部80のスイッチ素子83をオンオフスイッチングすることにより、励磁コイル104に交番電流を流すとしたが、本実施の形態3では、通常モード時にはスイッチ素子83をオンオフスイッチングし、コイル異常検知時にはスイッチ素子83に代えて高耐圧リレーをオンオフスイッチングする構成をとっており、この点が実施の形態1と異なっている。
【0100】
図15は、本実施の形態3に係るインバータ電源部301の回路構成を示す図である。
同図に示すように、インバータ電源部301は、基本的に実施の形態1と同じ構成であるが、出力端子94とスイッチ素子83のコレクタとの間に高耐圧リレー303が介在していると共に、出力端子94の電圧Vaがフィルタ86に入力されるようになっており、スイッチングCPU302には、高耐圧リレー303にオンオフスイッチングのための信号を出力する出力端子311が設けられ、スイッチ素子83と高耐圧リレー303とが別々にスイッチング制御される点で相違している。
【0101】
このようにトランジスタからなるスイッチ素子83とは別に高耐圧リレー303を設けているのは、次の理由による。すなわち、上記のようにレアショートによる高周波電流は、通常モード時よりも励磁コイル104への供給電力を多くして、励磁コイル104に流れる交番電流の電圧値をより高くすることにより発生させ易い。
励磁コイル104に流れる交番電流の電圧値を高くするということは、それだけスイッチ素子83の耐電圧を上げる必要が生じるが、通常のトランジスタは耐電圧がそれほど大きくない。耐電圧を大きくするため、複数のトランジスタを直列に並べる方法が考えられるが、トランジスタ導通時の抵抗が大きくなり、通常動作時のインバータ電源効率を悪化させる不具合を生じさせる。このためトランジスタを用いる場合には、電圧値を高くするにも限界がある。
【0102】
そこで、実施の形態3では、コイル異常検知時には、トランジスタからなるスイッチ素子83よりも耐電圧の高い高耐圧リレー303も用いてスイッチングを行うものである。
図16は、コイル異常検知時におけるコレクタ電流Icと高耐圧リレー303の励磁コイル104に接続される側の端子にかかる電圧Vaの波形と、スイッチ素子83と高耐圧リレー303のオンオフタイミングを示すタイミングチャートの例を示す図である。
【0103】
同図に示すように、スイッチ素子83がオフ(開)、高耐圧リレー303がオン(閉)の状態で、スイッチ素子83がオフからオン(閉)に切り替えられると(時点tx)、コレクタ電流Icが流れ始めて電流値が上昇する。時点txから時間t3の経過時点tyにスイッチングCPU302の出力端子311から高耐圧リレー303に対してオンからオフへの切り替え指示(リレー切り替え信号)が出力される。
【0104】
高耐圧リレー303は、トランジスタよりもオンオフの切り替えに時間がかかり、そのため切り替え指示(時点ty)から、切り替えに要する時間t4の経過時点tzに高耐圧リレー303が実際にオフに切り替わる。高耐圧リレー303がオフに切り替わると、コレクタ電流Icが流れなくなり、励磁コイル104と共振コンデンサ82からなる共振回路に電流が流れて、電圧Vaの電圧波形がピークを有する山型の波形Gになる。
【0105】
励磁コイル104にレアショートが生じていれば、これに起因する放電波形Zが電圧波形Gに重畳される。
この場合、電圧波形Gの、上昇し始めの時点α1から時間β1を経過した時点γ1以降の波形部分における電圧の検出値に基づき高周波電流(放電波形Z)に相当する周波数の電流の検出を行うこともできるし、ピークまたはピークを含む前後付近の時間帯における波形部分の電圧の検出値に基づき高周波電流の検出を行うとしても良い。
【0106】
時間t3とt4の和である時間t12は、励磁コイル104に流れる電流が流れ始めてから略最大値に達するまでに要する時間に相当し、上記の時間t11よりも長い時間であり、時間t4は、上記のように高耐圧リレー303の切り替えに要する時間(遅延時間)である。時間t12とt4は、予め実験などから求めることができ、時間t12からt4を差し引くことにより時間t3を求めておいて、スイッチ素子83のオン時点txから時間t3を経過した時点tyにリレー切り替え信号を出力させると、励磁コイル104への電流量が略最大に達した時点tzで高耐圧リレー303をオフさせることができる。
【0107】
このようにすれば、電圧Vaのピーク値を例えば実施の形態1よりも大きくすることができ、電圧波形に重畳される放電波形Zの電圧も大きくなるので、レアショートによる高周波電流をより精度良く検出することができる。そして、電圧Vaの電圧波形がピークを有する山型の波形Gになっている間、高耐圧リレー303がオフになっているので、スイッチ素子83には、耐圧を超えるような大きな値の電圧がかかることがない。
【0108】
なお、上記では時間t12が時間t11よりも長い時間としたが、これに限られず、装置構成によって、例えば時間11と同等としたり短くしたり、また時間t11を時間t12と同等の時間に設定することもできる。
