説明

画像形成装置

【課題】
本発明はトナーを使用して画像を形成する画像形成装置に関し画像の光沢を調整する。
【解決手段】
複数の第1種類のトナーと、第1種類のトナーとは軟化点が異なる第2種類のトナーとからなるトナー群を構成する個々のトナーそれぞれを用いて複数のトナー像を形成する複数の像形成部と、複数のトナー像を、重ねた状態であって、第2種類のトナーで形成したトナー像が最上層となるように記録媒体上に転写するモードを有する像転写部と、複数のトナー像の転写を受けた用紙上にそれらのトナー像を定着する像定着部と、上記のモードにおいて、第2種類のトナーを用いてトナー像を形成する像形成部に、画像形成領域のうちの少なくとも一部領域を占めるトナー像を形成させ、像転写部に、その第2種類のトナーによるトナー像が上記の少なくとも一部領域について最上層となるように記録媒体上に転写させる像制御部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、有色トナーに対して色の変化を与え難い透明トナーを用いることにより、中間転写体への転写時の現像剤の飛び散りを抑制し、かつ記録媒体への転写性を向上させる画像形成装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、定着ベルトを用いた定着装置であって、定着ベルトの表面層の損傷を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−224126号公報
【特許文献2】特開2010−145625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、画像の光沢を調整することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、
互いに色が異なる複数の第1種類のトナーと、それらの第1種類のトナーとは軟化点が異なる第2種類のトナーとからなるトナー群を構成する個々のトナーそれぞれを用いて複数のトナー像を形成する複数の像形成部と、
複数の像形成部で形成された複数のトナー像を、重ねた状態であって、少なくとも、それら複数のトナー像のうちの第2種類のトナーで形成したトナー像が最上層となるように記録媒体上に転写するモードを有する像転写部と、
像転写部により複数のトナー像の転写を受けた記録媒体上にそれら複数のトナー像を定着する像定着部と、上記モードにおいて、複数の像形成部のうちの第2種類のトナーを用いてトナー像を形成する像形成部に、画像形成領域のうちの少なくとも一部領域を占めるトナー像を形成させ、像転写部に、第2種類のトナーによるトナー像が上記の少なくとも一部領域について最上層となるように記録媒体上に転写させる像制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
請求項2は、請求項1記載の画像形成装置において、上記像制御部が、上記第2種類のトナーを用いる像形成部に、画像形成領域のうちの少なくとも一部領域について、第2種類のトナーが一様に分布した一様トナー像であって、かつ、単位面積あたりのトナー量が互いに異なる複数種類のトナー像の中から選択された一様トナー像を形成させるものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記像定着部が、上記複数のトナー像の転写を受けた記録媒体の、それら複数のトナー像が転写された側の面に接してそれら複数のトナー像を加熱する加熱部材と、その加熱部材との間に記録媒体を挟んで記録媒体を加熱部材に押し当てる加圧部材と、加圧部材の温度を制御する加圧温度制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項3記載の画像形成装置において、上記像定着部が、加熱部材の温度を、記録媒体上に転写される複数のトナー像を重ねたときのトナーの総厚に応じて制御する加熱温度制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の画像形成装置によれば、上記第1種類のトナーのみを用いた場合と比べ、画像のうちの少なくとも一部領域について光沢が調整される。
【0012】
請求項2の画像形成装置によれば、上記第1種類のトナーのみを用いた場合と比べ、画像のうちの少なくとも一部領域について光沢を複数レベルに調整することができる。
【0013】
請求項3の画像形成装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、画像の光沢が安定する。
