説明

画像形成装置

【課題】 歯車の寸法バラツキが発生した場合であっても、画像形成不良の発生を抑制する。
【解決手段】 第1ドラム特定位置△が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯○が第1ドラム歯車A1と噛み合い、かつ、第2ドラム特定位置△が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯○が第2ドラム歯車A2と噛み合い、さらに、第3ドラム特定位置△が転写位置に位置する時に、第2駆動特定歯○が第3ドラム歯車A3と噛み合い、かつ、第4ドラム特定位置△が転写位置に位置する時に、第2駆動特定歯○が第4ドラム歯車A4と噛み合う。第1ドラム歯車A1の基準歯が転写位置に位置する時には、第2ドラム歯車A2の基準歯は転写位置から第1ズレ角だけずれた状態となり、第3ドラム歯車A3の基準歯は転写位置から第2ズレ角だけずれた状態となり、第4ドラム歯車A4の基準歯は転写位置から第3ズレ角だけずれ状態となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙や転写ベルト等の被転写体に現像剤像を転写して画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の感光ドラムが被転写体の移動方向に沿って配置されたタンデム方式の画像形成装置においては、被転写体に複数の現像剤像を重ね合わせるので、複数の感光ドラムの周速が転写時に一致するように、これらの感光ドラムを同期させながら回転させている。
【0003】
ここで仮に、各感光ドラムの転写時の周速が不一致等であると、被転写体に対する現像剤像の転写位置が相違してしまい、いわゆる「色ずれ(印刷ずれ)」等の画像形成不良が発生し、形成される画像の品質が低下してしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に記載の発明では、複数の感光ドラムそれぞれに設けられたドラム歯車を、中間歯車を介して1つの電動モータにて駆動することにより、各感光ドラムへの駆動力の伝達誤差を、複数の感光ドラムを複数の電動モータで駆動する場合に比べて低減しての画像形成不良の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−186155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の歯車を介して電動モータの駆動力がドラム歯車に伝達される場合には、それら歯車の寸法バラツキによっても画像形成不良が発生する。
すなわち、(a)歯車の基準ピッチ円が真円とならず、基準ピッチ円の半径寸法が歯車の部位によって異なると、角速度が同一であっても周速が変動する。(b)基準ピッチ(隣り合う歯間の寸法)が歯車の部位によって異なると、角速度及び基準ピッチ円の半径寸法が同一であっても、この歯車に噛み合って駆動力を受ける従動側の歯車の周速が変動する。
【0007】
上記点に鑑み、本発明は、歯車の寸法バラツキが発生した場合であっても、画像形成不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、現像剤像を被転写体に転写することにより、被転写体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、被転写体に転写される現像剤像を担持する第1感光ドラム(31)と、被転写体に転写される現像剤像を担持するとともに、第1感光ドラム(31)に対して被転写体の移動方向前進側にずれた位置に配設され、かつ、第1感光ドラム(31)と同一の直径寸法を有する第2感光ドラム(32)と、第1感光ドラム(31)に対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、第1感光ドラム(31)の外周面を露光して静電潜像を形成する第1露光手段(4K)と、第2感光ドラム(32)に対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、第2感光ドラム(32)の外周面を露光して静電潜像を形成する第2露光手段(4Y)と、第1感光ドラム(31)に現像剤を供給して第1感光ドラム(31)に形成された静電潜像を現像する第1現像手段(3D)と、第2感光ドラム(32)に現像剤を供給して第2感光ドラム(32)に形成された静電潜像を現像する第2現像手段(3D)と、第1感光ドラム(31)に形成された現像剤像を予め設定された転写位置で被転写体に転写させる第1転写手段(8K)と、第2感光ドラム(32)に形成された現像剤像を予め設定された転写位置で被転写体に転写させる第2転写手段(8Y)と、第1感光ドラム(31)に回転力を付与する第1ドラム歯車(A1)と、第2感光ドラム(32)に回転力を付与する第2ドラム歯車(A2)と、第1ドラム歯車(A1)及び第2ドラム歯車(A2)と噛み合って、第1ドラム歯車(A1)及び第2ドラム歯車(A2)に回転力を付与する第1駆動歯車(B1)とを備えている。
【0009】
そして、本発明では、第1ドラム特定位置(Pd1)が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯(T1)が第1ドラム歯車(A1)と噛み合い、かつ、第2ドラム特定位置(Pd2)が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯(T1)が第2ドラム歯車(A2)と噛み合うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、第1感光ドラム(31)の外周面のうち任意に選択された特定の位置を第1ドラム特定位置(Pd1)と呼び、第1ドラム特定位置(Pd1)が露光位置に位置する時に、第1ドラム歯車(A1)と噛み合っている第1駆動歯車(B1)の歯を第1駆動特定歯(T1)と呼び、第2感光ドラム(32)の外周面のうち、第1駆動特定歯(T1)が第2ドラム歯車(A2)に噛み合った時に露光位置にある部位を第2ドラム特定位置(Pd2)と呼ぶものとする。
【0011】
これにより、本発明では、仮に、第1駆動歯車(B1)に寸法バラツキが生じている場合であっても、露光位置及び転写位置における第1ドラム特定位置(Pd1)の周速と、露光位置及び転写位置における第2ドラム特定位置(Pd2)の周速とは同一の周速となる。したがって、露光時の周速と転写時の周速が異なることに起因する画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0012】
