説明

画像形成装置

【課題】少ない駆動源で複数のポンプなどを自由度を持って駆動できるようにする。
【解決手段】複数の送液ポンプを駆動する第1駆動モータ101と、第1駆動モータ101の駆動力を複数の送液ポンプに選択的に伝達する駆動切替機構400とを備え、駆動切替機構400は、第2駆動モータ102と、第2駆動モータ102で回転されるカム103A,103Bと、カム103A、103Bの回転に連動してスラスト方向に移動されるスライダ部材105A〜105Dと、第1駆動モータ101の駆動力が伝達され、スライダ部材105A〜105Dによって複数の送液ポンプの駆動ギヤ112a〜112d、吸引ポンプの駆動ギヤ113及び大気開放駆動ピン部材の駆動ギヤ114と噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤ106A〜106Dとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置としては、例えば、異なる色の液滴を吐出する記録ヘッドに供給するインクを収容する交換可能な複数のメインタンク(インクカートリッジ)と、メインタンクから各色の液体が供給され、記録ヘッドのインクを供給する各色の複数のヘッドタンクを備えたものがある。
【0004】
また、て、記録ヘッドの性能を維持及び回復する維持回復機構を有している。維持回復機構は、通常、記録ヘッドのノズル面をキャッピングする吸引キャップ及び吸引キャップに接続された吸引ポンプを有している。
【0005】
さらに、ヘッドタンクとして内部を大気に開放する開閉可能な大気開放機構を備え、大気開放機構を装置本体側の大気開放駆動手段によって駆動するものがある。
【0006】
ところで、複数の送液ポンプや吸引ポンプを駆動するとき、各ポンプ毎に駆動源として駆動モータを設けるのでは、装置が大型化し、コストが高くなる。
【0007】
そこで、従来、選択駆動機構の回転動力によって第1方向及び第2方向に回転される太陽歯車と、太陽歯車の回転に応じて太陽歯車の周りを公転し、且つ、公転が規制された状態では、太陽歯車の回転に応じて自転する遊星歯車と、太陽歯車の第1方向回転に応じて遊星歯車が公転する際、遊星歯車に順次噛み合うように遊星歯車の公転軌跡に沿って配置されたポンプ駆動歯車と、太陽歯車の第2方向回転に応じた遊星歯車の公転を、ポンプ駆動歯車との噛み合い位置で規制する公転規制手段とを備え、単一の駆動源によって3以上のポンプを選択的に駆動させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4019694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した太陽歯車と遊星歯車を用いた構成にあっては、各ポンプにそれぞれ駆動源を備える場合に比べて、他のポンプ駆動による制限を受けることなく独立して作動させることが難しく、ポンプの駆動方向(回転方向)が片方向に限られ、例えば、送液と逆送を行う送液ポンプを使用する場合には適用することが困難であるという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、少ない駆動源で複数のポンプなどを自由度を持って駆動できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
異なる種類の液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給する複数のヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能な複数のメインタンクと、
各メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する複数の送液ポンプと、
前記複数の送液ポンプを駆動する第1駆動源と、
前記第1駆動源の駆動力を前記複数の送液ポンプに選択的に伝達する駆動切替機構と、を備え、
前記駆動切替機構は、
第2駆動源と、
前記第2駆動源で回転されるカムと、
前記カムの回転に連動してスラスト方向に移動されるスライダ部材と、
前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記複数の送液ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤと、を有し、
前記切替ギヤが移動することで、前記複数の送液ポンプに選択的に前記第1駆動源の駆動力が伝達される
構成とした。
【0012】
ここで、前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材に接続された吸引ポンプを有し、
前記駆動切替機構は、前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記吸引ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤを有している
構成とできる。
【0013】
また、前記ヘッドタンクは内部を大気に開放する開閉可能な大気開放機構を有し、
装置本体側には前記大気開放機構を駆動する大気開放駆動手段が設けられ、
前記駆動切替機構は、前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記大気開放駆動手段の駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤを有している
構成とできる。
【0014】
ここで、前記切替ギヤは、同軸上の複数の駆動ギヤに選択的に噛み合う構成とできる。
【0015】
また、1つの前記カムに対して複数の前記スライダ部材が設けられている構成とできる。
【0016】
また、前記切替ギヤを移動方向に沿う方向に付勢する弾性部材を備えている構成とできる。
【0017】
また、前記弾性部材はバネであり、伸びる方向がストッパ部材で規制されている構成とできる。
