説明

画像形成装置

【課題】トナー画像に濃度ムラ及び筋状ノイズが発生することを抑制できる画像形成装置を提供することである。
【解決手段】スリーブ80Yの周面に単位面積当りに付着している現像剤の量を現像剤の密度及びスリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間隔で割って得られる値をパッキングデンシティ(PD)と定義する。最近接位置P0におけるPDが、0.3以上0.4以下である。感光体ドラム4Yの周面に対向する磁極N1の磁束密度は、最近接位置P0よりも所定方向の上流側の領域であって、PDが0.2以上の領域において、最大となっている。最近接位置P0よりも所定方向の下流側において、PDが0.2となっている位置における磁束密度は、最近接位置P0よりも所定方向の上流側において、PDが0.2となっている位置における磁束密度の1/2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、トナー及びキャリアからなる現像剤を用いてトナー画像を印刷媒体に形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置としては、例えば、特許文献1に記載の画像形成装置が知られている。該画像形成装置では、現像剤担持体と像担持体との間に直流電圧が印加される直流現像方式が採用されている。特許文献1に記載の画像形成装置では、直流現像方式が採用されることにより、現像剤担持体と像担持体との間に交流電圧を印加する必要がない。そのため、該画像形成装置の構成を簡単にできる。
【0003】
しかしながら、直流現像方式が採用された特許文献1に記載の画像形成装置は、交流現像方式が採用された画像形成装置に比べてトナー画像に濃度ムラが発生しやすいという問題を有する。
【0004】
より詳細には、交流現像方式では、一般的に、700V程度の振幅を有する電圧が、現像剤担持体と像担持体との間に印加される。この場合、現像剤担持体と像担持体との間には比較的に大きな電圧が印加されるので、比較的に多くのトナーが現像に寄与する。そのため、交流現像方式が採用された画像形成装置では、現像剤担持体及び像担持体の回転ムラによって、現像剤担持体と像担持体との間隔が変動しても、トナー画像に濃度ムラが発生しにくい。
【0005】
一方、直流現像方式では、現像剤担持体と像担持体との間には、例えば、150V程度の直流電圧が印加されている。この場合、現像剤担持体と像担持体との間には比較的に小さな電圧しか印加されていないので、比較的に少ないトナーしか現像に寄与しない。そのため、直流現像方式が採用された画像形成装置では、現像剤担持体及び像担持体の回転ムラによって、現像剤担持体と像担持体との間隔が変動すると、トナー画像に濃度ムラが発生しやすい。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の画像形成装置では、カウンター現像方式が採用されている。カウンター現像方式とは、現像剤担持体の回転方向と像担持体の回転方向とが同じであることにより、現像剤担持体と像担持体とが対向している部分において、現像剤担持体の進行方向と像担持体の進行方向とが反対となっている現像方式である。カウンター現像方式が採用された特許文献1に記載の画像形成装置では、像担持体上の静電潜像にトナーが多く接触するようになる。よって、該画像形成装置では、トナー画像に濃度ムラが発生しにくい。
【0007】
しかしながら、カウンター現像方式が採用された特許文献1に記載の画像形成装置では、現像剤担持体の進行方向と像担持体の進行方向とが反対であるので、キャリアがトナー画像に摺接して、トナー画像の後端に筋状のノイズ(以下、筋状ノイズ)が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−98593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、トナー画像に濃度ムラ及び筋状ノイズが発生することを抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る画像形成装置は、トナーとキャリアからなる現像剤を用いてトナー画像を印刷媒体に形成する画像形成装置であって、現像領域において所定方向に進行する第1の周面であって、静電潜像が形成される第1の周面を有する像担持体と、前記現像領域において前記所定方向の反対方向に進行する第2の周面を有する現像剤担持体であって、磁界により前記キャリアを該第2の周面に吸着することによって、前記現像剤を