説明

画像形成装置

【課題】キャップ内の負圧を低減するときに、廃液タンク側から排出経路を通じて吸引キャップ内に空気が流入してキャップ内に気泡が発生し、混色などを発生する。
【解決手段】液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面124を有する記録ヘッド24と、記録ヘッド24のノズル面124をキャッピングする吸引キャップ92aと、吸引キャップ92aに接続された排出経路191と、排出経路191に設けられたチューブポンプからなる吸引ポンプ96と、吸引キャップ92aでノズル面124をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する大気開放口193を備え、大気開放口193は吸引ャップ92a内に排出される液面の高さよりも高い位置でキャップ92a内に連通し、排出経路191には吸引ポンプ96側からキャップ92a側への流体の流れを阻止する逆止弁196が設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置において、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持し、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のため、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復機構を備え、例えばノズルから増粘インクをキャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作などを行なう。
【0005】
従来の維持回復機構として、キャップからの排出経路にチューブポンプからなる吸引ポンプを設け、1つの駆動源であるモータでキャップの移動とチューブポンプの回転を行う駆動力伝達機構を備え、モータの正方向回転で吸引ポンプを動作させ、逆方向回転でキャップの移動(昇降)を行うものが知られている(特許文献1)。
【0006】
なお、従来の維持回復機構として、例えばキャップと吸引ポンプとの間に開閉弁を設けるものも知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−000780号公報
【特許文献2】特開2007−160793号公報
【特許文献3】特開2010−120266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1に開示されているような維持回復機構において、キャップをノズル面から離間させるとき、キャップ内は負圧になっているため、吸盤のようにキャップがノズル面に吸着されていることから、キャップをノズル面から離間するときにキャップ内の密閉空間の負圧を低下させる必要がある。
【0009】
そこで、キャップをノズル面から離間させるためにモータを逆回転したときに、チューブポンプのチューブをしごくコロによるチューブの押圧が解除されるようにして、廃液排出側の大気とキャップ内とを連通して、キャップ内の負圧を低下させるようにする。
【0010】
ところが、このようにチューブポンプのコロの押圧解除を行うと、廃液排出側からキャップ内に向かう圧力の流れが発生し、空気が侵入してキャップ内に気泡が発生することがある。
【0011】
このように、キャップ内に気泡が発生し、成長すると、キャップ内に残っている排出インクがノズル面に付着することになる。
【0012】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置として、被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送し、被記録媒体に対して水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッドを往復移動させながら、記録ヘッドから液滴を吐出させて被記録媒体に画像を形成させる構成のもの、つまり、液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面が垂直方向又は垂直方向に対して傾斜して配置され、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッドを有する構成のものがある。なお、被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送し、被記録媒体に対して水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する方式を「水平打ち方式」という。ここで、水平方向に対して傾斜した方向とは、例えば水平方向を基準として斜め下方向に45°傾斜した位置から斜め上方向に45°傾斜した範囲とし、この範囲を「水平方向」というものとする(鉛直方向に沿う方向に対する傾斜、「垂直方向」の意味も同様とする。)。なお、媒体搬送方向と滴吐出方向を上記と逆の関係にしたものを「垂直打ち方式」という。
【0013】
このような水平打ち方式の画像形成装置において、異なる色の液滴を吐出する複数のノズル列を有する1つの記録ヘッドを使用する場合、前述したように、キャップ内に排出された排出インクは混色状態にあるため、キャップ内で気泡が発生すると、混色した排出インクがノズル面に付着してノズル内に侵入し、混色を生じて画像品質が低下することになる。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、キャップ内の負圧低減時にキャップ内に気泡が発生することを防止して、気泡による混色の発生などを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、
