画像形成装置
【課題】 転写ベルトから紙を分離することで生じたうねりを消去し、安定した紙姿勢で定着装置への搬送を可能にする。
【解決手段】 弾性状の転写搬送ベルトを有し、紙が転写ベルトから分離する部位の近辺に、位置制御が可能な曲率の大きな分離補助用の突起物を有し、該突起物下流に吸着装置を配置することで、該突起物により転写材に発生したうねりを消去可能な転写材搬送装置を提供する。
【解決手段】 弾性状の転写搬送ベルトを有し、紙が転写ベルトから分離する部位の近辺に、位置制御が可能な曲率の大きな分離補助用の突起物を有し、該突起物下流に吸着装置を配置することで、該突起物により転写材に発生したうねりを消去可能な転写材搬送装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザプリンタ等の電子写真の技術を用いて像担持体に担持されたトナー像を記録材に転写する画像形成装置に関する。詳しくは、記録材の転写、搬送を行う転写ベルトを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のローラにより張架した転写ベルトにより記録材を担持搬送する電子写真装置では、転写ベルト上の記録材は、転写ニップ部を通過すると転写ベルトに静電的に吸着される。
【0003】
しかし、記録材の剛度が弱いと、転写ベルトを張架する分離ローラの曲率と記録材の剛度を利用するだけでは、記録材を転写ベルトから分離することができない。すなわち、記録材が分離ローラの位置で転写ベルトに張り付いたままとなり、分離不良が生ずる。そこで、分離位置において転写ベルトにうねりをつける構成としては、転写ベルトを張架する分離ローラ表面に一様に突起物を形成して、記録材を分離させる方法がある(特許文献1)。このような構成を用いることによって、分離位置において転写ベルトにうねりを形成することができるが、転写ベルトに常に局所的に大きな張力を働かせてしまう。その結果、転写ベルトの局所的な磨耗が生じることによる抵抗ムラの影響で転写性が安定しなくなる。
【0004】
記録材を担持するシートを、記録材分離のために変形させつつも、変形による磨耗を低減する方法が特許文献2に記載されている。特許文献2には、内側から転写シートを押し上げる位置と押し上げない位置に動くことができる押し上げ手段としてコロを設けた構成が記載されている。特許文献2に記載の方法では、記録材の分離を転写シートをコロで押し上げることによって行い、記録材を分離しない間は転写シートを押し上げない。必要以上に転写材シートを変形させずに、様々な厚さの記録材を分離するために、特許文献3には、薄い記録材を大きな押し上げ量で分離して、厚い記録材を小さい押し上げ量で分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−015987
【特許文献2】特開平5−119636
【特許文献3】特開平5−341664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成を転写ベルトに適用すると次のような構成になる。つまり転写ベルト上の記録材にトナー像を転写する転写部材から記録材搬送方向において下流側に、分離工程時に転写ベルトを記録材搬送方向と直交する転写ベルトの幅方向において局所的に押し上げて突出を形成する押し上げ手段を配置する構成になる。薄い紙等の記録材の剛度が弱い場合に、転写ベルトが局所的に押し上げられた状態で記録材を搬送することにより突出と対応する位置でうねりを記録材につけて、分離工程時の記録材のこしの強さを大きくすることができる。
【0007】
しかし記録材のうねりが充分に緩和されないまま下流側へ向けて搬送されると、定着に影響するおそれがある。そこで記録材のうねりの緩和を促進するためには、転写ベルトの下流側の搬送ベルトで吸引口から吸引力をかける構成にして、吸引口の位置を幅方向において突出と対応させて、吸引口からうねりを吸引させるのが望ましい。
【0008】
ところで記録材の搬送の安定性を高めるためには、幅方向において吸引口を少なくとも3つ配置して、吸引力のかかる領域を広げるのが望ましい。ここで、うねりが少なくとも中央の吸引口と対応する位置に形成される場合について考える。この場合、中央の吸引口が記録材のうねりを吸引するタイミングが、両サイドの吸引口が記録材を吸引するタイミングより後であると、両サイドでの吸引によって記録材のうねりの幅方向における動きが抑制される。その結果、記録材のうねりの幅方向における逃げ場がなくなってしまい、記録材のうねりが充分緩和されなくなるおそれがある。すなわち、中央の吸引口が記録材のうねりを吸引する時に、少なくともいずれか一方のサイドの吸引口から記録材のうねりのサイドに吸引力がかかっていない状態であるのが望ましい。同様の課題は吸引口が4つ以上形成される場合にも生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、記録材を担持して搬送する転写ベルトと、前記転写ベルト上の記録材にトナー像を転写部において転写する転写手段と、記録材を搬送する記録材搬送方向において前記転写ベルトより下流側に配置されて、ベルト面に複数の開口を有して、前記転写ベルトから分離した記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第1の吸引口と、幅方向において前記第1の吸引口のいずれか一方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第2の吸引口と、幅方向において前記第1の吸引口の他方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第3の吸引口と、記録材搬送方向において前記搬送ベルトより下流側に位置しており、記録材にトナーを定着する定着手段と、記録材搬送方向において前記転写部より下流側の前記転写ベルトのベルト面を変形して、記録材搬送方向と直交する前記転写ベルトの幅方向において局所的な突出部を形成する変形手段とを有して、前記変形手段により記録材を分離するモードを実行可能な画像形成装置において、前記モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記第2の吸引口か前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかるタイミングよりも前に、前記第1の吸引口から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
転写ベルトに局所的な突出を形成して転写ベルトから記録材を分離する構成において、分離後の記録材を搬送する搬送ベルトで記録材の突出を吸引しても、記録材の幅方向における逃げ場がなくなりうねりが緩和されず下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を説明する図である。
【図2】分離補助装置を説明する図である。
【図3】分離補助装置を説明する図である。
【図4】分離補助装置を説明する図である。
【図5】分離補助装置を説明する図である。
【図6】分離補助装置を説明する図である。
【図7】記録材搬送装置を説明する図である。
【図8】フローチャートを示す図である。
【図9】記録材搬送装置を説明する図である。
【図10】第二実施形態を説明する図である。
【図11】第三実施形態を説明する図である。
【図12】第四実施形態を説明する図である。
【図13】第四実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1(a)を用いて第1実施形態の画像形成装置の構成及び動作について説明する。
【0013】
1Y、1M、1C、1Kは、感光ドラムであり、矢線A方向へ回転駆動する。感光体ドラムは像担持体として機能する。その表面は帯電装置2Y、2M、2C、2Kにより所定の電圧に一様に帯電される。帯電された感光ドラム表面は、レーザービームスキャナーからなる露光装置3Y、3M、3C、3Kによって露光されて、静電潜像が形成される。レーザービームスキャナーの出力が画像情報に基づいてオンオフされることによって、画像に対応した静電潜像が各感光ドラム上に形成される。現像装置4Y、4M、4C、4Kはそれぞれ有彩色トナーのイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)とブラック(K)トナーを内包する。現像装置には所定の電圧が印加されており、前述の静電潜像はそれら現像装置4Y、4M、4C、4Kを通過すると現像されて、各感光ドラム1Y、1M、1C、1K面上にトナー像が形成される。静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。
【0014】
感光ドラム1Y、1M、1C,1K上に形成されたトナー像は、各々が対応する1次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kで中間転写ベルト6上に一次転写される。こうして、中間転写ベルト6上に4色のトナー像が重畳して転写される。中間転写ベルト6はトナー像を担持して像担持体として機能する。中間転写ベルト6は感光体ドラム1の表面に当接されるよう配設されており、複数の張架部材としての張架ローラ20、21、22に張架されて矢印Gの方向へ300mm/secで回動するようになっている。本実施の形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラである。張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラである。
【0015】
転写ベルト24は記録材を担持して搬送するベルト部材として機能する。転写ベルト24は、複数の張架部材としての張架ローラ25、26、27に張架されて矢印Bの方向へ300mm/secで移動可能なベルト部材である。張架ローラ26は搬送ベルト24の駆動ローラである。転写ベルト24として、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。また、転写ベルト24として、引っ張り試験法(JIS K 6301)で測定したヤング率の値が0.5MPa以上10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。
【0016】
転写ベルト24の引っ張り試験におけるヤング率を0.5MPa以上の部材を使用することで、ベルトの形状を十分に保って回転駆動ができる。一方で、10MPa以下の十分に弾性変形が可能な部材を使用することで、後述する分離補助装置40によって記録材Pに効果的にうねり発生させて、より効果的な転写ベルト24からの記録材Pの分離を達成することが可能になる。また、十分に弾性変形が可能な部材は、部材が変形した状態から変形量を減らした際の部材の緩和現象が起こりやすいため、分離補助装置40による転写ベルト24の磨耗を低減することが可能になる。
【0017】
記録材は不図示のカセットに収納されている。記録材Pは、供給開始信号が出力されると、供給開始信号に基づいてカセットから不図示のローラによって搬送されてレジストローラ8へ導かれる。レジストローラ8は、記録材Pを一旦停止させて、中間転写ベルト6上のトナー像が搬送されてくるのと同期して転写ベルト24に記録材Pを供給する。
【0018】
レジストローラ8から記録材搬送方向(矢印Bの方向)において下流側には、中間転写ベルト張架ローラ21と対向して、トナー像を転写ベルト24に担持された記録材に転写する転写ニップNを形成する2次転写ローラ9が配置されている。すなわち、2次転写ローラは、像担持体(中間転写ベルト6)に対してベルト部材(転写ベルト24)を圧して、像担持体からベルト部材に担持された記録材上にトナー像を転写する転写手段として機能する。