高周波電流が重畳された電圧Vaがフィルタ86に入力されると、実施の形態1と同様に、この高周波電流がフィルタ86で取り出され、取り出された信号の電圧が増幅器87で増幅された後、比較器88において増幅された信号としきい値とが比較される。スイッチングCPU302は、その比較結果に基づきレアショートの有無を判断し、その判断結果を検知結果信号113として制御部50のCPU52に出力する。
【0109】
なお、通常モード時では、スイッチングCPU302は、制御部50のCPU52からの指示信号112(信号A)が入力端子840に入力されると、出力端子311からオン(Hレベル)信号を出力して、高耐圧リレー303をオン(閉)状態に維持させる。
スイッチ素子83に対して出力端子841から出力される信号については、実施の形態1と同じである。
【0110】
これにより、通常モード時において信号Aが入力されている間だけ、スイッチ素子83のオンオフスイッチングにより励磁コイル104に交番電流が流れて定着ベルト103が加熱されることになる。
スリープモード時では、スイッチングCPU302は、制御部50のCPU52からの指示信号112(信号B)が入力端子840に入力されると、出力端子311からオフ(Lレベル)信号を出力して、高耐圧リレー303をオフ(開)状態に維持させる。これにより、励磁コイル104に交番電流が流れずに、定着ベルト103の加熱が停止される。
【0111】
このようにスイッチ素子83とは別に高耐圧リレー303を設けることにより、レアショートの検出を行い易くなる。また、ショートの初期段階、例えば絶縁被膜のピンホールが最初は微小であるが、経時的に熱の影響などにより広がっていくような場合の最初の段開において、励磁コイル104に流れる交番電流の電圧が低いために放電に至らず、その時点でレアショートを検出できない場合でも、本実施の形態のように、より高電圧がかかるようにすることによって放電に至れば、レアショートを検出できることから、レアショートをより早期に発見することが可能になる。
【0112】
なお、高耐圧リレー303としては、耐電圧が励磁コイル104に発生する電圧の最大値よりも高いものであれば良く、仕様が特に限定されることはない。また、リレーである必要もなく、スイッチ素子83よりも耐電圧の高いスイッチ素子を用いることができる。
また、上記では、スイッチ素子83と高耐圧リレー303のオンとオフを順次切り替えて、山形の電圧波形Gを1つだけ出力させて、この電圧波形Gに重畳されている高周波電流(放電波形Zに相当)を検出する構成例を説明したが、これに限られない。
【0113】
例えば、上記の動作を連続的に繰り返して実行することにより、その繰り返しの数だけピークを有する電圧波形Gを出力させ、それぞれの電圧波形から、それらに重畳されている高周波電流を検出して、レアショートの発生の有無を判断する構成(実施の形態1の構成に相当)をとることもできる。なお、電圧波形の1つによりレアショートを検出する構成は、例えば実施の形態1などにも適用可能であろう。
【0114】
さらに、上記ではインバータ電源部が共振回路を有するものであったが、これに限られず、励磁コイル104に交番電流を供給可能な回路を有する電源部に適用できる。また、スイッチ素子としてトランジスタを用いる例を説明したが、これに限られないことはいうまでもなく、開閉により通電と遮断を切り替え可能な素子一般を用いることができる。
本発明は、画像形成装置に限られず、レアショートを検出し、その検出結果を出力する方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0115】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、コイル異常検知処理の実行条件を、定着動作中以外の所定の期間内として、節電モードかつ定着累積時間hが所定値h0以上のときとしたが、これに限られることはない。
【0116】
例えば、定着累積時間hを、励磁コイル104への給電時間の累積値を指標する値の1つと捉えれば、定着累積時間hに代えて、当該指標値に含まれるもの、例えば画像形成動作が行われている時間(プリント指示から最後のシート排出までの時間)の累積値(累積画像形成動作時間)、シートの累積プリント枚数、感光体ドラムの累積回転時間などのいずれか1つを用いるとしても良い。
【0117】
また、定着累積時間hの大小に関わらず、例えば節電モードに移行する毎にコイル異常検知処理を実行する構成をとることもできる。この場合、実行時期を節電モード中のいずれかの時期としても良い。また、節電モードに移行してから(図10のステップS3)、所定時間の経過後とすることもできる。所定時間としては、例えば節電モードへの移行により定着ベルト103への加熱が停止してから定着ベルト103の温度が定着温度から室温(装置設置環境)程度まで下降するのに要すると想定される時間とすることができる。
【0118】
コイル異常検知処理では、通常モード時よりも励磁コイル104への供給電力が多くなり、一時的とはいえ定着ベルト103の温度が通常モード時よりも高くなることがあり得るので、定着ベルト103の表面温度が室温程度まで下がっている状態で開始するように制御すれば、定着ベルト103の昇温をできるだけ抑制することができる。
