説明

画像形成装置

【課題】急激なトナーの劣化が生じた場合であっても転写不良の発生を抑制する。
【解決手段】転写器により転写材に転写された現像剤像の濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部により検出された濃度に基づいて転写電圧を補正する補正部とを備え、前記補正部は、像担持体と転写器との間に、転写電圧を発生させて転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度と、像担持体と転写器との間に、前記転写電圧と逆極性の転写電圧を発生させて転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度との比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、トナーの印刷媒体への転写不良を防止するため、所定時間に印刷された印刷枚数に対応する情報を取得するとともに所定時間に印刷された印刷ドット数に対応する情報を取得し、取得した印刷枚数に対応する情報および印刷ドット数に対応する情報から印刷デューティを導出し、導出した印刷デューティに基づいてトナーの劣化程度を予測して転写手段に印加する転写電圧を補正するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−32950号公報(段落「0054」〜段落「0072」、図9、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、所定時間に印刷された印刷枚数および印刷ドット数に基づいてトナーの劣化程度を予測することはできたが、感光ドラムや現像器などの部材との摩擦等による急激なトナーの劣化が生じた場合、その劣化を予測することができず、転写不良が発生してしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、急激なトナーの劣化が生じた場合であっても転写不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、現像剤を担持する像担持体と、前記像担持体に担持された前記現像剤を転写する転写器と、前記像担持体と前記転写器との間に転写電圧を発生させる転写電圧制御部とを有する画像形成装置において、前記転写器により転写材に転写された前記現像剤像の濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部により検出された濃度に基づいて前記転写電圧を補正する補正部とを備え、前記補正部は、前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度と、前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧と逆極性の転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度との比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、急激なトナーの劣化が生じた場合であっても転写不良の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施例における画像形成装置の制御構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図
【図3】第1の実施例における転写電圧補正処理部の構成を示すブロック図
【図4】第1の実施例における記憶部の構成を示すブロック図
【図5】第1の実施例におけるトナー像濃度測定処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施例における転写率算出処理を示すフローチャート
【図7】第1の実施例における補正電圧決定処理を示すフローチャート
【図8】第1の実施例におけるプラス帯電トナーの割合を示すグラフ
【図9】第1の実施例における転写電圧の推移を示すグラフ
【図10】第2の実施例における画像形成装置の制御構成を示すブロック図
【図11】第2の実施例における記憶部の構成を示すブロック図
【図12】第2の実施例における転写電圧補正処理部の構成を示すブロック図
【図13】第2の実施例におけるトナー像濃度測定処理を示すフローチャート
【図14】第2の実施例における転写率算出処理を示すフローチャート
【図15】第2の実施例における補正電圧決定処理を示すフローチャート
【図16】第2の実施例における転写率を示すグラフ
【図17】第2の実施例における転写率を示すグラフ
【図18】第2の実施例における転写電圧の推移を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図2は第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図2において、画像形成装置1はブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色の現像剤としてのトナーを重ね合わせて印刷することでカラー画像を得る電子写真方式のカラープリンタである。なお、本発明に直接関係のない構成は説明の便宜上省略する。
【0010】
画像形成装置1は、静電潜像や現像剤像を担持する像担持体としての感光ドラム5K、5Y、5M、5C(以下、「感光ドラム5」とする。)、感光ドラム5をマイナス帯電させる帯電ローラ2K、2Y、2M、2C(以下、「帯電ローラ2」とする。)、感光ドラム5に静電潜像を書き込む露光器3K、3Y、3M、3C(以下、「露光器3」とする。)、感光ドラム5上の静電潜像を現像剤であるマイナス帯電したトナーで可視化する現像器4K、4Y、4M、4C(以下、「現像器4」とする。)をそれぞれブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色分、備えている。
【0011】
