説明

画像形成装置

【課題】新たな部材の追加をすることなく、薄紙等、分離不良の発生しやすい記録材における分離不良を転写工程後早期に検出することができ、ユーザビリティを向上させることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】電圧印加部材31に所定の電圧を印加した時に、電圧印加部材31から像担持体20に流れる検知手段51にて検知される第一の電流量と、転写手段24の当接位置で記録材と対向した像担持体20の任意の部位が電圧印加部材31の当接位置にある時に、電圧印加部材31から像担持体20に流れる検知手段51にて検知される第二の電流量との差分が所定の電流量よりも大きくなった場合に画像形成動作を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真記録方式を利用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる画像形成装置では、レジストローラから送り出された記録材は転写部においてトナー像を転写する工程を受けた後、定着装置によって熱定着され、排出される。
【0003】
上記の転写工程において記録材は、例えば中間転写体のような像担持体と転写部材によって挟持搬送される。転写部材には、像担持体上のトナー像を記録材に転写するための高電圧が印加される。そのため、像担持体と転写部材に挟持されている記録材は帯電した状態となり像担持体との付着力が強い状態となっている。記録材が過度の帯電状態にある場合などには、像担持体との付着力により、所定の位置で像担持体から分離することができずに像担持体に貼り付いてしまい、結果として紙詰まり(ジャム)を引き起こす場合がある。特に、像担持体の表面に沿いやすい薄手の記録材や、帯電しやすい記録材、像担持体に沿ってカールした記録材等に印字した場合には、記録材が像担持体に貼り付いてしまうことによる分離不良が発生する場合があった。
【0004】
この結果、像担持体に貼り付いたまま、装置内深くに搬送されてしまった記録材が、トナークリーニング装置内のトナー回収容器等へ侵入してしまうことや、ローラ形状の部材へ巻き付いてしまうことが発生する場合があった。それにより、トナー飛散による汚れが生じたり、ユーザーによる記録材の除去が困難になったりしてしまう場合があった。
【0005】
この課題の解決のために、別途設けた光学センサにより、像担持体の表面に貼り付いた記録材の有無を直接的に検出する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−59962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分離不良により像担持体に貼り付いた記録材を検出するためのセンサを別途設置した場合には、コストアップするだけでなく、装置の大型化などを招いてしまう。
【0008】
特に近年は、装置の小型化のために転写部の直後に、像担持体上の転写残トナーのクリーニング手段としてトナー帯電部材を設置した画像形成装置がある。トナー帯電部材により転写残トナーを正規の極性とは逆極性に帯電し、着脱可能なプロセスカートリッジ内に回収することで像担持体上のクリーニングを行う。このような画像形成装置においては、装置の小型化のために転写部材とクリーニング手段が近接して配置される。従って、転写部材とクリーニング手段の間(クリーニング手段の上流側)に分離不良のセンサを設置することがスペースの観点から難しい。また、設置した場合でも、転写部材やクリーニング手段に接近しているために、転写部材やクリーニング手段からのトナー飛散によりセンサの汚れなどを引き起こし易く、検出精度の低下を招きかねない。
【0009】
一方で、クリーニング手段の下流側に分離不良のセンサを設置した場合、分離不良を発生した記録材がクリーニング手段自体に巻き付くことによるジャムを検出することができない。この結果、ユーザーが処理不能なジャムとなる恐れがある。
【0010】
本発明の目的は、新たな部材の追加をすることなく、薄紙等、分離不良の発生しやすい記録材における分離不良を転写工程後早期に検出することができ、ユーザビリティを向上させることのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像を記録材に転写するために電圧が印加される転写手段と、
前記転写手段に対し、前記像担持体の移動方向の下流側に位置し、前記像担持体に電圧を印加する電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源と、
前記電圧印加部材に印加される電流を検知する検知手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記電圧印加部材に所定の電圧を印加した時に、前記電圧印加部材から前記像担持体に流れる前記検知手段にて検知される第一の電流量と、
前記転写手段の当接位置で記録材と対向した前記像担持体の任意の部位が前記電圧印加部材の当接位置にある時に、前記電圧印加部材から前記像担持体に流れる前記検知手段にて検知される第二の電流量との差分が所定の電流量よりも大きくなった場合に画像形成動作を停止する、
ことを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
第2の本発明は、
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像を記録材に転写するために電圧が印加される転写手段と、
前記転写手段に対し、前記像担持体の移動方向の下流側に位置し、前記像担持体に電圧を印加する電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源と、
前記電圧印加部材に印加される電圧を検知する検知手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記電圧印加部材から前記像担持体に所定の電流を印加した時に、前記検知手段にて検知される第一の電圧と、
前記転写手段の当接位置で記録材と対向した前記像担持体の任意の部位が前記電圧印加部材の当接位置にある時に、前記検知手段にて検知される第二の電圧との差分の絶対値が、所定の電圧よりも大きくなった場合に画像形成動作を停止する
ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、像担持体に電圧を印加する電圧印加部材に印加される電流量(又は電圧値)を測定し、分離不良が発生した場合に生じる電流量(又は電圧値)の変動をモニタすることにより分離不良を検出する。これにより、新たにセンサを配置することなく像担持体へ記録材が貼り付くことによる記録材の分離不良を検出し、画像形成装置を停止することが可能となる。この結果、ユーザーがジャム処理を容易に行うことを可能にする画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一実施例の2次転写部の模式図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の一実施例の制御のタイミングチャートである。
【図4】本発明に係る画像形成装置の一実施例において、分離不良が発生した場合の2次転写部の模式図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の一実施例における分離不良検出位置を説明する図である。
【図6】本発明の一実施例の制御を説明する図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の他の実施例における分離不良検出電圧の制御を説明する模式図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の他の実施例における分離不良検出電圧の制御を説明する模式図である。
【図9】本発明の他の実施例の制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
実施例1
(1)画像形成装置の構成
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成断面を示す。本実施例の画像形成装置10は、電子写真方式を利用したインライン方式、中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0017】
本実施例にて、画像形成装置10は、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部1a、1b、1c、1dを有する。画像形成部1a〜1dは、着脱可能なプロセスカートリッジである。画像形成部1a、1b、1c、1dは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するためのものである。画像形成部1a〜1dは、一定の間隔をおいて1列に配置されている。
【0018】
尚、本実施例では、画像形成部1a〜1dの構成は、使用するトナーの色が異なることを除いて同じである。従って、以下では、特に区別を要しない場合は、添え字a、b、c、dを省略して説明する。
【0019】
画像形成部1には、第1の像担持体としての、ドラム状の電子写真感光体(以下、「感光体ドラム」という。)2が設置されている。感光体ドラム2の周囲には、感光体ドラム帯電手段としての帯電ローラ3、現像手段としての現像装置4、1次転写手段としての1次転写ローラ5、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6が設置されている。又、帯電ローラ3と現像装置4との間の図中上方には、露光手段としてのレーザースキャナ装置7が設置されている。
【0020】
また、感光体ドラム2a〜2dの全てに対向するように、第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体(以下、「中間転写ベルト」という。)20が配置されている。中間転写ベルト20は、複数の支持部材としての駆動ローラ21、テンションローラ22及び2次転写対向ローラ23に掛け回されている。中間転写ベルト20の内周面側において、各感光体ドラム2a〜2dに対応して1次転写ローラ5a〜5dが配置されている。また、中間転写ベルト20の外周面側において2次転写対向ローラ23に対向する位置には、2次転写手段としての2次転写ローラ24が配置されている。
【0021】
感光体ドラム2は、本実施例では、負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、図示矢印R1方向に回転駆動される。帯電ローラ3には、帯電電圧が印加され、感光体ドラム2の表面を所定の電位に均一に帯電させる。レーザースキャナ装置7は、感光体ドラム2の表面を露光することにより、帯電ローラ3で帯電された感光体ドラム2の表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0022】
現像装置4では、現像電圧が印加された現像ローラを回転駆動させることで、感光体ドラム2上に形成された静電潜像を、トナー像として現像する。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが収納されている。フルカラー画像形成モードでは、4個の現像装置4の全てで現像ローラが感光体ドラム2に当接し、モノカラー(単色)画像形成モードでは、画像を形成する画像形成部以外の現像装置4の現像ローラは、感光体ドラム2から離間するように構成されている。
【0023】
本実施例では、トナー像が転写される第2の像担持体である中間転写ベルト20として、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂を用いた。中間転写ベルト20の表面抵抗率は5.0×1011Ω/□であり、体積抵抗率は8.0×1011Ωcmである。
【0024】
その他、中間転写ベルト20としては、PVdF(フッ化ビニリデン樹脂)、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、などの樹脂を無端ベルト状に構成したものを用いることができる。或いは、中間転写ベルト20としては、例えばEPDMなどのゴム基層の上に、例えばウレタンゴムにPTFEなどフッ素樹脂を分散したものを被覆して無端ベルト状に構成したものを用いることができる。中間転写ベルト20は、駆動ローラ21が図示矢印R2方向に回転駆動されることによって、図示矢印R3方向に、感光体ドラム2の周速度と略等速にて周回移動する。
【0025】