前記キャップに接続された排出経路と、
前記排出経路に設けられたチューブポンプからなる吸引ポンプと、
前記キャップで前記ノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する大気開放手段と、を備え、
前記大気開放手段は前記キャップ内に排出される液面の高さよりも高い位置で前記キャップ内に連通し、
前記排出経路には前記吸引ポンプ側から前記キャップ側への流体の流れを阻止する逆止弁が設けられている
構成とした。
【0016】
ここで、前記記録ヘッドは、前記ノズル面が垂直方向又は垂直方向に対して傾斜して配置され、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する構成とできる。
【0017】
また、前記逆止弁は、前記吸引ポンプと前記キャップとの間に設けられている構成とできる。
【0018】
また、前記大気開放手段は前記キャップを前記ノズル面から離間させる動作に連動して大気開放する構成とできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャップでノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する大気開放手段を備え、大気開放手段はキャップ内に排出される液面の高さよりも高い位置で前記キャップ内に連通し、排出経路には吸引ポンプ側からキャップ側への流体の流れを阻止する逆止弁が設けられている構成としたので、キャップ内での気泡の発生を防止できて、気泡による混色などを低減して、画像品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】図1を矢示A方向から見た説明図である。
【図3】記録ヘッドの説明図である。
【図4】インク供給排出系の模式的説明図である。
【図5】制御部のブロック説明図である。
【図6】維持回復動作の説明に供するフロー図である。
【図7】同動作の説明に供するインク供給排出系の模式的説明図である。
【図8】同じくインク供給排出系の模式的説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態における維持回復機構の模式的説明図である。
【図10】同じく吸引ポンプの説明に供する平面説明図である。
【図11】同じく逆止弁に説明に供する断面説明図及び横断面説明図である。
【図12】比較例1の説明に供する模式的説明図である。
【図13】同じく気泡の発生の説明に供する模式的説明図である。
【図14】比較例2の説明に供する模式的説明図である。
【図15】同じく気泡の発生の説明に供する模式的説明図である。
【図16】同実施形態の動作説明に供する模式的説明図である。
【図17】図16に続く動作説明に供する模式的説明図である。
【図18】本発明の第2実施形態における維持回復機構の模式的説明図である。
【図19】同じく気泡の発生の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は図1を矢示A方向から見た説明図である。
【0022】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体の内部に画像形成部2、搬送機構部5等を有し、装置本体の下方側に被記録媒体である用紙10を積載可能な給紙トレイ(給紙カセットを含み、給紙部の意味で使用する。)4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙10を取り込み、搬送機構5によって用紙10を垂直方向(鉛直方向に沿う方向)に間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって水平方向に液滴を吐出させて所要の画像を記録した後、排紙部6を通じて画像が形成された用紙10を更に上方向に搬送して、装置本体の上方側に設けられた排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0023】
また、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、排紙部6から反転部8内に用紙10を取り込み、搬送機構部5によって用紙10を逆方向(下方向)に搬送しながら反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0024】
ここで、画像形成部2は、左右の側板101L、101R間に横架した主ガイド部材21及び従ガイド部材22で、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ23を摺動自在に保持し、主走査モータ25によって、駆動プーリ26と従動プーリ27間に渡したタイミングベルト28を介して主走査方向に移動走査する。
【0025】
キャリッジ23には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24a、24b(区別しないときは上記のとおり「記録ヘッド24」という。)を、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を水平方向に向けて装着している。つまり、液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面が垂直方向に配置され、水平方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッド24を備える水平打ち方式を採用している。