該第2の周面に保持する現像剤担持体を有する現像装置と、前記第2の周面に保持されている前記現像剤中の前記トナーにより前記静電潜像を前記現像領域において現像するための直流電圧を該第2の周面に印加する電圧印加手段と、を備えており、前記第2の周面に単位面積当りに付着している現像剤の量を現像剤の密度及び該第1の周面と前記第2の周面との間隔で割って得られる値をパッキングデンシティと定義した場合に、該第1の周面と該第2の周面とが最も近接する最近接位置におけるパッキングデンシティが、0.3以上0.4以下であり、前記磁界を形成するための磁極の内の現像主極の磁束密度は、前記最近接位置よりも前記所定方向の上流側の領域であって、前記パッキングデンシティが0.2以上の領域において、最大となっており、前記最近接位置よりも前記所定方向の下流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度は、該最近接位置よりも該所定方向の上流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度の1/2以下であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トナー画像に濃度ムラ及び筋状ノイズが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】現像装置の断面構造図である。
【図3】現像ローラ及び感光体ドラムの拡大図である。
【図4】第1の実験の実験結果を示したグラフである。
【図5】第3の実験の実験結果を示したグラフである。
【図6】回転方向における位置と磁極N1の磁束密度及びパッキングデンシティとの関係を示したグラフである。
【図7】第4の実験の実験結果を示したグラフである。
【図8】第6の実験の実験結果を示したグラフである。
【図9】第7の実験の実験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(画像形成装置の構成)
以下に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。図1は、画像形成装置1の全体構成を示した図である。
【0015】
画像形成装置1は、電子写真方式によるカラープリンタであって、いわゆるタンデム式で4色(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)の画像を合成するように構成したものである。該画像形成装置1は、スキャナにより読み取った画像データに基づいて、トナーと磁性体キャリアからなる現像剤を用いてトナー画像を用紙(印刷媒体)Pに形成する機能を有し、図1に示すように、印刷部2、給紙部15、タイミングローラ対19、定着装置20及び排紙トレイ21を備えている。
【0016】
給紙部15は、用紙Pを1枚ずつ供給する役割を果たし、用紙トレイ16及び給紙ローラ17を含む。用紙トレイ16には、印刷前の状態の用紙Pが複数枚重ねて載置される。給紙ローラ17は、用紙トレイ16に載置された用紙Pを1枚ずつ取り出す。タイミングローラ対19は、印刷部2においてトナー画像が用紙Pに2次転写されるように、タイミングを調整しながら用紙Pを搬送する。
【0017】
印刷部2は、給紙部15から供給されてくる用紙Pにトナー画像を形成し、作像部22(22Y,22M,22C,22K)、光走査装置6(6Y,6M,6C,6K)、転写部8(8Y,8M,8C,8K)、中間転写ベルト11、駆動ローラ12、従動ローラ13、2次転写ローラ14及びクリーニング装置18を含んでいる。また、作像部22(22Y,22M,22C,22K)は、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)、帯電器5(5Y,5M,5C,5K)、現像装置7(7Y,7M,7C,7K)、クリーナー9(9Y,9M,9C,9K)、イレーサ10(10Y,10M,10C,10K)及び直流電源30(30Y,30M,30C,30K)を含んでいる。
【0018】
感光体ドラム4は、円筒状をなしており、図1に示すように、時計回りに回転している。よって、感光体ドラム4は、現像領域において所定方向に進行する周面(被走査面)を有している。現像領域とは、感光体ドラム4と現像装置7の現像ローラ72とが対向している領域であり、該領域内においてトナー画像の現像が行われる。
【0019】
帯電器5は、感光体ドラム4の周面を帯電させる。光走査装置6は、図示しない制御部の制御により、感光体ドラム4の周面に対してビームBY,BM,BC,BKを走査する。これにより、感光体ドラム4の周面には静電潜像が形成される。