【0014】
請求項4の画像形成装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、安定した定着が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態としての画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置で用いられている定着器の概略構成図である。
【図3】トナーの軟化点の違いによる、定着時の加熱ベルトの温度と用紙上に形成された画像の光沢(グロス)との関係を示した図である。
【図4】トナーの軟化点と光沢(グロス)との関係を示した図である。
【図5】最上層にCTトナーによる一様画像を形成したときの、CTトナーの面積率[%]と60°グロスとの関係を示した図である。
【図6】図2に示す定着器の加圧ロールの温度と60°グロスとの関係を示した図である。
【図7】制御部で実行される処理を示したフローチャートである。
【図8】トナー総厚と定着器(加熱ベルト)の設定温度との対応関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置の概略構成図である。
【0018】
この画像形成装置100は、その下部に給紙台10を備えており、その給紙台10には用紙Pが積み重ねられた状態に収容されている。画像形成にあたっては、ピックアップロール11によりその給紙台10から用紙Pが1枚送り出され、搬送ロール12により搬送路121上を矢印A方向に搬送され、待機ロール13によりそれ以降の搬送のタイミングが調整されてさらに搬送される。この待機ロール13以降の搬送については後述する。
【0019】
また、この画像形成装置100には、5台の画像形成エンジン20CL,20Y,20M,20C,20Kが配置されている。各画像形成エンジン20CL,20Y,20M,20C,20Kは、それぞれ、透明(CL)トナー、イエロー(Y)色のトナー、マゼンタ(M)色のトナー、シアン(C)色のトナー、および黒(K)色のトナーを用いてトナー像を形成するエンジンである。ここで、本実施形態の画像形成装置100で採用されているY,M,C,Kの各色のトナーは、この種の画像形成装置で従来使われているトナーよりも高い軟化点を有し、これに対しCLトナーは、それらの各色トナーよりも低い軟化点のトナーである。詳細は後述する。これら5台の画像形成エンジン20CL,20Y,20M,20C,20Kは、使用されるトナーが異なる点を除き、いずれも同一の構成を有する。ここでは、それら5台の画像形成エンジン20CL,20Y,20M,20C,20Kを代表させて、1台の画像形成エンジン20CLを取り挙げてその構成を説明する。
【0020】
この画像形成エンジン20CLは、感光体21CLを有し、その感光体21CLの周囲に、帯電器22CL、露光器23CL、現像器24CL、転写器25CL、およびクリーナ26CLが配置されている。ここで、転写器25CLは、感光体21CLとの間に後述する中間転写ベルト31を挟んだ位置に配置されている。
【0021】
感光体21CLは、円筒形状を有し、矢印B方向に回転しながら、その表面に、帯電により電荷を保持し露光によりその電荷を放出して静電潜像を保持する。
【0022】
帯電器22CLは、感光体21CLの表面をある帯電電位に帯電する。
【0023】
また、露光器23CLには、後述する制御部50から画像データ(この実施形態においては、CLトナーを用いる画像形成エンジン20CLに限っては一様画像を表わす画像データ;詳細は後述する)が入力され、露光器23CLからは、その入力された画像データに応じて変調された露光光231CLが出力される。感光体21CLは、帯電器22CLによる帯電を受けた後で露光器23CLからの露光光231CLの照射を受けることで、その表面に静電潜像が形成される。
【0024】
感光体21CLは、露光光231CLの照射を受けて表面に静電潜像が形成された後、現像器24CLにより現像され、その感光体21CLの表面にトナー像(この画像形成エンジン20CLでは透明(CL)トナーによる一様トナー像)が形成される。
【0025】
現像器24CLは、内部にトナーとキャリアとからなる現像剤を収容したケース241内に、現像剤を攪拌する2本のオーガ242と、現像剤を感光体21CLに対向した位置に運ぶ現像ロール243とを有する。感光体21CL上に形成された静電潜像の現像にあたっては、現像ロール243にバイアス電圧が印加され、そのバイアス電圧の作用により、現像剤中のトナーが、感光体21CL上に形成された静電潜像に従って感光体21CL上に付着し、トナー像が形成される。
