説明

画像形成装置

【課題】坪量が大きくあるいはコシの強い記録材に転写される画像の、記録材搬送方向への伸びを抑制する。
【解決手段】感光体ドラム11と、転写位置Trで感光体ドラム11との間に挟み込んだ用紙Sに感光体ドラム11上の画像を転写する転写ドラム21と、転写ドラム21の外周面のうち転写位置Trよりも転写ドラム21の回転方向上流側となる第1給紙位置P1に、普通紙からなる第1用紙S1を供給する第1用紙供給部50と、転写ドラム21の外周面のうち第1給紙位置P1よりも転写ドラム21の回転方向上流側となる第2給紙位置P2に、厚紙からなる第2用紙S2を供給する第2用紙供給部70と、転写ドラム21に供給される第1用紙S1を第1給紙位置P1で保持し、転写ドラム21に供給される第2用紙S2を第2給紙位置P2で保持する先端グリッパ22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、画像形成部で形成された画像を用紙に転写する画像転写領域に対し、用紙として普通紙を使用する場合には、普通紙にループを形成しながら搬送を行い、また、用紙として厚紙を使用する場合には、厚紙にループを形成することなく搬送を行うようにしたものが存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−194530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、坪量が大きくあるいはコシの強い記録材に転写される画像の、記録材搬送方向への伸びを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、回転可能に配置され、外周面に画像を保持する像保持体と、前記像保持体に対向して回転可能に配置され、当該像保持体との間に挟み込んだ記録材に対し、当該像保持体に保持された画像を転写する転写部材と、第1の坪量を有する第1の記録材を、前記転写部材の外周面のうち前記像保持体と当該転写部材とが対向する転写位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる第1の位置に向けて供給し、当該第1の坪量よりも坪量が大きい第2の坪量を有する第2の記録材を、当該転写部材の外周面のうち当該第1の位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる第2の位置に向けて供給する供給手段と、前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記第1の記録材または前記第2の記録材を、当該転写部材の外周面に保持させる保持手段とを含む画像形成装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記保持手段は、前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記第1の記録材を、前記第1の位置において当該転写部材の外周面に保持させ、当該供給手段によって当該転写部材に供給される前記第2の記録材を、前記第2の位置において当該転写部材の外周面に保持させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記保持手段は、前記第1の位置において前記第1の記録材の搬送方向先端側を保持するとともに、前記第2の位置において前記第2の記録材の搬送方向先端側を保持する先端側保持部材と、前記先端側保持部材によって搬送方向先端側が保持された前記第1の記録材または前記第2の記録材の搬送方向後端側を保持する後端側保持部材とを有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置である。
請求項4記載の発明は、前記供給手段による前記第1の記録材および前記第2の記録材の搬送速度が、前記転写部材による当該第1の記録材および当該第2の記録材の搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項5記載の発明は、前記転写位置と前記転写部材の回転中心と前記第1の位置との成す角度が90°未満であり、当該転写位置と当該転写部材の回転中心と前記第2の位置との成す角度が90°以上且つ360°未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項6記載の発明は、前記転写位置における前記第1の記録材の搬送方向と前記第1の位置における当該第1の記録材の搬送方向との成す角度が90°未満であり、当該転写位置における前記第2の記録材の搬送方向と前記第2の位置における当該第2の記録材の搬送方向との成す角度が90°以上且つ360°未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【0007】
請求項7記載の発明は、回転可能に配置され、外周面に画像を保持する像保持体と、前記像保持体に対向して回転可能に配置され、当該像保持体との間に挟み込んだ記録材に対し、当該像保持体に保持された画像を転写する転写部材と、前記像保持体と前記転写部材とが対向する転写位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる当該転写部材の外周面に向けて、前記記録材のコシが強くなるほど当該転写部材の外周面上における前記転写位置からの距離が遠くなるように当該記録材を供給する供給手段と、前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記記録材を、当該転写部材の外周面に保持させる保持手段とを含む画像形成装置である。
【0008】
請求項8記載の発明は、前記供給手段は、前記記録材を挟み込んで搬送することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置である。
請求項9記載の発明は、前記供給手段による前記記録材の搬送速度が、前記転写部材による当該記録材の搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、坪量が大きい記録材に転写される画像の、記録材搬送方向への伸びを抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写部材に供給される記録材を、転写部材にて保持しつつ転写位置に搬送することが可能になる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写部材に保持された記録材の姿勢を安定させた状態で、画像を転写することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、供給手段と転写部材とによる記録材の引っ張り合いを抑制することができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、坪量が大きい記録材に画像を転写する場合に、転写位置を通過する記録材の速度変動を抑制することができる。
請求項6記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、坪量が大きい記録材に画像を転写する場合に、転写位置を通過する記録材の速度変動を抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、コシの強い記録材に転写される画像の、記録材搬送方向への伸びを抑制することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写部材に対する記録材の供給を、より安定して行うことができる。
請求項9記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、供給手段と転写部材とによる記録材の引っ張り合いを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1における画像形成装置の全体構成および画像形成装置の第1状態を示す図である。
【図2】実施の形態1における画像形成装置の全体構成および画像形成装置の第2状態を示す図である。
【図3】普通紙モードにおいてフルカラー画像を形成する場合における画像形成動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】厚紙モードにおいてフルカラー画像を形成する場合における画像形成動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】(a)、(b)は第1供給ニップ部、第1給紙位置、第2供給ニップ部、第2給紙位置および転写位置との距離の関係を説明するための図である。
【図6】転写ドラム上での転写位置、第1給紙位置および第2給紙位置と、各位置における用紙搬送方向との関係を説明するための図である。
【図7】実施の形態2における画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図8】実施の形態3における画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図9】実施の形態4における画像形成装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。なお、図1は、後述するように、第1の状態に設定された画像形成装置1を示している。
