説明

画像形成装置

【課題】クリーニングローラー等の各部品として現実的な寸法精度のものを使いつつ,クリーニングローラーの中間転写ベルトへの圧接力が,過大とも過小ともならずに安定的に得られるようにした画像形成装置を提供すること。
【解決手段】中間転写ベルト3とそのベルトクリーニング部4とを有する画像形成装置において,ベルトクリーニング部4の構成を,中間転写ベルト3のトナー像担持面に接触し,中間転写ベルト3の移動に対してカウンター回転する,発泡材46で構成されたクリーニングローラー42と,中間転写ベルト3の非トナー像担持面に接触するバックアップ部材44と,クリーニングローラー42とバックアップ部材44との少なくとも一方を他方に向けて押圧する弾力部材49とが設けられているものとする。弾力部材49の押圧力により,クリーニングローラー42等の振れ精度に関わらずクリーニングローラー42と中間転写ベルト3との接触状態がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,中間転写ベルトを有する画像形成装置に関する。さらに詳細には,中間転写ベルトのクリーニングを行うベルトクリーニング部を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,トナーを用いる画像形成装置には,例えば特許文献1に記載のもののように,中間転写ベルトを有するものがある。中間転写ベルトを有する画像形成装置は通常,複数の感光体を有している。これら複数の感光体により互いに異なる色のトナー像を作成し,中間転写ベルト上に転写して重ね合わせるのである。この,中間転写ベルト上に重ね合わせられてフルカラーとなったトナー像が,媒体である用紙に再転写されるのである。
【0003】
かかる中間転写ベルト上には,媒体へのトナー像の再転写後にもある程度のトナーが残留してしまう。この転写残トナーは,次回の画像形成時に画像汚れの原因となる等の弊害を引き起こす。このため,中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニングが設けられる。すなわち,再転写位置より下流の位置において,中間転写ベルトのトナー像担持面を,クリーニング部材で拭き取って転写残トナーを除去するのである。クリーニング部材として,発泡部材によるクリーニングローラーが用いられることがある。
【0004】
ここで一般的に,クリーニングローラーは中間転写ベルトに対してある程度(例えば0.4mm程度)食い込むように配置されている。そして,中間転写ベルトを挟んでクリーニングローラーの反対側にバックアップ部材が設けられる。中間転写ベルトの走行時のばたつきを押さえてクリーニングローラーとの密着を図るためである。いうまでもなく密着が不十分ではクリーニングが十分行われないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3548140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。各部品の公差等により,クリーニングローラーと中間転写ベルトとの密着性が安定的には得られないのである。クリーニングローラーの発泡部材の振れ精度(偏心)が±0.2mm程度はあるからである。このため,前述のようにクリーニングローラーの中間転写ベルトへの食い込み量が0.4mmと設定されていても,実際の回転時の食い込み量は,0.2〜0.6mmの範囲でふらついてしまう。つまり最大の食い込み量は0.6mmに達する。これでは一時的とはいえトナーへの圧迫が強すぎ,トナー中のワックス成分が滲み出して中間転写ベルトの表面に付着してしまう。これは転写効率を低下させて画像品質を悪くしてしまう。例えば画像パターンメモリを引き起こす。
【0007】
その一方,最大の食い込み量を0.4mmに押さえると,最小値は0.0mmとなってしまう。これでは接触不良でクリーニングムラが生じてしまう。このように,過大とも過小ともならない食い込み量を安定的に得ることができないのである。むろんこれは,クリーニングローラーの作製の寸法精度を上げれば解消できる問題ではある。しかしながら商業規模で大量生産する画像形成装置ではそのようなことは現実的ではない。特に,クリーニングローラーに用いられる発泡部材は,金属材料などよりさらに,加工精度を上げにくい。なお上記の問題点は,トナーが一成分型のものであるか二成分型のものであるかに関わらず存在する。