因みに、仮に、露光時の周速と転写時の周速が大きく異なると、被転写体に形成される画像は、本来の画像に対して被転写体の移動方向に伸張又は収縮した画像となる。
ところで、歯車に寸法バラツキがあると、前述したように、一定角速度で回転させても、歯車の部位によって周速が変動するので、回転する歯車に対して静止した特定の位置で当該歯車の周速を計測すると、1回転を1周期として、周速は周期的に変動する。
【0013】
これに対して、本発明では、第1ドラム歯車(A1)の基準歯が転写位置に位置する時に、回転方向前進向きを正の向きとしたとき、第2ドラム歯車(A2)の基準歯が転写位置から第1ズレ角だけずれているように構成されていることを特徴としている。
【0014】
ここで、ズレ角の単位は、「ラジアン(rad)」であり、第1ドラム歯車(A1)に形成された複数の歯のうち、任意に選択された基準となる歯を基準歯と呼び、第2ドラム歯車(A2)に形成された複数の歯のうち、第1ドラム歯車(A1)の基準歯に対応する位置の歯を第2ドラム歯車(A2)の基準歯と呼び、第1感光ドラム(31)の周長(L1)から第1、2感光ドラム(31、32)軸間寸法(P1)を減じた値を第1感光ドラム(31)の周長(L1)で除した平面角を第1ズレ角と呼ぶものとする。
【0015】
これにより、本発明では、仮に、第1ドラム歯車(A1)及び第2ドラム歯車(A2)に寸法バラツキが生じていた場合であっても、第1ドラム歯車(A1)の周速変動と第2ドラム歯車(A2)の周速変動とが同期(一致)し、第1ドラム歯車(A1)の周速に対する第2ドラム歯車(A2)の周速の相対的な相違量を小さくすることができる。
【0016】
したがって、本発明では、露光時及び転写時における第1感光ドラム(31)と第2感光ドラム(32)の周速差を小さくすることができるので、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0017】
以上に説明したように、本発明では、露光時と転写時との周速変動を一致させ、かつ、第1ドラム歯車(A1)の周速変動と第2ドラム歯車(A2)の周速変動とを一致させるので、仮に第1駆動歯車(B1)、及び第1、2ドラム歯車(A1、A2)に寸法バラツキが生じている場合であっても、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0018】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構の正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構の上面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る歯車(ドラム歯車A)の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るドラム歯車Aの組み付け状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る歯車伝達機構を示す図である。
【図13】(a)及び(b)は、感光ドラム3Aとドラム歯車Aと連結する連結機構の作動を示す図である。
【図14】(a)〜(c)は歯車伝達機構の作動を示す図である。
【図15】(a)〜(c)は歯車伝達機構の作動を示す図である。
【図16】(a)〜(b)は歯車伝達機構の作動を示す図である。
【図17】(a)は歯車の周速変動特性を示すグラフであり、(b)は歯車の正面図である。
【図18】本発明の実施形態に係る画像形成装置の特徴を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態は、本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用したものであり、以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.画像形成装置の概略構成
画像形成装置1は、図1に示すように、画像形成部2及び給紙装置10等から構成されており、画像形成部2は、用紙やOHPシート等(以下、用紙という。)に画像を形成する画像形成手段であり、給紙装置10は、画像形成部2に用紙を送り出す給紙手段である。
【0021】
また、本実施形態に係る画像形成部2は、プロセスカートリッジ3、露光器4及び定着器5等からなる画像形成手段であり、複数個(本実施形態では、4個)のプロセスカートリッジ3K〜3Cは、色毎(本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンダ及びシアン毎)に設けられ、かつ、被転写体である用紙の搬送方向に沿って離散的に配設されている。
【0022】
なお、各プロセスカートリッジ3K〜3Cには、現像剤像が担持される感光ドラム3A、感光ドラム3Aを帯電させる帯電器3B、感光ドラム3Aに現像剤を供給する現像ローラ3D等が収納されている。露光器4は、感光ドラム3Aの軸方向に沿って並べられた多数個のLEDからなる露光手段であり、本実施形態では、プロセスカートリッジ3K〜3C毎に露光器4K〜4Cが設けられている。
【0023】
そして、給紙装置10から画像形成部2に向けて搬出された用紙は、画像形成部2の入口側に設けられた一対のレジストローラ6まで搬送され、この一対のレジストローラ6にて斜行が矯正された後、所定のタイミングで画像形成部2に向けて送り出される。
【0024】
一方、帯電した各感光ドラム3Aは、各露光器4にて露光されてその外周面に静電潜像が形成された後、各現像ローラ3Dにより現像剤が各感光ドラム3Aに供給されて静電潜像が現像され、各感光ドラム3Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0025】
このとき、用紙を搬送する転写ベルト7を挟んで各感光ドラム3Aと反対側に配設された各転写ローラ8K〜8Cには、現像剤と逆極性を有する電荷が印加されているため、各感光ドラム3Aに担持されている現像剤像が用紙に直接転写され、各色の現像剤像は用紙上で直接的に重ね合わせられる。
【0026】
その後、用紙に転写された現像剤は、定着器5にて加熱されて用紙に定着し、画像形成が終了した用紙は、その搬送方向が上方側に転向された後、画像形成装置1の上端面側に設けられた排紙トレイ9に排出される。
【0027】
2.感光ドラムの駆動系
2.1.駆動系の概要