【0026】
記録ヘッド24は、図3に示すように、それぞれ複数の液滴を吐出するノズル124bが列設された2つのノズル列Na、Nbを有し、記録ヘッド24aの一方のノズル列Naはイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列Nbはマゼンタ(Y)の液滴を、記録ヘッド24bの一方のノズル列Naはブラック(K)の液滴を、他方のノズル列Nbはシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0027】
なお、記録ヘッド24を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、キャリッジ23には、インクと反応することでインクの定着性を高める定着液を吐出する液体吐出ヘッドなども搭載できる。
【0028】
また、キャリッジ23には、図示しないが、記録ヘッド24の各ノズル列Na、Nbに対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク29が搭載され、このヘッドタンク29には、装置本体に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)からインクが供給される。
【0029】
また、キャリッジ23の主走査方向に沿って両側板101L、101R間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール121を張装し、キャリッジ23にはエンコーダスケール121のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ122を設け、これらのエンコーダスケール121とエンコーダセンサ122によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)123を構成している。
【0030】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズル124bの状態を維持し、回復するための維持回復機構9を配置している。この維持回復機構9には、フレーム90にて、記録ヘッド24の各ノズル面124(図3参照)をキャピングするための吸引キャップ92a及びキャップ92b(区別しないときは「キャップ92」という。)と、ノズル面124を矢示方向に移動してワイピング(払拭)するワイパ部材(ワイパブレード)93が保持され、また増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる予備吐出(空吐出)を行うときの液滴を受ける空吐出受け94などを備えている。吸引キャップ92aには後述する逆止弁196を介して吸引手段としてのチューブポンプからなる吸引ポンプ96が接続され、吸引ポンプ96は廃液タンク97に通じている。また、吸引キャップ92aには、吸引キャップ92aで記録ヘッド24のノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する開閉可能な大気開放弁98を設けている。
【0031】
給紙トレイ4の用紙10は、給紙コロ(半月コロ)43と分離パッド44によって1枚ずつ分離されて装置本体内に給紙され、搬送ガイド部材45に沿って、搬送機構部5の搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込まれ、搬送ベルト51に吸着されて搬送される。
【0032】
搬送機構部5は、駆動ローラである搬送ローラ52と従動ローラ53との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト51と、この搬送ベルト51を帯電させるための帯電ローラ54と、画像形成部2に対向する部分で搬送ベルト51の平面性を維持するプラテン部材55となどを有している。
【0033】
搬送ベルト51は、副走査モータ151によってタイミングベルト152及びタイミングプーリ153を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって、ベルト搬送方向(副走査方向、用紙搬送方向)に周回移動する。この搬送ベルト51のうち、画像形成部2に対向して用紙10を吸着する搬送ローラ52から従動ローラ53までの領域を正搬送部分51aとし、従動ローラ53から搬送ローラ52までの領域を逆搬送部分51bという。
【0034】
また、搬送ローラ52の軸52aにはコードホイール154を取り付け、このコードホイール154に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ155を設けて、これらのコードホイール154とエンコーダセンサ155によって搬送ベルト51の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)156を構成している。
【0035】
排紙部6は、排紙ガイド部材61と、排紙搬送ローラ62及び拍車63と、排紙ローラ64及び拍車65とが配置され、画像が形成された用紙10を排紙ローラ63A及び拍車63B間から排紙トレイ7上にフェイスダウンで排紙する。
【0036】