【0008】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,クリーニングローラー等の各部品として現実的な寸法精度のものを使いつつ,クリーニングローラーの中間転写ベルトへの圧接力が,過大とも過小ともならずに安定的に得られるようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,トナー像形成部を有し,トナー像形成部で形成されたトナー像を媒体上に転写することで画像を形成するものであって,トナー像形成部からトナー像の転写を受けてそのトナー像を媒体に再転写する,弾性層を有する構造の中間転写ベルトと,中間転写ベルトにおける,媒体への再転写位置より下流であってトナー像形成部からの被転写位置より上流の位置に設けられたベルトクリーニング部とを有し,ベルトクリーニング部には,中間転写ベルトのトナー像担持面に接触し,中間転写ベルトの移動に対してカウンター回転する,発泡材で構成されたクリーニングローラーと,中間転写ベルトの非トナー像担持面に接触するバックアップ部材と,クリーニングローラーとバックアップ部材との少なくとも一方を他方に向けて押圧する弾力部材とが設けられている。
【0010】
この画像形成装置では,クリーニングローラーが発泡材で構成されるとともに,クリーニングローラーとバックアップ部材とが互いに押圧されている。このため,クリーニングローラーは,バックアップ部材および中間転写ベルトにより,少し食い込まれた状態となっている。このため動作時に,クリーニングローラーの振れ精度に関わらず,クリーニングローラーと中間転写ベルトとの接触状態が良好に維持される。つまりクリーニング性能が高い。
【0011】
この画像形成装置ではさらに,弾力部材による押圧力の大きさが,クリーニングロー
ラーもしくはバックアップ部材の幅方向の寸法当たりで,12.5N(ニュートン)/m(メートル)を超えないことが望ましい。クリーニング性能の確保という点ではこの程度の押圧力で十分だからである。また,押圧力がこれを超えて大きいと,トナーに掛かる圧迫によるワックス成分の中間転写ベルトへの付着による弊害が生じてしまうからである。
【0012】
また,この画像形成装置では,バックアップ部材の位置の,中間転写ベルトを挟んでクリーニングローラーの真裏の位置からのずれ量が,クリーニングローラーの半径とバックアップ部材の半径とのうち小さい方の1/3に達しない範囲内であり,弾力部材による押圧力の大きさが,クリーニングローラーもしくはバックアップ部材の幅方向の寸法当たりで,7.5N/m以上であることが望ましい。ずれ量がほとんどない配置である場合には,この程度の押圧力があればクリーニング性は良好である。
【0013】
あるいは,ずれ量が,クリーニングローラーの半径とバックアップ部材の半径とのうち小さい方の1/3以上であり,かつ,クリーニングローラーの半径とバックアップ部材の半径と中間転写ベルトの厚さとの合計を超えない範囲内であり,押圧力の大きさが,幅方向の寸法当たりで,2.5N/m以上であることとしてもよい。ずれ量による中間転写ベルトのクリーニングローラーへの巻き付きが,クリーニングローラーと中間転写ベルトとをより良好に接触させる方向に作用するので,その分,押圧力は軽くてよいのである。
【0014】
この画像形成装置では,クリーニングローラーの位置が装置本体に対して固定されており,弾力部材は,バックアップ部材をクリーニングローラーへ向けて押圧するものであってもよい。あるいは逆に,バックアップ部材の位置が装置本体に対して固定されており,弾力部材は,クリーニングローラーをバックアップ部材へ向けて押圧するものとされていてもよい。後者の場合には,クリーニングローラーを収容するクリーナーハウジングを有し,バックアップ部材の位置が装置本体に対して固定されており,クリーニングローラー
の位置がクリーナーハウジングに対して固定されており,弾力部材は,クリーナーハウジングを,バックアップ部材がクリーニングローラーへ向けて押圧されるように押圧するものとされているものであってもよい。
【0015】
本発明ではさらに,クリーニングローラーおよびバックアップ部材の組を2組以上有し,各クリーニングローラーにそれぞれ回収部材が設けられており,各組における回収部材とバックアップ部材との間にバイアスを印加するバイアス部が設けられており,バイアス部により印加されるバイアスの向きが,組により異なることが望ましい。これにより,正規帯電のままの転写残トナーも逆帯電となっている転写残トナーもともにクリーニング部でクリーニングされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,クリーニングローラー等の各部品として現実的な寸法精度のものを使いつつ,クリーニングローラーの中間転写ベルトへの圧接力が,過大とも過小ともならずに安定的に得られるようにした画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の画像形成装置における中間転写ベルトの断面図である。