【0026】
現像器24CLによる現像により感光体21CL上に形成されたトナー像は、転写器25CLの作用により中間転写ベルト31上に転写される。
【0027】
この転写後に感光体21CL上に残存するトナーは、クリーナ26CLによって感光体21CL上から取り除かれる。
【0028】
中間転写ベルト31は、駆動ロール32やその他の複数のロール33に架け回された、無端の、矢印C方向に循環移動するベルトである。
【0029】
画像形成エンジン20CL,20Y,20M,20C,20Kのそれぞれで形成されたCL,Y,M,C,Kの各トナーによるトナー像は、画像形成エンジン20CLで形成されたCLトナーによるトナー像を最下層として順次重なるように中間転写ベルト31上に転写され、二次転写器34が配置された二次転写位置に搬送される。これと同期して、待機ロール13にまで搬送されてきていた用紙が二次転写位置に搬送され、二次転写器34の作用により、中間転写ベルト31上のトナー像が、搬送されてきた用紙上に転写される。中間転写ベルト31上のトナー像は、用紙Pに転写されることにより層の順序が逆になるため、用紙上では、CLトナーによるトナー像が最上層となる。このトナー像の転写を受けた用紙は、搬送ベルト14上を矢印D方向にさらに搬送され、定着器40による加圧および加熱により用紙上のトナー像がその用紙上に定着され、定着されたトナー像からなる画像が用紙上に形成される。画像が形成された用紙は、搬送ベルトにより矢印E方向に搬送されて、この画像形成装置100の外部に排出される。
【0030】
二次転写器34によりトナー像を用紙上に転写した後の中間転写ベルト31はさらに循環移動し、その表面に残存するトナーがクリーナ35によって中間転写ベルト31上から取り除かれる。
【0031】
また、この画像形成装置100には、制御部50と操作・表示部501が設けられている。制御部50には、画像データCinが入力され、その画像データCinとともに入力されてきた制御データに従って、あるいは操作・表示部501からの指示に従って、その入力されてきた画像データCinが処理されて、各露光器23CL、23Y,23M,23C,23Kにおける露光光231CL,231Y,231M,231C,231Kの照射に適した画像データに変換される。この変換後の画像データは、各露光器23CL、23Y,23M,23C,23Kに送信される。各露光器23CL、23Y,23M,23C,23Kでは、入力されてきたCL,Y,M,C,Kの各色に対応した各画像データに従って各感光体21CL,21Y,21M,21C,21Kに各露光光を照射する。制御部50における処理の詳細については後述する。
【0032】
操作・表示部501は、ユーザに向けてこの画像形成装置100に関する様々なメッセージを表示し、また、様々な操作ボタンを表示してユーザからの画像形成に関する指示等の操作を受け付けるマン・マシンインタフェースである。
【0033】
図2は、図1に示す画像形成装置で用いられている定着器の概略構成図である。
【0034】
この定着器40は、矢印F方向に循環移動する無端の加熱ベルト41と、矢印G方向に回転する加圧ロール42を有する。また、加熱ベルト41の内側には、その加熱ベルト41を挟んで加圧ロール42と対向する位置に加熱ロール43が配置されている。また、加圧ロール42から最も離れた位置には張架ロール44が配置され、それら加熱ロール43と張架ロール44との間に、もう1つの張架ロール45と、加熱ベルト41の蛇行修正用の姿勢制御ロール46が配置されている。また、ここには、もう1つの張架ロール47が備えられており、この張架ロール47は、加熱ベルト41の外側から加熱ベルト41に押し当てられている。
【0035】
ここで、加熱ロール43および2本の張架ロール44,47には、それらのいずれにもヒータ431,441,471が内蔵されており、加熱ベルト41は、それら加熱ロール43,張架ロール44,47により加熱される。加熱ベルト41の内外には、それぞれ温度センサ481,482が配置されており、加熱ベルト41の温度が測定されて加熱ベルト41の温度が所期の温度となるようにヒータ431,441,471による加熱が制御される。
【0036】
さらに加熱ベルト41の内側の加熱ロール43の、用紙Pの搬送方向下流側に隣接した位置には、剥離パッド49が配置されている。
【0037】