この画像形成装置1は、トナー像の形成を行う画像形成部10と、画像形成部10で形成されたトナー像を記録材の一例としての用紙Sに転写する転写部20と、転写部20によって用紙Sに転写されたトナー像を用紙Sに定着する定着部40と、転写部20に対しトナー像を転写するための用紙Sを供給する用紙供給部50とを備えている。また、この画像形成装置1は、画像形成部10、転写部20、定着部40および用紙供給部50等の動作を制御する制御部100をさらに備えている。ここで、画像形成装置1を構成する各部は、筺体2の内部に収容されており、この筺体2の上部には、定着部40から排出された用紙Sを積載する排紙積載部3が設けられている。
【0012】
これらのうち、画像形成部10は、感光体ドラム11と、この感光体ドラム11を帯電する帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11を露光する露光装置13と、帯電および露光によって感光体ドラム11に形成された静電潜像をトナーによって現像するロータリ現像装置14と、現像されたトナー像を転写した後に感光体ドラム11上に残ったトナー等を清掃する清掃装置15とを備えている。
【0013】
像保持体の一例としての感光体ドラム11は、その表面に感光層(図示せず)が形成されるとともに回転軸11aを中心に矢印A方向に回転するように取り付けられる。そして、帯電装置12、露光装置13、ロータリ現像装置14および清掃装置15は、感光体ドラム11の周囲に、矢印A方向に沿ってこの順番に配置される。ここで、感光体ドラム11の外径は、例えば30mmとなっている。
【0014】
帯電装置12は、本実施の形態においては接触ローラ型の放電装置で構成されており、感光体ドラム11とともに回転しながら感光体ドラム11を帯電する。
露光装置13は、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光照射を行うことで、静電潜像を形成する。なお、本実施の形態の露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って複数の発光素子(例えばLED)を配列した構成を有している。
【0015】
ロータリ現像装置14は、感光体ドラム11の回転軸11aの軸方向に沿って延びる回転軸14aと、回転軸14aの周囲に配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各現像器14Y、14M、14C、14Kとを備えている。また、ロータリ現像装置14は、回転軸14aを中心として矢印C方向に回転するように構成されており、感光体ドラム11と対向する位置(以下の説明では現像位置という)に、いずれかの現像器が停止するようになっている。そして、ロータリ現像装置14には、露光装置13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を、現像位置に停止した現像器のトナーを用いて現像する。なお、ロータリ現像装置14の外径は、例えば100mmとなっている。
【0016】
清掃装置15は、感光体ドラム11の表面に残ったトナーやトナー以外の付着物を除去する。本実施の形態の清掃装置15は、ブレード式のクリーナで構成されている。
【0017】
また、転写部20は、感光体ドラム11に対向し且つ感光体ドラム11の回転軸11aの軸方向に沿って伸びる回転軸21aを中心に回転可能に配置される転写ドラム21と、転写ドラム21の外周面にて用紙Sの搬送方向先端側を把持する先端グリッパ22と、同じく転写ドラム21の外周面にて用紙Sの搬送方向後端側を把持する後端グリッパ23と、回転する転写ドラム21の位相を測定する位相センサ25とを備えている。ここで、転写ドラム21は、感光体ドラム11との対向位置において、感光体ドラム11の回転方向(矢印A方向)と同じ向きとなる矢印B方向に回転するように構成されている。なお、転写ドラム21の外径は、例えば120mmとなっている。このように、本実施の形態では、転写ドラム21の外径が、感光体ドラム11の外径よりも大きく設定されている。
【0018】
これらのうち、転写部材の一例としての転写ドラム21は、円筒形状を有し且つ回転軸21aが取り付けられる基部21Aと、この基部21Aの外周面に設けられた弾性層21Bとを備えている。ここで、弾性層21Bは、基部21Aの外周面のうち、基部21Aの軸方向に沿う一部領域を除く部位を覆うようになっている。すなわち、弾性層21Bは、C字状の断面を有している。これにより、転写ドラム21における基部21Aの外周面のうち、弾性層21Bによって覆われない部位は、基部21Aが露出した露出部21Cとなっている。また、弾性層21Bの周方向の長さは、この画像形成装置1で使用することが可能な最大サイズの用紙Sの長さよりも大きくなるように設定されている。
【0019】
本実施の形態における基部21Aは導電性を有する中空管で構成され、例えば金属が用いられている。一方、弾性層21Bは半導電性を有し且つ発泡層を含む弾性部材で構成され、例えば導電性物質を含有させたポリウレタン等の樹脂が用いられている。また、基部21Aには、高圧電源(図示せず)により、トナーとは逆極性の転写バイアスが印加されるようになっている。一方、感光体ドラム11は接地されている。
なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と、転写ドラム21とが対向する位置を、転写位置Trと称する。そして、転写位置Trにおいては、感光体ドラム11に設けられた感光層と転写ドラム21に設けられた弾性層21Bとが接触することにより、転写ニップ部が構成される。
【0020】
また、先端側保持部材の一例としての先端グリッパ22は、転写ドラム21の外周面上のうち、露出部21Cと弾性層21Bの回転方向先端側とに跨る位置に、転写ドラム21の回転軸21aに沿って設けられている。そして、先端グリッパ22は、転写ドラム21に対して取り付けられており、転写ドラム21の回転に伴って先端グリッパ22も回転するようになっている。
【0021】
ここで、先端グリッパ22は、転写ドラム21にその回転軸21aに沿って設けられた軸(図示せず)を中心に回転する挟み部材を備えている。そして、この挟み部材が、軸を中心に正転および逆転することで、転写ドラム21との間に用紙Sの進行方向先端側の端部(以下では用紙先端と称する)を把持し、また、その把持を解除するように構成されている。なお、以下の説明においては、転写ドラム21に用紙Sを把持するときの先端グリッパ22の状態を「閉」状態にあるといい、また、転写ドラム21に用紙Sを把持しないときの先端グリッパ22の状態を「開」状態にあるという。
【0022】
一方、後端側保持部材の一例としての後端グリッパ23は、転写ドラム21の外周面上に、転写ドラム21の回転軸21aに沿って設けられている。そして、後端グリッパ23は、転写ドラム21の回転軸21aに対して回転可能に取り付けられており、転写ドラム21に対して独立して回転および停止することができるようになっている。これにより、本実施の形態では、転写ドラム21の外周面上での先端グリッパ22と後端グリッパ23との位置関係(距離)が変えられるようになっている。
【0023】
ここで、後端グリッパ23は、転写ドラム22の外周面に対し回転軸21aの軸方向に沿って伸びる帯状の押さえ部材を備えている。そして、この押さえ部材が、転写ドラム21の外周面に対して進退することで、転写ドラム21との間に用紙Sの進行方向後端側の端部(以下では用紙後端と称する)を把持し、また、その把持を解除するように構成されている。なお、以下の説明においては、転写ドラム21に用紙Sを把持するときの後端グリッパ23の状態を「閉」状態にあるといい、また、転写ドラム21に用紙Sを把持しないときの後端グリッパ23の状態を「開」状態にあるという。
ここで、本実施の形態では、先端グリッパ22および後端グリッパ23が、保持手段として機能している。
【0024】
さらに、位相センサ25は、転写ドラム21の外周面に対向して配置されており、転写ドラム21の外周面に設けられたマーク(図示せず)を検知することで、回転する転写ドラム21の位相を測定するようになっている。
なお、本実施の形態では、転写部20を構成する転写ドラム21、先端グリッパ22、後端グリッパ23および位相センサ25が、一体化したユニット(転写ユニット)を構成している。そして、画像形成装置1の筐体2に対し転写ユニットを着脱できるようになっている。
【0025】
また、定着部40は、加熱源(図示せず)を有し回転可能に設置される加熱ロール41と、この加熱ロール41に接触配置されて加熱ロール41とともに定着ニップ部を形成する加圧ロール42とを備えている。
【0026】
さらに、供給手段の一例としての用紙供給部50は、転写ドラム21の下方に配置されるとともに内部に用紙Sを収容する用紙収容部51と、用紙収容部51から用紙Sを取り出す取り出しロール52と、取り出しロール52によって取り出された用紙Sを、タイミングを合わせて転写ドラム21に供給する一対の供給ロール53とを備えている。
【0027】
ここで、本実施の形態の画像形成装置1では、筐体2内において用紙供給部50の位置を変更できるようになっている。図2は、図1に示す画像形成装置1に対し、用紙収容部51を矢印D方向に引っ張ることによって実現される、第2の状態に設定された画像形成装置1を示している。
【0028】
