説明

画像形成装置

【課題】 トナー像を転写させた後の感光体の表面を帯電装置によって再度帯電させるにあたり、装置が大型化することなく、感光体の表面に光を適切に照射させて、感光体の表面における残留電位を適切に除電できるようにする。
【解決手段】 感光体10の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写ベルト14が設けられた画像形成装置において、上記の中間転写ベルト14に面発光部材30を設け、中間転写体によって感光体と対向する部分に導かれた面発光部材30に電圧印加手段40から電圧を印加させ、この面発光部材30において発光された光を感光体10の表面に照射させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ及びこれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。特に、回転駆動される感光体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、静電潜像が形成された感光体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体とが設けられた画像形成装置において、トナー像を転写させた後の感光体の表面を帯電装置によって再度帯電させるにあたり、装置を大型化させることなく、感光体の表面に残留する電位を簡単かつ適切に除電させて、感光体の表面が帯電装置によって適切に帯電されるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ及びこれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、回転駆動される感光体の表面を帯電装置によって帯電させた後、このように帯電された感光体に潜像形成装置により画像データに従った静電潜像を形成し、このように静電潜像が形成された感光体に現像装置からトナーを供給して、感光体の表面に静電潜像に対応したトナー像を形成し、このトナー像を感光体の表面から中間転写ベルト等の中間転写体に転写させ、この中間転写体に転写されたトナー像を記録シートに転写させて画像形成を行うようにしたものが存在している。
【0003】
そして、このような画像形成装置においては、トナー像を中間転写体に転写させた後の感光体の表面に残留するトナー等の残留物をクリーニング装置により除去し、この感光体の表面を上記の帯電装置によって再度帯電させるようにしている。
【0004】
ここで、このように感光体の表面を帯電装置によって再度帯電させるにあたり、感光体の表面に電位が残留していると、感光体の表面に残留する電位により感光体の帯電にむらが生じ、適切な画像形成が行えなくなるという問題があった。
【0005】
このため、従来においては、上記のように感光体の表面を帯電装置によって再度帯電させる前の位置に蛍光灯やLED等の除電用の光源を設け、この光源から感光体の表面に光を照射させて、感光体の表面に残留している電位を除電させることが行われている。
【0006】
また、近年においては、特許文献1〜3等に示されるように、上記の除電用の光源として、エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)素子を用いるようにしたものも提案されている。
【0007】
しかし、蛍光灯やLEDやEL素子等を用いた除電用の光源を別個に設けるようにした場合、装置が大型化するという問題があり、特に、複数の感光体を用い、各感光体の表面に形成された各色彩のトナー像を中間転写体に転写させてフルカラーの画像形成を行う画像形成装置においては、各感光体に対応させてそれぞれ除電用の光源を設けることが必要になり、コストが高くつくと共に、装置がさらに大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−134583号公報
【特許文献2】特開平5−265363号公報
【特許文献3】特開平5−315071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、回転駆動される感光体の表面を帯電装置によって帯電させた後、このように帯電された感光体に潜像形成装置により画像データに従った静電潜像を形成し、このように静電潜像が形成された感光体に現像装置からトナーを供給して、感光体の表面に静電潜像に対応したトナー像を形成し、このトナー像を感光体の表面から中間転写ベルト等の中間転写体に転写させるようにした画像形成装置において、トナー像を転写させた後の感光体の表面を、帯電装置によって再度帯電させる場合における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、本発明においては、上記のような画像形成装置において、トナー像を転写させた後の感光体の表面を帯電装置によって再度帯電させる前に、感光体の表面に光を照射して、感光体の表面に残留している電位を除電させるにあたり、装置が大型化することなく、感光体の表面に残留している電位を適切に除電できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置においては、上記のような課題を解決するため、回転駆動される感光体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、静電潜像が形成された感光体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体とが設けられた画像形成装置において、上記の中間転写体に上記の感光体の表面に光を照射させる面発光部材を設けると共に、中間転写体によって感光体と対向する部分に導かれた面発光部材に電圧を印加させて発光させる電圧印加手段を設けるようにした。
【0012】
そして、この画像形成装置において、中間転写体が感光体と対向する部分に導かれた面発光部材に電圧を印加させて発光させると、感光体の表面に形成されたトナー像が中間転写体に転写されるのと合わせて、面発光部材から感光体の表面に光が照射され、感光体の表面に残留している残留電位が適切に除電されるようになり、従来のように別個に発光手段を設ける必要がなくなる。
【0013】
ここで、上記のように面発光部材を中間転写体に設けるにあたっては、面発光部材を中間転写体が感光体と対面する面又は対面する面と反対側の面の何れに設けることも可能であるが、面発光部材が設けられた面に感光体からトナー像が適切に転写されるようにすることが困難であるため、好ましくは、面発光部材を中間転写体が感光体と対面する面と反対側の面に設けるようにすると共に、この面発光部材から出射された光が感光体に適切に照射されるようにするため、上記の中間転写体を透光性材料で構成することが好ましい。
【0014】
