説明

画像形成装置

【課題】気泡の発生、流路内の圧力上昇を伴わないで短時間で容易に液体の入替を行うことができるようにする。
【解決手段】メインタンク5を交換してメインタンク5からヘッド1の排出口部15に至る流路内のインクを入れ替えるとき、供給ポンプ52及び排出ポンプ56を共に駆動させ、このとき、供給ポンプ52から加圧する圧力値と排出ポンプ56から吸引する圧力値の絶対値比が、液体供給経路51の供給ポンプ52からヘッドタンク4内の液体収容部22までの流路の流体抵抗と、ヘッドタンク4内の液体収容部22から液体排出経路55の排出ポンプ56までの流路の流体抵抗の比の逆比例である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような、インクジェット記録装置におけるインク供給方式として、記録ヘッド側にヘッドタンク(バッファタンクやサブタンクとも称される。)を、装置本体側にメインタンクを配置して、メインタンクからヘッドタンクにインクを補充供給し、ヘッドタンクから記録ヘッドにインクを供給する方式が知られている。
【0004】
ところで、これらの画像形成装置を、用途により、1台の装置で異なる種類のインクを入替えて使用することがある。例えば、染料インクと顔料インクを入替えたり、モノクロインクをカラーインクに入替えたりといったように、異なる種類のインクを使用することがある。そのため、それぞれのインクが混合しないように、インクを入れ替えるときには、洗浄液を供給流路内に供給してヘッドまでの流路を洗浄した後、入れ替えるインクを流路に供給する方法が知られている。
【0005】
このように異なる種類のインクを入れ替えるとき、メインタンクを、洗浄液を収容した洗浄液タンク又は入替インクのメインタンクに取り替え、供給ポンプを用いて洗浄液又は入替インクを加圧して記録ヘッドへ流入させる方法、記録ヘッドのノズルを吸引キャップでキャップし、キャップに接続された吸引ポンプでキャップ内空間を減圧することで、洗浄液タンク又は入替えタンクから洗浄液又は入替インクを記録ヘッドへ吸引することで流入させる方法、記録ヘッドの排出経路から吸引ポンプで吸引して減圧することで、同様に洗浄液又は入替インクを記録ヘッドへ吸引流入させる方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223233号公報
【特許文献2】特開2001−219579号公報
【特許文献3】特開2009−051149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した加圧による入替え方法にあっては、ヘッドを構成する部材の接着強度やヘッドタンクを構成する部材、例えばダンパを構成する可撓性フィルム状部材の溶着強度との関係で、加圧力を高くすることができず、流速を上げられないため、インクの置換に使用する洗浄液や入替インクの量が多くなるとともに、置換に要する時間が長くなるという課題がある。
【0008】
また、吸引ないし減圧によるインク入替方法にあっては、洗浄液や入替インクがヘッド内部やヘッドタンク内部に設けられるフィルタ、その他の細い流路を通過するとき、洗浄液や入替インクに溶存する気体がキャビテーションを起こして発泡し、流路内に気泡が残留して滴吐出不良が発生するなどの課題がある。
【0009】
また、加圧と吸引ないし減圧の組み合わせによるインク入替方法にあっては、加圧ポンプや吸引ポンプの性能や駆動タイミングによって、ヘッド内の圧力が正圧或いは負圧になるのか管理することができず、その時々によって上記の課題が発生する。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、気泡の発生、流路内の圧力上昇を伴わないで短時間で容易に液体の入替を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに供給する液体を収容する液体収容部を有するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクに供給する前記液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を供給する液体供給経路と、を備え、
前記ヘッドには前記液体が供給される供給口部と前記液体を排出する排出口部とが設けられ、
前記ヘッドの供給口部は前記ヘッドタンクに接続され、
前記ヘッドの前記排出口部には前記ヘッドタンクを介して、または、直接、前記液体を外部に排出する液体排出経路が接続され、
前記液体供給経路には前記液体を加圧して送液する送液ポンプが設けられ、