この画像形成装置1では、用紙供給部50に図示しないリンク機構が設けられており、筐体2に対し用紙収容部51を矢印D方向に引っ張ることに伴い、用紙収容部51が矢印E方向に移動し、図2に示す状態すなわち図1に示す状態よりも左斜め上方で停止するようになっている。また、この動作に連動して、取り出しロール52および供給ロール53も筐体2内において移動し、図2に示す状態で停止するようになっている。本実施の形態では、図1に実線で、図2に破線で示す用紙収容部51の位置を第1供給位置Paと称し、また、図2に実線で示す用紙収容部51の位置を第2供給位置Pbと称する。
【0029】
また、以下の説明においては、第1供給位置Paに配置された用紙収容部51から、供給ロール53を介して転写ドラム21に向かう用紙Sの搬送経路を第1給紙経路61と称し、第2供給位置Pbに配置された用紙収容部51から、供給ロール53を介して転写ドラム21に向かう用紙Sの搬送経路を第2給紙経路62と称する。また、転写ドラム21の外周面における用紙Sの搬送経路を回転経路63と称し、転写位置Trから定着部40を介して排紙積載部3に向かう用紙Sの搬送経路を排紙経路64と称する。
【0030】
さらに、以下の説明においては、第1給紙経路61が転写ドラム21の外周面に到達する部位を第1給紙位置P1(第1の位置に対応)と称し、第2給紙経路62が転写ドラム21の外周面に到達する部位を第2給紙位置P2(第2の位置に対応)と称する。さらにまた、第1給紙経路61における一対の供給ロール53の対向部位を第1供給ニップ部N1と称し、第2給紙経路62における一対の供給ロール53の対向部位を第2供給ニップ部N2と称する。
【0031】
また、以下の説明においては、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周速度を感光体周速度Vpと呼び、矢印B方向に回転する転写ドラム21の周速度を転写周速度Vtと呼び、回転する一対の供給ロール53の周速度を供給周速度Vsと呼ぶ。ここで、転写周速度Vtおよび供給周速度Vsについては、両者の周速度差が1%未満となるように設定することが望ましく、この例においては、転写周速度Vtが、感光体周速度Vpよりも1%未満程度だけ高速に設定されているものとする。また、この例においては、供給周速度Vsが、転写周速度Vtよりも1%未満程度だけ高速に設定される。すなわち、この例においては、Vp<Vt<Vsの関係が設定されている。
【0032】
そして、本実施の形態の画像形成装置1では、転写ドラム21の回転方向(矢印B方向)に対し、第1給紙位置P1は転写位置Trよりも上流側に位置しており、また、第2給紙位置P2は第1給紙位置P1よりも上流側であって転写位置Trよりも下流側に位置している。また、後端グリッパ23は、図1および図2に示したように、転写ドラム21の回転方向(矢印B方向)に対し、転写位置Trよりも上流側且つ第1給紙位置P1よりも下流側となる部位(待機位置)にて、回転を停止した状態で停止している。
【0033】
では次に、本実施の形態の画像形成装置1による画像形成動作について説明を行う。なお、この画像形成装置1では、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のうち、2色乃至4色のトナーを用いて1枚の用紙Sに多色画像を形成する動作と、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のうち、1色のトナーを用いて1枚の用紙Sに単色画像を形成する動作とが実行可能であるが、ここでは、4色のトナーを用いて1枚の用紙Sにフルカラー画像を形成する場合を例とする。
【0034】
そして、本実施の形態の画像形成装置1では、画像形成の対象となる用紙Sの種別、より具体的には用紙Sの坪量に応じて、転写ドラム21に対する用紙Sの供給位置を異ならせるようにしている。なお、この例においては、坪量が100gsm以下の用紙Sを普通紙と呼ぶとともに、坪量が100gsmを超える用紙Sを厚紙と呼ぶことにする。ただし、普通紙と厚紙との境界については、画像形成装置1の構成等によって、変更される場合がある。また、ここでは、紙を例として説明を行うが、坪量が大きい記録材としては、厚紙以外に例えばOHPシート等が挙げられる。
【0035】
また、以下の説明においては、用紙Sとして普通紙を用いた場合におけるフルカラー画像の形成動作を『普通紙モード』と呼び、用紙Sとして厚紙を用いた場合におけるフルカラー画像の形成動作を『厚紙モード』と呼ぶ。ここで、普通紙モードでは、図1に示す第1の状態に設定された画像形成装置1すなわち用紙収容部51を第1供給位置Paに配置した状態で画像形成動作を実行する。また、厚紙モードでは、図2に示す第2の状態に設定された画像形成装置1すなわち用紙収容部51を第2供給位置Pbに配置した状態で画像形成動作を実行する。以下の説明においては、第1供給位置Paに配置された用紙収容部51に収容される用紙Sを第1用紙S1(例えば普通紙からなる)と称し、第2供給位置Pbに配置された用紙収容部51に収容される用紙Sを第2用紙S2(例えば厚紙からなる)と称する。したがって、本実施の形態では、第1用紙S1が第1の坪量を有する第1の記録材に対応し、且つ、第2用紙S2が第1の坪量よりも坪量が大きい第2の坪量を有する第2の記録材に対応する。
【0036】
さらに、以下の説明においては、「普通紙モード」および「厚紙モード」の両者において、感光体ドラム11の感光体周速度Vp、転写ドラム21の転写周速度Vtおよび供給ロール53の供給周速度Vsが、それぞれ同じ大きさに設定されているものとする。ここで、本実施の形態では、供給周速度Vsが、供給手段による第1の記録材および第2の記録材の搬送速度に対応し、転写周速度Vtが、転写部材による第1の記録材および第2の記録材の搬送速度に対応する。さらにまた、以下に説明する「普通紙モード」および「厚紙モード」の両者において、フルカラー画像の形成対象となる第1用紙S1および第2用紙S2の、大きさおよび向きは同じであるものとする。
【0037】
(普通紙モード)
図3は、図1に示す第1の状態にセットされた画像形成装置1を用い、1枚の用紙S上にイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の4色を含むフルカラー画像を形成する普通紙モードにおけるタイミングチャートの一例を示している。ここで、図3は、時間の経過と、(a)感光体ドラム11の駆動(ON/OFF)と、(b)現像位置に配置される現像器と、(c)転写ドラム21の駆動(ON/OFF)と、(d)転写ドラム21に対する転写バイアスの印加(ON/OFF)と、(e)先端グリッパ22の状態(開/閉)と、(f)後端グリッパ23の状態(開/閉)と、(g)供給ロール53の駆動(ON/OFF)と、(h)第1供給ニップ部N1を通過する用紙Sと、(i)第2供給ニップ部N2を通過する用紙Sと、(j)第1給紙位置P1を通過する用紙Sと、(k)第2給紙位置P2を通過する用紙Sと、(l)転写位置Trを通過する用紙Sと、(m)転写位置Trを通過する感光体ドラム11上の画像との関係を示している。
【0038】
また、図3において、「Y」、「M」、「C」、「K」は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応している。さらに、図3において、「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」は、同一の用紙Sが、転写ドラム21の外周面における第1給紙位置P1、第2給紙位置P2および転写位置Trを通過する回数を示している。ここで、普通紙モードにおいて、用紙Sは第1用紙S1を意味している。したがって、例えば図3(l)に示す「転写位置通過用紙」における「S1(2nd)」は、一度転写位置Trを通過した第1用紙S1が、再び(2度目に)転写位置Trを通過していることを意味するものとなっている。
【0039】
さらに、普通紙モードによるフルカラーの画像形成動作が開始される前の初期状態では、感光体ドラム11、転写ドラム21、そして供給ロール53の駆動が、すべてOFFになっている。また、初期状態では、転写ドラム21に対する転写バイアスの供給も、OFFになっている。さらに、初期状態では、先端グリッパ22および後端グリッパ23が、ともに開状態に設定されている。さらにまた、初期状態では、図1にも示したように、黒の現像器14Kが現像位置に配置された状態で停止し、後端グリッパ23が待機位置に配置された状態で停止している。
【0040】
普通紙モードでの画像形成動作の開始に伴い、制御部100は、感光体ドラム11および転写ドラム21の駆動をOFFからONに切り替えることで、感光体ドラム11を感光体周速度Vpで、また、転写ドラム21を転写周速度Vtで、それぞれ回転させる。このとき、感光体ドラム11および転写ドラム21は、互いに接触した状態で転写位置Trにおいて同じ方向に回転する。
【0041】
次に、制御部100は、ロータリ現像装置14を回転させ、現像位置にイエローの現像器14Yを配置させる。そして、制御部100は、帯電装置12、露光装置13および現像位置にある現像器(ここではイエローの現像器14Y)を駆動させる。これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11上に形成された静電潜像がイエローの現像器14Yによって現像され、感光体ドラム11上には静電潜像に対応したイエローのトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成されたイエローのトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0042】