転写器としての転写ローラ6K、6Y、6M、6C(以下、「転写ローラ6」とする。)は、転写材としての無端のベルト状の転写ベルト7内に配置されており、転写ベルト7を挟んで感光ドラム5に押し当てられている。また、転写ローラ6は、図示しない転写電源に接続されており、その転写電源により電圧が印加される。転写電源は、正極から負極までの高電圧出力が可能な電源である。
【0012】
転写材としての転写ベルト7は、ドライブローラ8と、アイドルローラ9とに張架され、張力により支持されており、感光ドラム5と転写ベルト7とが接する面が平らに配置されている。また、転写ベルト7の近傍には、転写ベルト7に転写されたトナー像の濃度を検出する濃度センサ21および転写ベルト7の温度を検出する転写材温度検出部としての転写ベルト温度センサ23が配置されている。なお、転写ベルト7に転写されたトナー像は、濃度センサ21により濃度が検出された後、図示しないクリーニングブレードにより除去される。
【0013】
記録媒体17は、支持プレート部材18上に載置され、支持プレート部材18はスプリング19により押し上げられ、ホッピングローラ14の外周面に押し付けられている。また、ホッピングローラ14の近傍には、画像形成装置1内の温度と湿度を検出する温湿度検出部としての温湿度センサ22が配置されている。
【0014】
図2中の破線は、ホッピングローラ14により繰出された記録媒体17の搬送経路であり、その搬送経路に沿って第1搬送ローラ対11と、第2搬送ローラ対12と、書き出しセンサ15とが配置されている。さらに、搬送経路に沿って定着器10と、排出センサ16と、排出ローラ対13とが転写ベルト7より媒体搬送方向における下流側に配置されている。
【0015】
図1は第1の実施例における画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
図1において、画像形成装置1の制御構成は、印刷制御部100と、画像処理部101と、Video処理部102と、帯電電圧制御部103と、現像電圧制御部104と、転写電圧制御部105と、転写電圧補正処理部106と、転写率演算部107と、記憶部108と、ドラムカウンタ109とにより構成されている。
【0016】
印刷制御部100は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等により構成され、ROM等に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて画像形成装置1全体の動作を制御する。この印刷制御部100には、図2に示す書き出しセンサ15、排出センサ16、濃度センサ21、温湿度センサ22、転写ベルト温度センサ23等の各センサが各部を介して接続されており、印刷制御部100は各センサおよび各部からの入力信号や情報に基づいて解析、演算、条件等を判断し、各部への動作指示信号を出力することで各機構の制御および印加電圧の制御を統括的に行う。
【0017】
画像処理部101は、図示しない上位装置としてのホストコンピュータから送られてくる画像データを取り込み、印刷可能なデータ形式に変換する。Video処理部102は、画像処理部101で変換された画像データを露光器(LEDヘッド)3に出力する。
なお、図2に示すホッピングローラ14、第1搬送ローラ対11、第2搬送ローラ対12、ドライブローラ8、感光ドラム5、定着器10の図示しない駆動装置は、印刷制御部100からの信号を受けて所定のタイミング、速度で駆動される。
【0018】
帯電電圧制御部103、現像電圧制御部104、および転写電圧制御部105は、印刷制御部100からの制御値を受け、それぞれ帯電ローラ2、現像器4、転写ローラ6に印加する電圧の制御を行う。
転写電圧制御部105は、図示しない転写電源により転写ローラ6に所定の転写電圧を印加して感光ドラム5と転写ローラ6との間に転写電圧を発生させて感光ドラム5の表面に形成されたトナー像を記録媒体17や転写ベルト7に転写する。
【0019】
補正部としての転写電圧補正処理部106は、濃度検出部としての濃度センサ21により検出した濃度から劣化したトナーの状態を検出し、その劣化したトナーの状態、温湿度センサ22で検出した装置内の温度や湿度、および転写ベルト温度センサ23で検出した転写ベルト7の温度に基づいて転写電圧の補正値を決定し、その転写電圧を補正する。
【0020】
記憶部108は、劣化したトナーの状態を検出するために、転写材としての転写ベルト7に転写されたトナー像の濃度を検出する濃度検出部としての濃度センサ21により検出した値を濃度値として記憶する。
【0021】
転写率演算部107は、記憶部108に記憶された濃度値から転写率を求める。
転写電圧補正処理部106は、図3に示すように、転写率演算部107が求めた転写率から転写電圧の補正値を決定するための転写電圧補正テーブルを記憶する転写電圧補正テーブルの記憶部1061を備えている。
【0022】
ドラムカウンタ109は、感光ドラム5が1回転する毎に、感光ドラム5の回転数を計数して記憶するカウンタである。このドラムカウンタ109は、計数した感光ドラム5の回転数が所定値を超えた場合、その旨を印刷制御部100に通知する。感光ドラム5の回転数が所定値を超えた旨の通知を受けた印刷制御部100は、転写電圧補正処理部106で転写電圧の補正を行う。
【0023】
転写電圧補正処理部106の構成を、図3の第1の実施例における転写電圧補正処理部の構成を示すブロック図に基づいて図1を参照しながら説明する。
図3において、転写電圧補正処理部106は、転写電圧補正テーブルの記憶部1061を備え、濃度センサ21の測定値から導出された転写率を表す値と、温湿度センサ22の測定値と、転写ベルト温度センサ23の測定値とから転写電圧の補正値を決定する。濃度センサ21は、二つの転写電圧の条件から図2に示す転写ベルト7へ転写されたトナー像の濃度の測定を行う。その測定結果は印刷制御部100により記憶部108に記憶される。
【0024】
記憶部108に記憶される濃度センサ21の測定結果を図4の第1の実施例における記憶部の構成を示すブロック図に基づいて図1を参照しながら説明する。
図4において、記憶部108は、二つの転写電圧の条件から図2に示す転写ベルト7へ転写されたトナー像の濃度の検出値を、第1の検出値1081および第2の検出値1082として記憶する領域を備えている。転写率演算部107は、この第1の検出値1081および第2の検出値1082に記憶された検出値から転写率を導出する。