【図3】図1の画像形成装置におけるベルトクリーナーの要部を示す断面図である。
【図4】図3のベルトクリーナーにおけるバックアップローラとその押圧バネを示す平面図である。
【図5】本形態の第1の変形例に係るベルトクリーナーの要部を示す断面図である。
【図6】本形態の第2の変形例に係るベルトクリーナーの要部を示す断面図である。
【図7】バックアップローラーの押圧力とメモリ発生ライフとの関係の試験結果を示すグラフである。
【図8】バックアップローラーの押圧力およびずれ量とクリーニング性能との関係の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示す画像形成装置1に本発明を適用したものである。図1の画像形成装置1は,4つの画像形成部2Y,2M,2C,2Kと中間転写ベルト3とを有する。いわゆるタンデム型の画像形成装置である。図1の画像形成装置1は,画像形成部2Y,2M,2C,2Kや中間転写ベルト3の他,ベルトクリーナー4,2次転写装置5,定着器6,給紙カセット7を有している。以下順に説明する。
【0019】
画像形成装置1における中間転写ベルト3は,図2に示すように,基材層35と弾性層36とによる2層構造のものである。基材層35は,ポリイミド等の樹脂材料で形成されており,厚さは80μm程度である。弾性層36は,NBRゴム等の弾力性のあるゴム材料で形成されており,厚さは200μm程度である。基材層35,弾性層36とも,102〜106Ωcm程度の導電性が付与されている。画像形成装置1において中間転写ベルト3は,基材層35が内側,弾性層36が外側すなわちトナー像担持面側になるように配置されている。
【0020】
図1に戻って,中間転写ベルト3は,張架ローラー31〜34に架け渡されており,図中に矢印Xで示される向きに循環移動するようになっている。4つの画像形成部2Y,2M,2C,2Kは,いずれも構造的には同じものであり,以下では代表して画像形成部2Yにより説明する。画像形成部2Yには,感光体ドラム21,帯電器22,露光器23,現像器24が設けられている。これにより,感光体ドラム21の表面にトナー像が形成されるようになっている。現像器24は,一成分型現像剤を用いるもの,二成分型現像剤を用いるもの,のいずれであってもよい。
【0021】
また,感光体ドラム21は中間転写ベルト3の外面に接している。さらに,感光体ドラム21から見て中間転写ベルト3の裏側には,1次転写ローラー25が設けられている。1次転写ローラー25と感光体ドラム21との間の1次転写バイアスにより,感光体ドラム21上のトナー像が中間転写ベルト3上に転写されるようになっている。
【0022】
2次転写装置5は,複数のローラーにより張架された2次転写ベルト51により構成されている。2次転写ベルト51を張架するローラーの1つが,2次転写ローラー52である。2次転写装置5では,2次転写ローラー52と中間転写ベルト3の張架ローラー31との間の2次転写バイアスにより,中間転写ベルト3上のトナー像が用紙P上に転写されるようになっている。このため給紙カセット7から用紙Pが供給され,中間転写ベルト3と2次転写ベルト51との間のニップへ進入するようになっている。また,トナー像の転写を受けた用紙Pに対し,定着器6でトナー像の定着が行われるようになっている。
【0023】
ベルトクリーナー4は,中間転写ベルト3上のトナーを除去する装置である。ベルトクリーナー4で除去するのは,2次転写装置5での転写後も中間転写ベルト3上に残留している転写残トナーである。転写残トナーを放置したまま次回の画像形成を行うと画像が汚れるので,その防止のために中間転写ベルト3を清掃するのである。よってベルトクリーナー4は,中間転写ベルト3における,2次転写装置5より下流で画像形成部2Y,2M,2C,2Kのいずれよりも上流の位置に設けられている。
【0024】
ベルトクリーナー4は,中間転写ベルト3の外面側に,ハウジング41と,その中に配置された2組のクリーニングローラー42および回収ローラー43を有している。また,クリーニングローラー42から見て中間転写ベルト3の裏側には,バックアップローラー44が設けられている。
【0025】