【0018】
また、前記駆動ギヤは、軸部と、この軸部に対して所定の範囲で回転方向に遊びを持って取付けられたギヤ部とを有している構成とできる。
【0019】
また、前記カムは回転しながらスラスト方向に移動可能である構成とできる。
【0020】
また、前記第2駆動源は前記第1駆動源が停止しているときに駆動される構成とできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成装置によれば、複数の送液ポンプを駆動する第1駆動源と、第1駆動源の駆動力を複数の送液ポンプに選択的に伝達する駆動切替機構と、を備え、駆動切替機構は、第2駆動源と、第2駆動源で回転されるカムと、カムの回転に連動してスラスト方向に移動されるスライダ部材と、第1駆動源の駆動力が伝達され、スライダ部材によって複数の送液ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤと、を有し、切替ギヤが移動することで、複数の送液ポンプに選択的に第1駆動源の駆動力が伝達される構成とし、ポンプの駆動源と駆動切替機構の動力とを分離したので、少ない駆動源で複数のポンプなどを自由度を持って駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ヘッドタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正面説明図である。
【図5】同装置におけるインク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】同実施形態の送液ポンプ及び吸引ポンプを構成するチューブポンプの一例を説明する模式的説明図である。
【図7】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態における駆動切替機構の説明に供する模式的説明図である。
【図9】同駆動切替機構の具体的構成の斜視説明図である。
【図10】同じくカム部分を取り外した斜視説明図である。
【図11】カムとスライダ部材の斜視説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態における同駆動切替機構の正面説明図である。
【図13】同じくカムの斜視説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態における駆動切替機構の模式的説明図である。
【図15】本発明の第4実施形態における駆動切替機構の異なる状態を説明する模式的説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態における駆動切替機構の異なる状態を説明する模式的説明図である。
【図17】本発明の第6実施形態における駆動切替機構のカムの回転角と切替ギヤ移動量の関係の説明に供する説明図である。
【図18】本発明の第7実施形態における駆動切替機構の説明に供する模式的説明図である。
【図19】本発明の第8実施形態の駆動切替機構の説明に供する模式的説明図である。
【図20】本発明の第9実施形態の駆動切替機構の第2駆動源の駆動制御の異なる例の説明に供する説明図である。
【図21】本発明の第10実施形態の駆動切替機構の第2駆動源の駆動制御の異なる例の説明に供するフロー図である。
【図22】本発明の第11実施形態の駆動切替機構におけるギヤ形状を説明する斜視説明図である。
【図23】本発明の第12実施形態の駆動切替機構における駆動ギヤの説明に供する側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0024】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0025】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0026】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0027】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0028】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0029】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0030】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0031】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0032】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0033】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0034】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0035】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0036】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0037】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0038】
次に、ヘッドタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的上面説明図、図4は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的正面説明図である。
【0039】
