説明

画像形成装置

【課題】接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において発生することのある砂地状の画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体2と、第1の帯電手段11と、第1の帯電手段よりも感光体の移動方向において下流側の第2の帯電手段12と、第1の帯電手段に電圧を印加する第1の電源S1と、第2の帯電手段に電圧を印加する第2の電源S2と、露光手段3と、現像手段4と、を有し、第1の電源S1は直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を第1の帯電手段11に印加し、第2の電源S2は、第1の電源S1が第1の帯電手段11に印加する直流電圧との電位差が放電開始電圧Vth未満となる直流電圧を第2の帯電手段12に印加する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機やレーザビームプリンタなどの画像形成装置に関し、より詳細には、電子写真感光体に接触してこれを帯電処理する接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、電子写真感光体(感光体)を帯電処理する帯電手段としては、一般に、スコロトロン帯電器のようなコロナ放電現象を利用した非接触帯電方式の帯電装置が多用されてきた。
【0003】
このような接触帯電方式に対して、最近では導電性のローラ型の帯電部材を感光体に接触させて、その帯電部材に帯電電圧(帯電バイアス)を印加する接触帯電方式が利用されている。
【0004】
例えば、導電性ゴムのローラ(帯電ローラ)をドラム型の感光体である感光ドラムに接触させ、感光ドラムの回転とともに従動回転させる。この帯電ローラの軸となる芯金に電圧を供給することにより、感光ドラムを一様に帯電処理する。このとき、帯電ローラと感光ドラムとの間に生じている微小ギャップでの放電により感光ドラムの外周面が帯電処理される。このような帯電ローラを用いた接触帯電方式は、非接触帯電方式に比べて放電間隔が狭いため、オゾンの発生がほとんどなく、又印加電圧も非接触帯電方式に比べ小さくて済むという利点がある。
【0005】
具体的には、帯電電圧として、放電開始電圧Vthに、必要とされる感光ドラムの帯電電位Vd(目標帯電電位)を足した直流電圧を印加する、DC帯電方式がある。例えば、放電開始電圧Vthは、OPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、温度23℃、湿度50%の環境で約550Vとなる。
【0006】
又、環境や装置の使用量の増加による電位の変動を改善する目的として、次のようなAC帯電方式がある(特許文献1)。AC帯電方式では、帯電電圧として、必要とされる感光ドラムの帯電電位Vd(目標帯電電位)に相当する直流電圧(直流成分)と、放電開始電圧Vthの2倍以上のピーク間電圧Vppを持つ交流電圧(交流成分)と、を重畳した振動電圧を印加する。この振動電圧の交流成分の波形は、正弦波、矩形波、三角波などとされる。或いは、この振動電圧は、直流電源を周期的にオン・オフすることによって形成された矩形波電圧とされることもある。
【0007】
一般に、DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して、消費電力が少量で安価であり、装置も小型で省スペース化を図ることができるという利点がある。しかしながら、DC帯電方式は、AC帯電方式に比べて、放電領域が狭く、AC放電電流の均し効果がないために、帯電ローラの微小な電気抵抗値のムラに起因したスジ状の帯電不良が発生し易い。又、DC帯電方式は、AC帯電方式に比べて、所望の帯電電位Vdに制御することが難しくなり、感光ドラムの表面電位の安定性が悪くなることがある。環境や帯電ローラの材料などの製造時の電気抵抗値の振れ、装置の使用量の増加などによって、所望の帯電電位Vdにするために必要な印加電圧が変わるためである。この対策として、感光ドラムの表面電位を常に測定する電位センサを感光ドラムの近傍に設置し、測定した電位に基づいて帯電電圧を設定する手段がある。しかし、この手段では電位センサを設置するスペースが必要であり、コストも高くなるという課題がある。
【0008】
一方、AC帯電方式は、均一な帯電(除電)処理をすることが可能であり、高画質化に対して有効である。又、帯電電圧の交流電圧(交流成分)が放電する条件であれば、帯電後の感光ドラムの表面電位が、帯電電圧の直流電圧(直流成分)と同電位に収束するという特性があるため、電位センサが不要となる。しかしながら、AC帯電方式は、DC帯電方式に比べて放電電流量が多くなり、感光ドラムの劣化を促進するとともに、放電生成物に起因する「画像流れ」といわれる画像不良が発生し易い。この対策として、帯電電圧の交流電圧を必要最小限とすること(即ち、交流電圧のピーク間電圧の最小化)により、AC放電を最小限とすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のように帯電電圧の交流電圧のピーク間電圧の最小化を行うと、帯電ローラと感光ドラムとの間に流れるAC放電電流は減るが、放電が不安定となり、局所的に過剰に放電(異常放電)することに起因する砂地状の画像不良が発生し易い。
【0011】
上述の異常放電が発生する原因は、次のように考えられる。即ち、帯電ローラと感光ドラムとの接触部(ニップ)及びその近傍の微小空隙内で放電が発生し始める程度の電圧が、帯電ローラに印加される。この場合、帯電ローラの電気的な物性の分布、或いは帯電ローラや感光ドラムの表面の凹凸などの幾何学形状などの要因により、帯電ローラと感光ドラムとの間の放電が発生し得る領域内の一部でのみ放電が発生することがある。この一部分での放電によりインピーダンスが下がった放電空間に集中的に電流が流れ、部分的に過剰放電することがある。
【0012】
そして、このような異常放電によって、感光ドラムが局所的に異常な電位となり、その部分にはトナーが付着しなくなったり、逆にトナーが大量に付着したりするため、画像を出力した際に砂地状の画像不良となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において発生することのある砂地状の画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、感光体と、移動する前記感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第1の帯電手段と、前記第1の帯電手段よりも前記感光体の移動方向において下流側で、移動する前記感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第2の帯電手段と、前記第1の帯電手段に電圧を印加する第1の電源と、前記第2の帯電手段に電圧を印加する第2の電源と、帯電処理された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、を有し、前記第1の電源は直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を前記第1の帯電手段に印加し、前記第2の電源は、前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差が放電開始電圧未満となる直流電圧を前記第2の帯電手段に印加することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において発生することのある砂地状の画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置に設けられた帯電ローラの概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の動作シーケンス図である。
【図4】(a)本発明の一実施例に係る画像形成装置に設けられた第1の帯電ローラ、(b)第2の帯電ローラ、(c)第3の帯電ローラのそれぞれに対する帯電電圧印加系のブロック回路図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置における第1の帯電部を通過した後の感光ドラムの表面電位を模式的に示すグラフ図である。
【図6】図5に示す感光ドラムの表面電位の状態で形成されたハーフトーン画像のイメージ図である。
【図7】(a)感光ドラムの表面電位と第2の帯電ローラに印加される帯電電圧との関係、(b)第2の帯電部を通過した後の感光ドラムの表面電位を模式的に示す説明図である。