【0020】
現像装置7は、感光体ドラム4にトナーを付与する。直流電源30は、現像装置7から感光体ドラム4へとトナーが移動するように、現像装置7に直流電圧を印加する。これにより、静電潜像に基づいたトナー画像が感光体ドラム4に現像される。現像装置7及び直流電源30の詳細については、後述する。
【0021】
中間転写ベルト11は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間に張り渡されており、感光体ドラム4に現像されたトナー画像が1次転写される。転写部8は、中間転写ベルト11の内周面に対向するように配置されており、1次転写電圧を印加されることにより、感光体ドラム4に形成されたトナー画像を中間転写ベルト11に1次転写する役割を果たす。クリーナー9は、1次転写後に感光体ドラム4の周面に残存しているトナーを回収する役割を果たす。イレーサ10は、感光体ドラム4の周面の電荷を除去する。駆動ローラ12は、中間転写ベルト駆動部(図1には記載せず)により回転させられることにより、中間転写ベルト11を矢印αの方向に駆動させる。これにより、中間転写ベルト11は、トナー画像を2次転写ローラ14まで搬送する。
【0022】
2次転写ローラ14は、中間転写ベルト11と対向し、ドラム形状をなしている。そして、2次転写ローラ14は、転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト11との間を通過する用紙Pに対して、中間転写ベルト11が担持しているトナー画像を2次転写する。より詳細には、駆動ローラ12は接地電位に保たれている。また、中間転写ベルト11は、駆動ローラ12に接触しているので、接地電位に近い正の電位に保たれている。そして、2次転写ローラ14の電位が駆動ローラ12及び中間転写ベルト11の電位よりも高くなるように、2次転写ローラ14に対して正の転写電圧が印加されている。トナー画像は、負に帯電しているので、駆動ローラ12と2次転写ローラ14との間に発生している電界によって、中間転写ベルト11から用紙Pに対して転写される。
【0023】
クリーニング装置18は、用紙Pへのトナー画像の2次転写後に、中間転写ベルト11に残存しているトナーを除去する。
【0024】
トナー画像が2次転写された用紙Pは、定着装置20に搬送される。定着装置20は、用紙Pに対して加熱処理及び加圧処理を施すことにより、トナー画像を用紙Pに定着させる。排紙トレイ21には、印刷済みの用紙Pが載置される。
【0025】
(現像装置の構成)
次に、現像装置7(7Y,7M,7C,7K)の構成について図面を参照しながら説明する。図2は、現像装置7Yの断面構造図である。現像装置7Y,7M,7C,7Kは同じ構造を有しているので、現像装置7Yを例にとって説明する。
【0026】
現像装置7Yは、図2に示すように、現像ローラ72Y、供給ローラ74Y、撹拌ローラ76Y、規制ブレード77Y及び収容部78Yを有している。
【0027】
収容部78Yは、現像装置7Yの本体を構成しており、トナーを収容していると共に、現像ローラ72Y、供給ローラ74Y、撹拌ローラ76Y及び規制ブレード77Yを格納している。撹拌ローラ76Yは、収容部78Y内の現像剤を攪拌してトナーを負に帯電させる。供給ローラ74Yは、負に帯電しているトナーを含む現像剤を現像ローラ72Yに供給する。現像ローラ72Yは、感光体ドラム4Yの周面にトナーを付与し、スリーブ80Y及び磁石82Yにより構成されている。
【0028】
スリーブ80Yは、図2に示すように、非磁性の金属製の円筒であり、感光体ドラム4Yと対向している。スリーブ80Yは、感光体ドラム4Yと同じ方向(すなわち、時計回り)に回転する。すなわち、感光体ドラム4Yとスリーブ80Yとは、カウンター方向に回転している。よって、スリーブ80Yは、現像領域において所定方向の反対方向に進行する周面を有している。
【0029】
磁石82Yは、スリーブ80Y内に設けられており、磁界を形成するための磁極N1,S1,N2,S2,S3を有している。磁石82Yは、現像剤中の磁性体キャリアを磁界によりスリーブ80Yの周面に吸着することによって、現像剤をスリーブ80Yの周面に保持する。より詳細には、磁極N1は、感光体ドラム4Yに対向している現像主極である。そして、磁極N1,S1,N2,S2,S3は、この順に、反時計回りに並ぶように磁石82Yに配置されている。
【0030】