また、感光体が複数設けられた画像形成装置において、各感光体から中間転写体にトナー像を順々に転写させる場合に、各感光体に対して適切に光を照射させて各感光体を適切に除電させるため、上記の中間転写体に面発光部材を複数設け、各面発光部材から各感光体に対して光を適切に照射させるようにすることが好ましい。また、光に対する感度等が異なる複数の感光体を用いた場合には、複数設けた面発光部材から出射される光の波長を変更させ、それぞれの感光体に対応した適切な波長の光を面発光部材から照射させて、各感光体をより適切に除電されるようにすることが好ましい。
【0015】
ここで、上記の面発光部材としては、例えば、有機EL素子や無機EL素子等を用いることができ、特に、低い電圧で十分な輝度が得られると共に、安価に製造することができる有機EL素子を用いることが好ましく、また有機EL素子の場合、発光層に用いる発光材料の種類に応じて、様々な波長の光を出射させることができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置においては、感光体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体に、感光体の表面に光を照射させる面発光部材を設けると共に、中間転写体によって感光体と対向する部分に導かれた面発光部材に対して電圧印加手段から電圧を印加させて、感光体と対向する部分に導かれた面発光部材を発光させるようにしたため、感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体に転写させるのと合わせて、面発光部材から感光体の表面に対して光を適切に照射させて、感光体の表面に残留する残留電位を適切に除電させることができるようになると共に、従来のように、別個に発光手段を設ける必要がなく、装置が大型化するということもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示した概略説明図である。
【図2】同実施形態の画像形成装置において、中間転写ベルトの移動方向に沿うようにして、中間転写ベルトの内周面に隔壁を介して複数の面発光部材を設けた状態を示した部分概略説明図である。
【図3】同実施形態の画像形成装置において、中間転写ベルトに設けた面発光部材の積層構造を示した概略説明図である。
【図4】同実施形態の画像形成装置において、面発光部材における発光層の部分に分離壁を設けて、発光層を複数の発光部に分離させた状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、この発明の実施形態に係る画像形成装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る画像形成装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0019】
この実施形態に係る画像形成装置においては、図1に示すように、4つのドラム状になった感光体10に対応させて、現像剤中におけるトナーに、黒色,黄色,マゼンダ色,シアン色の色彩の異なるトナーを用いた4つの現像装置11を設けている。
【0020】
そして、この実施形態の画像形成装置においては、上記の各感光体10を回転させて、各感光体10の表面をそれぞれ帯電装置12によって帯電させ、このように帯電された各感光体10に対して、それぞれ潜像形成装置13により画像形成情報に従った露光を行い、各感光体10の表面にそれぞれ静電潜像を形成するようにしている。
【0021】
次いで、このように静電潜像が形成された各感光体10に対して、それぞれ対応する現像装置11内における現像剤を現像ローラ11aにより感光体10と対向する位置に導き、所定の色彩のトナーを各感光体10の静電潜像に供給して現像を行い、各感光体10の表面にそれぞれの色彩のトナー像を形成するようにしている。
【0022】
そして、このように各感光体10に形成された各色彩のトナー像を、ローラ14aに架け渡されて駆動される無端ベルト状になった中間転写ベルト(中間転写体)14に、それぞれ一次転写ローラ15により順々に一次転写させて、この中間転写ベルト14の上にフルカラーのトナー像を形成するようにしている。
【0023】
ここで、この実施形態においては、上記の中間転写ベルト14として、10〜1012Ω程度の導電性を有すると共に透光性を有する樹脂材料、例えばウレタンアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリイミド樹脂等で構成され、厚みが75〜125μm程度になったものを用いるようにしている。
【0024】
そして、この実施形態においては、図1に示すように、この中間転写ベルト14の内周面、すなわち感光体10と対面する面と反対側の面に面発光部材30を設けるようにしている。
【0025】
ここで、この実施形態においては、中間転写ベルト14の内周面に面発光部材30を設けるにあたり、図2に示すように、中間転写ベルト14の移動方向に沿うようにして、隔壁20を介して複数の面発光部材30を設けると共に、各感光体10と対向する部分に導かれた各面発光部材30に対して、電圧印加手段40から電圧を個々に印加させて、各感光体10と対向する部分に導かれた各面発光部材30を個々に発光させるようにしている。
【0026】
そして、上記のように各感光体10に形成されたトナー像を中間転写ベルト14に順々に一次転写させる際に、それぞれの感光体10と対向する位置に導かれた面発光部材30に対して、上記の電圧印加手段40から電圧を個々に印加させて、各感光体10と対向する部分に導かれた各面発光部材30を個々に発光させ、透光性を有する上記の中間転写ベルト14を通して、それぞれ面発光部材30から出射された光を各感光体10の表面に照射させて、各感光体10の表面における残留電位を除電させるようにしている。
【0027】
その後、このように除電された各感光体10をそれぞれ第1クリーニング装置16に導き、各感光体10の表面にそれぞれクリーニングブレード16aの端部を圧接させて、各感光体10の表面に残留しているトナー等の残留物を各第1クリーニング装置16に回収した後、各感光体10の表面を上記の帯電装置12によって再度帯電させるようにしている。このようにすると、上記のように表面における残留電位が除電された各感光体10の表面が帯電装置12によって均一に帯電されるようになる。
【0028】
一方、上記のように中間転写ベルト14の上に形成されたフルカラーのトナー像を、この中間転写ベルト14により二次転写ローラ16と対向する位置に導くと共に、この画像形成装置の下部に収容された記録シートSを中間転写ベルト14と二次転写ローラ17との間に導き、上記の二次転写ローラ17により中間転写ベルト14の上に形成されたフルカラーのトナー像をこの記録シートSに二次転写させるようにしている。
【0029】