本実施形態では、上述したように、色毎に設けられた4つの感光ドラム3Aが用紙(転写ベルト7)の移動方向に沿って直列に配設されているので、用紙(転写ベルト7)の移動に連動して4つの感光ドラム3Aを正確に同期して回転させる必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、図2及び図3に示すように、1つの駆動源(電動モータ)11で発生した回転力を複数の歯車A1〜A4、B1〜B2、C1〜C2、D1からなる歯車伝達機構にて各感光ドラム3Aに分配付与することにより、4つの感光ドラム3Aを機械的に同期させて回転させている。
【0029】
2.2.各歯車及び用語の定義等
<各歯車の定義(図2参照)>
歯車A1(以下、第1ドラム歯車A1という。)は、プロセスカートリッジ3Kの感光ドラム3A(以下、第1感光ドラム31という。)の回転軸に連結され、第1感光ドラム31と一体的に回転して第1感光ドラム31に回転力を付与する歯車である。
【0030】
歯車A2(以下、第2ドラム歯車A2という。)は、プロセスカートリッジ3Yの感光ドラム3A(以下、第2感光ドラム32という。)の回転軸に連結され、第2感光ドラム32と一体的に回転して第2感光ドラム32に回転力を付与する歯車である。
【0031】
歯車A3(以下、第3ドラム歯車A3という。)は、プロセスカートリッジ3Mの感光ドラム3A(以下、第3感光ドラム33という。)の回転軸に連結され、第2感光ドラム32と一体的に回転して第3感光ドラム33に回転力を付与する歯車である。
【0032】
歯車A4(以下、第4ドラム歯車A4という。)は、プロセスカートリッジ3Cの感光ドラム3A(以下、第4感光ドラム34という。)の回転軸に連結され、第4感光ドラム34と一体的に回転して第4感光ドラム34に回転力を付与する歯車である。
【0033】
歯車B1(以下、第1駆動歯車B1という。)は、第1ドラム歯車A1及び第2ドラム歯車A2と噛み合って、第1ドラム歯車A1及び第2ドラム歯車A2に回転力を分配付与す歯車であり、歯車B2(以下、第2駆動歯車B2という。)は、第3ドラム歯車A3及び第4ドラム歯車A4と噛み合って、第3ドラム歯車A3及び第4ドラム歯車A4に回転力を分配付与する歯車である。
【0034】
歯車B3(以下、第1伝達歯車B3という。)は、第1駆動歯車B1と同軸上に配置されて第1駆動歯車B1と一体化された歯車であり、歯車B4(以下、第2伝達歯車B4という。)は、第2駆動歯車B2と同軸上に配置されて第2駆動歯車B2と一体化された歯車である。
【0035】
歯車C1(以下、第1中間歯車C1という。)は、第1伝達歯車B3と噛み合って第1駆動歯車B1に回転力を付与する歯車であり、歯車C2(以下、第2中間歯車C2という。)は、第2伝達歯車B4と噛み合って第2駆動歯車B2に回転力を付与する歯車である。
【0036】
歯車D1(以下、分配歯車D1という。)は、第1中間歯車C1及び第2中間歯車C2と噛み合って駆動源11から伝達されてきた回転力を第1駆動歯車B1側と第2駆動歯車B2側とに分配付与する歯車であり、この分配歯車D1は、駆動源11のドライブシャフト11Aと噛み合っている。
【0037】
なお、以下、第1〜4ドラム歯車A1〜A4を総称する場合には「ドラム歯車A」と記し、4つの感光ドラムを総称する場合には「感光ドラム3A」と記し、第1、2駆動歯車B1、B2を総称する場合には「駆動歯車B」と記し、第1、2中間歯車C1、C2を総称する場合には「中間歯車C」と記す。
【0038】
また、歯車A1〜A4、B1〜B2、C1〜C2、D1は、図3に示すように、歯筋方向が回転軸方向に対して傾いたヘリカル歯車であり、特に、第1〜4ドラム歯車A1〜A4は、同一の金型にて成形された樹脂成形品である。
【0039】
そして、第1〜4ドラム歯車A1〜A4の側面には、図4に示すように、それらの外周に形成された複数の歯のうち基準となる歯(以下、基準歯という。)を示す識別印Mo(図4の△印)が設けられており、この識別印Moは、第1〜4ドラム歯車A1〜A4の成形と同時に歯車成形用金型にて形成される。
【0040】
因みに、第1駆動歯車B1(第1伝達歯車B3を含む。)と第2駆動歯車B2(第2伝達歯車B4を含む。)とは同一形状であるので、これらも同一金型にて成形されている。同様に、第1中間歯車C1と第2中間歯車C2とは同一形状であるので、これらも同一金型にて成形されている。
【0041】
なお、4つの感光ドラム31〜34の直径寸法Dは同一であり、かつ、各感光ドラム31〜34とこれに対応するドラム歯車A1〜A4は同一の角速度で回転するものとする。
<用語等の定義>
「基準歯」
基準歯とは、外周に形成された複数の歯のうち任意に選択された1つの歯(=歯の山部又は谷部)を意図するものであって、特別な技術的意義を有するものではない。
【0042】
しかし、第1〜4ドラム歯車A1〜A4は同一の金型にて成形され、第1〜4ドラム歯車A1〜A4は合同とみなすことができるので、基準歯(識別印Mo)から回転方向k番目の歯の形状、k番目の歯における隣り合う歯間の寸法、及び回転中心から距離等は、全てのドラム歯車A1〜A4において同一とみなすことができる。
【0043】
すなわち、例えば、第1ドラム歯車A1において、基準歯(識別印Mo)からk番目の基準ピッチが設計上の基準ピッチと対してPeだけ異なっていた場合には、第2〜4ドラム歯車A2〜A4においても、k番目の基準ピッチが設計上の基準ピッチと対してPeだけ異なった形状となる。
【0044】
「第1ドラム特定位置」
第1ドラム特定位置とは、第1感光ドラム31の外周面のうち任意に選択された特定の位置をいう。なお、本実施形態では、第1感光ドラム31と第1ドラム歯車A1とは一体的に回転するので、以下、第1感光ドラム31の外周面のうち識別印Moに対応する部位を第1ドラム特定位置Pd1として考える(図5参照)。
【0045】
「第1駆動特定歯」
第1駆動特定歯T1とは、第1ドラム特定位置Pd1(本実施形態では、第1ドラム歯車A1の識別印Mo)が露光位置に位置する時に、第1ドラム歯車A1と噛み合っている第1駆動歯車B1の歯(=歯の山部又は谷部)をいう。
【0046】
なお、図5では、「○」に対応する位置が第1駆動特定歯T1となる。因みに、識別印Mo(△)を除き、「○」や以下の「□」、「*」、「☆」、「◇」及び「◎」といった記号は実際の歯車には設けられておらず、説明の理解を容易にするために、便宜上、図面に付したものである。
【0047】
ここで、露光位置とは、露光器4から発せられる光の光軸と感光ドラム3Aの外周とが交わる位置をいい、例えば第1感光ドラム31においては、露光器4Kの光軸と第1感光ドラム31の外周を示す円との交点となる。また、転写位置とは、感光ドラム3Aに担持されている現像剤像を用紙等の被転写体に転写させる位置をいう。なお、図5〜図8等においては、感光ドラム7A(ドラム歯車A)の上端が露光位置であり、感光ドラム7A(ドラム歯車A)の下端が転写位置である。