【0025】
上述した構成の作用について説明する。
まず、画像形成装置の動作を図1および図2に基づいて説明する。
画像形成装置1の印刷制御部100は、例えば画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ等の上位装置から受けた印刷指示に従い、印刷指示された画像データの生成処理、記録媒体17の搬送制御、帯電ローラ2による感光ドラム5の帯電制御、露光器3による露光制御、現像器4による現像制御、転写ローラ6による転写制御、定着器10による定着制御を行い、記録媒体17に画像の印刷を行う。
【0026】
詳述すると、印刷制御部100は、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ等の上位装置から印刷指示を受信すると、定着器10の制御を開始し、定着器10を使用可能な温度に加熱制御する。
定着器10が使用可能な温度になると、印刷制御部100は、図示しない駆動装置を制御して感光ドラム5を回転させ、感光ドラム5の線速度が印刷時の記憶媒体17の搬送速度になるまで加速する。
【0027】
印刷制御部100は、同時に、図示しない駆動装置を制御してドライブローラ8の回転を開始し、そのドライブローラ8の回転により転写ベルト7を回転させ、転写ベルト7の線速度が印刷時の記録媒体17の搬送速度になるまで加速する。
【0028】
印刷制御部100の指示により帯電電圧制御部103は、感光ドラム5が回転を開始したタイミングで帯電ローラ2を制御して感光ドラム5にマイナスの電圧を印加することで感光ドラム5の外周表面を例えばマイナス600Vに帯電させる。(帯電制御)
印刷制御部100の指示により現像電圧制御部104は、−600Vに帯電した感光ドラム5の部分が、感光ドラム5の回転により現像器の現像エリアを通過するタイミングで現像器を現像可能状態になるように制御する。例えば、現像ローラを用いた接触現像方式の場合、マイナスに帯電したトナーが付着した現像ローラに−200Vの電圧を印加することで現像可能な状態になる。
【0029】
感光ドラム5の−600Vに帯電した部分が、感光ドラム5の回転により転写ベルト7を介して転写ローラ6との接触部としての転写ニップ部に到達した時点で、印刷プロセスは印刷可能な状態となる。
【0030】
次に、印刷制御部100は、ホッピングローラ14を図示しない駆動装置により回転させ、記録媒体17を1枚ずつ分離、搬送する。分離された記録媒体17は、印刷制御部100が図示しない駆動装置を制御することにより、第1搬送ローラ対11を経て第2搬送ローラ対12へと搬送され、第2搬送ローラ対12と転写ベルト7との間に配置された書き出しセンサ15により、先端が検知される。記録媒体17の先端を検知した書き出しセンサ15は、書き出しセンサ15の位置を記録媒体17の先端が通過するタイミングを示す信号として印刷制御部100へ通知する。(記録媒体17の搬送制御)
印刷制御部100は、上位装置から受信した印刷指示信号により、記録媒体17に印刷すべき画像を、Video処理部102でブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれの色に分解し、さらに露光器(LEDヘッド)3で静電潜像として書き込み可能な画像データへの変換を行う(画像データの生成処理)。
【0031】
記録媒体17は、書き出しセンサ15を通過した後、転写ベルト7上に搬送される。
印刷制御部100の指示によりVideo処理部102は、書き出しセンサ15が記録媒体17の先端を検知したタイミングと、書き出しセンサ15とそれぞれの色の転写ニップ部までの距離と、感光ドラム5上の露光部位から転写ニップ部までの距離と、記録媒体17の搬送速度とにより、印刷すべき画像が記録媒体17の所望の位置に転写されるタイミングで露光器(LEDヘッド)3を制御して静電潜像を感光ドラム5に書き込む。
【0032】
露光器(LEDヘッド)3は、トナー画像を得たい感光ドラム5表面の部位に対し、例えば600dpi(dots per inch)ピッチのスポット光を照射することにより、−600Vに帯電しておいた感光ドラム5の表面を約−50Vの電位とし、感光ドラム5の表面に静電潜像を形成する(露光制御)。
【0033】
露光器(LEDヘッド)3により静電潜像が形成された感光ドラム5の表面は、回転動作により現像器4の位置へ移動し、露光されて表面電位の絶対値が小さくなった感光ドラム5の表面部位に、現像器4で担持されたマイナス帯電した現像剤としてのトナーがクーロン力によって付着することで可視像であるトナー像が現像される(現像制御)。現像されたトナー像が付着する感光ドラム5の表面は、回転動作により転写ニップ部に運ばれる。
【0034】
印刷制御部100の指示による転写電圧制御部105の制御により、転写ローラ6には記録媒体17が転写ニップ部に存在する間は印刷のための基準の転写電圧としての転写電圧(例えば、+1500V〜+3000V)の、トナーと逆極性であるプラス電圧が印加される。
【0035】
感光ドラム5上のトナーは、転写ニップ部において転写ローラ6に印加されたプラスの電圧によりクーロン力を受け、記録媒体17上(または転写ベルト7上)に転写される(転写制御)。
【0036】
上述した動作は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色について順次行われ、各色のトナーが現像、転写された記録媒体17は定着器10へ搬送される。
定着器10に搬送された記録媒体17は、印刷制御部100の制御により、定着器10の熱および圧力で記録媒体17上に転写されたトナーを溶融し、記録媒体17に定着させる(定着制御)。
【0037】
定着器10を通過した記録媒体17は、搬出センサ16により後端が検知され、排出ローラ13により画像形成装置1外へ排出される。記録媒体17が排出されると印刷制御部100は、各ローラの回転動作、帯電ローラ2、現像ローラ、図示しない転写電源の動作を停止して印刷動作を終了する。
【0038】