【0019】
2次転写ローラ9はイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。外径が24mm,ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加で1E+5〜1E+7Ωの転写ローラを使用している。2次転写ローラ9には、供給バイアスが可変となっている2次転写高圧電源13が取り付けられている。
【0020】
記録材Pの先端が転写ニップNに到達する前に、二次転写ローラ9にトナーと逆極性の電圧が、中間転写ベルト6上のトナー像を記録材に転写するための二次転写バイアスとして印加される。記録材が転写ニップNに搬送されると、中間転写ベルト6上のトナー像が記録材P上へ一括して静電的に転写される。例えば本実施形態では、+30〜60mAの電流が流れるように制御される。このとき電圧値は1000Vから5000Vの範囲に制御される。適切な電流値と電圧値は、記録材の乾燥状態、環境、転写するトナーの量等の要因によって決まる。
【0021】
転写後に転写ベルト24から分離した記録材Pは、記録材ガイド29の案内面、記録材搬送装置90を経て定着装置60に搬送されると、定着手段としての定着ローラと加圧ローラによる加熱加圧工程によってトナー像が記録材に定着される。トナー像を定着した後に、記録材Pは機械の外に排出される。
【0022】
(分離補助装置40)
分離補助装置40について説明する。図4は分離補助装置40の斜視図を示す。分離補助装置40は、記録材の分離を、2次転写ローラ9と分離張架ローラ26との間の位置で局所的に転写ベルト24を押し上げて変形することにより行う変形手段として機能する。図1(b)は、分離補助装置40を用いて転写ベルト24が幅方向に局所的に押し上げられた状態を示す。分離補助装置40は、記録材搬送方向において2次転写ローラ9より下流側で、分離張架ローラ26より上流側に配置される。
【0023】
転写ベルト24は分離張架ローラ26と当接する領域において、湾曲する。厚い記録材等の剛度が強い記録材Pは、転写ベルト24が分離張架ローラ26に当接して湾曲した領域に到達すると、記録材が幅方向にうねっていなくても、転写ベルト24の湾曲の曲率と記録材のこしの強さで転写ベルト24から分離する。
【0024】
分離補助装置40の詳細な構成および、動作を示しているのが図2(a)、図2(b)である。分離補助装置40は分離部材である分離補助コロ41と、分離補助コロ41を回転可能に支持するコロフレーム42と、分離補助コロ41の揺動中心となるコロ揺動中心軸43を有する。さらに、コロ揺動中心軸43を中心にして分離補助コロ41を揺動するためのコロ駆動ギア44と、コロ駆動ギア44に駆動力を伝達するためのモータ駆動伝達ギア45と、駆動源であるモータ46を有する。モータ46の回転運動がモータ駆動伝達ギア45によって、コロ駆動ギア44に伝達される。ここで、コロ駆動ギア44とコロ揺動中心軸43の間にはベアリングを設けているため、コロ揺動中心軸43は、モータ46による回転駆動の影響は受けず位置が動かないようになっている。
【0025】
図2(a)は、分離補助コロ41が転写ベルト24から離間しており、分離補助コロ41が押し上げ位置から退避するための退避位置を示す。図2(b)は、分離補助コロ41が転写ベルト24の内面に当接して転写ベルト24を局所的に押し上げる押し上げ位置を示す。分離補助コロ41は、コロ揺動中心軸43を中心にモータ46の所定量の正回転により、図2(a)で示されるコロ退避位置から、Y1方向へ図2(b)で示される押し上げ位置まで動くことができる。さらに、モータ46の所定量の逆回転により、分離補助コロ41は、図2(b)の押し上げ位置からY2方向へ移動して、図2(a)で示される退避位置へ動くことができる。すなわち、分離補助コロ41は、正逆回転により、このような揺動運動を行うようになっている。
【0026】
分離補助コロ41エチレン−プロピレンゴム(EPDM)からなり、外径は6〜10mm、幅は5〜15mmである。このような分離補助コロ41が転写ベルト24を押し上げると、幅方向に局所的な突出部が転写ベルト24に形成される。ここで、幅方向とは、移動するベルト面の、移動方向と直交する方向である。
【0027】
図2(a)の状態で、分離補助コロ41から分離張架ローラ26までの距離は4〜8mmであり、図2(b)の状態では分離補助コロ41は転写ベルト24のベルト面を内面側から図2(a)の平面状態から3〜6mm押し上げている。
【0028】
薄い紙等の剛度の弱い記録材は変形しやすいので、押し上げによって転写ベルト24に生じる幅方向に局所的な変形に沿って、記録材にうねりが生じる。その結果、記録材の断面二次モーメント、すなわち記録材のこしの強さ、が大きくなる。図1(b)は押し上げによって転写ベルトに幅方向に局所的な変形が生じて、記録材にもうねりが生じている場合の斜視図を示す。記録材のこしを強くすることによって、薄紙等の剛度の弱い記録材を分離するために有効な分離効果を得ることができる。2次転写ローラ9によりトナーと逆極性の電荷が転写ベルト24の内面に付与されるので、転写ニップN以降で記録材は転写ベルト24に吸着している状態にある。しかし記録材は転写ベルト24上の突出が形成される突出ピーク位置と分離張架ローラ6間で転写ベルト24から分離する。
【0029】
分離補助装置40が有する分離補助コロ41は記録材が通過する領域にひとつであってもよい。しかしこの場合、記録材の幅方向において記録材がうねる範囲が狭くなってしまう.記録材の幅方向にうねりをつけるためには、記録材が通過する範囲内で幅方向に複数あった方が好ましい。
【0030】
一方で、分離補助コロ41を複数配置する場合に分離補助コロ41の配置間隔を狭くしすぎると、全体的に転写ベルト24が持ち上がってしまい、ベルト幅方向に複数の局所的な突出が転写ベルト24に形成されなくなり、分離性を高めることができない。ベルト幅方向に複数の局所的な突出を形成するためには、間隔を広くとることが必要になる。
【0031】
そこで転写ベルト24の走行方向と直交する幅方向において、分離補助コロ41の幅と分離補助コロ41との間隔が、図3に示されるように設定される。L1は分離補助コロ41同士で囲まれた部分の長さ、Wkは分離補助コロ41の幅を示している。L2は、隣り合った2つの分離補助コロ41の対向する端面内の部分を示しており、L1−2Wkによって得られる。本実施形態では、L2が2Wk以上と設定する。すなわち、分離補助コロ41で転写ベルト24に接触している長さより分離補助コロ41が転写ベルト24に接触していない長さの方が長くなる。その結果、転写ベルト24は、全体的に持ち上がろうとするよりベルト幅方向に複数箇所局所的に突出して転写ベルト24に凹凸をつけやすくなる。
【0032】
図4は分離補助装置40の斜視図を示す。本実施形態では分離補助コロ41a、41b、41cの3つが幅方向に並んで設けられている。隣同士の分離補助コロ41の間隔L2は、125mmである。両端の分離補助コロ41aと41b間の間隔L3は250mmである。中央部の分離補助コロ41bは、どの幅のサイズの記録材も幅方向の中央が共通の基準線に実質的に一致するように搬送される記録材の略中央部に位置するように配置されている。特に、幅方向のサイズが297mmのAサイズの薄い記録材が搬送された場合には、A4サイズの記録材に対して三箇所が押し上げられる。A4サイズの記録材の分離性をより高めるのに有効である。
【0033】
(分離補助装置の制御)
分離補助装置40の動作位置は分離補助制御回路50によって制御される。この制御の関係を示しているのが図5である。分離補助装置40の動作位置信号の制御は、ユーザーに指定された記録材Pの坪量情報、レジストローラ対8の記録材送りタイミングと記録材の搬送速度に基づいて得られる記録材先端位置情報に基づく。制御部50はCPU、ROM、RAMを含む。ユーザーが画像形成部を操作する操作部102からの情報は制御部50に入力される。レジストローラ8の動作タイミングは制御部50に入力される。二次転写高圧電源からの二次転写電流値の情報が制御部50に入力される。制御部50は、分離補助装置40のモータの動作を制御する。また制御部50はファンを制御するファン制御回路に分離補助コロ41の持ち上げ動作・収納動作信号を出力する。これについては後で説明する。
【0034】
なお坪量とは、単位面積当りの重さ(g/m2)を示す単位で、記録材の厚みを示す値として一般的に用いられる。
【0035】
本実施形態では、以下の二通りのパターンがROMに予め記憶されている。
・記録材が坪量60g/m2以下の場合には、分離補助コロ41が押し上げ位置に位置して転写ベルト24を幅方向で局所に突出させる。記録材の転写ベルト24からの分離は、押し上げによって局所的な突出を形成することによって行われる。
・記録材が坪量60g/m2より大きい場合には、分離補助コロ41が退避位置に位置する。退避位置において分離補助コロ41は転写ベルト24から離間している。記録材の転写ベルト24からの分離は、張架ローラ26の曲率を利用することによって行われる。
すなわち、特定の坪量(第一の坪量)の記録材に対して分離補助コロ41を押し上げる動作のモードを実行する。また、第一の坪量より大きい第二の坪量の記録材に対しては分離補助コロ41を押し上げる動作を行わずに、張架ローラ26により記録材を分離する動作のモードを実行する。
【0036】
坪量は、操作部102でユーザーが入力する場合や、記録材を収容する収容部に記録材の坪量を入力する場合があり、それらにより画像形成装置に入力された坪量の情報に基づいて、制御部50が分離補助装置40の動作を決定する。
【0037】
(分離補助コロの制御タイミング)
次に、分離補助装置40の動作を制御するフローチャートを、図6を用いて説明する。まず、図6で示されるように、画像形成信号が入力されることでスタートすると(S01),制御部50は画像形成に使用される記録材の坪量に関する情報、即ち、本実施形態ではユーザー操作部102でユーザーが設定した記録材の坪量情報を読み取る(S02)。制御部50は、読み取った坪量が40g/m2より大きいかどうかが判断される(S03)。制御部50がS03で記録材の坪量が40g/m2より大きいと判断した場合には、制御部50は分離コロを収容位置に配置して(S06)、終了する(S07)。記録材の坪量が40g/m2以下の場合には、転写ベルト24から記録材を分離するために、分離補助装置40により転写ベルトを押し上げて突出を形成する動作を行う。分離補助コロ41はY1方向へ動かされて、転写ベルト24を押し上げた、押し上げ位置に配置される(S04)。分離補助コロ41により変形された転写ベルト上で、記録材Pは、うねりがつけられてこしの強さが大きくなり、張架ローラ26に到達する前に、転写ベルトから分離される。次に、記録材の先端が記録材ガイド29に到達しているかどうかの判断を行う(S05)。本実施形態では、記録材ガイド29には不図示が記録材検知センサーが設けられている構成であり、この記録材検知センサーにより記録材の先端が記録材ガイド29に達しているかどうかの判断が行われる。もちろんこの記録材検知センサーを記録材ガイド29に設けずに、所定のポイントからカウントすることで記録材の位置を検知する等の他の方法であってもいい。記録材が記録材ガイド29に到達している場合には、制御部50は分離が行われたと判断して、分離コロを収容位置に移動させて(S06)、終了する(S07)。一方、記録材検知センサーが記録材を検知しない場合には、制御部50は、記録材が記録材ガイド29に到達していないと判断して、分離コロを押し上げを維持する。