一方、普通紙モードでの画像形成動作の開始に対応して、制御部100は用紙供給部50から第1用紙S1の供給を行わせる。より具体的に説明すると、制御部100は、第1供給位置Paに配置された用紙収容部51に収容された第1用紙S1を、取り出しロール52によって取り出すことで第1給紙経路61内に進入させる。このとき、制御部100は、供給ロール53の駆動をOFFのままとしており、第1給紙経路61内に進入してきた第1用紙S1の用紙先端は、第1供給ニップ部N1の入口側に突き当たった状態で停止し、この第1用紙S1の斜行補正がなされる。そして、制御部100は、回転する転写ドラム21に取り付けられた先端グリッパ22が第1給紙位置P1に到達する際に、この第1用紙S1の用紙先端が第1給紙位置P1に到達するように、供給ロール53の駆動をOFFからONに切り替えることで、供給ロール53を供給周速度Vsで回転させる。これに伴い、第1用紙S1の供給が再開され、第1用紙S1は第1供給ニップ部N1を通過しつつ、第1給紙経路61を介して第1給紙位置P1に到達する。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙先端が第1給紙位置P1に到達するのに合わせて、先端グリッパ22を開状態から閉状態へと移行させる。これにより、第1用紙S1の用紙先端は、転写ドラム21に機械的に把持される。このとき、第1用紙S1の用紙先端側は、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で回転経路63に沿って搬送され、この第1用紙S1の用紙後端側は、供給ロール53による第1供給ニップ部N1にてニップされた状態で、第1給紙経路61に沿って搬送されることになる。
【0043】
次に、先端グリッパ22によって転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙先端は、待機位置にて停止状態を維持する後端グリッパ23をくぐり抜けた後、転写位置Trに到達する(1回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のイエローのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第1用紙S1に対するイエローのトナー像の転写(1色目)が開始される。
【0044】
また、この例では、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達した後、この第1用紙S1の用紙後端が第1供給ニップ部N1を通過し、さらに第1給紙位置P1も通過する。このとき、制御部100は、第1用紙S1の用紙後端が第1供給ニップ部N1を通過した後に、供給ロール53の駆動をONからOFFに切り替えることで、供給ロール53の回転を停止させる。そして、制御部100は、この第1用紙S1の用紙後端が、待機位置で停止している後端グリッパ23との対向部に到達するのに合わせて、後端グリッパ23を開状態から閉状態へと移行させ、且つ、後端グリッパ23を、転写ドラム21と同じ方向に同じ転写周速度Vtで回転させる。これにより、第1用紙S1の用紙後端は、転写ドラム21に機械的に把持される。これに伴い、この第1用紙S1は、その用紙先端が先端グリッパ22によって、また、その用紙後端が後端グリッパ23によって、それぞれ把持されることになる。その結果、第1用紙S1の全体が、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で、回転経路63に沿って搬送されることになる。
【0045】
さらに、この例では、第1用紙S1の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第1用紙S1に対応するイエローのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第1用紙S1に対するイエローのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第1用紙S1に対するイエローのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(イエローの現像器14Yからマゼンタの現像器14Mへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対するマゼンタのトナー像の形成を開始させる。
【0046】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたイエローの画像(図3(m)に示すY)が通過することになり、また、第1用紙S1が1回目の通過を行う(図3(l)に示すS1(1st))ことになる。
【0047】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達する(2回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のマゼンタのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第1用紙S1に対するマゼンタのトナー像の転写(2色目)が開始される。
【0048】
また、この例では、第1用紙S1の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第1用紙S1に対応するマゼンタのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第1用紙S1に対するマゼンタのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第1用紙S1に対するマゼンタのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(マゼンタの現像器14Mからシアンの現像器14Cへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対するシアンのトナー像の形成を開始させる。
【0049】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたマゼンタの画像(図3(m)に示すM)が通過することになり、また、第1用紙S1が2回目の通過を行う(図3(l)に示すS1(2nd))ことになる。
【0050】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達する(3回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のシアンのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第1用紙S1に対するシアンのトナー像の転写(3色目)が開始される。
【0051】
また、この例では、第1用紙S1の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第1用紙S1に対応するシアンのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第1用紙S1に対するシアンのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第1用紙S1に対するシアンのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(シアンの現像器14Cから黒の現像器14Kへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対する黒のトナー像の形成を開始させる。
【0052】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたシアンの画像(図3(m)に示すC)が通過することになり、また、第1用紙S1が3回目の通過を行う(図3(l)に示すS1(3rd))ことになる。
【0053】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達する(4回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上の黒のトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第1用紙S1に対する黒のトナー像の転写(4色目)が開始される。
【0054】
また、この例では、第1用紙S1の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、制御部100が、先端グリッパ22を閉状態から開状態へと移行させる。これにより、第1用紙S1の用紙先端の把持が解除されることとなり、転写位置Trを通過した第1用紙S1は回転経路63から離れ、排紙経路64に沿って定着部40に向けて移動していく。この第1用紙S1が定着部40の定着ニップ部を通過していくことにより、第1用紙S1に重ね転写されたフルカラートナー像は、第1用紙S1に定着される。
【0055】