上述した印刷動作において、記録媒体1枚あたりのトナー消費量が少ない印刷(例えば、全ドット数中の印刷に寄与するドット数の割合が5%)を所定の期間(例えば、1日)に大量枚数(例えば、2500枚)の印刷媒体17に対して行った場合、トナーが受けるダメージが大きくなり、劣化したトナーが発生する。また、部材のバラツキで劣化したトナーが生成されることもある。
【0039】
このような劣化したトナーは、放電による転写不良が発生しやすく、従来では大量枚数の印刷動作を行った場合、印刷ドット数と感光ドラム5の回転数からトナーの消費を算出し、環境センサを用いて最も劣化トナーが発生しやすい条件を想定して転写電圧を補正するようにしていた。
しかしながら、現像器4や感光ドラム5の品質のバラツキや機構の寸法バラツキなどによる劣化トナーの急激な発生については考慮されていなかった。
【0040】
そこで、本実施例では、劣化したトナーの状態を検出し、その検出した状態を表す数値に基づいて転写電圧の補正値を決定する。
【0041】
転写電圧の補正を行う方法としては、画像形成装置1の操作部に表示されるメニューから転写電圧の補正を行う方法、画像形成装置1の電源を投入してからの感光ドラム5の回転数が所定の値を超えた場合に転写電圧の補正を行う方法など、いくつかの方法が考えられるが、本実施例では、画像形成装置1の電源を投入してからの感光ドラム5の回転数が所定の値(例えば、500回)を超えた場合に、自動的に転写電圧の補正を行う方法を説明する。
【0042】
また、本実施例では、トナーの劣化状態を検出するため、転写条件を、通常とは逆の転写電界を発生させたときの転写率の値を計測する。このとき、転写されるトナーは通常とは逆極性のプラスに帯電したトナーである。このプラスに帯電したトナーが増加することで劣化トナーが増加していることが検出でき、劣化トナーが増加すると、通常の転写電圧では劣化トナーは放電を受け、転写不良を発生させる。そこで、本実施例では、プラスに帯電したプラス帯電トナーの転写率を導出し、トナーの劣化状態を検出することとする。
【0043】
ここで、プラス帯電トナーの転写率を導出するのは、トナー全体に対するプラス帯電トナーの割合を知るためである。これは、プラス帯電トナーの量を測定するだけでは、全体のトナーの量が増えれば、プラス帯電トナーの量も増え、全体のトナーの量が減れば、プラス帯電トナーの量も減り、トナー全体の劣化状態が正しく把握することができないためである。
【0044】
まず、トナー像濃度測定処理を図5の第1の実施例におけるトナー像濃度測定処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1を参照しながら説明する。
S1:上位装置からの印刷指示等による印刷動作を行っていない待機状態の印刷制御部100は、すべての印刷ドットにトナーが付着するように感光ドラム上に印刷濃度100%のベタ画像のトナー像を形成する。このように、感光ドラム上に印刷濃度100%のベタ画像のトナー像を形成するのは、プラス帯電トナーは全トナー中の数%しか存在しないため、転写率を精度良く測定するためである。
【0045】
S2:印刷制御部100および転写電圧制御部105は、感光ドラムを所定量回転させて感光ドラム上に形成されたトナー像を基準のプラス転写電圧で転写ベルトへ転写(印刷)する。本来、転写率は転写する前のトナー像を濃度や重量で測定することにより、精度よく測定することができる。しかし、転写する前のトナー像を濃度や重量で測定するためにセンサ等を感光ドラムの近傍に配置する必要があり、装置の製造コスト等が高くなってしまう。そこで、本実施例では、転写率が最も高い基準の転写電圧で転写ベルトに転写されたトナー像の濃度を測定することとした。これは、転写ベルトに転写する前のトナー像の濃度を測定することと近似した値を得ることができるためである。
【0046】
S3:印刷制御部100および転写電圧制御部105は、さらに感光ドラムを所定量回転させて感光ドラム上に形成されたトナー像のうちプラス帯電したトナーを、基準のプラス転写電圧とは逆極性のマイナスの転写電圧(例えば、−1000V)で転写ベルトへ転写(印刷)する。
S4:印刷制御部100は、基準のプラス転写電圧で転写された転写ベルトのトナー像の濃度を濃度センサ21で測定する。
【0047】
S5:印刷制御部100は、濃度センサ21で測定した濃度値を第1の検出値として図4に示す記憶部108の第1の検出値1081に記憶させ、保存する。したがって、第1の検出値1081には、基準のプラス転写電圧で転写された転写ベルトのトナー像の濃度値が保存される。
S6:印刷制御部100は、マイナスの転写電圧で転写された転写ベルトのトナー像の濃度を濃度センサ21で測定する。
【0048】
S7:印刷制御部100は、濃度センサ21で測定した濃度値を第2の検出値として図4に示す記憶部108の第2の検出値1082に記憶させ、保存する。したがって、第2の検出値1082には、マイナス転写電圧で転写された転写ベルトのトナー像の濃度値が保存される。
このように、S1〜S7の処理を行うことにより、二つの異なる転写電圧の条件で転写ベルトに転写(印刷)されたトナー像の濃度値を得る。そして、処理を図6のS8へ移行し、取得した二つの濃度値からプラス帯電トナーの転写率を導出する。
【0049】
次に、転写率算出処理を図6の第1の実施例における転写率算出処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1を参照しながら説明する。
S8:印刷制御部100の指示により転写率演算部107は、図4に示す第1の検出値1081に記憶された濃度値と、第2の検出値1082に記憶された濃度値とからプラス帯電トナーの転写率(比)Teを導出する。この転写率Teは、下記の計算式により求める。
【0050】
転写率Te=(1−逆極性の転写電圧で転写された濃度値(第2の検出値1082に記憶された濃度値))/(基準転写電圧で転写された濃度値(第1の検出値1081に記憶された濃度値))
転写率演算部107は、上記計算式により転写率Teを導出する。そして、処理を図7のS9へ移行する。
【0051】
次に、補正電圧決定処理を図7の第1の実施例における補正電圧決定処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1を参照しながら説明する。