【0038】
(記録材搬送装置90)
次に記録材を定着装置60ヘ向けて搬送するための記録材搬送装置90について説明する。記録材搬送装置90は図1(a)に示されるように、記録材搬送方向において記録材ガイド29より下流側で、定着装置60より上流側に位置する。図7(a)は搬送装置90を幅方向の断面を示し、図7(b)は鉛直方向に見た搬送面を示す。92a、92b、92cは記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトであり、分離補助コロ41a、41b、41cに対応して幅方向に並べて配置される。本実施形態では3つの搬送ベルトを並べているが、幅広の搬送ベルトをひとつ用いる構成でもよい。93、95は搬送ベルト92a、92b、92cを張架する張架ローラである。不図示のモータが張架ローラ95の軸に連結して、搬送ベルト92a、92b、92cを回転駆動する駆動源として機能する。
【0039】
94は92a、92b、92cの各搬送ベルトのベルト面に形成された開口であり、ベルト周方向に渡って複数設けられる。
【0040】
91a、91b、91cは、搬送ベルト92a、92b、92cの内周面側に配置されて空気を吸引口で吸引する吸引手段としてのファンである。
【0041】
各ファンの吸引口は搬送面の内周面に対向しており搬送ベルト92の内周面との距離は1mm程度であるので、ファンが作動すると吸引口が対向する位置の開口94に吸引力をかける。すなわち、搬送ベルト上で空気を吸引する吸引部は、ファンの吸引口に対向する搬送ベルトの開口に形成される。
【0042】
ファン91a、91b、91cは、それぞれのファンの幅方向における中心線が分離補助コロ41a、41b、41cの幅方向における中心線と一致するように配置される。開口94は、幅方向において各ファンに対向する位置に形成される。そのため、各分離補助コロに対応する位置に空気を吸引する吸引部が形成される。
【0043】
記録材が搬送ベルトの搬送面上で吸引部に搬送されると、吸引力が記録材にかかり、記録材と搬送ベルトとの密着性が高まり、記録材の搬送性がより安定する。
【0044】
ファンにより記録材にかかる吸引力は、開口94における圧力と、記録材が通過する開口94の総面積との積により求まる。一般的な送風機装置において、圧力は回転数の2乗に比例する(式1)。本実施形態では、吸引ファン91の駆動モータとして、回転数が印加電圧に比例するDCブラシレスモータを使用するので、回転数の制御を印加電圧に基づいて容易に行うことができる。
P2=P1(N2/N1)^2−−−−−−−−式1
Q:風量 P:全圧 N:回転数
添え字1,2は、それぞれ回転数変更前後の値を示す。
【0045】
(ファンの制御)
図8のフローチャートを用いてファンの制御について説明する。本実施形態では、ファンの回転動作はファン制御回路70によって制御される。すなわちファン制御回路70は吸引手段を制御する吸引手段制御手段として機能する。ファン制御回路70の制御は、分離補助コロ41の持ち上げ動作・収納動作信号に基づく。ファン制御回路70はCPU、ROM、RAMを含む。分離補助コロ制御回路50からの持ち上げ動作・収納動作信号の情報が制御部50に入力される。ファン制御回路70は、ファンのモータに印加する電圧を制御する。
【0046】
S00で画像形成信号が入力されることでスタートすると、分離補助制御回路50より、分離補助コロ動作データとして、分離補助コロ40の押し上げ動作信号・収納動作信号を、吸引ファン制御装置70へ入力する(S01)。分離頬コロ動作データに基づいて記録材の分離を分離補助コロ41を押し上げることにより行うかどうかを判断する(S02)。記録材の分離を分離補助コロ41を押し上げることにより行わないと判断すると、ファン91a、91b、91cそれぞれの駆動モータに電圧a(V)が印加されて、吸引ファン91a、91b、91c(S03)が作動する。吸引力が幅方向に3つ並べた各ファンの吸引口と対向する搬送ベルトの開口に働き、吸引部を幅方向に異なる位置に複数形成する。その結果、搬送ベルト上での記録材の搬送性がより安定化して、記録材の幅方向における端部がばたつくのを抑制することができる。S02で記録材の分離を分離補助コロ41a、41b、41cを押し上げることにより行うと判断すると、ファン91a、91b、91cそれぞれの駆動モータに電圧b(V)が印加されて、吸引ファン91a、91b、91c)が作動する(S04)。
【0047】
本実施形態では押し上げにより記録材の分離を行う場合のファンの駆動モータの印加電圧を、張架ローラ26の曲率により記録材の分離を行う場合のファンの駆動モータの印加電圧より低く設定する。この理由について説明する。張架ローラ26の曲率により記録材の分離を行う場合、分離後の記録材の搬送ベルト上での搬送性を高めるためには印加電圧を高くして吸引力を強くするのが望ましい。しかし、記録材の分離をするために転写ベルト24を押し上げると記録材にはうねりが形成される。押し上げにより記録材の分離を行う場合には、搬送ベルト上での吸引力があまりに大きいと、吸引力がうねりにかかった瞬間にうねりがひしゃげた状態になりしわよりの原因になるおそれがあるからである。次に、続けて記録材が搬送されるかが判断される(S05)。続けて記録材が搬送されると判断されると、S01に戻る。続けて記録材が搬送されないと判断されると、各ファンに印加する電圧がオフになりファンが停止(S06)して、終了する(S07)。
【0048】
(ファンの記録材搬送方向における配置)
次に、各ファン91a、91b、91cの記録材搬送方向における位置関係について説明する。各ファン91a、91b、91cの記録材搬送方向(図9中の矢印の向き)における位置関係は図9に示される。すなわちファン91bがファン91a、ファン91cより上流側に位置して、ファン91aの位置とファン91cの位置が同じになるように、各ファンが配置される。
【0049】
記録材が搬送ベルトに搬送されると、記録材搬送方向において上流側に配置されたファン91bによる吸引力が記録材に最初にかかる。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置されるので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。幅方向においてファン91bのサイドに位置するファン91a、91cはいずれも記録材搬送方向においてファン91bより下流側に位置する。分離補助コロ41bにより形成されるうねりにファン91bによる吸引力がかかるタイミングは、幅方向において分離補助コロ41bにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91cによる吸引力がかかるタイミングより前である。
【0050】
このように本実施形態は、うねりに吸引力がかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前になるように、ファンが配置される構成である。この理由について説明する。吸引力がうねりにかかるタイミングが吸引力が幅方向においてうねりの両サイドにかかるタイミングより後であると、両サイドの吸引によりうねりの幅方向における動きが抑制されるので、うねりが幅方向の逃げ場がなくなってしまう。その結果、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されて、定着に影響するおそれがある。すなわち、うねりの幅方向の逃げ場を確保するために、うねりに吸引力がかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前であるのが望ましい。
【0051】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91a、91cが配置された位置に到達すると、ファン91a、ファン91cによる吸引力が記録材にかかる。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91b、91cによる吸引力がかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41aにより形成されるうねりに吸引力がかかるとき、少なくとも一方のサイドに吸引力がかからない状態である。そのため、分離補助コロ41aにより形成されるうねりの幅方向における逃げ場を確保して、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図9b)。ファン91cについても同様である。ファン91cは分離補助コロ41cに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41cにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91bによる吸引力がすでにかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41cにより形成されるうねりに吸引力がかかるタイミングが、少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前である。そのため、分離補助コロ41cにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されているので、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図9(b))。
【0052】
このように本実施形態は、41a、b、cの三つの分離補助コロを配置してうねりを3つ形成しても、3つのうねりそれぞれの幅方向における逃げ場を確保する構成になっている。
【0053】
本実施形態では図7(b)について説明する。αは各突出部の幅方向の幅である。βは搬送ベルト上の開口が形成された幅方向の範囲であり、ファンの吸引口の幅方向の幅より小さく、かつ、αより小さくなるように設定されている。すなわち搬送ベルトの開口は、幅方向において開口が形成された範囲βが、幅方向において各分離補助コロが配置された範囲αに含まれるように、形成される。この理由について説明する。吸引部における吸引力は分離補助コロにより形成されたうねりに集中させる上で望ましい。しかし転写ベルトから分離した後、記録材のうねりは幅方向にゆらぐおそれがある。記録材のうねりが幅方向にゆらぐと、吸引部における吸引力がうねりのサイドにかかるおそれがあるからである。
【0054】
本実施形態では、図7(b)に示されるように、各ファン91a、91b、91cの吸引口が形成される範囲が幅方向に重複しないように、各吸引口が配置される。これにより例えばファン91bの吸引口からの吸引力が分離補助コロ41aにより形成されるうねりにかかるのを抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、吸引部を各分離補助コロに対応して形成するために、41a、41b、41cの各分離補助コロと対応して、91a、91b、91cの三つのファンを設けた構成であるが、これに限定されない。吸引部を各分離補助コロに対応して形成する構成であればよい。41a、41b、41cの各分離補助コロに対応する吸引口から共通のファンを用いて吸引する構成であってもよい。
【0056】
<第二実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態では図10に示されるように、分離補助コロ41a、41b、41c、41d、41eが幅方向に5個並んで配置される。91a、91b、91c、91d、91eの5つのファンが、分離補助コロ41a、41b、41c、41d、41eの幅方向における位置に対応して配置される。