1次転写ローラ5は、例えばスポンジゴムなどの弾性部材で構成される。本実施例では、1次転写ローラ5として、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、NBR−ヒドリンゴムを肉厚4mmで被覆したものを用いた。1次転写ローラ5の電気抵抗値は、1.0×106Ωである。1次転写ローラ5の電気抵抗値は、1次転写ローラ5の軸の両端を500gで直径30mmのアルミニウム製のシリンダに押圧し、30rpmで回転させた状態で1kVを印加し測定した。測定時の雰囲気環境は温度23℃、湿度50%である。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を介して感光体ドラム2との当接位置に1次転写ニップ部N(Na〜Nd)(一次転写部)を形成し、中間転写ベルト20の移動に従動して回転する。
【0026】
1次転写ローラ5には、1次転写電源40から1次転写電圧が印加され、感光体ドラム2上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト20上に転写(1次転写)される。
【0027】
2次転写手段である2次転写ローラ24は、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材で構成される。本実施例では2次転写ローラ24として、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、NBR−ヒドリンゴムを肉厚6mmで被覆したものを用いた。2次転写ローラ24の電気抵抗値は、3.0×107Ωである。2次転写ローラ24の電気抵抗値の測定条件は、1次転写ローラ5における条件と同じである。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20との当接位置に2次転写ニップ部M(2次転写部)を形成し、中間転写ベルト20、もしくは、中間転写ベルト20及び記録材Pの移動に従動して回転する。2次転写ローラ24には、2次転写電源44から2次転写電圧が印加され、中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、記録材P上に転写(2次転写)される。
【0028】
本実施例では、2次転写手段である2次転写ローラ24の対向電極(対向部材)である2次転写対向ローラ23として、肉厚500μmのEPDMゴムでアルミニウムローラを被覆したものを用いた。2次転写対向ローラ23の直径は24mmであり、電気抵抗値は1×104Ωである。2次転写対向ローラ23の電気抵抗値は2次転写対向ローラ23の軸の両端を500gで直径30mmのアルミニウム製のシリンダに押圧し、30rpmで回転させた状態で50Vを印加し測定した。測定時の雰囲気環境は温度23℃、湿度50%である。分離不良を抑制する観点からは2次転写対向ローラの直径は小さいほど分離不良は発生しにくい。本実施例では、後述のベルトクリーニング装置30を設置する上での設計の容易性と分離不良の抑制の観点から2次転写対向ローラの直径を上述の値としている。
【0029】
中間転写ベルト20の外側で、2次転写対向ローラ23の近傍には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置30が設置されている。
【0030】
ベルトクリーニング装置30は、中間転写ベルト20への電圧印加部材であってトナー帯電部材としてのブラシ形状の部材である導電性ブラシ31とローラ形状の部材であるトナー帯電ローラ32から構成される。導電性ブラシ31は、2次転写ニップ部Mよりも中間転写ベルト20の表面の移動方向において下流側に位置する。
【0031】
本実施例では、導電性ブラシ31は、材料はナイロンであり、繊度は7デシテックス、パイル長さは5mm、ブラシ幅(d)は5mm、電気抵抗値は1.0×106Ωに設定されている。導電性ブラシ31の電気抵抗値はYOKOGAWA製2407Digital Insulation Testerで250Vを印加したときの測定値である。抵抗値の測定はブラシのパイル先端1mmをアルミ平面板金に侵入させた状態で行った。導電性ブラシ31には、回収保持用電源41が接続され、所定の直流電圧が印加される。
【0032】
トナー帯電ローラ32は、導電性ブラシ31よりも中間転写ベルト20の表面の移動方向において下流側に位置する。
【0033】
本実施例では、トナー帯電ローラ32としては、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、EPDMゴムにカーボンを分散させたソリッド弾性体を肉厚5mmで被覆したものを用いた。トナー帯電ローラ32の電気抵抗値は、5.0×107Ωである。トナー帯電ローラ32の電気抵抗値の測定条件は、1次転写ローラ5における条件と同じである。トナー帯電ローラ32には、トナー帯電用電源42が接続され、所定の直流電圧が印加される。
【0034】
本実施例では、導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32は共に、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に対向して設置されている。導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32は中間転写ベルト20に接触しており、2次転写対向ローラ23に向けて所定の圧力で押圧されている。導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32の対向部材として2次転写対向ローラ23を利用することにより、コストアップや装置の大型化を避けることができる。
【0035】
2次転写ニップ部Mよりも記録材Pの搬送方向において上流側には、記録材供給手段を構成するレジストローラ13が設置されている。レジストローラ13の近傍には、記録材Pがレジストローラ13を通過したことを検知するレジセンサ14が設置されている。
【0036】
また、2次転写ニップ部Mよりも記録材Pの搬送方向において下流側には、定着手段としての定着装置12が設置されている。定着装置12は、熱源を備えた定着ローラ12Aと、定着ローラ12Aに圧接する加圧ローラ12Bとを有する。定着装置12のさらに下流側には記録材Pの排紙を検知するための排紙センサ15が設置されている。
【0037】
(2)画像形成動作
次に、本実施例の画像形成装置10による画像形成動作について、フルカラー画像形成モードを例として図1を用いて説明する。
【0038】
