説明

画像形成装置

【課題】現像剤の熱劣化を抑制できるとともに、装置全体を上下方向で小型化することができる縦置き型の画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置(レーザプリンタ1)は、記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート収容部(給紙トレイ6)と、この記録シート収容部から搬送される記録シート上に画像を形成する画像形成部8と、この画像形成部8から搬送される記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート排出部(排紙トレイ9)とを備える。そして、記録シートの搬送路は、記録シート収容部の下側から上方に向かって延設され、搬送路の途中に設置される画像形成部8では、少なくとも現像剤担持体を有する現像部(プロセスカートリッジ14)の上方に定着器15が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタなどの画像形成装置として、記録シートを収容する給紙トレイ(記録シート収容部)および排紙トレイ(記録シート排出部)を縦向きにして前後に配置した縦置き型の画像形成装置が従来一般に知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1に記載の画像形成装置では、排紙トレイより高い位置に給紙トレイが配置されており、この給紙トレイの下部から排紙トレイの下部に向かう記録シートの搬送路が略U字状に屈曲している。そして、記録シート上に画像を形成する画像形成部が給紙トレイの下部から下方に向かって延設された記録シートの搬送路の途中に設置されている。詳しくは、画像形成部は、トナーカートリッジや現像ローラなどを有する現像部や、用紙に転写された現像剤を熱定着させる定着器を備えており、前記搬送路上において、定着器が現像部よりも下側に配置された構造となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−302889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、現像部の下方に定着器が配置されるため、定着器で発生する熱が上昇することにより、現像部が加熱されて現像剤が熱劣化するおそれがあった。また、特許文献1に記載の画像形成装置では、給紙トレイの下部から下方に向かって搬送路が延設される。言い換えると、略U字形状の搬送路の往路の上下方向における寸法が、復路の上下方向における寸法よりも大きく構成されている。この結果、装置の給紙トレイ近傍の上下方向寸法が増大して給紙トレイが高い位置に配されることとなり、給紙作業がしづらくなるなどして、画像形成装置の操作性が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、現像剤の熱劣化を抑制できるとともに、装置の記録シート収容部近傍の上下方向の寸法が増大することを抑制し、操作性のより高い縦置き型の画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する手段として、本発明に係る画像形成装置は、記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート収容部と、この記録シート収容部から搬送される記録シート上に画像を形成する画像形成部と、この画像形成部から搬送される記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート排出部とを備え、記録シートの搬送路は、記録シート収容部の下側から上方に向かって延設され、搬送路の途中に設置される画像形成部では、少なくとも現像剤担持体を有する現像部の上方に定着器が配置されていることを特徴とする。つまり、搬送路は下向きに突出した略U字形状に形成され、往路の上下方向における寸法が、復路の上下方向における寸法よりも小さく構成されている。
【0008】
本発明に係る画像形成装置では、少なくとも現像剤担持体を有する現像部の上方に定着器が配置されているため、定着器で発生する熱が上昇しても現像部が加熱されることがなく、現像剤の熱劣化が抑制される。また、搬送路が、記録シート収容部の下側から上方に向かって延設されるので、従来のように搬送路が記録シート収容部の下部から下方に向か