【0057】
記録材搬送方向における各ファンの位置は、上流側から順に、91c、91b及び91d、91a及び91eの順である。
【0058】
記録材が搬送ベルトに搬送されると、記録材搬送方向において上流側に配置されたファン91cによる吸引力が記録材に最初にかかる。ファン91cは分離補助コロ41cに対応する位置に配置されるので、ファン91cによる吸引力が分離補助コロ41cにより形成されたうねりにかかる。幅方向においてファン91cのサイドに位置するファン91a、91b、91d、91eはいずれも記録材搬送方向においてファン91cより下流側に位置する。分離補助コロ41cにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91b、91d、91eによる吸引力がかかるタイミングより前に、分離補助コロ41cにより形成されるうねりにファン91cによる吸引力がかかる。
【0059】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91b、91dが配置された位置に到達すると、ファン91b、ファン91dによる吸引力が記録材にかかる。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置されるので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41bにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91c,91dによる吸引力がかかっている。他方のサイドのファン91aは、記録材搬送方向においてファン91bより下流側に位置する。そのため分離補助コロ41bにより形成されるうねりにファン91bによる吸引力がかかるタイミングは、分離補助コロ41bにより形成されるうねりの一方のサイドにファン91aによる吸引力がかかるタイミングより前である。ファン91dについても同様である。
【0060】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91a、91eが配置された位置に到達すると、ファン91a、ファン91eによる吸引力が記録材にかかる。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91b,91c,91d,91eによる吸引力がかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。ファン91eについても同様である。
【0061】
このように配置すると、各分離補助コロにより形成されたうねりにそれぞれのファンによる吸引力がかかるとき、うねりの一方のサイドは吸引力がかかっていない状態になる。そのため、分離補助コロにより5つのうねりを形成しても、5つのうねりそれぞれの幅方向における逃げ場を確保して、うねりの緩和が不充分なまま下流側に向けて搬送されるのを抑制することができる。
【0062】
<第三実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態の搬送ベルトの配置について図11を用いて説明する。本実施形態の搬送ベルトの配置は、搬送ベルト92a、92b、92cの回転方向が平行ではなく、サイドの搬送ベルト92a、92cの回転方向が、記録材搬送方向において下流側で幅方向において外側に広くように設定される。θは、搬送ベルト92a、92cの回転方向がそれぞれ搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度である。
【0063】
本実施形態では搬送ベルト92aの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度と搬送ベルト92aの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度は同じ値に設定される。各搬送ベルトの回転方向の合力が記録材の搬送力として働くので、搬送ベルト92bの回転方向と記録材の搬送方向は一致する。
【0064】
下流側に搬送されるにつれて搬送ベルト92a、92cの回転方向が外側に広くので、記録材は両サイドに引っ張る力を受ける。その結果、記録材に発生したうねりを両端へ積極的に引き伸ばすので、記録材のうねりを緩和するのに有効である。
【0065】
両サイドに引っ張る力は、搬送ベルト92a、92cの回転方向が搬送ベルト92aの回転方向に対して外側に開く角度θを大きくすることにより、強くすることができる。しかし両サイドに引っ張る力があまりに強いと、薄紙等を引き裂くおそれがある。そこで本実施形態では、搬送ベルト92a、92cの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度θが10°以内になるように設定する。
【0066】
<第四実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態はファンの作動タイミングに基づいて吸引手段が記録材を吸引するタイミングを決定する構成である。
本実施形態では、図12(a)に示されるように、ファン91a、ファン91b、ファン91cの記録材搬送方向にける位置が同じになるように配置される。
【0067】
(ファンの制御)
図13のフローチャートを用いてファンの制御について説明する。本実施形態では、S02で記録材の分離を分離補助コロ41a、41b、41cを押し上げることにより行うと判断すると、ファン91bの駆動モータに、電圧a(V)より低い値を有する電圧bが印加されて、中央のファン91bがまず作動する(S04)。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置するので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。このとき幅方向においてファン91bのサイドに位置するファン91a、91cは非作動状態であるので、分離補助コロ41bにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91cによる吸引力はかからない。すなわち、吸引力がうねりにかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前である。分離補助コロ41bにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されているので、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図12(b))。その後、ファン91a、91cに電圧bが印加されて、サイドのファン91a、91cが作動する(S05)。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力は分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91bによる吸引力がすでにかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41aにより形成されるうねりに吸引力がかかるとき、少なくとも一方のサイドは吸引力がかからない状態である。そのため、分離補助コロ41aにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されるので、うねりが充分に緩和されずに下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図12(b))。分離補助コロ41cにより形成されるうねりについても同様である。
【0068】
その後ファン91a、91b、91cを停止させて(S06)、記録材が続けて搬送されるかどうかを判断する(S07)。連続して記録材が搬送されると判断すると、S01に戻る。連続して記録材が搬送されないと判断されると終了する(S08)。
【0069】
本実施形態ではファン91bの駆動モータに電圧を印加するタイミングに基づいて吸引手段が記録材のうねりに吸引力をかけるタイミングを決定する構成を用いたが、これに限定する意図ではない。ファンの吸引口を開閉するシャッターを設けて、シャッターの開閉に基づいて吸引手段が記録材に吸引力をかけるタイミングを決定する方法を用いてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザプリンタ等の電子写真の技術を用いて像担持体に担持されたトナー像を記録材に転写する画像形成装置に関する。詳しくは、記録材の転写、搬送を行う転写ベルトを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のローラにより張架した転写ベルトにより記録材を担持搬送する電子写真装置では、転写ベルト上の記録材は、転写ニップ部を通過すると転写ベルトに静電的に吸着される。
【0003】
しかし、記録材の剛度が弱いと、転写ベルトを張架する分離ローラの曲率と記録材の剛度を利用するだけでは、記録材を転写ベルトから分離することができない。すなわち、記録材が分離ローラの位置で転写ベルトに張り付いたままとなり、分離不良が生ずる。そこで、分離位置において転写ベルトにうねりをつける構成としては、転写ベルトを張架する分離ローラ表面に一様に突起物を形成して、記録材を分離させる方法がある(特許文献1)。このような構成を用いることによって、分離位置において転写ベルトにうねりを形成することができるが、転写ベルトに常に局所的に大きな張力を働かせてしまう。その結果、転写ベルトの局所的な磨耗が生じることによる抵抗ムラの影響で転写性が安定しなくなる。
【0004】
記録材を担持するシートを、記録材分離のために変形させつつも、変形による磨耗を低減する方法が特許文献2に記載されている。特許文献2には、内側から転写シートを押し上げる位置と押し上げない位置に動くことができる押し上げ手段としてコロを設けた構成が記載されている。特許文献2に記載の方法では、記録材の分離を転写シートをコロで押し上げることによって行い、記録材を分離しない間は転写シートを押し上げない。必要以上に転写材シートを変形させずに、様々な厚さの記録材を分離するために、特許文献3には、薄い記録材を大きな押し上げ量で分離して、厚い記録材を小さい押し上げ量で分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−015987
【特許文献2】特開平5−119636
【特許文献3】特開平5−341664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成を転写ベルトに適用すると次のような構成になる。つまり転写ベルト上の記録材にトナー像を転写する転写部材から記録材搬送方向において下流側に、分離工程時に転写ベルトを記録材搬送方向と直交する転写ベルトの幅方向において局所的に押し上げて突出を形成する押し上げ手段を配置する構成になる。薄い紙等の記録材の剛度が弱い場合に、転写ベルトが局所的に押し上げられた状態で記録材を搬送することにより突出と対応する位置でうねりを記録材につけて、分離工程時の記録材のこしの強さを大きくすることができる。
【0007】
しかし記録材のうねりが充分に緩和されないまま下流側へ向けて搬送されると、定着に影響するおそれがある。そこで記録材のうねりの緩和を促進するためには、転写ベルトの下流側の搬送ベルトで吸引口から吸引力をかける構成にして、吸引口の位置を幅方向において突出と対応させて、吸引口からうねりを吸引させるのが望ましい。
【0008】