また、反転部8は、排紙トレイ7に一部を排出した用紙10をスイッチバック方式で反転して搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込むため、排紙経路と反転経路を切り替える切替爪81と、反転ガイド部材82と、反転ローラ83及び反転コロである拍車84と、従動ローラ53に対向する従動補助ローラ85と、搬送ベルト51の逆送部分51bと、搬送ベルト51の逆送部分51bから分離された用紙10を、帯電ローラ54を迂回させて、搬送ベルト51と押えコロ48との間に案内する迂回ガイド部材86などを備えている。
【0037】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ4から用紙10が1枚ずつ分離給紙され、帯電された搬送ベルト51に用紙10が静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙10が垂直方向に搬送される。そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行い、記録が終了した用紙10を排紙トレイ7に排紙する。
【0038】
そして、記録ヘッド24のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ23をホーム位置である維持回復機構9に対向する位置に移動して、吸引キャップ92aによるキャッピングを行ってノズル124bからの吸引排出を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0039】
また、両面印刷を行う場合には、第1面印刷は上述したとおりの動作を行い、用紙10の後端が反転部分岐(切替爪81)を通過すると、排紙ローラ64が反転駆動されて用紙10がスイッチバックされ、反転ガイド部材82側に案内され、反転ローラ83と拍車84の間で搬送され、搬送ベルト51の逆搬送部分51bと搬送補助ローラ85との間へと用紙10が送り込まれる。
【0040】
これにより、用紙10は搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって搬送され、搬送ローラ52側で搬送ベルト51から分離されて、迂回ガイド部材86で案内され(迂回パスを経由し)、再度搬送ベルト51の正搬送部分51aと押圧コロ48との間に送り込まれて搬送ベルト51に吸着され、再度記録ヘッド24による画像形成領域に吸着搬送されることで第2面印刷が行われた後、排紙トレイ7に排紙される。
【0041】
ここで、帯電ローラ54は、反転時の迂回パスの内側(迂回ガイド部材86の内側)に配置されているため、用紙10は常に新規に帯電された状態の搬送ベルト51上に吸着されることになる。
【0042】
次に、この画像形成装置のインク供給排出系について図4の模式的説明図を参照して説明する。
メインタンク(インクカートリッジ)11は、記録ヘッド24から吐出されるインクが収容され、装置本体に対して着脱自在に装着される。メインタンク11とヘッドタンク29との間は供給チューブ(供給経路)12を介して接続され、供給経路12には可逆型ポンプからなる供給ポンプ13が設けられている。供給ポンプ13は、例えば正転時にはメインタンク11からヘッドタンク29に向けてインクが供給され、逆転時にはヘッドタンク29からメインタンク11に向けてインクが戻される。
【0043】
記録ヘッド24とヘッドタンク29とは図示しないフィルタユニットを介して連結されている。記録ヘッド24にはヘッドタンク29から共通液室124aにインクが供給され、共通液室124aから図示しない個別液室にインクが供給され、個別液室内のインクが加圧されてノズル124bから液滴が吐出される。上述した供給ポンプ13を逆転してヘッドタンク29側からメインタンク11側にインクを戻すことによって、ヘッドタンク29に負圧が形成される。
【0044】
一方、記録ヘッド24のノズル面124をキャッピングする吸引キャップ92aは、記録ヘッド24に合わせて垂直方向に配置され、後述するキャップ移動機構531によって記録ヘッド24に対して進退される。吸引キャップ92aは、高さ方向で底面192aに廃液タンク97に通じる排出経路191が接続され、排出経路191にチューブポンプからなる吸引ポンプ96が設けられ、吸引キャップ92aと吸引ポンプ96との間には、吸引ポンプ96側から吸引キャップ92a側への流体の流れを阻止する逆止弁196が設けられている。また、吸引キャップ92aの高さ方向で上部には、キャッピング時に形成される密閉空間194を大気に通じる大気開放経路193が設けられ、大気開放経路193を開閉する大気開放弁98が設けられている。
【0045】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係る制御(処理)を実行させるプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505などを備えている。
【0046】
また、記録ヘッド24を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ23側に設けた記録ヘッド24を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ23を移動走査する主走査モータ25、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ151を駆動するためのモータ駆動部510、511と、帯電ローラ54にACバイアスを供給するACバイアス供給部512などを備えている。