前記液体排出経路には前記液体を吸引して排出する排出ポンプが設けられ、
前記メインタンクを交換して少なくとも前記メインタンクから前記ヘッドの排出口部に至る流路内の前記液体を入れ替えるとき、前記供給ポンプ及び前記排出ポンプを共に駆動させる手段を有し、
前記供給ポンプと前記排出ポンプを共に駆動するとき、前記供給ポンプから加圧する圧力値と前記排出ポンプから吸引する圧力値の絶対値比が、前記液体供給経路の前記供給ポンプから前記ヘッドタンク内の液体収容部までの流路の流体抵抗と、前記ヘッドタンク内の液体収容部から前記液体排出経路の前記排出ポンプまでの流路の流体抵抗の比の逆比例である
構成とした。
【0012】
ここで、前記液体を入れ替えるとき、前記ヘッドをキャップ部材で封止する構成とできる。
【0013】
また、前記供給ポンプ及び前記排出ポンプの少なくとも一方はチューブポンプである構成とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置によれば、供給ポンプと排出ポンプを共に駆動するとき、供給ポンプから加圧する圧力値と排出ポンプから吸引する圧力値の絶対値比が、液体供給経路の供給ポンプからヘッドタンク内の液体収容部までの流路の流体抵抗と、ヘッドタンク内の液体収容部から液体排出経路の排出ポンプまでの流路の流体抵抗の比の逆比例である構成としたので、気泡の発生、流路内の圧力上昇を伴わないで短時間で容易に液体入替を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態を示すインク供給系の説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う模式的断面説明図である。
【図3】同実施形態におけるインク入替動作の説明に供するフロー図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるインク入替動作の説明に供するフロー図である。
【図5】本発明の第3実施形態の説明に供するチューブポンプの模式的説明図である。
【図6】同チューブポンプを稼動したときの圧力変化の例を説明する説明図である。
【図7】同チューブポンプを稼動したときの圧力変化の例を説明する説明図である。
【図8】同チューブポンプを供給ポンプ及び排出ポンプとして使用したときの圧力変化の例を説明する説明図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の全体構成の一例の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態における画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同実施形態における画像形成装置のインク供給系の説明図、図2は図1のA−A線に沿うサブタンクの断面説明図である。
液体吐出ヘッドユニット(以下、単に「ヘッドユニット」ともいう。)1は、液滴を吐出するヘッド2と、ヘッド2に供給するインクを収容する液体収容タンク(以下、「ヘッドタンク」という。)4を備えている。
【0017】
ヘッド2は、液滴を吐出する複数のノズル11と、各ノズル11が連通する液室12と、各液室12にインクを供給する共通液室13と、共通液室13にインクを供給される供給口(インク供給ポート)14と、共通液室13からインクを排出する排出口(インク排出ポート)15などを備えている。
【0018】
ヘッドタンク4は、タンクケース21内にヘッド2に供給するインクを収容する収容部22と、収容部22からインクをヘッド2の供給口14に供給する供給ポート24と、ヘッド2の排出口15から排出されるインクをインク排出流路55に排出する排出径路25とを備えている。
【0019】
さらに、収容部22内には、底面22cから天面22aへ達する隔壁202が設けられ、供給ポート24に通じる供給流路203を形成している。
【0020】
また、収容部22の天面22aを中央部に向かって傾斜する傾斜面とし、天面22aの中央部の最も高い部位22bに気泡溜部28を設け、更に気泡滞留部28から収容部22と排出経路25とを連通する連通経路26が設けられている。
【0021】
また、ヘッドタンク4のタンクケース21は、一方が開口した部材であり、開口部には可撓性の弾性変形可能な部材としてのフィルム部材23を貼り付けて、圧力変動を吸収する構成としている。タンクケース21は、隔壁202により仕切られた収容部22と供給流路203にそれぞれの部位でインクの振動による圧力を吸収するダンパ効果を得られるようになっている。