ところで記録材の搬送の安定性を高めるためには、幅方向において吸引口を少なくとも3つ配置して、吸引力のかかる領域を広げるのが望ましい。ここで、うねりが少なくとも中央の吸引口と対応する位置に形成される場合について考える。この場合、中央の吸引口が記録材のうねりを吸引するタイミングが、両サイドの吸引口が記録材を吸引するタイミングより後であると、両サイドでの吸引によって記録材のうねりの幅方向における動きが抑制される。その結果、記録材のうねりの幅方向における逃げ場がなくなってしまい、記録材のうねりが充分緩和されなくなるおそれがある。すなわち、中央の吸引口が記録材のうねりを吸引する時に、少なくともいずれか一方のサイドの吸引口から記録材のうねりのサイドに吸引力がかかっていない状態であるのが望ましい。同様の課題は吸引口が4つ以上形成される場合にも生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、記録材を担持して搬送する転写ベルトと、前記転写ベルト上の記録材にトナー像を転写部において転写する転写手段と、記録材を搬送する記録材搬送方向において前記転写ベルトより下流側に配置されて、ベルト面に複数の開口を有して、前記転写ベルトから分離した記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第1の吸引口と、幅方向において前記第1の吸引口のいずれか一方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第2の吸引口と、幅方向において前記第1の吸引口の他方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第3の吸引口と、記録材搬送方向において前記搬送ベルトより下流側に位置しており、記録材にトナーを定着する定着手段と、記録材搬送方向において前記転写部より下流側の前記転写ベルトのベルト面を変形して、記録材搬送方向と直交する前記転写ベルトの幅方向において局所的な突出部を形成する変形手段とを有して、前記変形手段により記録材を分離するモードを実行可能な画像形成装置において、前記モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記第2の吸引口か前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかるタイミングよりも前に、前記第1の吸引口から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
転写ベルトに局所的な突出を形成して転写ベルトから記録材を分離する構成において、分離後の記録材を搬送する搬送ベルトで記録材の突出を吸引しても、記録材の幅方向における逃げ場がなくなりうねりが緩和されず下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を説明する図である。
【図2】分離補助装置を説明する図である。
【図3】分離補助装置を説明する図である。
【図4】分離補助装置を説明する図である。
【図5】分離補助装置を説明する図である。
【図6】分離補助装置を説明する図である。
【図7】記録材搬送装置を説明する図である。
【図8】フローチャートを示す図である。
【図9】記録材搬送装置を説明する図である。
【図10】第二実施形態を説明する図である。
【図11】第三実施形態を説明する図である。
【図12】第四実施形態を説明する図である。
【図13】第四実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1(a)を用いて第1実施形態の画像形成装置の構成及び動作について説明する。
【0013】
1Y、1M、1C、1Kは、感光ドラムであり、矢線A方向へ回転駆動する。感光体ドラムは像担持体として機能する。その表面は帯電装置2Y、2M、2C、2Kにより所定の電圧に一様に帯電される。帯電された感光ドラム表面は、レーザービームスキャナーからなる露光装置3Y、3M、3C、3Kによって露光されて、静電潜像が形成される。レーザービームスキャナーの出力が画像情報に基づいてオンオフされることによって、画像に対応した静電潜像が各感光ドラム上に形成される。現像装置4Y、4M、4C、4Kはそれぞれ有彩色トナーのイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)とブラック(K)トナーを内包する。現像装置には所定の電圧が印加されており、前述の静電潜像はそれら現像装置4Y、4M、4C、4Kを通過すると現像されて、各感光ドラム1Y、1M、1C、1K面上にトナー像が形成される。静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。
【0014】
感光ドラム1Y、1M、1C,1K上に形成されたトナー像は、各々が対応する1次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kで中間転写ベルト6上に一次転写される。こうして、中間転写ベルト6上に4色のトナー像が重畳して転写される。中間転写ベルト6はトナー像を担持して像担持体として機能する。中間転写ベルト6は感光体ドラム1の表面に当接されるよう配設されており、複数の張架部材としての張架ローラ20、21、22に張架されて矢印Gの方向へ300mm/secで回動するようになっている。本実施の形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラである。張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラである。
【0015】
転写ベルト24は記録材を担持して搬送するベルト部材として機能する。転写ベルト24は、複数の張架部材としての張架ローラ25、26、27に張架されて矢印Bの方向へ300mm/secで移動可能なベルト部材である。張架ローラ26は搬送ベルト24の駆動ローラである。転写ベルト24として、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。また、転写ベルト24として、引っ張り試験法(JIS K 6301)で測定したヤング率の値が0.5MPa以上10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。
【0016】
転写ベルト24の引っ張り試験におけるヤング率を0.5MPa以上の部材を使用することで、ベルトの形状を十分に保って回転駆動ができる。一方で、10MPa以下の十分に弾性変形が可能な部材を使用することで、後述する分離補助装置40によって記録材Pに効果的にうねり発生させて、より効果的な転写ベルト24からの記録材Pの分離を達成することが可能になる。また、十分に弾性変形が可能な部材は、部材が変形した状態から変形量を減らした際の部材の緩和現象が起こりやすいため、分離補助装置40による転写ベルト24の磨耗を低減することが可能になる。
【0017】
記録材は不図示のカセットに収納されている。記録材Pは、供給開始信号が出力されると、供給開始信号に基づいてカセットから不図示のローラによって搬送されてレジストローラ8へ導かれる。レジストローラ8は、記録材Pを一旦停止させて、中間転写ベルト6上のトナー像が搬送されてくるのと同期して転写ベルト24に記録材Pを供給する。
【0018】
レジストローラ8から記録材搬送方向(矢印Bの方向)において下流側には、中間転写ベルト張架ローラ21と対向して、トナー像を転写ベルト24に担持された記録材に転写する転写ニップNを形成する2次転写ローラ9が配置されている。すなわち、2次転写ローラは、像担持体(中間転写ベルト6)に対してベルト部材(転写ベルト24)を圧して、像担持体からベルト部材に担持された記録材上にトナー像を転写する転写手段として機能する。
【0019】
2次転写ローラ9はイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。外径が24mm,ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加で1E+5〜1E+7Ωの転写ローラを使用している。2次転写ローラ9には、供給バイアスが可変となっている2次転写高圧電源13が取り付けられている。
【0020】
記録材Pの先端が転写ニップNに到達する前に、二次転写ローラ9にトナーと逆極性の電圧が、中間転写ベルト6上のトナー像を記録材に転写するための二次転写バイアスとして印加される。記録材が転写ニップNに搬送されると、中間転写ベルト6上のトナー像が記録材P上へ一括して静電的に転写される。例えば本実施形態では、+30〜60mAの電流が流れるように制御される。このとき電圧値は1000Vから5000Vの範囲に制御される。適切な電流値と電圧値は、記録材の乾燥状態、環境、転写するトナーの量等の要因によって決まる。
【0021】
転写後に転写ベルト24から分離した記録材Pは、記録材ガイド29の案内面、記録材搬送装置90を経て定着装置60に搬送されると、定着手段としての定着ローラと加圧ローラによる加熱加圧工程によってトナー像が記録材に定着される。トナー像を定着した後に、記録材Pは機械の外に排出される。
【0022】
(分離補助装置40)
分離補助装置40について説明する。図4は分離補助装置40の斜視図を示す。分離補助装置40は、記録材の分離を、2次転写ローラ9と分離張架ローラ26との間の位置で局所的に転写ベルト24を押し上げて変形することにより行う変形手段として機能する。図1(b)は、分離補助装置40を用いて転写ベルト24が幅方向に局所的に押し上げられた状態を示す。分離補助装置40は、記録材搬送方向において2次転写ローラ9より下流側で、分離張架ローラ26より上流側に配置される。
【0023】
転写ベルト24は分離張架ローラ26と当接する領域において、湾曲する。厚い記録材等の剛度が強い記録材Pは、転写ベルト24が分離張架ローラ26に当接して湾曲した領域に到達すると、記録材が幅方向にうねっていなくても、転写ベルト24の湾曲の曲率と記録材のこしの強さで転写ベルト24から分離する。
【0024】
分離補助装置40の詳細な構成および、動作を示しているのが図2(a)、図2(b)である。分離補助装置40は分離部材である分離補助コロ41と、分離補助コロ41を回転可能に支持するコロフレーム42と、分離補助コロ41の揺動中心となるコロ揺動中心軸43を有する。さらに、コロ揺動中心軸43を中心にして分離補助コロ41を揺動するためのコロ駆動ギア44と、コロ駆動ギア44に駆動力を伝達するためのモータ駆動伝達ギア45と、駆動源であるモータ46を有する。モータ46の回転運動がモータ駆動伝達ギア45によって、コロ駆動ギア44に伝達される。ここで、コロ駆動ギア44とコロ揺動中心軸43の間にはベアリングを設けているため、コロ揺動中心軸43は、モータ46による回転駆動の影響は受けず位置が動かないようになっている。
【0025】
図2(a)は、分離補助コロ41が転写ベルト24から離間しており、分離補助コロ41が押し上げ位置から退避するための退避位置を示す。図2(b)は、分離補助コロ41が転写ベルト24の内面に当接して転写ベルト24を局所的に押し上げる押し上げ位置を示す。分離補助コロ41は、コロ揺動中心軸43を中心にモータ46の所定量の正回転により、図2(a)で示されるコロ退避位置から、Y1方向へ図2(b)で示される押し上げ位置まで動くことができる。さらに、モータ46の所定量の逆回転により、分離補助コロ41は、図2(b)の押し上げ位置からY2方向へ移動して、図2(a)で示される退避位置へ動くことができる。すなわち、分離補助コロ41は、正逆回転により、このような揺動運動を行うようになっている。