【0047】
また、制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0048】
そして、制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0049】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0050】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0051】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド24の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド24の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド24を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など滴量の異なる液滴を吐出させて大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0052】
I/O部513は、主走査エンコーダ123、副走査エンコーダ156、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、511、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するためのキャリッジ23に設けられた光学センサ(用紙センサ)521や、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0053】
例えば、CPU501は、主走査エンコーダ123を構成するエンコーダセンサ122からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ25に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ25を駆動する。同様に、副走査エンコーダ156を構成するエンコーダセンサ155からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ151対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部211を介して副走査モータ151を駆動する。
【0054】
また、制御部500は、維持回復駆動部534を介して、維持回復機構9を駆動して、キャップ92を記録ヘッド24のノズル面に対して進退移動させ、ワイパ部材94を移動させ、吸引ポンプ96を駆動する。また、ポンプ駆動部535を介して供給ポンプ13を駆動する。
【0055】
次に、この画像形成装置における維持回復動作について図6のフロー図を参照して説明する。
記録ヘッド24のノズル124bの目詰まりが発生した場合やヘッドタンク29の負圧が保たれずにノズル124bのメニスカスが破壊された場合、その他予め定めた所定のタイミングなどで維持回復動作を行なう。
【0056】
維持回復動作では、記録ヘッド24を吸引キャップ92aに対向する主走査位置にしてキャップ移動機構531を駆動して吸引キャップ92aを移動させ、キャップ92aで記録ヘッド24のノズル面124をキャッピングする。このとき、大気開放弁98は閉じられている。
【0057】
そして、吸引ポンプ96を駆動して密閉空間194内を負圧にすることで、記録ヘッド24のノズル124bからインクを吸引キャップ92a内に吸引排出する吸引動作(ノズル吸引)を行う。これにより、図7に示すように、吸引キャップ92aにインク300が排出され、記録ヘッド24及び吸引キャップ92aが垂直方向に配置されていることから、インク300は密閉空間194の底面192a側から溜まって行くことになる。
【0058】
この吸引動作の終了後、供給ポンプ13を正転駆動して、メインタンク11からヘッドタンク29にインクを供給し、ヘッドタンク29及び記録ヘッド24内の負圧レベルを低くする、又は正圧とする加圧動作を行う。
【0059】
この加圧動作終了後、大気開放弁98が開いて、密閉空間194が大気に開放される。このとき、吸引ポンプ96の駆動を継続していることで、或いは、吸引ポンプ96を再駆動することで、吸引キャップ92aに排出されて残留しているインク300は排出経路191を通じて廃液タンク97に排出される(キャップ内排出動作)。
【0060】
この排出動作終了後、供給ポンプ13を逆転駆動して、ヘッドタンク29内のインクをメインタンク11側に戻すことにより、ヘッドタンク29及び記録ヘッド24側に所要の負圧を形成する(負圧形成動作)。
【0061】
そして、図8に示すように、キャップ移動機構531を駆動してキャップ92aを記録ヘッド24のノズル面から離間させる(デキャップ動作)。その後、記録ヘッド24のノズル面124をワイパ部材93によってワイピングして清浄化する。
【0062】
その後、空吐出受け94に向けて画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作を行なう。
【0063】
このような回復動作の作用効果について説明する。
この画像形成装置においては、記録ヘッド24はノズル面124を垂直に(ノズル列Na、Nbを垂直に)配置しているため、記録ヘッド24からインクを吸引したとき、前述した図7に示すように、吸引後のインク300は吸引キャップ92a内の下部に残留することになる。そして、1つの記録ヘッド24の2つのノズル列Na、Nbから異なる色のインクを吐出する構成であることから、吸引キャップ92a内の残留インク300は混色した状態になる。