印刷制御部100の指示により転写電圧補正処理部106は、導出されたプラス帯電トナーの転写率Teと、温湿度センサ22および転写ベルト温度センサ23の測定値とから転写電圧の補正値を決定する。
【0052】
S9:まず、転写電圧補正処理部106は、温湿度センサ22で検出された温度および湿度の値を読み出す。
S10:転写電圧補正処理部106は、転写ベルト温度センサ23で検出された転写ベルトの温度の値を読み出す。
【0053】
S11:転写電圧補正処理部106は、図6のS8で算出されたプラス帯電トナーの転写率Teと、読み出した温湿度センサ22および転写ベルト温度センサ23の測定値とから転写電圧の補正値を決定する。この決定を行うために、表1に示す転写電圧補正値を予め転写電圧補正テーブルの記憶部1061(図3)に記憶している。なお、転写不良が起き易い劣化トナーは、高温多湿かつ装置内の温度が上昇することにより、トナーの付着力が増加すると生成される。
【0054】
【表1】

【0055】
表1は、プラス帯電トナーの転写率の値Teと、転写ベルト温度センサ23の測定値としての温度Tと、温湿度センサ22の測定値としての温度Tmおよび湿度Heとの関係から転写電圧補正値としての転写補正電圧(V)が決められている。なお、この転写電圧補正値は、実験で得られた結果を基に定められた値である。
転写電圧補正処理部106は、得られた転写電圧補正値と、基準の転写電圧とを加算して転写電圧を補正し、印刷制御部100は、補正後の転写電圧で転写不良が発生しない印刷動作を行う。
【0056】
このように、転写電圧補正処理部106は、印刷制御部100の指示により、像担持体としての感光ドラムと転写器としての転写ローラとの間に、基準の転写電圧を発生させて転写材としての転写ベルトにトナー像を転写させ、濃度センサ21により検出した該トナー像の濃度と、感光ドラムと転写ローラとの間に、基準の転写電圧と逆極性の転写電圧を発生させて転写ベルトにトナー像を転写させ、濃度センサ21により検出した該トナー像の濃度との比に基づいて導出した補正値で転写電圧を補正する。
【0057】
なお、上述したS1〜S11の処理は、ひとつの色のトナーについて行うものとして説明したが、他の色のトナーについても同様の処理を行い、すべての色のトナーについて行うものとする。
次に、従来の画像形成装置(プリンタ)による印刷結果と、本実施例の転写電圧の補正を行った画像形成装置による印刷結果とを比較した実験結果を説明する。
【0058】
プラスに帯電した劣化トナーは、温度28度、湿度80%の環境下において、連続印刷を行った場合に増加する。ここで、連続印刷とは、1日に大量枚数(例えば、2500枚)の印刷を行い、記録媒体1枚あたりのトナーの消費量が少ない(例えば、全ドット数中の印刷に寄与するドット数の割合が5%)印刷である。プラス帯電トナーは、図8に示すように感光ドラムの回転数(ドラムカウント)が増加するほど増加する。なお、プラス帯電トナーは感光ドラムや現像器の部材の状態で発生しやすいこともある。
【0059】
表2は、従来の画像形成装置(プリンタ)による印刷結果と、本実施例の転写電圧の補正を行った画像形成装置による印刷結果とを比較した実験結果である。なお、表2中の「○」は転写良好、「△」は多少転写不良が見られる、「×」は転写不良を表している。
【0060】
【表2】

【0061】
従来の画像形成装置(プリンタ)は、感光ドラムの回転数であるドラムカウントが増加すると転写電圧を下げる転写電圧補正制御を行っているが、2000ドラムカウントで転写不良を発生させている。これは、トナー劣化を予測して転写電圧を下げる転写電圧補正制御であるため、感光ドラムや現像器の状態によって劣化トナーが急激に発生した場合に転写電圧の補正が不十分となり、転写不良が発生している。
【0062】
しかし、本実施例の転写電圧補正制御、すなわちプラス帯電トナーの転写率と、温湿度センサ22および転写ベルト温度センサ23の測定値とから転写電圧の補正値を決定する転写電圧補正制御を適用した画像形成装置ではドラムカウントが1000までは転写が良好であり、ドラムカウントが3000であっても多少の転写不良が見られる程度であり、転写不良を発生することはなかった。
【0063】
ドラムカウントが2000の時点は、図8で示すようにプラス帯電トナーの割合は9%であり、劣化トナーが生成される量が多くなっている。本実施例では、例えば図9に示すように、基準の転写電圧を3000Vとするとドラムカウントが2000の時点では転写電圧の補正値が−400Vとなっており、従来の補正値よりも200V低い電圧で転写を行うため転写不良は発生しない。
【0064】
このように、本実施例では、劣化トナーの発生状態をプラス帯電トナーの転写率として定量的に検出し、そのプラス帯電トナーの転写率から転写電圧を決定することにより、定量的に検出した劣化トナーの発生状態に追従して転写不良の発生を抑制することができる。
【0065】
また、転写不良が発生しやすい条件が、画像形成装置の設置環境や画像形成装置内部の温度上昇等で変わるため、温湿度センサおよび転写ベルトの温度センサを設け、その温湿度センサおよび転写ベルトの温度センサで検出した温度や湿度の値に基づいて転写電圧を補正するようにしたことにより、追従性の良い転写電圧補正を行うことができるようになり、転写不良を抑制することができる。
【0066】
以上説明したように、第1の実施例では、プラス帯電トナーの転写率から転写電圧を決定することにより、定量的に検出した劣化トナーの発生状態に追従して転写不良の発生を抑制することができるという効果が得られる。
また、プラス帯電トナーの転写率に加え、温湿度センサおよび転写ベルトの温度に基づいて転写電圧を決定することにより、さらに追従性の良い転写電圧補正を行うことができるようになり、転写不良の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0067】
第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成に対し、第1の実施例の構成に備えていた転写ベルトの温度センサを取り除き、記憶部に第3の検出値を記憶する領域を備えたものとしている。
