説明

画像形成装置

【課題】他の画像形成装置との作像機構の共通化に適した新規の画像形成装置を提供する。
【解決手段】用紙上に画像を形成する画像形成装置は、収納可能な最大サイズの長方形の用紙を収納する向きが当該用紙の短辺が用紙取出し方向に沿う向きとされた用紙スタッカーと、用紙スタッカーに重なるように配置され、用紙スタッカーから取り出された用紙に用紙取出し方向に直交する方向に沿う主走査によって画像データに応じた像を形成する作像機構と、読取り可能な最大主走査寸法が最大サイズの用紙の短辺寸法以上かつ長辺寸法未満であって、読取りの副走査方向が用紙取出し方向に沿う方向になるように、作像機構の上方に配置されたイメージスキャナーと、イメージスキャナーの出力に基づいて画像データを生成する電気回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上に画像を形成する画像形成装置に関する。画像形成装置には、複写機、MFP(Multi-functional Peripheral)およびファクシミリ装置が含まれる。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やコピー機能を有するMFPでは、所定サイズの原稿画像の等倍コピーを必要最小限の構成で実現するように、読取り可能な原稿の最大サイズと機内に収納可能な用紙の最大サイズとが統一されている。例えば、A3サイズの原稿の読取りが可能なイメージスキャナーを備える複写機は、A3サイズの用紙の収納が可能な用紙スタッカーを備える。また、読取り可能な原稿の最大サイズがA4サイズであれば、機内に収納可能な用紙の最大サイズもA4サイズである。ただし、多くの画像形成装置は、機内に収納できない大きい用紙の使用を可能にする手差し給紙口を備えている。
【0003】
イメージスキャナーと用紙スタッカーとの配置関係に注目すると、画像形成装置の構成は二つに大別される。一つは、イメージスキャナーによる原稿画像の読取りの副走査方向と用紙スタッカーからの用紙取出し方向(給紙開始方向)とが交差する構成であり、他の一つは、読取りの副走査方向と給紙開始方向とが実質的に平行になる構成である。前者の構成(二つの方向が交差)は、特許文献1、2、3などに記載されている。後者の構成(二つの方向が平行)は、例えば特許文献4、5に記載されている。特許文献4に記載されたMFPにおいて、読取りの副走査方向および給紙開始方向は当該MFPの左右方向である。特許文献5に記載された画像形成装置において、読取りの副走査方向および給紙開始方向は当該画像形成装置の前後方向である。
【0004】
一方、画像形成装置の開発手法として、複数の機種の構成要素を組み合わせて新たな画像形成装置を構成する手法が知られている。例えば上記特許文献1には、既存の複写機に備わるフラットヘッドスキャナーを既存のプリンターの上に支柱を介して取り付けてMFPを構成することが記載されている。この手法によれば、開発時間を短縮することができ、機種間で部品を共通化することができるので、新たな画像形成装置を安価に提供することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−208482号公報
【特許文献2】特開2005−115084号公報
【特許文献3】特開平5−127443号公報
【特許文献4】特開2005−94223号公報
【特許文献5】特開2003−146522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の画像形成装置の構成を開発のベースとして、画像形成能力を縮減した画像形成装置を新たに提供することが考えられる。例えば、A3サイズの画像を形成する能力をA4サイズの画像を形成する能力に縮減する。この縮減によって、用紙スタッカーの収納すべき用紙の最大サイズがA3サイズからその半分のA4サイズになるので、用紙収納スペースの平面積が約半分になる。また、用紙の最大サイズと同じとされるイメージスキャナーの最大読取りサイズもA3サイズからA4サイズになる。つまり、用紙スタッカーおよびイメージスキャナーの小型軽量化を図ることができる。
【0007】