【0064】
一方、記録ヘッド24内及びヘッドタンク29内はインクが吸引排出されているために負圧レベルが高くなっている。
【0065】
そのため、この状態で吸引キャップ92a内の残留インク300を排出するために大気開放弁98を開くと、吸引キャップ92a内の混色した残留インク300がノズル124b内へ逆流してしまい、次の印字時に混色したインクが吐出されて画像品質が低下することになる。
【0066】
この場合、混色した残留インク300の逆流を防止するために、吸引キャップ92a内のインクを残したままデキャップすると、吸引キャップ92aが水平方向に向いて開口しているために、吸引キャップ92a内のインクが垂れ装置内を汚してしまうことになる。
【0067】
そこで、本実施形態では、吸引動作終了後に供給ポンプ13でインクをヘッドタンク29側へ供給して、ヘッドタンク29及び記録ヘッド24内の負圧レベルを低くする、又は正圧とすることで、吸引キャップ92a内の残留インクがノズル124b内に逆流することを防止でき、その後大気開放弁98を開いて密閉空間194を大気開放し、吸引キャップ92a内のインクを吸引排出することで、インクが装置内に垂れることもない。
【0068】
次に、本発明の第1実施形態における維持回復機構9の詳細について図9を参照して説明する。
吸引キャップ92aは、キャップホルダ201にばね202を介して保持されている。吸引キャップ92aの高さ方向で上部には密閉空間194を大気に開放する大気開放経路(ここでは、大気開放口)193が形成され、キャップホルダ201には大気開放口193を開閉する大気開放弁(ここでは、弁体という。)98が設けられている。ここで、吸引キャップ92aの大気開放口193は、吸引キャップ92aをノズル面124から離間させるときに、キャップホルダ201が吸引キャップ92aに先行して後退し、弁体98がキャップホルダ201に伴って移動することで開放される、つまり吸引キャップ92aの離間動作に連動して大気開放手段が開放される構成としている。
【0069】
吸引ポンプ96を構成するチューブポンプは、例えば図10に示すように、モータから駆動力が伝達される回転軸401にカム板402が取り付けられ、カム板402には偏心溝403が形成され、偏心溝403には図示しないポンプハウジング内に這いまわされたチューブ404を押し潰すコロ405が係合されている。このチューブポンプは、例えば図10(a)に示すようにカム板402が矢示A方向に回転するときにコロ405が偏心溝403によって外側に移動してチューブ404を押し潰して扱くことによりポンプ作用を行い、図10(b)に示すようにカム板402が矢示B方向に回転するときにコロ405が偏心溝403によって内側に移動してチューブ404の押圧を解除する。
【0070】
そして、図9に戻って、これらの吸引キャップ92aの進退動作及び吸引ポンプ96の駆動を行うための駆動機構531は、1つの駆動モータ210を有し、この駆動モータ210の回転をモータギヤ210aに噛み合うギヤ211、駆動モータ210の逆方向回転のみを伝達するワンウエイクラッチ212、及び、ワンウエイクラッチ212から逆方向回転が伝達されるギヤ213からなる駆動力伝達機構を介して、キャップカム214に伝達する。このキャップカム214のカム溝214aにはキャップホルダ201のピン部材215が連結され、キャップカム214の回転によって吸引キャップ92aがノズル面124に対して進退する。
【0071】
また、駆動モータ210の回転はモータギヤ210aに噛み合うギヤ215を介して吸引ポンプ96の回転軸401に伝達される。吸引ポンプ96は、駆動モータ210が正方向に回転するときに、カム板402が図10(a)の矢示A方向に回転してコロ405がチューブ404を押し潰して扱きながら回転することでポンピングを行い、駆動モータ210が逆方向に回転するときに、カム板402が図10(b)の矢示B方向に回転して、コロ405によるチューブ404の押圧が解除される。
【0072】
逆止弁196は、図11に示すように、ホルダ451内に形成された流路452を開閉する弁体453を有し、スプリング保持部454と弁体453との間に、弁体453を常時閉じる方向に付勢するスプリング455を介装している。弁体453は、ゴムなどの弾性部材で形成して弱い力でシール性を確保することができるようにし、また、インクの付着を低減するために表面に撥水処理を施している。スプリング保持部454はスプリング455を受ける部分以外は流路456が形成されている。
【0073】
次に、上記実施形態の作用効果を明らかにするために比較例について説明する。なお、図の符号については上記実施形態と同様の符号を用い、駆動機構についても上記実施形態と同様に1つの駆動モータの正転、逆転でキャップ移動、吸引ポンプ駆動を行なうものとする。
【0074】
まず、比較例1としてノズル面が水平に配置される垂直打ち方式の場合について図12及び図13を参照して説明する。
図12(a)に示すように、図示しない駆動モータを逆転してキャップ92aで記録ヘッド24のノズル面124aをキャッピングした状態(吸引ポンプ96のコロ405は解除された状態にある)から、同図(b)に示すように、駆動モータを正転して吸引ポンプ96を駆動して記録ヘッド24のノズルから吸引キャップ92a内にインク300を吸引排出させる。
【0075】