さらに、装置構成によっては、励磁コイル104への供給電力量が通常モード時と同じであってもレアショートによる放電に至る場合もあり得、この構成であれば節電モードへの移行に関わらず、例えば通常モード時(待機中や画像形成動作中など)にコイル異常検知処理を実行することも可能である。もちろん、この構成では励磁コイル104への供給電力量を多くする制御は実行されない。励磁コイル104に流れる交番電流の電圧がコイルショート検知部85に入力され、この電圧に重畳されている高周波電流がコイルショート検知部85で検知され、その検知結果が制御部50のCPU52に送られることは、上記の実施の形態と同じである。
【0119】
また、節電モードでは、励磁コイル104への電力供給を停止させるとしたが、これに限られず、例えば通常モードよりも電力供給量を少なくして、定着ベルト103の温度を定着温度よりも低い温度で維持する制御を実行するモードを節電モードとしても良い。
(2)上記実施の形態では、励磁コイル104にトラブル(異常)が発生している旨の出力として、操作パネル60の液晶表示部61にメッセージを表示させるとしたが、ユーザやサービスマンなどに通知できれば良く、メッセージの表示に限られることはない。
【0120】
例えば、メッセージに代えて、その旨を示すランプを点灯させる構成としても良いし、その旨の音声を出力するとしても良い。また、その旨を示す情報を、装置の管理者やサービスマンなどが利用する外部の端末装置にネットワークを介して電子メールなどで送信する構成をとることもできる。さらに、表示、音声、送信のうち、2以上を組み合わせて、その旨の出力とすることもできる。
【0121】
また、励磁コイル104への電力供給を遮断する回路を設け、トラブル発生の旨が当該回路に出力されると、当該回路において強制的に励磁コイル104への電力供給を遮断するという構成をとることもできる。
(3)上記実施の形態では、定着ベルト103と励磁コイル104とが一定間隔(例えば、数mmなど)を有して配置される構成例を説明したが、これに限られない。
【0122】
例えば、定着ベルト103と励磁コイル104の間隔(ベルト/コイル間隔)を可変可能な機構を採用して、コイル異常検知を実行するときだけ、ベルト/コイル間隔をプリント時における正規の間隔よりも広くする制御を行う構成をとることが考えられる。
ベルト/コイル間隔を正規の間隔よりも広くすれば、励磁コイル104が定着ベルト103から遠ざかることによって、励磁コイル104のインダクタンスが正規の間隔のときよりも増加するがその一方で抵抗成分が低減するので、励磁コイル104に流れる電流のピーク電圧が正規の間隔のときよりも上昇する。ピーク電圧が上昇すれば、これに重畳される高周波電流の電圧も上昇するので、高周波電流の成分を検出し易くなって、レアショート発生の判断をより精度良く行うことができるものである。
【0123】
上記のベルト/コイル間隔を可変可能な機構としては、例えば励磁コイル104を保持する保持部材(不図示)を定着ローラ101の回転軸に対して遠近方向に可動可能に支持しつつ、保持部材(励磁コイル)を直動モータなどのアクチュエータの駆動力により遠近方向に移動させることにより、コイル/ベルト間隔を、プリント時には正規の間隔に、コイル異常検知時には正規よりも広い間隔に切り替える構成などをとることができる。
【0124】
(4)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、定着ベルト103などの定着部材に設けられた電磁誘導発熱層108を励磁コイル104から発せられる磁束により発熱させ、搬送されるシートS上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する電磁誘導加熱方式の定着部を有する画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。定着部材としては、ベルト状に限られず、ローラやドラム状であっても良い。
【0125】
さらに、励磁コイル104として、複数本の素線を縒り合わせてなるリッツ線を用いるとしたが、これに限られず、1本の素線を何重にも巻き回す構成であっても構わない。また、上記の実施の形態における処理がソフトウェアにより行なわれる構成であっても良いし、ハードウェア回路を用いて行なれる構成であっても良い。
また、上記の実施の形態では、(a)制御部50のCPU52がインバータ電源部80のスイッチングCPU84に対してスイッチングの指示を行い、(b)その指示を受けたスイッチングCPU84がスイッチ素子83をスイッチングすると共に、比較器88からの信号に基づきレアショートの発生の有無を判断して、その判断結果をCPU52に通知し、(c)CPU52がその判断結果に基づいてレアショートの発生の旨を出力する構成をとり、これらの各機能をCPU52とスイッチングCPU84とで分けるとしたが、これに限られず、例えば1つのCPUが実行するとしても構わない。なお、上記の電力値、周波数f、周期t、T、時間t1、t2、t11、t21、Vppなどの値が上記の数値に限られないことはいうまでもなく、装置構成に応じてそれぞれ適した値が決められる。