ヘッドタンク35は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部202を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は可撓性フィルム203で密閉し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてのバネ204によってフィルム203を常時外方へ付勢している。これにより、タンクケース201のフィルム203がバネ204によって外方への付勢力が作用しているので、タンクケース201内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0040】
また、タンクケース201の外側には、一端部を支軸202で揺動可能に支持され、タンクケース201側に向けて付勢されている変位部材である検知フィラ205がフィルム状部材203に接着などで固定されている。
【0041】
これにより、フィルム状部材203の動きに連動して検知フィラ205が変位するので、装置本体側に配置された光学センサからなる検知センサ301によって検知フィラ205の変位量を検知することによりヘッドタンク35内のインク残量などを検知することができる。
【0042】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口部209があり、供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。
【0043】
この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放駆動手段である大気開放ピン部材302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0044】
また、ヘッドタンク35内のインク残量を検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になった、或いは、ヘッドタンク35の液体残量が所定量以下になったことを検出することができる。
【0045】
次に、この画像形成装置のインク供給排出系について図5を参照して説明する。なお、ここでは、図示を簡単にするためインクカートリッジからヘッドタンクまでのインク供給系は1色分のみ図示しているが、各色毎にインク供給系が設けられている。
【0046】
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24内に各色毎に設けられた送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する送液動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す逆送動作とを行なえるようにしている。
【0047】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
【0048】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気解放機構207を開閉する大気開放駆動手段(押圧部材)である大気開放ピン部材302が配設され、この大気開放ピン部材302を作動させることで大気解放機構207を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0049】
ここで、各色の4個の送液ポンプ241、吸引ポンプ812、大気開放駆動ピン部材302は、第1駆動源である第1駆動モータ101の駆動力が、第2駆動源(切替駆動源ともいう。)である第2駆動モータ102によって切替駆動される駆動切替機構600を介して選択的に伝達され、第1駆動モータ101は制御部500によって駆動制御される。
【0050】
次に、送液ポンプ241、吸引ポンプ812として使用しているチューブポンプの一例について図6を参照して説明する。
チューブポンプ901は、チューブ902を矢印方向に回転する偏心させた押圧コロ903で押し潰すことによってチューブ902内の液体を移送することができる。
【0051】
このチューブポンプ901を送液ポンプ241に使用するときには、押圧コロ903を矢印の両方向に回転させることで、インクカートリッジ10からヘッドタンク35への送液、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10への逆送を行うことができる。また、吸引ポンプ812に使用するときには、押圧コロ903を一方向に回転させることで吸引を行うことができる。
【0052】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に実行させるプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0053】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、第1駆動モータ101及び駆動切替機構600の第2駆動モータ102を駆動するモータ駆動部512などを備えている。
【0054】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0055】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0056】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0057】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0058】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド33の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド33を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0059】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する検知センサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0060】