以上のような構成を有する現像ローラ72Yでは、磁性体キャリアは、磁極S2によりスリーブ80Yの周面に吸着される。この際、磁性体キャリアに付着しているトナーも、スリーブ80Yの周面に吸着される。すなわち、現像剤は、スリーブ80Yの周面に吸着され、スリーブ80Yの回転により搬送される。この間、現像剤は、磁極S2,N2間の磁界、磁極N2,S1間の磁界及び磁極S1,N1間の磁界によって、スリーブ80Yの周面に保持されている。規制ブレード77Yは、感光体ドラム4Yの周面とスリーブ80Yの周面とが対向している現像領域よりもスリーブ80Yの回転方向の上流側において、スリーブ80Yに対して所定の間隔を開けた状態で設けられている。これにより、現像剤は、規制ブレード77Yとスリーブ80Yの周面との間を通過する際に、所定の層厚に規制される。更に、現像剤中のトナーは、後述するように、感光体ドラム4Yの周面とスリーブ80Yの周面との間に発生している電界により、スリーブ80Yの周面から感光体ドラム4Yの周面へと移動する。すなわち、感光体ドラム4Yの周面にトナー画像が現像される。
【0031】
また、現像剤は、感光体ドラム4Yの周面とスリーブ80Yの周面との間を通過した後、磁極N1,S3間の磁界によりスリーブ80Yの周面に保持された状態で搬送される。その後、現像剤は、磁極S3,S2間の磁界が弱まった空間において遠心力により、スリーブ80Yの周面から剥離される。
【0032】
ここで、感光体ドラム4Yの周面にトナー画像が現像される過程についてより詳細に説明する。直流電源30Yは、スリーブ80Yの周面に保持されている現像剤中のトナーにより静電潜像を現像するための直流電圧をスリーブ80Yに印加する。より詳細には、帯電器5Yは、感光体ドラム4Yの周面の電位が−650Vとなるように感光体ドラム4Yの周面を帯電させる。また、感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射された部分の電位は、0Vに近づく。一方、直流電源30Yは、スリーブ80Yの周面の電位を−500Vとする。これにより、スリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射された部分との間には、感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射された部分からスリーブ80Yの周面へと向かう電界が発生する。そのため、負に帯電したトナーは、スリーブ80Yの周面から感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射された部分へと移動する。一方、スリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射されていない部分との間には、スリーブ80Yの周面から感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射されていない部分へと向かう電界が発生する。そのため、負に帯電したトナーは、スリーブ80Yの周面から感光体ドラム4Yの周面においてビームBYが照射されていない部分へと移動しない。これにより、感光体ドラム4Yの周面には、静電潜像に従ったトナー画像が形成される。
【0033】
ところで、画像形成装置1は、トナー画像に濃度ムラ及び筋状ノイズが発生することを抑制する構成を備えている。以下に、かかる構成について説明する。
【0034】
(濃度ムラ及び筋状ノイズの発生の抑制)
画像形成装置1では、スリーブ80Yの周面には、直流電圧が印加されており、交流電圧は印加されていない。すなわち、画像形成装置1では、直流現像方式が採用されている。直流現像方式では、スリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間には比較的に小さな電圧しか印加されないので、比較的に少ないトナーしか現像に寄与しない。よって、トナー画像に濃度ムラが発生するおそれがある。
【0035】
本願発明者は、直流現像方式が採用された画像形成装置1において、トナー画像に濃度ムラが発生することを抑制するために、パッキングデンシティを高くすることに想到した。以下に、パッキングデンシティについて図3を参照しながら説明する。図3は、現像ローラ72Y及び感光体ドラム4Yの拡大図である。
【0036】
パッキングデンシティ(以下、PD)とは、スリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間における現像剤の充填度を示している。パッキングデンシティは、スリーブ80Yの周面に単位面積当りに付着している現像剤の量(以下、搬送量:MA(g/m2))、現像剤の密度(ρ(g/m3))、及び、パッキンデンシティを算出する位置におけるスリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間隔(g(m))を用いて、以下の式(1)により示される。