ベルトクリーナー4における1組分のクリーニングローラー42,回収ローラー43,およびバックアップローラー44を,図3に拡大して示す。図3ではハウジング41は描かれていない。図3に示されるように,クリーニングローラー42は,中間転写ベルト3の外面側に接しており,その移動方向Xに対してカウンター回転するものである(矢印Z1)。クリーニングローラー42の回転速度は,その外周面の速度が中間転写ベルト3の移動速度と等速となる回転速度である。クリーニングローラー42は,芯金45とその外周を覆うポリウレタンフォーム層46とを有する発泡ローラーである。芯金45は直径10mm程度のものであり,ポリウレタンフォーム層46は外直径18mm程度のものである。ポリウレタンフォーム層46の材質は,例えば,特開2009−300741号公報の[0045]〜[0061]に記載されるようなものであって,102〜106Ωcm程度の導電性を付与したものでよい。
【0026】
回収ローラー43は,クリーニングローラー42に接し,中間転写ベルト3には接しないように配置されている。回収ローラー43は,金属ローラーであり,クリーニングローラー42の回転により従動回転するものである(矢印Z2)。回収ローラー43の直径は,15mm程度である。なお回収ローラー43は,クリーニングローラー42の回転に対してカウンター回転するものであってもよい。回収ローラー43には,スクレーパー47とクリーニング電源48とが設けられている。スクレーパー47は,固定して設けら
れており,先端が回収ローラー43に接触している。クリーニング電源48は,回収ローラー43に後述するバイアスを印加するものである。クリーニングローラー42および回収ローラー43の軸位置はいずれも,画像形成装置1のボディに対して固定されている。
【0027】
バックアップローラー44は,中間転写ベルト3の移動により従動回転するローラーである(矢印Z3)。バックアップローラー44は,回収ローラー43と同じく金属ローラーである。バックアップローラー44の直径は,11mm程度である。ただしバックアップローラー44は,回収ローラー43に電源が繋がれているのと異なり,直に接地されている。あるいは逆に,回収ローラー43を接地してバックアップローラー44にクリーニング電源48を繋いでもよい。要は,回収ローラー43とバックアップローラー44との間に電圧が掛かればよい。なおバックアップローラー44を,金属ローラーとする代わりに,クリーニングローラー42と同様の材質の発泡ローラーとしてもよい。
【0028】
さらに,バックアップローラー44には,押圧バネ49が設けられている。押圧バネ49は,図4に示すように,バックアップローラー44の幅方向両端の軸部50を押圧するものである。押圧バネ49の他端は,画像形成装置1のボディの適当な部位53に固定されている。押圧バネ49は,自由長より圧縮された状態で組み付けられている。これにより,バックアップローラー44が,クリーニングローラー42の方へ向かって,押圧バネ49の弾性に基づく押圧力で押し付けられるようになっている。押圧バネ49の長さは,動作時には,クリーニングローラー42等の振れ精度の低さに起因してわずかに変動することになる。しかし押圧バネ49の押圧力の大きさは,この程度の長さの変動によってはほとんど変化せず,一定と見なせる。
【0029】
この押圧力の大きさは,バックアップローラー44の幅方向寸法当たりの線圧として,5〜12.5N(ニュートン)/m(メートル)の範囲内であればよい。これにより,クリーニングローラー42に対する中間転写ベルト3およびバックアップローラー44の食い込み量が0.1〜0.3mm程度の範囲内になるようにするのである。例えばバックアップローラー44の幅方向寸法は300mmであるとして,2つの押圧バネ49の押圧力の合計で3Nであればよい。この押圧力は,比較的軽い部類にはいる。つまりバックアップローラー44は,クリーニングローラー42に対して軽く圧接されているだけなのである。
【0030】
上記のように構成されたベルトクリーナー4では,動作時には,中間転写ベルト3の外面上の転写残トナー54が,まずクリーニングローラー42により掻き取られる。ここで掻き取られるのは,転写残トナー54のうち主として,クリーニング電源48による印加バイアスと逆極性に帯電しているものである。掻き取られた転写残トナー54は,クリーニングローラー42の表面上に載って,クリーニングローラー42の回転とともに移動する。そして,さらにクリーニングローラー42の表面から回収ローラー43の表面に移る。そしてスクレーパー47により,回収ローラー43の表面から機械的に剥ぎ取られる。これがベルトクリーナー4による中間転写ベルト3のクリーニングの基本原理である。
【0031】
前述のようにベルトクリーナー4では,クリーニングローラー42,回収ローラー43,およびバックアップローラー44の組み合わせが2組設けられている。そして,それぞれの回収ローラー43には,別々にクリーニング電源48が設けられている。そこで,上流側と下流側とでクリーニング電源48による印加バイアスを逆向きにするのである。これにより,正帯電,負帯電のいずれの転写残トナー54をも,中間転写ベルト3上から除去できる。