【0022】
さらには、タンクケース21の上部には収容部22に外部からインクを供給するインク供給流路口部27が設けられている。
【0023】
ここで、図2に示すように、タンクケース21の収容部22を形成する凹部の壁面21aは、ヘッド2側を底部(底面)としたとき、上方に向かって広がるように(凹部の深さが深くなるように)傾斜している。これにより、収容部22は、水平方向断面の断面積(以下、「水平断面積」という。)が、収容部22の天面22a側から底面部22cに向かって徐々に小さくなっており、底面部22cの水平断面積が最も小さくなる形状となっている。つまり、タンクケース21の上部のインク供給流路口部27からインクを供給したとき、収容部22の底面部22c側は隔壁部202とこれに対向する壁面との間で形成される空間のために、天面側と比べてインクの流速が遅くなるので、このインクの流速が遅くなる領域側の水平断面積をインクの流速が速い天面側の水平断面積より小さくしている。
【0024】
一方、装置本体側には、ヘッドタンク4にインクを補充供給する交換可能なインクカートリッジであるメインタンク5が配置されている。このメインタンク5は、図示しない継手などによって交換ができるようになっている。
【0025】
また、このメインタンク5は、タンク5内のインクが外気へ長時間露出し、乾燥または凝固することを防止するための大気開放管75が設けられている。この大気開放管75の流路は、細長い管状の形状になっており、管内の湿度はその長さに沿って変化するため、メインタンク5内のインクが外気と直接接することを防止することができ、インクの乾燥または増粘や凝固することを防止するようになっている。
【0026】
そして、メインタンク5とヘッドタンク4の間には液体供給経路であるインク供給経路51が設けられ、インク供給経路51にはメインタンク5からヘッドタンク4にインクを送液するインク供給ポンプ52と、インク供給経路51を開閉する開閉弁である供給バルブ53が設けられている。
【0027】
また、ヘッドタンク4の排出経路25には開閉弁である排出バルブ54を介して液体排出経路であるインク排出経路55が接続され、インク排出経路55は廃液タンク118に連通している。また、インク排出経路55にはヘッドタンク4の排出経路25とインク排出経路55との接続部分にインク排出経路55を開閉するインク排出ポンプ56が設けられている。なお、ヘッド2の排出口部15に直接液体排出経路を接続する構成とすることもできる。
【0028】
さらには、インク供給ポンプ52と供給バルブ53の流路間には正圧計58が、排出バルブ54とインク排出ポンプ56の流路間には負圧計59が設けられ、各流路間の圧力を測定できるようにしている。
【0029】
また、この画像形成装置は、ヘッドユニット1のヘッド2のノズル面11aをキャッピングするキャップ部材111を有し、キャップ部材111には排出経路113を介して吸引ポンプ115が接続され、排出経路113は廃液タンク118に通じている。
【0030】
次に、この画像形成装置におけるインクの入替え動作について図3のフロー図を参照して説明する。
ここでは、使用中のインクと入替えるインクが混ざり合ってもインク凝集・固化によるノズル詰まりやインクの変色等の印写結果に不具合が生じないインク同士を直接入替える方法を説明する。
【0031】
先ず、供給バルブ53、排出バルブ54を閉じ、メインタンク5を、入替えるインクが入ったメインタンク5に取り換え、ノズル面をキャップ部材111でキャップする。キャップ部材111内を吸引する吸引ポンプ115は非稼動時にはキャップ部材111内を密閉できるポンプを用いている。これは、後述するとおり、インク排出ポンプ56によりヘッドユニット1からインクを吸引排出させるとき、ノズル11から気泡が吸引されることを防止するため、ノズル11をキャップ部材11で密閉するためである。
【0032】
そして、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56とを稼動させ、インク供給ポンプ52と供給バルブ53間の圧力Pinと、排出バルブ54と排出ポンプ56間の圧力Poutがそれぞれ所定の圧力値になるまで、正圧計58と負圧計59をモニターしながら、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56をそれぞれ制御し、両圧力が設定圧力値に達すると、供給バルブ53と吸引バルブ54を開く。これにより、メインタンク5内のインクは、インク供給流路口27からヘッドタンク4の収容部22内へ流入し、ヘッド2の供給ポート14、共通液室13、排出ポート15を通り、排出バルブ54からインク排出経路55へ流れ、廃液タンク118へ排出される。