【図8】図7(b)の右図に示す感光ドラムの表面電位の状態で形成されたハーフトーン画像のイメージ図である。
【図9】(a)感光ドラムの表面電位と第3の帯電ローラに印加される帯電電圧との関係、(b)第3の帯電部を通過した後の感光ドラムの表面電位を模式的に示す説明図である。
【図10】図9(b)の右図に示す感光ドラムの表面電位の状態で形成されたハーフトーン画像のイメージ図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る第1の帯電ローラに対する帯電電圧印加系のブロック回路図である。
【図12】放電開始電圧を検出する方法を説明するための第1の帯電ローラに印加した交流電圧のピーク間電圧Vppと第1の帯電ローラに流れるDC電流値との関係を示すグラフ図である。
【図13】帯電ローラと感光ドラムとの空隙の距離と、電位の関係を模式的に示す説明図である。
【図14】異常電流が発生する条件での、時間に対する帯電ローラに流れるAC電流の関係を示すグラフ図である。
【図15】(a)感光ドラムの表面電位と現像バイアスの直流成分の電位との関係、(b)出力されるハーフトーン画像の模式図である。
【図16】帯電電圧の交流電圧の周波数と、砂地消失電流値との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0018】
実施例1
1.画像形成装置の全体構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置1は、接触帯電方式を採用した電子写真方式のレーザビームプリンタである。
【0019】
画像形成装置1は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム2を有する。本実施例では、感光ドラム2は、帯電特性が負帯電性の有機光導電体(OPC)感光体ドラムである。本実施例では、感光ドラム2の外径は30mmであり、中心支軸を中心に130mm/secのプロセススピード(周速度)で図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム2は、アルミニウム製シリンダ(導電性ドラム基体)の表面に、光電荷発生層と、電荷輸送層(厚さ約20μm)と、を下から順に塗り重ねた構成を有する。
【0020】
画像形成装置1は、感光ドラム2の表面を帯電処理する接触帯電方式の帯電手段として、ローラ型の帯電部材である、第1の帯電ローラ11、第2の帯電ローラ12及び第3の帯電ローラ13を有する。第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13は、それぞれ感光ドラム2に対して接触している。又、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13は、感光ドラム2の表面の移動方向において、上流側から下流側にこの順番で配設されている。第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13は、それぞれ感光ドラム2との間の微小ギャップにて生じる放電現象を利用して、感光ドラム2の表面を帯電処理する。第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13と感光ドラム2との接触部(接触領域)が、それぞれ第1、第2、第3の帯電ニップである。各帯電ローラ11、12、13は、感光ドラム2の表面の移動方向において、各帯電ニップの上流側及び下流側に、それぞれ各帯電ローラ11、12、13の表面と感光ドラム2の表面との間の微小空隙(帯電ギャップ)を形成する。各帯電ローラ11、12、13は、その上流側の微小空隙及び下流側の微小空隙のうち少なくとも一方で生じる放電により感光ドラム2の表面の帯電処理を行う。ここでは、便宜的に、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13の各帯電ニップ並びにその上流側及び下流側の放電が生じる微小空隙を含む領域をそれぞれ、感光ドラム2の帯電処理が行われる第1、第2、第3の帯電部(帯電位置)a1、a2、a3とする。尚、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13は、それぞれの回転軸線が感光ドラム2の回転軸線と略平行になるように感光ドラム2に接触して配設される。
【0021】
図2を参照して、第1の帯電ローラ11を例に、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13の構成について説明する。本実施例では、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13として、それぞれ実質的に同一の寸法、材質のものを用いた。
【0022】
第1の帯電ローラ11は、導電性の弾性ローラである。第1の帯電ローラ11は、芯金11aと、この芯金11aの外周に同心一体にローラ状に形成した、下層(導電性弾性層)11bと、その外周面に形成した中間層(高抵抗被覆層)11cと、更にその外周面に形成した表層(保護被覆層)11dと、を有する。中間層11cは、帯電不良を防止するなどのためのものである。表層11dは、感光ドラム2に対する第1の帯電ローラ11の固着を防止するなどのためのものである。
【0023】
第1の帯電ローラ11は、芯金(支持部材)11aの長手方向の両端部が、それぞれ軸受部材11eによって回転可能に支持されると共に、付勢手段としての押圧ばね11fにより感光ドラム2の表面に対して所定の圧力で押圧される。これにより、第1の帯電ローラ11は、感光ドラム2の表面に圧接され、本実施例では感光ドラム2の回転に従動して図中矢印R2方向(時計回り)に回転する。感光ドラム2と第1の帯電ローラ11との圧接部(接触領域)が第1の帯電ニップである。
【0024】
より詳細には、本実施例では、第1の帯電ローラ11は長手方向の長さが320mm、直径が14mmである。又、上述のように、第1の帯電ローラ11は、芯金11aの外回りに、下層11bと、中間層11cと、表層11dと、を下から順次に積層した3層構成である。芯金11aは、直径が6mmのステンレス製の丸棒で形成されている。下層11bは、カーボンが分散された発泡EPDMで形成され、比重が0.5g/cm3、体積抵抗値が102〜109Ωcmであり、層厚は約3.5mmである。中間層11cは、カーボンが分散されたNBRゴムで形成され、体積抵抗値が102〜105Ωcmであり、層厚は約500μmである。表層11dは、フッ素化合物のアルコール可溶性ナイロン樹脂に酸化錫、カーボンを分散した構成であり、体積抵抗値は107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRz)は1.5μm、層厚は約5μmである。下層11bの材料としては、SBRなどに導電性カーボンを分散したものを用いることもできる。
【0025】
尚、上述のように、本実施例では、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13として、実質的に同一の寸法、材質のものを用いた。第2、第3の帯電ローラ12、13はそれぞれ、概略、芯金12a、13a、下層12b、13b、中間層12c、13c、表層12d、13dを有し、軸受け12e、13eによって軸支されると共に、押圧ばね12f、13fで感光ドラム2の表面に圧接される。但し、各帯電部材の構成は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13の芯金11a、12a、13aには、それぞれ帯電電圧印加手段としての第1の電源S1、第2の電源S2、第3の電源S3から、所定の条件の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。本実施例では、第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13には、押圧ばね11f、12f、13f、及び芯金11a、12a、13aを介して、第1、第2、第3の電源S1、S2、S3から帯電電圧が印加される。
【0027】
本実施例では、第1の電源S1は、直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を第1の帯電ローラ11に印加する。一方、本実施例では、第2の電源S2及び第3の電源S3は、それぞれ直流電圧のみを第2の帯電ローラ12、第3の帯電ローラ13に印加する。回転する感光ドラム2の表面は、主に第1の帯電ローラ11に印加される帯電電圧によって、所定の極性の所定の電位に略一様に帯電処理される。本実施例では、感光ドラム2の表面は、−600Vに略一様に帯電処理される。第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13に印加する帯電電圧の設定については後述して詳しく説明する。