また、この制御部500は、時間を計測する計時手段520を備えている。
【0061】
次に、本発明の第1実施形態における駆動切替機構ついて図8ないし図12を参照して説明する。なお、図8は同実施形態の駆動切替機構の説明に供する模式的説明図、図9は同駆動切替機構の具体的構成の斜視説明図、図10は同じくカム部分を取り外した斜視説明図、図11はカムとスライダ部材の斜視説明図である。また、図8において、図中の破線Pは2つのギヤが常に噛み合っていることを、仮想線Qは2つのギヤが噛み合い及び離間する関係にあることを示している(以下の図でも同様である。)。
【0062】
第1駆動モータ101によって回転される駆動軸104には、ギヤ104A、104Bが設けられている。
【0063】
一方、駆動切替機構400の第2駆動モータ102によって回転されるカム軸131には、カム103A、103B(区別しないときは、「カム103」という。)が設けられている。カム103A、103Bにはカム溝107が形成されている。
【0064】
そして、カム103A、103Bの各カム溝107に係合する係合部105aを有し、カム103A、103Bの回転に連動して矢示のスラスト方向(カム軸131の軸方向)に移動されるスライダ部材105A〜105D(区別しないときは、「スライダ部材105」という。)を備えている。
【0065】
なお、図7では見易くするために、スライダ部材105の係合部105aとカム103のカム溝107とは離して図示しているが、上述したとおり摺動自在に接触している(以下の図でも同様とする。)。
【0066】
スライダ部材105Aには第1駆動モータ101によって回転するギヤ104Aと噛み合う第1切替ギヤ106Aが回転可能に設けられている。スライダ部材105Bには第1駆動モータ101によって回転するギヤ104Bと噛み合う切替ギヤ106Bが回転可能に設けられている。
【0067】
また、スライダ部材105Cには第1駆動モータ101によって回転するギヤ104Aと噛み合う切替ギヤ106Cが回転可能に設けられている。スライダ部材105Dには第1駆動モータ101によって回転するギヤ104Bと噛み合う切替ギヤ106Cが回転可能に設けられている。
【0068】
そして、切替ギヤ106Aは、スライダ部材105Aの移動によって、例えば第1色用送液ポンプ241の駆動ギヤ112a及び第2色用送液ポンプ241の駆動ギヤ112bのいずれかと噛み合う位置といずれとも噛み合わない位置(離間する位置)との間で移動される。
【0069】
切替ギヤ106Bは、スライダ部材105Bの移動によって、例えば第3色用送液ポンプ241の駆動ギヤ112c及び第4色用送液ポンプ241の駆動ギヤ112dのいずれかと噛み合う位置といずれとも噛み合わない位置(離間する位置)との間で移動される。
【0070】
切替ギヤ106Cは、スライダ部材105Cの移動によって、維持回復機構81の吸引ポンプ812の駆動ギヤ113と噛み合う位置と離間する位置との間で移動される。
【0071】
切替ギヤ106Dは、スライダ部材105Dの移動によって、大気開放駆動ピン部材302を移動(進退)させる駆動ギヤ114と噛み合う位置と離間する位置との間で移動される。
【0072】
なお、本実施形態では、切替ギヤ106A、106Bは本発明における第1切替ギヤ、切替ギヤ106Cは同じく第2切替ギヤ、切替ギヤ106Dは同じく第3切替ギヤである。また、上記の4つの送液ポンプ241から供給する第1色ないし第4色は、例えば前述したブラック、シアン、マゼンタ、イエローのいずれかの色である。
【0073】
また、図9ないし図11に示す具体的構成において、第1駆動モータ101の駆動力の伝達は、モータギヤ141、支軸152の回転可能に装着したギヤ142、駆動軸104に固定したギヤ143を経て駆動軸104に伝達される。また、切替駆動源である第2駆動モータ102の駆動力は、モータギヤ132、ギヤ133及びカム軸131に固定したギヤ134を経てカム軸131に伝達される。また、スライダ部材105A及び切替ギア106Aとスライダ部材105B及び切替ギア106Bは支軸151に移動可能に支持されている。スライダ部材105C及び切替ギア106Cとスライダ部材105D及び切替ギア106Dは支軸152に移動可能に支持されている。
【0074】
このように構成したので、第1駆動モータ101を駆動することで、ギヤ104A、104Bを介して第1切替ギヤ106A、106B、第2切替ギヤ106C、第3切替ギヤ106Dに駆動力が伝達されて、各切替ギヤ106A〜106Dは回転する。
【0075】
ここで、第2駆動モータ102を回転駆動してカム103A、103Bを回転させることによりスライダ部材105A〜105Dが矢示方向に移動し、第1切替ギヤ106A、106B、第2切替ギヤ106C、第3切替ギヤ106Dも矢示方向に移動する。
【0076】
このとき、第1切替ギヤ106Aを駆動ギヤ112aと噛み合う位置に移動させたときには第1色用送液ポンプ241が駆動される。同様に、第1切替ギヤ106Aを駆動ギヤ112bと噛み合う位置に移動させたときには第2色用送液ポンプ241が駆動される。
【0077】
また、スライダ部材105Bを矢示方向に移動させることで、第1切替ギヤ106Bを駆動ギヤ112cと噛み合う位置に移動させたときには第3色用送液ポンプ241が駆動される。同様に、第1切替ギヤ106Bを駆動ギヤ112dと噛み合う位置に移動させたときには第4色用送液ポンプ241が駆動される。
【0078】
また、スライダ部材105Cを矢示方向に移動させることで、第2切替ギヤ106Cを駆動ギヤ113と噛み合う位置に移動させたときには、維持回復機構81の吸引ポンプ812が駆動される。