【0033】
ここで、ヘッドタンク4及びヘッド2の共通液室13、供給ポート14、排出ポート15のインク入替えに必要な容量を廃液タンク118へ排出される量を、実測または通液時間により管理し、所定の通液をさせた後、供給バルブ53と排出バルブ54を同時に閉じ、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56の稼動を止める。
【0034】
そして、インク供給ポンプ52を開放し、メインタンク5内のインクをインク供給経路51内で連通させ、インク供給経路51内を大気状態に戻した後、供給バルブ53を開き、メインタンク5とヘッド2のノズル11との水頭差によって発生するインクの吐出に必要な負圧を作り出す。
【0035】
次に、吸引ポンプ116を稼動させ、ノズル11よりインクを吸引して排出させ、ノズル11内のインクを交換させる。吸引ポンプ116の稼動タイミングは液室12及びノズル11よりも上流側のインク入替えが完了した時点で実施することで、入替え途中の混ざり合ったインクではなく、入替えるインクが液室12及びノズル11に供給できるので入替え時間及び通液量を最小限にすることができる。
【0036】
そして、最後にキャップ部材111を開放し、後述する弾性体、好ましくはシリコンゴム等のワイパ部材119によりノズル面11aをワイピングし、ノズル面11aに垂れたインクを払拭し、ノズル11のメニスカスを形成させ、インク入替えを完了させる。
【0037】
ここで、上述したように、ヘッドユニット1へ入替インクを流入させる前に、供給バルブ53と排出バルブ54を閉じ、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56を稼動させ、インク供給ポンプ52と供給バルブ53間の圧力Pinと、排出バルブ54と排出ポンプ56間の圧力Poutがそれぞれ所定の圧力値になるまで待っている。このときの所定圧力値とは、インク供給ポンプ52からインク供給経路51を通り収容部22まで流体抵抗(インク供給ポンプ52から収容部22までの流体抵抗)をRin、供給ポート14から共通液室13、排出ポート15、インク排出経路25を通りインク排出ポンプ56までの流体抵抗(供給ポート14からインク排出ポンプ56までの流体抵抗)をRoutとすると、次の(1)式で表される関係とする。
【0038】
【数1】

【0039】
この(1)式は、ヘッドタンク4の収容部22へ加圧されるインクの圧力Pinとヘッドタンク4の収容部22から吸引される圧力Poutの絶対値の比が、そのそれぞれの流体抵抗値比と逆比例の関係となっていることを表している。
【0040】
この(1)式を満たす状態であるとき、ヘッドタンク4の収容部22内の圧力は、加圧値と負圧値が相殺されるため、大気圧とほぼ等しくなり、収容部22の表面に貼られているフィルム部材23にはインクの圧力と大気圧とがつり合い、フィルム部材23及びその接着部分には殆ど力が加わらないことになる。これにより、ヘッドタンク4のフィルム部材23の破損を起こすことなくインクの交換を行うことができる。
【0041】
また、インク入替えのため、通液している間も正圧計58と負圧計59をモニターし、圧力の関係を(1)式の関係となうようにインク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56の可動を制御すると良い。
【0042】
また、インク交換の時間を短縮するためには流路内を流れるインクの速度を上げる必要がある。これは、インク供給ポンプ52又はインク排出ポンプ56の稼動力を高めることであるが、単純に圧力値を上げるだけでは、ヘッドタンク4のフィルム部材23の破損を起こしかねない。このような場合でも、(1)式の関係を満たすように各ポンプ52、56を制御することにより、フィルム部材23の破損や気泡の発生を起こすことなく、インク入替えを短時間で容易に行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態におけるインク入替動作について図4のフロー図を参照して説明する。
前記第1実施形態では、インクから交換インクの直接入替えの例を説明したが、使用中のインクと交換インクが混ざり合うとでインクの凝集・固化によるノズル詰まりやインクの変色等の印写に不具合が生じてしまう場合がある。このような場合においては、使用中のインクを不具合の発生しない置換液に入替えてから次に使用するインクに入替えることでインク入替えを実施することができる。
【0044】