【0028】
画像形成装置1は、帯電処理された感光ドラム2の表面に静電潜像(静電像)を形成する露光手段(情報書き込み手段)としての露光装置3を有する。本実施例では、露光装置3は、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナである。露光装置3は、画像形成装置1に接続された画像読み取り装置(図示せず)などのホスト処理装置から画像形成装置1に送られた画像信号に対応して変調されたレーザ光Lを出力する。そして、露光装置3は、帯電処理された回転する感光ドラム2の表面を、露光部(露光位置)bにおいて、上記レーザ光Lで走査露光(イメージ露光)する。これにより、感光ドラム2の表面のレーザ光Lで照射された部分の電位が低下し、回転する感光ドラム2の表面に画像情報に対応した静電潜像が順次に形成される。
【0029】
画像形成装置1は、現像手段としての現像装置4を有する。現像装置4は、感光ドラム2上の静電潜像に応じて感光ドラム2上にトナーを供給し、静電潜像をトナー像(現像剤像)として現像する。本実施例では、現像装置4は、帯電処理された後に露光により電位が低下させられた感光ドラム2上の露光部(明部)に、感光ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを付着させる反転現像方式により、静電潜像の現像を行う。又、本実施例では、現像装置4は、トナー(非磁性トナー粒子)とキャリア(磁性キャリア粒子)とを備えた二成分現像剤による磁気ブラシを、感光ドラム2に接触させながら静電潜像の現像を行う二成分接触現像方式を採用している。
【0030】
現像装置4は、現像容器4aと、二成分現像剤を担持して感光ドラム2との対向部である現像部(現像位置)cに搬送する現像剤担持体としての現像スリーブ4bと、を有する。現像スリーブ4bは、その外周面の一部を現像装置4の外部に露出させて、現像容器4a内に回転可能に配置されている。現像スリーブ4bは、非磁性材料で形成されている。現像スリーブ4b内には、現像容器4aに対して非回転に固定されたマグネットローラ4cが挿設されている。又、現像スリーブ4bに対向して、現像スリーブ4b上に二成分現像剤をその量を規制しながら塗布する現像剤規制手段としての現像ブレード4dが設けられている。現像容器4aは、二成分現像剤4eを収容しており、現像容器4a内の底部側には現像剤攪拌部材4fが配設されている。又、補給用トナーが補給現像剤容器としてのトナーホッパー(図示せず)に収容されている。
【0031】
現像容器4a内の二成分現像剤4eは、主にトナー(非磁性トナー粒子)とキャリア(磁性キャリア粒子)との混合物であり、現像剤攪拌部材4fにより攪拌される。本実施例では、キャリアは、体積抵抗率が約1013Ωcm、粒径(体積平均粒径)が約40μmである。レーザ回折式粒度分布測定装置HEROS(日本電子製)を用いて、0.5〜350μmの範囲を32対数分割して測定し、体積50%メジアン径をもって、上記キャリアの粒径(体積平均粒径)とした。又、本実施例では、トナーは、通常は、キャリアとの摺擦により負極性に摩擦帯電される。即ち、本実施例では、トナーの正規の帯電極性は、負極性である。
【0032】
現像スリーブ4bは、感光ドラム2との最近接距離(S−Dgap)が350μmに保持されて、感光ドラム2に対向して配設されている。この感光ドラム2と現像スリーブ4bとの対向部が現像部(現像位置)cである。本実施例では、現像スリーブ4bは、現像部cにおける現像スリーブ4bの表面の移動方向と感光ドラム2の表面の移動方向とが逆方向になるように回転駆動される。現像スリーブ4b内のマグネットローラ4cの磁気により、現像容器4a内の二成分現像剤4eの一部が現像スリーブ4bの外周面に吸着され、磁気ブラシ層として保持される。この磁気ブラシ層は、現像スリーブ4bの回転に伴って搬送され、現像ブレード4dにより所定の薄さの層に整層される。そして、この磁気ブラシ層は、現像部cにおいて感光ドラム2の表面に接触して、感光ドラム2の表面を適度に摺擦する。
【0033】
現像スリーブ4bには、現像電圧印加手段としての現像電源S4から、所定の条件の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。より具体的には、−450Vの直流電圧と、周波数9.0kHz、ピーク間電圧1.8kV、矩形波の交流電圧とを重畳した振動電圧である。
【0034】
回転する現像スリーブ4b上に薄層としてコーティングされ、現像部cに搬送された現像剤4e中のトナーが、現像電圧により感光ドラム2と現像スリーブ4bとの間に形成される電界によって、感光ドラム2の表面に静電潜像に対応して選択的に付着する。これにより、感光ドラム2上の静電潜像がトナー像として現像される。感光ドラム2上に形成されたトナー像のトナーの帯電量は、温度23℃、絶対水分量10.6g/m3の環境下では、約−25μC/gである。現像部cを通過した現像スリーブ4b上の二成分現像剤の薄層は、引き続く現像スリーブ4bの回転に伴って現像容器4a内の現像剤溜り部に戻される。
【0035】
本実施例では、現像容器4a内の二成分現像剤4eのトナー濃度は、次のようにして略一定の範囲内に維持される。即ち、現像容器4a内の二成分現像剤4eのトナー濃度が、光学式のトナー濃度センサなどによって検知され、その検知情報に応じてトナーホッパーの駆動が制御されて、トナーホッパー内のトナーが現像容器4a内の二成分現像剤4eに補給される。二成分現像剤4eに補給されたトナーは、攪拌部材4fにより攪拌される。
【0036】
画像形成装置1は、転写手段としてのローラ型の転写部材である転写ローラ5を有する。転写ローラ5は、感光ドラム2に所定の押圧力をもって圧接されている。この転写ローラ5と感光ドラム2との圧接部(ニップ)が転写部(転写位置)dである。この転写部dに、記録材Pの給送機構部(図示せず)から、所定の制御タイミングにて、記録材Pが給送される。
【0037】
転写部dに給送された記録材Pは、感光ドラム2と転写ローラ5との間に挟持されて搬送される。その間、転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源S5から、トナーの正規の帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の転写電圧(転写バイアス)が印加される。本実施例では、転写電圧として+600Vの直流電圧が転写ローラ5に転写電源S5から印加される。これにより、感光ドラム2と転写ローラ5とに挟持されて搬送されていく記録材Pの表面に、感光ドラム2上のトナー像が順次に静電的に転写されていく。
【0038】
トナー像が転写された記録材Pは、感光ドラム2の表面から順次に分離されて、定着手段としての定着装置6へと搬送される。本実施例では、定着装置6は、熱ローラ定着装置である。記録材Pは、この定着装置6によってトナー像の定着処理を受けた後に、画像形成物(プリント、コピー)として画像形成装置1から出力される。
【0039】
又、転写紙Pへのトナー像の転写後に感光ドラム2の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング部eにおいて、クリーニング装置7によって感光ドラム2の表面から除去されて回収される。転写残トナーを除去する手段として、クリーニング装置7を用いる代わりに、転写残トナーの電荷を適正化する手段を設けて、これにより電荷が適正化された転写残トナーを現像装置4において現像動作と同時に回収するクリーナレス方式を採用してもよい。
【0040】
次に、図3を参照して、画像形成装置1の動作シーケンスについて更に説明する。
【0041】
(1)初期回転動作(前多回転工程)
画像形成装置1の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。電源スイッチのオンにより、感光ドラム2が回転駆動され、又定着装置6の所定温度への立ち上げなど、所定のプロセス機器の準備動作が実行される。
【0042】
(2)印字準備回転動作(前回転工程)