また、加圧ロール42は、芯421の周囲にゴム製の弾性層422を有するロールである。この加圧ロール42の近傍にも、この加圧ロール42の温度測定用の温度センサ51が配置されている。また、加圧ロール42の下部には、加圧ロール42を空冷するファン52が配置されている。加圧ロール42は、その温度が温度センサ51で測定され加圧ロール42の温度が一定温度に保たれるようにファン52の回転が制御される。
【0038】
図1に示す二次転写器34の作用により中間転写ベルト31上のトナー像の転写を受けた用紙Pは、搬送ベルト14により矢印D方向に搬送されて加熱ベルト41と加圧ロール42との間に入り込み、加圧ロール42により加熱ベルト41に押し当てられながら進み、剥離パッド49により加熱ベルト41が剥がされ、搬送ベルト15により矢印E方向に搬送される。用紙P上のトナー像は、この定着器40を通過する間に溶融し、その後固化することで、用紙P上に、定着されたトナー像からなる画像が形成される。この定着器40を通過した用紙Pは、前述の通り、図1に示す画像形成装置100の外部に排出される。
【0039】
ここで、前述した通り、図1に示す画像形成装置100では、Y,M,C,Kの各色トナーは、従来のトナーよりも高軟化点のトナーが採用されており、透明(CL)トナーは従来と同程度の低軟化点のトナーが採用されている。ここでは、この理由について説明する。
【0040】
図3は、トナーの軟化点の違いによる、定着時の加熱ベルトの温度と用紙上に形成された画像の光沢(グロス)との関係を示した図である。また、図4は、トナーの軟化点と光沢(グロス)との関係を示した図である。
【0041】
ここでは、フローテスター:CFT500(島津製作所社製)を用い、ダイス細孔径0.5mm、加圧加重0.98MPa、昇温速度1℃/minの条件で測定した1/2降下速度(トナーサンプルを溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度)をトナーの軟化点としている。また、光沢については「ミラーコートプラチナ256GSM」と称される用紙上に画像形成したときの、60°グロスを採用している。図4に示すように、ここでは、軟化点が109℃前後のトナーを低軟化点のトナー、115℃前後のトナーを中軟化点のトナー、125℃前後のトナーを高軟化点のトナーと称している。
【0042】
図3(A)は、低軟化点のトナーを使って1次色(Y,M,C,K)、2次色(レッド(R),グリーン(G),ブルー(B))等の様々な色を表現したときの、定着器の加熱ベルトの温度(横軸)と60°グロス(縦軸)との関係を示した図である。また図3(B)は、中軟化点のトナーを使ったときの、図3(A)と同様な図、図3(C)は、高軟化点のトナーを使ったときの、図3(A)と同様な図である。図3(A)〜図3(C)の各図における縦線は、定着が保証できる最低温度(加熱ベルトの温度)を示している。低軟化点のトナーは比較的低い温度で溶融するため、低軟化点トナーを用いたときの、定着が保証できる最低温度は、図3(A)に示した通り、145℃である。これに対し中軟化点のトナー(図3(B))および高軟化点のトナー(図3(C))の場合は、定着が保証できる最低温度は150℃である。
【0043】
図3(A)〜(C)を比較すると分かるように、低軟化点のトナーを用いた画像の方が高グロスであり、高軟化点のトナーを用いると画像のグロスが低下する。
【0044】
図4に示す点線のグラフは、軟化点が異なる様々なトナーを用いて、その軟化点のトナーとしての、定着が保証できる最低温度を採用して画像を形成したときの、軟化点と60°グロスとの間の平均的な関係を示している。
【0045】
このグラフからも、トナーとして採用し得る実用的な範囲内において、トナーの軟化点が高まるほど、光沢(グロス)が低下することが分かる。
【0046】
図5は、色トナーによる1次色(Y,M,C,K)や2次色(R,G,B)等の一様画像の最上層に、CTトナーによる一様画像を形成したときの、CTトナーの面積率[%]と60°グロスとの関係を示した図である。
【0047】
図5(A)は、色トナー、CTトナーとも低軟化点のトナーを用いた場合のグラフ、図5(B)は色トナーについては高軟化点トナー、CTトナーについては低軟化点のトナーを用いた場合のグラフである。
【0048】
図5(A)に示すように、色トナー、CTトナーとも低軟化点のトナーを用いると、最上層のCTトナーの面積率[%]の如何にかかわらず、すなわち、最上層にCTトナー像があるかないかも含めて、光沢(グロス)はほとんど変化しないことが分かる。