A3サイズの画像形成能力をもつ既存の画像形成装置のプリンターエンジン(作像機構)を利用すると、「ビジネス文書の標準的なサイズであるA4サイズの画像形成が可能であれば良い」というユーザーおよび「安価でかつA3サイズの画像の形成が可能であってほしい」というユーザーの両方のユーザーの要望に応えることができる。A3サイズ用の手差し給紙機構をオプションのユニットとして準備し、手差し給紙機構の装着によってA3サイズの画像形成が可能になるようにすればよい。ただし、A3サイズの画像を形成するには、A3サイズ用の給紙機構だけでなく、文書データやスキャン画像データをA3サイズのラスタ画像データに変換したり、A3サイズの用紙の搬送を制御したりする能力をもつ電気回路が必要である。既存の画像形成装置の電気回路をそのまま適用すると、A3サイズの画像形成が不要なユーザーにとって余分な機能が備わることになるので、電気回路についてもA3サイズの画像形成用の付加電気回路をオプションとして準備するのがよい。付加電気回路の取付け位置については、既存の構成に対する変更箇所が少なくなるように選定するのがよい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、他の画像形成装置との作像機構の共通化に適した新規の構成をもつ画像形成装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する装置は、用紙上に画像を形成する画像形成装置であって、収納可能な最大サイズの長方形の用紙を収納する向きが当該用紙の短辺が用紙取出し方向に沿う向きとされた用紙スタッカーと、前記用紙スタッカーに重なるように配置され、前記用紙スタッカーから取り出された用紙に前記用紙取出し方向に直交する方向に沿う主走査によって画像データに応じた像を形成する作像機構と、読取り可能な最大主走査寸法が前記最大サイズの用紙の短辺寸法以上かつ長辺寸法未満であって、読取りの副走査方向が前記用紙取出し方向に沿う方向になるように、前記作像機構の上方に配置されたイメージスキャナーと、前記イメージスキャナーの出力に基づいて前記画像データを生成する電気回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他の画像形成装置との作像機構の共通化に適した新規の構成をもつ画像形成装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の外観の構成を示す斜視図である。
【図2】画像形成装置の内部構造の概要を示す分解斜視図である。
【図3】画像形成装置に備わるイメージスキャナーの上面の構成を示す平面図である。
【図4】画像形成装置に備わる用紙スタッカーの構成を示す平面図である。
【図5】手差し給紙ユニットを取り付けた状態の画像形成装置の模式図である。
【図6】画像形成装置の制御システムの構成を示すブロック図である。
【図7】コントローラーユニットにおける機能拡張回路の取付け構造を示す図である。
【図8】機能拡張回路の取付け構造の他の例を示す図である。
【図9】用紙サイズに応じた画像データ処理の概要を示す図である。
【図10】手差し給紙ユニットが使用される様子を示す図である。
【図11】機能拡張回路の構成を示すブロック図である。
【図12】手差し給紙ユニットを使用する画像形成動作のシーケンスを示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る画像形成装置と同じプリンターエンジンを備える画像形成装置の構造の概要を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る画像形成装置はイメージスキャナーを備える。この種の画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ装置、および、少なくともコピーかファクシミリ送信かを含む複数の機能を有する複合機がある。図1に例示される画像形成装置1は、多機能の複合機、すなわちMFP(Multi-functional Peripheral)である。
【0013】
図1のように画像形成装置1は、用紙スタッカー15、プリンターエンジン14、およびイメージスキャナー13が順に積み重なるように配置されたタワー型である。2段のスタックトレイ15A,15Bを有する引出し式の用紙スタッカー15に隣接させて電源部17が配置され、用紙スタッカー15と電源部17とがプリンターエンジン14の下に位置する。プリンターエンジン14の平面サイズは、用紙スタッカー15および電源部17のそれぞれの平面サイズを合わせたサイズにほぼ等しい。プリンターエンジン14とイメージスキャナー13とがイメージスキャナー13の右端部を支持する支柱部16を介して連結され、プリンターエンジン14とイメージスキャナー13との間に支柱部16の排紙口161から排出される印刷後の用紙を収容する胴内排紙空間が設けられている。支柱部16は胴内排紙空間にユーザーが手を入れて用紙を取り出すことができる高さを有し、胴内排紙空間は少なくとも画像形成装置1の前方および左方に開放される。このように胴内排紙空間を設けることにより、プリンターエンジン14の側方に張り出すように排紙トレイを設けるのと比べて、画像形成装置の設置に必要な床面積を小さくすることができる。