まず、供給バルブ53、排出バルブ54を閉じ、メインタンク5を、置換液が入ったメインタンク5に取り換え、ノズル面をキャップ部材111でキャップする。キャップ部材111内を吸引する吸引ポンプ116は非稼動時にはキャップ部材内を密閉できるポンプを用いている。
【0045】
そして、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56を稼動させ、インク供給ポンプ52と供給バルブ53間の圧力Pinと、排出バルブ54と排出ポンプ56間の圧力Poutがそれぞれ所定の圧力値になるまで、正圧計58と負圧計59をモニターしながらインク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56をそれぞれ制御し、両圧力が所定の圧力値に達すると供給バルブ53と吸引バルブ54を開く。これにより、メインタンク5内の置換液は、ヘッドタンク4のインク供給流路口27から収容部22内へ流入し、ヘッド2の供給ポート14、共通液室13、排出ポート15を通り、排出バルブ54からインク排出経路55へ流れ、廃液タンク118へ排出される。
【0046】
ここで、ヘッドタンク4及びヘッド2の共通液室13、供給ポート14、排出ポート15の置換液に入替えに必要な容量を廃液タンクへ排出される量を実測または通液時間により管理し、所定の通液をさせた後、供給バルブ53と排出バルブ54を同時に閉じ、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56の稼動を止める。
【0047】
そして、インク供給ポンプ52を開放し、メインタンク5内の置換液をインク供給経路51内で連通させ、インク供給経路51内を大気状態に戻した後、供給バルブ53を開き、メインタンク5とヘッド2のノズル11との水頭差によって発生するインクの吐出に必要な負圧を作り出す。
【0048】
次に、吸引ポンプ116を稼動させ、ノズル11よりインクを吸引し排出させノズル11内のインクを置換液に交換する。吸引ポンプ116の稼動タイミングは、液室12及びノズル11よりも上流側のインク入替えが完了した時点で実施することで、入替え途中の混ざり合ったインクではなく、入替える置換液が液室12及びノズル11に供給できるので入替え時間及び通液量を最小限にすることができる。
【0049】
そして、最後にキャップ部材111を開放し、後述する弾性体、好ましくはシリコンゴム等のワイパブ部材119によりノズル面11aをワイピングし、ノズル面11aに垂れた置換液を払拭し、ノズル11のメニスカスを形成させ、置換液への入替えを完了させる。
【0050】
次に、再び供給バルブ53、排出バルブ54を閉じ、メインタンク5を、入替えるインクが入ったメインタンク5に取り換え、ノズル面をキャップ部材111でキャップする。以降は、第1実施形態と同様にして置換液からインクへ入替え動作を実施する。
【0051】
このように、使用中のインクから置換液、そして置換液から入替インクへ入替えるときにも、インク供給ポンプ52と供給バルブ53間の圧力Pinと、排出バルブ54と排出ポンプ56間の圧力Poutの関係は、圧力Poutの絶対値の比がそのそれぞれの流体抵抗値比と逆比例の関係となる(1)式の関係となる値とすることで、ヘッドタンク4のフィルム部材23の破損を起こすことなく、インクの交換を行うことができるようになる。この際、入替えのために廃液タンク118へ排出する置換液、入替インクの使用量や排出時間は、それぞれの粘度や混合のし易さなどにより変わるため適宜調節すると良い。
【0052】
なお、本実施形態は、使用中のインクと入替インクともに不具合が発生しない共通の置換液が存在した場合である。共通した置換液が無い場合、使用中のインクと入替インクの間に複数の置換液を用いて、各置換液の入替時に不具合の発生しない置換液を順に用いることでインクの入替が可能になる。
【0053】
この場合においても圧力Pinと圧力Poutを(1)式の関係となるように、供給ポンプ52と排出ポンプ56を制御することが重要である。これにより、ヘッドタンク4のフィルム部材23の破損や気泡の発生を起こすことなく、インク入替えを短時間で容易に行うことができる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照して説明する。図5は、前記インク供給ポンプ52及びインク排出ポンプ56の少なくとも一方に用いるチューブポンプ81の模式的断面説明図である。
