説明

画像形成装置

【課題】転写部材の本体側部材への加圧力を均一にすることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】支持ユニット26は、転写部材13を保持する保持部材30と、転写部材13が本体側部材12に接近・離間するように保持部材30を変位可能に支持した状態で扉23の裏面に配設された支持部材29と、保持部材30と支持部材29の間に配設されると共に転写部材13を本体側部材12に付勢する第一付勢手段32とを備え、支持部材29を画像形成装置本体24に対して位置決めする位置決め手段31,39,40,41を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像形成装置における代表的な画像の転写方式として、複数の感光体上にそれぞれ形成した色の異なるトナー画像を、転写搬送ベルト等により搬送される記録媒体(以下、用紙という)上に直接順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成する直接転写方式が知られている。また、別の転写方式として、上記と同様に形成した色の異なるトナー画像を、一旦中間転写ベルト上に順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成し、そのカラー画像を一括して用紙に転写する間接転写方式がある。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置は、一般に、中間転写ベルトと、中間転写ベルトを介して対向する二次転写ローラ及び対向ローラを備えている。そして、中間転写ベルトと二次転写ローラとが圧接する転写ニップに用紙を通過させることにより、中間転写ベルト上のトナー画像を用紙へ転写する。
【0004】
近年、メンテナンスや、紙詰まりの処理を容易に行うために、画像形成装置に開閉可能に設けた扉(可動筐体)に、二次転写ローラ等を一体状に付設したものがある(例えば、特許文献1参照)。この扉を開放することにより、二次転写ローラを本体側の中間転写ベルトと離間させることができ、転写ニップに詰まった用紙を速やかに除去することができる。また、扉を開放すると、画像形成装置内の中間転写ベルト等が露呈された状態となるので、それらの修理・交換等を行うこともできる。扉を閉状態としたときは、扉に配設したスプリングによって二次転写ローラを中間転写ベルト側へ付勢して互いに圧接するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示す画像形成装置は、二次転写ローラを付勢するスプリングが扉に付設されているため、扉の閉じ位置が所定の位置からずれると、二次転写ローラの中間転写ベルトへの加圧力が、扉の閉じ位置の影響を受けて変動する。このように二次転写ローラの中間転写ベルトへの加圧力が不均一となると、用紙の搬送安定性や用紙への画像転写精度が悪化するといった不具合が生じる。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑み、二次転写ローラの中間転写ベルトへの加圧力を均一にすることができる画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、画像形成装置本体に開閉可能な扉を付設した画像形成装置であって、転写部材を支持した支持ユニットを前記扉の裏面に配設すると共に、前記扉の閉状態で前記転写部材が前記画像形成装置本体に配設した本体側部材に圧接してトナー画像を記録媒体上に転写するためのニップを形成するように構成した画像形成装置において、前記支持ユニットは、前記転写部材を保持する保持部材と、前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように変位可能に前記保持部材を支持した状態で前記扉の裏面に配設された支持部材と、前記保持部材と前記支持部材の間に配設されると共に前記転写部材を前記本体側部材に付勢する第一付勢手段とを備え、前記支持部材を前記画像形成装置本体に対して位置決めする位置決め手段を設けたものである。
【0008】
扉を開状態から閉状態にすると、位置決め手段により支持部材が画像形成装置本体に対して所定の位置に位置決めされると共に、転写部材は本体側部材に接近して当接する。支持部材を位置決めした状態で、第一付勢手段が(保持部材を介して)転写部材を本体側部材に付勢するので、転写部材を本体側部材に対して均一な加圧力で圧接させることができる。
【0009】
すなわち、扉が所定の閉じ位置からずれていても、支持部材は画像形成装置本体に対して所定の位置に位置決めされるので、第一付勢手段の転写部材への付勢力は、扉の閉じ位置のばらつきによって変動することがない。これにより、転写部材と本体側部材間の加圧力を均一にすることが可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記位置決め手段は、前記支持部材に配設した突き当て部と、当該突き当て部が当接可能な前記画像形成装置本体側の受け部を有するものである。