【0079】
また、スライダ部材105Dを矢示方向に移動させることで、第3切替ギヤ106Dを駆動ギヤ114と噛み合う位置に移動させたときには、大気開放駆動ピン部材302が進退駆動される。
【0080】
この場合、第1駆動モータ101の回転方向がいずれであっても各送液ポンプ241に駆動力を伝達することができるので、送液ポンプ241を前述したように送液方向(正転駆動)及び逆送方向(逆転方向)のいずれの方向にも駆動することができる。
【0081】
なお、カム103A、103Bのカム溝107の位相を変えたり、カム103A、103Bにスライダ部材105を別位相で複数連結することで、カム103A、 103Bが回転する中で各切替ギヤ106A〜106Dが順次切り替わり、あるいは、逆に同時に複数の駆動ギヤに連結されるようにすることもできる。
【0082】
また、複数(この例では2つ)のカムを使用することで、1つのカムで移動させる切替ギヤの距離が短くなり、カムの径サイズを小さくすることができる。また、スラスト方向(軸方向)に切替ギヤを5つ以上並べてもスラスト方向以外のサイズを変更することなく対応することができる。
【0083】
このように、複数の送液ポンプを駆動する第1駆動源と、第1駆動源の駆動力を複数の送液ポンプに選択的に伝達する駆動切替機構と、を備え、駆動切替機構は、第2駆動源と、第2駆動源で回転されるカムと、カムの回転に連動してスラスト方向に移動されるスライダ部材と、第1駆動源の駆動力が伝達され、スライダ部材によって複数の送液ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される第1切替ギヤと、を有し、第1切替ギヤが移動することで、複数の送液ポンプに選択的に第1駆動源の駆動力が伝達される構成とし、ポンプの駆動源と駆動切替機構の動力とを分離したので、少ない駆動源で複数のポンプなどを、自由度を持って駆動できる。
【0084】
言い換えれば、本発明における駆動切替機構を使用することで、第1駆動源の正転も逆転も他のポンプやユニットの駆動ギヤとは独立して伝達することができ、他のポンプなどの制約を受けることなく、単独の駆動源で駆動する構成と同様に自由に動作させることができる。
【0085】
次に、本発明の第2実施形態における駆動切替機構について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12は同駆動切替機構の正面説明図、図13は同じくカムの斜視説明図である。
【0086】
本実施形態では、支軸161に4個のスライダ部材105及び切替ギヤ106が所定範囲で移動可能に支持され、スライダ部材105と支持板162との間にはスライダ部材105を付勢しているバネ109が設けられている。
【0087】
一方、図示しない第2駆動源で回転されるカム軸131には4個のカム108が固定されて軸方向に配置されている。カム108には、スライダ部材105の係合部105aが嵌り込むことが可能な凹部108aが形成されている。
【0088】
このように構成したので、スライダ部材105の係合部105aがカム108の側面に当接している状態で、カム軸131が図示しない第2駆動源で回転されることにより、カム108が回転して、カム108の凹部108aとスライダ部材105の係合部105aとが一致すると、スライダ部材105はバネ109の付勢力によってスラスト方向(支軸161の軸方向)に移動する。
【0089】
そして、スライダ部材105の係合部105aがカム108の凹部108aに嵌り込む(図13の最も左側のスライダ部材105の状態)ことで、当該スライダ部材105とともにスラスト方向に移動する切替ギヤ106は、対応する送液ポンプ241の駆動ギヤ111と噛み合う。
【0090】
一方、係合部105aがカム108の凹部108aに嵌り込んでいたスライダ部材105は、カム108の回転により凹部108aから外れるために、当該スライダ部材105とともにスラスト方向に移動する切替ギヤ106は、対応する送液ポンプ241の駆動ギヤ111から離間することになる。
【0091】
このようにして、カム108を回転させることで複数の送液ポンプの駆動ギヤ111に対して切替ギヤ106を順々に噛み合わせ及び離間させることができて、選択的に複数の送液ポンプに駆動力を伝達できる。
【0092】
この場合、スライダ105がバネ109でカム108の側面に押し付けられているので、切替ギヤ106が駆動ギヤ111と接続する際に、歯がうまく噛み合わなくても、バネ109が縮むので、カム108を回転させる図示しない第2駆動源がギヤ106と111の歯の引っかかりによって脱調することが防止される。
【0093】
次に、本発明の第3実施形態における駆動切替機構について図14を参照して説明する。なお、図14は同駆動切替機構の模式的説明図である。
本実施形態では、1つのカム103によってスライダ部材105をスラスト方向に移動させて切替ギヤ106を同方向に移動させることで、3つの駆動ギヤ112a〜112cに切替ギヤ106が選択的に噛み合い、第1駆動モータ101からの駆動力が駆動ギヤ112a〜112cのいずれかに伝達される。
【0094】
このように構成すれば、前記実施形態のように対向し合う二つの切替ギヤでなくても一つの切替ギヤで駆動力の伝達を切り替えることができるので、部品点数が少なくて済む。ただし、スライダ部材105をスムーズに移動させるためには、カム103のカム溝107の勾配を小さくしなければならないので、カム103の径を大きくする必要性が生じる。
【0095】
次に、本発明の第4実施形態における駆動切替機構について図15を参照して説明する。なお、図15は同駆動切替機構の異なる状態を説明する模式的説明図である。
本実施形態では、カム自体も移動する構成としている。すなわち、移動カム116は、第2駆動モータで回転されるカム軸131に対して、軸方向に移動可能で、回転方向ではカム軸131とともに回転するように設けている。
【0096】