先ず、感光体ドラム2a〜2dは、それぞれ帯電ローラ3a〜3dによって帯電される。各レーザースキャナ装置7a〜7dは、各感光体ドラム2a〜2d上をそれぞれ走査露光して、各感光体ドラム2a〜2d上に静電潜像を形成する。感光体ドラム2上に形成された静電潜像は、各色のトナーが感光体ドラム2の表面の電位に応じて静電吸着させられることで、トナー像として現像される。このとき、現像装置4の現像ローラには、感光体ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の現像電圧が印加される。
【0039】
感光体ドラム2上のトナー像は、1次転写部(1次転写ニップ部N)においてトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の1次転写電圧が印加された1次転写ローラ5により、回転している中間転写ベルト20上に重畳して1次転写される。1次転写工程後に感光体ドラム2上に残留しているトナーは、クリーニングブレード61aを備えたドラムクリーニング装置6によってクリーニング容器62aに回収される。一方で、中間転写ベルト20上に転写されたトナー像は2次転写部(2次転写ニップ部M)において記録材Pに一括して2次転写される。
【0040】
図2に、2次転写部と中間転写ベルト20のベルトクリーニング装置近傍の模式図を示す。1次転写部において形成された中間転写ベルト20上のトナー像の先端が2次転写ニップ部Mに移動するタイミングに合わせて、レジストローラ13により記録材Pが2次転写ニップ部Mに搬送される。そして、2次転写ニップ部Mにおいて、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写電圧が印加された2次転写ローラ24により、中間転写ベルト20上の多重トナー像が記録材Pに一括して2次転写される。通常の印字動作においては、2次転写をうけた記録材Pは、中間転写ベルト20上から2次転写対向ローラ23の曲率による作用で分離される。その後、トナー像が転写された記録材Pは、定着装置12に搬送される。トナー像を担持した記録材Pは、定着装置12内に設置された定着ローラ12Aと加圧ローラ12Bとの間の定着ニップ部で加熱及び加圧される。これにより、記録材Pの表面にトナー像が熱定着され、記録材P上にフルカラー画像が形成される。その後、記録材Pが画像形成装置10の外部に排出される。
【0041】
2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残ったトナーは、その一部が導電性ブラシ31により回収保持され、残りは導電性ブラシ31を通過する。導電ブラシ31を通過したトナーは、導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32により正規の極性とは逆極性に帯電(本実施例では正極性)される。正極性に帯電されたトナーは、中間転写ベルト20から感光体ドラム2上に転移された後にドラムクリーニング装置6により回収される。
【0042】
図3を用いて、2次転写ローラ24、導電性ブラシ31、トナー帯電ローラ32の画像形成時の動作について説明する。
【0043】
画像形成動作が開始され、中間転写ベルト20が回転駆動された直後に2次転写ローラ24には所定の電流が印加される。この時、2次転写電源44は、電流、電圧検知手段51を備えた制御手段50により定電流制御される。記録材Pの先端が2次転写ニップ部Mに侵入する直前から直後の極先端の領域では、2次転写電源44は、制御手段50により定電圧制御を行い、2次転写ローラ24に一定電圧を印加する。これは、記録材Pの先端が2次転写ニップ部Mに突入した際の急激な電気抵抗変動による画像不良を抑制するための制御である。記録材Pの極先端以降の領域では、2次転写電源44は再び定電流制御を行う。記録材Pの後端が2次転写ニップ部Mを通過後、2次転写電源44は0Vを出力する。
【0044】
導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32には中間転写ベルト20の回転駆動の開始直後に、制御手段50により制御され、回収保持用電源41とトナー帯電用電源42から、それぞれ、ブラシクリーニング電圧VCBとローラクリーニング電圧VCRが印加される。中間転写ベルト20のクリーニング動作がなされている時、回収保持用電源41とトナー帯電用電源42は、定電圧制御される。導電性ブラシ31に印加するブラシクリーニング電圧VCBは+1000Vであり、トナー帯電ローラ32に印加するローラクリーニング電圧VCRは+1200Vである。このとき導電性ブラシ31とトナー帯電ローラに流れる電流は、非画像印字部分で、それぞれ26μAと28μAであった。
【0045】
2次転写工程終了後も導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32には、ブラシクリーニング電圧VCBとローラクリーニング電圧VCRが印加され続け、中間転写ベルト20上の転写残トナーのクリーニングを行う。中間転写ベルト20が2回転した後にクリーニング動作を終了し0Vが印加される。
【0046】
上に挙げた導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32への印加電圧は、雰囲気環境が23℃50%のときの代表値であり、画像形成装置の設置される環境により異なる。
【0047】
(3)本発明の内容
以上では2次転写部において、正常に記録材Pが分離した場合の画像形成装置の動作について説明した。一方で、図4に示すように、2次転写部(2次転写ニップ部M)において、分離不良が発生した場合、記録材Pが導電性ブラシ31と中間転写ベルト20に挟まれてしまうことがある。このような分離不良は、静電気力による記録材Pと中間転写ベルト20の付着力が、記録材Pのコシに勝ることで発生する。従って、帯電しやすい記録材や、コシの弱い薄紙などで発生しやすい。この場合、中間転写ベルト20上の2次転写残トナーに加えて記録材Pの電気抵抗により、導電性ブラシ31に流れる電流量は、著しく減少する。本発明は、この特性を利用し記録材Pが中間転写ベルト20に貼りつくことによる分離不良を検出するものである。
【0048】
つまり、2次転写手段の中間転写ベルト20移動方向下流に位置する電圧印加部材としての導電性ブラシ31に流れる電流量の変動をモニタすることにより分離不良を検出する。本実施例において使用する導電性ブラシ31の電気抵抗は、記録材Pの電気抵抗に比べて十分に小さい。そのため、導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の間に挟まった記録材Pによる電流量の変化を検知することが可能である。
【0049】
以下に、本発明による分離不良の具体的な検出方法について説明する。