【0026】
分離補助コロ41エチレン−プロピレンゴム(EPDM)からなり、外径は6〜10mm、幅は5〜15mmである。このような分離補助コロ41が転写ベルト24を押し上げると、幅方向に局所的な突出部が転写ベルト24に形成される。ここで、幅方向とは、移動するベルト面の、移動方向と直交する方向である。
【0027】
図2(a)の状態で、分離補助コロ41から分離張架ローラ26までの距離は4〜8mmであり、図2(b)の状態では分離補助コロ41は転写ベルト24のベルト面を内面側から図2(a)の平面状態から3〜6mm押し上げている。
【0028】
薄い紙等の剛度の弱い記録材は変形しやすいので、押し上げによって転写ベルト24に生じる幅方向に局所的な変形に沿って、記録材にうねりが生じる。その結果、記録材の断面二次モーメント、すなわち記録材のこしの強さ、が大きくなる。図1(b)は押し上げによって転写ベルトに幅方向に局所的な変形が生じて、記録材にもうねりが生じている場合の斜視図を示す。記録材のこしを強くすることによって、薄紙等の剛度の弱い記録材を分離するために有効な分離効果を得ることができる。2次転写ローラ9によりトナーと逆極性の電荷が転写ベルト24の内面に付与されるので、転写ニップN以降で記録材は転写ベルト24に吸着している状態にある。しかし記録材は転写ベルト24上の突出が形成される突出ピーク位置と分離張架ローラ6間で転写ベルト24から分離する。
【0029】
分離補助装置40が有する分離補助コロ41は記録材が通過する領域にひとつであってもよい。しかしこの場合、記録材の幅方向において記録材がうねる範囲が狭くなってしまう.記録材の幅方向にうねりをつけるためには、記録材が通過する範囲内で幅方向に複数あった方が好ましい。
【0030】
一方で、分離補助コロ41を複数配置する場合に分離補助コロ41の配置間隔を狭くしすぎると、全体的に転写ベルト24が持ち上がってしまい、ベルト幅方向に複数の局所的な突出が転写ベルト24に形成されなくなり、分離性を高めることができない。ベルト幅方向に複数の局所的な突出を形成するためには、間隔を広くとることが必要になる。
【0031】
そこで転写ベルト24の走行方向と直交する幅方向において、分離補助コロ41の幅と分離補助コロ41との間隔が、図3に示されるように設定される。L1は分離補助コロ41同士で囲まれた部分の長さ、Wkは分離補助コロ41の幅を示している。L2は、隣り合った2つの分離補助コロ41の対向する端面内の部分を示しており、L1−2Wkによって得られる。本実施形態では、L2が2Wk以上と設定する。すなわち、分離補助コロ41で転写ベルト24に接触している長さより分離補助コロ41が転写ベルト24に接触していない長さの方が長くなる。その結果、転写ベルト24は、全体的に持ち上がろうとするよりベルト幅方向に複数箇所局所的に突出して転写ベルト24に凹凸をつけやすくなる。
【0032】
図4は分離補助装置40の斜視図を示す。本実施形態では分離補助コロ41a、41b、41cの3つが幅方向に並んで設けられている。隣同士の分離補助コロ41の間隔L2は、125mmである。両端の分離補助コロ41aと41b間の間隔L3は250mmである。中央部の分離補助コロ41bは、どの幅のサイズの記録材も幅方向の中央が共通の基準線に実質的に一致するように搬送される記録材の略中央部に位置するように配置されている。特に、幅方向のサイズが297mmのAサイズの薄い記録材が搬送された場合には、A4サイズの記録材に対して三箇所が押し上げられる。A4サイズの記録材の分離性をより高めるのに有効である。
【0033】
(分離補助装置の制御)
分離補助装置40の動作位置は分離補助制御回路50によって制御される。この制御の関係を示しているのが図5である。分離補助装置40の動作位置信号の制御は、ユーザーに指定された記録材Pの坪量情報、レジストローラ対8の記録材送りタイミングと記録材の搬送速度に基づいて得られる記録材先端位置情報に基づく。制御部50はCPU、ROM、RAMを含む。ユーザーが画像形成部を操作する操作部102からの情報は制御部50に入力される。レジストローラ8の動作タイミングは制御部50に入力される。二次転写高圧電源からの二次転写電流値の情報が制御部50に入力される。制御部50は、分離補助装置40のモータの動作を制御する。また制御部50はファンを制御するファン制御回路に分離補助コロ41の持ち上げ動作・収納動作信号を出力する。これについては後で説明する。
【0034】
なお坪量とは、単位面積当りの重さ(g/m2)を示す単位で、記録材の厚みを示す値として一般的に用いられる。
【0035】
本実施形態では、以下の二通りのパターンがROMに予め記憶されている。
・記録材が坪量60g/m2以下の場合には、分離補助コロ41が押し上げ位置に位置して転写ベルト24を幅方向で局所に突出させる。記録材の転写ベルト24からの分離は、押し上げによって局所的な突出を形成することによって行われる。
・記録材が坪量60g/m2より大きい場合には、分離補助コロ41が退避位置に位置する。退避位置において分離補助コロ41は転写ベルト24から離間している。記録材の転写ベルト24からの分離は、張架ローラ26の曲率を利用することによって行われる。
すなわち、特定の坪量(第一の坪量)の記録材に対して分離補助コロ41を押し上げる動作のモードを実行する。また、第一の坪量より大きい第二の坪量の記録材に対しては分離補助コロ41を押し上げる動作を行わずに、張架ローラ26により記録材を分離する動作のモードを実行する。
【0036】
坪量は、操作部102でユーザーが入力する場合や、記録材を収容する収容部に記録材の坪量を入力する場合があり、それらにより画像形成装置に入力された坪量の情報に基づいて、制御部50が分離補助装置40の動作を決定する。
【0037】
(分離補助コロの制御タイミング)
次に、分離補助装置40の動作を制御するフローチャートを、図6を用いて説明する。まず、図6で示されるように、画像形成信号が入力されることでスタートすると(S01),制御部50は画像形成に使用される記録材の坪量に関する情報、即ち、本実施形態ではユーザー操作部102でユーザーが設定した記録材の坪量情報を読み取る(S02)。制御部50は、読み取った坪量が40g/m2より大きいかどうかが判断される(S03)。制御部50がS03で記録材の坪量が40g/m2より大きいと判断した場合には、制御部50は分離コロを収容位置に配置して(S06)、終了する(S07)。記録材の坪量が40g/m2以下の場合には、転写ベルト24から記録材を分離するために、分離補助装置40により転写ベルトを押し上げて突出を形成する動作を行う。分離補助コロ41はY1方向へ動かされて、転写ベルト24を押し上げた、押し上げ位置に配置される(S04)。分離補助コロ41により変形された転写ベルト上で、記録材Pは、うねりがつけられてこしの強さが大きくなり、張架ローラ26に到達する前に、転写ベルトから分離される。次に、記録材の先端が記録材ガイド29に到達しているかどうかの判断を行う(S05)。本実施形態では、記録材ガイド29には不図示が記録材検知センサーが設けられている構成であり、この記録材検知センサーにより記録材の先端が記録材ガイド29に達しているかどうかの判断が行われる。もちろんこの記録材検知センサーを記録材ガイド29に設けずに、所定のポイントからカウントすることで記録材の位置を検知する等の他の方法であってもいい。記録材が記録材ガイド29に到達している場合には、制御部50は分離が行われたと判断して、分離コロを収容位置に移動させて(S06)、終了する(S07)。一方、記録材検知センサーが記録材を検知しない場合には、制御部50は、記録材が記録材ガイド29に到達していないと判断して、分離コロを押し上げを維持する。
【0038】
(記録材搬送装置90)
次に記録材を定着装置60ヘ向けて搬送するための記録材搬送装置90について説明する。記録材搬送装置90は図1(a)に示されるように、記録材搬送方向において記録材ガイド29より下流側で、定着装置60より上流側に位置する。図7(a)は搬送装置90を幅方向の断面を示し、図7(b)は鉛直方向に見た搬送面を示す。92a、92b、92cは記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトであり、分離補助コロ41a、41b、41cに対応して幅方向に並べて配置される。本実施形態では3つの搬送ベルトを並べているが、幅広の搬送ベルトをひとつ用いる構成でもよい。93、95は搬送ベルト92a、92b、92cを張架する張架ローラである。不図示のモータが張架ローラ95の軸に連結して、搬送ベルト92a、92b、92cを回転駆動する駆動源として機能する。
【0039】
94は92a、92b、92cの各搬送ベルトのベルト面に形成された開口であり、ベルト周方向に渡って複数設けられる。
【0040】
91a、91b、91cは、搬送ベルト92a、92b、92cの内周面側に配置されて空気を吸引口で吸引する吸引手段としてのファンである。
【0041】
各ファンの吸引口は搬送面の内周面に対向しており搬送ベルト92の内周面との距離は1mm程度であるので、ファンが作動すると吸引口が対向する位置の開口94に吸引力をかける。すなわち、搬送ベルト上で空気を吸引する吸引部は、ファンの吸引口に対向する搬送ベルトの開口に形成される。
【0042】
ファン91a、91b、91cは、それぞれのファンの幅方向における中心線が分離補助コロ41a、41b、41cの幅方向における中心線と一致するように配置される。開口94は、幅方向において各ファンに対向する位置に形成される。そのため、各分離補助コロに対応する位置に空気を吸引する吸引部が形成される。
【0043】
記録材が搬送ベルトの搬送面上で吸引部に搬送されると、吸引力が記録材にかかり、記録材と搬送ベルトとの密着性が高まり、記録材の搬送性がより安定する。
【0044】
ファンにより記録材にかかる吸引力は、開口94における圧力と、記録材が通過する開口94の総面積との積により求まる。一般的な送風機装置において、圧力は回転数の2乗に比例する(式1)。本実施形態では、吸引ファン91の駆動モータとして、回転数が印加電圧に比例するDCブラシレスモータを使用するので、回転数の制御を印加電圧に基づいて容易に行うことができる。
P2=P1(N2/N1)^2−−−−−−−−式1
Q:風量 P:全圧 N:回転数
添え字1,2は、それぞれ回転数変更前後の値を示す。
【0045】
(ファンの制御)
図8のフローチャートを用いてファンの制御について説明する。本実施形態では、ファンの回転動作はファン制御回路70によって制御される。すなわちファン制御回路70は吸引手段を制御する吸引手段制御手段として機能する。ファン制御回路70の制御は、分離補助コロ41の持ち上げ動作・収納動作信号に基づく。ファン制御回路70はCPU、ROM、RAMを含む。分離補助コロ制御回路50からの持ち上げ動作・収納動作信号の情報が制御部50に入力される。ファン制御回路70は、ファンのモータに印加する電圧を制御する。
【0046】
S00で画像形成信号が入力されることでスタートすると、分離補助制御回路50より、分離補助コロ動作データとして、分離補助コロ40の押し上げ動作信号・収納動作信号を、吸引ファン制御装置70へ入力する(S01)。分離頬コロ動作データに基づいて記録材の分離を分離補助コロ41を押し上げることにより行うかどうかを判断する(S02)。記録材の分離を分離補助コロ41を押し上げることにより行わないと判断すると、ファン91a、91b、91cそれぞれの駆動モータに電圧a(V)が印加されて、吸引ファン91a、91b、91c(S03)が作動する。吸引力が幅方向に3つ並べた各ファンの吸引口と対向する搬送ベルトの開口に働き、吸引部を幅方向に異なる位置に複数形成する。その結果、搬送ベルト上での記録材の搬送性がより安定化して、記録材の幅方向における端部がばたつくのを抑制することができる。S02で記録材の分離を分離補助コロ41a、41b、41cを押し上げることにより行うと判断すると、ファン91a、91b、91cそれぞれの駆動モータに電圧b(V)が印加されて、吸引ファン91a、91b、91c)が作動する(S04)。