プリント信号のオンから実際に画像形成(印字)工程動作がなされるまでの間の画像形成前の準備回転動作期間である。この動作は、初期回転動作中にプリント信号が入力されたときには、初期回転動作に引き続いて実行される。プリント信号の入力がないときには、初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて、感光ドラム2の回転駆動が停止され、画像形成装置1はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。本実施例では、この印字準備回転動作期間において、印字工程の帯電工程において第1の帯電ローラ11に印加される交流電圧のピーク間電圧値を演算及び決定するプログラムが実行される。この帯電電圧の値の演算及び決定の制御については後述して詳しく説明する。
【0043】
(3)印字工程(画像形成工程、作像工程)
所定の印字準備回転動作が終了すると、引き続いて、前述のような感光ドラム2上のトナー像の形成、感光ドラム2上に形成されたトナー像の記録材Pへの転写、定着装置6によるトナー像の定着処理などがなされて、画像形成物が画像形成装置1から出力される。連続印字(連続プリント)モードの場合は、印字工程は、設定された所定のプリント枚数(n枚)分繰り返して実行される。
【0044】
(4)紙間工程
連続印字モードにおいて、一の記録材Pの後端部が転写部dを通過した後、次の記録材Pの先端部が転写部dに到達するまでの間の、転写部dにおける記録材Pの非通紙状態期間である。
【0045】
(5)後回転動作
1枚だけのプリントの場合は1枚の記録材P(連続印字モードの場合は最後の記録材P)に対する印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動が継続されて、感光ドラム2が回転駆動され、所定の準備動作が実行される期間である。
【0046】
(6)スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて、感光ドラム2の回転駆動が停止され、画像形成装置1は次のプリントスタート信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は1枚の記録材P(連続印字モードの場合は最後の記録材P)に対するプリント終了後、画像形成装置1は後回転動作を経て、スタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリントスタート信号が入力されると、画像形成装置1は前回転工程に移行する。
【0047】
上記(3)の印字工程時が画像形成時であり、上記(1)の初期回転動作、上記(2)の前回転動作、上記(4)の紙間工程及び上記(5)の後回転動作が非画像形成時である。
【0048】
2.帯電電圧印加系
図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ第1、第2、第3の帯電ローラ11、12、13に対する帯電電圧印加系のブロック回路図である。
【0049】
図4(a)に示すように、第1の帯電ローラ11に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段である第1の電源S1は、直流電源(DC電源)11gと交流電源(AC電源)11hとを有する。第1の電源S1から、直流電圧と交流電圧とを重畳した所定の振動電圧が、芯金11aを介して第1の帯電ローラ11に印加される。これにより、回転する感光ドラム2の周面が所定の電位に略一様に帯電処理される。
【0050】
図4(b)に示すように、第2の帯電ローラ12に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段である第2の電源S2は、直流電源12gを有している。即ち、交流電源は有していない。第2の電源S2から、直流電圧が、芯金12aを介して第2の帯電ローラ12に印加される。これにより、感光ドラム2の周面における所望の帯電電位Vdよりも第1の極性(本実施例では負極性)側に大きく帯電していた部分の電位を所望の帯電電位Vdに近づける。
【0051】
図4(c)に示すように、第3の帯電ローラ13に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段である第3の電源S3は、直流電源13gを有している。即ち、交流電源は有していない。第3の電源S3から、直流電圧が、芯金13aを介して第3の帯電ローラ13に印加される。これにより、感光ドラム2の周面における所望の帯電電位Vdよりも第2の極性(本実施例では正極性)側に大きく帯電していた部分の電位を所望の帯電電位Vdに近づける。
【0052】
第2の電源S2と第3の電源S3とは、出力する直流電圧の値が異なるが、同様の構成とされている。
【0053】
図4(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すように、第1、第2、第3の電源S1、S2、S3の動作は、制御手段としての共通の制御回路14によって制御される。即ち、制御回路14は、直流電源11gから第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧値、及び交流電源11hから第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧値を制御する機能を有する。又、制御回路14は、直流電源12gから第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧値を制御する機能を有する。更に、制御回路14は、直流電源13gから第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧値を制御する機能を有する。
【0054】
又、制御回路14は、環境に対して予め放電開始電圧Vthを求めた環境テーブルなどが記憶された記憶手段としてのメモリ部(図示せず)を備えている。又、制御回路14には、画像形成装置1に設けられた環境検知手段としての環境センサ(温湿度センサ)(図示せず)が接続されている。そして、制御回路14は、印字工程の帯電工程において第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧値を演算及び決定するプログラムを実行する機能を有する。本実施例では、制御回路14は、制御回路14は、メモリ部に記憶された環境テーブルの情報と、環境センサから入力される画像形成装置1の雰囲気環境の温湿度情報とから、上記交流電圧のピーク間電圧値を演算及び決定する。
【0055】
ここで、図13を参照して、放電開始電圧Vthについて説明する。図13は、帯電ローラと感光ドラムとの間の空隙の距離と、電位との関係を模式的に示した図である。
【0056】
上記空隙の距離をZ、感光ドラムの膜厚をd、感光ドラムの比誘電率をεrとして、帯電ローラにVpなる直流電圧を印加するものとしたとき、上記空隙における電圧Vgは、下記式(1)で表現される。
Vg=Z/(Z+d/εr)×Vp ・・・(1)
【0057】
この系において、放電が開始されるときの上記空隙における電圧をVg0とすると、帯電ローラに印加する直流電圧が放電開始電圧Vthとなるため、上記式(1)は、下記式(2)のように書き換えられる。
Vg0=Z/(Z+d/εr)×Vth ・・・(2)
【0058】
一方、上記空隙における電圧Vgは、パッシェンの法則により、下記式(3)のように、上記空隙の気圧pと上記空隙の距離Zとの関数で表される。
Vg=f(p,Z) ・・・(3)
【0059】
放電開始電圧Vthを印加した際には、上記式(2)、上記式(3)でVg0=Vgであるから、下記式(4)が導かれる。
Vth=(Z+d/εr)/Z×f(p,Z) ・・・(4)
【0060】
このように、放電開始電圧Vthは、上記空隙の距離Z、感光ドラムの膜厚d、感光ドラムの比誘電率εr、上記空隙の気圧pなどから決定される値である。
【0061】
3.第1の帯電ローラに対する帯電電圧の制御
次に、印字工程時に第1の帯電ローラ11に印加する帯電電圧の制御方法について説明する。
【0062】
本実施例では、第1の帯電ローラ11に印加する帯電電圧は、−600Vの直流電圧と、ピーク間電圧Vppが1200Vで周波数fが1.5kHzの交流電圧と、を重畳した振動電圧とした。
【0063】
尚、ここでは、温度23℃、湿度50%の環境で制御が行われるものとする。
【0064】
本実施例では、上述のように、環境に対して予め放電開始電圧Vthを求めた環境テーブルが、制御回路14のメモリ部に記憶されている。又、上述のように、制御回路14には、環境センサから画像形成装置1の雰囲気環境の温湿度情報が入力される。そして、制御回路14は、現在の環境に対応して環境テーブルから読み出したVthの値を用いて、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを、次式によって決定する。