ここで、移動カム116は、円筒型のカムであり、内側に円周に沿ったカム曲線を有したカム溝107が設けられ、軸方向両端部にも円周に沿ったカム曲線を有したカム面117が設けられている。
【0097】
一方、移動カム116の両端部外側には、移動カム116のカム面117に摺動自在に当接する押さえリブ115が固定配置され、移動カム116のスラスト方向を位置決めされている。
【0098】
このように構成したので、第2駆動モータによってカム軸131が回転することで移動カム116が回転すると、移動カム116のカム溝107に係合部105aが係合しているスライダ部材105がスラスト方向に移動するだけでなく、移動カム116の両端のカム面117によって、移動カム116自体もスラスト方向へ移動することができる。
【0099】
例えば、移動カム116が回転すると、図16(a)に示す状態から図16(b)に示す状態になり、相対的にスライダ部材105は、カム溝107による移動量とカム面117による移動カム116の移動量とを合わせた分だけ移動することができる。
【0100】
このようにすることで、同じ径で、同じ勾配のカム溝を持った前記第1実施形態のような駆動切替機構よりもスライダ部材の移動量をカム面117の分だけ多く移動させることができる。このとき、カム溝107の勾配は変わらないので、スライダ部材105もスムーズに動くことができ、小さなカムサイズで、スライダ部材の大きな移動量を得ることができる。
【0101】
次に、本発明の第5実施形態における駆動切替機構について図16を参照して説明する。なお、図16は同駆動切替機構の異なる状態を説明する模式的説明図である。
本実施形態も、カム自体も移動する構成としている。すなわち、移動カム118は、第2駆動モータで回転されるカム軸131に対して、軸方向に移動可能で、回転方向ではカム軸131とともに回転するように設けている。
【0102】
そして、移動カム118の両端部外側には、移動カム118の両端面に対向するカム面120を形成した固定カム119を配置している。一方、移動カム118は、内側に円周に沿ったカム曲線を有したカム溝107が設けられ、軸方向両端部には固定カム119のカム面120に摺動自在に当接するリブ121が設けられている。
【0103】
このように構成したので、第2駆動モータによってカムアクチュエータ軸131が回転することで移動カム118が回転すると、移動カム118のカム溝107に係合部105aが係合しているスライダ部材105がスラスト方向に移動するだけでなく、移動カム118の両端のリブ121が固定カム119のカム面120に倣うので、移動カム118自体もスラスト方向へ移動することができる。
【0104】
例えば、移動カム118が回転すると、図17(a)に示す状態から図17(b)に示す状態になり、相対的にスライダ部材105は、カム溝107による移動量とカム面120による移動量とを合わせた分だけ移動することができる。
【0105】
これにより、前記第4実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0106】
次に、本発明の第6実施形態における駆動切替機構ついて図17を参照して説明する。なお、図17は同駆動切替機構のカムの回転角と切替ギヤ移動量の関係の説明に供する説明図である。
本実施形態は、前記第1実施形態の構成において、各切替ギヤ106A〜106Dの位相を変えることで、カム103A、103Bが1回転する間に、切替ギヤ106A〜106Dが駆動ギヤ112a〜112d、駆動ギヤ113、駆動ギヤ114と順次に一度ずつ接続されるようにしている。これにより、各駆動ギヤ106A〜106Fを独立して駆動させることができる。
【0107】
ここで、送液ポンプ241(図中ポンプ1)の駆動ギヤ112aと切替ギヤ106Aを連結する領域Aで、維持回復機構の駆動ギヤ113は切替ギヤ106Dのない領域へ移動するためにフリー状態となる。また、送液ポンプ241(図中ポンプ4)の駆動ギヤ112dと切替ギヤ106Bを連結する領域Bで、大気開放駆動ピン部材302の駆動ギヤ114は切替ギヤ106Cのない領域へ移動するためにフリー状態となる。
【0108】
また、領域Cでは第1駆動モータ101が停止しているときに切替動作を行うことによって、2つの切替ギヤ106A、106Cがそれぞれ駆動ギヤ112a、113に連結されている場合でも不都合はなく、このようにすることで2つのカム103A、103Bのカム線図(カム溝107)の勾配を小さくすることができる。
【0109】
つまり、カム103を回転させる切替動作と、駆動を伝達する動作を同時ではなく、独立して動作させることで、一度に2つの切替ギヤが駆動ギヤと接続している瞬間があっても、誤動作させることはないので、各カム線図の勾配を小さくすることができる。
【0110】
また、カム103の一回転360°を6個の駆動ギヤで分けるため、通常は各切替ギヤ106A〜106Dの移動角は60°ずつに分配されるが、上述したように、切替ギヤ106A〜106Dが移動している間に第1駆動源は動かしていないので、二つの切替ギヤが同時に駆動ギヤと接続する瞬間があってもよく、図18では各切替ギヤの移動角は120°としている。
【0111】
次に、本発明の第7実施形態における駆動切替機構について図18を参照して説明する。なお、図18は同駆動切替機構の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態は、切替ギヤをバネで付勢した例であり、前述した第1実施形態のようにカム溝で切替ギアを移動させて切替える駆動切替機構において、切替ギヤをバネで付勢したものである。
【0112】
つまり、スライダ部材105の軸122には切替ギヤ106が軸方向に移動可能に装着されている。そして、スラだ部材105の軸122の両端の支持部123a、123bと切替ギヤ106の軸方向両端面との間にバネ124a、124bをそれぞれ配置している。
【0113】