【0014】
イメージスキャナー13には、ADF(Auto Document Feeder)12がその背面側の端縁を軸として回転可能に取り付けられている。ADF12は、図1のようにイメージスキャナー13に重なる閉状態において、セットされた原稿シートOSをイメージスキャナー13の読み取り位置へ搬送する。その搬送方向は画像形成装置1の左右方向に沿う方向である。
【0015】
図2は画像形成装置1の内部構造の概要を示している。
【0016】
用紙スタッカー15のスタックトレイ15A,15Bに収納可能な用紙の最大サイズはA4サイズ(210mm×297mm)である。ただし、ここでいう最大サイズは日本国で一般的なA列の用紙の使用を想定した便宜上の表記におけるサイズであり、実際にはスタックトレイ15A,15BはA4サイズよりも辺の寸法が所定範囲内で大きいサイズ、例えば短辺寸法が5.9mm大きいレターサイズ(215.9mm×279.4mm)を収納することができる。図2ではスタックトレイ15AにA4サイズの用紙P1の束の収納されている様子が描かれている。
【0017】
最大サイズの用紙を収納する向きは用紙スタッカー15の構造によって一義的に決まっている。本例での最大サイズであるA4サイズの用紙P1は、その短辺が画像形成装置1の左右方向に沿い、長辺が前後方向に沿う向きで収納される。スタックトレイ15A,15Bの左右方向の最大収納寸法はA4サイズの長辺寸法(297mm)よりも小さいので、スタックトレイ15A,15BはA4サイズの用紙P1をその長辺が左右方向に沿う向きで収納することはできない。用紙P1の収納の向きは、言い換えれば、短辺がスタックトレイ15A,15Bからの用紙取出し方向に沿う向きである。収納された用紙P1はピックアップローラー158,159を含む給紙機構によってスタックトレイ15A,15Bから右方へ引き出すように取り出され、その後に上方のプリンターエンジン14へ向けて搬送される。用紙の搬送方向に用紙の短辺が沿う向きは、いわゆる横向き(Y)である。以下、横向きのA4サイズをA4Yサイズという。
【0018】
プリンターエンジン14は、A4Yサイズに適合する長さの主走査が可能な電子写真式の作像機構である。像担持体としての感光体ドラム、帯電チャージャー、現像器、および露光手段としてのレーザースキャナーなどがプリンターエンジン14に含まれる。プリンターエンジン14は、図13に示される画像形成装置2に搭載されるプリンターエンジン14bと共通の部品で構成され、プリンターエンジン14bと同じ作像能力を有する。図13の画像形成装置2はA3サイズの用紙P2の収納が可能な用紙スタッカー15bおよびA3サイズの原稿シートOS2の読取りが可能なイメージスキャナー13bを備えており、付加給紙機構を使用せずにA3サイズ(297mm×420mm)の画像を形成することができる。このような画像形成装置2のプリンターエンジン14bと構成が共通であるプリンターエンジン14を備える本実施形態の画像形成装置1は、手差し給紙口40Aを用いて給紙をすることにより、最大でA3サイズの画像を形成することができる。
【0019】
イメージスキャナー13の最大読取りサイズは収納可能な用紙の最大サイズと同じくA4サイズである。イメージスキャナー13の上面には、図3に示されるように、原稿台ガラス131、ユーザが原稿シートOSを位置決めするためのスケール132、およびADF12による自動搬送において原稿画像を読み取るための窓133が配置されている。原稿台ガラス131は画像形成装置1の前後方向に短く左右方向に長い長方形である。A4サイズの原稿シートOSは、ADF12を使用せずにその全体を読み取る場合において、長辺がイメージスキャナー13の左右方向に沿うように原稿台ガラス131上に配置される。ラインセンサーの小型化の上で主走査ラインの短いのが有利であるので、イメージスキャナー13の主走査方向M1は原稿台ガラス131の短尺方向とされ、副走査方向M2は原稿台ガラス131の長尺方向とされている。したがって、原稿シートOSの配置の向きは、短辺が主走査方向M1に沿ういわゆる縦向き(T)である。以下、縦向きのA4サイズをA4Tサイズといい、縦向きのA3サイズをA3Tサイズという。