【0037】
PD=MA/ρ/g ・・・(1)
【0038】
MAの測定は、感光体ドラム4Yがない状態において、パッキングデンシティを算出する位置をスリーブ80Yの周方向に10mmの範囲内の現像剤の重量を平均化することにより行う。具体的には、スリーブ80Yの周方向10mm及びスリーブ80Yの長手方向50mmの開口を有するマスクによりスリーブ80Yを覆い、開口内の現像剤を吸引し、該現像剤の重量を測定する。そして、現像剤の重量を開口の面積で割って、MAを算出する。
【0039】
ただし、ρは、以下の式(2)及び式(3)により示される。
【0040】
ρ=Tc・ρt+(1−Tc)・ρc ・・・(2)
Tc:現像剤中のトナー重量部
ρt:トナーの密度
ρc:キャリアの密度
【0041】
g=DS+Rpc・(1−cosθpc)+Rsl・(1−cosθsl)・・・(3)
DS:スリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面とが最も近接する位置(以下、最近接位置P0)におけるスリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間隔
Rpc:感光体ドラム4Yの半径
Rsl:現像ローラ72Yの半径
θpc:最近接位置P0と感光体ドラム4Yの中心とを繋ぐ直線l1とパッキングデンシティを算出する位置と感光体ドラム4Yの中心とを繋ぐ直線l2とがなす角度
θsl:最近接位置P0と現像ローラ72Yの中心とを繋ぐ直線l3とパッキングデンシティを算出する位置と現像ローラ72Yの中心とを繋ぐ直線l4とがなす角度
【0042】
まず、本願発明者は、最近接位置P0におけるパッキングデンシティを変化させることにより、用紙Pにおける現像量の変化を調べる第1の実験を行った。図4は、第1の実験の実験結果を示したグラフである。横軸はパッキングデンシティを示し、縦軸は現像量を示している。
【0043】
第1の実験の実験条件は以下の通りである。なお、第1の実験以降の実験においても、同じ条件を適用した。
【0044】
MA=350g/m2
Tc=7%
DS=250μm
Rpc=15mm
Rsl=8mm
ρt=110000g/m3
ρc=500000g/m3
【0045】
図4によれば、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが高くなれば、現像量が高くなる傾向があることが理解できる。そこで、本願発明者は、第2の実験として、最近接位置P0におけるパッキングデンシティを0.2〜0.4の間において0.05刻みで変化させて、トナー画像に濃度ムラが発生するか否かを調べた。更に、本願発明者は、第2の実験において、筋状ノイズの発生の有無も調べた。表1は、第2の実験結果を示した表である。表1において、○は、濃度ムラ又は筋状ノイズが発生しなかったことを示す。△は、問題がない程度の濃度ムラ又は筋状ノイズが発生したことを示す。×は、問題がある程度の濃度ムラ又は筋状ノイズが発生したことを示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1によれば、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.3以上0.4以下であれば、問題がある程度の濃度ムラが発生しないことが分かる。なお、パッキングデンシティが0.4以上になると、現像剤が充填されすぎて、現像ローラ72Y及び感光体ドラム4Yの動きが阻害される。そのため、0.4より大きなパッキングデンシティでは、実験を行っていない。
【0048】
次に、本願発明者は、第3の実験として、磁極N1の磁束密度が最大となる位置を最近接位置P0から所定方向の上流側にずらして、トナー画像の現像安定性を調べた。
【0049】
また、トナー画像の現像安定性とは、画像濃度ムラの発生のしやすさを示している。具体的には、現像安定性が高いとは、画像ムラが発生しにくいことを示し、現像安定性が低いとは、画像ムラが発生しやすいことを示す。
【0050】
