説明

画像形成装置

【課題】複数の記録媒体を連続して定着処理する場合、定着性能を確保するとともに生産性を低下させることがない画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、小さい幅の用紙Pの印刷終了時、第1温度検知部71によって検知される通紙域温度TAが定着温度TFより高くなっている場合、通紙域温度TAと記憶部82の相関量とに基づいて駆動開始温度TDを設定し、駆動開始温度TDと第2温度検知部72によって検知される非通紙域温度TBとの比較に基づいて、エージング駆動の実行の要否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に関し、特に、複数の記録媒体を連続して定着処理する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体へ定着させる定着装置が搭載されている。画像形成部によってトナー像が記録媒体に転写され、定着装置は、未定着トナー像を担持した記録媒体を加熱及び加圧することによってトナー像を記録媒体に定着させている。この定着装置には、ヒーター等の熱源により加熱される加熱ローラーと加熱ローラーに圧接された加圧ローラーとの間に形成されたニップ部において加熱ローラーから記録媒体に熱を供給することによってトナーを溶融させ、これにより溶融したトナーが記録媒体の表面に定着される。
【0003】
ところで、例えばA4サイズの記録媒体を印刷可能に構成された画像形成装置は、A4サイズの記録媒体とともにA4の記録媒体より小さいサイズの記録媒体も印刷することができる。この場合、加熱ローラーの長手方向のサイズは、A4の記録媒体のサイズに合わせているため、A4サイズよりも小サイズの記録媒体の印刷を行うとき、加熱ローラーの一部を使用して定着を行うことになる。この小サイズ記録媒体に対する印刷を複数枚連続して行うと、加熱ローラーは小サイズ記録媒体と接触する部分の熱が記録媒体に奪われる結果、記録媒体が接触する通紙領域の温度は低くなる一方、記録媒体が接触しない非通紙領域の温度は高くなり、加熱ローラーの表面に温度差が生じ、定着性能が確保できなくなる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の画像形成装置は、加熱ローラーの表面温度を均一にするために、加熱ローラーの通紙領域の表面温度を検知する第1温度検知部と、加熱ローラーの非通紙領域の表面温度を検知する第2温度検知部と、第1及び第2温度検知部によって検知される表面温度の差が所定範囲を超えるとき、複数の記録媒体の連続印刷過程での記録媒体の搬送間隔が大きくなるように通紙のタイミングを調整する制御部と、を備える。この記録媒体の搬送間隔を大きくしている時間に、加熱ローラーを空回転させるエージング駆動が行われ、エージング駆動によって加熱ローラーの通紙領域及び非通紙領域の表面温度が均一になるように放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−212883号公報(段落[0059]〜[0064]、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の画像形成装置では、第1温度検知部及び第2温度検知部によって検知される表面温度の差に基づいて、エージング駆動の時間を設定していることになるので、小サイズ記録媒体を連続して印刷した後、加熱ローラーの通紙領域と非通紙領域との表面温度の差が大きくなり、エージング時間が長くなる。そのため、連続印刷が可能となる印刷枚数が減少する(生産性が低下する)という問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の記録媒体を連続して定着処理する場合、定着性能を確保するとともに生産性を低下させることがない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の発明の画像形成装置は、熱源によって加熱される加熱部材と、該加熱部材に圧接されることによって形成されるニップ部にて未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する加圧部材と、前記加熱部材の、通紙可能な最大幅の記録媒体より小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される通紙領域の表面温度を検知する第1温度検知部と、前記加熱部材の、前記小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される非通紙領域の表面温度を検知する第2温度検知部と、前記第1温度検知部の検知温度が記録媒体の幅サイズに応じた定着温度に到達するように前記熱源の駆動を制御するとともに、前記記録媒体の印刷終了時、非通紙領域の表面温度に対して設定される駆動開始温度に基づいて前記加熱部材のエージング駆動を制御する制御部と、前記第1温度検知部によって検知される通紙域温度と前記駆動開始温