って延設される構造に比べ、装置の記録シート収容部近傍の上下方向寸法が増大することが抑制されてユーザが給紙作業をしやすくなるので、装置の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像形成装置によれば、定着器で発生する熱の上昇による現像剤の熱劣化を抑制することができるとともに、装置全体を上下方向に小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成装置の最良の実施形態を図面を参照しつつ説明する。ここで、図1は一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタの外観を示す斜視図、図2は図1に示したレーザプリンタからトナーカートリッジが取り外された状態を示す斜視図、図3は図1に示したレーザプリンタの縦断面図であり、(a)はトナーカートリッジの装着状態を示し、(b)はトナーカートリッジが取り外し可能となった状態を示す。図4は図3に示したプロセスカートリッジを示す図であり、(a)は断面図、(b)は図4(a)のX−X断面図であり、図5は本体ケーシングからプロセスカートリッジが取り外された状態を示すレーザプリンタの縦断面図である。図6は、プロセスカートリッジの着脱経路を示すレーザプリンタの縦断面図であり、(a)はプロセスカートリッジの装着開始位置を示し、(b)はプロセスカートリッジの装着途中の位置を示す。図7は、プロセスカートリッジの着脱経路を示すレーザプリンタの縦断面図であり、(a)は図6(b)よりもプロセスカートリッジを奥へ押し込んだときの位置を示し、(b)はプロセスカートリッジの装着完了位置を示す。
【0011】
<レーザプリンタの外観>
一実施形態に係る画像形成装置は、図1および図2に示すように、左右幅に対して前後幅が小さく、かつ、高さの高い外観を呈する縦置き型のレーザプリンタ1として構成されている。このレーザプリンタ1の本体ケーシング2の上部には、トップカバー3が配置され、本体ケーシング2の前側上部には、フロントカバー4が配置されている。そして、本体ケーシング2の前側下部には、後述する画像形成部8を構成するプロセスカートリッジ14やトナーカートリッジ20を着脱するための着脱口5が形成されている。
【0012】
<レーザプリンタの内部構造>
図3(a)に示すように、本体ケーシング2内には、記録シートである用紙(図示省略)を上下方向に立てた状態で収容する記録シート収容部としての給紙トレイ6と、この給紙トレイ6内に収容される用紙を引き出して送り出すフィーダ部7と、フィーダ部7から送り出される用紙上に画像を形成する画像形成部8と、画像形成部8により画像が形成された用紙を引き込んで上下方向に立てた状態で収容する記録シート排出部としての排紙トレイ9などが配設されている。
【0013】
<給紙トレイの構造>
給紙トレイ6は、本体ケーシング2内の後部に着脱自在に装着されて上方に抜出し可能となっている。この給紙トレイ6の上部には、前述したトップカバー3の後端部が回動可能に支持されており、このトップカバー3の前端部を上方に傾動させると、給紙トレイ6の上部(補給口)が開放されるようになっている。そして、この給紙トレイ6内には、その下部前側に形成される供給口6Aに向けて用紙の下端部を押圧する押圧板10が回動可能に支持されている。なお、この供給口6Aに対し、排紙トレイ9の後述する2つの排紙ローラ17,17の間において形成される排出口は、上方に位置している。
【0014】
<フィーダ部の構造>
フィーダ部7は、給紙トレイ6の下部前側の給紙口に近接して配置されている。このフィーダ部7は、給紙トレイ6内に収容された用紙の下端部(搬送方向の先端部)を分離パ
ッド11との間に挟み込んで引き出す分離ローラ12と、分離ローラ12が引き出した用紙の先端部の位置を一旦規制した後に画像形成部8側に向けて用紙を送り出すレジストローラ13などを備えている。このレジストローラ13は、分離ローラ12の直上に配置されており、用紙を画像形成部8側に向けて上方に搬送する。
【0015】
<画像形成部の構成>
画像形成部8は、図1および図2に示した本体ケーシング2の着脱口5から本体ケーシング2内に着脱自在に装着されることで、図3に示す排紙トレイ9の下方に配置されるプロセスカートリッジ14と、予め排紙トレイ9と給紙トレイ6との間の設置空間に設置されることで、プロセスカートリッジ14の上方に配置される定着器15とを少なくとも備えている。
【0016】
<排紙トレイの構造>
排紙トレイ9は、給紙トレイ6との間に定着器15等の設置空間を空けた状態で本体ケーシング2内の前部に配置されている。この排紙トレイ9は、給紙トレイ6の下部より高い位置に底部が設定されており、排紙トレイ9の下方には画像形成部8を構成するプロセスカートリッジ14の設置空間が形成されている。すなわち、排紙トレイ9の下部(底部)は、給紙トレイ6の下部(底部)よりも上方に位置している。
【0017】
排紙トレイ9の下部には、前述したフロントカバー4の下端部が回動可能に支持されており、このフロントカバー4の上端部を前側に傾動させると、排紙トレイ9の前部が開放され、その内部に収容された用紙の取り出しが容易となる。