【0047】
本実施形態では押し上げにより記録材の分離を行う場合のファンの駆動モータの印加電圧を、張架ローラ26の曲率により記録材の分離を行う場合のファンの駆動モータの印加電圧より低く設定する。この理由について説明する。張架ローラ26の曲率により記録材の分離を行う場合、分離後の記録材の搬送ベルト上での搬送性を高めるためには印加電圧を高くして吸引力を強くするのが望ましい。しかし、記録材の分離をするために転写ベルト24を押し上げると記録材にはうねりが形成される。押し上げにより記録材の分離を行う場合には、搬送ベルト上での吸引力があまりに大きいと、吸引力がうねりにかかった瞬間にうねりがひしゃげた状態になりしわよりの原因になるおそれがあるからである。次に、続けて記録材が搬送されるかが判断される(S05)。続けて記録材が搬送されると判断されると、S01に戻る。続けて記録材が搬送されないと判断されると、各ファンに印加する電圧がオフになりファンが停止(S06)して、終了する(S07)。
【0048】
(ファンの記録材搬送方向における配置)
次に、各ファン91a、91b、91cの記録材搬送方向における位置関係について説明する。各ファン91a、91b、91cの記録材搬送方向(図9中の矢印の向き)における位置関係は図9に示される。すなわちファン91bがファン91a、ファン91cより上流側に位置して、ファン91aの位置とファン91cの位置が同じになるように、各ファンが配置される。
【0049】
記録材が搬送ベルトに搬送されると、記録材搬送方向において上流側に配置されたファン91bによる吸引力が記録材に最初にかかる。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置されるので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。幅方向においてファン91bのサイドに位置するファン91a、91cはいずれも記録材搬送方向においてファン91bより下流側に位置する。分離補助コロ41bにより形成されるうねりにファン91bによる吸引力がかかるタイミングは、幅方向において分離補助コロ41bにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91cによる吸引力がかかるタイミングより前である。
【0050】
このように本実施形態は、うねりに吸引力がかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前になるように、ファンが配置される構成である。この理由について説明する。吸引力がうねりにかかるタイミングが吸引力が幅方向においてうねりの両サイドにかかるタイミングより後であると、両サイドの吸引によりうねりの幅方向における動きが抑制されるので、うねりが幅方向の逃げ場がなくなってしまう。その結果、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されて、定着に影響するおそれがある。すなわち、うねりの幅方向の逃げ場を確保するために、うねりに吸引力がかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前であるのが望ましい。
【0051】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91a、91cが配置された位置に到達すると、ファン91a、ファン91cによる吸引力が記録材にかかる。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91b、91cによる吸引力がかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41aにより形成されるうねりに吸引力がかかるとき、少なくとも一方のサイドに吸引力がかからない状態である。そのため、分離補助コロ41aにより形成されるうねりの幅方向における逃げ場を確保して、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図9b)。ファン91cについても同様である。ファン91cは分離補助コロ41cに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41cにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91bによる吸引力がすでにかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41cにより形成されるうねりに吸引力がかかるタイミングが、少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前である。そのため、分離補助コロ41cにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されているので、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図9(b))。
【0052】
このように本実施形態は、41a、b、cの三つの分離補助コロを配置してうねりを3つ形成しても、3つのうねりそれぞれの幅方向における逃げ場を確保する構成になっている。
【0053】
本実施形態では図7(b)について説明する。αは各突出部の幅方向の幅である。βは搬送ベルト上の開口が形成された幅方向の範囲であり、ファンの吸引口の幅方向の幅より小さく、かつ、αより小さくなるように設定されている。すなわち搬送ベルトの開口は、幅方向において開口が形成された範囲βが、幅方向において各分離補助コロが配置された範囲αに含まれるように、形成される。この理由について説明する。吸引部における吸引力は分離補助コロにより形成されたうねりに集中させる上で望ましい。しかし転写ベルトから分離した後、記録材のうねりは幅方向にゆらぐおそれがある。記録材のうねりが幅方向にゆらぐと、吸引部における吸引力がうねりのサイドにかかるおそれがあるからである。
【0054】
本実施形態では、図7(b)に示されるように、各ファン91a、91b、91cの吸引口が形成される範囲が幅方向に重複しないように、各吸引口が配置される。これにより例えばファン91bの吸引口からの吸引力が分離補助コロ41aにより形成されるうねりにかかるのを抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、吸引部を各分離補助コロに対応して形成するために、41a、41b、41cの各分離補助コロと対応して、91a、91b、91cの三つのファンを設けた構成であるが、これに限定されない。吸引部を各分離補助コロに対応して形成する構成であればよい。41a、41b、41cの各分離補助コロに対応する吸引口から共通のファンを用いて吸引する構成であってもよい。
【0056】
<第二実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態では図10に示されるように、分離補助コロ41a、41b、41c、41d、41eが幅方向に5個並んで配置される。91a、91b、91c、91d、91eの5つのファンが、分離補助コロ41a、41b、41c、41d、41eの幅方向における位置に対応して配置される。
【0057】
記録材搬送方向における各ファンの位置は、上流側から順に、91c、91b及び91d、91a及び91eの順である。
【0058】
記録材が搬送ベルトに搬送されると、記録材搬送方向において上流側に配置されたファン91cによる吸引力が記録材に最初にかかる。ファン91cは分離補助コロ41cに対応する位置に配置されるので、ファン91cによる吸引力が分離補助コロ41cにより形成されたうねりにかかる。幅方向においてファン91cのサイドに位置するファン91a、91b、91d、91eはいずれも記録材搬送方向においてファン91cより下流側に位置する。分離補助コロ41cにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91b、91d、91eによる吸引力がかかるタイミングより前に、分離補助コロ41cにより形成されるうねりにファン91cによる吸引力がかかる。
【0059】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91b、91dが配置された位置に到達すると、ファン91b、ファン91dによる吸引力が記録材にかかる。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置されるので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41bにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91c,91dによる吸引力がかかっている。他方のサイドのファン91aは、記録材搬送方向においてファン91bより下流側に位置する。そのため分離補助コロ41bにより形成されるうねりにファン91bによる吸引力がかかるタイミングは、分離補助コロ41bにより形成されるうねりの一方のサイドにファン91aによる吸引力がかかるタイミングより前である。ファン91dについても同様である。
【0060】
その後、記録材はさらに下流側に搬送されてファン91a、91eが配置された位置に到達すると、ファン91a、ファン91eによる吸引力が記録材にかかる。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力が分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91b,91c,91d,91eによる吸引力がかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。ファン91eについても同様である。
【0061】
このように配置すると、各分離補助コロにより形成されたうねりにそれぞれのファンによる吸引力がかかるとき、うねりの一方のサイドは吸引力がかかっていない状態になる。そのため、分離補助コロにより5つのうねりを形成しても、5つのうねりそれぞれの幅方向における逃げ場を確保して、うねりの緩和が不充分なまま下流側に向けて搬送されるのを抑制することができる。
【0062】
<第三実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態の搬送ベルトの配置について図11を用いて説明する。本実施形態の搬送ベルトの配置は、搬送ベルト92a、92b、92cの回転方向が平行ではなく、サイドの搬送ベルト92a、92cの回転方向が、記録材搬送方向において下流側で幅方向において外側に広くように設定される。θは、搬送ベルト92a、92cの回転方向がそれぞれ搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度である。
【0063】