そして、図12(c)に示すように、駆動モータを逆転することで、吸引ポンプ96のコロ405の押圧が解除され、吸引キャップ92a内はチューブ404(排出経路)を介して排出側の大気に通じ、吸引キャップ92a内の密閉空間の負圧を低減(緩和)される。この状態から駆動モータの逆転を継続することで、同図(d)に示すように、吸引キャップ92aがノズル面124から離間(デキャップ)し、その後、同図(e)に示すように、駆動モータを正転駆動することで、吸引キャップ92a内の排出インク300が図示しない廃液タンクに排出される。
【0076】
ここで、図13(a)に示すようにノズル吸引が完了した状態から、前述したように駆動モータを逆転して吸引ポンプ96のコロ405によるチューブ404の押圧が解除し、吸引キャップ92a内の負圧を低減するとき、同図(b)に示すように、廃液タンク側(排出経路の排出口側)から吸引キャップ92a内の圧力の流れが発生し、チューブ404(排出経路)を介して空気330が侵入し、排出インク300が溜まっている吸引キャップ92a内に気泡Bbが発生することがある。そして、同図(c)に示すように、吸引キャップ92a内で発生した気泡Buがノズル面124に接触すると、排出インク300は前述したように混色したインクであるので、混色した排出インクがノズルから侵入するなどして、滴吐出時に混色が発生し、画像品質が低下することになる。
【0077】
まず、比較例2としてノズル面が垂直に配置される水平打ち方式の場合について図14及び図15を参照して説明する。なお、各図は要部模式的説明図とともにキャップ内圧力の変化を示している。
図14(a)に示すように、吸引キャップ92aで記録ヘッド24のノズル面124をキャッピングした状態で、同図(b)に示すように、吸引ポンプ96を駆動してノズルからインク300を吸引キャップ92a内に排出する。ここで、吸引ポンプ92aの駆動を停止しても、同図(c)に示すように、徐々にインク300が吸引キャップ92a内に流れる。その後、大気開放弁98を開くことで吸引キャップ92a内を大気に通じたとき、同図(d)に示すように、吸引キャップ92a内は直ぐに大気圧には戻らない。
【0078】
その後、図15(a)に示すように吸引ポンプ96を駆動して吸引キャップ92a内の排出インク300を排出経路191から排出し、同図(b)に示すように吸引ポンプ96を停止して、同図(c)に示すように吸引ポンプ96のコロによるチューブの押圧が解除されたとき、吸引キャップ92a内の残負圧によって排出経路191から空気が流入して吸引キャップ92a内に気泡Buが発生し、同図(d)に示すように、気泡Buが吸引キャップ92aの内壁面を伝ってノズル面124に付着し、デキャップしても気泡Buはノズル面124側に残る。このとき、前述したように、排出インク300は混色したインクであるので、混色した排出インクがノズルから侵入するなどして、滴吐出時に混色が発生し、画像品質が低下することになる。
【0079】
ここで、上述した垂直打ち方式では、吸引キャップ内に気泡が発生してもノズル面に達しない大きさの気泡であれば、吸引キャップが水平に配設されているためにさほど大きな問題にならない。これに対し、水平打ち方式では、吸引キャップが垂直に配設されているために、気泡は吸引キャップの内壁を伝ってノズル面に付着(転移)しやすいため、垂直打ち方式に比べて、気泡の発生を抑える必要性が高くなる。
【0080】
そこで、本実施形態の動作について図16及び図17を参照して説明する。
まず、図16(a)に示すように、記録ヘッド24のノズル面124を吸引キャップ92aでキャッピングし、同図(b)に示すように、駆動モータ210を正方向に回転させて吸引ポンプ96を正方向に回転させる。このとき、逆止弁196は弁体453がばね455の付勢力に抗して吸引ポンプ96側に移動して開状態になるので、吸引キャップ92a内(密閉空間内)が負圧になって記録ヘッド24のノズルからインク300が排出される。なお、キャップカム214は駆動モータ210の正方向回転ではワンウエイクラッチ212の作用により回転しない。その後、吸引ポンプ96を停止すると、同図(c)に示すように、吸引作用がなくなることで、逆止弁196の弁体453がばね455に付勢力で戻されて閉状態になる。
【0081】
そして、駆動モータ210を逆回転することによってカム214が回転して、キャップホルダ201が記録ヘッド24に対して後退し、キャップホルダ201の移動に伴って弁体98も移動するので吸引キャップ92aの大気開放口193が開かれ、吸引キャップ92a内が大気開放される。このとき、吸引ポンプ96のコロはチューブの押圧を解除するが、逆止弁196が閉状態にあるため、排出経路191から空気が侵入しても逆止弁196で止められ、吸引キャップ92a内まで流れない。これによって、吸引キャップ92a内に気泡が発生することが防止される。
【0082】
その後、図17(a)に示すように、吸引ポンプ96を正転駆動することよって逆止弁196が開いて、吸引キャップ92a内に排出されたインク300が排出経路191を通じて図示しない廃液タンクに排出される。そして、吸引ポンプ96を停止すると、同図(b)に示すように、逆止弁196が閉じる。その後、同図(c)に示すように、駆動モータ210を逆回転駆動することにより、吸引キャップ92aがノズル面124から離間する(デキャップ)。
【0083】