【0018】
排紙トレイ9の後部の高さ方向の中間部位には、定着器15の上方に向けて凹む凹部16が形成されている。この凹部16の底部には、用紙を排紙トレイ9内に引き込む一対の排紙ローラ17,17が付設されている。そして、本体ケーシング2には、定着器15から一対の排紙ローラ17,17に向けて用紙を案内する用紙ガイド18が形成されている。また、凹部16には、用紙の下端部を支持して前方へ搬送するための搬送ベルト40が、排紙ローラ17,17の前側に隣接するように設けられている。なお、搬送ベルト40の表面には、外側へ突出する複数の突起部が形成されており、これにより、用紙の下端部が良好に支持されて、排紙トレイ9の下側へ搬送されるようになっている。
また、排紙トレイ9の上端には、左右方向の幅が用紙幅(用紙搬送方向に直交する方向の幅)よりも大きな開口9A(図1参照)が形成されている。このため、この開口9Aから用紙を取り出すこともできる。
【0019】
<プロセスカートリッジの構成>
プロセスカートリッジ14は、図4(a)に示すように、カートリッジ本体19に着脱自在に装着される現像剤収容器としてのトナーカートリッジ20と、カートリッジ本体19に予め設置されているトナー供給オーガ21、供給ローラ22、現像ローラ23、感光ドラム24、帯電器25、転写ローラ26などを備えている。
【0020】
<トナーカートリッジの構成>
トナーカートリッジ20は、相対回動することでトナーの供給口を開閉する内シリンダ20Aおよび外シリンダ20Bを有し、この外シリンダ20Bの適所にロゴマーク14A(図1参照)が表示されている。このトナーカートリッジ20は、図3(a)に示すように、現像剤担持体の一例としての現像ローラ23よりも排紙トレイ9側に配置されている。また、トナーカートリッジ20は、アジテータ42の回転軸42Aがフロントカバー4の前面よりも前側に位置するように、カートリッジ本体19に支持されている。
【0021】
このようにトナーカートリッジ20が支持されることにより、トナーカートリッジ20
の大部分が着脱口5(図1参照)から前側(本体ケーシング2の外側)に突出する構成となる。このため、本体ケーシング2内におけるトナーカートリッジ20を配設するためのスペースを抑えることができ、レーザプリンタ1の上下方向の寸法を抑制することができる。この結果、レーザプリンタ1の重心を下方にすることができ、レーザプリンタ1が倒れることをより確実に防止できる。この結果、レーザプリンタ1の操作性がより向上する。
また、トナーカートリッジ20の外側へ露出した部分から熱が効率よく逃がされるので、定着器15の熱の影響でトナーカートリッジ20内のトナーが劣化することをより確実に抑制することができる。
【0022】
また、このトナーカートリッジ20には、図4(b)に示すように、カートリッジ本体19内に形成される現像室DR内へトナーを供給するためのトナー供給口201が一端側に形成されるとともに、現像室DRからトナーをトナーカートリッジ20内へ戻すためのトナー戻し口202が他端側に形成されている。また、トナーカートリッジ20内には、トナーを攪拌するとともに、トナーを一端側へ送るような形状の羽を複数有したアジテータ42が設けられている。
【0023】
<トナーカートリッジの着脱構造>
このようなトナーカートリッジ20は、その両端(左右両側)からアジテータ42の回転軸42A(図3(a)参照)が突出するようになっており、この回転軸42Aは、図2に示すように、プロセスカートリッジ14の適所に形成された案内溝14Bに係合するようになっている。これにより、案内溝14Bによってトナーカートリッジ20がプロセスカートリッジ14に対する所定の位置まで案内されて、その着脱が容易となっている。
【0024】
また、トナーカートリッジ20は、図3(b)に示すように、前記した所定の位置において着脱ハンドル27を図3(a)の状態から前方(手前側)に回動操作することで、カートリッジ本体19から単独で取り外すことが可能となっている。また、図3(a)に示すように、着脱ハンドル27を図3(b)の状態から後方(奥側)に回動操作することで、カートリッジ本体19に装着されるようになっている。そして、この装着状態において、トナーカートリッジ20の適所に表示されたロゴマーク14Aが、レーザプリンタ1の正面側から目視できるようになっている。より詳しくは、図3(a)に示すように、トナーカートリッジ20の装着状態においてはロゴマーク14Aは正面側(前側)を向いており、正面側から目視しやすいが、図3(b)に示すように、トナーカートリッジ20が装着状態から回動されると、ロゴマーク14Aは斜め下方側を向き、目視しづらい状態となる。このようにして、ユーザは、トナーカートリッジ20が装着状態にあるか否かを容易に判断することができる。なお、ロゴマーク14Aの代わりに、図形や文字を用いてもよい。