【0011】
扉を閉状態としたときに、突き当て部が受け部に当接することによって、支持部材を画像形成装置本体に対して位置決めすることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、前記支持部材を前記画像形成装置本体へ接近・離間するように前記扉の裏面に変位可能に付設すると共に、前記支持部材と前記扉との間に、前記支持部材を前記画像形成装置本体側に付勢する第二付勢手段を配設したものである。
【0013】
扉を閉状態にしたときに、第二付勢手段が支持部材を画像形成装置本体側に付勢するので、突き当て部を受け部に圧接することができる。これにより、支持部材を画像形成装置本体に対して確実に位置決めすることができる。また、支持部材は扉に対して変位可能に付設されているので、支持部材は扉の閉じ位置に強制されず、所定の位置に正確に位置決めされる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3に記載の画像形成装置において、前記突き当て部を前記受け部に接近させる前記第二付勢手段の付勢力を、前記突き当て部を前記受け部から離間させる前記第一付勢手段の付勢力より大きく設定したものである。
【0015】
これにより、突き当て部を受け部に確実に当接させることができ、支持部材が画像形成装置本体に対して位置決めされる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記突き当て部を前記支持部材に複数配設すると共に、前記受け部を前記複数の突き当て部に対応して前記画像形成装置本体側に複数配設したものである。
【0017】
これにより、支持部材の画像形成装置本体に対する位置決めの精度を一層向上させ得る。
【0018】
請求項6の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記保持部材を、前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように、前記支持部材に配設した支軸に揺動可能に付設すると共に、前記支軸を前記突き当て部としたものである。
【0019】
保持部材を揺動可能に支持する支軸に、突き当て部としての機能を持たせることで、部品点数を削減してコストの低減を図ることができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項2から6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記扉を前記画像形成装置本体の前面に配設すると共に、前記扉の下端部を揺動支点として扉を前後方向へ揺動して開閉可能に構成した画像形成装置であって、前記突き当て部と受け部を二組設け、一組の突き当て部及び受け部を、前記支持部材を前後方向及び上下方向の移動を阻止する第一位置決め手段とすると共に、別の一組の突き当て部及び受け部を、前記第一位置決め手段の突き当て部と受け部の当接位置を中心とする前記支持部材の回転方向の移動を阻止する第二位置決め手段としたものである。
【0021】
これにより、画像形成装置本体に対して、支持部材を所定の姿勢と位置に正確に保持することができる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7に記載の画像形成装置において、前記第一位置決め手段の突き当て部を、前記支持部材の下部に配設したものである。
【0023】
第一位置決め手段の突き当て部を、扉の下端部の揺動支点に近い位置に配置することができる。これにより、扉を開閉した際の前記突き当て部の移動経路を短くすることができ、画像形成装置内部における突き当て部の移動経路の確保が容易となる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の画像形成装置において、前記第一位置決め手段の突き当て部を、前記転写部材を支持した支持ユニットの重心より前記扉側に配設したものである。
【0025】
扉を閉状態にした場合、重心が、第一位置決め手段の突き当て部と受け部の当接位置より画像形成装置本体側に配置される。この重心に作用する重力によって、第一位置決め手段の突き当て部は、受け部に接近する方向に付勢される。これにより、第一位置決め手段の突き当て部を受け部に確実に当接させることができる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項7から9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記保持部材を前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように前記支持部材に配設した支軸に揺動可能に付設すると共に、前記支軸を前記第二位置決め手段の突き当て部としたものである。