Vpp=2×Vth+100[V]
【0065】
上記環境(温度23℃、湿度50%)では、Vth=550Vであるため、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは1200Vである。
【0066】
このようにして決定された第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは、放電電流を必要最小限としたときの設定値であり、AC放電電流量は20μA程度となる。
【0067】
この条件で感光ドラム2の帯電処理を行うと、前述のように、放電が不安定となるため、砂地状の画像不良が発生することがある。即ち、この場合、第1の帯電ローラ11と感光ドラム2との間の放電が発生し得る領域内の一部でのみ放電が発生することがある。この一部分での放電によりインピーダンスが下がった放電空間に集中的に電流が流れ、部分的に過剰放電することがある。このようにして発生した異常放電によって、感光ドラム2が局所的に異常な電位となり、砂地状の画像不良となる。
【0068】
図5は、上記設定で感光ドラム2を帯電処理した際の、第1の帯電部a1を通過した後の感光ドラム2の表面電位を模式的に示す。同図は、感光ドラム2の表面電位を縦軸、感光ドラム2の回転軸線方向のある位置(この位置に後述の負極性側及び正極性側の異常電位があるものとする。)における感光ドラム2の周方向の位置を横軸にとっている。尚、図7、図9及び図15に示す感光ドラムの表面電位の模式図も同様に表している。
【0069】
図5に示すように、感光ドラム2の表面電位は、全体的には所望の帯電電位Vdである−600V(正常電位)に収束している。しかし、AC放電電流量が小さいために、異常放電を受けて、局所的に異常電位となっている。このときの異常電位は、正常電位との電位差が1000V程度であり、負極性側(トナーの正規の帯電極性側)の異常電位が−1600V程度、正極性側(トナーの正規の帯電極性とは逆極性側)の異常電位が+400V程度となっている。
【0070】
この状態のまま画像形成を行うと、画像上に白い斑点状の部分と、高濃度の斑点状の部分とが存在する、図6に示すような砂地状の画像不良となる。
【0071】
4.砂地状の画像不良
次に、砂地状の画像不良が発生する際のメカニズムについて更に詳しく説明する。ここでは、本実施例に則して、感光ドラムを帯電ローラで一様に負極性に帯電処理し、露光装置によって除電された部分に、負極性に帯電したトナーを現像装置によって付着させる反転現像方式の画像形成装置をモデルとする。
【0072】
図14は、AC帯電方式により帯電ローラを用いて感光ドラムを帯電させる際の、時間に対する帯電ローラに流れるAC電流の関係を示す。ここでは、帯電ローラに印加する交流電圧の波形として正弦波を用いた。
【0073】
ここで、図14は、帯電ローラにAC放電が最小限となる程度の交流電圧を印加したときに帯電ローラに流れる電流を示す。帯電ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは、放電開始電圧Vthの2倍を僅かに超える程度(好ましくは、50V〜300V、より好ましくは100V〜200V、更に好ましくは100V)となっている。
【0074】
この場合、図14に示すように、帯電ローラに正弦波の交流電圧を印加していても、帯電ローラに流れるAC電流の波形のピークの直後には放電による短いピークが存在し、該AC電流の波形は正弦波とならない。
【0075】
更に、この場合、AC電流の波形のうち、放電によるピークの付近に、A、Bで示すような異常放電が発生する場合がある。図14に示すように、Aのような負極性側(トナーの正規の帯電極性側)の異常放電と、Bのような正極性側(トナーの正規の帯電極性とは逆極性側)の異常放電との両方が発生する場合がある。
【0076】
図15(a)は、上記の条件で感光ドラムの帯電処理を行って、ハーフトーン画像を出力する際の、感光ドラムの表面電位と現像スリーブの電位(現像電圧の直流成分の電位)との間の電位差と、形成されるトナー像との関係を模式的に示す。又、図15(b)は、その結果として出力される画像を模式的に示す。ハーフトーン画像は、例えば、256階調における125レベルとする。
【0077】
感光ドラム上のAのような負極性側の異常放電を受けた部分は、負極性側に異常に大きな絶対値の電位を持つ。そのため、ハーフトーン画像やベタ画像を形成したとしても、現像部において電位的にトナーが感光ドラム側に移動せず、その部分の画像が白く抜けてしまう。一方、感光ドラム上のBのような正極性側の異常放電を受けた部分は、正極性側に異常に大きな絶対値の電位を持つ。そのため、ハーフトーン画像やベタ白画像を形成したとしても、現像部において電位的にトナーが感光ドラム側に大量に移動し、その部分の画像がベタのような高濃度の点状になってしまう。これが、画像を出力した際に砂地状の画像不良となる。
【0078】
このように、AC帯電方式を用いた接触帯電方式の画像形成装置において、感光体の劣化や画像流れを抑えるためにAC放電電流量を最小限とすると、砂地状の画像不良が発生することがある。
【0079】
又、図16には、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数と、砂地状の画像不良を発生させないために必要なAC放電電流量(以下「砂地消失電流値」ともいう。)との関係を示す。周波数に対する砂地消失電流値は、二次関数的に上昇している。これは、砂地状の画像不良が、交流電圧の周波数が高くなるほど顕著になることを示している。
【0080】
画像形成装置の出力速度を上げると、潜像形成時のスクリーン処理との画像モアレを引き起こさないために、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数を上昇させることが行われる。この場合、上述の周波数と砂地消失電流値との関係より、砂地状の画像不良が発生し易い条件となる。従って、画像形成装置の高速化、高画質化を達成するためには、AC放電電流を最小限としても砂地状の画像不良を発生させないようにすることが強く望まれる。即ち、本実施例の目的の一つは、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において発生することのある砂地状の画像不良を抑制することである。本実施例のより詳細な目的の一つは、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において、高速化、高画質化を達成しつつ、AC放電電流を最小限としても砂地状の画像不良の発生を抑制できるようにすることである。
【0081】
5.砂地状の画像不良の抑制
そこで、本実施例では、砂地状の画像不良の原因となる異常電位を解消するために、第2の帯電ローラ12及び第3の帯電ローラ13に、それぞれ以下に説明するような電圧を印加する。
【0082】
先ず、図7(a)は、第1の帯電部a1を通過した後の感光ドラム2の表面電位と、第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との関係を示す。一方、図7(b)は、第2の帯電部a2を通過する際の感光ドラム2の表面電位の変化と、第2の帯電部a2を通過した後の感光ドラム2の表面電位との関係を示す。
【0083】
本実施例では、第2の帯電ローラ12は、負極性側の異常電位を解消する目的で配置されている。そして、第2の帯電ローラ12には、帯電電圧として−100Vの直流電圧が印加される。
【0084】
即ち、第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧は、第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧(所望の帯電電位Vd)と、第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧と、の電位差ΔV2が、Vth−50[V]となるように設定する。ここでは、帯電電位Vdが−600V、放電開始電圧Vthが550Vであるため、第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧は、−600Vに対して正極性側(異常電位の極性とは逆極性側)に500V(=550V−50V)の電位差を有する−100Vとした。
【0085】