【0126】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルからの磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 プリンタ
40 定着部
50 制御部
52 CPU
55 定着実行時間計測部
56 定着累積時間記憶部
57 タイマー
60 操作パネル
61 液晶表示部
80、201、301 インバータ電源部
83 スイッチ素子
84、302 スイッチングCPU
85 コイルショート検知部
101 定着ローラ
102 加圧ローラ
103 定着ベルト
104 励磁コイル
105 定着モータ
108 電磁誘導発熱層
115、251 巻き線
203 スイッチ
250 消磁コイル
303 高耐圧リレー
G スイッチ素子のオフ時間における電圧波形
L 最大サイズのシート幅
L1 小サイズ紙を通紙する場合の通紙領域
L2 小サイズ紙を通紙する場合の非通紙領域
S シート
t、T スイッチング周期
t1、t11、t12 スイッチ素子のオン時間
t2 スイッチ素子のオフ時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルから発せられる磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を前記定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置であって、
前記励磁コイルにおける巻き線間のショート時の放電に伴う高周波電流に相当する周波数の交番電流を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記電流が検出されると、前記励磁コイルにトラブルが生じている旨を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記電流の検出を、前記未定着画像の、前記シート上への定着動作中以外の所定の期間内に、前記励磁コイルに電力を供給することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着動作中には、前記励磁コイルに第1の大きさの電力を供給して前記定着部材の温度を定着動作に必要な定着温度に維持し、
前記検出手段は、
前記第1の大きさよりも多い第2の大きさの電力を前記励磁コイルに供給して、前記電流の検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着動作中以外の期間に、前記励磁コイルに供給する電力を前記第1の大きさよりも少ない第3の大きさの電力に抑制して、前記定着部材の温度を前記定着温度よりも低い節電温度に低下させる節電モードを実行可能であり、
前記定着動作中以外の所定の期間は、
前記節電モードの実行中の期間であり、
前記検出手段は、
前記節電モードの実行中に、前記電流の検出を行う際に、前記励磁コイルに供給する電力の大きさを所定時間だけ前記第3の大きさから前記第2の大きさに切り替えた後、第3の大きさに戻させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記励磁コイルに流れる電流を検出することにより、前記高周波電流に相当する周波数の電流を検出することを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、
前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、
前記励磁コイルに直列接続され、前記交流電圧の周波数よりも高い所定の周期で開閉されるスイッチ素子と、を有する電源部を備え、
前記電源部は、
前記スイッチ素子が閉のときに前記励磁コイルと当該スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、閉から開の状態に切り替わることにより、当該スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、
前記検出手段は、
前記励磁コイルに流れる電流の検出として、前記共振回路に流れる電流を検出することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記共振回路に流れる電流の、前記スイッチ素子が開になっているオフ時間における電圧波形は、前記オフ時間の始まりから上昇し、ピークを経て下降に転じ、オフ時間の終わりに至る山型の波形になっており、
前記上昇し始めの時点をα1、下降の終わりの時点をα2、前記時点α1から所定の時間β1が経過する時点をγ1、前記時点α2から所定の時間β2だけ時間を遡った時点をγ2としたとき、
前記検出手段は、