図10は第2の実施例における画像形成装置の制御構成を示すブロック図、図11は第2の実施例における記憶部の構成を示すブロック図、図12は第2の実施例における転写電圧補正処理部の構成を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図10において、第1の実施例の構成に備えていた転写ベルトの温度センサを取り除いた構成としている。
なお、転写電圧補正処理部106は、濃度センサ21により劣化したトナーの状態を検出し、その劣化したトナーの状態、温湿度センサ22で検出した装置内の温度や湿度に合わせて転写電圧の補正値を決定する。その他の構成は図1に示す第1の実施例の構成と同様である。
【0069】
図11において、記憶部108は、第1の検出値1081および第2の検出値1082に加え、基準の転写電圧より低い転写電圧で図2に示す転写ベルトに転写されたトナー像の濃度の検出値を記憶する領域として第3の検出値1083を備えている。転写率演算部107は、この第1の検出値1081、第2の検出値1082および第3の検出値1083に記憶された検出値から転写率を導出する。
【0070】
トナーの劣化が進むと、正規の極性とは逆の極性に帯電した逆帯電トナー(本実施例ではプラス帯電トナー)が含まれる割合が増えてくるため、トナーの平均帯電量が下がってくる。このことにより、転写電圧と帯電したトナーとの電位差が次第に小さくなるため、感光ドラム5の表面に付着したトナーが転写ベルト7に移りにくくなる。これは、転写電界により転写ベルト7側に引き付けられる力より、トナーと感光ドラム5とが付着する力の方が大きくなったことに相当する。すなわち、一定の転写電圧のもとでは、トナーの劣化が進むにつれて転写ベルト7に転写されるトナー量が減り、トナー像の濃度は低くなる。
【0071】
ここで、基準の転写電圧より低い転写電圧を用いることにより、転写電圧と帯電したトナーの電位差はさらに小さくなり、トナー像の濃度低下はさらに顕著になるため、トナーの劣化度合い、または、トナーと感光ドラムとの付着力の度合いを精度よく検出することができる。
【0072】
図12において、転写電圧補正処理部106は、転写電圧補正テーブルの記憶部1061に加え、劣化トナー状態値Q1算出テーブルの記憶部1062および劣化トナー状態値Q2算出テーブルの記憶部1063を備えている。
この劣化トナー状態値Q1算出テーブルの記憶部1062には、基準の転写電圧と逆極性の転写電圧で転写したときに得られた転写率から劣化トナーの状態値Q1を導出するために、表3に示す劣化トナー状態値Q1算出テーブルが記憶される。
【0073】
【表3】

また、劣化トナー状態値Q2算出テーブルの記憶部1063には、基準の転写電圧より低い転写電圧で転写したときに得られた転写率から劣化トナーの状態値Q2を導出するために、表4に示す劣化トナー状態値Q2算出テーブルが記憶される。
【0074】
【表4】

【0075】
さらに、転写電圧補正テーブルの記憶部1061には、劣化トナーの状態値Q1および劣化トナーの状態値Q2から導出した劣化トナーの状態値Q3と、図10に示す温湿度センサ22の測定値とから転写電圧の補正値を決定する表5に示す転写電圧補正テーブルが記憶される。
【0076】
【表5】

【0077】
転写電圧補正処理部106は、基準の転写電圧と逆極性の転写電圧で転写したときに得られた転写率から劣化トナーの状態値Q1を導出し、また基準の転写電圧より低い転写電圧で転写したときに得られた転写率から劣化トナーの状態値Q2を導出し、その劣化トナーの状態値Q1および劣化トナーの状態値Q2から導出した劣化トナーの状態値Q3と、図10に示す温湿度センサ22の測定値としての温度Tmおよび湿度Heとから転写電圧の補正値を決定する。
【0078】
上述した構成の作用について説明する。なお、画像形成装置の印刷動作は第1の実施例と同様なのでその説明を省略する。
転写電圧の補正を行う方法としては、画像形成装置1の操作部に表示されるメニューから転写電圧の補正を行う方法、画像形成装置1の電源を投入してからの感光ドラム5の回転数が所定の値を超えた場合に転写電圧の補正を行う方法など、いくつかの方法が考えられるが、本実施例では、画像形成装置1の電源を投入してからの感光ドラム5の回転数が所定の値(例えば、500回)を超えた場合に、自動的に転写電圧の補正を行う方法を説明する。
【0079】
まず、トナー像濃度測定処理を図13の第2の実施例におけるトナー像濃度測定処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図10を参照しながら説明する。
S101〜S103:図5におけるS1〜S3と同様の処理なので説明を省略する。
【0080】
S104:印刷制御部100および転写電圧制御部105は、さらに感光ドラムを所定量回転させて感光ドラム上に形成されたトナー像のうちプラス帯電したトナーを基準の転写電圧より低い転写電圧(例えば、1000V)で転写ベルトへ転写(印刷)する。
S105〜S108:図5におけるS4〜S7と同様の処理なので説明を省略する。
【0081】
S109:印刷制御部100は、基準の転写電圧より低い転写電圧で転写された転写ベルト上のトナー像の濃度を濃度センサ21で測定する。
S110:印刷制御部100は、濃度センサ21で測定した濃度値を第3の検出値として図11に示す記憶部108の第3の検出値1083に記憶させ、保存する。したがって、第3の検出値1083には、基準の転写電圧より低い転写電圧で転写された転写ベルトのトナー像の濃度値が保存される。
【0082】
ここで、通常のトナーは、トナーの平均帯電量が下がっていることにより、基準の転写電圧より低い転写電圧で転写すると、転写されたトナーの濃度値は高い値となる。しかし、劣化トナーが増加するとトナーの平均帯電量が下がっているにもかかわらず基準の転写電圧より低い転写電圧で転写すると、転写されたトナーの濃度値は低い値となる。これは、劣化したトナーと感光ドラムの付着力が増加するためであると考えられる。
【0083】
このように、S101〜S110の処理を行うことにより、三つの異なる転写電圧の条件で転写ベルトに転写(印刷)されたトナー像の濃度値を得る。そして、処理を図14のS111へ移行し、取得した三つの濃度値からプラス帯電トナーの転写率を導出する。