【0025】
また、トナーカートリッジ20は、図3(b)の状態から図3(a)の状態へ回動されたときに、カートリッジ本体19の不図示の係止部へ係止されることにより、カートリッジ本体19へ装着された状態となる。なお、LEDヘッドアレイ29は、本体ケーシング2において前後方向にスライド可能に支持されており、図示しないバネによって前方側へ付勢されている。そして、トナーカートリッジ20が装着状態にあるときは、図3(a)に示すように、装着ハンドル27によってLEDヘッドアレイ29は感光ドラム24へ向けて押圧される。このとき、LEDヘッドアレイ29の前端に設けた衝撃吸収用のスプリングによって、LEDヘッドアレイ29と装着ハンドル27との衝突が軽減されるようになっている。そして、トナーカートリッジ20が装着状態から非装着状態へと回動されると、図3(b)に示すように、LEDヘッドアレイ29は着脱経路に沿って移動するプロセスカートリッジ14とは干渉しない前方側へ退避する。
【0026】
<プロセスカートリッジの着脱構造>
プロセスカートリッジ14は、図1および図2に示した着脱口5から本体ケーシング2内に着脱自在に装着されるものであり、そのための構造として、図5に示すように、本体ケーシング2の着脱口5の左右の側壁内面には、前方から後方に向かって徐々に上向く円弧状のガイド溝28が形成されている。これに対応して、プロセスカートリッジ14のカートリッジ本体19には、ガイド溝28に摺動自在に嵌合する左右一対のガイドピン(図示省略)が突設されている。これに対応して、感光ドラム24の回転軸24Aの両端部はカートリッジ本体19の外側へ突出しており、プロセスカートリッジ14の本体ケーシング2への着脱時において、図3(a)に示すように、回転軸24Aの両端部はそれぞれガイド溝28により案内される。
【0027】
このような着脱構造により、プロセスカートリッジ14は、レーザプリンタ1の正面側の着脱口5から本体ケーシング2内に押し込むことで、図6(a),(b)および図7(a),(b)に示すように、本体ケーシング2内の所定位置に装着される。この装着時においては、ユーザがプロセスカートリッジ14に加える力は、ガイド溝28の上部によって上方に向けられるので、縦長のレーザプリンタ1に対して前後方向に加わる力が軽減され、プロセスカートリッジ14を安定して装着することができる。また、プロセスカートリッジ14は、レーザプリンタ1の着脱口5から手前側に引き出すことで、本体ケーシング2を下方に押し付けながら安定した状態で本体ケーシング2内の所定位置から取り外される。そのため、プロセスカートリッジ14の本体ケーシング2への着脱時にレーザプリンタ1を倒すことをより確実に防止できる。このため、レーザプリンタ1の操作性が向上する。
【0028】
なお、本体ケーシング2には、図5に示すように、プロセスカートリッジ14の下端部(一部)と係合して、本体ケーシング2に装着されたプロセスカートリッジ14が抜け出すことを規制する、規制壁2Aが形成されている。そのため、この規制壁2Aによって、プロセスカートリッジ14が本体ケーシング2に対して安定して装着される。
【0029】
<プロセスカートリッジの機能>
図4(b)に示すように、トナーカートリッジ20内のトナーは、アジテータ42によってトナーカートリッジ20の一端側に搬送される。また、一端側に搬送されたトナーは、アジテータ42によって、トナーカートリッジ20の一端側に形成されるトナー供給口201からカートリッジ本体19内に形成される現像室DR内へ供給される。
【0030】
さらに、現像室DR内に入ったトナーは、トナー供給オーガ21によりトナーカートリッジ20の他端側に搬送される。これにより、供給ローラ22の表面の軸方向において一様にトナーが供給される。また、現像室DR内におけるトナーカートリッジ20の他端側に搬送されたトナーは、トナーカートリッジ20の他端側に形成されたトナー戻し口202からトナーカートリッジ20内に戻される。
【0031】
そして、供給ローラ22の表面に供給されたトナーは、現像ローラ23との間で正に摩擦帯電されて現像ローラ23の表面に付着し、層厚規制ブレード41により一定の厚さの薄層として現像ローラ23上に担持される。
【0032】
感光ドラム24は、その表面に正帯電性の感光層を有する。そして、帯電器25がタングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電することで、感光ドラム24の感光層を一様に正極性に帯電させる。正極性に帯電された感光ドラム24の感光層は、本体ケーシング2側に支持されているLEDヘッドアレイ29により画像データに基づいて露光される。これにより、感光ドラム24の感光層には、電位の下がった露光部分として「静電潜像」が形成される。