そして、この例では、第1用紙S1の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第1用紙S1に対応する黒のトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、第1用紙S1の用紙後端が待機位置に到達するのに合わせて、制御部100は、後端グリッパ23を閉状態から開状態へと移行させ、且つ、後端グリッパ23の回転を停止させる。これにより、第1用紙S1の用紙後端の把持が解除され、後端グリッパ23は再び待機位置で停止することになる。そして、制御部100は、第1用紙S1の用紙後端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第1用紙S1に対する黒のトナー像の転写を終了する。
その後、第1用紙S1は、定着部40を通過し、排紙経路64を介して排紙積載部3に積載される。
【0056】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成された黒の画像(図3(m)に示すK)が通過することになり、また、第1用紙S1が4回目の通過を行う(図3(l)に示すS1(4th))ことになる。
【0057】
なお、普通紙モードでは、1枚の第1用紙S1が、第1給紙位置P1を4回通過するのに対し、第2給紙位置P2については1回少ない3回だけ通過することになる。また、普通紙モードにおいて、第1用紙S1が第2供給ニップ部N2を通過することはない。
【0058】
(厚紙モード)
図4は、図2に示す第2の状態にセットされた画像形成装置1を用い、1枚の用紙S上にイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の4色を含むフルカラー画像を形成する厚紙モードにおけるタイミングチャートの一例を示している。なお、図4に示す各符号、各構成要素の前提条件および初期状態は、用紙供給部50の取り付け位置を除いて、基本的に上述した「普通紙モード」と同じである。ただし、厚紙モードにおいて、用紙Sは第2用紙S2を意味している。したがって、例えば図4(l)に示す「転写位置通過用紙」における「S2(2nd)」は、一度転写位置Trを通過した第2用紙S2が、再び(2度目に)転写位置Trを通過していることを意味するものとなっている。
【0059】
厚紙モードでの画像形成動作の開始に伴い、制御部100は、感光体ドラム11および転写ドラム21の駆動をOFFからONに切り替えることで、感光体ドラム11を感光体周速度Vpで、また、転写ドラム21を転写周速度Vtで、それぞれ回転させる。このとき、感光体ドラム11および転写ドラム21は、互いに接触した状態で転写位置Trにおいて同じ方向に回転する。
【0060】
次に、制御部100は、ロータリ現像装置14を回転させ、現像位置にイエローの現像器14Yを配置させる。そして、制御部100は、帯電装置12、露光装置13および現像位置にある現像器(ここではイエローの現像器14Y)を駆動させる。これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11上に形成された静電潜像がイエローの現像器14Yによって現像され、感光体ドラム11上には静電潜像に対応したイエローのトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成されたイエローのトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0061】
一方、厚紙モードでの画像形成動作の開始に対応して、制御部100は用紙供給部50から第2用紙S2の供給を行わせる。より具体的に説明すると、制御部100は、第2供給位置Pbに配置された用紙収容部51に収容された第2用紙S2を、取り出しロール52によって取り出すことで第2給紙経路62内に進入させる。このとき、制御部100は、供給ロール53の駆動をOFFのままとしており、第2給紙経路62内に進入してきた第2用紙S2の用紙先端は、第2供給ニップ部N2の入口側に突き当たった状態で停止し、この第2用紙S2の斜行補正がなされる。そして、制御部100は、回転する転写ドラム21に取り付けられた先端グリッパ22が第2給紙位置P2に到達する際に、この第2用紙S2の用紙先端が第2給紙位置P2に到達するように、供給ロール53の駆動をOFFからONに切り替えることで、供給ロール53を供給周速度Vsで回転させる。これに伴い、第2用紙S2の供給が再開され、第2用紙S2は第2供給ニップ部N2を通過しつつ、第2給紙経路62を介して第2給紙位置P2に到達する。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙先端が第2給紙位置P2に到達するのに合わせて、先端グリッパ22を開状態から閉状態へと移行させる。これにより、第2用紙S2の用紙先端は、転写ドラム21に機械的に把持される。このとき、第2用紙S2の用紙先端側は、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で回転経路63に沿って搬送され、この第2用紙S2の用紙後端側は、供給ロール53による第2供給ニップ部N2にてニップされた状態で、第2給紙経路62に沿って搬送されることになる。
【0062】
なお、本実施の形態では、転写ドラム21の回転方向に対し、転写位置Trからみて上流側に第1給紙位置P1が存在し、さらにその上流側に第2給紙位置P2が存在していることから、厚紙モードにおける給紙開始タイミングは、上述した普通紙モードにおける給紙開始タイミングよりも前となる。
【0063】
次に、先端グリッパ22によって転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙先端は、第1給紙位置P1を通過し且つ待機位置にて停止状態を維持する後端グリッパ23をくぐり抜けた後、転写位置Trに到達する(1回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のイエローのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第2用紙S2に対するイエローのトナー像の転写(1色目)が開始される。
【0064】
また、この例では、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達した後、この第2用紙S2の用紙後端が第2供給ニップ部N2を通過し、さらに第2給紙位置P2も通過する。このとき、制御部100は、第2用紙S2の用紙後端が第2供給ニップ部N2を通過した後に、供給ロール53の駆動をONからOFFに切り替えることで、供給ロール53の回転を停止させる。そして、制御部100は、この第2用紙S2の用紙後端が、待機位置で停止している後端グリッパ23との対向部に到達するのに合わせて、後端グリッパ23を開状態から閉状態へと移行させ、且つ、後端グリッパ23を、転写ドラム21と同じ方向に同じ転写周速度Vtで回転させる。これにより、第2用紙S2の用紙後端は、転写ドラム21に機械的に把持される。これに伴い、この第2用紙S2は、その用紙先端が先端グリッパ22によって、また、その用紙後端が後端グリッパ23によって、それぞれ把持されることになる。その結果、第2用紙S2の全体が、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で、回転経路63に沿って搬送されることになる。
【0065】
さらに、この例では、第2用紙S2の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第2用紙S2に対応するイエローのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第2用紙S2に対するイエローのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第2用紙S2に対するイエローのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(イエローの現像器14Yからマゼンタの現像器14Mへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対するマゼンタのトナー像の形成を開始させる。
【0066】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたイエローの画像(図4(m)に示すY)が通過することになり、また、第2用紙S2が1回目の通過を行う(図4(l)に示すS2(1st))ことになる。
【0067】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達する(2回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のマゼンタのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第2用紙S2に対するマゼンタのトナー像の転写(2色目)が開始される。
【0068】