このように構成することで、図19(a)に示す状態から図19(b)に示す状態のようにスライダ部材105が移動したときに、切替ギヤ106の歯と駆動ギヤ112の歯が当たってギヤ106、112が噛み合わなかったとしても、バネ124bが縮んで突き当たりを吸収することで、切替ギヤ106を移動させるカム103を回転させる第2駆動モータ(第2駆動源)に過剰な負荷がかかることを防ぎ、脱調せずにギヤの切替を行うことができる。
【0114】
また、切替バネ106を常時付勢するバネを設ける場合に比べて、バネの力が働くのは切替ギヤ106が駆動ギヤ112に突き当たった時のみであるので、第2駆動源の負荷を軽減することができる。
【0115】
次に、本発明の第8実施形態について図19を参照して説明する。なお、図19は同実施形態の駆動切替機構の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態では、前記第7実施形態において、バネ124a、124bの伸び方向の長さをストッパ125a、125bで制限したものである。ストッパ125a、125bは、バネ124a、124bの先端部(切替ギヤ106側)を保持し、支持部123a、123bに対して移動可能で、かつ、後端部のリブ126によって最大移動が規制されている。
【0116】
すなわち、前記第7実施形態の構成では、切替ギヤ106の両側のバネ124a、124bの力関係で切替ギヤ106の位置が左右にずれやすくなる。そこで、ストッパ125a、125bを設けることにより、切替ギヤ106の位置出しを寸法で決めることができるので、位置精度を高くすることができる。また、バネ124a、124bのバネ力が常に切替ギヤ106にかかっている訳ではないので、切替ギヤ106の回転トルクを減少させることもできる。
【0117】
次に、本発明の第9実施形態について図20を参照して説明する。なお、図20は同実施形態の駆動切替機構の第2駆動源の駆動制御の異なる例の説明に供する説明図である。
前述したように本発明では切替ギヤをスラスト方向に移動させて駆動力を伝達する駆動ギヤを切り替えるため、切替ギヤと駆動ギヤの歯が突き当たって噛み合わない場合が生じる。
【0118】
この場合、前述したようにバネ(弾性部材)を使用する実施形態においては、そのまま歯が噛み合わずに第1駆動源を動作した時にバネの力で歯を噛み合わせることができる。ただし、このような構成でも、バネ力が弱く、バネによって切替ギヤを押し込んで切替ギヤを駆動ギヤに噛ませるまでの時間より、噛み合い位置の切替ギヤの歯が1歯進む時間の方が短いと、歯がはじかれ、2つのギヤを噛み合わすことができないことが生じる。
【0119】
そこで、本実施形態において、図20(a)に示す第1例では、初期の領域T1の段階で第2駆動源の加速度を低くし、その後領域T2の段階で加速度を高くして目標速度に到達させる。
【0120】
また、図20(b)に示す第2例では、領域T1では一旦低速領域で回転させ、領域T2では定速で回転させ、領域T3で領域T1と同じ加速度で増速して目標速度に到達させる。
【0121】
図20(c)に示す第3例では、第1例と第2例を組合せ、領域T1では一旦低速領域で回転させ、領域T2では定速で回転させ、領域T3で領域T1より高い加速度で増速して目標速度に到達させる。つまり、少なくとも切替ギヤの歯が半歯動く間はギヤが噛み合う速度領域を一度保ってから、目標速度まで上昇させる。
【0122】
このような駆動制御を行うことで切替ギヤと駆動ギヤとを確実に噛み合せることができる。
【0123】
次に、本発明の第10実施形態について図21を参照して説明する。なお、図21は同実施形態の駆動切替機構の第2駆動源の駆動制御の異なる例の説明に供するフロー図である。
【0124】
まず、図21(a)に示す第1例では、第2駆動モータ102をONした後、切替ギヤ106が半歯以上動いたときに第2駆動モータ102を一旦OFFする。その後、第2駆動モータ102をONし、切替ギヤ106の所要の移動量が得られた時点でOFFする。
【0125】
切替ギヤ106が突き当たった場合、半歯動かして切替ギヤ106を止めれば、前記バネを使用する実施形態では、バネの力で確実に切替ギヤ106が駆動ギヤ112等に噛み合うので、半歯以上切替ギヤ106を回転させてから一旦駆動を停止させ、所要の動作をさせる駆動制御をすることで、確実に切替ギヤと駆動ギヤとを噛み合わせることができる。
【0126】
図21(b)に示す第2例では、切替ギヤ106が半歯以上動くパルスで第2駆動モータ102をONし、そのままON状態を継続した後、所要の移動量が得られた時点でOFFする。なお、半歯以上回転させる駆動制御は、{(0又は数歯)+半歯}という駆動制御をすることで、確実の歯の位相がずれるため、より確実にギヤを噛み合わせることができる。
【0127】
次に、本発明の第11実施形態について図22を参照して説明する。なお、図22は駆動切替機構におけるギヤ形状を説明する斜視説明図である。
切替ギヤ106及び駆動ギヤ112の歯171、172のスラスト方向の側面を傾斜面171a、172aに形成している(所謂C面取りをし、更にシャープエッジにした形状としている。)。
【0128】
これにより、スラスト方向から切替ギヤ106と駆動ギヤ112が噛み合うときに、歯171と歯172が突き当たる確率が低くなり、ギヤとギヤの噛み合いがスムーズに進み、第2駆動源が脱調することが防止される。なお、C面取りかシャープエッジのいずれかでもよい。また、ここでは、駆動ギヤ112で説明しているが、他の駆動ギヤでも同様に適用できる。
【0129】
次に、本発明の第12実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は駆動切替機構における駆動ギヤを説明する説明図である。
切替ギヤ106と接続される駆動ギヤ112は、軸部181とギヤ部182とから構成される。そして、軸部181に対して、少なくとも±半歯以上のガタを持たせてギヤ部182を装着している。
【0130】