度との相関量を記憶した記憶部と、を備え、前記制御部は、前記小さい幅の記録媒体の印刷終了時、前記第1温度検知部によって検知される前記通紙域温度が前記定着温度より高くなっている場合、前記通紙域温度と前記記憶部の相関量とに基づいて、前記駆動開始温度を設定し、前記駆動開始温度と前記第2温度検知部によって検知される非通紙域温度との比較に基づいて、前記エージング駆動の実行の要否を判定すること特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成するために第2の発明の画像形成装置は、熱源によって加熱される加熱部材と、該加熱部材に圧接されることによって形成されるニップ部にて未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する加圧部材と、前記加熱部材の、通紙可能な最大幅の記録媒体より小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される通紙領域の表面温度を検知する第1温度検知部と、前記加熱部材の、前記小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される非通紙領域の表面温度を検知する第2温度検知部と、前記第1温度検知部の検知温度が記録媒体の幅サイズに応じた定着温度に到達するように前記熱源の駆動を制御するとともに、前記記録媒体の印刷終了時、前記加熱部材のエージング駆動を制御する制御部と、前記第1温度検知部によって検知される通紙域温度と前記エージング駆動を継続するエージング駆動時間との相関量を記憶した記憶部と、を備え、前記制御部は、前記小さい幅の記録媒体の印刷終了時、前記第1温度検知部によって検知される前記通紙域温度が前記定着温度より高くなっている場合、前記通紙域温度と前記記憶部の相関量とに基づいて、前記エージング駆動時間を設定することを特徴としている。
【0010】
また、第3の発明では、上記の画像形成装置において、前記加熱部材の非通紙領域の表面を冷却するファンを更に備え、前記制御部は、前記エージング駆動を実行しているとき、前記ファンを駆動するように制御することを特徴としている。
【0011】
また、第4の発明では、上記の画像形成装置において、前記熱源は、最大幅の記録媒体の幅に対応する長さからなる第1ヒーターと、前記小さい幅の記録媒体の幅に対応する長さからなる第2ヒーターとを有し、前記制御部は、通紙される記録媒体の幅に応じて前記第1ヒーター及び第2ヒーターのオン、オフを制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、複数の記録媒体に対する連続した定着処理の過程で、小サイズの記録媒体の印刷終了時、第1温度検知部によって加熱部材の通紙領域の表面温度(通紙域温度)が検知され、また第2温度検知部によって加熱部材の非通紙領域の表面温度(非通紙域温度)が検知される。通紙域温度が定着温度より高くなっている場合、この通紙域温度と記憶部の相関量とに基づいて駆動開始温度を設定し、次に、駆動開始温度と第2温度検知部によって検知される非通紙域温度との比較に基づいて、エージング駆動の実行の要否を判定する。判定の結果、非通紙域温度が駆動開始温度を上回るとき、エージング駆動が実行され、非通紙領域と通紙領域との間で表面温度を均一にすることで、次回の記録媒体の定着性能が低下しない。一方、判定の結果、非通紙域温度が駆動開始温度を下回るとき、非通紙領域と通紙領域との間で表面温度のムラが小さいために、エージング駆動が実行されない。これよって次回の記録媒体の印刷を直ぐに実行することが可能となり生産性が向上する。
【0013】
また、第2の発明によれば、複数の記録媒体に対する連続した定着処理の過程で、小サイズの記録媒体の印刷終了時、第1温度検知部によって加熱部材の通紙領域の表面温度(通紙域温度)が検知される。通紙域温度が定着温度より高くなっている場合、この通紙域温度と前記記憶部の相関量とに基づいてエージング駆動時間を設定し、このエージング駆動時間でエージング駆動を制御する。これによって、定着性能を低下させることなくエージング駆動時間が短くなり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】第1実施形態に係る定着装置を概略的に示す断面図
【図3】第1実施形態に係る定着装置とその周辺を概略的に示す平面図
【図4】第1実施形態に係る定着装置の連続印刷時の加熱部材の表面温度の推移を示す図
【図5】第2実施形態に係る定着装置の連続印刷時の加熱部材の表面温度の推移を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の右側に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上側に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上側に配設された画像読取部6と、を備えている。
【0017】
