説明

画像形成装置

【課題】排紙部に設けたシフトフレームがスライド移動するのを防止して、排紙部にシフト機構が装備されていない画像形成装置において、指が挟まれる事故を一掃する。
【解決手段】搬送路8の終端に、画像が定着された記録紙を紙受部7へ送出する排紙部13を設ける。排紙部13には、記録紙をニップ体14と協同して送出操作する排紙ローラ15と、排紙ローラ15を支持する状態で往復スライドするシフトフレーム16とを設ける。シフトフレーム16をスライド自在に支持する上フレーム18と、シフトフレーム16との間に、シフトフレーム16のスライド移動を規制する規制構造を設ける。規制構造は、上フレーム18に設けたねじボス22と、ねじボス22にねじ込まれてシフトフレーム16をスライド不能に固定するねじ体40とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコピー機、ファクシミリ機、あるいはプリンター装置等の画像形成装置に関し、その排紙部の構造を改良したものである。
【背景技術】
【0002】
画像が定着処理されたのちの記録紙を紙受部へ送出するために、搬送路の終端には排紙部が設けられている。また、排紙部にシフト機構を設けて、記録紙を一定枚数ごとに横ずれした状態で送出して、記録紙の部数ごとの分別を容易化することが従来から行なわれている。例えば特許文献1の画像形成装置においては、排紙部に設けた駆動ローラをモータ動力でローラ軸心方向へ往復操作して、記録紙を一定枚数ごとに横ずれした状態で送出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30709号公報(段落番号0015、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシフト機構によるシフト送出機能は、全てのユーザが必要とする機能ではないため、ユーザ自身が選択するオプションとすることが多い。その場合でも、排紙部にシフト機構が装備される機体と、そうではない機体とで、排紙部の構造を共通化するために、駆動ローラと、従動ローラと、駆動ローラを支持するシフトフレームなどを共通部品とすることがある。また、スライド自在に支持されたシフトフレームがローラ軸心方向へ遊動するのを規制するために、シフトフレームをそのスライドストロークの一端へ向かってばねで付勢して固定している。
【0005】
しかし、先の駆動ローラおよび従動ローラは、いずれも紙受部に臨んで露出しているため、排紙部の周辺に詰まった記録紙を除去する場合などに、シフトフレームが駆動ローラと共にローラ軸心方向へ移動して、指を挟むことがある。例えば、記録紙が排紙部に詰まる過程で、シフトフレームがばねに抗してローラ軸心方向へ移動操作されている場合には、記録紙を引きずり出すのと同時に、記録紙による拘束が解除されてシフトフレームが復帰移動し、ユーザの指を挟むことがある。詳しくは、駆動ローラと従動ローラとの端面間に指が挟まれ、あるいは、一方のローラと他方のローラのローラ軸との間に指が挟まれることがある。
【0006】
本発明の目的は、排紙部に設けたシフトフレームがローラ軸心方向へ移動するのを防止して、排紙部にシフト機構が装備されていない画像形成装置において、指挟み事故を一掃できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、搬送路8の終端に、画像が定着された記録紙を紙受部7へ送出する排紙部13が設けられている。排紙部13には、記録紙をニップ体14と協同して送出操作する排紙ローラ15と、排紙ローラ15を支持する状態で、排紙ローラ15のローラ軸心方向へ往復スライドするシフトフレーム16とが設けられている。そして、シフトフレーム16をスライド自在に支持する上フレーム18と、シフトフレーム16との間に、シフトフレーム16のスライド移動を規制する規制構造が設けられていることを特徴とする。
【0008】
図1に示すように規制構造は、上フレーム18に設けたねじボス22と、ねじボス22にねじ込まれてシフトフレーム16をスライド不能に固定するねじ体40とで構成する。
【0009】