【0027】
保持部材を揺動可能に支持する支軸に、突き当て部としての機能を持たせることで、部品点数を削減してコストの低減を図ることができる。
【0028】
請求項11の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記転写部材が転写ローラであって、当該転写ローラを前記保持部材が回転可能に保持したものである。
【0029】
本発明の構造を、転写ローラを用いた画像形成装置に適用することができる。
【0030】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記支持部材に前記記録媒体を搬送する搬送手段を配設したものである。
【0031】
画像形成装置本体に対して支持部材を位置決めすることによって、搬送手段も画像形成装置本体に対して所定の位置に位置決めすることができる。これにより記録媒体の搬送安定性が向上する。
【0032】
請求項13の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、前記搬送手段がレジストローラである。
【0033】
レジストローラを画像形成装置に対して所定の位置に位置決めすることができる。
【0034】
請求項14の発明は、請求項1から13のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記転写部材へ記録媒体を誘導するためのガイド部材を、前記保持部材に配設したものである。
【0035】
ガイド部材を、転写部材を保持する保持部材に配設したので、ガイド部材は転写部材に対して常に同じ位置に保持される。これにより、ガイド部材は転写部材へ安定して記録媒体を誘導することが可能である。
【0036】
請求項15の発明は、請求項1から14のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記本体側部材が、形成されたトナー画像を一次転写するための中間転写部材であって、前記転写部材が、前記中間転写部材に一次転写されたトナー画像を前記記録媒体に二次転写するための二次転写部材である。
【0037】
本発明の構造を、中間転写部材を用いた間接転写方式の画像形成装置に適用可能である。
【0038】
請求項16の発明は、請求項15に記載の画像形成装置において、前記中間転写部材は、前記扉を開放した際に前記画像形成装置本体に形成される開口部を通過して画像形成装置本体の内外に出し入れ可能に構成したものである。
【0039】
中間転写部材を画像形成装置本体から取り出すことにより、転写部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0040】
請求項17の発明は、請求項16に記載の画像形成装置において、前記支持部材を前記扉に着脱可能に構成したものである。
【0041】
扉を開放した状態で、支持部材を扉から取り外せば、支持部材が前記中間転写部材を画像形成措置から取り出す作業の妨げとなるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の画像形成装置によれば、第一付勢手段による転写部材への付勢力が、扉の閉じ位置のばらつきによって変動することがなく、転写部材と本体側部材間の加圧力を均一にすることが可能となる。これにより、用紙の搬送安定性や用紙への画像転写精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成図である。
【図2】前記画像形成装置の前カバーの開閉動作を示す模式図である。
【図3】前記画像形成装置の要部を示す簡略図である。
【図4】前記前カバーから二次転写ローラ等を支持する支持ユニットを取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】前記前カバーに対する支持ユニットの着脱動作を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の画像形成装置の概略を示す全体構成図である。以下、同図に基づいてこの画像形成装置の主要部を説明する。画像形成装置は、カラー画像の色分解成分に対応するブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の現像剤によって画像を形成するための4つのプロセスユニット1K,1C,1M,1Yを備えている。
【0045】
各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yは、互いに異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成になっている。1つのプロセスユニット1Kを例にその構成を説明すると、プロセスユニット1Kは、像担持体2と、クリーニング手段3と、帯電手段4と、現像手段5等を有している。プロセスユニット1Kは画像形成装置の本体に対して着脱可能に装着されている。
【0046】