【0033】
感光ドラム24の表面の感光層に形成された「静電潜像」には、正に帯電して現像ローラ23上に担持されているトナーが吸着される。これにより、感光ドラム24の感光層には、反転現像によりトナー像が形成される。そして、このトナー像が表面の感光層に形成された感光ドラム24と、転写ローラ26との間に挟持されて用紙が搬送される。その際、金属製のローラ軸に導電性のゴム材料が被覆されてなる転写ローラ26に、転写バイアスが印加されることで、感光ドラム24の表面の感光層に形成されたトナー像が用紙上に転写される。
【0034】
<定着部の構成>
定着器15は、図5に示すように、用紙を挟持して排紙トレイ9側に搬送するように相互に対向して回転する加熱ローラ30および押圧ローラ31と、一対の搬送ローラ32,32とを備えている。この一対の搬送ローラ32,32は、加熱ローラ30および押圧ローラ31よりも用紙の搬送方向の下流側に配置されており、排紙トレイ9の凹部16に付設された排紙ローラ17,17に用紙ガイド18を介して用紙を搬送する。
【0035】
<定着部の機能>
定着器15の加熱ローラ30と押圧ローラ31との間には、プロセスカートリッジ14の感光ドラム24と転写ローラ26との間でトナー像が転写された用紙が搬送されて通過する。その際、加熱ローラ30によりトナー像が用紙上に熱定着される。
【0036】
<用紙の搬送経路>
給紙トレイ6から排紙トレイ9に向けて搬送される用紙の搬送経路は、図3に示すように、ピックアップローラ11A、分離ローラ12、用紙ガイド12A、レジストローラ13、感光ドラム24および転写ローラ26、加熱ローラ30および押圧ローラ31、搬送ローラ32,32、用紙ガイド18、排紙ローラ17,17によって形成される下向き略U字形状の搬送経路となっており、分離ローラ12の下端から排紙ローラ17,17までの搬送経路は上向きとなっている。
【0037】
そして、略U字形状の搬送経路は、給紙トレイ6と供給口6Aと排出トレイ9の排出口(排紙ローラ17,17の間)とを直接連結している。そして、この搬送経路のうち、給紙トレイ6の供給口6Aから略U字形状の搬送経路の下端(用紙ガイド12Aの下端)までの往路の上下方向における寸法よりも、略U字形状の搬送経路の下端から排紙トレイ9の排出口までの復路の上下方向における寸法の方が大きくなっている。このため、略U字形状の復路において、下方から上方に向けて、レジストローラ13、プロセスカートリッジ14、定着器15の順に並べることが容易となる。
【0038】
ここで、ピックアップローラ11Aは供給口6Aから用紙を下方へ送りだすローラである。用紙ガイド12Aは分離ローラ12に対向配置され、分離ローラ12の外周の形状に沿ったU字形状のガイドである。
また、「下向き略U字形状の搬送経路」とは、給紙トレイ6から送り出された用紙を下方に案内した後に、前後方向において用紙の表裏を反転させ、さらに上方へ案内する経路を指す。用紙は、搬送経路の下端部に配された分離ローラ12および用紙ガイド12Aによって、前後方向における表裏が反転される。
【0039】
<手差し給紙部の構成>
ここで、図5に示すように、本体ケーシング2の着脱口5の下方には、レーザプリンタ1の正面側から用紙を差し込んで供給するための手差し給紙口33が形成されている。この手差し給紙口33は、送り込みローラ13Aを経て、レジストローラ13に向かって上方に湾曲して延設された手差し給紙通路34に連続しており、これらで手差し給紙部が構
成されている。
【0040】
以上のように一実施形態の画像形成装置として構成されたレーザプリンタ1では、給紙トレイ6に収容された用紙が分離ローラ12、レジストローラ13、感光ドラム24および転写ローラ26、加熱ローラ30および押圧ローラ31、搬送ローラ32,32、用紙ガイド18、排紙ローラ17,17を経由して排紙トレイ9に搬送される。そして、この搬送経路の途中に設置された画像形成部8により、用紙上に所定のトナー画像が形成され、そのトナー画像が定着器15によって用紙上に熱定着される。
【0041】
また、手差し給紙口33に差し込まれた用紙は、手差し給紙通路34を介してレジストローラ13に供給され、このレジストローラ13により画像形成部8および定着器15に搬送される。そして、この用紙は、所定のトナー画像が熱定着された状態で排紙トレイ9内に収容される。
【0042】
ここで、一実施形態としてのレーザプリンタ1においては、現像ローラ23などを備える現像部の一例としてのプロセスカートリッジ14の上方に定着器15が配置されているため、定着器15の加熱ローラ30で発生する熱が上昇しても、この上昇する熱によってプロセスカートリッジ14内が加熱されることはない。なお、定着器15の加熱ローラ30から上昇する熱は、用紙ガイド18から排紙トレイ9の排紙口を経由して円滑に外気中に放出される。また、排紙口から排出されなかった熱気は、本体ケーシング2内における定着器15の上方で徐々に冷却される。なお、本体ケーシング2の上部に、放熱のための開口が形成されていてもよい。