このチューブポンプ81は、回転押圧部材82を用いて可撓性を有するチューブ部材83を押し潰しながら回転することで液体を送液するものである。このチューブポンプ81の上流口84には、回転押圧部材82がチューブ部材83を押し潰しながら回転したときに上流口84側には負圧が発生し、下流口85側には、回転押圧部材82がチューブ部材83から離れる間に上流口84と下流口85が連通し正力が加わることになる。
【0055】
このチューブポンプ81をインク供給ポンプ52として使用するには、上流口84をメインタンク5側に、下流口86をヘッドタンク4のインク供給流路口部27側に接続する。また、インク排出ポンプ56として使用するには、上流口84をインク排出経路25側に、下流口86を廃液タンク118側に接続する。
【0056】
ここで、前記第1、第2実施形態で説明したように供給バルブ53、排出バルブ54を閉じてインク供給ポンプ52にチューブポンプ81を用いて可動させたときの正圧計58で測定される圧力変化は、例えば図6に示すようになる。また、インク排出ポンプ56にチューブポンプ81を用いて可動させたときの負圧計59で測定される圧力変化は、図7に示すようになる。このとき、各圧力は、振動しながら変化し、その振幅はチューブ部材83を順次押し潰し送液する量によって、周期は回転押圧部材82の回転速度によって決まる。
【0057】
このチューブポンプ81を用いて前記第1、第2実施形態で説明したインクの入替え動作を行う場合、ヘッドタンク4の収容部22内のインクの流れはインク供給ポンプ52或いはインク排出ポンプ56の振幅、周期によって脈動しながら変化することになる。
【0058】
通常の一定圧力で加圧或いは排出するポンプを用いた場合、ヘッドタンク4の収容部22内のインクの流れは層流状態となり、収容部22の流速の遅い部分のインクの入替えには時間が必要である。これに対し、チューブポンプ81を用いることで収容部22内のインクの流れは脈動し、かき混ぜながら流れることになるため、収容部22内のインクの入替えが早く行えることができ、全インクの入替え作業時間が短縮できるようになる。
【0059】
また、インク供給ポンプ52及びインク排出ポンプ56の両方にチューブポンプ81を用いる場合、収容部22内の液体の流れは両ポンプの圧力変化の総和によって、図8の示すように、収容部内圧力にとして示すように複雑な変化を起こしながら収容部22内をかき混ぜながら流れることになるため、インクの入替え作業時間を更に短縮することができる。
【0060】
なお、このチューブポンプ81を用いて通液している間も、正圧計58と負圧計59をモニターし、圧力の関係を(1)式の関係となうように、インク供給ポンプ52とインク排出ポンプ56の稼動(回転数)を制御すると良く、この場合の圧力Pin及び圧力Poutの値は、振動する圧力の最大値を用いると良い。圧力Pin及び圧力Poutの最大値で制御することで、収容部22内の圧力の最大圧力値を制御することができるので、フィルム部材23の破損を起こすことなくインクの交換を行うことができるようになる。
【0061】
次に、上記各実施形態で説明したインク供給系を備える画像形成装置の一例について図9を参照して説明する。
この画像形成装置は、上記液体吐出ヘッドユニット1からなる記録ヘッド101を、キャリッジ103に搭載して、左右の側板100A、100B間に横架した主ガイドロッド104と図示しない副ガイド部材とで摺動自在に支持している。この記録ヘッド101は、タイミングベルト105を介して主走査モータ106によって主走査方向に移動走査される。一方、被記録媒体107は記録ヘッド101のノズル面108と対向し、記録ヘッド101の移動方向と直交する方向に搬送ローラ109によって搬送され、記録ヘッド101から画像に応じて吐出されるインク滴が付着されて画像が形成される。
【0062】
記録ヘッド101へのインクの供給は、メインタンク5や大気開放管55等が納められたメインタンクユニッ102からインク供給ポンプ52を経由してフレキシブルなインク供給径路51によってなされる。また、記録ヘッド101にはノズルから吐出又は排出されなかったインクや前述した置換液や入替前のインクなどがインク排出経路55を通じて廃液タンク118に排出される。
【0063】
また、記録領域外に設けられたキャップ部材111は、複数のノズル11を有するノズル面108をキャッピングする弾性体、好ましくはシリコンゴム等からなる。非記録時には、記録ヘッド101がキャップ部材111の上方まで移動し、キャップ部材111が図示していないキャップ移動機構によって移動してノズル面108をキャッピングする。このキャップ部材111内には、インク吸引の際の吸引容易化、キャップ内雰囲気湿潤化等のため、インク吸収シート112が設けられている。