給紙部2は、記録媒体である用紙Pを収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラー8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から記録媒体である用紙Pを1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。
【0018】
用紙搬送部3に送られた用紙Pは、用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙Pにトナー像を形成するものであり、矢印方向に回転可能である感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像部14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0019】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤを備えており、この帯電ワイヤからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
【0020】
次いで、現像部14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給された用紙Pに転写される。
【0021】
トナー像が転写された用紙Pは、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では、加熱ローラー18及び加圧ローラー19によって、用紙Pが加熱加圧され、用紙P上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙Pは、排出ローラー対20によって排出トレイ21上に排出される。
【0022】
転写部15による転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0023】
図2、図3は、上述の画像形成装置1に用いられる定着装置5を概略的に示す側面断面図、及び平面図である。なお、図3において、「PA」は最大通紙幅よりも小さいサイズの用紙を通紙したときの通紙領域を示し、「PB」は最大通紙幅よりも小さいサイズの用紙を通紙したときの非通紙領域を示している。
【0024】
図2に示すように、定着装置5は、ローラー定着方式であり、加熱部材である加熱ローラー18と、加圧部材である加圧ローラー19と、熱源である第1ヒーター44及び第2ヒーター45と、第1温度検知部71及び第2温度検知部72と、を備える。
【0025】
加熱ローラー18は、熱伝導性に優れたアルミや鉄等の金属からなる円筒形状の芯金上に、フッ素樹脂のコーティングやチューブを被覆したものが用いられる。加熱ローラー18の芯金内部にハロゲンランプやキセノンランプ等の第1ヒーター44及び第2ヒーター45が設けられている。
【0026】
加圧ローラー19は、合成樹脂、金属その他材料から構成される円筒形状の基材上にシリコンゴム等の弾性層が形成され、この弾性層の表面をフッ素樹脂コートにて被覆したものが用いられる。
【0027】
加圧ローラー19は加熱ローラー18に所定の圧力で圧接されて、加熱ローラー18がモーター68によって回転駆動させられ、加熱ローラー18の回転にともなって、加圧ローラー19は従動回転する。加熱ローラー18及び加圧ローラー19が互いに逆回転しながら当接する部分には、ニップ部Nが形成される。尚、加圧ローラー19がモーター68によって回転駆動させられ、加熱ローラー18が従動回転する構成であってもよい。
【0028】
第1温度検知部71及び第2温度検知部72は、夫々サーミスターからなり、加熱ローラー18の表面温度を検知するものであり、加熱ローラー18の表面に近接し、且つ用紙搬送方向に対してニップ部Nの上流側近傍に配置される。また、第1温度検知部71及び第2温度検知部72は、加熱ローラー18の軸方向の中央部と端部側に配置され(図3も参照)、加熱ローラー18の中央部及び端部側の表面温度を検知している。これによって、加熱ローラー18の表面温度を定着処理に必要な温度に制御することを可能にしている。
【0029】
用紙Pが用紙搬送方向の上流側(図2の右側)からニップ部Nに搬送され、ニップ部Nにおいて、加熱ローラー18と加圧ローラー19によって加熱及び加圧されることにより、用紙P上の粉体状態のトナーが熱溶融して定着される。定着処理後の用紙Pは、図示しない分離爪によって加熱ローラー18の表面から分離された後、定着装置5の用紙搬送方向の下流側に搬送される。
【0030】