【0048】
「第2ドラム特定位置」
第2ドラム特定位置Pd2とは、第2感光ドラム32の外周面のうち、第1駆動特定歯T1が第2ドラム歯車A2に噛み合った時に露光位置にある部位をいう。具体的には、図6に示すように、「□」の位置に対応する第2感光ドラム32の外周面の位置が第2ドラム特定位置Pd2となる。
【0049】
「第3ドラム特定位置」
第3ドラム特定位置Pd3とは、第1ドラム特定位置Pd1と同様に、第3感光ドラム33の外周面のうち任意に選択された特定の位置をいう。なお、本実施形態では、第3感光ドラム33と第3ドラム歯車A3とは一体的に回転するので、図7に示すように、第3感光ドラム33の外周面のうち識別印Moに対応する部位を第3ドラム特定位置Pd3とする。
【0050】
「第2駆動特定歯」
第2駆動特定歯T2とは、第3ドラム特定位置Pd3が露光位置に位置する時に、第3ドラム歯車A3と噛み合っている第2駆動歯車B2の歯(=歯の山部又は谷部)をいう。なお、図7では、「○」に対応する位置が第2駆動特定歯T2となる。
【0051】
「第4ドラム特定位置」
第4ドラム特定位置とは、第4感光ドラム34の外周面のうち、第2駆動特定歯T2が第4ドラム歯車A4に噛み合った時に露光位置にある部位をいう。具体的には、図8に示すように、「□」の位置に対応する第4感光ドラム34の外周面の位置が第4ドラム特定位置Pd4となる。
【0052】
「第1ズレ角」
第1ズレ角とは、第1感光ドラム31の周長L1(=π・D)から第1、2感光ドラム31、32軸間寸法P1(図9参照)を減じた値を第1感光ドラム31の周長L1で除した平面角(=(L1−P1)/L1)をいう。なお、角度の単位はラジアンである。
【0053】
「第2ズレ角」
第2ズレ角とは、第1感光ドラム31の周長L1から第1、3感光ドラム31、33軸間寸法P2(図9参照)を減じた値を第1感光ドラム31の周長L1で除した平面角(=(L1−P2)/L1)をいう。なお、角度の単位はラジアンである。
【0054】
「第3ズレ角」
第3ズレ角とは、第1感光ドラム31の周長L1から第1、4感光ドラム31、34軸間寸法P3(図9参照)を減じた値を第1感光ドラム31の周長L1で除した平面角(=(L1−P3)/L1)をいう。なお、角度の単位はラジアンである。
【0055】
2.3.歯車の配置(歯車の位相関係)
図9に示すように、第1ドラム歯車A1の基準歯(図9では、第1ドラム歯車A1の「△」に対応する歯)が転写位置に位置する時には、第2ドラム歯車A2の基準歯(図9では、第2ドラム歯車A2の「△」に対応する歯)は、転写位置から第1ズレ角(=(L1−P1)/L1)だけずれた状態となる。但し、回転方向前進向き(図9の歯車内に記載された矢印の向き)を正の向きとする。
【0056】
このとき、本実施形態では、L1>P1であるので、第1ズレ角は、回転方向前進向き(正の向き)に図った角度となる。
また、第1ドラム歯車A1の基準歯が転写位置に位置する時には、第3ドラム歯車A3の基準歯(図9では、第3ドラム歯車A3の「△」に対応する歯)は転写位置から第2ズレ角(=(L1−P2)/L1)だけずれた状態となり、第4ドラム歯車A4の基準歯(図9では、第4ドラム歯車A4の「△」に対応する歯)は転写位置から第3ズレ角だけずれた状態となる。
【0057】
なお、本実施形態では、L1<P2、L1<P3であるので、第2ズレ角及び第3ズレ角は、回転方向後退向き(負の向き)に図った角度となる。
また、第1ドラム特定位置Pd1(本実施形態では、第1ドラム歯車A1の「△」に対応する位置)が転写位置に位置する時には、第1駆動特定歯T1が第1ドラム歯車A1と噛み合い(図8参照)、かつ、第2ドラム特定位置Pd2(第2ドラム歯車A2の「□」で示す位置に対応する位置)が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯T1が第2ドラム歯車A2と噛み合う(図10参照)。
【0058】
同様に、第3ドラム特定位置Pd3(本実施形態では、第3ドラム歯車A3の「△」に対応する位置)が転写位置に位置する時には、第2駆動特定歯T2が第3ドラム歯車A3と噛み合い(図11参照)、かつ、第4ドラム特定位置Pd4(第4ドラム歯車A4の「□」で示す位置に対応する位置)が転写位置に位置する時に、第2駆動特定歯T2が第4ドラム歯車A4と噛み合う(図12参照)。
【0059】
また、本実施形態では、図2に示すように、第1ドラム歯車A1の回転中心及び第1駆動歯車B1の回転中心を通る仮想線と第2ドラム歯車A2の回転中心及び第1駆動歯車B1の回転中心を通る仮想線とのなす角θ1(以下、この角を駆動角θ1という。)は、第3ドラム歯車A3の回転中心及び第2駆動歯車B2の回転中心を通る仮想線と第4ドラム歯車A4の回転中心及び第2駆動歯車B2の回転中心を通る仮想線とのなす角θ3と等しくなるように設定されている。
【0060】
さらに、分配歯車D1の回転中心及び第1中間歯車C1の回転中心を通る仮想線と分配歯車D1の回転中心及び第2中間歯車C2の回転中心を通る仮想線とのなす角θ2(以下、この角を伝達角θ2という。)は、駆動角θ1の2倍となり、かつ、駆動角θ1は、π/2ラジアン以上となるように設定されている。
【0061】
2.4.感光ドラムとドラム歯車との連結構造
各感光ドラム31〜34とこれらに対応するドラム歯車A1〜A4とは、図13(a)に示すように、ドラム歯車A1〜A4の回転軸A5と一体的に回転するとともに、回転軸A5に対してその軸方向に変位可能なジョイントA6により連結されている。
【0062】
すなわち、ジョイントA6のうち感光ドラム31〜34側には、感光ドラム31〜34に設けられた被係合部A7と係合する係合部A8が設けられている。
そして、被係合部A7と係合部A8とが係合した状態では、図13(a)に示すように、各ドラム歯車A1〜A4とこれに対応する感光ドラム31〜34とは一体的に回転し、一方、被係合部A7と係合部A8とが離間した状態では、図13(b)に示すように、ドラム歯車A1〜A4と感光ドラム31〜34とが分離した状態となる。
【0063】
また、ジョイントA6は、プロセスカートリッジ3K〜3Cを装置本体から取り外すべく、プロセスカートリッジ3K〜3Cを覆う開閉カバー1A(図1参照)が開かれると、これに連動してジョイントA6がドラム歯車A1〜A4側に変位し、被係合部A7と係合部A8とが離間する。これとは逆に、開閉カバー1Aが閉じられると、これに連動してジョイントA6が感光ドラム31〜34側に変位し、被係合部A7と係合部A8とが係合する。