ここで、現像安定性の算出方法について説明する。現像安定性を評価するために第3の実験では標準SN比を用いた。品質工学においてSN比とは、ばらつきの尺度となるものであり、SN比が大きいほどばらつきが小さいことを意味する。標準SN比とは、基準状態との違いを比較するためのSN比である。第3の実験では、基準状態を求めるために、現像電位に対する用紙上への現像量について、DS(最近接位置P0におけるスリーブ80Yの周面と感光体ドラム4Yの周面との間隔)を変動させて評価した。具体的には、DS=250μm及びDS=400μmのそれぞれについて、現像バイアスを入力値として−100V〜−500Vまで100V刻みで変動させ、各電圧における用紙上でのベタ画像の透過濃度を出力値として測定した。そして、DS=250μm及びDS=400μmの出力値の平均値をとって、標準出力とした。第3の実験では、標準出力(基準状態)に対するばらつき(標準SN比)を、磁束N1の磁束密度が最大となる位置を所定方向の上流側の領域へずらして測定した。
【0051】
図5は、第3の実験の実験結果を示したグラフである。横軸は磁極N1の磁束密度が最大となる位置におけるパッキングデンシティを示しており、縦軸は現像安定性SN比を示している。なお、第3の実験では、最近接位置P0におけるパッキングデンシティを0.35とした。
【0052】
図5によれば、磁極N1の磁束密度が最大となる位置が、所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.2以上の領域に位置している場合において、現像安定性がピークを有している。また、磁極N1の磁束密度が最大となる位置が、所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.2より小さい領域に位置している場合では、現像安定性が急激に悪化している。特に、磁極N1の磁束密度が最大となる位置が、所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.22である位置にある場合に、現像安定性が最も良好であることが分かる。よって、第3の実験によれば、磁極N1の磁束密度が最大となる位置が、所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.2以上の領域に位置していることが好ましいことが分かる。なお、パッキングデンシティの上限は、図5より、0.31であることが分かる。
【0053】
図6は、回転方向における位置と磁極N1の磁束密度及びパッキングデンシティとの関係を示したグラフである。横軸は回転方向における位置を示し、縦軸は磁束密度及びパッキングデンシティを示している。
【0054】
パッキングデンシティは、図6に示すように、最近接位置P0(0mmの位置)において最大値を取っており、最近接位置P0から離れるに従って減少している。また、磁極N1の磁束密度は、所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.2の位置において最大となっている。これにより、画像形成装置1では、磁極N1の磁束密度は、最近接位置P0よりも1.5mmだけ所定方向の上流側において最大となっている。
【0055】
なお、一般的な画像形成装置(例えば、特許文献1に記載の画像形成装置)において、磁極N1の磁束密度は、最近接位置P0よりも−0.7mmだけ所定方向の上流側において最大となっている。このように、画像形成装置1では、一般的な画像形成装置よりも、磁極N1の磁束密度が最大となる位置が、最近接位置P0から見て所定方向の上流側にずれていることが分かる。これにより、現像安定性の向上が図られる。
【0056】
ところで、表1によれば、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.3以上0.4以下である場合において、問題がある程度の筋状ノイズが発生していることが分かる。また、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.2以上0.25以下である場合において、筋状ノイズが発生していないことが分かる。これは、パッキングデンシティが高くなることによって、現像剤中のキャリアが、トナー画像に摺接して、トナー画像の後端に筋状ノイズを発生させているためである。
【0057】
そこで、本願発明者は、最近接位置P0よりも所定方向の上流側及び下流側における磁束密度の関係について着目し、第4の実験を行った。具体的には、本願発明者は、第4の実験として、最近接位置P0よりも所定方向の上流側において、パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度φ1と、最近接位置P0よりも所定方向の下流側において、パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度φ2とを変化させ、トナー画像に濃度ムラ又は筋状ノイズが発生したか否かを調べた。なお、第4の実験では、キャリアの直径を25μmと33μmとに変化させて実験を行った。図7は、第4の実験の実験結果を示したグラフである。横軸は磁束密度φ1を示しており、縦軸は磁束密度φ2を示している。