【0050】
先ず、図5を用いて、本実施例における分離不良を検出するために電流量を測定する中間転写ベルト20上の位置について説明する。
【0051】
導電ブラシ31に分離不良検出電圧(以下、「検出電圧VD」という。)を印加したときに、2次転写ニップ部Mで記録材Pの先端を挟持した中間転写ベルト20上の位置を「位置F」とする。この位置Fよりも印字画像の上流側の中間転写ベルト20の部位が導電性ブラシ31の当接位置にある時に導電性ブラシ31に流れる電流値(第一の電流量)I1を測定する。さらに、位置Fから中間転写ベルト20上の印字領域の先端位置(以下、「位置G」とする。)の間の部位が導電性ブラシ31の当接位置にある時に導電性ブラシ31に流れる電流値(第二の電流量)I2を測定する。これら電流値I1と電流値I2とを比較することにより分離不良の有無を検出する。本実施例では制御を簡略化するため検出電圧VDとブラシクリーニング電圧VCBは同一の値とした。
【0052】
本実施例は、記録材Pの先端余白部分(位置Fから位置Gの間)で分離不良を検出するため、分離不良の発生から検出までの時間を短くすることができる。本実施例における先端余白部分の長さは5mm程度である。これにより、分離不良の発生時に導電性ブラシ31と中間転写ベルト20に挟まれる記録材の長さが短いためジャム処理がより容易となり、ユーザビリティを向上させることができる。加えて、分離不良の検出を記録材Pの先端余白で行ったことより、中間転写ベルト20上の2次転写残トナーの電気抵抗によって電流値I2が低下することによる誤検出を抑制することが可能である。
【0053】
また、本実施例では、分離不良検出手段として導電性ブラシ31を使用した。ブラシ形状の部材を使用することにより、分離不良によって搬送された記録材が検出手段自体に巻き付く恐れが少ないというメリットがある。
【0054】
次に、図6に示す制御フローチャートを用いて本実施例の検出動作を説明する。
【0055】
先ず、画像形成動作が開始され、中間転写ベルト20を所定の速度で回転駆動(S1)した後、中間転写ベルト20上の位置Fが導電性ブラシ31に侵入するまでの間で、導電性ブラシ31に検出電圧VD(本実施例ではブラシクリーニング電圧VBCと等しい)を印加する(S2)。追って、中間転写ベルト20上に形成されたトナー像が2次転写部(2次転写ニップ部M)に到達し記録材への転写が開始される(S3)。記録材へのトナー像の転写が開始された後、中間転写ベルト20上の位置Fが導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の当接位置の上流端に到達するまでの間で、電流値(第一の電流量)I1を測定する(S4)。中間転写ベルト20上の位置Fから位置Gの領域が導電性ブラシ31の当接領域内に存在する間で導電性ブラシ31に流れる電流値(第二の電流量)I2を測定する(S5)。本実施例ではI2の測定位置を記録材Pの先端余白部分に対応する位置としている。測定された電流値I2が電流値I1よりも小さくなった場合(電流値I2<電流値I1)には、ジャムが発生し中間転写ベルト20と導電性ブラシ31の間に記録材Pが挟まれている可能性がある。しかしながら、中間転写ベルト20の移動方向で電気抵抗の不均一性(ムラ)等に起因する検知電流のバラツキを考慮し、閾値を設定する。つまり、両者の差分I1−I2と予め決定されている閾値(所定の電流量)I0を比較し(S6)、両者の差分が閾値I0以下の場合、即ち、
1−I2≦I0
の関係を満たす場合には、画像形成動作を継続する(S7)。
【0056】
他方で、両者の差分I1−I2が閾値I0よりも大きい場合、即ち、
1−I2>I0
の関係を満たす場合には、画像形成動作を停止する(S8)。電流量I0は、以下に述べる方法にて決定することができる。
【0057】
次に、本実施例における電流値I1と電流値I2を測定するための制御について、図2及び図3を用いて説明する。図3は、電流値I1と電流値I2を測定する制御のタイミングチャートである。
【0058】
先ず、先に電流値I2の測定方法について説明する。電流値I2の測定は、少なくとも、記録材Pの先端がレジセンサ14に検知されてから中間転写ベルト20上の位置Fが導電性ブラシ31の上流側に侵入した後に導電性ブラシ31に流れる電流値のサンプリングを始める。そして、位置Fが導電性ブラシ31の下流側を通過した後にサンプリングを終了する。
【0059】
具体的には、次のように行う。レジセンサ14の検知位置Qから導電性ブラシ31までの記録材Pの搬送距離をL(=L1+L2)とし、プロセス速度をPS(=100mm/秒)、導電性ブラシ31の幅d(=5mm)、記録材Pの搬送量誤差を±Δとする。この場合に、少なくともレジセンサ14の検知位置Qを通過後(L−Δ)/PSから(L+Δ+d)/PSまでの時間、導電性ブラシ31に流れる電流値のサンプリングを行う。本実施例では、上記のタイミングでサンプリングを行った。この時、2次転写電源44は定電流制御を行う。サンプリングの周期は0.005秒であり、サンプリングした測定値は3点で移動平均を行った。
【0060】
電流値I1は、電流値I2の測定を開始する以前に測定される。本実施例では、位置Fが2次転写ニップ部Mに侵入した後、2次転写電源44の制御方式が定電圧から定電流となるタイミングに同期して測定を開始する。電流値I1と電流値I2の測定時の2次転写電流量を同じにすることにより、例え中間転写ベルト20の電気抵抗値が低い場合においても2次転写電圧による導電性ブラシ31での検知電流量への影響を抑え、分離不良検出の精度を向上させるメリットがある。サンプリング周期や平均化処理は電流値I2の測定時と同じである。
【0061】
以下に、本実施例において採用した電流量(閾値)I0の決定方法について説明する。電流量I0は設定値であり、その決定方法はこの限りではない。
【0062】
本実施例では、電流量I0は、記録材Pが導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の間に挟まれていない場合の電流値の下限値IBLと記録材Pが導電ブラシ31と中間転写ベルト20の間に挟まれたときの電流値の上限値IPUの差の2分の1の値とした。
【0063】