図3に示すように、前述のモーター68と、第1温度検知部71及び第2温度検知部72は制御部81に接続される。制御部81は、モーター68と、第1温度検知部71及び第2温度検知部72の他に、第1ヒーター44及び第2ヒーター45を駆動する電源69と、加熱ローラー18を冷却する一対のファン75と、連続印刷時のエージング駆動に関するデータを保存する記憶部82とに接続している。制御部81は、マイクロコンピューターとRAM及びROMの記憶素子等で構成され、第1温度検知部71及び第2温度検知部72によって検知した温度に関する情報や、図示しない操作パネルからの操作指示信号等に基づいて、さらに記憶部82に保存されたデータを参照しながらモーター68の回転駆動を制御するとともに、電源69による第1ヒーター44及び第2ヒーター45への通電のオン、オフ、及びファン75の駆動のオン、オフを制御する。
【0031】
第1ヒーター44及び第2ヒーター45は加熱ローラー18の内部に配設される。第1ヒーター44は、加熱ローラー18の軸方向の両端部にまで延びて配置され、ニップ部N(図2参照)に通紙可能な最大幅の用紙Pに対応する領域(通紙領域PA及び非通紙領域PB)を加熱することが可能である。一方、第2ヒーター45は、加熱ローラー18の軸方向の中央部に配置され、小さい幅の用紙Pに対応する通紙領域PAを加熱することが可能である。例えばA4Y等の大きい幅の用紙Pが通紙されるとき、第1ヒーター44が駆動され、A5T等の小さい幅の用紙Pが通紙されるとき、第2ヒーター45が駆動される。このように、第2ヒーター45を備える構成であるために、連続印刷の過程で、小さい幅の用紙Pが通紙されるとき、第2ヒーター45のみを駆動することで、加熱ローラー18の非通紙領域PBが過昇温せず、生産性が向上する。
【0032】
第1温度検知部71及び第2温度検知部72は加熱ローラー18の表面に近接して配設される。第1温度検知部71は、加熱ローラー18の軸方向の略中央部に配置され、通紙領域PAの表面温度を検知している。一方、第2温度検知部72は、加熱ローラー18の軸方向の一方の端部側に配置され、非通紙領域PBの表面温度を検知している。
【0033】
第1温度検知部71によって検知された通紙域温度TA、及び第2温度検知部72によって検知された非通紙域温度TBは、制御部81に入力される。制御部81は、通紙域温度TAが用紙Pの幅サイズに応じた定着温度TFとなるように、電源69を介して第1及び第2ヒーター44、45のオン、オフ駆動を制御する。例えば、連続印刷時に、A4Y(大きい幅)の用紙Pの定着処理を行う場合、定着温度TFが200℃になるように第1ヒーター44を制御する一方、A5T(小さい幅)の用紙Pの定着処理を行う場合、定着温度TFが165℃になるように第2ヒーター45を制御する。また、制御部81は、通紙域温度TA及び非通紙域温度TBに基づいて加熱ローラー18のエージング駆動を制御し、また一対のファン75の回転駆動を制御する。
【0034】
エージング駆動は、ニップ部Nに通紙していない状態で加熱ローラー18をモーター68によって所定の時間だけ回転駆動させることであり、通紙しないで回転駆駆動させるので生産性が低下するが、エージング駆動によって、加熱ローラー18の通紙領域PAと非通紙領域PBとの間で表面温度が均一になり、次回の用紙Pの定着処理において定着性能が低下することがない。一対のファン75は、加熱ローラー18の非通紙領域PBの表面に冷風を送るように配置され、エージング駆動時に回転駆動することで過昇温した非通紙領域PBを冷却する。
【0035】
記憶部82はエージング駆動を実行するための駆動開始温度に関するテーブルを有し、制御部81は、このテーブルに基づいてエージング駆動を実行するか否かを判定する。即ち、制御部81は、印刷終了時に、通紙領域PAの表面温度(通紙域温度TA)が定着温度TFより高くなり、且つ非通紙領域PBの表面温度(非通紙域温度TB)がテーブルに示す駆動開始温度を上回ると、エージング駆動を実行する。一方、通紙域温度TAが定着温度TFより高くなったが、非通紙域温度TBがテーブルに示す駆動開始温度を下回ると、エージング駆動を実行しない。この構成によって、連続して印刷する時の次回の用紙Pの定着性能は低下することがなく、また生産性は低下することがない。具体的には、小さい幅の用紙Pにおいて、非通紙域温度TBが駆動開始温度TDを超えるか否かによってエージング駆動の実行の有無が決定される。駆動開始温度TDは、エージング駆動を実行するか否かの閾値となるものであり、通紙領域PAの表面温度(通紙域温度TA)に対応して設定される。記憶部82には、通紙域温度TAと駆動開始温度TDとの相関テーブルが保存されている。
【0036】
例えば、A5T(小さい幅)の用紙Pの印刷終了時、エージング駆動の実行の有無を判定するために、表1の相関テーブルが参照される。制御部81は、第1温度検知部71によって検知された通紙域温度TAと表1の相関テーブルに基づいて駆動開始温度TDを選定する。次に、第2温度検知部72によって検知された非通紙域温度TBが表1から選定した駆動開始温度TDを上回る場合、エージング駆動を15秒間実行する一方、第2温度検知部72によって検知された非通紙域温度TBが表1から選定した駆動開始温度TDを下回る場合、エージング駆動を実行しない。
【表1】

【0037】