各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yの上方には、露光器7が配設されている。この露光器7は、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光(L1〜L4)を発するように構成されている。
【0047】
また、各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yの下方には、転写ベルト装置8が配設されている。この転写ベルト装置8は、各像担持体2に対向する4つの一次転写ローラ9a,9b,9c,9d、駆動ローラ10、テンションローラ11等に架け渡され回転駆動する無端状の中間転写ベルト12を備えている。駆動ローラ10に対向すると共に中間転写ベルト12と圧接して画像転写用のニップを形成する二次転写ローラ13が配設されている。二次転写ローラ13の代わりに、無端状の転写搬送ベルトを採用してもよい。また、中間転写ベルト12上には、ベルトクリーニング装置14が配設してあり、クリーニングバックアップローラ15がベルトクリーニング装置14に対向して配設されている。
【0048】
画像形成装置の下部には、シート状記録媒体としての用紙を多数枚収容可能な給紙カセット16と、給紙カセット16から用紙を送り出す給紙ローラ17が設けてある。給紙ローラ17から二次転写ローラ13と中間転写ベルト12のニップに至る途中には、用紙を一旦停止させるレジストローラ対18が配設されている。
【0049】
二次転写ローラ13の上方には、定着装置19が設けてある。定着装置19は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ19aと、これに対し所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ19bを備えている。
【0050】
定着装置19の上方には、用紙を外部へ排出するための排紙ローラ対20が配設してある。排紙ローラ対20によって排出される用紙は、上部カバーを内方へ凹ませて形成した排紙トレイ21上に積載されるように構成されている。また、画像形成装置の前側(図の右側)であってその上部には、作像動作等の各種動作の指示をするための操作パネル28が配設されている。
【0051】
転写ベルト装置8と給紙カセット16の間には、廃トナーを収容する廃トナー収容器22が配設されている。廃トナー収容器22の入り口部にはベルトクリーニング装置14から伸びた図示しない廃トナー移送ホースが接続されている。
【0052】
以下、この画像形成装置の基本的動作について説明する。
図1において、図示しない画像形成装置の制御部からの給紙信号によって給紙ローラ17が回転すると、給紙カセット16に積載した用紙の最上位の用紙のみが分離されてレジストローラ対18側へ送り出される。用紙の先端がレジストローラ対18のニップに到達すると、中間転写ベルト12上に形成されるトナー画像とタイミング(同期)をとるために用紙を待機させる。
【0053】
次に、作像動作について説明する。
1つのプロセスユニット1Kを例にして説明すると、まず、帯電手段4にて像担持体2の表面を均一な高電位に帯電させる。画像データに基づいて露光器7から像担持体2の表面にレーザビームL1が照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された像担持体2の表面部分に現像手段5によってトナーを転移させ、ブラックのトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2上に形成したトナー画像を中間転写ベルト12に一次転写する。その他の各色のプロセスユニット1C,1M,1Yにおいても、同様にして像担持体2上にトナー画像が形成され、4色のトナー画像が重なり合うように中間転写ベルト12に転写される。
【0054】
また、各クリーニング手段3は、中間転写行程を経た後の像担持体2表面に付着している残留トナーを除去する。その後、図示しない除電装置が、クリーニング後の像担持体2の残留電荷を除電する。
【0055】
レジストローラ対18と給紙ローラ17が駆動を再開し、中間転写ベルト12に重畳転写したトナー画像とタイミング(同期)をとって用紙を二次転写ローラ13へ送る。そして、二次転写ローラ13によって、送られてきた用紙に重畳転写したトナー画像を二次転写する。
【0056】
トナー画像を転写された用紙は定着装置19へと搬送される。定着装置19に送り込まれた用紙は、定着ローラ19aと加圧ローラ19b間に挟まれ、その未定着トナー画像が加熱・加圧されて用紙に定着される。トナー画像が定着された用紙は、定着装置19から排紙ローラ対20へ送り出され、排紙ローラ対20によって排紙トレイ21へ排出される。
【0057】
また、転写ベルト12上のトナー画像を用紙に転写した後、転写ベルト12上には残留トナーが付着しており、この残留トナーは、ベルトクリーニング装置14によって転写ベルト12から除去される。転写ベルト12から除去されたトナーは、図示しない廃トナー搬送手段によって、粉体収容器22へと搬送され回収される。