具体的には、非印字画像(ベタ白画像)を通紙した場合における導電性ブラシ31に流れる電流値IBを複数回測定した中の最小の電流値から電流の検知誤差を差し引いた値をIBLとした。さらに分離不良が発生し、記録材Pが導電性ブラシ31と中間転写ベルト20に挟持された場合における導電性ブラシ31に流れる電流値IPを複数回測定した中の最大の電流値に電流の検知誤差を加算した値をIPUとした。分離不良が発生した場合での電流値IPの測定に際しては、放置条件(記録材Pの保管された雰囲気環境や時間等)をさまざまに振った記録材Pを用いた。なお、本実施例においては、電流量I0を設定するための実験に、記録材Pとして、ニューNPI上質52(日本製紙、商品名)を使用した。ここで、I0は小さい程、分離不良検出の感度が上がるものの誤検出が多くなってしまう。一方、I0が大きい程、誤検出は減少するものの感度が鈍くなってしまう。上記のことを鑑みて、本実施例では、I0をIBLとIPUの差の半分、つまり
0=(IBL−IPU)/2
とした。
【0064】
また、I0は、画像形成装置10の設置される環境、又は、使用する記録材Pの幅、又は、厚みに応じて変更している。本実施例において、上記の記録材Pに印字する際に使用する印字モードでの、分離不良検出のための電流量の、画像形成装置10の設置環境ごとの閾値I0を下記表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(4)本発明の効果の検証
上記の結果を基に、温度23℃、湿度50%の雰囲気環境で、本実施例の分離不良検出方法の効果確認を行った。効果確認の際には、記録材PとしてニューNPI上質52(日本製紙、商品名)を使用した。当該環境における閾値I0は4μAである。また、実験時のプロセススピードは100mm/秒である。正常に2次転写部における記録材Pの分離が行われた場合の電流値I1、電流値I2のそれぞれの値は
1=27μA
2=25μA
であった。これらの差分は
1−I2=2(μA)≦4(μA)
となり、印字動作の停止は行われない。
【0067】
一方、2次転写部において、記録材Pの分離不良が生じた場合での電流値I1、電流値I2のそれぞれの値は
1=28μA
2=17μA
であった。これらの差分は、
1−I2=11(μA)>4(μA)
の関係を満たすため、印字動作が停止された。
【0068】
本実施例では、上述のように導電性ブラシ31は、2次転写を行う2次転写ローラ24と同じく、2次転写対向ローラ23を対向電極としている。従って、2次転写部で分離不良が発生したすぐ直後に分離不良を検出できるというメリットがある。
【0069】
以上で述べたように、本実施例では、導電性ブラシ31を有する中間転写方式の画像形成装置10において、導電性ブラシ31に分離不良検出電圧(例えば、クリーニング電圧VC)を印加したときの、中間転写ベルト20上の非画像形成領域での電流値I1を求める。また、記録材へのトナー像の転写が開始された後、分離不良検出位置が導電性ブラシ31の当接位置に移動したときに導電性ブラシ31に流れる電流値I2とを求める。そして、電流値I1と電流値I2との差分を求める。この差分が
1−I2>I0
を満たした場合、画像形成動作を停止する。
【0070】
これにより、分離不良検出のために新たな部材を設置することなく、中間転写ベルト20との記録材Pとの分離不良による記録材Pの中間転写ベルト20への貼り付きを分離不良発生後の早期に検出できる。本検証実験では、分離不良が発生し画像形成動作を停止した時点で、記録材Pの先端はトナー帯電ローラ32の当接部まで到達しておらず、導電性ブラシ31の上流端から下流方向に中間転写ベルト20表面に沿って10mm程度の位置にあった。この結果、記録材Pが導電性ブラシ31以外の部材には挟まれていないこと、記録材Pのわずかな領域しか導電性ブラシ31に挟まれていないことからジャムが発生した記録材Pの処理は容易であった。
【0071】
実施例2
以下に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0072】
本発明は、分離不良の発生の有無によって生じる導電性ブラシ31に流れる電流の差から分離不良を検出するため、上記の電流差が大きいほど検出が容易になる。
【0073】
本実施例では、中間転写ベルト20からの記録材Pの分離不良検出を行う際の導電ブラシに印加する電圧値(分離不良検出電圧VD)をクリーニング電圧VCとは異なる値とする。具体的には、図7に示すように、
分離不良の検出電圧VD>クリーニング電圧VC
とする。これにより、記録材Pが中間転写ベルト20に貼り付き導電性ブラシ31当接部に搬送されることで、導電性ブラシ31と中間転写ベルト20との間の電気抵抗が上昇した場合の導電性ブラシ31電流値と、貼り付きが発生せず、通常に印字が終了した場合の電流値の差分が大きくなる。つまり、結果として検出精度を高めることができる。
【0074】
また、分離不良検出電圧VDの印加部分を印字画像先端の余白部分直前から余白内に対応する位置とすることで、クリーニング電圧VCはクリーニング性のための最適値とすることができ、印字部分の2次転写残トナーのクリーニング性は維持される。これにより、実施例1と比較して、より多様な記録材Pに対して分離不良の検出精度を高めることができる。
【0075】
実施例1と同じ画像形成装置10において本実施例の導電性ブラシ31の印加電圧制御を適用することにより、実施例1と同様に、2次転写部における中間転写ベルト20からの記録材Pの分離不良を検出する効果が確認された。
【0076】
実施例3
以下に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0077】
本実施例では、分離不良検出電圧VDと2次転写電圧を略同等の値とする。
【0078】
図8は、検出電圧VDに対する導電性ブラシ31に印加される電流値を示した図である。前述のように、本発明では分離不良が発生したときの、電流量I1と電流量I2の差分が大きいほど、検出精度を高めることができる。しかしながら、高温高湿な雰囲気環境などでは、吸湿により記録材Pの電気抵抗の低下が生じる場合がある。このような条件下で上記の実施例に挙げたように分離不良の検出動作を行った場合、分離不良発生時の電流量I2が電流量I1よりも大きくなってしまうことがある。これは、導電性ブラシ31に流れる電流が記録材Pを伝って図中の電流量ITr2で示すように、2次転写ローラ24に流出してしまうことによって生じる。つまり、吸湿により記録材Pの電気抵抗が下がり電流を流しやすくなる。これに加えて、2次転写ローラ24に印加される電圧が導電性ブラシ31に印加される電圧よりも小さいことによって導電性ブラシ31から2次転写ローラ24に向かって電流が流れてしまう。この結果、分離不良の検出精度の低下を招いてしまう。
【0079】