表1に示すように、通紙域温度TAは三つの領域A、B、Cに区分される。領域Aでは、通紙域温度TAがA5T(小さい幅)の用紙Pの定着温度165℃から、定着温度165℃に対して5℃だけ高い170℃までの範囲にあり、この範囲では駆動開始時間DAが160℃に設定される。また領域Bでは、通紙域温度TAが170℃から175℃までの範囲にあり、この範囲では駆動開始時間DAが165℃に設定される。さらに領域Cでは、通紙域温度TAが175℃より高い温度範囲にあり、この範囲では駆動開始時間DAが170℃に設定される。このように、印刷終了時の通紙域温度TAに応じて駆動開始温度TDの高低を設定することで、通紙域温度TAが比較的低い場合、すなわちA5T(小さい幅)の用紙が連続して多数枚印刷された場合には通紙領域PAと非通紙領域PBの温度差が大きくなっていると考えられるため、エージング駆動の開始温度TDを低くしてエージングが実行され易くする。一方、通紙域温度TAが比較的高い場合、すなわちA5T(小さい幅)の連続印刷枚数が少ない場合には通紙領域PAと非通紙領域PBの温度差が小さいと考えられるため、エージング駆動の開始温度TDを高くしてエージングが実行されにくくする。従って、必要最低限のエージング駆動を行うことができ、不要なエージング駆動が回避され生産性が向上する。
【0038】
また、制御部81は、用紙Pの印刷終了時にエージング駆動が実行されている場合、エージング駆動とともにファン75を回転駆動するように制御する。これによって非通紙領域PBを冷却することができ、非通紙領域PBと通紙領域PAとの表面温度のムラが迅速に解消され定着性能が安定する。
【0039】
図4は、上記構成において、連続印刷時の加熱ローラー18の表面温度の推移を示すグラフである。グラフの横軸に時間(単位:秒)をとり、縦軸に温度(単位:℃)をとって定着温度(実線)の変動を示している。また、図4は、A5TとA4Yの各用紙Pを交互に連続して印刷した場合、通紙域温度TA(破線)と非通紙域温度TB(一点鎖線)の変動を示すものである。
【0040】
1枚目のA5Tの用紙Pの印刷終了時S1において、第1温度検知部71が通紙領域PAの表面温度を検知し、また、第2検知部が非通紙領域PBの温度を検知する。図4によれば通紙域温度TA1は175℃であって、非通紙域温度TB1は151℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表1に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA1(175℃)が相関テーブルの領域Bにあるものと判定し、駆動開始温度TDを165℃に設定する。次に、この駆動開始温度TD(165℃)と非通紙域温度TB1(151℃)との大小を比較し、非通紙域温度TB1が駆動開始温度TDを下回るために、エージング駆動を実行することがなく、不要なエージング駆動が回避される。そして次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0041】
次に2枚目のA5Tの印刷終了時S2において、通紙域温度TA2及び非通紙域温度TB2を夫々検知すると、図4では通紙域温度TA2は174℃であって、非通紙域温度TB2は160℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表1に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA2(174℃)が相関テーブルの領域Bにあるものと判定し、駆動開始温度TDを165℃に設定する。次に、この駆動開始温度TD(165℃)と非通紙域温度TB2(160℃)との大小を比較し、非通紙域温度TB2が駆動開始温度TDを下回るために、エージング駆動を実行することがなく、次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0042】
さらに3枚目のA5Tの印刷終了時S3において、通紙域温度TA3及び非通紙域温度TB3を夫々検知すると、図4では通紙域温度TA3は181℃であって、非通紙域温度TB3は169℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表1に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA3(181℃)が相関テーブルの領域Cにあるものと判定し、駆動開始温度TDを170℃に設定する。次に、この駆動開始温度TD(170℃)と非通紙域温度TB3(169℃)との大小を比較し、非通紙域温度TB3が駆動開始温度TDを下回るために、エージング駆動を実行することがなく、次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態の画像形成装置は、第1実施形態に示す図3の構成において、制御部81によるエージング駆動の制御、及び記憶部82の相関テーブルが第1実施形態と異なる。第2実施形態では、通紙域温度TAに応じてエージング駆動時間SAを異ならせている。
【0044】