前述のように、第1の帯電部a1を通過した後の感光ドラム2の表面電位は、全体的には所望の帯電電位Vdである−600V(正常電位)に収束しており、この正常電位と第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との電位差ΔV2は500Vである。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第2の帯電ローラ12から感光ドラム2上の正常電位の部分にはDC放電は発生しない。そして、この部分は、表面電位が−600Vのまま第2の帯電部a2を通過する。
【0086】
一方、感光ドラム2上の負極性側に異常電位となっている部分は、−1600V程度の電位であり、この電位と第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との電位差ΔV2mは1500V程度である。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第2の帯電ローラ12から感光ドラム2上の負極性側に異常電位となっている部分にはDC放電が発生する。そして、この部分が第2の帯電部a2を通過した後は、その表面電位は、負極性側の異常電位と第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との電位差ΔV2m’が放電開始電圧Vthと同等になるように収束し、ここでは−650Vとなる。
【0087】
又、感光ドラム2上の正極性側に異常電位となっている部分は、+400V程度の電位であり、この電位と第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との電位差ΔV2pは500V程度である。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第2の帯電ローラ12から感光ドラム2上の正極性側に異常電位となっている部分にはDC放電が発生しない。そして、この部分は、表面電位が+400V程度のまま第2の帯電部a2を通過する。
【0088】
従って、第2の帯電部a2を通過した後の感光ドラム2の表面電位は、図7(b)の右図のようになる。この状態で画像形成を行うと、感光ドラム2上の負極性側の異常電位は軽減されているため、画像上の白い斑点状の部分は軽減されているが、感光ドラム2上の正極性側の異常電位に起因する高濃度の斑点状の部分が存在し、図8に示すような砂地状の画像不良となる。
【0089】
次に、図9(a)は、第2の帯電部a2を通過した後の感光ドラム2の表面電位と、第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧との関係を示す。一方、図9(b)は、第3の帯電部a3を通過する際の感光ドラム2の表面電位の変化と、第3の帯電部a3を通過した後の感光ドラム2の表面電位との関係を示す。
【0090】
本実施例では、第3の帯電ローラ13は、正極性側の異常電位を解消する目的で配置されている。そして、第3の帯電ローラ13には、帯電電圧として−1100Vの直流電圧が印加される。
【0091】
即ち、第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧は、第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧(即ち、所望の帯電電位Vd)と、第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧と、の電位差ΔV3が、Vth−50[V]となるように設定する。ここでは、帯電電位Vdが−600V、放電開始電圧Vthが550Vであるため、第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧は、−600Vに対して負極性側(異常電位の極性とは逆極性側)に500V(=550V−50V)の電位差を有する−1100Vとした。
【0092】
第1の帯電部a1及び第2の帯電部a2を通過した後の感光ドラム2の表面電位は、全体的には所望の帯電電位Vdである−600V(正常電位)に収束しており、この正常電位と第3の帯電ローラに印加する直流電圧との電位差ΔV3は500Vである。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第3の帯電ローラ13から感光ドラム2上の正常電位の部分にはDC放電は発生しない。そして、この部分は、表面電位が−600Vのまま第3の帯電部a3を通過する。
【0093】
又、感光ドラム2上の第1の帯電部a1を通過した後に負極性側に異常電位となっていた部分は、上述のように、第2の帯電部a2を通過した際にその表面電位は−650Vに収束している。そのため、この電位と第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧との電位差ΔV3mは450Vである。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第3の帯電ローラ13から感光ドラム2上の負極性側に異常電位となっていた部分にはDC放電は発生しない。そして、この部分は、表面電位が−650Vのまま第3の帯電部a3を通過する。
【0094】
一方、感光ドラム2上の第1の帯電部a1を通過した後に正極性側に異常電位となっている部分は、上述のように、第2の帯電部a2を通過した後も+400V程度の電位である。そのため、この電位と第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧との電位差ΔV3pは1500V程度である。ここでは、放電開始電圧Vthは550Vであるため、第3の帯電ローラ13から感光ドラム2上の正極性側に異常電位となっている部分にはDC放電が発生する。そして、この部分が第3の帯電部a3を通過した後は、その表面電位は、正極性側の異常電位と第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧との電位差ΔV3p’が放電開始電圧Vthと同等になるように収束し、ここでは−550Vとなる。
【0095】
従って、第3の帯電部a3を通過した後の感光ドラム2の表面電位は、図9(b)の右図のようになる。この状態で画像形成を行うと、感光ドラム2上の負極性側の異常電位及び正極性側の異常電位はともに軽減されているため、画像上の白い斑点状の部分及び高濃度の斑点状の部分はともに軽減されており、図10に示すような良好な画像が得られる。
【0096】
ここで、本実施例では、第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧と、第2の帯電ローラ12に印加する直流電圧との電位差ΔV2を、Vth−50[V]とした。同様に、本実施例では、第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧と、第3の帯電ローラ13に印加する直流電圧との電位差ΔV3を、Vth−50[V]とした。しかし、感光ドラム2上の異常電位による砂地状の画像不良を軽減するための電位差ΔV2及びΔV3は、放電開始電圧Vth未満であればよく、適宜選択することができる。
【0097】
第1、第2、第3の帯電部a1、a2、a3を通過した後の感光ドラム2上における正常電位と異常電位との電位差を小さくするためには、電位差ΔV2及びΔV3は大きい方がよい。
【0098】
但し、電位差ΔV2又はΔV3が放電開始電圧Vthに近すぎると、急激な環境変動などに伴うインピーダンスの変化によって、電位差ΔV2又はΔV3が放電開始電圧Vthを超えてしまうという懸念がある。電位差ΔV2又はΔV3が放電開始電圧Vthを超えてしまうと、第2の帯電ローラ12又は第3の帯電ローラ13から感光ドラム2上の正常電位へのDC放電が発生してしまう。そのため、感光ドラム2の電位変動による濃度の変化や、電位ムラに起因する画像濃度ムラなどが発生することがある。
【0099】
表1は、電位差ΔV2を変動させたときの、ハーフトーン画像上の白斑点のレベルと、正常電位へのDC放電レベルと、を評価した結果を示す。
【0100】
【表1】

【0101】
電位差ΔV2が、Vth−250[V]の場合には、負極性側の異常電位を十分に軽減できていないため、ハーフトーン画像上の白斑点が目立ち、画像不良となっている。これに対して、電位差ΔV2を、Vth−200[V]からVth[V]までの範囲に設定してハーフトーン画像出力した場合には、負極性側の異常電位を十分に軽減できているため、白斑点は、許容できるレベルであるか、又は見られなかった。
【0102】