【0064】
2.5.駆動系の作動
本実施形態では、露光位置と転写位置とは約πラジアンずれており、かつ、ドラム歯車Aの歯数は駆動歯車Bの歯数の2倍であり、駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1の歯数は同一であるため、第1〜3ドラム特定位置Pd1〜Pd4が露光位置から転写位置まで回転すると、ドラム歯車A以外の歯車は1回転する。
【0065】
つまり、各感光ドラム7Aが露光されて現像された後、その感光ドラム7Aに担持された現像剤像が感光ドラム7Aから用紙に転写されるまでにドラム歯車A以外の歯車が1回転するように、用紙(転写ベルト7)の移動方向上流側の感光ドラム7Aから順次、露光・転写が実行されていく。
【0066】
具体的には、用紙の移動方向先端が、第1感光ドラム31の転写位置に対して所定の位置に到達した時に第1感光ドラム31への露光が開始される(図14(a)参照)。そして、用紙が第1感光ドラム31の転写位置に到達した時から第1感光ドラム31についての転写が開始された後(図14(b)参照)、用紙が第2感光ドラム32の転写位置に対して所定の位置に到達した時に第2感光ドラム32への露光が開始される(図14(c)参照)。
【0067】
次に、用紙が第2感光ドラム32の転写位置に到達した時から第2感光ドラム32についての転写が開始された後(図15(a)参照)、用紙が第3感光ドラム33の転写位置に対して所定の位置に到達した時に第3感光ドラム33への露光が開始され(図15(b)参照)、用紙が第3感光ドラム33の転写位置に到達した時から第3感光ドラム33についての転写が開始される(図15(c)参照)。
【0068】
そして、用紙が第4感光ドラム34の転写位置に対して所定の位置に到達した時に第4感光ドラム34への露光が開始され(図16(a)参照)、用紙が第4感光ドラム34の転写位置に到達した時から第4感光ドラム34についての転写が開始される(図16(b)参照)。
【0069】
3.本実施形態に係る画像形成装置(特に、感光ドラムの駆動系)の特徴
「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、(a)歯車の基準ピッチ円が真円とならず、基準ピッチ円の半径寸法が歯車の部位によって異なると、角速度が同一であっても、この歯車の外周に形成された各歯の周速が変動する。(b)基準ピッチ隣り合う歯間の寸法が歯車の部位によって異なると、角速度及び基準ピッチ円の半径寸法が同一であっても、この歯車の外周に形成された各歯の周速が変動する。
【0070】
つまり、各歯の周速は、設計上の周速(以下、基準周速という。)に対して、例えば図17(a)に示すようにばらつく。以下、この周速の変動ばらつきを「周速変動特性」と呼ぶ。
【0071】
そして、本実施形態では、第1〜4ドラム歯車A1〜A4は同一金型で成形されていることから、識別印Mo(基準歯)の位置も含めて第1〜4ドラム歯車A1〜A4は合同であるとみなしてよいので、各歯車A1〜A4の周速変動特性は全て同一であるとみなすことができる。
【0072】
同様に、第1駆動歯車B1(第1伝達歯車B3を含む。)の周速変動特性と第2駆動歯車B2(第2伝達歯車B4を含む。)の周速変動特性とは同一であるとみなすことができ、第1中間歯車C1の周速変動特性と第2中間歯車C2とは同一であるとみなすことができる。
【0073】
ところで、露光時の感光ドラム3Aの周速と転写時の感光ドラム3Aの周速が大きく異なると、用紙に形成される画像は、本来の画像に対して用紙の移動方向に伸張又は収縮した画像となる。そして、感光ドラム3Aの周速変動要因として主な原因として、駆動歯車Bの寸法バラツキ(周速変動特性)を挙げることができる。
【0074】
これに対して、本実施形態では、図14〜図16から明らかなように、第1ドラム特定位置Pd1が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯T1が第1ドラム歯車A1と噛み合い、かつ、第2ドラム特定位置Pd2が転写位置に位置する時に、第1駆動特定歯T1が第2ドラム歯車A2と噛み合うように構成され、さらに、第3ドラム特定位置Pd3が転写位置に位置する時に、第2駆動特定歯T2が第3ドラム歯車A3と噛み合い、かつ、第4ドラム特定位置Pd4が転写位置に位置する時に、第2駆動特定歯T2が第4ドラム歯車A4と噛み合うように構成されていることを特徴としている。
【0075】
加えて、本実施形態では、第1ドラム特定位置Pd1が露光位置に位置する時に、第1駆動特定歯T1が第1ドラム歯車A1と噛み合い、かつ、第2ドラム特定位置Pd2が露光位置に位置する時に、第1駆動特定歯T1が第2ドラム歯車A2と噛み合うように構成され、さらに、第3ドラム特定位置Pd3が露光位置に位置する時に、第2駆動特定歯T2が第3ドラム歯車A3と噛み合い、かつ、第4ドラム特定位置Pd4が露光位置に位置する時に、第2駆動特定歯T2が第4ドラム歯車A4と噛み合うように構成されていることを特徴としている。
【0076】
つまり、本実施形態では、各感光ドラム31〜34が露光位置及び転写位置に位置する時に第1駆動特定歯T1、第2駆動特定歯T2が第1〜4ドラム歯車A1〜A4のうち対応するものと噛み合うように構成されている。
【0077】
このため、第1駆動歯車B1と第2駆動歯車B2とは同一の周速変動特性を有するので、露光時及び転写時において、感光ドラム3A(ドラム歯車A)は同一周速の回転力を駆動歯車Bから付与される。
【0078】
つまり、露光位置及び転写位置における第1ドラム特定位置Pd1の周速と、露光位置及び転写位置における第2ドラム特定位置Pd2の周速とは同一の周速となる。同様に、露光位置及び転写位置における第3ドラム特定位置Pd3の周速と、露光位置及び転写位置における第4ドラム特定位置Pd4の周速とは同一の周速となる。
【0079】
したがって、本実施形態では、駆動歯車Bの寸法バラツキの影響を除去することができるので、駆動歯車Bに寸法バラツキが生じている場合であっても、各感光ドラム7Aにおいて、露光位置での感光ドラム3Aの周速と転写位置での感光ドラム3Aの周速との差を小さくすることができる。したがって、露光時の周速と転写時の周速が異なることに起因する画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0080】