次に、転写率算出処理を図14の第2の実施例における転写率算出処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図10を参照しながら説明する。
【0084】
S111:印刷制御部100の指示により転写率演算部107は、図11に示す第1の検出値1081に記憶された濃度値と、第2の検出値1082に記憶された濃度値とからプラス帯電トナーの転写率(第1の比)Te1を導出する。この転写率Te1は、下記の計算式により求める。
【0085】
転写率Te1=(1−逆極性の転写電圧で転写された濃度値(第2の検出値1082に記憶された濃度値))/(基準転写電圧で転写された濃度値(第1の検出値1081に記憶された濃度値))
S112:印刷制御部100の指示により転写率演算部107は、図11に示す第1の検出値1081に記憶された濃度値と、第3の検出値1083に記憶された濃度値とから基準の転写電圧より低い転写電圧での転写率(第2の比)Te2を導出する。この転写率Te2は、下記の計算式により求める。
【0086】
転写率Te2=(1−基準の転写電圧より低い転写電圧で転写された濃度値(第3の検出値1083に記憶された濃度値))/(基準転写電圧で転写された濃度値(第1の検出値1081に記憶された濃度値))
転写率演算部107は、上記計算式により転写率Te1および転写率Te2を導出する。そして、処理を図15のS113へ移行する。
【0087】
次に、補正電圧決定処理を図15の第2の実施例における補正電圧決定処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図10を参照しながら説明する。
印刷制御部100の指示により転写電圧補正処理部106は、プラス帯電トナーの転写率Te1および基準の転写電圧より低い転写電圧での転写率Te2と、温湿度センサ22の測定値とから転写電圧の補正値を決定する。
【0088】
S113:まず、転写電圧補正処理部106は、プラス帯電トナーの転写率Te1から劣化トナーの状態値Q1を導出する。この劣化トナーの状態値Q1は、劣化トナー状態値Q1算出テーブルの記憶部1062に、表3に示す劣化トナー状態値Q1算出テーブルとして転写率Te1に対応付けられて記憶されており、転写電圧補正処理部106は、転写率Te1に基づいて劣化トナー状態値Q1算出テーブルを検索して劣化トナーの状態値Q1を導出する。
【0089】
S114:転写電圧補正処理部106は、基準の転写電圧より低い転写電圧での転写率Te2から劣化トナーの状態値Q2を導出する。この劣化トナーの状態値Q2は、劣化トナー状態値Q2算出テーブルの記憶部1063に、表4に示す劣化トナー状態値Q2算出テーブルとして転写率Te2に対応付けられて記憶されており、転写電圧補正処理部106は、転写率Te2に基づいて劣化トナー状態値Q2算出テーブルを検索して劣化トナーの状態値Q2を導出する。
【0090】
S115:転写電圧補正処理部106は、劣化トナーの状態値Q1および劣化トナーの状態値Q2から劣化トナーの状態値Q3を導出する。劣化トナーの状態値Q3は、下記の計算式に基づいて導出する。
劣化トナーの状態値Q3=劣化トナーの状態値Q1+劣化トナーの状態値Q2
S116:転写電圧補正処理部106は、温湿度センサ22で検出された温度および湿度の値を読み出す。
【0091】
S117:転写電圧補正処理部106は、導出した劣化トナーの状態値Q3と、温湿度センサ22で検出された温度Tおよび湿度Heとから転写電圧の補正値を決定する。
この決定を行うために、上述した表5に示す転写電圧補正値を予め転写電圧補正テーブルの記憶部1061(図12)に記憶している。なお、転写電圧補正テーブルの転写電圧補正値は、実験で得られた結果を基に定められた値である。
【0092】
転写電圧補正処理部106は、得られた転写電圧補正値と、基準の転写電圧を加算して転写電圧を補正し、印刷制御部100は、補正後の転写電圧で転写不良が発生しない印刷動作を行う。
このように、転写電圧補正処理部106は、転写率(第1の比)Te1および転写率(第2の比)Te2に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正する。
【0093】
なお、上述したS101〜S117の処理は、ひとつの色のトナーについて行うものとして説明したが、他の色のトナーについても同様の処理を行い、すべての色のトナーについて行うものとする。
次に、従来の画像形成装置(プリンタ)による印刷結果と、本実施例の転写電圧の補正を行った画像形成装置による印刷結果とを比較した実験結果を説明する。
【0094】
プラスに帯電した劣化トナーは、温度28度、湿度80%の環境下において、連続印刷を行った場合に増加する。プラス帯電トナーの転写率Te1は、図16に示すように感光ドラムの回転数(ドラムカウント)が増加するほど増加する。また、基準の転写電圧より低い転写電圧のときの劣化トナーの転写率Te2は、図17に示すように感光ドラムの回転数(ドラムカウント)が増加するほど減少する。
【0095】
表6は、従来例の画像形成装置(プリンタ)による印刷結果と、本実施例の転写電圧の補正を行った画像形成装置による印刷結果とを比較した実験結果である。なお、表6中の「○」は転写良好、「△」は多少転写不良が見られる、「×」は転写不良を表している。
【0096】
【表6】

【0097】
従来の画像形成装置(プリンタ)は、感光ドラムの回転数であるドラムカウントが増加すると転写電圧を下げる転写電圧補正制御を行っているが、2000ドラムカウントで転写不良を発生させている。これは、トナー劣化を予測して転写電圧を下げる転写電圧補正制御であるため、感光ドラムや現像器の状態によって劣化トナーが急激に発生した場合に転写電圧の補正が不十分となり、転写不良が発生している。
【0098】
しかし、本実施例の転写電圧補正制御、すなわちプラス帯電トナーの転写率と、基準の転写電圧より低い転写電圧での劣化トナーの転写率と、温湿度センサ22の測定値とから転写電圧の補正値を決定する転写電圧補正制御を適用した画像形成装置ではドラムカウントが1000までは転写が良好であり、ドラムカウントが3000であっても多少の転写不良が見られる程度であり、転写不良を発生することはなかった。