前記スイッチ素子のオフ時間における電圧波形において、前記時点γ1から時点γ2までの間における波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行い、前記時点α1から時点γ1までの間、および、前記時点γ2から時点α2までの間における波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行わないことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記所定の時間β1とβ2は、前記オフ時間の10%に相当する時間であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記共振回路に流れる電流の、前記スイッチ素子が開になっているオフ時間における電圧波形は、前記オフ時間の始まりから上昇し、ピークを経て下降に転じ、オフ時間の終わりに至る山型の波形になっており、
前記検出手段は、
前記スイッチ素子のオフ時間における電圧波形において、前記ピークまたは所定値以上の電圧である波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、
前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、
前記励磁コイルに直列接続されるスイッチ素子と、
前記励磁コイルとスイッチ素子との直列回路の、当該励磁コイルとスイッチ素子の間に介在され、前記スイッチ素子よりも耐電圧が高い高耐圧スイッチ素子と、
を有する電源部を備え、
前記電源部は、
前記スイッチ素子が開の状態かつ前記高耐圧スイッチ素子が閉の状態から、前記スイッチ素子が開から閉に切り替えられることにより前記励磁コイルから前記高耐圧スイッチ素子を介して前記スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、
前記切り替えから所定時間の経過時に前記高耐圧スイッチ素子が閉から開に切り替わることにより、前記高耐圧スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、
前記検出手段は、
前記励磁コイルに流れる電流の検出として、前記共振回路に流れる電流を検出することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記共振回路に流れる電流の、前記高耐圧スイッチ素子が閉から開に切り替わった時点以降の電圧波形は、前記切り替わり時点から上昇し、ピークを経て下降に転じる山型の波形になっており、
前記検出手段は、
前記電圧波形において、前記ピークまたは所定値以上の電圧である波形部分の電圧の検出値に基づき前記高周波電流に相当する周波数の電流の検出を行うことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記励磁コイルからの磁束を打ち消すための磁束を発生させる消磁コイルを備え、
前記励磁コイルは、シート搬送方向に直交するシート幅方向に沿って延設されており、
前記消磁コイルは、前記励磁コイルの延設方向端部側であり、前記延設方向において、使用されるシートのうち、所定サイズ以下のシートの通紙領域に対して外側の非通紙領域に対応するコイル部分に臨設されており、
前記検出手段は、
前記消磁コイルに流れる電流を検出することにより、前記放電に伴う高周波電流に相当する周波数の電流を検出することを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項13】
外部の商用電源からの交流電圧を整流し、整流後の電流を前記励磁コイルに供給する整流回路と、
前記励磁コイルに並列接続され、前記励磁コイルとの間で共振回路を構成する共振コンデンサと、
前記励磁コイルに直列接続され、前記交流電圧の周波数よりも高い所定の周期で開閉されるスイッチ素子と、を有する電源部を備え、
前記電源部は、
前記スイッチ素子が閉のときに前記励磁コイルと当該スイッチ素子からなる直列回路に電流が流れ、閉から開の状態に切り替わることにより、当該スイッチ素子に流れる電流が遮断され、前記励磁コイルを含む共振回路に電流が流れる回路構成であり、
前記検出手段は、
前記共振回路に電流が流れたときに電磁誘導により前記消磁コイルに流れる電流を検出することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記検出手段は、
前記電流の検出を、前記所定の期間内、かつ、前記励磁コイルへの給電時間の累積値を指標する値が所定値に達したときにだけ行うことを特徴とする請求項2〜13のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−108231(P2012−108231A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255720(P2010−255720)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】