【0020】
固定式のラインセンサーによる主走査のための窓133は、原稿台ガラス131の副走査方向の片側に配置される。このため、イメージスキャナー13の副走査方向の寸法はA4サイズの長辺寸法よりも長い。このようなイメージスキャナー13を副走査方向が画像形成装置1の前後方向となるように配置すると、前後方向の寸法が最小限に抑えられたプリンターエンジン14および用紙スタッカー15に対して、前方または後方にイメージスキャナー13が張り出すことになる。画像形成装置1を上から見た平面サイズの小型化のため、画像形成装置1ではイメージスキャナー13がその副走査方向が左右方向となるように配置されている。
【0021】
図4では用紙スタッカー15のスタックトレイ15Aが前方に引き出された様子が描かれている。スタックトレイ15Aは、用紙スタッカー15の左右の幅と同じ長さをもつフロントカバー152および最大収納サイズがA4Yサイズである収納ベース153を有する。フロントカバー152には把手151が取り付けられ、収納ベース153には用紙P1を位置決めするストッパー155,156,157が取り付けられている。収納ベース153の幅はフロントカバー152の左右の長さよりも短く、収納ベース153はフロントカバー152に対して図の左側に若干偏っている。これは、用紙スタッカー15の内部の右側に図示しない給紙機構が配置されるからである。
【0022】
A4サイズの用紙P1は、上述のとおり、その長辺がプリンターエンジン14による画像形成(作像)の主走査方向M3に沿い、短辺が画像形成の副走査方向M4に沿うように配置される。最大収納サイズがA4Yサイズであるので、副走査方向M4の長さがA4サイズの短辺寸法(210mm)にストッパー157の可動マージンを加えた値を超える用紙は、用紙スタッカー15に収納することができない。最大収納サイズより大きいサイズの用紙に印刷する場合は手差し給紙ユニット40を使用する必要がある。
【0023】
用紙スタッカー15に隣接する電源部17には電源基板170が配置される。これによって、最大収納サイズのA3Tサイズの画像形成装置2(図13参照)と同程度の平面サイズのハウジング内における最大収納サイズをA4Yサイズにしたことで生じた空間が有効利用される。重い部品を含む電源基板170を画像形成装置1の下部に配置することで、重量バランスが向上する。なお、図13の画像形成装置2では、電源基板はプリンターエンジン14bのハウジング内の下部に水平配置される。
【0024】
図5は手差し給紙ユニット40を取り付けた状態の画像形成装置1を模式的に示している。画像形成装置1は、操作パネル11上の操作または図示しないネットワークを介して接続される外部機器からのアクセスに応じて動作する。例えばコピージョブが与えられると、ADF12が原稿シートをイメージスキャナー13の読み取り位置へ搬送し、イメージスキャナー13が原稿画像を光学的に読み取る。イメージスキャナー13から出力される多値のスキャン画像データを図示しない電気回路が露光用のラスタ画像データに変換し、プリンターエンジン14がラスタ画像データに対応した画像を用紙に印刷する。その際、用紙スタッカー15または機構取付け部としての手差し給紙口40Aに取り付けられた手差し給紙ユニット40が所定サイズの用紙をプリンターエンジン14に供給する。プリンターエンジン14は画像を印刷した用紙を排紙トレイ65(プリンターエンジン14の上面)に排出する。
【0025】
手差し給紙ユニット40は、プリンターエンジン14を収容するメインハウジング10の外側に着脱可能に取り付けられるオプション装備であり、用紙スタッカー15のスタックトレイ15A,15に収納できない大きいサイズの用紙の使用を可能にする。すなわち、手差し給紙ユニット40は、スタックトレイ15A,15Bに収納されている用紙を使用する標準仕様モード(第1モード)の画像形成ではなく、標準仕様モードの用紙と比べて大きい用紙を使用するオプションモード(第2モード)の画像形成を実現するための給紙機構である。手差し給紙ユニット40は、メインハウジング10に片持ち支持される基部41と、手差し方向に長い用紙を安定に載置するために基部41に組み付けられた可動部42とで構成される。可動部42は基部41の外端縁に沿う軸を中心に回動可能であり、基部41と重なり合う収納位置または基部41から外側に張り出す使用位置に配置される。基部41には、可動部42が収納位置に在る閉状態であるかそうではない開状態であるかを検出するためのセンサ45が取り付けられている。また、可動部42には、用紙の載置の有無を検出するためのセンサ46が取り付けられている。