【0058】
図2は本発明に係る画像形成装置の模式図である。同図に示すように、画像形成装置本体24の前部(図の右側)に配設された前カバー23は、開閉可能な扉となっている。前カバー23は、その下端の揺動支点25を中心として矢印Aの方向に揺動可能に構成されている。この前カバー23の裏面に、二次転写ローラ13及びレジストローラ対18等を支持する支持ユニット26が取り付けられている。そして、前カバー23を前方(図の右側)へ揺動させて開放することにより、二次転写ローラ13及びレジストローラ対18等を、中間転写ベルト12、廃トナー収容器22の前から退避させることが可能となっている。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト12のニップ間に紙詰まりが生じても、前カバー23を開放すれば、二次転写ローラ13を中間転写ベルト12から離させることができ、詰まった用紙を速やかに除去することができる。
【0059】
図3は、本発明の画像形成装置の要部を示す簡略図である。図3に示すように、支持ユニット26は、前カバー23の裏面に取り付けられた支持部材29と、支持部材29に付設された保持部材30を有する。支持部材29には、レジストローラ対18が回転可能に付設されている。一方、保持部材30には、二次転写ローラ13が回転可能に付設されると共に、用紙をレジストローラ対18から二次転写ローラ13へ誘導するためのガイド部材33が配設されている。支持部材29及び保持部材30は、レジストローラ対18及び二次転写ローラ13の各軸線方向に長く形成された樹脂製部材である(図4参照)。
【0060】
支持部材29の上部には、支軸31が長手方向に配設されている。その支軸31に保持部材30の上端部が回転可能に付設され、保持部材30は支軸31を中心に揺動可能に構成されている。保持部材30と支持部材29の間に、コイルばね等の第一付勢手段32が配設され、この第一付勢手段32によって保持部材30は支持部材29から離間する方向に付勢される。この実施形態では、第一付勢手段32は、保持部材30又は支持部材29の長手方向に離間して対称的に2つ並設されている。
【0061】
支持部材29は前カバー23に着脱可能に付設されている。詳しくは、支持部材29は、前カバー23に取り付けるための突起34及び係合片36を有している。一方、前カバー23には、突起34を差し込むための孔部35、係合片36と係合可能なロック爪37が配設されている。ロック爪37は、図3の矢印Bと矢印Cの方向にスライド移動可能に装着され、図示しないばねによってロック爪37は係合片36と係合するB方向へ付勢されている。また、ロック爪37を矢印C方向へ移動させて係合片36との係合を解除するための解除操作部38が、ロック爪37に一体に設けられている。
【0062】
また、この実施形態では、図2に示す一次転写ローラ9a,9b,9c,9d、駆動ローラ10、テンションローラ11、中間転写ベルト12等から成る中間転写ユニット27、及び廃トナー収容器22は、前カバー23を開放した際に形成される開口部から前方(図の右側)に引き出して取り外し可能に構成されている。このように構成することで、中間転写ユニット27や廃トナー収容器22のメンテナンス作業が容易となる。しかし、中間転写ユニット27や廃トナー収容器22を取り出す際に、前カバー23に支持ユニット26が取り付けられていると取り出し作業の妨げになる。
【0063】
そこで、中間転写ユニット27等を画像形成装置本体24から取り出す際には、支持ユニット26を前カバー23から取り外す。以下、支持ユニット26の取り外し方法について説明する。
【0064】
前カバー23を開放した状態で、図5に示すように、解除操作部38を操作して、ロック爪37を図示しないばねの付勢力に対抗して矢印Cの方向へ移動させる。これにより、ロック爪37と支持部材29の係合片36との係合が解除される。そして、支持部材29を矢印Dの方向へ揺動させつつ、突起34を前カバー23の孔部35から抜き出して、支持部材29(支持ユニット26)を前カバー23から取り外すことができる。
【0065】
また、支持ユニット26を前カバー23に取り付ける場合は、まず突起34を孔部35に差し込む。次に、係合片36を前カバー23に接近させると、ロック爪37は上記ばね力によって矢印Bの方向に戻されているので、係合片36はロック爪37のテーパー部37aに当接する。係合片36をそのまま押し込むことにより、ロック爪37を上記ばね力に対抗して矢印C方向へ移動させる。そして、係合片36がロック爪37を乗り越えた瞬間、ロック爪37が上記ばね力によって矢印B方向に戻されて係合片36と係合する。このようにして、支持ユニット26の前カバー23への取付が完了する。
【0066】