また、この例では、第2用紙S2の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第2用紙S2に対応するマゼンタのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第2用紙S2に対するマゼンタのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第2用紙S2に対するマゼンタのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(マゼンタの現像器14Mからシアンの現像器14Cへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対するシアンのトナー像の形成を開始させる。
【0069】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたマゼンタの画像(図4(m)に示すM)が通過することになり、また、第2用紙S2が2回目の通過を行う(図4(l)に示すS2(2nd))ことになる。
【0070】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達する(3回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のシアンのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第2用紙S2に対するシアンのトナー像の転写(3色目)が開始される。
【0071】
また、この例では、第2用紙S2の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第2用紙S2に対応するシアンのトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第2用紙S2に対するシアンのトナー像の転写を終了する。また、この例では、第2用紙S2に対するシアンのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(シアンの現像器14Cから黒の現像器14Kへの切り替え)を行う。そして、制御部100は、感光体ドラム11に対する黒のトナー像の形成を開始させる。
【0072】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたシアンの画像(図4(m)に示すC)が通過することになり、また、第2用紙S2が3回目の通過を行う(図4(l)に示すS2(3rd))ことになる。
【0073】
転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達する(4回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上の黒のトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ25からの位相信号に基づいて露光装置13およびロータリ現像装置14の制御を行っている。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをOFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、第2用紙S2に対する黒のトナー像の転写(4色目)が開始される。
【0074】
また、この例では、第2用紙S2の用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、制御部100が、先端グリッパ22を閉状態から開状態へと移行させる。これにより、第2用紙S2の用紙先端の把持が解除されることとなり、転写位置Trを通過した第2用紙S2は回転経路63から離れ、排紙経路64に沿って定着部40に向けて移動していく。この第2用紙S2が定着部40の定着ニップ部を通過していくことにより、第2用紙S2に重ね転写されたフルカラートナー像は、第2用紙S2に定着される。
【0075】
そして、この例では、第2用紙S2の用紙後端が第1給紙位置P1に到達した後、この第2用紙S2に対応する黒のトナー像の現像が終了する。また、これに続いて、第2用紙S2の用紙後端が待機位置に到達するのに合わせて、制御部100は、後端グリッパ23を閉状態から開状態へと移行させ、且つ、後端グリッパ23の回転を停止させる。これにより、第2用紙S2の用紙後端の把持が解除され、後端グリッパ23は再び待機位置で停止することになる。そして、制御部100は、第2用紙S2の用紙後端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に印加する転写バイアスをONからOFFに切り替える。これにより、第2用紙S2に対する黒のトナー像の転写を終了する。
その後、第2用紙S2は、定着部40を通過し、排紙経路64を介して排紙積載部3に積載される。
【0076】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが印加されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成された黒の画像(図4(m)に示すK)が通過することになり、また、第2用紙S2が4回目の通過を行う(図4(l)に示すS2(4th))ことになる。
【0077】
なお、厚紙モードでは、1枚の第2用紙S2が、第1給紙位置P1および第2給紙位置P2をそれぞれ4回通過することになる。また、厚紙モードにおいて、第2用紙S2が第1供給ニップ部N1を通過することはない。
【0078】
また、以上の説明から明らかなように、用紙S(第1用紙S1および第2用紙S2)の大きさおよび向きが同じであるとすると、普通紙モードおよび厚紙モードの両者において、これらにおける制御の相違は、転写ドラム21に対する用紙Sの供給タイミングすなわち供給ロール53を駆動するタイミング、および、転写ドラム21に供給された用紙Sの用紙先端を先端グリッパ22で把持するタイミングである。
【0079】
では次に、上述した普通紙モード、厚紙モードのそれぞれにおいて、転写ドラム21に用紙Sを供給する際、および、転写ドラム21に供給した用紙Sに1色目(この例においてはイエロー)のトナー像を転写する際の、用紙Sの挙動について説明を行う。本実施の形態では、上述したように、普通紙モードおよび厚紙モードの両者において、供給ロール53による供給周速度Vsが、転写ドラム21の転写周速度Vtよりも高速(Vs>Vt)に設定され、転写ドラム21の転写周速度Vtが、感光体ドラム11の感光体周速度Vpよりも高速(Vt>Vp)に設定される。
【0080】
このため、普通紙モードおよび厚紙モードの両者において、1枚の用紙Sの用紙先端が転写ドラム21の先端グリッパ22に把持されてから、その用紙後端が供給ロール53(第1供給ニップ部N1あるいは第2供給ニップ部N2)を抜けるまでの間、この用紙Sには、供給ロール53と転写ドラム21との周速度差に起因するたわみが生じる。したがって、普通紙モードおよび厚紙モードの両者において、1色目のトナー像(ここではイエローのトナー像)を転写するために、用紙Sの用紙先端が転写位置Trを通過し、且つ、この用紙Sの用紙後端が供給ロール53(第1供給ニップ部N1あるいは第2供給ニップ部N2)を通過するまでの間、転写位置Trを通過する用紙Sに対し、この用紙Sに生じたたわみを元に戻そうとする力(復元力)がかかる。
【0081】
図1に示す第1の状態において、例えば第1用紙S1として厚紙を使用した場合に、転写位置Trの上流側で厚紙に発生するたわみ量は、第1用紙S1として普通紙を使用した場合に、転写位置Trの上流側で普通紙に発生するたわみ量と同じになる(供給周速度Vsおよび転写周速度Vtが両者において不変であると仮定した場合)。ただし、たわみ量が同じであったとしても、厚紙のコシが普通紙のコシよりも強い分、この状態で厚紙に働く復元力は、この状態で普通紙に働く復元力よりも大きくなる。このため、図1に示す第1の状態において、第1用紙S1として厚紙を使用した場合には、第1用紙S1として普通紙を使用した場合と比較して、たわみに起因する復元力によって転写位置Trを通過する厚紙が押されることで速度変動が生じやすくなり、1色目のトナー像の転写において副走査方向の倍率ずれ(トナー像の伸び)が生じやすくなってしまう。一方、2色目〜4色目の転写においては、第1用紙S1の用紙後端が供給ロール53を抜けているために、上述した速度差に起因するたわみが生じなくなることから、このことに起因する副走査方向の倍率ずれは生じない。その結果、図1に示す第1の状態において、第1用紙S1として厚紙を使用した場合には、厚紙に転写される4色の重ねトナー像において、1色目(イエロー)のトナー像と、2〜4色目(マゼンタ、シアンおよび黒)のトナー像とで、副走査方向の像ずれに起因する画質劣化を招いてしまうおそれがある。なお、普通紙は厚紙よりもコシが弱いために、図1に示す第1の状態で給紙を行ったとしても、1色目のトナー像の転写において、上述した理由による副走査方向のトナー像の伸びが生じにくくなることから、普通紙に転写された4色の重ねトナー像における像ずれも生じにくい。
【0082】
図5(a)は、普通紙モードすなわち第1供給位置Paに配置された用紙収容部51より供給される第1用紙S1(図1参照)が、第1供給ニップ部N1から第1給紙位置P1を介して転写位置Trに至る第1距離L1を説明するための図である。また、図5(b)は、厚紙モードすなわち第2供給位置Pbに配置された用紙収容部51より供給される第2用紙S2(図2参照)が、第2供給ニップ部N2から第2給紙位置P2および第1給紙位置P1を介して転写位置Trに至る第2距離L2を説明するための図である。