【0058】
図7によれば、磁束密度φ2が磁束密度φ1の1/2以下である場合には、濃度ムラ及び筋状ノイズのいずれも発生していないことが分かる。一方、磁束密度φ2が磁束密度φ1の1/2より大きい場合には、濃度ムラ及び/又は筋状ノイズが発生していることが分かる。従って、濃度ムラ及び筋状ノイズが発生することを抑制するためには、磁束密度φ2が磁束密度φ1の1/2以下であることが好ましいことが分かる。
【0059】
第1の実験ないし第4の実験によれば、画像形成装置1が、以下の第1の条件ないし第3の条件を満たしていれば、濃度ムラの発生及び筋状ノイズの発生を抑制できることが分かる。
【0060】
第1の条件:最近接位置P0におけるパッキングデンシティが、0.3以上0.4以下であること
第2の条件:磁極N1の磁束密度が、最近接位置P0よりも所定方向の上流側の領域であって、パッキングデンシティが0.2以上の領域において、最大となっていること
第3の条件:最近接位置P0よりも所定方向の下流側において、パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度φ2が、最近接位置P0よりも所定方向の上流側において、パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度φ1の1/2以下となっていること
【0061】
なお、本願発明者は、第2の条件及び第3の条件を満たす画像形成装置を作製し、最近接位置P0におけるパッキングデンシティを0.2〜0.4の間において0.05刻みで変化させて、トナー画像に濃度ムラ及び筋状ノイズが発生するか否かを調べる第5の実験を行った。なお、第2の実験において用いた画像形成装置と第5の実験において用いた画像形成装置との相違点は、第2の実験において用いた画像形成装置では、第2の条件及び第3の条件が満たされていないのに対して、第5の実験において用いた画像形成装置では、第2の条件及び第3の条件が満たされている点である。具体的には、第2の実験において用いた画像形成装置では、磁極N1の磁束密度は、最近接位置P0で最大となっており、かつ、磁束密度φ1と磁束密度φ2とは等しくなっている。
【0062】
表2は、第5の実験結果を示した表である。表2において、○は、濃度ムラ又は筋状ノイズが発生しなかったことを示す。△は、問題がない程度の濃度ムラ又は筋状ノイズが発生したことを示す。×は、問題がある程度の濃度ムラ又は筋状ノイズが発生したことを示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2によれば、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.3以上0.4以下であれば、問題がある程度の濃度ムラ及び問題がある程度の筋状ノイズが発生しないことが分かる。すなわち、画像形成装置が第1の条件を満たすことにより、濃度ムラの発生を抑制でき、画像形成装置が第2の条件及び第3の条件を満たすことにより、筋状ノイズの発生を抑制できることが分かる。
【0065】
次に、本願発明者は、磁束密度φ1の好ましい値を求めるために、第6の実験を行った。具体的には、本願発明者は、磁束密度φ1を変化させたときの現像安定性を測定した。図8は、第6の実験の実験結果を示したグラフである。横軸は磁束密度φ1を示しており、縦軸は現像安定性を示している。
【0066】
図8によれば、磁束密度φ1が90mT以上の領域では、磁束密度φ1が90mT以下の領域よりも、直線の傾きが大きくなっている。すなわち、磁束密度φ1が90mT以上の領域では、磁束密度φ1が90mTより小さい領域に比べて、磁束密度φ1の増加量に対する現像安定性の増加量が大きい。これは、磁束密度φ1が大きくなることにより、スリーブ80Yの周面上に形成される現像剤の磁気ブラシの高さが高くなり、磁気ブラシが感光体ドラム4Yの周面に確実に接触するためである。そして、磁気ブラシが感光体ドラム4Yの周面に確実に接触するようになると、より多くのトナーがスリーブ80Yの周面から感光体ドラム4Yの周面へと安定して供給されるようになるからである。よって、磁束密度φ1が90mT以上であれば、現像安定性が向上する。よって、第6の実験によれば、磁束密度φ1は、90mT以上であることが好ましい。