これを抑制するために、本実施例では、分離不良検出電圧VDの絶対値と2次転写電圧の絶対値を略同じ値とする。これにより、高温高湿環境など、記録材Pの抵抗低下により分離不良の検出精度が下がってしまう場合においても、分離不良を精度よく検出することができる。
【0080】
尚、本実施例の構成において、温度23度湿度50%の雰囲気環境では、2次転写ローラ24の印加電圧と導電性ブラシ31の印加電圧の差が200V程度であれば、流出する電流量は分離不良の検出精度に対する影響を無視できる範囲であった。
【0081】
実施例1と同じ画像形成装置10において本実施例の導電性ブラシ31の印加電圧と2次転写ローラ電圧の制御を適用することにより、実施例1と同様に、2次転写部における中間転写ベルト20からの記録材Pの分離不良を検出する効果が確認された。
【0082】
上記説明では、電流量I1及び電流量I2の測定時において、導電ブラシ31に印加される電圧の絶対値と、2次転写ローラ24に印加される電圧の絶対値とが略同じであるとした。これと同じ理由により、電流量I1を測定する時に2次転写ローラ24に流れる電流量と、電流量I2を測定する時に2次転写ローラ24に流れる電流量とを略同じとすることも好ましい。
【0083】
実施例4
図4に示すように、2次転写部(2次転写ニップ部M)において、分離不良が発生した場合、中間転写ベルト20上の2次転写残トナーに加えて記録材Pの電気抵抗により、導電性ブラシ31に流れる電流量が、著しく減少する。
【0084】
上記実施例は、この特性を利用し記録材Pが中間転写ベルト20に貼りつくことによる分離不良を検出するものである。
【0085】
つまり、2次転写手段の中間転写ベルト20移動方向下流に位置する電圧印加部材としての導電性ブラシ31に流れる電流量の変動をモニタすることにより分離不良を検出する構成とされた。
【0086】
これに対して、本実施例においては、所定の電流を印加した際の、導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の間に挟まった記録材Pによる電圧の変化を検知することによっても、上記実施例と同様に分離不良を検出することができる。
【0087】
つまり、本実施例では、2次転写ローラ24の中間転写ベルト20移動方向下流に位置する電圧印加部材としての導電性ブラシ31から中間転写ベルト20に所定の電流を印加したときの電圧の変動をモニタすることにより分離不良を検出する構成とされる。
【0088】
具体的には、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20に所定の電流を印加した時に、検知手段51にて第一の電圧V1を検知する。また、2次転写ローラ24の当接位置で記録材と対向した中間転写ベルト24上の任意の部位が導電性ブラシ31の当接位置にある時に、検知手段にて第二の電圧V2を検知する。第一の電圧V1と第二の電圧V2との差分の絶対値が、所定の電圧よりも大きくなった場合に分離不良を検知し、画像形成動作を停止する。
【0089】
図9に示す制御フローチャートを用いて本実施例の検出動作を説明する。本実施例においても、上記実施例にて説明した図6に示す制御フローチャートと同様の構成とされる。
【0090】
先ず、画像形成動作が開始され、中間転写ベルト20を所定の速度で回転駆動(S11)した後、中間転写ベルト20上の位置Fが導電性ブラシ31に侵入するまでの間で、導電性ブラシ31に所定の検出電流IDを印加する(S12)。追って、中間転写ベルト20上に形成されたトナー像が2次転写部(2次転写ニップ部M)に到達し記録材への転写が開始される(S13)。記録材へのトナー像の転写が開始された後、中間転写ベルト20上の位置Fが導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の当接位置の上流端に到達するまでの間で、電圧値(第一の電圧)V1を測定する(S14)。中間転写ベルト20上の位置Fから位置Gの領域が導電性ブラシ31の当接領域内に存在する間で導電性ブラシ31に流れる電圧値(第二の電圧値)V2を測定する(S15)。本実施例ではV2の測定位置を記録材Pの先端余白部分に対応する位置としている。測定された電圧値V2と電圧値V1の差分値の絶対値が予め決定されている閾値(所定の電圧値)V0と比較し(S16)、両者の差分が閾値V0以下の場合、即ち、
|V1−V2|≦V0
の関係を満たす場合には、画像形成動作を継続する(S17)。
【0091】
他方で、両者の差分|V1−V2|が閾値V0よりも大きい場合、即ち、
|V1−V2|>V0
の関係を満たす場合には、画像形成動作を停止する(S18)。電圧値V0は、上記実施例と同様にして決定することができる。
【0092】
以上で述べたように、本実施例では、導電性ブラシ31を有する中間転写方式の画像形成装置10において、導電性ブラシ31に分離不良検出電流IDを印加したときの、中間転写ベルト20上の非画像形成領域での電圧値V1を求める。また、記録材へのトナー像の転写が開始された後、分離不良検出位置が導電性ブラシ31の当接位置に移動したときに導電性ブラシ31に生じる電圧値V2とを求める。そして、電圧値V1と電圧値V2との差分の絶対値を求める。この差分が
|V1−V2|>V0
を満たした場合、画像形成動作を停止する。
【0093】
これにより、分離不良検出のために新たな部材を設置することなく、中間転写ベルト20との記録材Pとの分離不良による記録材Pの中間転写ベルト20への貼り付きを分離不良発生後の早期に検出できる。
【0094】
また、本実施例においても、図3を参照して説明した上記実施例と同様の制御タイミングを採用することができる。また、上記実施例と同様に、以下の構成とすることができる。
【0095】
つまり、第一の電圧V1と第二の電圧V2を検知する時の電流量が、中間転写ベルト上における画像の印字部に対応する位置での電流量よりも大きくすることができる。更には、所定の電圧を画像形成装置の設置される雰囲気環境、又は、使用する記録材の厚み、又は、使用する記録材の幅に応じて変更することができる。
【0096】
また、上記実施例と同様に、電圧値V1及び電圧値V2の測定時において、導電ブラシ31に印加される電圧の絶対値と、2次転写ローラ24に印加される電圧の絶対値とが略同じするのが好ましい。また、これと同じ理由により、電圧V1を測定する時に2次転写ローラ24に流れる電流量と、電圧V2を測定する時に2次転写ローラ24に流れる電流量とを略同じとすることが好ましい。
【0097】