【0064】
このキャップ部材111には、底面に2本のチューブ113、114が連結され、チューブ113は大気開放弁115を介して大気に連通される。チューブ114は吸引ポンプ116に接続され、キャップ部材111でノズル面108をキャッピングし、大気開放弁115を閉じた状態で、吸引ポンプ116を駆動してキャップ部材111内に負圧を発生させることで、記録ヘッド101のノズルからインクを吸引し、大気開放弁115を開放することでキャップ部材111内の空間117に溜まったインクを廃液タンク118に排出する。また、キャップ部材111は、大気開放弁115を閉じた状態でノズル面108に接触させ保持することで、記録ヘッド101のノズルの乾燥を防止する。
【0065】
さらに、図示していないワイパ移動機構によってワイパーブレード(ワイパ部材)119を記録ヘッド101のノズル面108に接触する高さまで移動させ、記録ヘッド101を主走査方向に移動させてワイパーブレード119によりノズル面108に付着したインクや塵埃を払拭し、ノズル面108のメニスカスの生成やクリーニングを行うことができる。
【0066】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0067】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0068】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0069】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0070】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 液体吐出ヘッドユニット
2 ヘッド
4 ヘッドタンク(サブタンク)
5 メインタンク
11 ノズル
13 共通液室
14 供給ポート
15 排出ポート
21 タンクケース
22 収容部
23 ダンパ部材(フィルム部材)
24 供給ポート
25 排出経路
51 インク供給経路
52 インク供給ポンプ
53 供給バルブ
54 排出バルブ
55 インク排出経路
56 排出ポンプ
101 記録ヘッド(液体吐出ヘッドユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに供給する液体を収容する液体収容部を有するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクに供給する前記液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を供給する液体供給経路と、を備え、
前記ヘッドには前記液体が供給される供給口部と前記液体を排出する排出口部とが設けられ、
前記ヘッドの供給口部は前記ヘッドタンクに接続され、
前記ヘッドの前記排出口部には前記ヘッドタンクを介して、または、直接、前記液体を外部に排出する液体排出経路が接続され、
前記液体供給経路には前記液体を加圧して送液する送液ポンプが設けられ、
前記液体排出経路には前記液体を吸引して排出する排出ポンプが設けられ、
前記メインタンクを交換して少なくとも前記メインタンクから前記ヘッドの排出口部に至る流路内の前記液体を入れ替えるとき、前記供給ポンプ及び前記排出ポンプを共に駆動させる手段を有し、
前記供給ポンプと前記排出ポンプを共に駆動するとき、前記供給ポンプから加圧する圧力値と前記排出ポンプから吸引する圧力値の絶対値比が、前記液体供給経路の前記供給ポンプから前記ヘッドタンク内の液体収容部までの流路の流体抵抗と、前記ヘッドタンク内の液体収容部から前記液体排出経路の前記排出ポンプまでの流路の流体抵抗の比の逆比例である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記液体を入れ替えるとき、前記ヘッドをキャップ部材で封止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記供給ポンプ及び前記排出ポンプの少なくとも一方はチューブポンプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236292(P2012−236292A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105389(P2011−105389)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】