支持部材29(支持ユニット26)を前カバー23に取り付けた状態において、突起34と孔部35の間、及び係合片36とロック爪37の間には、幅方向(用紙搬送幅方向)においてほとんどガタつきがない。しかし、支持部材29の前カバー23への着脱操作を簡単に行い得るようにするために、上記部材間には、図3に示す状態において図の左右方向(前後方向)のガタつきを持たせている。
【0067】
このように、支持ユニット26の着脱操作を簡単に行い得るように構成すると、取り付けたときの位置精度を十分に確保することが困難となる。そして、支持ユニット26の位置精度が不十分となると、前カバー23を閉じたときの二次転写ローラ13等の位置精度も低下し、二次転写ローラ13と中間転写ベルト12の加圧力が不均一となる不具合が発生する。このままでは、用紙の搬送安定性や画像転写精度が悪化する虞がある。
【0068】
そのため、本発明では、支持ユニット26の位置精度の向上、それに伴う二次転写ローラ13等の位置精度の向上、及び二次転写ローラ13と中間転写ベルト12の加圧力の均一化を図るべく、以下に述べる構造を採用している。
【0069】
本発明の画像形成装置は、上述のように支持部材29と前カバー23の間にガタつきがあっても、支持部材29を画像形成装置本体24に対して位置決めすることが可能な位置決め手段を備えている。位置決め手段は、支持部材29に配設された突き当て部と、突き当て部が当接可能な画像形成装置本体24側の受け部とから構成されている。
【0070】
図3において、この実施形態では、支持部材29の側面の下部に配設した凸部39を、第一位置決め手段の突き当て部とすると共に、画像形成装置本体24に配設したL字形の部材を、第一位置決め手段の受け部40としている。また、支持部材29の上部に配設した支軸31を第二位置決め手段の突き当て部とすると共に、画像形成装置本体24に配設したI字形の部材を、第二位置決め手段の受け部41としている。
【0071】
上記凸部39は支持部材29の左右両側面に配設され、それらと当接する受け部40も左右に一対配設している。また、支軸31と当接する受け部41も左右に一対配設され、支軸31の両端が各受け部41,41に当接するようになっている。
【0072】
また、各受け部40,41の形状は、図3に示す形状に限定されない。例えば、受け部40を凸部39が接近する方向に開口したV字形又はU字形等の形状にしてもよい。また、各受け部40,41に、凸部39・支軸31を対応する受け部40,41へ導くガイド部を連設してもよい。
【0073】
図3において、符号Gの点は、二次転写ローラ13やレジストローラ対18などを一体に保持した支持ユニット26の重心である。上記凸部39はこの重心Gより前カバー23側に配設されている。
【0074】
また、支持部材29と前カバー23の間には、2つの第二付勢手段42が長手方向に離間して対称的に並設されている。第二付勢手段42は、前カバー23を閉じた状態で、支持部材29を画像形成装置本体24側へ付勢する。この第二付勢手段42の付勢力によって、凸部39と支軸31は、それぞれ受け部40,41に押圧されるようになっている。
【0075】
一方、前カバー23の閉状態において、支持部材29と保持部材30間の第一付勢手段32の付勢力は、凸部39と支軸31をそれぞれ受け部40,41から離間させる方向に作用する。凸部39と支軸31を受け部40,41に確実に当接させるために、凸部39と支軸31を受け部40,41に接近させる第二付勢手段42の付勢力を、凸部39と支軸31を受け部40,41から離間させる第一付勢手段32の付勢力より大きく設定している。
【0076】
以下、前カバー23を閉じたときの動作について説明する。
図2の二点鎖線で示す前カバー23を開放した状態から閉じる方向に揺動させると、支持ユニット26及びそれに支持された二次転写ローラ13等の各部材は、画像形成装置本体24側へ接近する。
【0077】
その後、図3に示す支持部材29の凸部39が、L字形の受け部40に接近し当接する。凸部39が受け部40と当接することにより、支持部材29は図3の上下方向及び左右方向(前後方向)の移動が阻止される。
【0078】
また、支軸31が、I字形の受け部41に接近し当接する。支軸31が受け部41に当接することにより、上記凸部39と受け部40の当接位置を中心とする支持部材29の回転方向の移動が阻止される。これにより、支持部材29の姿勢が決定され、所定の位置に位置決めされる。なお、図3に示す実施形態では、支軸31と凸部39は、支持部材29の上部と下部の互いに離れた位置に配設されているので、支持部材29の位置及び姿勢をより正確に決定することができる。
【0079】
さらに、凸部39及び支軸31がそれぞれ受け部40,41に当接した後、第二付勢手段42の付勢力によって、凸部39及び支軸31は受け部40,41側に付勢されて圧接するので、確実に位置決めすることができる。
【0080】