【0032】
特に,上流側のクリーニング電源48のバイアス極性をトナーの本来の帯電極性と逆向きとし,下流側のバイアス極性をトナーの本来の帯電極性と同じ向きとするとよい。例えば,トナーの本来の帯電極性が負であるとすれば,上流側で正バイアスを印加し,下流側で負バイアスを印加するのである。こうすると,まず上流側のクリーニングローラー42により,転写残トナー54のうち大部分を占める正規帯電トナーが除去される。次いで,中間転写ベルト3上に残った逆帯電トナーが,下流側のクリーニングローラー42により除去される。こうして,転写残トナー54の除去が効率よく行われる。
【0033】
本形態のベルトクリーナー4では前述のように,バックアップローラー44が押圧バネ49の弾性力により,一定の押圧力でクリーニングローラー42へ押圧されている。よって,動作中でも,クリーニングローラー42やバックアップローラー44の振れ精度に関わらず,クリーニングローラー42とバックアップローラー44との間の食い込み量が一定に維持される。このため,前述のようにクリーニングローラー42に対する中間転写ベルト3およびバックアップローラー44の食い込み量が小さめに設定されていても,動作時にクリーニングローラー42と中間転写ベルト3との間に接触不良が生じることがない。このため,クリーニングムラが生じることがなく,良好にクリーニングが行われる。また,クリーニングローラー42の食い込み量を過度に大きく設定しておく必要はない。
【0034】
次に,本形態の変形例を説明する。図5に,第1の変形例に係るベルトクリーナー4の要部を示す。図5では図3と異なり,ハウジング41も描かれている。図5の変形例におけるハウジング41は,支点55を中心に回転可能に設けられている。支点55の位置は,画像形成装置1のボディに対して固定されている。そして図5におけるハウジング41には,押圧バネ56が設けられている。押圧バネ56は,一端が画像形成装置1のボディに固定されており,もう一端でハウジング41を押圧している。押圧の向きは,ハウジング41を中間転写ベルト3およびバックアップローラー44に近づける向きである。
【0035】
また,図5の変形例では,図3の例と異なり,バックアップローラー44を押圧する押圧バネ49が存在しない。図5の変形例におけるバックアップローラー44の軸位置は,画像形成装置1のボディに対して固定されている。一方,図5の変形例におけるクリーニングローラー42および回収ローラー43の軸位置はいずれも,画像形成装置1のボディに対してではなく,ハウジング41に対して固定されている。よって,押圧バネ56の弾力は,クリーニングローラー42をバックアップローラー44に対して図中右向きに押圧する力として作用している。
【0036】
つまり,図3の例では押圧バネ49によりバックアップローラー44をクリーニングローラー42に対して押圧していたのに対し,図5の変形例では押圧バネ56により逆にクリーニングローラー42をバックアップローラー44に対して押圧しているのである。このような構成でも,図3の例の場合と同様の効果が得られる。また,図5中ではハウジング41中にクリーニングローラー42等が1組しか描かれていないが,実際には,図3の例の説明で述べたのと同様に,クリーニングローラー42等の組は2組存在する。
【0037】
なお,図5ではハウジング41において,支点55よりも押圧バネ56の方が中間転写ベルト3の移動方向Xについて上流側に位置している。しかしこのことは必須ではなく,逆でもよい。また,ハウジング41の移動自体についても,支点を軸とする回転移動であることは必須ではない。直線移動する構成であってもよい。さらに,押圧バネ56がハウジング41を介してクリーニングローラー42等を押圧する構成であることも必須ではない。ハウジング41を介さずに直接クリーニングローラー42等の軸を押圧する構成であってもよい。さらに図5の例でも,バックアップローラー44にクリーニング電源48を繋ぎ回収ローラー43は接地される構成としてもよい。
【0038】