【0083】
図5(a)に示すように、第1距離L1は、第1給紙経路61のうち第1供給ニップ部N1から第1給紙位置P1に至る第1給紙距離L11と、回転経路63のうち第1給紙位置P1から矢印B方向(図1参照)に沿って転写位置Trに至る第1回転距離L12との和で表される。一方、図5(b)に示すように、第2距離L2は、第2給紙経路62のうち第2供給ニップ部N2から第2給紙位置P2に至る第2給紙距離L21と、回転経路63のうち第2給紙位置P2から矢印B方向(図1参照)に沿い第1給紙位置P1を介して転写位置Trに至る第2回転距離L22との和で表される。本実施の形態では、第2回転距離L22が第1回転距離L12よりも長くなっており(L22>L12)、また、第2距離L2が第1距離L1よりも長くなっている(L2>L1)。なお、本実施の形態では、第1給紙距離L11と第2給紙距離L21とが、ほぼ同じ長さに設定されている(L11≒L21)。
【0084】
厚紙モードにおいて第2用紙S2として厚紙を使用した場合に、転写位置Trの上流側で厚紙に発生するたわみ量は、例えば普通紙モードにおいて第1用紙S1として厚紙を使用した場合に、転写位置Trの上流側で厚紙に発生するたわみ量よりも少なくなる(供給周速度Vsおよび転写周速度Vtが両者において不変であると仮定した場合)。これは、第2回転距離L22が第1回転距離L12よりも長いことに起因している。したがって、厚紙モードで厚紙を使用した場合に厚紙に働く復元力は、普通紙モードで厚紙を使用した場合に厚紙に働く復元力よりも小さくなる。このため、厚紙モードでは、1色目のトナー像の転写における転写位置Trでの第2用紙S2のずれが生じにくくなり、厚紙に転写される4色のトナー像において、副走査方向の像ずれが抑制されることになる。
【0085】
また、この例では、普通紙モードにおける第1用紙S1の給紙経路の長さすなわち第1距離L1が、厚紙モードにおける第2用紙S2の給紙経路の長さすなわち第2距離L2よりも短くなっている。このため、普通紙モードの場合は、転写位置Trに対する用紙Sの供給を、厚紙モードと比べてより短い期間で行うことができる。より具体的には、普通紙モードでは、第2給紙位置P2−第1給紙位置P1間を、用紙Sが搬送されるのに要する時間分だけ、厚紙モードに比べてユーザの待ち時間が短くなる。このため、普通紙モードの場合には、フルカラーの画像形成動作の開始指示があってからフルカラー画像が形成された用紙Sが排出されるまでの期間を、厚紙モードの場合よりも短くすることができる。なお、図3および図4では、説明を簡略化するために、感光体ドラム11および転写ドラム21の駆動が開始されてから供給ロール53の駆動が開始されるまでの期間を、普通紙モードと厚紙モードとで同一にしていたが、普通紙モードの場合は、厚紙モードの場合に比べて、この期間をより短くできることになる。
【0086】
また、図6は、転写ドラム21上での転写位置Tr、第1給紙位置P1および第2給紙位置P2と、各位置における用紙搬送方向との関係を説明するための図である。
ここで、普通紙モードおよび厚紙モードの両者において、用紙S(第1用紙S1、第2用紙S2)は、転写位置Trでは転写移動方向Dtに沿って搬送される。また、普通紙モードにおいて、第1用紙S1は、第1供給ニップ部N1から第1給紙位置P1に向かい、第1移動方向D1に沿って搬送される。一方、厚紙モードにおいて、第2用紙S2は、第2供給ニップ部N2から第2給紙位置P2に向かい、第2移動方向D2に沿って搬送される。
【0087】
そして、本実施の形態では、転写位置Trと転写ドラム21の回転軸21aと第1給紙位置P1との成す角度が、0°を超え且つ90°未満となるように設定されているのに対し、転写位置Trと転写ドラム21の回転軸21aと第2給紙位置P2との成す角度は、90°以上且つ360°未満となるように設定されている。また、本実施の形態では、第1移動方向D1と転写移動方向Dtとの成す角度が90°未満となるように設定されているのに対し、第2移動方向D2と転写移動方向Dtとの成す角度が90°以上且つ360°未満となるように設定されている。
【0088】
このため、普通紙モードでは、第1移動方向D1に沿って搬送される第1用紙S1に生じたたわみによる復元力のベクトル成分が、転写位置Trに影響を与えるようになっている一方、厚紙モードでは、第2移動方向D2に沿って搬送される第2用紙S2に生じたたわみによる復元力のベクトル成分が、転写位置Trに影響を与えにくくなっている。このため、厚紙モードでは、転写位置Trにおける第2用紙S2の、たわみに起因する速度変動がさらに抑制されやすくなる。
【0089】
なお、本実施の形態では、図2および図6等に示した部位に第2給紙位置P2を設定していたが、これに限られるものではなく、転写ドラム21の回転方向に対し第2給紙位置P2よりも上流側且つ転写位置Trよりも下流側となる部位(例えば図6に示す他の第2給紙位置P2’)であればよい。そして、この場合は、厚紙モードにおいて、第2用紙S2は、第2供給ニップ部N2から他の第2給紙位置P2’に向かい、他の第2移動方向D2’に沿って搬送すればよい。
【0090】
また、本実施の形態では、普通紙モードと厚紙モードとで、感光体周速度Vp、転写周速度Vtおよび供給周速度Vsを、それぞれ不変としていたが、これに限られるものではない。例えば厚紙モードの場合には、定着部40での定着時間を長くするために定着速度が低減されることがある。この場合は、厚紙モードにおける感光体周速度Vp、転写周速度Vtおよび供給周速度Vsを、定着速度の減少率に合わせて、普通紙モードにおける感光体周速度Vp、転写周速度Vtおよび供給周速度Vsに対し、それぞれ低下させることになる。ただし、このときも、厚紙モードにおける感光体周速度Vp、転写周速度Vtおよび供給周速度Vsが、Vp<Vt<Vsの関係を有していればよい。
【0091】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2における画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。ここで、本実施の形態の画像形成装置1は、第1供給位置Paに用紙供給部50を配置するとともに、第2供給位置Pbに第2用紙供給部70を配置するようにしたものである。なお、本実施の形態では、用紙供給部50を第1用紙供給部、用紙収容部51を第1用紙収容部、取り出しロール52を第1取り出しロール52、供給ロール53を第1供給ロール、とそれぞれ呼ぶことにする。また、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施の形態において、第2用紙供給部70は、転写ドラム21の下方且つ第1用紙供給部50の上方に配置されるとともに内部に用紙S(第2用紙S2)を収容する第2用紙収容部71と、第2用紙収容部71から用紙Sを取り出す第2取り出しロール72と、第2取り出しロール72によって取り出された用紙S(第2用紙S2)を、タイミングを合わせて転写ドラム21に供給する一対の第2供給ロール73とを備えている。なお、第2用紙収容部71は、画像形成装置1の筐体2に対し矢印F方向に引き抜きを行うことで、画像形成装置1から取り外されるようになっている。本実施の形態では、第1用紙供給部50および第2用紙供給部70の両者が、供給手段として機能している。
【0093】
また、本実施の形態では、第1供給位置Paに配置された第1用紙収容部51から、第1供給ロール53を介して転写ドラム21(第1給紙位置P1)に向かう第1用紙S1の搬送経路が第1給紙経路61となり、第2供給位置Pbに配置された第2用紙収容部71から、第2供給ロール73を介して転写ドラム21(第2給紙位置P2)に向かう第2用紙S2の搬送経路が第2給紙経路62となる。さらに、第1給紙経路61に配置された第1供給ロール53によって第1供給ニップ部N1が形成され、第2給紙経路62に配置された第2供給ロール73によって第2供給ニップ部N2が形成される。
【0094】
本実施の形態では、普通紙モードでは第1用紙供給部50から第1用紙S1(普通紙)を供給させるようにし、厚紙モードでは第2用紙供給部70から第2用紙S2(厚紙)を供給させるようにする。ここで、普通紙モードでの動作は、実施の形態1で説明した図3に示す手順に従い、厚紙モードでの動作は、実施の形態1で説明した図4に示す手順に従う。ただし、本実施の形態では、図3(g)に示す「供給ロール駆動」が「第1供給ロール駆動」となり、図4(g)に示す「供給ロール駆動」が「第2供給ロール駆動」となる。
【0095】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3における画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。ここで、本実施の形態の画像形成装置1は、第1供給位置Paに用紙供給部50を配置するとともに、第2供給位置Pbに手差し用紙供給部80を配置するようにしたものである。なお、本実施の形態において、実施の形態1、2と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0096】