一方、電位差ΔV2がVth[V]の場合には、第2の帯電ローラ12から正常電位へのDC放電によって、ハーフトーン画像の濃度が高く変動する場合があった。これに対して、電位差ΔV2を、Vth−250[V]からVth−50[V]までの範囲に設定してハーフトーン画像出力した場合には、ハーフトーン画像の濃度の変動は、許容できるレベルであるか、又は起こらなかった。
【0103】
又、表2は、電位差ΔV3を変動させたときの、ハーフトーン画像上の高濃度斑点のレベルと、正常電位へのDC放電レベルと、を評価した結果を示す。
【0104】
【表2】

【0105】
電位差ΔV3が、Vth−250[V]の場合には、正極性側の異常電位を十分に軽減できていないため、ハーフトーン画像上の高濃度斑点が目立ち、画像不良となっている。これに対して、電位差ΔV3を、Vth−200[V]からVth[V]までの範囲に設定してハーフトーン画像出力した場合には、正極性側の異常電位を十分に軽減できているため、高濃度斑点は許容できるレベルであるか、又は見られなかった。
【0106】
一方、電位差ΔV3がVth[V]の場合には、第3の帯電ローラ13から正常電位へのDC放電によって、ハーフトーン画像の濃度が低く変動する場合があった。これに対して、電位差ΔV3を、Vth−250[V]からVth−50[V]までの範囲に設定してハーフトーン画像出力した場合には、ハーフトーン画像の濃度の変動は、許容できるレベルであるか、又は起こらなかった。
【0107】
以上の結果から、電位差ΔV2、ΔV3は、次のように設定することが好ましい。
Vth−200[V]≦ΔV2≦Vth−50[V]
Vth−200[V]≦ΔV3≦Vth−50[V]
【0108】
この範囲であれば、砂地状の画像不良を軽減する一方、第2、第3の帯電ローラ12、13によるDC放電によって、感光ドラム2の電位変動による濃度の変化や電位ムラに起因する画像濃度ムラなどが発生せず、十分に良好な画像を形成することができる。
【0109】
尚、本実施例では、第2、第3の帯電ローラ12、13を設けて、感光ドラム2上の負極性側及び正極性側の両方の異常電位を所望の帯電電位Vdに近づける制御を行う。これにより、上述のように、両極性側の異常電位に起因する砂地状の画像不良を効果的に抑制することができる。しかし、上述のように、一方の極性側の異常電位を所望の帯電電位に近づけるだけでも、ある程度の砂地状の画像不良を抑制する効果が得られる。従って、所望により、第1の帯電ローラ11よりも感光ドラム2の表面の移動方向下流側に更に一つだけ帯電ローラを設け、上述のようにして、負極性側又は正極性側の異常電位の一方のみを所望の帯電電位Vdに近づける制御を行うようにしてもよい。
【0110】
即ち、画像形成装置1は、少なくとも、移動する感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第1の帯電手段11と、第1の帯電手段よりも感光体の移動方向において下流側で、移動する感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第2の帯電手段12と、を有する。又、画像形成装置1は、少なくとも、第1の帯電手段11に電圧を印加する第1の電源S1と、第2の帯電手段12に電圧を印加する第2の電源S2と、を有する。そして、第1の電源S1は直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を第1の帯電手段11に印加する。又、第2の電源S2は、第1の電源S1が第1の帯電手段11に印加する直流電圧との電位差ΔV2が放電開始電圧未満となる直流電圧を第2の帯電手段12に印加する。好ましくは、画像形成装置1は、更に、第2の帯電手段12よりも感光体の移動方向において下流で、移動する感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第3の帯電手段13と、第3の帯電手段13に電圧を印加する第3の電源S3と、を有する。そして、第3の電源S3は、次のような直流電圧を第3の帯電手段13に印加する。即ち、第1の電源S1が第1の帯電手段11に印加する直流電圧との電位差が放電開始電圧未満となり、且つ、該電位差が、第1の電源S1が第1の帯電手段11に印加する直流電圧を基準として、上記電位差ΔV2とは逆極性の電位差となる直流電圧である。
【0111】
以上説明したように、本実施例によれば、放電開始電圧から算出される適切な帯電電圧を複数の帯電ローラ(本実施例では、第1、第2、第3の帯電ローラ12、13、14)に印加する。これにより、本実施例によれば、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において発生することのある砂地状の画像不良を抑制することができる。例えば、AC帯電方式の画像形成装置において高速化に対応するために帯電電圧の交流電圧の周波数を上昇させ、AC放電電流量を最小限として高画質化を図る場合でも、砂地状の画像の発生を効果的に抑制することができる。従って、本実施例によれば、接触帯電方式の帯電手段を有する画像形成装置において、高速化、高画質化を達成しつつ、AC放電電流値を最小限としても砂地状の画像不良の発生を抑制することができる。
【0112】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1と同一の機能、構成を有する要素には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0113】
実施例1では、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを、予め各環境で求められた放電開始電圧Vthの値を基に決定した。これに対して、本実施例では、画像形成装置1は、第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値を測定する機構を有し、その電流値の測定結果に基づいてVthの値を決定する。
【0114】
図11は、本実施例における第1の帯電ローラ11に対する帯電電圧印加系のブロック回路図である。
【0115】
第1の帯電ローラ11に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段である第1の電源S1は、直流電源(DC電源)11gと交流電源(AC電源)11hとを有する。第1の電源S1から、直流電圧と交流電圧とを重畳した所定の振動電圧が、芯金11aを介して第1の帯電ローラ11に印加される。これにより、回転する感光ドラム2の周面が所定の電位に略一様に帯電処理される。又、本実施例では、画像形成装置1は、感光ドラム2を介して第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値を測定するDC電流測定手段としてのDC電流値測定回路(以下、単位「測定回路」ともいう。)15を有する。この測定回路15から制御回路14に、測定回路15によって測定された直流電流値の情報が入力される。
【0116】
制御回路14は、直流電源11gから第1の帯電ローラ11に印加する直流電圧値、及び交流電源11hから第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧値を制御する機能を有する。又、本実施例では、制御回路14は、測定回路15から入力されたDC電流値の情報から、印字工程の帯電工程において第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧値を演算及び決定するプログラムを実行する機能を有する。
【0117】
次に、印字工程時に第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧値を決定する制御について更に説明する。この制御は、印字準備回転動作(前回転工程)において次のようにして行われる。
【0118】
直流電源11gから第1の帯電ローラ11に印字工程時と同等の直流電圧(ここでは−600V)を印加した状態で、交流電源11hから第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを上昇させながら印加する。このとき、画像は作成せずに画像形成装置1を動作させる。又、このとき、転写ローラ5には直流電圧が印加され、転写部dを通過した後には、感光ドラム2の表面電位は−350V程度となる。
【0119】
図12は、第1の帯電ローラ11に印加した交流電圧のピーク間電圧Vppに対して第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値をプロットしたものである。
【0120】