次に第2の変形例を説明する。図6に示す第2の変形例は,図3の例を基本として,バックアップローラー44の位置を少しずらしたものである。すなわち,図3の例ではバックアップローラー44が,中間転写ベルト3を挟んでクリーニングローラー42の真裏に位置している。これに対し図6の変形例ではバックアップローラー44が,図3中における位置よりも中間転写ベルト3の移動方向Xについて下流側にずれた位置に配置されている。このことにより中間転写ベルト3は,バックアップローラー44とクリーニングローラー42との対面位置では,クリーニングローラー42に少し巻き付く状態となっている。このことにより,押圧バネ49による押圧力が前述のように軽くても,中間転写ベルト3のクリーニングローラー42への接触追随性が高く,クリーニングローラー42による中間転写ベルト3のクリーニングが確実に行われる。
【0039】
なお,バックアップローラー44の位置のずれ量Fは,ごくわずかで十分である。クリーニングローラー42等のサイズが前述の通りであれば,2mm程度のずれ量Fがあれば十分効果が得られる。許容される最大のずれ量Fは,バックアップローラー44およびクリーニングローラー42の半径と中間転写ベルト3の厚さとの3者を合計した値である。ずれ量Fのより好ましい範囲は,クリーニングローラー42の半径とバックアップローラー44の半径とのうち小さい方に対して,3分の1倍から1倍までの範囲内である。さらに,ずれの向きについては,上流側と下流側とのいずれでもよい。図6に示したのは下流側にずらした例である。なお,図5に示した第1の変形例と図6の第2の変形例とを組み合わせてもよい。
【0040】
続いて,本発明の効果を確認するために本発明者が行った試験とその結果を説明する。この実験では,コニカミノルタ製のbizhabPro6500Pを試験機として用いた。ただし,その中間転写ベルトのクリーニングブレードを取り除き,代わりに本形態のベルトクリーナー4を搭載して試験に供した。試験機に搭載したベルトクリーナー4は,図3に示した,バックアップローラー44が押圧バネ49で押圧されているタイプのものであり,組数は2組である。
【0041】
試験に供したクリーニングローラー42の寸法等は,以下の通りである。
芯金45の直径 :10mm
ポリウレタンフォーム層46の外径 :18mm
ポリウレタンフォーム層46のセル数:50個/25.4mm
ポリウレタンフォーム層46の硬さ :30%押し込み時の荷重が0.196N/cm
ポリウレタンフォーム層46の密度 :0.1g/cm3
ポリウレタンフォーム層46の体積抵抗率:104Ωcm
【0042】
バックアップローラー44としては,直径11mmの金属ローラーを使用した。かかるバックアップローラー44が中間転写ベルトに従動回転する構成とした。中間転写ベルト3は,80μm厚のポリイミド基材に200μm厚のNBRゴムの弾性層を積層したものである。上記の試験機により,次の2通りの試験を行った。
1.バックアップローラーの押圧力とメモリ発生ライフとの関係の試験
2.バックアップローラーの押圧力およびずれ量とクリーニング性能との関係の試験
【0043】
まず,「1.」の試験について説明する。この試験では,ブルー色(マゼンタトナー+シアントナー)の5cm×5cmのパッチ画像の印刷を連続して行う耐久試験を行った。そしてその5万枚ごとに,モノクロ1ドットのハーフトーン画像(濃度600Dpi)を1枚印刷した。そのハーフトーン画像にパッチ画像のパターンの残像が現れるかどうかを目視でチェックした。残像が視認されるに至ったときまでのパッチ画像の印刷枚数をメモリ発生ライフと定義した。
【0044】
なお,この試験では,ベルトクリーナー4におけるクリーニングローラー42等の本数は2本とした。図6で説明した「ずれ」は設けなかった。押圧バネ49の押圧力は,幅方向当たりの線圧にて,5〜25N/mの範囲内の5段階とした。回収ローラー43の印加バイアスについては,上流側がプラス,下流側がマイナスとし,バイアス電流値が40μAとなる設定とした。
【0045】
試験の結果は,図7のグラフに示す通りであった。図7のグラフでは,横軸をバックアップローラー44の押圧力とし,縦軸をメモリ発生ライフとしている。図7から,バックアップローラー44の押圧力が強いほど,メモリ発生ライフが短いことが分かる。これは,[0006]で述べたように,バックアップローラー44の押圧力が強いと,トナー中のワックス成分が中間転写ベルト3に付着する現象が起きやすいためであると考えられる。一方,押圧力が軽い場合にはメモリ発生ライフは良好である。ここでは,1000K枚(100万枚)以上のメモリ発生ライフがあれば合格として,押圧力の上限を12.5N/mとする。
【0046】
次に「2.」の試験について説明する。この試験では,ブルー色の全面ベタ画像を形成し,2次転写バイアスをオフにして,ベルトクリーナー4でのクリーニング能力をチェックした。この試験の測定条件は,バックアップローラー44の押圧力については,幅方向当たりの線圧にて,5〜20N/mの範囲内の4段階とし,バックアップローラー44のずれ量に関しては,0,下流側に2mm,下流側に4mm,の3段階とした。つまり,都合12種類の測定条件で試験を行った。この2mm,4mm,というのはいずれも,クリーニングローラー42とバックアップローラー44とのうち小さい方の半径である5.5mmに対して,3分の1倍から1倍までの範囲内に入っている。