【0049】
これに対し、高軟化点の色トナー(Y,M,C,K)を採用し、CTトナーについては低軟化点のトナーを採用すると、図5(B)に示すように最上層にCTトナーの層が存在しない場合および最上層のCTトナーの層の面積率が低い場合(面積率0%〜20%程度)のときは光沢(グロス)は低く、最上層に高い面積率(70%程度〜100%)のCTトナーの層が存在するときは、図5(A)の場合と同レベルの高光沢(グロス)となる。また、最上層のCTトナーの層の面積率がそれらの中間の領域(面積率が30%〜60%程度)のときは、面積率が上がるほど光沢(グロス)も高まることが分かる。
【0050】
以上のことから、高軟化点の色トナー(Y,M,C,K)と低軟化点のCTトナーを採用し、用紙の最上層に低軟化点のCTトナーの層を形成するか否かでその画像の光沢(グロス)を変化させることができることが分かる。また、その最上層の低軟化点のCTトナーの層の面積率を中間の領域で変化させることにより、画像の光沢(グロス)を複数段階に調整することも可能であることが分かる。
【0051】
図6は、図2に示す定着器の加圧ロールの温度と60°グロスとの関係を示した図である。ここでは色トナーで二次色(R,G,B)の一様画像を形成し、その画像の60°グロスを測定している。加熱ベルトの温度はそのトナーの軟化点に応じた、定着が保証できる最低温度に設定されている。
【0052】
この図6から分かる通り、低軟化点トナーは加圧ロールに温度変化があっても光沢(グロス)の変化は僅かである。これに対し、高軟化点トナーの場合、加圧ロールの温度が変化すると、その変化が画像の光沢(グロス)の変化として表われ易い。
【0053】
このため、低軟化点トナーのみを用いていた従来の画像形成装置の場合は、加圧ロールの温度は表側の面に定着トナー像が形成された用紙の裏面にトナー像を形成する場合において表側の面に形成された定着トナー像が加圧ロールに触れたときに再溶融して画像欠陥を生じることを避けるために、70℃以下に制御すれば十分であったのに対し、本実施形態の画像形成装置100(図1参照)では、高軟化点トナーを用いることから、加圧ロール42は、ファン52による空冷により、一定温度(本実施形態では70℃)となるように温度制御が行われる。これは、上記の通り、加圧ロール42が70℃を越えると画質欠陥を生じるおそれがあり、一方、加圧ロール42が70℃に満たないと光沢(グロス)の点で問題を生じるおそれがあるからである。
【0054】
以上の説明を踏まえ、図1に示す本実施形態の画像形成装置100の制御部50での処理について説明する。
【0055】
図7は、制御部で実行される処理を示したフローチャートである。
【0056】
ここでは先ず画像データCinが受信される(ステップS01)。ここではさらに光沢モードオン/オフの情報、および光沢レべルの情報(1又は2又は3)が取得される。光沢モードオン/オフの情報および光沢レベルの情報は、画像データCinとともに外部から入力することもでき、あるいは、ユーザによる、操作・表示部501の操作により入力することもできる。
【0057】
画像データCinが入力されると、その画像データCinに基づいてトナー像を形成した場合の、Y,M,C,Kのトナーの総厚Xが算出される(ステップS02)。画像の各領域でトナーの総厚が異なるときは、最も厚い領域の総厚が採用される。この総厚Xは、十分な定着が行われるかどうかの判定に用いるものであり、画像の一部領域であっても定着が不十分であっては画質欠陥となるからである。総厚Xが算出されると、次に光沢モードオン/オフが判定される(ステップS03)。
【0058】
尚、ここでは分かり易さのため、光沢モードオン/オフと、光沢レベルとを別々の情報として取り扱っているが、光沢モードオン/オフを光沢レベルに統合して最低の光沢レベルを、CTトナー層の面積率0%の画像(すなわち光沢モードオフと同じ)を形成するものとして取り扱ってもよい。
【0059】
ここでは先ず、光沢モードオフ(最低の光沢レベル)の場合について先に説明する。
【0060】
この場合、ステップS04に進む。このステップS04では、トナーの総厚Xが網点面積率で240%以下であるか否かが判定される。通常では、ほとんどの画像が総厚Xは240%以下であるが、例外的に240%を超える総厚の画像であったときは、240%以下となるようにトナー量の調整が行われる(ステップS05)。トナー量を調整するにあたっては、例えば、Y,M,Cの等量をKに置き換えたり、また、Y,M,C,Kの全体のトナー量を減じたりなど、既存の技術が採用される。