【0026】
画像形成装置1では、手差し給紙ユニット40が取り付けられるときに、手差し給紙ユニット40と対をなすオプション装備である機能拡張回路50が回路取付け部50Aに取り付けられる。回路取付け部50Aは例えばメインハウジング10の背面に取り付けられるコントローラーユニット100(図1参照)の内部に設けられる。機能拡張回路50は、手差し給紙ユニット40を必要とする大きいサイズ(具体的にはA3サイズ)の用紙に印刷するための画像データ処理を受け持ち、かつA3サイズの用紙の搬送に必要な制御データをプリンターエンジン14の制御に特化されたエンジンコントローラーに提供する。機能拡張回路50を供えていない状態の画像形成装置1は、手差し給紙ユニット40が取り付けられていたとしても、A3サイズの用紙への印刷を行なうことができない。
【0027】
図6は画像形成装置1の制御システムの構成を示している。画像形成装置1の制御を統括するメインコントローラー20は、操作パネル11によるユーザーの指示および通信インタフェース18を介して通信する外部機器からの動作要求に応じて所定の制御を行なう。メインコントローラー20は、制御プログラムや各種アプリケーションを実行するCPU(central processing unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)およびプログラム実行のワークエリアとされるRAM(Random Access Memory)を有している。
【0028】
画像形成装置1に与えられる各種のジョブのうちのプリンターエンジン14を使用する印刷ジョブにおいて、メインコントローラー20は作像動作の制御を受け持つエンジンコントローラー30にプリンターエンジン14の制御を指示する。印刷ジョブとしては、印刷すべき内容がページ記述言語(Page Description Language :PDL)で記述されたネットワークプリンティングジョブ、イメージスキャナー13を使用するコピージョブ、および内蔵ストレージ29であるハードディスクドライブに保存されているドキュメント(文書データ)を印刷するジョブなどがある。
【0029】
メインコントローラー20は、A3サイズの画像を印刷するオプションモードにおいて、A3サイズの印刷用のデータの生成を機能拡張回路50に依頼する。メインコントローラー30にはA3サイズに対応する印刷用のデータを生成するラスタライズ能力を有していないからである。また、メインコントローラー20は、オプションモードにおいて、A3サイズの用紙の搬送タイミングを示す制御データを機能拡張回路50から取得してエンジンコントローラー30に転送する。
【0030】
図7はコントローラーユニット100における機能拡張回路50の取付け構造を示している。コントローラーユニット100は、上述のメインコントローラー20を構成するCPUが実装されたメイン制御基板101と、エンジンコントローラー30を構成する部品が実装されたエンジン制御基板102とを有する。回路取付け部50Aはメイン制御基板101に設けられており、機能拡張回路50はメイン制御基板101に取り付けられる。例えば、機能拡張回路50としてPSoC(サイプレス・セミコンダクター・コーポレーションの商標;Programmable System-on-Chip)を用いる場合、回路取付け部50AはPSoCに対応するソケットであればよい。PSoCを用いれば、一つのチップを実装することで回路機能を拡張することができる。
【0031】
メイン制御基板101に直接に実装する構造に限らず、図8のように機能拡張回路50を含む拡張ユニット103をケーブル50Bによってメイン制御基板101に接続するようにしてもよい。この場合、回路取り付け部50Aは、ケーブル50Bの着脱を可能にするコネクタである。コネクタをメイン制御基板101の保護カバーの外面に実装したり、保護カバーにコネクタを露出させる穴を設けたりして、保護カバーを取り外さずにケーブル50Bをメイン制御基板101に接続できるようにすれば、機能拡張回路50の取り付け作業が容易になる。ケーブル50Bを用いる取り付けは機能拡張回路50の設置性に優れる。
【0032】