そして、このようにフルカラーのトナー像が転写された記録シートSを定着装置18に導いて、転写されたフルカラーのトナー像を記録シートSに定着させた後、フルカラーのトナー像が定着された記録シートSを排紙させるようにしている。一方、記録シートSに転写されずに上記の中間転写ベルト14に残ったトナー等の残留物を、第2クリーニング装置19によって中間転写ベルト14から除去させるようにしている。
【0030】
ここで、この実施形態の画像形成装置においては、上記の面発光部材30として、図3に示すような構成を有する有機EL素子を用いるようにした。
【0031】
そして、有機EL素子からなる面発光部材30を中間転写ベルト14の内周面側に設けるにあたっては、図3に示すように、中間転写ベルト14の内周面側に設けたポリエチレンテレフタレート等の透光性を有するフィルム基材21に、透明電極である陽極31と正孔輸送層32と発光層33と電子輸送層34と陰極35とを積層させ、さらに陰極35の上に保護層36を積層させるようにした。なお、有機EL素子の構造はこのようなものに限定されず、例えば、陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを積層させたもの、陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを積層させたもの、陽極と陽極バッファー層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極バッファー層と陰極とを積層させたもの等であってもよい。
【0032】
ここで、上記の発光層33には、ホスト化合物とリン光発光性化合物とが含有されることが好ましい。これにより、より一層高い発光効率が得られるようになる。
【0033】
そして、上記のホスト化合物としては、発光層33に含有される化合物の中で室温においてリン光発光のリン光量子収率が0.01未満の化合物を用いることが好ましい。
【0034】
また、ホスト化合物を複数種併用させることもできる。このように、ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することりより、白色発光を得ることもできる。
【0035】
ここで、ホスト化合物としては、正孔輸送能や電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。そして、このようなホスト化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、有機金属化合物、アリールメタン誘導体等が挙げられる。この中でも、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0036】
なお、発光層33の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができ、一般には5nm〜5μmの範囲になるようにする。
【0037】
また、上記の正孔輸送層32は、陽極31より注入された正孔を発光層33に輸送する機能を有するものであり、この正孔輸送層32を陽極31と発光層33の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層33に注入されるようになる。その上、陰極35から電子輸送層34より発光層33に注入された電子は、発光層33と正孔輸送層32の界面に存在する電子の障壁により、発光層33内の界面に累積され、発光効率が向上する等の優れた特性を有するようになる。
【0038】
そして、この正孔輸送層32の材料(以下、正孔輸送材料という)は、陽極31から注入された正孔を発光層33に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入輸送材料とし慣用されているものや、有機EL素子の正孔輸送層32に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができ、有機物、無機物の何れであってもよい。
【0039】
ここで、有機物からなる正孔輸送材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。この中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0040】
そして、上記の芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらに米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料や、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0041】
また、無機物からなる正孔輸送材料としては、p型−Si、p型−SiC等を使用することができる。
【0042】
そして、正孔輸送層32を形成するにあたっては、上記のような正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。なお、正孔輸送層32の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。また、この正孔輸送層32は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0043】
また、上記の電子輸送層34は、陰極35より注入された電子を発光層33に伝達する機能を有するものであり、その材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0044】
そして、この電子輸送層34に用いる材料(以下、電子輸送材料という)としては、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、有機金属錯体等が挙げられる。さらに、上記のオキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料や、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0045】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー又はメタルフタロシアニン、さらにはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層33の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0046】
なお、この電子輸送層34の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。また、この電子輸送層34は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0047】