本実施の形態において、手差し用紙供給部80は、画像形成装置1の筐体2の側面(図8において左側)に、筐体2に設けられた回転軸81aを中心に回転することで、筐体2に対し開閉自在に取り付けられ、開状態に設定された際に上部に(第2用紙S2)を収容する手差し用紙収容部81と、手差し用紙収容部81から取り出された用紙S(第2用紙S2)を、タイミングを合わせて転写ドラム21に供給する手差し供給ロール83とを備えている。なお、手差し用紙収容部81は、図中一点鎖線で示す閉状態から矢印G方向に回転することで、図中実線で示す開状態に移行し、開状態から矢印H方向に回転することで、閉状態に移行する。本実施の形態では、用紙供給部50および手差し用紙供給部80の両者が、供給手段として機能している。
【0097】
また、本実施の形態では、第1供給位置Paに配置された用紙収容部51から、第1供給ロール53を介して転写ドラム21(第1給紙位置P1)に向かう第1用紙S1の搬送経路が第1給紙経路61となり、第2供給位置Pbに配置された手差し用紙収容部81から、手差し供給ロール83を介して転写ドラム21(第2給紙位置P2)に向かう第2用紙S2の搬送経路が第2給紙経路62となる。さらに、第1給紙経路61に配置された供給ロール53によって第1供給ニップ部N1が形成され、第2給紙経路62に配置された手差し供給ロール83によって第2供給ニップ部N2が形成される。
【0098】
本実施の形態では、普通紙モードでは第1用紙供給部50から第1用紙S1(普通紙)を供給させるようにし、厚紙モードでは手差し用紙供給部80から第2用紙S2(厚紙)を供給させるようにする。ここで、普通紙モードでの動作は、実施の形態1で説明した図3に示す手順に従い、厚紙モードでの動作は、実施の形態1で説明した図4に示す手順に従う。ただし、本実施の形態では、図4(g)に示す「供給ロール駆動」が、「手差し供給ロール駆動」となる。
【0099】
<実施の形態4>
図9は、実施の形態4における画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。本実施の形態の画像形成装置1は、実施の形態1で説明した図1に示す画像形成装置1から、ロータリ現像装置14(各色の現像器14Y、14M、14Cおよび14Kを含む)と、転写ドラム21(先端グリッパ22、後端グリッパ23および位相センサ25も)とを取り外した後、ロータリ現像装置14に代えて単色現像器16を、また、転写ドラム21に代えて転写ロール31を、それぞれ取り付けることにより、単色用の画像形成装置としたものである。また、図9に示す構成を有する単色用の画像形成装置1を、上述した手順とは逆の交換作業によって、図1に示す構成を有する多色用の画像形成装置とすることもできる。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0100】
本実施の形態において、単色現像器16は、感光体ドラム11と対向する現像位置において、画像形成装置1の筐体2に固定されている。また、この例において、単色現像器16は、黒のトナー像を現像する。
【0101】
一方、転写ロール31は、感光体ドラム11に対向し且つ感光体ドラム11の回転軸11aの軸方向に沿って伸び、且つ、回転可能に設けられる円柱状の形状を有している。ここで、転写ロール31の外径は、転写ドラム21の外径よりも小さく、且つ、感光体ドラム11の外径よりも小さく設定されている。また、転写ロール31は、上述した転写ドラム21のような用紙Sの把持機能を有しておらず、感光体ドラム11と接触する転写位置Trにおいて、転写位置Trを通過する用紙S(第1用紙S1)にトナー像を転写するようになっている。
【0102】
そして、本実施の形態では、供給ロール53から転写位置Trに至る第1給紙経路61の長さが、この画像形成装置1で使用可能な最大サイズの第1用紙S1の搬送長さよりも小さくなるように、転写位置Trに対する供給ロール53の取り付け位置が予め設定されている。なお、供給ロール53の取り付け位置は、図1に示す多色用の画像形成装置1に設定を変更した場合であっても、不変とする。
これにより、本実施の形態の画像形成装置1では、現像ユニットおよび転写ユニットの交換により、多色機(カラー機)および単色機(白黒機)としての使用が可能になるとともに、画像形成装置1の小型化を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0103】
1…画像形成装置、10…画像形成部、11…感光体ドラム、12…帯電装置、13…露光装置、14…ロータリ現像装置、15…清掃装置、20…転写部、21…転写ドラム、22…先端グリッパ、23…後端グリッパ、40…定着部、50…用紙供給部、51…用紙収容部、52…取り出しロール、53…供給ロール、61…第1給紙経路、62…第2給紙経路、63…回転経路、64…排紙経路、70…第2用紙供給部、80…手差し用紙供給部、100…制御部、Tr…転写位置、S…用紙、S1…第1用紙、S2…第2用紙、P1…第1給紙位置、P2…第2給紙位置、N1…第1供給ニップ部、N2…第2供給ニップ部、Pa…第1供給位置、Pb…第2供給位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配置され、外周面に画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に対向して回転可能に配置され、当該像保持体との間に挟み込んだ記録材に対し、当該像保持体に保持された画像を転写する転写部材と、
第1の坪量を有する第1の記録材を、前記転写部材の外周面のうち前記像保持体と当該転写部材とが対向する転写位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる第1の位置に向けて供給し、当該第1の坪量よりも坪量が大きい第2の坪量を有する第2の記録材を、当該転写部材の外周面のうち当該第1の位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる第2の位置に向けて供給する供給手段と、
前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記第1の記録材または前記第2の記録材を、当該転写部材の外周面に保持させる保持手段と
を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記第1の記録材を、前記第1の位置において当該転写部材の外周面に保持させ、当該供給手段によって当該転写部材に供給される前記第2の記録材を、前記第2の位置において当該転写部材の外周面に保持させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記保持手段は、
前記第1の位置において前記第1の記録材の搬送方向先端側を保持するとともに、前記第2の位置において前記第2の記録材の搬送方向先端側を保持する先端側保持部材と、
前記先端側保持部材によって搬送方向先端側が保持された前記第1の記録材または前記第2の記録材の搬送方向後端側を保持する後端側保持部材と
を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記供給手段による前記第1の記録材および前記第2の記録材の搬送速度が、前記転写部材による当該第1の記録材および当該第2の記録材の搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写位置と前記転写部材の回転中心と前記第1の位置との成す角度が90°未満であり、当該転写位置と当該転写部材の回転中心と前記第2の位置との成す角度が90°以上且つ360°未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写位置における前記第1の記録材の搬送方向と前記第1の位置における当該第1の記録材の搬送方向との成す角度が90°未満であり、当該転写位置における前記第2の記録材の搬送方向と前記第2の位置における当該第2の記録材の搬送方向との成す角度が90°以上且つ360°未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
回転可能に配置され、外周面に画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に対向して回転可能に配置され、当該像保持体との間に挟み込んだ記録材に対し、当該像保持体に保持された画像を転写する転写部材と、
前記像保持体と前記転写部材とが対向する転写位置よりも当該転写部材の回転方向上流側となる当該転写部材の外周面に向けて、前記記録材のコシが強くなるほど当該転写部材の外周面上における前記転写位置からの距離が遠くなるように当該記録材を供給する供給手段と、
前記供給手段によって前記転写部材に供給される前記記録材を、当該転写部材の外周面に保持させる保持手段と
を含む画像形成装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記記録材を挟み込んで搬送することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記供給手段による前記記録材の搬送速度が、前記転写部材による当該記録材の搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173392(P2012−173392A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33128(P2011−33128)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】