取付けの構造に関わらず、機能拡張回路50をメイン制御基板101に接続することにより、プリンターエンジンの部品を共通化した複数種の画像形成装置のラインナップを充実させるのが容易になる。仮に、画像形成装置間の共通部分であるエンジン制御基板102に機能拡張回路50を接続する場合には、まず、エンジンコントローラー30を機能拡張オプションに対応するように変更した上で、複数種の画像形成装置のそれぞれのメインコントローラー20もこのエンジンコントローラー30の変更に対応するように変更しなければならない。エンジンコントローラー30およびメインコントローラー20の両方に対する変更が必要になり、機能拡張のための変更の規模が大きくなる。つまり、機能拡張回路50をメイン制御基板101に接続することにより、複数種の画像形成装置における機能拡張のための変更規模を最小限にすることができる。
【0033】
図9はメインコントローラー20および機能拡張回路50が行なうデータ処理を示している。図9(A)のように、標準仕様モードでは例えばA4Tサイズのスキャン画像データD11をメインコントローラー20がA4Yサイズの印刷用のデータD21に変換する。すなわち、ラスタ画像データを生成する過程で、原稿画像の読取り時の主走査方向M1の画素列がプリンターエンジン14における副走査方向M4の画素列となるように向きを変更する画像処理がメインコントローラー20によって行なわれる。
【0034】
図9(B)、(C)のようなA3Tサイズの画像データD22,D21bの生成は機能拡張回路50が行なう。図9(B)では、A3Tサイズの文書データD12がA3Tサイズの印刷用のデータD22に変換されている。図9(C)では、A4Tサイズのスキャン画像データD11が拡大されてA3Tサイズの印刷用のデータD21bが生成されている。
【0035】
図10は手差し給紙ユニット40の使用の様子が示されている。図10(A)では、可動部42が閉状態であり、基部41上にA4サイズの用紙P1が横向き(Y)に配置されている。用紙P1はガイド板415,416に案内されて横向きのままメインハウジング10の内部へ搬送される。図10(B)は可動部42が使用位置に配置された開状態を示している。図10(C)では、基部41と開状態の可動部42とに跨るようにA3サイズの用紙P2が縦向き(T)に配置されている。用紙P2はガイド板415,416に案内されて縦向きのままメインハウジング10の内部へ搬送される。
【0036】
図11のように、メイン制御基板101は、CPU301、RAM302、ROM303、および通信インタフェース304を有する。CPU301は、ROM303に格納されている制御プログラムをRAM302にロードして実行する。上述のとおりA4サイズまたはそれより小さいサイズの用紙に印刷する標準仕様モードにおいて、印刷用データをメインコントローラー20が生成する。その際、CPU301は、プリンター記述言語の命令を解釈して印刷内容を表す中間データを生成する言語解析部、中間データに基づいて多値のラスタ画像データを生成するラスタライズ部、および中間調を再現するスクリーンを適用して多値のラスタ画像データを露光制御用のラスタ画像データに変換するスクリーン処理部として動作する。
【0037】
ROM303には機能拡張回路50の個体識別のための識別データ510が格納されている。CPU301は通信インタフェース304を介する通信によって、機能拡張回路50が記憶している識別データ510を取得し、ROM303内の識別データ510と照合する。照合の結果が一致である場合に、CPU301は機能拡張回路50を正規の装備とみなし、オプションモードのジョブを有効とする。これにより、画像形成装置1と機能拡張回路50とが1対1で対応することになる。
【0038】
画像形成に関わる付加電気回路である機能拡張回路50は、画像形成に関わる常設の電気回路であるメインコントローラー20とは別の部品で構成される。すなわち、機能拡張回路50はメインコントローラー20との電気的接続を解除して画像形成装置1の外部に取り出すことができる。言い換えれば、画像形成装置1の基本構成要素群の組み立てを完了した後に、機能拡張回路50を画像形成装置1に組み付けることができる。
【0039】
機能拡張回路50は、CPU501、RAM502、ROM503、および通信インタフェース504を有する。オプションモードにおける印刷用データの生成に際して、CPU501は、言語解析部、ラスタライズ部、およびスクリーン処理部として動作する。RAM502はプログラム実行のワークエリアおよびラスタライズのための描画空間(VRAM)として用いられる。