また、二次転写ローラ13は、駆動ローラ10と対向する位置に接近し、中間転写ベルト12に当接する。そして、二次転写ローラ13は、第一付勢手段32によって中間転写ベルト12へ押圧された状態となる。なお、第二付勢手段42は、凸部39と支軸31をそれぞれ受け部40,41に圧接して支持部材29を所定の位置に位置決めするためのものであり、二次転写ローラ13の中間転写ベルト12への加圧力には影響を与えない。
【0081】
前カバー23は閉じ位置に配置されると、図示しないロック機構により画像形成装置本体24に係止されて閉状態に保持される。
【0082】
前記前カバー23の閉状態において、係合片36とロック爪37との間にガタつきを持たせているので、支持部材29は前カバー23から浮いた状態になる。つまり、支持部材29は前カバー23に対してある程度接近・離間可能となっているので、支持部材29の位置は前カバー23の閉じ位置に拘束されない。従って、仮に、前カバー23が所定の閉じ位置からずれていたとしても、支持部材29は画像形成装置本体24に対して所定の位置に位置決めされる。そして、支持部材29が画像形成装置本体24に対して位置決めされるので、第一付勢手段32による二次転写ローラ13への付勢力は、前カバー23の閉じ位置のばらつきによって変動することがなく、二次転写ローラ13と中間転写ベルト12間の加圧力を均一にすることができる。
【0083】
また、図3に示す前カバー23の閉状態において、重心Gは、凸部39と受け部40との当接位置よりも画像形成装置本体24側に配置されているので、この重心Gに作用する重力によって、凸部39及び支軸31は、それぞれ受け部40,41に接近する方向に付勢される。これにより、凸部39と支軸31を、受け部40,41に確実に当接させることができる。
【0084】
また、重心Gに作用する重力が、凸部39と支軸31の付勢手段として機能することにより、第二付勢手段42の付勢力を小さくしても、凸部39と支軸31を受け部40,41に圧接するための十分な付勢力を得ることが可能となる。そして、第二付勢手段42の付勢力を小さくすることにより、第二付勢手段42が支持部材29や前カバー23の接触面に与える押圧力を低減させることができ、その押圧力による支持部材29・前カバー23の変形を抑制することができる。
【0085】
また、第一付勢手段32に使用するコイルばね等のばね定数は、なるべく低いものが好ましい。ばね定数が高いものを使用すると、各部材の寸法公差や組み付け誤差によって第一付勢手段32の付勢力が変動しやすいからである。ただし、第一付勢手段32にばね定数の低いばねを採用した場合、保持部材30を付勢するための十分な付勢力を確保するためには、そのばねを長く設定する必要がある。そのために、図3に示すように、第一付勢手段32を支軸31からなるべく離れた位置に配置することが望ましい。第一付勢手段32が支軸31から遠ざかるほど、支持部材29と保持部材30の間の第一付勢手段32を配置するスペースが広くなるからである。
【0086】
以上、本発明の画像形成装置の実施の一形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、二次転写ローラ13を支持する支持ユニット26は前カバー23に対して着脱可能に構成されているが、支持ユニット26を前カバー23に固定した型式の画像形成装置に本発明の構造を適用することも可能である。
【0087】
また、上述の実施形態では、本発明の構造を間接転写方式の画像形成装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、直接転写方式の画像形成装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
12 中間転写ベルト
13 二次転写ローラ
18 レジストローラ
23 前カバー
24 画像形成装置本体
26 支持ユニット
29 支持部材
30 保持部材
31 支軸
32 第一付勢手段
33 ガイド部材
39 凸部
40 受け部
41 受け部
42 第二付勢手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2002−296927号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に開閉可能な扉を付設した画像形成装置であって、転写部材を支持した支持ユニットを前記扉の裏面に配設すると共に、前記扉の閉状態で前記転写部材が前記画像形成装置本体に配設した本体側部材に圧接してトナー画像を記録媒体上に転写するためのニップを形成するように構成した画像形成装置において、