図3において、記憶部82は、通紙域温度TAとエージング駆動時間SAとの相関テーブルを保存している。制御部81は、このテーブルに基づいてエージング駆動時間SAを決定する。即ち、制御部81は、印刷終了時に、第1温度検知部71によって検知した通紙域温度TAが定着温度TFより高い場合、検知した通紙域温度TAとこのテーブルとに基づいて、エージング駆動時間SAを選定し、選定したエージング駆動時間SAでエージング駆動を実行する。この構成によって、連続して印刷する時の次回の用紙Pの定着性能は低下することがなく、また生産性は低下することがない。
【0045】
例えば、A5T(小さい幅)の用紙Pの印刷終了時、エージング駆動時間SAを選定するために、表2の相関テーブルが参照される。制御部81は、第1温度検知部71によって検知された通紙域温度TAと表2の相関テーブルに基づいてエージング駆動時間SAを選定する。
【表2】

【0046】
表2に示すように、通紙域温度TAは三つの領域A、B、Cに区分される。領域Aでは、通紙域温度TAがA5T(小さい幅)の用紙Pの定着温度165℃から、定着温度165℃に対して5℃だけ高い170℃までの範囲にあり、この範囲ではエージング駆動時間SAが15秒に設定される。また領域Bでは、通紙域温度TAが170℃から175℃までの範囲にあり、この範囲ではエージング駆動時間SAが5秒に設定される。さらに領域Cでは、通紙域温度TAが175℃より高い温度範囲にあり、この範囲ではエージング駆動時間SAが0秒に設定される。このように、印刷終了時の通紙域温度TAに応じてエージング駆動時間SAの長短を設定することで、通紙域温度TAが比較的低い場合、すなわちA5T(小さい幅)の用紙が連続して多数枚印刷された場合には通紙領域PAと非通紙領域PBの温度差が大きくなっていると考えられるため、エージング駆動時間SAを長くする。一方、通紙域温度TAが比較的高い場合、すなわちA5T(小さい幅)の連続印刷枚数が少ない場合には通紙領域PAと非通紙領域PBの温度差が小さいと考えられるため、エージング駆動時間SAを短く(または0に)する。従って、定着性能を低下させることなくエージング駆動時間を短くすることができ、生産性が向上する。
【0047】
図5は、上記構成において、連続印刷時の加熱ローラー18の表面温度の推移を示すグラフである。グラフの横軸に時間(単位:秒)をとり、縦軸に温度(単位:℃)をとって定着温度(実線)の変動を示している。また、図5は、A5TとA4Yの各用紙Pを交互に連続して印刷した場合、通紙域温度TA(破線)と非通紙域温度TB(一点鎖線)の変動を示すものである。
【0048】
1枚目のA5Tの用紙Pの印刷終了時S1において、第1温度検知部71が通紙領域PAの表面温度を検知し、また、第2検知部が非通紙領域PBの温度を検知すると、通紙域温度TA1は176℃であって、非通紙域温度TB1は151℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表2に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA1(176℃)が相関テーブルの領域Cにあるものと判定し、エージング駆動時間SAを0秒に設定する。即ちエージング駆動を実行することがなく、不要なエージング駆動が回避される。そして次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0049】
次に2枚目のA5Tの印刷終了時S2において、通紙域温度TA2及び非通紙域温度TB2を夫々検知すると、通紙域温度TA2は173℃であって、非通紙域温度TB2は160℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表2に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA2(173℃)が相関テーブルの領域Bにあるものと判定し、エージング駆動時間SAを5秒に設定し、次に、エージング駆動を5秒間だけ実行する。このように、適切な時間だけエージング駆動を行い通紙領域PAと非通紙領域PBとの間で表面温度を均一にして、次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0050】
さらに3枚目のA5Tの印刷終了時S3において、通紙域温度TA3及び非通紙域温度TB3を夫々検知すると、通紙域温度TA3は179℃であって、非通紙域温度TB3は168℃であった。制御部81は、記憶部82に保存されている表2に示す相関テーブルを参照し、通紙域温度TA3(179℃)が相関テーブルの領域Cにあるものと判定し、エージング駆動時間SAを0秒に設定する。即ちエージング駆動を実行することがなく、不要なエージング駆動が回避される。そして次回のA4Yの用紙Pの印刷を実行する。
【0051】
尚、上記第1及び第2実施形態では、ローラー定着方式に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、ベルト定着方式、また電磁誘導により加熱ローラー或いはベルトを加熱する方式に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に利用することができ、特に、複数の記録媒体を連続して定着処理する画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 画像形成装置