【0040】
不揮発性メモリであるROM503には、個体識別のための識別データ510、およびオプションモードにおけるプリンターエンジン14の制御に必要な制御データ512が格納されている。制御データ512には、用紙検出や搬送の紙間設定参照されるA3用紙データ513、および電子写真プロセスと用紙搬送とを同期させるためのA3給紙タイミングデータ514が含まれる。識別データ510および制御データ512は、メインコントローラー20からの要求に従って、メインコントローラー20へ転送される。
【0041】
以上の構成の画像形成装置1における動作のシーケンスが図12に示される。
【0042】
操作パネル11または外部装置からのアクセスによって、メインコントローラー20にA3サイズの画像を形成する印刷ジョブが与えられ(S1)。メインコントローラー20は機能拡張回路50の装着を確認する通信を行い(S2)、機能拡張回路50から送られる識別データ510に基づいて機能拡張回路50を認証する(S3,S4)。認証に続いて、メインコントローラー20はエンジンコントローラー30に対してA3サイズの用紙P2の検出を指示する(S5)。エンジンコントローラー30は手差し給紙ユニット40のセンサ45,46の出力を取り込み(S6,S7)、A3サイズの用紙P2がセットされている旨をメインコントローラー20に通知する(S8)。A3サイズの用紙P2のセットを確認したメインコントローラー20は、機能拡張回路50に制御データ512の転送を要求し(S9)、転送されてきた制御データ512を必要に応じてエンジンコントローラー30に転送する(S10,S11)。次に、メインコントローラー20は、機能拡張回路50にA3サイズの文書データを転送し、A3サイズの印刷用データの生成を命令する(S12)。
【0043】
命令を受けた機能拡張回路50は、露光制御用のラスタ画像データを生成するデータ処理を実行する(S13)。そして、機能拡張回路50は、メインコントローラー20からのデータ出力命令に呼応してA3サイズの印刷用データをメインコントローラー20に引き渡す(S14,S17)。一方、メインコントローラー20は、機能拡張回路50へのデータ出力の命令と並行して、エンジンコントローラー30に用紙P2の給紙を命令する(S15)。エンジンコントローラー30は手差し給紙ユニット40に用紙P2の給紙を開始させ(S16)、メインコントローラー20から与えられるラスタ画像データを用紙P2に印刷する作像動作を行なう(S19)。印刷後の用紙P2が排紙トレイ65に排紙されて印刷動作が完了する(S20)。
【0044】
以上の実施形態によれば、A3サイズの用紙の収納が可能な比較的に大型の画像形成装置と画像形成装置1とでプリンターエンジンの共通化を図ることができるので、比較的に小型の画像形成装置1に特化したプリンターエンジンを組み込む場合と比べて、画像形成装置1の低価格化を実現することができる。メインコントローラー20については、例えばA4サイズの画像形成に特化した装置のコントローラーを適用することができるので、オプション装備を除いた標準仕様の画像形成装置1の低価格化を図ることができる。
【0045】
手差し給紙ユニット40および機能拡張回路50が着脱可能であるので、作像機構と電気回路との間で機能が整合するように、ユーザーによる適用可能な用紙サイズの選択に応じて、機構構成および電気回路構成を変更することができる。
【0046】
また、A4サイズの画像形成においてプリンターエンジン14内で用紙がその短辺に沿う方向に搬送されるので、長辺方向に沿う方向に搬送する構成の画像形成装置と比べて、同じ生産性を得るときに、感光体を駆動するモーターの回転を遅くしかつ定着器の温度を低くすることができ、消費エネルギーを低く抑えることができる。
【0047】
上述の実施形態において、画像形成装置1の構成は適宜変更することができる。例えば、手差し給紙ユニット40の可動部42は回動式に限らず、使用時に基部41から引き出すスライド式でもよい。用紙スタッカー15は少なくとも一つのサイズの用紙を自動給紙可能な構成であればよく、単段でも3段以上でもよい。機能拡張回路50は画像形成装置1の内部に組み付けるものであってもよいし、ハウジングの外面に設けたスロットに差し込んで装着するものでもよい。画像形成装置1はADF12を備えなくてもよい。プリンターエンジン14はカラー印刷が可能な機構であってもよいし、モノクロ印刷のみが可能な機構であってもよい。プリンターエンジン14が用紙スタッカー15の下に配置されてもよい。コントローラーユニット100をハウジングの背面、側面および内側を含む任意の位置に配置することができる。画像形成の方式は、主走査および副走査を伴う方式であれば、電子写真方式に限らず、インクジェット方式、熱転写方式、ドットインパクト方式でもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 画像形成装置