【0047】
この試験を実施するに当たっては,ベルトクリーナー4におけるクリーニングローラー42等の本数を1本とした。回収ローラー43の印加バイアスについては,極性はプラスで電流値が40μAとなる設定とした。なお,使用したトナーは負帯電性のものである。このような設定で,ベルトクリーナー4を通過した後の位置における中間転写ベルト3上のクリーニング残トナーをブッカーテープで剥ぎ取り白色の台紙に貼り付けて評価した。クリーニング残トナーのブッカーテープによる採取は,全面ベタ画像の領域の範囲内で,ベルト進行方向の先端,中央,後端の3箇所でそれぞれベルト幅方向の奥側端部,中央,手前側端部の3箇所,都合9箇所行った。これら9箇所のブッカーテープと,新品のブッカーテープとを1枚の台紙上に貼り付けて,色を計測した。
【0048】
計測には,コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−512mk3を使用した。この分光測色計により,新品のブッカーテープを基準として,基準以外の9枚のブッカーテープの基準との色差ΔEを計測した。9箇所の色差ΔEがいずれも0.7以下であればその測定条件については合格と判定し,1箇所でもΔEが0.7を超えていたらその測定条件については不合格と判定した。なお,ΔEの0.7とは,目視でぎりぎり判別できる程度の微小な色差である。
【0049】
計測結果は,図8に示す通りであった。すなわち,12種類の測定条件のうち,押圧力が最低でずれ量が0である場合の1条件のみが不合格で,それ以外の11条件はすべて合格であった。
【0050】
当該不合格となった条件で,中間転写ベルト3上のクリーニング残トナーの分布をより詳細に観察したところ,クリーニングローラー42の周長と一致するピッチでクリーニング不良が起こっていることが分かった。これよりこのクリーニング不良は,クリーニングローラー42の振れ([0006]参照)に起因して生じたものと考えられる。つまり,バックアップローラー44のクリーニングローラー42への押圧力が弱いために,クリーニングローラー42の振れによって,クリーニングローラー42と中間転写ベルト3との接触が不良になったものと解される。ただし,このように押圧力が弱い条件であっても,バックアップローラー44のずれ量が2mm以上あれば問題は生じないことが分かる。バックアップローラー44のずれの向きについては,この試験では下流側としたが,上流側でも同じ結果となる。
【0051】
なお,図8中の押圧力15N/m,20N/mの計6条件は,図8中では合格の判定になっているが,前述の図7の結果からメモリ発生ライフの観点で不合格となる条件である。これより,以上を総合すると,押圧力の好ましい範囲は,バックアップローラー44の配置にずれがない場合には,7.5〜12.5N/m,より好ましくは10〜12.5N/m,となる。バックアップローラー44が2mm以上のずれ量をもって配置されている場合には,2.5〜12.5N/m,より好ましくは5〜12.5N/m,となる。
【0052】
以上詳細に説明したように本実施の形態の画像形成装置1におけるベルトクリーナー4では,クリーニングローラー42とバックアップローラー44とが互いに軽く押圧されつつ中間転写ベルト3を挟み付ける状態となっている。このため,クリーニングローラー42の振れ精度に関わらず,クリーニングローラー42と中間転写ベルト3との接触状態が安定しており,良好なクリーニング性が発揮される。また,押圧力自体は軽いもので十分なので,メモリ発生ライフの観点からも良好である。また,バックアップローラー44をクリーニングローラー42に対して上流側または下流側にずらして配置することにより,より良好な結果が得られるものである。
【0053】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,図1中で4つの画像形成部2Y,2M,2C,2Kが縦並びに配置される構成となっているが,このことは必須ではない。横並び配置であってもよい。また,図3に示した,バックアップローラー44が押圧バネ49で押圧される構成においても,図5の構成におけるハウジング41の移動のように,バックアップローラー44が直線移動でなく回転移動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