5 定着装置
18 加熱ローラー(加熱部材)
19 加圧ローラー(加圧部材)
44 第1ヒーター(熱源)
45 第2ヒーター(熱源)
68 モーター
69 電源
71 第1温度検知部
72 第2温度検知部
75 ファン
81 制御部
82 記憶部
N ニップ部
PA 通紙領域
PB 非通紙領域
S1、S2、S3 印刷終了時
SA エージング駆動時間
TA、TA1、TA2、TA3 通紙域温度
TB、TB1、TB2、TB3 非通紙域温度
TD 駆動開始温度
TF 定着温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源によって加熱される加熱部材と、
該加熱部材に圧接されることによって形成されるニップ部にて未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する加圧部材と、
前記加熱部材の、通紙可能な最大幅の記録媒体より小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される通紙領域の表面温度を検知する第1温度検知部と、
前記加熱部材の、前記小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される非通紙領域の表面温度を検知する第2温度検知部と、
前記第1温度検知部の検知温度が記録媒体の幅サイズに応じた定着温度に到達するように前記熱源の駆動を制御するとともに、前記記録媒体の印刷終了時、非通紙領域の表面温度に対して設定される駆動開始温度に基づいて前記加熱部材のエージング駆動を制御する制御部と、
前記第1温度検知部によって検知される通紙域温度と前記駆動開始温度との相関量を記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記小さい幅の記録媒体の印刷終了時、前記第1温度検知部によって検知される前記通紙域温度が前記定着温度より高くなっている場合、前記通紙域温度と前記記憶部の相関量とに基づいて、前記駆動開始温度を設定し、前記駆動開始温度と前記第2温度検知部によって検知される非通紙域温度との比較に基づいて、前記エージング駆動の実行の要否を判定すること特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
熱源によって加熱される加熱部材と、
該加熱部材に圧接されることによって形成されるニップ部にて未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する加圧部材と、
前記加熱部材の、通紙可能な最大幅の記録媒体より小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される通紙領域の表面温度を検知する第1温度検知部と、
前記加熱部材の、前記小さい幅の記録媒体が前記ニップ部に通紙されるときに形成される非通紙領域の表面温度を検知する第2温度検知部と、
前記第1温度検知部の検知温度が記録媒体の幅サイズに応じた定着温度に到達するように前記熱源の駆動を制御するとともに、前記記録媒体の印刷終了時、前記加熱部材のエージング駆動を制御する制御部と、
前記第1温度検知部によって検知される通紙域温度と前記エージング駆動を継続するエージング駆動時間との相関量を記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記小さい幅の記録媒体の印刷終了時、前記第1温度検知部によって検知される前記通紙域温度が前記定着温度より高くなっている場合、前記通紙域温度と前記記憶部の相関量とに基づいて、前記エージング駆動時間を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱部材の非通紙領域の表面を冷却するファンを更に備え、
前記制御部は、前記エージング駆動を実行しているとき、前記ファンを駆動するように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記熱源は、最大幅の記録媒体の幅に対応する長さからなる第1ヒーターと、前記小さい幅の記録媒体の幅に対応する長さからなる第2ヒーターとを有し、前記制御部は、通紙される記録媒体の幅に応じて前記第1ヒーター及び第2ヒーターのオン、オフを制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109014(P2013−109014A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251511(P2011−251511)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】