【0067】
次に、本願発明者は、磁束密度φ2の好ましい値を求めるために、第7の実験を行った。具体的には、本願発明者は、磁束密度φ2を変化させたときに、筋状ノイズの発生時の最近接位置P0におけるパッキングデンシティを測定した。図9は、第7の実験の実験結果を示したグラフである。横軸は磁束密度φ2を示しており、縦軸は最近接位置P0におけるパッキングデンシティを示している。
【0068】
図9によれば、磁束密度φ2が40mT以下の領域では、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.37のときに、筋状ノイズが発生している。一方、磁束密度φ2が40mTより大きい領域では、最近接位置P0におけるパッキングデンシティが0.37から減少している。このように、磁束密度φ2が40mTよりも大きくなると、低いパッキングデンシティであっても筋状ノイズが発生しやすくなっていることが分かる。これは、磁束密度φ2が大きいと、最近接位置P0よりも所定方向の下流側における磁気ブラシの高さが高くなり、最近接位置P0を通過したトナー画像に磁気ブラシが接触するためである。そこで、最近接位置P0よりも所定方向の下流側における磁気ブラシの高さが低くなるように、磁束密度φ2は、40mT以下であることが好ましい。これにより、筋状ノイズの発生がより効果的に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、濃度ムラ及び筋状ノイズの発生を抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
4Y,4M,4C,4K 感光体ドラム
7Y,7M,7C,7K 現像装置
30Y,30M,30C,30K 直流電源
72Y 現像ローラ
74Y 供給ローラ
76Y 撹拌ローラ
77Y 規制ブレード
78Y 収容部
80Y スリーブ
82Y 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアからなる現像剤を用いてトナー画像を印刷媒体に形成する画像形成装置であって、
現像領域において所定方向に進行する第1の周面であって、静電潜像が形成される第1の周面を有する像担持体と、
前記現像領域において前記所定方向の反対方向に進行する第2の周面を有する現像剤担持体であって、磁界により前記キャリアを該第2の周面に吸着することによって、前記現像剤を該第2の周面に保持する現像剤担持体を有する現像装置と、
前記第2の周面に保持されている前記現像剤中の前記トナーにより前記静電潜像を前記現像領域において現像するための直流電圧を該第2の周面に印加する電圧印加手段と、
を備えており、
前記第2の周面に単位面積当りに付着している現像剤の量を現像剤の密度及び該第1の周面と前記第2の周面との間隔で割って得られる値をパッキングデンシティと定義した場合に、該第1の周面と該第2の周面とが最も近接する最近接位置におけるパッキングデンシティが、0.3以上0.4以下であり、
前記磁界を形成するための磁極の内の現像主極の磁束密度は、前記最近接位置よりも前記所定方向の上流側の領域であって、前記パッキングデンシティが0.2以上の領域において、最大となっており、
前記最近接位置よりも前記所定方向の下流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度は、該最近接位置よりも該所定方向の上流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度の1/2以下であること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記最近接位置よりも前記所定方向の上流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度は、90mT以上であり、
前記最近接位置よりも前記所定方向の下流側において、前記パッキングデンシティが0.2となっている位置における磁束密度は、40mT以下であること、
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145641(P2012−145641A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2127(P2011−2127)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】