本実施形態では搬送ベルト92aの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度と搬送ベルト92aの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度は同じ値に設定される。各搬送ベルトの回転方向の合力が記録材の搬送力として働くので、搬送ベルト92bの回転方向と記録材の搬送方向は一致する。
【0064】
下流側に搬送されるにつれて搬送ベルト92a、92cの回転方向が外側に広くので、記録材は両サイドに引っ張る力を受ける。その結果、記録材に発生したうねりを両端へ積極的に引き伸ばすので、記録材のうねりを緩和するのに有効である。
【0065】
両サイドに引っ張る力は、搬送ベルト92a、92cの回転方向が搬送ベルト92aの回転方向に対して外側に開く角度θを大きくすることにより、強くすることができる。しかし両サイドに引っ張る力があまりに強いと、薄紙等を引き裂くおそれがある。そこで本実施形態では、搬送ベルト92a、92cの回転方向が搬送ベルト92bの回転方向に対して外側に開く角度θが10°以内になるように設定する。
【0066】
<第四実施形態>
第一実施形態と共通する点については説明を省略する。第一実施形態と相違する点について説明する。本実施形態はファンの作動タイミングに基づいて吸引手段が記録材を吸引するタイミングを決定する構成である。
本実施形態では、図12(a)に示されるように、ファン91a、ファン91b、ファン91cの記録材搬送方向にける位置が同じになるように配置される。
【0067】
(ファンの制御)
図13のフローチャートを用いてファンの制御について説明する。本実施形態では、S02で記録材の分離を分離補助コロ41a、41b、41cを押し上げることにより行うと判断すると、ファン91bの駆動モータに、電圧a(V)より低い値を有する電圧bが印加されて、中央のファン91bがまず作動する(S04)。ファン91bは分離補助コロ41bに対応する位置に配置するので、ファン91bによる吸引力が分離補助コロ41bにより形成されたうねりにかかる。このとき幅方向においてファン91bのサイドに位置するファン91a、91cは非作動状態であるので、分離補助コロ41bにより形成されるうねりのサイドにファン91a、91cによる吸引力はかからない。すなわち、吸引力がうねりにかかるタイミングが少なくとも一方のサイドに吸引力がかかる前である。分離補助コロ41bにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されているので、うねりが充分緩和されないまま下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図12(b))。その後、ファン91a、91cに電圧bが印加されて、サイドのファン91a、91cが作動する(S05)。ファン91aは分離補助コロ41aに対応する位置に配置されるので、ファン91aによる吸引力は分離補助コロ41aにより形成されたうねりにかかる。このとき、分離補助コロ41aにより形成されたうねりの幅方向において一方のサイドには、ファン91bによる吸引力がすでにかかっている。他方のサイドにはファンが配置されておらず、吸引力はかからない。すなわち、分離補助コロ41aにより形成されるうねりに吸引力がかかるとき、少なくとも一方のサイドは吸引力がかからない状態である。そのため、分離補助コロ41aにより形成されるうねりは、幅方向における逃げ場が確保されるので、うねりが充分に緩和されずに下流側へ向けて搬送されるのを抑制することができる(図12(b))。分離補助コロ41cにより形成されるうねりについても同様である。
【0068】
その後ファン91a、91b、91cを停止させて(S06)、記録材が続けて搬送されるかどうかを判断する(S07)。連続して記録材が搬送されると判断すると、S01に戻る。連続して記録材が搬送されないと判断されると終了する(S08)。
【0069】
本実施形態ではファン91bの駆動モータに電圧を印加するタイミングに基づいて吸引手段が記録材のうねりに吸引力をかけるタイミングを決定する構成を用いたが、これに限定する意図ではない。ファンの吸引口を開閉するシャッターを設けて、シャッターの開閉に基づいて吸引手段が記録材に吸引力をかけるタイミングを決定する方法を用いてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を担持して搬送する転写ベルトと、
前記転写ベルト上の記録材にトナー像を転写部において転写する転写手段と、
記録材を搬送する記録材搬送方向において前記転写ベルトより下流側に配置されて、ベルト面に複数の開口を有して、前記転写ベルトから分離した記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第1の吸引口と、
幅方向において前記第1の吸引口のいずれか一方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第2の吸引口と、
幅方向において前記第1の吸引口の他方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第3の吸引口と、
記録材搬送方向において前記搬送ベルトより下流側に位置しており、記録材にトナーを定着する定着手段と、
記録材搬送方向において前記転写部より下流側の前記転写ベルトのベルト面を変形して、記録材搬送方向と直交する前記転写ベルトの幅方向において局所的な突出部を形成する変形手段とを有して、
前記変形手段により記録材を分離する第1モードを実行可能な画像形成装置において、
前記第1モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記第2の吸引口か前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかるタイミングよりも前に、前記第1の吸引口から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、記録材搬送方向において、前記第1の吸引口は、前記第2の吸引口と前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方より、上流側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記第1の吸引口の吸引動作、前記第2の吸引口の吸引動作、及び前記第3の吸引口の吸引動作を制御する吸引動作制御手段を備えて、
前記モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記吸引動作制御手段は、前記第1の吸引口が吸引を開始するタイミングが、前記第2の吸引口が吸引を開始するタイミングと前記第3の吸引口が吸引を開始するタイミングのうち少なくともいずれか一方のタイミングよりも前であるように、吸引動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、
記録材搬送方向において前記変形手段よりも下流側で前記転写ベルトを張架する張架ローラを備えて、
前記張架ローラにより記録材を前記転写ベルト部材から分離する第2モードを実行可能であって、
前記第1モードにおける前記吸引口の吸引力は、前記第2モードにおける前記吸引口の吸引力より低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記吸引口の幅方向における幅は、前記突出部の幅方向における幅より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記突出部に対応する位置に形成される前記第1の吸引口は、前記第2の吸引口と前記第3の吸引口のいずれに対しても幅方向において重ならないように配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録材を担持して搬送する転写ベルトと、
前記転写ベルト上の記録材にトナー像を転写部において転写する転写手段と、
記録材を搬送する記録材搬送方向において前記転写ベルトより下流側に配置されて、ベルト面に複数の開口を有して、前記転写ベルトから分離した記録材を搬送面で搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第1の吸引口と、
幅方向において前記第1の吸引口のいずれか一方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第2の吸引口と、
幅方向において前記第1の吸引口の他方のサイドに位置して、前記搬送ベルトの搬送面の内側に対向して空気を吸引する第3の吸引口と、
記録材搬送方向において前記搬送ベルトより下流側に位置しており、記録材にトナーを定着する定着手段と、
記録材搬送方向において前記転写部より下流側の前記転写ベルトのベルト面を変形して、記録材搬送方向と直交する前記転写ベルトの幅方向において局所的な突出部を形成する変形手段とを有して、
前記変形手段により記録材を分離する第1モードを実行可能な画像形成装置において、
前記第1モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記第2の吸引口か前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかるタイミングよりも前に、前記第1の吸引口から前記搬送ベルト上の記録材に吸引力がかかることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、記録材搬送方向において、前記第1の吸引口は、前記第2の吸引口と前記第3の吸引口の少なくともいずれか一方より、上流側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記第1の吸引口の吸引動作、前記第2の吸引口の吸引動作、及び前記第3の吸引口の吸引動作を制御する吸引動作制御手段を備えて、
前記モードにおいて前記突出部が幅方向において少なくとも前記第1の吸引口と対応する位置に形成される場合に、前記吸引動作制御手段は、前記第1の吸引口が吸引を開始するタイミングが、前記第2の吸引口が吸引を開始するタイミングと前記第3の吸引口が吸引を開始するタイミングのうち少なくともいずれか一方のタイミングよりも前であるように、吸引動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、
記録材搬送方向において前記変形手段よりも下流側で前記転写ベルトを張架する張架ローラを備えて、
前記張架ローラにより記録材を前記転写ベルト部材から分離する第2モードを実行可能であって、
前記第1モードにおける前記吸引口の吸引力は、前記第2モードにおける前記吸引口の吸引力より低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記吸引口の幅方向における幅は、前記突出部の幅方向における幅より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記突出部に対応する位置に形成される前記第1の吸引口は、前記第2の吸引口と前記第3の吸引口のいずれに対しても幅方向において重ならないように配置されることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−58586(P2012−58586A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203157(P2010−203157)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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