図5に示すように、規制構造は、上フレーム18に設けた規制体42と、シフトフレーム16の一部に設けられて、規制体42と係合してシフトフレーム16をスライド不能に固定する連結片43とで構成することができる。規制体42と連結片43とのいずれか一方に、折取りを容易化する危険断面部46を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、排紙部13に配置される排紙ローラ15をシフトフレーム16で支持し、シフトフレーム16と上フレーム18との間に規制構造を設けて、シフトフレーム16のスライド移動を規制できるようにした。従って、シフト機構を省略する画像形成装置において、排紙部13に設けたシフトフレーム16がローラ軸心方向へ移動するのを確実に防止して、排紙部13の周辺に詰まった記録紙を除去する場合などに、指挟み事故を一掃して画像形成装置の安全性を向上できる。
【0011】
規制構造を、上フレーム18に設けたねじボス22と、ねじボス22にねじ込まれるねじ体40とで構成したので、シフトフレーム16をねじ体40で締結するか否かで、シフト機構の有無に対応できる。詳しくは、シフトフレーム16をねじ体40で締結して固定すると、シフト機構を備えていない画像形成装置とすることができ、ねじ体40による締結を省く場合には、シフト機構を備えている画像形成装置に対応できる。また、ねじ体40をねじボス22に締結してシフトフレーム16を固定するので、外部振動が作用するような場合に、シフトフレーム16ががたついて異音を生じるのを防止できる。
【0012】
規制構造を、上フレーム18に設けた規制体42と、シフトフレーム16に設けた連結片43とで構成したので、規制体42と連結片43とを互いに係合するように組むだけで、シフトフレーム16のスライド動作を規制することができる。従って、シフトフレーム16を上フレーム18に組付けるときの組立の手間を省きながら、シフト機構を備えていない画像形成装置とすることができる。また、シフト機構を備えている画像形成装置とする場合には、規制体42と連結片43とのいずれか一方に設けた危険断面部46に沿って、規制体42あるいは連結片43を折取って除去すればよいので、より少ない手間でシフト機構の有無に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る排紙部の構造を示す縦断正面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略構造を示す概念図である。
【図3】本発明に係る排紙部の構造を示す分解平面図である。
【図4】本発明に係る排紙部の平面図である。
【図5】別の実施例に係る排紙部の構造を示す縦断正面図である。
【図6】図5に係る排紙部の規制構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例) 図1から図4に、本発明に係る画像形成装置をコピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機に適用した実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0015】
図2において、複合機1は、画像形成部2、および定着器3等が配置された本体部4と、本体部4の上部の画像読取部5などを備えており、本体部4の下側に配置した給紙カセット6と本体部4の上側の紙受部7との間に記録紙の搬送路8を備えている。搬送路8の下部に画像形成部2が配置され、その上部に定着器3が配置されている。画像形成部2および定着器3に臨む本体部4の前壁および右側壁には、フロントカバーおよびサイドカバーが設けられている。これらのカバーを開放することにより、画像形成部2および定着器3のメンテナンスを行なうことができ、さらに定着器3、あるいはその周辺の搬送路8に詰まった記録紙を取り除くことができる。
【0016】
画像読取部5の前面には、各種の操作ボタンを備えた操作パネル9が設けられており、画像読取部5の上面には自動原稿搬送装置10が設けられている。本などの綴られた原稿の画像は、画像読取部5の上面のプラテンガラスに載置した状態で読み込むことができ、さらに枚葉状の原稿は自動原稿搬送装置10を通すことにより連続して読み込むことができる。紙受部7に臨む搬送路8の終端には、定着器3によって画像が定着された記録紙を紙受部7へ向かって送出する排紙部13が設けられている。
【0017】