13 イメージスキャナー
14 プリンターエンジン(作像機構)
M1 イメージスキャナーの主走査方向
M2 イメージスキャナーの副走査方向
M3 作像機構の主走査方向
M4 作像機構の副走査方向
P1 A4サイズの用紙(収納可能な最大サイズの長方形の用紙)
P2 A3サイズの用紙(最大サイズの用紙より大きい用紙)
20 メインコントローラー(電気回路)
101 メイン制御基板(回路基板)
15 用紙スタッカー
40 手差し給紙ユニット(付加給紙機構)
40A 手差し給紙口(機構取付け部)
50 機能拡張回路(付加電気回路)
50A 回路取付け部
512 制御データ
503 ROM(不揮発性メモリ)
505 コネクタ
510 識別データ
10 メインハウジング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に画像を形成する画像形成装置であって、
収納可能な最大サイズの長方形の用紙を収納する向きが当該用紙の短辺が用紙取出し方向に沿う向きとされた用紙スタッカーと、
前記用紙スタッカーに重なるように配置され、前記用紙スタッカーから取り出された用紙に前記用紙取出し方向に直交する方向に沿う主走査によって画像データに応じた像を形成する作像機構と、
読取り可能な最大主走査寸法が前記最大サイズの用紙の短辺寸法以上かつ長辺寸法未満であって、読取りの副走査方向が前記用紙取出し方向に沿う方向になるように、前記作像機構の上方に配置されたイメージスキャナーと、
前記イメージスキャナーの出力に基づいて前記画像データを生成する電気回路と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記作像機構を収容するハウジングに設けられた、前記最大サイズの用紙より大きい用紙の前記作像機構への供給を可能にする付加給紙機構を取り付けるための機構取付け部と、
前記最大サイズの用紙より大きい用紙への画像形成に必要な付加電気回路を前記電気回路に接続するための回路取付け部と、を備える
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回路取付け部は、前記電気回路の構成部品を支持する回路基板上に設けられている
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記付加電気回路は、前記最大サイズの用紙より大きい用紙への画像形成における前記作像機構および前記付加給紙機構の制御に必要な制御データを記憶する不揮発性メモリを有し、
前記電気回路は、前記最大サイズの用紙より大きい用紙への画像形成において、前記回路取付け部に取り付けられた前記付加電気回路から前記制御データを取得し、当該制御データを用いて前記作像機構および前記付加給紙機構を制御する
請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記付加電気回路は当該付加電気回路に対する個体識別のための識別データを記憶し、
前記電気回路は、前記識別データに基づいて前記付加電気回路を認証した後に、前記制御データを用いて前記作像機構および前記付加給紙機構を制御する
請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記最大サイズはA4サイズであり、
前記イメージスキャナーは、A4サイズの用紙の載置が可能な長方形の原稿台を有しており、
前記原稿台の長辺が当該画像形成装置の左右方向に沿うように前記イメージスキャナーが配置されている
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−11698(P2013−11698A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143447(P2011−143447)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】