【0061】
ステップS04で総厚X≦240%であると判定された場合、あるいは総厚X>240%であったときは総厚X≦240%となるようにトナー量が調整された後、画像データが図1に示す各露光器23Y,23M,23C,23Kで取り扱われる形式のデータに変換されて(ステップS06)、各露光器23Y,23M,23C,23Kに向けて出力される(ステップS07)。ここでは光沢モードオフ(最低の光沢レベル)であるため、CTトナーを用いる画像形成エンジン20CL用の露光器23CLには画像データは送信されない。
【0062】
ステップS03において、光沢モードオンであると判定されると、ステップS08に進み、総厚Xが、ここでは200%以下であるか否かが判定される。
【0063】
ステップS04では、閾値として240%が採用されているにも拘らず、このステップS08では200%を閾値としているのは、CTトナーによる層の厚みが加算されることを考慮して、色トナーによる総厚Xを低めのレベルに抑える必要があるからである。
【0064】
ステップS08において総厚Xが200%を超えていると判定されると、ステップS09に進み、トナー量の調整処理が行われる、このステップS09におけるトナー量調整処理は上限が200%であることを除き、ステップS09におけるトナー量調整処理と同様な処理である。
【0065】
ステップS08において総厚X≦200%であると判定された場合、あるいは、総厚X>200%であると判定されたときはトナー量調整処理によりトナーの総厚がX≦200%に調整された後、ステップS10に進み、総厚Xに光沢レベル1/2/3に応じたCTトナーの厚みが追加される。ここでは一例として、光沢レベル1→2→3の順に高光沢となるように、光沢レベル1では、CTトナーの面積率40%、光沢レベル2ではCTトナーの面積率50%、光沢レベル3ではCTトナーの面積率100%が採用されている。これにより、CTトナーの面積率が追加された後の総厚は最大300%となる。
【0066】
このようにして算出された、CTトナーの面積率追加後の総厚の情報は、定着器温度制御部に通知される(ステップS11)。ここでは、この定着器の温度制御も、制御部50が担っており、したがって本実施形態における定着器温度制御部は、制御部50内で実行される定着器の温度制御処理(図示せず)である。したがって本実施形態では、CTトナーの面積率追加後の総厚の情報は制御部50内で実行される定着器の温度制御処理に通知される。
【0067】
図8は、トナー総厚と定着器(加熱ベルト)の設定温度との対応関係を示した図である。
【0068】
ここでは高軟化点の色トナーが採用されていることから比較的溶融し難く、かつその上にCTトナーの層が形成されるとさらに定着不足となるおそれがある。そこで、ここでは、トナー総厚が240%を越えると、最大の総厚である300%に至るまで、定着器の設定温度をトナー総厚に応じて上げる制御が行われる。定着器温度をトナー総厚300%に対応した温度に常に設定しておくと、エネルギーの浪費となり、また、定着器の熱が周囲に悪影響を及ぼさないよう熱を遮蔽するのが難しくなる。またCTトナーを含めてもトナー総厚が240%を越えることはまれであることから、ここでは定着温度を常には上げておかずに、240%を越えるときだけ、その総厚に応じて定着温度を上げることとしている。
【0069】
図7のフローチャートに戻って続きを説明する。
【0070】
ステップS11でトナー総厚を定着器温度制御部へ通知した後は、ステップS06と同様、画像データが各露光器23CL,23Y,23M,23C,23Kで取り扱われる形式のデータに変換されて(ステップS12)、変換後の画像データが各露光器23CL,23Y,23M,23C,23Kに向けて出力される(ステップS13)。ここでは、CTトナーを用いる画像形成エンジン20CL用の露光器23CLにも、画像データが送信される。
【0071】
尚、本実施形態では、Y,M,C,Kの各色トナーとして高軟化点のトナーを採用し、CTトナーとして低軟化点のトナーを採用して最上層にCTトナー層を形成することで光沢を上げる構成としている。ただし、これとは逆に、Y,M,C,Kの各色トナーとして低軟化点のトナーを採用し、CTトナーとして高軟化点のトナーを採用して、最上層にCTトナー層を形成することで光沢を下げる構成としてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、光沢を変えるためのCTトナーを、最上層に、かつ画像形成領域全面に広がるように形成することを前提とした説明を行なったが、最上層のCTトナーは、画像形成領域全面ではなく、画像形成領域のうちの一部領域のみであってもよい。この場合、その一部領域について光沢(グロス)を変更することが可能である。