前記支持ユニットは、前記転写部材を保持する保持部材と、前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように変位可能に前記保持部材を支持した状態で前記扉の裏面に配設された支持部材と、前記保持部材と前記支持部材の間に配設されると共に前記転写部材を前記本体側部材に付勢する第一付勢手段とを備え、前記支持部材を前記画像形成装置本体に対して位置決めする位置決め手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記支持部材に配設した突き当て部と、当該突き当て部が当接可能な前記画像形成装置本体側の受け部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記支持部材を前記画像形成装置本体へ接近・離間するように前記扉の裏面に変位可能に付設すると共に、前記支持部材と前記扉との間に、前記支持部材を前記画像形成装置本体側に付勢する第二付勢手段を配設したことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記突き当て部を前記受け部に接近させる前記第二付勢手段の付勢力を、前記突き当て部を前記受け部から離間させる前記第一付勢手段の付勢力より大きく設定したことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記突き当て部を前記支持部材に複数配設すると共に、前記受け部を前記複数の突き当て部に対応して前記画像形成装置本体側に複数配設したことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記保持部材を、前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように、前記支持部材に配設した支軸に揺動可能に付設すると共に、前記支軸を前記突き当て部としたことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記扉を前記画像形成装置本体の前面に配設すると共に、前記扉の下端部を揺動支点として扉を前後方向へ揺動して開閉可能に構成した画像形成装置であって、
前記突き当て部と受け部を二組設け、一組の突き当て部及び受け部を、前記支持部材を前後方向及び上下方向の移動を阻止する第一位置決め手段とすると共に、別の一組の突き当て部及び受け部を、前記第一位置決め手段の突き当て部と受け部の当接位置を中心とする前記支持部材の回転方向の移動を阻止する第二位置決め手段としたことを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第一位置決め手段の突き当て部を、前記支持部材の下部に配設したことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第一位置決め手段の突き当て部を、前記転写部材を支持した支持ユニットの重心より前記扉側に配設したことを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記保持部材を前記転写部材が前記本体側部材に接近・離間するように前記支持部材に配設した支軸に揺動可能に付設すると共に、前記支軸を前記第二位置決め手段の突き当て部とした請求項7から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写部材が転写ローラであって、当該転写ローラを前記保持部材が回転可能に保持したことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記支持部材に前記記録媒体を搬送する搬送手段を配設したことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記搬送手段がレジストローラであることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記転写部材へ記録媒体を誘導するためのガイド部材を、前記保持部材に配設したことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記本体側部材が、形成されたトナー画像を一次転写するための中間転写部材であって、前記転写部材が、前記中間転写部材に一次転写されたトナー画像を前記記録媒体に二次転写するための二次転写部材であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記中間転写部材は、前記扉を開放した際に前記画像形成装置本体に形成される開口部を通過して画像形成装置本体の内外に出し入れ可能に構成したことを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記支持部材を前記扉に着脱可能に構成したことを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−37914(P2012−37914A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252958(P2011−252958)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【分割の表示】特願2007−186015(P2007−186015)の分割
【原出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】