2Y等 画像形成部
3 中間転写ベルト
4 ベルトクリーナー
5 2次転写装置
41 ハウジング
42 クリーニングローラー
43 回収ローラー
44 バックアップローラー
48 クリーニング電源
49 押圧バネ
56 押圧バネ
F ずれ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像形成部を有し,前記トナー像形成部で形成されたトナー像を媒体上に転写することで画像を形成する画像形成装置において,
前記トナー像形成部からトナー像の転写を受けてそのトナー像を媒体に再転写する,弾性層を有する構造の中間転写ベルトと,
前記中間転写ベルトにおける,媒体への再転写位置より下流であって前記トナー像形成部からの被転写位置より上流の位置に設けられたベルトクリーニング部とを有し,
前記ベルトクリーニング部には,
前記中間転写ベルトのトナー像担持面に接触し,前記中間転写ベルトの移動に対してカウンター回転する,発泡材で構成されたクリーニングローラーと,
前記中間転写ベルトの非トナー像担持面に接触するバックアップ部材と,
前記クリーニングローラーと前記バックアップ部材との少なくとも一方を他方に向けて押圧する弾力部材とが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記弾力部材による押圧力の大きさが,前記クリーニングローラーもしくは前記バックアップ部材の幅方向の寸法当たりで,12.5N(ニュートン)/m(メートル)を超えないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記バックアップ部材の位置の,前記中間転写ベルトを挟んで前記クリーニングローラーの真裏の位置からのずれ量が,前記クリーニングローラーの半径と前記バックアップ部材の半径とのうち小さい方の1/3に達しない範囲内であり,
前記弾力部材による押圧力の大きさが,前記クリーニングローラーもしくは前記バックアップ部材の幅方向の寸法当たりで,7.5N/m以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記バックアップ部材の位置の,前記中間転写ベルトを挟んで前記クリーニングローラーの真裏の位置からのずれ量が,前記クリーニングローラーの半径と前記バックアップ部材の半径とのうち小さい方の1/3以上であり,かつ,前記クリーニングローラーの半径と前記バックアップ部材の半径と前記中間転写ベルトの厚さとの合計を超えない範囲内であり, 前記弾力部材による押圧力の大きさが,前記クリーニングローラーもしくは前記バックアップ部材の幅方向の寸法当たりで,2.5N/m以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記クリーニングローラーの位置が装置本体に対して固定されており,
前記弾力部材は,前記バックアップ部材を前記クリーニングローラーへ向けて押圧するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記バックアップ部材の位置が装置本体に対して固定されており,
前記弾力部材は,前記クリーニングローラーを前記バックアップ部材へ向けて押圧するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において,
前記クリーニングローラーを収容するクリーナーハウジングを有し,
前記バックアップ部材の位置が装置本体に対して固定されており,
前記クリーニングローラーの位置が前記クリーナーハウジングに対して固定されており, 前記弾力部材は,前記クリーナーハウジングを,前記バックアップ部材が前記クリーニングローラーへ向けて押圧されるように押圧するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記クリーニングローラーおよび前記バックアップ部材の組を2組以上有し,
各前記クリーニングローラーにそれぞれ回収部材が設けられており,
各組における前記回収部材と前記バックアップ部材との間にバイアスを印加するバイアス部が設けられており,
前記バイアス部により印加されるバイアスの向きが,組により異なることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113859(P2013−113859A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256837(P2011−256837)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】