ところで、歯車に寸法バラツキがあると、前述したように、一定角速度で回転させても、歯車の部位によって周速が変動するので、回転する歯車に対して静止した特定の位置で当該歯車の周速を計測すると、1回転を1周期として、周速は周期的に変動する(図17(a)参照)。
【0081】
これに対して、本実施形態では、図9に示すように、第1ドラム歯車A1の基準歯が転写位置に位置する時には、第2ドラム歯車A2の基準歯は転写位置から第1ズレ角だけずれた状態となり、第3ドラム歯車A3の基準歯は転写位置から第2ズレ角だけずれた状態となり、第4ドラム歯車A4の基準歯は転写位置から第3ズレ角だけずれ状態となるように構成している。
【0082】
これにより、本実施形態は、例えば、第1ドラム歯車A1と第2ドラム歯車A2とに着目すると、図18に示すように、第1ドラム歯車A1の周速変動特性の周期と第2ドラム歯車A2の周速変動特性の周期とが同期(一致)するので、第1ドラム歯車A1の周速に対する第2ドラム歯車A2の周速の相対的な相違量を小さくすることができる。
【0083】
同様に、第1ドラム歯車A1の周速変動特性の周期と、第3ドラム歯車A3の周速変動特性の周期及び第4ドラム歯車A4の周速変動特性の周期とが同期(一致)するので、第1ドラム歯車A1の周速に対する第3ドラム歯車A3及び第4ドラム歯車A4の周速の相対的な相違量を小さくすることができる。
【0084】
これにより、本実施形態では、仮に、ドラム歯車Aに寸法バラツキが生じていた場合であっても、各ドラム歯車Aの周速変動特性の周期を同期させることができるので、露光時及び転写時における第1感光ドラム31と、第2感光ドラム32〜第4感光ドラム34の周速差を小さくすることができ、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態では、露光時と転写時との周速変動を一致させ、かつ、第1ドラム歯車A1の周速変動と第2ドラム歯車A2〜第4感光ドラム34の周速変動とを一致させるので、仮にドラム歯車A及び駆動歯車Bに寸法バラツキが生じている場合であっても、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0086】
ところで、「露光時と転写時との周速変動を一致させる」ための具体的な手段として、本実施形態では、各感光ドラム3Aに設定されたドラム特定位置Pd1〜Pd4が露光位置から転写位置まで回転するまでに、対応する駆動歯車Bが整数回(本実施形態では、1回転)だけ回転するように、ドラム歯車A及び駆動歯車Bの歯数等が設定されている。以下、この設定条件を第1設定条件という。
【0087】
また、「第1ドラム歯車A1の周速変動と第2ドラム歯車A2〜第4感光ドラム34の周速変動とを一致させる」ための具体的な手段として、本実施形態では、ドラム歯車Aが1回転するときに、駆動歯車Bが整数回(本実施形態では、2回転)だけ回転するように歯数等が設定されている。以下、この設定条件を第2設定条件という。
【0088】
なお、上記の第1及び2設定条件は、歯数Z、モジュールm及び基準ピッチ円の半径寸法によっては、駆動歯車Bの回転を厳密に整数回転数とすることができない場合があるもののも、少なくともドラム歯車Aの歯数Z1が駆動歯車Bの歯数Z2の整数倍であれば、上記の第1及び2設定条件を満たす構成であるとみなすことができる。
【0089】
また、本実施形態では、伝達角θ2は駆動角θ1の2倍となり、かつ、駆動角θ1は、π/2ラジアン以上となるように設定されているので、図2に示すように、駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1の中心を結ぶラインが「W」字状となる。
【0090】
ところで仮に、駆動角θ1をπ/2ラジアン未満とすると、駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1の中心を結ぶラインが「V」字状となるので、駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1の中心を結ぶラインが「W」字状となるように構成した場合に比べて、歯車A1〜A4、B1〜B2、C1〜C2、D1からなる歯車伝達機構の外形寸法のうち、軸方向と直交する方向(本実施形態では、上下方向)寸法の大型化を招いてしまう。
【0091】
つまり、本実施形態では、駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1の中心を結ぶラインが「W」字状となることから、分配歯車D1の回転中心が中間歯車Cの回転中心よりドラム歯車A側にずれた構成となる。したがって、歯車伝達機構の外形寸法のうち、軸方向と直交する方向(本実施形態では、上下方向)寸法の大型化を抑制できる。
【0092】
因みに、駆動角θ1は、通常、以下の数式1にて決定され、上記したように、Z1>Z2であり、かつ、P1>D(=L1/π)であるので、通常、駆動角θ1は、π/2ラジアン以上となる。
【0093】
θ1=2・[P1−n・L1(Z2/Z1)] 数式1
但し、P1:感光ドラム軸間距離 n:自然数 L1:感光ドラムの周長
Z1:ドラム歯車の歯数 Z2:駆動歯車の歯数
また、本実施形態では、プロセスカートリッジ3を装置本体から取り外す際には、感光ドラム3Aとドラム歯車Aとが離間するので、プロセスカートリッジ3を交換する際に、各ドラム歯車A間の位相が上記した位相(図2及び図9に示す状態)からずれてしまうことがない。したがって、プロセスカートリッジ3を交換しても、これに起因してドラム歯車A等の位相がずれて画像形成不良が発生するといった不具合は発生することはない。
【0094】
また、本実施形態では、ヘリカル歯車にて駆動歯車B、中間歯車C及び分配歯車D1等を構成しているので、複数の歯が同時に噛み合うことになる。このため、歯車に寸法バラツキが生じた場合であっても、歯車同士の遊びが平均化されるので、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0095】
また、図15〜図17において、各歯車に記された「*」、「☆」、「◇」及び「◎」からも明らかなように、伝達歯車Bと中間歯車C1とは常に同じ歯の組み合わせで噛み合い、かつ、中間歯車Cと分配歯車D1とは常に同じ歯の組み合わせで噛み合うとともに、露光時に噛み合う歯の組み合わせと転写時に噛み合う歯の組み合わせとが同一であるので、露光時と転写時との周速変動を一致させることができ、駆動歯車Bや中間歯車C等に寸法バラツキが生じている場合であっても、画像形成不良の発生を抑制することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、歯車伝達機構のうち、主にドラム歯車Aと駆動歯車Bとの関係に着目して本願の発明の特徴を説明したが、その他の歯車(例えば、第1伝達歯車B3と第1中間歯車C1との関係や中間歯車Cと分配歯車D1との関係)にも適用することができる。