【0073】
また、ここでは、図1に示す、いわゆるタンデム方式の画像形成装置について説明したが、本発明は、例えば、複数の現像器が回転するロータリ式の現像装置を用いた画像形成装置に適用してもよい。図1に示すタンデム方式の画像形成装置の場合、用紙の最上層にCTトナーを形成するためには、おのずと、CTトナーを使う画像形成エンジンの配置位置が定められるが、ロータリ式の現像装置を採用すると、CTトナーを使う現像器の配置位置の自由度が向上する。あるいは、ロータリ式の現像装置を採用したときは、画像にもよるが、CTトナーは使用せずに、例えば色トナーのうちの1色(例えばY色)のトナーのみ他の色のトナーと比べ軟化点の異なるトナーを用い、その軟化点の異なるトナーを最上層とするか下層とするかにより光沢の異なる画像を形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 給紙台
20CL,20Y,20M,20C,20K 画像形成エンジン
21CL,21Y,21M,21C,21K 感光体
22CL 帯電器
23CL,23Y,23M,23C,23K 露光器
24CL 現像器
25CL 転写器
26CL,35 クリーナ
31 中間転写ベルト
34 二次転写器
40 定着器
41 加熱ベルト
42 加圧ロール
43 加熱ロール
44,45,47 張架ロール
46 姿勢制御ロール
49 剥離パッド
50 制御部
51,481,482 温度センサ
52 ファン
100 画像形成装置
231CL,231Y,231M,231C,231K 露光光
431,441,471 ヒータ
501 操作・表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに色が異なる複数の第1種類のトナーと、該第1種類のトナーとは軟化点が異なる第2種類のトナーとからなるトナー群を構成する個々のトナーそれぞれを用いて複数のトナー像を形成する複数の像形成部と、
前記複数の像形成部で形成された複数のトナー像を、重ねた状態であって、少なくとも、該複数のトナー像のうちの前記第2種類のトナーで形成したトナー像が最上層となるように記録媒体上に転写するモードを有する像転写部と、
前記像転写部により複数のトナー像の転写を受けた記録媒体上に該複数のトナー像を定着する像定着部と、
前記モードにおいて、前記複数の像形成部のうちの前記第2種類のトナーを用いてトナー像を形成する像形成部に、画像形成領域のうちの少なくとも一部領域を占めるトナー像を形成させ、前記像転写部に、該第2種類のトナーによるトナー像が該少なくとも一部領域について最上層となるように記録媒体上に転写させる像制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像制御部が、前記第2種類のトナーを用いる像形成部に、前記少なくとも一部領域について、該第2種類のトナーが一様に分布した一様トナー像であって、かつ、単位面積あたりのトナー量が互いに異なる複数種類のトナー像の中から選択された一様トナー像を形成させるものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像定着部が、前記複数のトナー像の転写を受けた記録媒体の、該複数のトナー像が転写された側の面に接して該複数のトナー像を加熱する加熱部材と、該加熱部材との間に該記録媒体を挟んで該記録媒体を該加熱部材に押し当てる加圧部材と、該加圧部材の温度を制御する加圧温度制御手段とを有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像定着部が、前記加熱部材の温度を、記録媒体上に転写される前記複数のトナー像を重ねたときのトナーの総厚に応じて制御する加熱温度制御手段を有することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64762(P2013−64762A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201764(P2011−201764)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】