排紙部13には、ユーザの希望に応じて、記録紙を一定枚数ごとに横ずれした状態で送出して、記録紙の部数ごとの分別を容易化するシフト機構を設ける場合と、シフト機構を省略する場合とがある。この実施例の複合機1は、シフト機構が省略してある場合を示しているが、その場合でも排紙部13に、後述する駆動ローラ14と、排紙ローラ15と、排紙ローラ15を支持するシフトフレーム16などを設けて、部品を共通化できるようにしている。
【0018】
図3に示すように排紙部13には、前後一対の駆動ローラ(ニップ体)14と、同ローラ14と協同して記録紙を送出操作する排紙ローラ15と、駆動ローラ14および排紙ローラ15を支持するシフトフレーム16などが設けられている。前後の駆動ローラ14は、シフトフレーム16でローラ軸19を介して回転自在に支持されており、ローラ軸19の端部に設けた図示していない動力機構で回転駆動される。
【0019】
上フレーム18には、シフトフレーム16を嵌め込むための前後に長い装着窓20が形成されており、この装着窓20に臨む左右の窓周縁に、シフトフレーム16を案内する左右一対のガイドレール21が形成されている。また、シフトフレーム16のスライド領域に臨む窓周縁壁の前後中央に、後述する規制構造を構成するねじボス22と、ガイドリブ23とが面一になる状態で形成されている。ねじボス22には、ねじ下穴が形成されている。
【0020】
シフトフレーム16は、前後に長い帯板状のプラスチック成形品からなり、板面の中央寄りの前後2個所にローラ窓25が開口されている。シフトフレーム16の上面および下面の左右には、半球状のスライド突起26と、リブ状のスライド突起27が形成されており、シフトフレーム16の右側縁の前後中央に、後述する規制構造を構成する締結壁28が側外方へ張出されて、その中央にねじ座29が凹み形成されている。また、シフトフレーム16の右側縁の後端寄りには、ばね受片30が横向きに突設されている。スライド突起26がシフトフレーム16の前後中央に形成してあるのに対し、スライド突起27はシフトフレーム16の前後3個所に一対ずつ形成してある。
【0021】
図1に示すように、シフトフレーム16は、その上下面に設けたスライド突起26・27を、上フレーム18の上面を覆うカバー32と、上フレーム18に設けたガイドレール21とで案内する。これにより、シフトフレーム16は、駆動ローラ14および排紙ローラ15を同行して前後へ往復スライドすることができる。また、シフトフレーム16は、上フレーム18とばね受片30との間に装着した圧縮コイル形のばね17で機体後方へ向かって付勢されており、フレームの後端が上フレーム18の後部に設けたストッパー33で受止められている(図4参照)。図4において符号34は、搬送路8に臨んで設けられて記録紙を移動案内するフィラーであり、符号100はシフトフレーム16のスライドストロークである。
【0022】
排紙ローラ15は、ローラ部36とローラ軸37とを一体に備えたプラスチック成形品からなり、ローラ軸37はシフトフレーム16に設けた軸受けで回転自在に軸支されている。この状態のローラ部36は先のローラ窓25に収容されて、その下周面がシフトフレーム16の下方に露出している。ローラ部36の前後の間隔は、最小サイズの記録紙の前後幅に対応して設定してある。従って、シフト機構を備える複合機1において、駆動ローラ14および排紙ローラ15がシフトフレーム16と共にスライド移動する場合でも、最小サイズの記録紙を送出することができる。
【0023】
シフト機構を備えていない複合機1において、駆動ローラ14および排紙ローラ15がシフトフレーム16と共にスライド移動するのを規制するために、シフトフレーム16と、上フレーム18との間に規制構造が設けられている。図1に示すように、規制構造は、先に説明したねじボス22と、ねじボス22にねじ込まれてシフトフレーム16をスライド不能に固定するビス(ねじ体)40と、平座金などで構成する。
【0024】
シフトフレーム16は、上フレーム18に対して次のように組付ける。まず、シフトフレーム16に前後一対の排紙ローラ15を組付け、さらに駆動ローラ14を組付ける。
この状態のシフトフレーム16を上フレーム18の装着窓20に嵌込み、上フレーム18とばね受片30との間に装着ばね17を組んで、シフトフレーム16をストッパー33で受止める。この状態では、シフトフレーム16の締結壁28と、ねじボス22とが正しく位置決めされているので、ねじ座29に挿通したビス40をねじボス22のねじ下穴にねじ込むことにより、シフトフレーム16を前後スライド不能に固定することができる。シフトフレーム16がビス40で固定された状態を図4に示している。