【0097】
また、上述の実施形態では、用紙上で複数の現像剤像を重ね合わせるダイレクト方式に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、中間転写ベルトに感光ドラム3Aに担持された現像剤像を転写することにより、中間転写ベルト上で現像剤像を重ね合わせた後、中間転写ベルトに形成された現像剤像を用紙に転写する中間転写方式の画像形成装置にも適用することができる。
【0098】
また、上述の実施形態では、4つの感光ドラム3Aを有する画像形成装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、2つ以上の感光ドラム3Aを有する画像形成装置であれば、本願発明を適用することができる。
【0099】
また、上述の実施形態では、LED方式の露光器4であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザ光を感光ドラム3Aの軸方向に走査する、いわゆるスキャナ方式の露光器であってもよい。
【0100】
また、感光ドラム3Aとドラム歯車Aとの連結機構は、上述の実施形態に示された構成に限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、ヘリカル歯車にて歯車伝達機構を構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば平歯車にて歯車伝達機構を構成してもよい。
【0101】
また、上述の実施形態では、各ドラム歯車Aは感光ドラム3Aの回転軸に連結されて感光ドラム3Aと一体的に回転したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、識別印Moは、第1〜4ドラム歯車A1〜A4の成形と同時に歯車成形用金型にて形成されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ペイント等によって識別印Moを形成装置してもよい。
【0102】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
1…画像形成装置、1A…上面側カバー部、2…画像形成部、
3…プロセスカートリッジ、4…露光器、5…定着器、11…駆動源、
31〜34…感光ドラム、A1〜A4…ドラム歯車、B1〜B2…駆動歯車、
B3〜B4…伝達歯車、C1〜C2…中間歯車、D1…分配歯車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を被転写体に転写することにより、前記被転写体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、
前記被転写体に転写される現像剤像を担持する第1感光ドラムと、
前記被転写体に転写される現像剤像を担持するとともに、前記第1感光ドラムに対して前記被転写体の移動方向前進側にずれた位置に配設され、かつ、前記第1感光ドラムと同一の直径寸法を有する第2感光ドラムと、
前記第1感光ドラムに対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、前記第1感光ドラムの外周面を露光して静電潜像を形成する第1露光手段と、
前記第2感光ドラムに対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、前記第2感光ドラムの外周面を露光して静電潜像を形成する第2露光手段と、
前記第1感光ドラムに現像剤を供給して前記第1感光ドラムに形成された静電潜像を現像する第1現像手段と、
前記第2感光ドラムに現像剤を供給して前記第2感光ドラムに形成された静電潜像を現像する第2現像手段と、
前記第1感光ドラムに形成された現像剤像を予め設定された転写位置で前記被転写体に転写させる第1転写手段と、
前記第2感光ドラムに形成された現像剤像を予め設定された転写位置で前記被転写体に転写させる第2転写手段と、
前記第1感光ドラムに回転力を付与する第1ドラム歯車と、
前記第2感光ドラムに回転力を付与する第2ドラム歯車と、
前記第1ドラム歯車及び前記第2ドラム歯車と噛み合って、前記第1ドラム歯車及び前記第2ドラム歯車に回転力を付与する第1駆動歯車とを備え、
前記第1感光ドラムの外周面のうち任意に選択された特定の位置を第1ドラム特定位置と呼び、
前記第1ドラム特定位置が前記露光位置に位置する時に、前記第1ドラム歯車と噛み合っている前記第1駆動歯車の歯を第1駆動特定歯と呼び、
前記第2感光ドラムの外周面のうち、前記第1駆動特定歯が前記第2ドラム歯車に噛み合った時に前記露光位置にある部位を第2ドラム特定位置と呼ぶとき、
前記第1ドラム特定位置が前記転写位置に位置する時に、前記第1駆動特定歯が前記第1ドラム歯車と噛み合い、かつ、前記第2ドラム特定位置が前記転写位置に位置する時に、前記第1駆動特定歯が前記第2ドラム歯車と噛み合うように構成され、
さらに、前記第1ドラム歯車に形成された複数の歯のうち、任意に選択された基準となる歯を基準歯と呼び、
前記第2ドラム歯車に形成された複数の歯のうち、前記第1ドラム歯車の基準歯に対応する位置の歯を前記第2ドラム歯車の基準歯と呼び、
前記第1感光ドラムの周長から前記第1、2感光ドラム軸間寸法を減じた値を前記第1感光ドラムの周長で除した平面角を第1ズレ角と呼ぶとき、
前記第1ドラム歯車の基準歯が前記転写位置に位置する時に、回転方向前進向きを正の向きとしたとき、前記第2ドラム歯車の基準歯が前記転写位置から前記第1ズレ角だけずれているように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1、2ドラム歯車及び前記第1駆動歯車は、前記第1ドラム特定位置及び前記第2ドラム特定位置が前記露光位置から前記転写位置まで回転するまでに前記第1駆動歯車が整数回だけ回転するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1、2ドラム歯車が1回転するときに、前記第1駆動歯車が整数回だけ回転するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置
【請求項4】
前記被転写体に転写される現像剤像を担持するとともに、前記第2感光ドラムに対して前記被転写体の移動方向前進側にずれた位置に配設され、かつ、前記第1感光ドラムと同一の直径寸法を有する第3感光ドラムと、