このように、キャップでノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する大気開放手段を備え、大気開放手段はキャップ内に排出される液面の高さよりも高い位置で前記キャップ内に連通し、排出経路には吸引ポンプ側からキャップ側への流体の流れを阻止する逆止弁が設けられている構成とすることで、キャップ内での気泡の発生を防止できて、気泡による混色などを低減して、画像品質を向上できる。
【0084】
次に、本発明の第2実施形態における維持回復機構9の詳細について図18及び図19を参照して説明する。
本実施形態は、垂直打ち方式に適用した例であり、吸引キャップ92aが水平方向(開口部が高さ方向で上方を向いて)配設されている。その余の構成は前記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0085】
本実施形態においても、まず、図18(a)に示すように、記録ヘッド24のノズル面124を吸引キャップ92aでキャッピングし、同図(b)に示すように、駆動モータ210を正方向に回転させて吸引ポンプ96を正方向に回転させる。このとき、逆止弁196は弁体453がばね455の付勢力に抗して吸引ポンプ96側に移動して開状態になるので、吸引キャップ92a内(密閉空間内)が負圧になって記録ヘッド24のノズルからインク300が排出される。なお、キャップカム214は駆動モータ210の正方向回転ではワンウエイクラック212の作用により回転しない。その後、吸引ポンプ96を停止すると、同図(c)に示すように、吸引作用がなくなることで、逆止弁196の弁体453がスプリング455の付勢力で戻されて閉状態になる。
【0086】
そして、駆動モータ210を逆回転することによってカム214が回転して、キャップホルダ201が記録ヘッド24に対して後退し、キャップホルダ201の移動に伴って弁体98も移動するので吸引キャップ92aの大気開放口193が開かれ、吸引キャップ92a内が大気開放される。このとき、吸引ポンプ96のコロはチューブの押圧を解除するが、逆止弁196が閉状態にあるため、排出経路191から空気が侵入しても逆止弁196で止められ、吸引キャップ92a内まで流れない。これによって、吸引キャップ92a内に気泡が発生することが防止される。
【0087】
その後、図19(a)に示すように、吸引ポンプ96を正転駆動することよって逆止弁196が開いて、吸引キャップ92a内に排出されたインク300が排出経路191を通じて図示しない廃液タンクに排出される。そして、吸引ポンプ96を停止すると、同図(b)に示すように、逆止弁196が閉じる。その後、同図(c)に示すように、駆動モータ210を逆回転駆動することにより、吸引キャップ92aがノズル面124から離間する(デキャップ)。
【0088】
このように垂直打ち方式の装置に適用した場合でも、キャップ内での気泡の発生を防止できて、気泡による混色などを低減して、画像品質を向上できる。
【0089】
なお、上記実施形態では、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に搬送し、液滴を水平方向に吐出する例で説明しているが、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に対して傾斜した方向に搬送し、液滴を水平方向に対して傾斜した方向に吐出する構成であっても、本発明を同様に適用することができる。また、上記実施形態ではシリアル型画像形成装置で説明しているが、ライン型画像形成装置にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0090】
2 画像形成部
4 給紙部
5 搬送機構
6 排紙部
7 排紙トレイ
8 反転部
9 維持回復機構
10 用紙(被記録媒体)
11 メインタンク
12 供給経路
13 供給ポンプ
23 キャリッジ
24 記録ヘッド
29 ヘッドタンク
51 搬送ベルト
92a 吸引キャップ
93 ワイパ部材
96 吸引ポンプ
98 大気開放弁
193 大気開放経路(口)
196 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、
前記キャップに接続された排出経路と、
前記排出経路に設けられたチューブポンプからなる吸引ポンプと、
前記キャップで前記ノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する大気開放手段と、を備え、
前記大気開放手段は前記キャップ内に排出される液面の高さよりも高い位置で前記キャップ内に連通し、
前記排出経路には前記吸引ポンプ側から前記キャップ側への流体の流れを阻止する逆止弁が設けられている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記ノズル面が垂直方向又は垂直方向に対して傾斜して配置され、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記逆止弁は、前記吸引ポンプと前記キャップとの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記大気開放手段は前記キャップを前記ノズル面から離間させる動作に連動して大気開放することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−51303(P2012−51303A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197230(P2010−197230)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】