【0099】
ドラムカウントが2000の時点は、図16に示すように転写率Te1は6%であり、劣化トナーの状態値Q1は、表3より「2」である。また、ドラムカウントが2000の時点は、図17に示すように転写率Te2は15%であり、劣化トナーの状態値Q2は、表4より「3」である。
【0100】
本実施例では、例えば図18に示すように、基準の転写電圧を3000Vとするとドラムカウントが2000の時点では転写電圧の補正値が−300Vとなっており、従来の補正値よりも100V低い電圧で転写を行うため転写不良は発生しない。
【0101】
第1の実施例では、プラス帯電トナーの転写率(プラス帯電トナーの割合)から劣化トナーの状態を検出し、転写電圧の補正を行うようにしていたが、劣化トナーの状態の検出はプラス帯電トナーの転写率だけでは不十分であった。
そこで、本実施例では、プラス帯電トナーの転写率に加え、基準の転写電圧より低い転写電圧の転写率によるトナーと感光ドラムとの付着力を考慮することで、劣化トナーの状態を精度良く検出することができる。
【0102】
このように、プラス帯電トナーの転写率と、基準の転写電圧より低い転写電圧の転写率によるトナーと感光ドラムとの付着力とから転写電圧を補正することにより、転写不良の発生を抑制することができる。
以上説明したように、第2の実施例では、プラス帯電トナーの転写率と、基準の転写電圧より低い転写電圧の転写率とから転写電圧を決定することにより、精度高く、定量的に検出した劣化トナーの発生状態に追従して転写不良の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0103】
また、プラス帯電トナーの転写率と、基準の転写電圧より低い転写電圧の転写率とに加え、温湿度センサおよび転写ベルトの温度に基づいて転写電圧を決定することにより、さらに追従性の良い転写電圧補正を行うことができるようになり、転写不良の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0104】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置を直接転写方式のプリンタとして説明したが、それに限られることなく、中間転写ベルト等を用いた中間転写方式のプリンタ、電子写真方式のファクシミリ装置、複写機、複合機等としても良い。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置
2 帯電ローラ
3 露光器(LEDヘッド)
4 現像器
5 感光ドラム
6 転写ローラ
7 転写ベルト
8 ドライブローラ
9 アイドルローラ
10 定着器
11 第1搬送ローラ対
12 第2搬送ローラ対
13 排出ローラ対
14 ホッピングローラ
21 濃度センサ
22 温湿度センサ
23 転写ベルト温度センサ
100 印刷制御部
101 画像処理部
102 Video処理部
103 帯電電圧制御部
104 現像電圧制御部
105 転写電圧制御部
106 転写電圧補正処理部
107 転写率演算部
108 記憶部
109 ドラムカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する像担持体と、前記像担持体に担持された前記現像剤を転写する転写器と、前記像担持体と前記転写器との間に転写電圧を発生させる転写電圧制御部とを有する画像形成装置において、
前記転写器により転写材に転写された前記現像剤像の濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された濃度に基づいて前記転写電圧を補正する補正部とを備え、
前記補正部は、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度と、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧と逆極性の転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度との比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
装置内の温度および湿度を検出する温湿度検出部を備え、
前記補正部は、前記温湿度検出部で検出した温度および湿度ならびに前記比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記転写材の温度を検出する転写材温度検出部を備え、
前記補正部は、前記転写材温度検出部で検出した温度、前記温湿度検出部で検出した温度および湿度ならびに前記比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2の画像形成装置において、
前記補正部は、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度と、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧と逆極性の転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度との比を第1の比とし、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度と、
前記像担持体と前記転写器との間に、前記転写電圧より低い転写電圧を発生させて前記転写材に現像剤像を転写させ、前記濃度検出部により検出した該現像剤像の濃度との比を第2の比とし、
前記第1の比および前記第2の比に基づいて導出した補正値で前記転写電圧を補正することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−150137(P2012−150137A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6483(P2011−6483)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】