【0025】
上記のように、シフトフレーム16をねじボス22にねじ込んだビス40で固定すると、排紙部13の周辺に詰まった記録紙を除去する場合などに、シフトフレーム16が駆動ローラ14および排紙ローラ15と共にローラ軸心方向へ移動するのを規制できる。また、シフトフレーム16がローラ軸心方向へ移動することに伴う指挟み事故を解消できる。必要に応じて、ねじボス22にねじ込んだビス40を取外すことにより、シフトフレーム16の前後スライドを許して、シフト機構を構成することができる。その場合には、シフトフレーム16をスライド操作するシフト機構、具体的にはモータ、およびモータ動力をスライド動作に変換するスライド構造などを、シフトフレーム16の前部空間に組込むとよい。
【0026】
図5および図6は、規制構造の別の実施例を示す。そこでは、上フレーム18に設けた規制体42と、シフトフレーム16に設けた連結片43とで規制構造を構成した。規制体42は角軸状の突起からなり、その上部に抜止爪44が形成されている。連結片43は、シフトフレーム16の右側縁の前後中央から側外方へ張出した四角形状の面壁からなり、その突端寄りに先の規制体42と係合する係合穴45が形成されている。シフトフレーム16を上フレーム18に組付ける過程で、連結片43の係合穴45を規制体42に係合することにより、シフトフレーム16を前後スライド不能に固定することができる。
【0027】
排紙部13にシフト機構を設ける場合には、規制体42と連結片43を係合できない状態にする必要がある。そのために、連結片43の張出し基部側の下面に危険断面部46が設けられている。危険断面部46は断面が逆V字状の溝からなり、シフトフレーム16を上フレーム18に組付ける前に、連結片43を危険断面部46に沿って上向きに折取ることにより、シフトフレーム16から分離できる。なお、危険断面部46は規制体42に形成してあってもよい。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0028】
上記の実施例では、ニップ体として駆動ローラ14を例示したが、その必要はなく回転駆動されるベルトをニップ対とすることができる。また、必要があれば排紙ローラ15を回転駆動してもよい。シフト機構を備えていない画像形成装置の場合には、ばね17を省略することができる。ねじ体40は、タッピンビス、あるいは操作頭部を備えているボルトなどを適用できる。
【符号の説明】
【0029】
7 紙受部
8 搬送路
13 排紙部
14 ニップ体(駆動ローラ)
15 排紙ローラ
16 シフトフレーム
18 上フレーム
22 ねじボス
28 締結壁
40 ねじ体(ビス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路の終端に、画像が定着された記録紙を紙受部へ向かって送出する排紙部が設けられており、
前記排紙部には、前記記録紙をニップ体と協同して送出操作する排紙ローラと、
前記排紙ローラを支持する状態で、前記排紙ローラのローラ軸心方向へ往復スライドするシフトフレームとが設けられており、
前記シフトフレームをスライド自在に支持する上フレームと、前記シフトフレームとの間に、前記シフトフレームのスライド移動を規制する規制構造が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記規制構造が、前記上フレームに設けたねじボスと、前記ねじボスにねじ込まれて前記シフトフレームをスライド不能に固定するねじ体とで構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記規制構造が、前記上フレームに設けた規制体と、前記シフトフレームの一部に設けられて、前記規制体と係合して前記シフトフレームをスライド不能に固定する連結片とで構成されており、
前記規制体と前記連結片とのいずれか一方に、折取りを容易化する危険断面部が形成されている請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6633(P2013−6633A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138371(P2011−138371)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】