また、上記の陽極31としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が用いられる。そして、このような陽極31の材料としては、例えば、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
【0048】
そして、陽極31を形成するにあたっては、蒸着やスパッタリング等の方法を用いることができる。なお、この陽極31から光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極31のシート抵抗は数百Ω/角以下であるが好ましい。さらに、陽極31の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲になるようにする。
【0049】
一方、陰極35としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が用いられる。このような陰極35の材料としては、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中でも、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性の金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等を用いることが好ましい。
【0050】
そして、陰極35を形成するにあたっては、蒸着やスパッタリング等の方法を用いることができる。また、陰極35のシート抵抗は数百Ω/角以下であることが好ましい。また、陰極35の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲になるようにする。
【0051】
また、上記の保護層36は、酸素及や水蒸気の透過を阻止する層であり、酸素の透過度が23℃、0%RHにおいて0.005ml/m2/day以下が好ましく、また、JIS K7129B法に従って測定した水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下であることが好ましい。
【0052】
そして、保護層36を構成する材料は特に限定されるものではないが、無機酸化物を用いることが好ましく、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を挙げることができる。
【0053】
ここで、上記のような有機EL素子を用いた面発光部材30を、中間転写ベルト14の内周面に隔壁20を介して複数設け、各感光体10と対向する部分に導かれた各面発光部材30からそれぞれ対向する感光体10に光を照射させて除電させるにあたり、前記の各感光体10に各波長の光に対する感度が異なるものを用いたような場合には、上記の面発光部材30における発光層33に異なる発光波長を有する発光材料を用い、それぞれの面発光部材30からそれぞれの感光体10に対応した適切な波長の光を照射させるようにすることもできる。このようにすると、それぞれの感光体10に対して適切な波長の光が照射されて、各感光体10がより適切に除電されるようになる。但し、この場合には、各感光体10から中間転写ベルト14にトナー像を転写させる際に、中間転写ベルト14に設けられたそれぞれの面発光部材30が対応する感光体10に位置に適切に導かれるように制御することが必要になり、その制御が非常に面倒になる。
【0054】
このため、図4に示すように、各面発光部材30における発光層33に分離壁33aを設けて、発光層33を複数の発光部34bに分離させ、各発光部33bに異なる発光波長を有する発光材料を用い、1つの面発光部材30から各感光体10に対応した波長の光を照射させるようにすることもできる。
【0055】
なお、この実施形態においては、面発光部材30に上記のような有機EL素子を用いるようにしたが、無機EL素子等を用いることも可能である。
【0056】
また、この実施形態においては、中間転写体14として、無端ベルト状になった中間転写ベルト14を用いるようにしたが、ドラム状になった中間転写ドラム(図示せず)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
10 感光体
11 現像装置
11a 現像ローラ
12 帯電装置
13 潜像形成装置
14 中間転写ベルト(中間転写体)
14a ローラ
15 一次転写ローラ
16 第1クリーニング装置
16a クリーニングブレート
17 二次転写ローラ
18 定着装置
19 第2クリーニング装置
20 隔壁
21 フィルム基材
30 面発光部材
31 フィルム基材
31 陽極
32 正孔輸送層
33 発光層
33a 分離壁
33b 発光部
34 電子輸送層
35 陰極
36 保護層
40 電圧印加手段
S 記録シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される感光体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、静電潜像が形成された感光体の表面にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体とが設けられた画像形成装置において、上記の中間転写体に上記の感光体の表面に光を照射させる面発光部材が設けられると共に、中間転写体によって感光体と対向する部分に導かれた面発光部材に電圧を印加させて発光させる電圧印加手段が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、上記の中間転写体が透光性材料で構成されると共に、中間転写体が感光体と対面する面と反対側の面に面発光部材が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、上記の感光体が複数設けられると共に、上記の中間転写体に面発光部材が複数設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、中間転写体に複数の面発光部材を設けるにあたり、感光体の種類に対応させて出射される光の波長が異なる面発光部材を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像形成装置において、上記の面発光部材が、有機エレクトロルミネッセンス素子又は無機エレクトロルミネッセンス素子で構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88594(P2012−88594A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236261(P2010−236261)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】