前記被転写体に転写される現像剤像を担持するとともに、前記第3感光ドラムに対して前記被転写体の移動方向前進側にずれた位置に配設され、かつ、前記第1感光ドラムと同一の直径寸法を有する第4感光ドラムと、
前記第3感光ドラムに対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、前記第3感光ドラムの外周面を露光して静電潜像を形成する第3露光手段と、
前記第4感光ドラムに対して予め設定された露光位置に光を照射することにより、前記第4感光ドラムの外周面を露光して静電潜像を形成する第4露光手段と、
前記第3感光ドラムに現像剤を供給して前記第3感光ドラムに形成された静電潜像を現像する第3現像手段と、
前記第4感光ドラムに現像剤を供給して前記第4感光ドラムに形成された静電潜像を現像する第4現像手段と、
前記第3感光ドラムに形成された現像剤像を予め設定された転写位置で前記被転写体に転写させる第3転写手段と、
前記第4感光ドラムに形成された現像剤像を予め設定された転写位置で前記被転写体に転写させる第4転写手段と、
前記第3感光ドラムに回転力を付与する第3ドラム歯車と、
前記第4感光ドラムに回転力を付与する第4ドラム歯車と、
前記第3ドラム歯車及び前記第4ドラム歯車と噛み合って、前記第3ドラム歯車及び前記第4ドラム歯車に回転力を付与する第2駆動歯車と、
前記第1駆動歯車及び前記第2駆動歯車に回転力を付与する中間歯車とを備え、
前記第3感光ドラムの外周面のうち任意に選択された特定の位置を第3ドラム特定位置と呼び、
前記第3ドラム特定位置が前記露光位置に位置する時に、前記第3ドラム歯車と噛み合っている前記第2駆動歯車の歯を第2駆動特定歯と呼び、
前記第4感光ドラムの外周面のうち、前記第2駆動特定歯が前記第4ドラム歯車に噛み合った時に前記露光位置にある部位を第4ドラム特定位置と呼ぶとき、
前記第3ドラム特定位置が前記転写位置に位置する時に、前記第2駆動特定歯が前記第3ドラム歯車と噛み合い、かつ、前記第4ドラム特定位置が前記転写位置に位置する時に、前記第2駆動特定歯が前記第4ドラム歯車と噛み合うように構成され、
前記第3ドラム歯車に形成された複数の歯のうち、前記第1ドラム歯車の基準歯に対応する位置の歯を前記第3ドラム歯車の基準歯と呼び、
前記第4ドラム歯車に形成された複数の歯のうち、前記第1ドラム歯車の基準歯に対応する位置の歯を前記第4ドラム歯車の基準歯と呼び、
前記第1感光ドラムの周長から前記第1、3感光ドラム軸間寸法を減じた値を前記第1感光ドラムの周長で除した平面角を第2ズレ角と呼び、
前記第1感光ドラムの周長から前記第1、4感光ドラム軸間寸法を減じた値を前記第1感光ドラムの周長で除した平面角を第3ズレ角と呼ぶとき、
前記第1ドラム歯車の基準歯が前記転写位置に位置する時に、回転方向前進向きを正の向きとしたとき、前記第3ドラム歯車の基準歯は前記転写位置から前記第2ズレ角だけずれ、前記第4ドラム歯車の基準歯は前記転写位置から前記第3ズレ角だけずれるように構成されており、
さらに、前記第1〜4ドラム歯車が1回転するときに、前記第1駆動歯車、前記第2駆動歯車及び前記中間歯車が整数回だけ回転するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第3、4ドラム歯車及び前記第2駆動歯車は、前記第3ドラム特定位置及び前記第4ドラム特定位置が前記露光位置から前記転写位置まで回転するまでに前記第2駆動歯車が整数回だけ回転するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
駆動源から伝達されてきた回転力を前記第1駆動歯車側と前記第2駆動歯車側とに分配する分配歯車とを備え、
前記中間歯車は、前記分配歯車と噛み合って回転力を前記第1駆動歯車に付与する第1中間歯車、及び前記分配歯車と噛み合って回転力を前記第2駆動歯車に付与する第2中間歯車を有して構成され、
前記第1ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線と前記第2ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線とのなす角は、前記第3ドラム歯車の回転中心及び前記第2駆動歯車の回転中心を通る仮想線と前記第4ドラム歯車の回転中心及び前記第2駆動歯車の回転中心を通る仮想線とのなす角と等しく、
さらに、前記分配歯車の回転中心及び前記第1中間歯車の回転中心を通る仮想線と前記分配歯車の回転中心及び前記第2中間歯車の回転中心を通る仮想線とのなす角は、前記第1ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線と前記第2ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線とのなす角の2倍であることを特徴とする請求項4ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線と前記第2ドラム歯車の回転中心及び前記第1駆動歯車の回転中心を通る仮想線とのなす角は、π/2ラジアン以上であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1駆動歯車と同軸上に配置されて前記第1中間歯車と噛み合う第1伝達歯車と、
前記第2駆動歯車と同軸上に配置されて前記第2中間歯車と噛み合う第2伝達歯車とを備え、
前記第1駆動歯車と前記第1伝達歯車とが一体化され、かつ、前記第2駆動歯車と前記第2伝達歯車とが一体化されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載された歯車のうち、いずれかの歯車及びこの歯車に噛み合う歯車は、歯筋方向が回転軸方向に対して傾いたヘリカル歯車であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載されたドラム歯車は、同一の金型にて成形され、
さらに、前記基準歯を示す識別印は、当該ドラム歯車成形と同時に前記金型にて形成されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−189798(P2012−189798A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53154(P2011−53154)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】