【0043】
すなわち、一実施形態としてのレーザプリンタ1においては、プロセスカートリッジ14内におけるトナーの熱劣化が抑制されるのであり、その結果、用紙上に高品質のトナー画像を形成することができる。
【0044】
用紙の搬送路が、給紙トレイ6の下側から上方に向かって延設されるので、従来のように搬送路が給紙トレイの下部から下方に向かって延設される構造に比べ、装置全体を上下方向に小型化することができる。
言い換えると、略U字形状の搬送経路の復路が往路よりも上下方向において長く構成されているので、復路が往路よりも上下方向において短い構成に比べて、レーザプリンタ1の給紙トレイ6近傍の上下方向寸法を抑制することができ、且つ本体ケーシング2において給紙トレイ6をより下側に配することができる。このため、給紙トレイ6への給紙作業が容易となり、レーザプリンタの操作性が向上する。
特に本実施形態において、給紙トレイ6は本体ケーシング2の上方へ引き出されてから給紙されるので、本体ケーシング2において給紙トレイ6がより下側に配されていた方が、給紙トレイ6を本体ケーシング2の上方へ引き出すことが容易となり、さらに給紙作業が容易となる。
【0045】
排紙トレイ9の上端には開口9Aが形成されているので、その上方へ排紙された用紙が突出可能となっている。このため、排紙トレイ9の高さをより低く抑えることができるとともに、開口9Aに指を挿入可能であることからフロントカバー4の上端を把持してフロントカバー4を開放することが容易となる。また、排紙トレイ9の開口9Aから突出した用紙を直接上方へ引き上げることによって取り出すことも容易となる。この結果、レーザプリンタ1の操作性がより向上する。特に、排紙トレイ9の上端と給紙トレイ6の上端とは上下方向において同じ高さに構成されているので、排紙トレイ9が給紙トレイ6よりも大きく上方へ突出した場合に比べて、給紙トレイ6の本体ケーシング2からの抜き出しが容易となる。
【0046】
ちなみに、給紙トレイ9に収容された用紙は、湾曲したり、湿気を含んでシワが寄ったりすると、良好に給送されない可能性がある。そのため、用紙が湾曲しないように支持するために、給紙トレイ6の上下方向の長さは、収容される用紙の上下方向(搬送方向)長さよりも長いことが好ましい。また、本体ケーシング2内において、用紙は、全方位を囲まれて、湿気を含まないようにすることが好ましい。それに対して、排出トレイ9は、上述した給紙トレイ6のような課題が生じないので、排出トレイ9の上端に開口部9Aを形成して、用紙がその開口部9Aから突出するように構成することができる。
【0047】
排紙トレイ9の底部が排紙口よりも下方に設けられているので、排紙トレイ9を本体ケーシング2の上方へ大きく突出させることなく、排紙された用紙を支持するのに十分な排紙トレイ9の上下方向の長さを確保することが可能となっている。
手差し給紙、プロセスカートリッジ14の着脱、トナーカートリッジ20の着脱、および排紙トレイからの用紙の取り出しが、全て正面側から可能であるので、操作性がよい。また、給紙トレイ9が上方に引き出し可能に構成されているので、給紙を、上方からと正面側からの両方から行うことができるので、操作性がよい。
【0048】
また、プロセスカートリッジ14が排紙トレイ9の下方の空間であるデッドスペースを有効に活用して配置されているため、レーザプリンタ1の前後幅(奥行き)の増大を抑制することができる。そして、プロセスカートリッジ14がレーザプリンタ1の正面側の着脱口5から着脱自在となっているため、その着脱作業を容易に行うことができる。
【0049】
さらに、プロセスカートリッジ14の着脱経路が、前方から後方に向かって徐々に上向く円弧状に構成されているため、プロセスカートリッジ14を安定した状態で円滑に着脱することができる。
【0050】
また、トナーカートリッジ20がレーザプリンタ1の正面側の着脱口5から単独で着脱自在となっているため、その着脱作業を容易に行うことができる。
【0051】
さらに、トナーカートリッジ20の正面側に露出しているため、その正面に適宜のロゴマーク14Aを表示することで、レーザプリンタ1の正面側からロゴマーク14Aが目視可能となる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【0053】
前記実施形態では、現像剤担持体として、現像ローラ23を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばトナーを担持するベルトなどを採用してもよい。