図12に示すように、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppが低い場合には(図12ではVpp≦400V)、第1の帯電部a1を通過する前後で感光ドラム2の表面電位は変わらない。そのため、第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値は0である。
【0121】
第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを上昇させると(図12では400V≦Vpp≦1100V)、第1の帯電部a1を通過した後の感光ドラム2の表面電位は変化し始める。第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppの上昇に伴って、感光ドラム2の表面電位の変化量も大きくなり、第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値も上昇する。
【0122】
更に第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを上昇させると(図12ではVpp≧1100V)、第1の帯電部a1を通過後の感光ドラム2の表面電位は、第1の帯電ローラ11に印加している直流電圧(ここでは−600V)と同等となる。これ以上第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを上昇させても、感光ドラム2の表面電位の変化量は変わらなくなる。従って、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppに対する第1の帯電ローラ11に流れるDC電流値は一定となる。
【0123】
ここで、DC電流値が変化しなくなるときの印加電圧に注目すると、このときの第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは、負極性側、正極性側ともに、放電開始電圧Vthの触れ幅で振動している。即ち、このときVppがVthの2倍となっていることがわかる。従って、この特性を利用することにより、この環境における放電開始電圧Vthを検出することができる。
【0124】
実際の動作としては、制御回路14が、第1の帯電ローラ11に、−600Vの直流電圧を印加させ、又ピーク間電圧Vppを50V刻みで上昇させながら交流電圧を印加させる。このとき、制御回路14は、測定回路15によって測定されて入力されるDC電流値を検知する。ここでは、図12に示す通り、Vpp=1100VのときにDC電流値が35μAとなり、それ以降のDC電流値の上昇は見られなかったものとする。制御回路14は、DC電流値が変化しなくなったときのVpp(この環境では1100V)を2で除することによって、Vthを算出する。即ち、この環境では、Vth=550Vである。制御回路14は、算出されたVthをメモリ部に記憶させる。そして、制御回路14は、メモリ部から読み出したVthの値を用いて、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppを、実施例1と同様に、次式によって決定する。
Vpp=2×Vth+100[V]
【0125】
ここでの環境では、Vth=550Vであるため、第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは1200Vである。
【0126】
このようにして決定された第1の帯電ローラ11に印加する交流電圧のピーク間電圧Vppは、放電電流を必要最小限としたときの設定値であり、AC放電電流量は20μA程度となる。
【0127】
尚、本実施例では、砂地状の画像不良を軽減するための第2、第3の帯電ローラ12、13に印加する帯電電圧は、実施例1と同様にして設定する。
【0128】
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を奏し得るとともに、画像形成装置において検出された放電開始電圧に基づいて、画像形成装置の現在の状況により即した帯電電圧に制御することができる。
【0129】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。例えば、画像形成装置は、感光体からトナー像を直接記録材に転写する構成ではなく、感光体からトナー像を一時的に保持し搬送する中間転写体に転写し、中間転写体から記録材に転写する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
2 感光ドラム
11 第1の帯電ローラ
12 第2の帯電ローラ
13 第3の帯電ローラ
S1 第1の帯電ローラの電源
S2 第2の帯電ローラの電源
S3 第3の帯電ローラの電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
移動する前記感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第1の帯電手段と、
前記第1の帯電手段よりも前記感光体の移動方向において下流側で、移動する前記感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第2の帯電手段と、
前記第1の帯電手段に電圧を印加する第1の電源と、
前記第2の帯電手段に電圧を印加する第2の電源と、
帯電処理された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、
を有し、
前記第1の電源は直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を前記第1の帯電手段に印加し、前記第2の電源は、前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差が放電開始電圧未満となる直流電圧を前記第2の帯電手段に印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の電源が前記第2の帯電手段に印加する直流電圧と前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差をΔV2、前記放電開始電圧をVthとしたとき、
Vth−200[V]≦ΔV2≦Vth−50[V]
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
更に、前記第2の帯電手段よりも前記感光体の移動方向において下流で、移動する前記感光体の表面に接触してこれを帯電処理する第3の帯電手段と、前記第3の帯電手段に電圧を印加する第3の電源と、を有し、前記第3の電源は、前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差が放電開始電圧未満となり、且つ、該電位差が、前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧を基準として、前記第2の電源が前記第2の帯電手段に印加する直流電圧と前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差とは逆極性の電位差となる直流電圧を前記第3の帯電手段に印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第3の電源が前記第3の帯電手段に印加する直流電圧と前記第1の電源が前記第1の帯電手段に印加する直流電圧との電位差をΔV3、前記放電開始電圧をVthとしたとき、
Vth−200[V]≦ΔV3≦Vth−50[V]
の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
環境と前記放電開始電圧との関係を示す情報を記憶する記憶手段を有し、前記放電開始電圧として、当該画像形成装置の雰囲気環境に対応して前記記憶手段から読み出した前記放電開始電圧の情報を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の電源から前記第1の帯電手段に電圧を出力する際に前記第1の帯電手段に流れる電流値を測定する電流値測定手段を有し、前記放電開始電圧として、前記電流値測定手段の測定結果から算出された前記放電開始電圧の情報を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−132948(P2012−132948A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282422(P2010−282422)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】