これによって、スラスト方向から切替ギヤ106が噛み合ってきた時に、互いの歯と歯が突き当たっても、軸部181とギヤ部182とのガタによって駆動ギヤ112側が回転するため、切替ギヤ106と駆動ギヤ112が突き当たらずに噛み合う。
【0131】
これにより、スラスト方向からの切替ギヤ106と駆動ギヤ112の突き当たりによる負荷の増大によって第2駆動源が脱調してしまうことを防ぐことができる。
【0132】
なお、駆動ギヤの下流側に他のギヤが連結されていた場合、直接、切替ギヤと噛み合う駆動ギヤでなくても、そのうちのいずれかギヤを上記のように軸部とギヤ部とに分割することで同じ効果が得られる。
【0133】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0134】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0135】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0136】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0137】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0138】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
36 供給チューブ
81 維持回復機構
101 第1駆動モータ(第1駆動源)
102 第2駆動モータ(第2駆動源:切替駆動源)
103、103A、103B カム
105 スライダ部材
106,106A〜106D 切替ギヤ
107 カム溝
108 カム
109 バネ(弾性部材)
111 送液ポンプの駆動ギヤ
112、112a〜112d 送液ポンプの駆動ギヤ
113 吸引ポンプの駆動ギヤ
114 大気開放駆動ピン部材の駆動ギヤ
115 押圧リブ
116 カム
117 カム面
118 カム
119 固定カム
120 カム面
124a、124b バネ(弾性部材)
125a、125b ストッパ部材
181 軸部
182 ギヤ部
241 送液ポンプ
400 駆動切替機構
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる種類の液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給する複数のヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能な複数のメインタンクと、
各メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する複数の送液ポンプと、
前記複数の送液ポンプを駆動する第1駆動源と、
前記第1駆動源の駆動力を前記複数の送液ポンプに選択的に伝達する駆動切替機構と、を備え、
前記駆動切替機構は、
第2駆動源と、
前記第2駆動源で回転されるカムと、
前記カムの回転に連動してスラスト方向に移動されるスライダ部材と、
前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記複数の送液ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤと、を有し、
前記切替ギヤが移動することで、前記複数の送液ポンプに選択的に前記第1駆動源の駆動力が伝達される
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材に接続された吸引ポンプを有し、
前記駆動切替機構は、前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記吸引ポンプの駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ヘッドタンクは内部を大気に開放する開閉可能な大気開放機構を有し、
装置本体側には前記大気開放機構を駆動する大気開放駆動手段が設けられ、
前記駆動切替機構は、前記第1駆動源の駆動力が伝達され、前記スライダ部材によって前記大気開放駆動手段の駆動ギヤと噛み合う位置と離間する位置との間で移動される切替ギヤを有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記切替ギヤは、同軸上の複数の駆動ギヤに選択的に噛み合うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
1つの前記カムに対して複数の前記スライダ部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記切替ギヤを移動方向に沿う方向に付勢する弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記弾性部材はバネであり、伸びる方向がストッパ部材で規制されていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動ギヤは、軸部と、この軸部に対して所定の範囲で回転方向に遊びを持って取付けられたギヤ部とを有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記カムは回転しながらスラスト方向に移動可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2駆動源は前記第1駆動源が停止しているときに駆動されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−236277(P2012−236277A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104824(P2011−104824)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】