前記実施形態では、現像部として現像ローラ23の他に感光ドラム24やトナーカートリッジ20等を備えたプロセスカートリッジ14を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プロセスカートリッジ14からトナーカートリッジ20を外した部分(カートリッジ本体19)を現像部としてもよいし、カートリッジ本体19が感光ドラム24と現像ローラ23との間で着脱自在に分割される構造では現像ローラ23側の部分(現像カートリッジ)を現像部としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したレーザプリンタからトナーカートリッジが取り外された状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したレーザプリンタの縦断面図であり、(a)はトナーカートリッジの装着状態を示し、(b)はトナーカートリッジが取り外し可能となった状態を示す。
【図4】図3に示したプロセスカートリッジを示す図であり、(a)は断面図、(b)は図4(a)のX−X断面図である。
【図5】本体ケーシングからプロセスカートリッジが取り外された状態を示すレーザプリンタの縦断面図である。
【図6】プロセスカートリッジの着脱経路を示すレーザプリンタの縦断面図であり、(a)はプロセスカートリッジの装着開始位置を示し、(b)はプロセスカートリッジの装着途中の位置を示す。
【図7】プロセスカートリッジの着脱経路を示すレーザプリンタの縦断面図であり、(a)は図6(b)よりもプロセスカートリッジを奥へ押し込んだときの位置を示し、(b)はプロセスカートリッジの装着完了位置を示す。
【符号の説明】
【0055】
1 レーザプリンタ
2 本体ケーシング
5 着脱口
6 給紙トレイ
8 画像形成部
9 排紙トレイ
13 レジストローラ
14 プロセスカートリッジ
15 定着器
19 カートリッジ本体
20 トナーカートリッジ
21 トナー供給オーガ
23 現像ローラ
24 感光ドラム
28 ガイド溝
29 LEDヘッドアレイ
33 手差し給紙口
34 手差し給紙通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート収容部と、この記録シート収容部から搬送される記録シート上に画像を形成する画像形成部と、この画像形成部から搬送される記録シートを上下方向に立てた状態で収容する記録シート排出部とを備え、
前記記録シートの搬送路は、前記記録シート収容部の下側から上方に向かって延設され、
前記搬送路の途中に設置される前記画像形成部では、少なくとも現像剤担持体を有する現像部の上方に定着器が配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録シート排出部は、その下方に空間をあけた状態で配置されており、前記現像部は、前記記録シート排出部の下方の空間に配置されて画像形成装置の記録シート排出部側から着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像部は現像剤収容器を有し、この現像剤収容器は、前記現像剤担持体よりも画像形成装置の記録シート排出部側に配置され、画像形成装置の記録シート排出部側から単独で着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤収容器が画像形成装置の記録シート排出部側に露出していることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像部の着脱経路が画像形成装置の記録シート排出部側から記録シート収容部側に向かって上向く円弧状に構成されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録シートの先端部の位置を一旦規制した後に上方へ搬送するレジストローラが前記現像部の下方に配置されており、
前記画像形成装置の記録シート排出部側に、前記レジストローラに向けて記録シートを給紙可能な手差し給紙部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22345(P2012−22345A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240890(P2011−240890)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【分割の表示】特願2007−91876(P2007−91876)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】