尚、以上の実施例1から実施例3、及び、実施例4で例に挙げた実施形態は、本発明を平易に説明するたに記載した例であり、本発明を限定する趣旨のものではない。例えば、本実施例では、分離不良検出部材(電圧印加部材)として、像担持体のクリーニング部材である導電性ブラシを適用した。しかしながら、分離不良検出部材として、導電性のクリーニングブレードや、トナークリーニングのために設置されるローラ部材等に適用することも可能である。
【0098】
また、本実施例では、トナー像を担持する像担持体として、中間転写ベルトを例に挙げ本発明を説明したが、中間転写ベルトに代わり、中間転写ドラムや感光体ドラムに対しても適用し得るものである。
【符号の説明】
【0099】
1a〜1d 感光体ドラム(第1の像担持体)
5a〜5d 1次転写ローラ(1次転写手段)
31 導電性ブラシ(電圧印加部材)
20 中間転写ベルト(第2の像担持体)
24 2次転写ローラ(2次転写手段)
23 2次転写対向ローラ(対向電極)
30 ベルトクリーニング装置
31 導電性ブラシ(電圧印加部材)
32 トナー帯電ローラ
41 回収保持用電源
42 トナー帯電用電源
44 2次転写電源
50 制御手段
51 電流、電圧検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像を記録材に転写するために電圧が印加される転写手段と、
前記転写手段に対し、前記像担持体の移動方向の下流側に位置し、前記像担持体に電圧を印加する電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源と、
前記電圧印加部材に印加される電流を検知する検知手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記電圧印加部材に所定の電圧を印加した時に、前記電圧印加部材から前記像担持体に流れる前記検知手段にて検知される第一の電流量と、
前記転写手段の当接位置で記録材と対向した前記像担持体の任意の部位が前記電圧印加部材の当接位置にある時に、前記電圧印加部材から前記像担持体に流れる前記検知手段にて検知される第二の電流量との差分が所定の電流量よりも大きくなった場合に画像形成動作を停止する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二の電流量の検知位置を記録材の先端余白部に対応する前記像担持体の位置とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一の電流量と前記第二の電流量とを検知する時の印加電圧が、前記像担持体における画像の印字部に対応する位置での印加電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の電流量を画像形成装置の設置される雰囲気環境、又は、使用する記録材の厚み、又は、使用する記録材の幅に応じて変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第一の電流量を測定する時に前記転写手段に流れる電流量と、前記第二の電流量を測定する時に前記転写手段に流れる電流量とが、略同じであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第一の電流量及び前記第二の電流量の測定時において、前記電圧印加部材に印加される電圧の絶対値と、前記転写手段に印加される電圧の絶対値とが略同じであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像を記録材に転写するために電圧が印加される転写手段と、
前記転写手段に対し、前記像担持体の移動方向の下流側に位置し、前記像担持体に電圧を印加する電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源と、
前記電圧印加部材に印加される電圧を検知する検知手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記電圧印加部材から前記像担持体に所定の電流を印加した時に、前記検知手段にて検知される第一の電圧と、
前記転写手段の当接位置で記録材と対向した前記像担持体の任意の部位が前記電圧印加部材の当接位置にある時に、前記検知手段にて検知される第二の電圧との差分の絶対値が、所定の電圧よりも大きくなった場合に画像形成動作を停止する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
第二の電圧の検知位置を記録材の先端余白部に対応する前記像担持体の位置とすることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第一の電圧と前記第二の電圧を検知する時の電流量が、前記像担持体における画像の印字部に対応する位置での電流量よりも大きいことを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記所定の電圧を画像形成装置の設置される雰囲気環境、又は、使用する記録材の厚み、又は、使用する記録材の幅に応じて変更することを特徴とする請求項7〜9のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第一の電圧を測定する時に前記転写手段に流れる電流量と、第二の電圧を測定する時に前記転写手段に流れる電流量とが略同じであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第一の電圧及び前記第二の電圧の測定時において、前記電圧印加部材に印加される電圧の絶対値と、前記転写手段に印加される電圧の絶対値とが略同じであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記電圧印加部材は、前記転写手段の対向電極に対向して配置されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記電圧印加部材が、前記像担持体のトナーをクリーニングするためのトナー帯電部材であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168478(P2012−168478A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31447(P2011−31447)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】