説明

画像形成装置

【課題】形成される画像の乱れを抑制しつつ、主走査方向における色ずれを補正できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、主走査方向に列状に配される第1の発光素子群と、第1の発光素子群と少なくとも一部が副走査方向に重複するとともに、重複する部分において、第1の発光素子群に属する発光素子の間隔より大きい間隔で配された第2の発光素子群と、第1の発光素子群と少なくとも一部が副走査方向に重複するとともに、重複する部分において、第1の発光素子群に属する発光素子の間隔より小さい間隔で配された第3の発光素子群とを備える発光チップC1、C2・・を有する発光素子ヘッドと、発光素子の光出力を結像させて感光体ドラムを露光し静電潜像を形成させるロッドレンズアレイとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した、プリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、一様に帯電された感光体上に、画像情報を光記録手段によって照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行なわれる。かかる光記録手段として、レーザを用いて主走査方向にレーザ光を走査させて露光する光走査方式の他、近年では、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)アレイ光源を主走査方向に多数、配列してなるLEDヘッドを用いた光記録手段が採用されている。
【0003】
特許文献1には、発光素子を主走査方向にライン上に配列した書込ユニットを色ごとに備え、色ごとの画像データに基づいた画像を重畳してカラー画像を形成する画像形成装置であって、前記発光素子列の解像度仕様が第1の解像度である第1の書込ユニットと、前記発行素子列の解像度仕様が第2の解像度である第2の書込ユニットと、前記第1の解像度と第2の解像度とに基づいて、前記第1または第2の書込ユニットに対応する色の画像データにおける前記主走査方向の変倍率を設定する倍率設定部と、前記設定された変倍率に基づいて、前記画像データを主走査方向に変倍する変倍部とを備える画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−141730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、形成される画像の乱れを抑制しつつ、主走査方向における色ずれを補正できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、像保持体と、主走査方向に列状に配される発光素子から構成される第1の発光素子列と、当該主走査方向に列状に配される発光素子から構成され、前記第1の発光素子列の少なくとも一部において前記主走査方向と交差する副走査方向に重複するとともに、当該第1の発光素子列と重複する箇所において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の間隔より大きい間隔で配された第2の発光素子列と、前記主走査方向に列状に配される発光素子から構成され、前記第1の発光素子列の少なくとも一部において前記副走査方向に重複するとともに、当該第1の発光素子列と重複する箇所において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の間隔より小さい間隔で配された第3の発光素子列とを備える発光部と、前記発光素子の光出力を結像させて前記像保持体を露光し静電潜像を形成させる光学素子とを有する発光素子ヘッドを備えた露光手段と、前記露光手段により露光され前記像保持体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、前記像保持体に現像された画像を被転写体に転写する転写手段と前記画像が、それぞれ色の異なる複数の色画像の重ね合わせにより構成され、前記複数の色画像のいずれかが前記主走査方向において予め定められた基準に対して狭い場合には、当該色画像の露光において、前記第2の発光素子列に属する発光素子を当該第2の発光素子列と重複する箇所における前記第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに選択して当該色画像を拡大し、広い場合には、前記第3の発光素子列に属する発光素子を当該第3の発光素子列と重複する箇所における当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに選択して当該色画像を圧縮するとともに、当該複数の色画像のうち、少なくとも2の色画像において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに当該第2の発光素子列の発光素子を用いる箇所または当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに当該第3の発光素子列の発光素子を用いる箇所が、当該主走査方向において互いにずれるように制御する制御手段とを備えた画像形成装置である。
請求項2に記載の発明は、前記露光手段が、複数の発光素子ヘッドを有し、前記複数の色画像のそれぞれの色画像が、当該複数の発光素子ヘッドのそれぞれの発光素子ヘッドによる露光によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項3に記載の発明は、前記複数の発光素子ヘッドのそれぞれの発光素子ヘッドの前記発光部は、前記主走査方向に互いにずらして配置されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置である。
請求項4に記載の発明は、前記露光手段の発光素子ヘッドが、前記複数の色画像をそれぞれ形成する露光を時系列的に行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第1の発光素子列と前記第2の発光素子列とが重複する箇所の発光素子は、当該第1の発光素子列に属する発光素子と当該第2の発光素子列に属する発光素子とで予め定められた第1の整数比による個数で配され、当該第1の発光素子列と前記第3の発光素子列とが重複する箇所の発光素子は、当該第1の発光素子列に属する発光素子と当該第3の発光素子列に属する発光素子とで予め定められた第2の整数比による個数で配されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置である。
請求項6に記載の発明は、前記発光部は、発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子列の一部を構成する第1の発光素子群と、発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子群の一端部側に当該第1の発光素子群に属する発光素子の配される間隔より大きい間隔にて配され、前記第2の発光素子列の一部を構成する第2の発光素子群と、発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子群の他端部側に前記第1の発光素子群に属する発光素子の配される間隔より小さい間隔にて配され、前記第3の発光素子列の一部を構成する第3の発光素子群とを有する発光チップを複数備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置である。
請求項7に記載の発明は、前記制御部は、前記露光手段における前記発光素子ヘッドが前記像保持体の軸方向である前記主走査方向に対して傾いている場合に、当該発光素子ヘッドを当該主走査方向に複数の部分に分けて、時間をずらして露光する傾きの補正を行う箇所と、前記色画像の前記第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに前記第2の発光素子列の発光素子を用いる箇所、または当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに前記第3の発光素子列の発光素子を用いる箇所とが、当該主走査方向においてずれるように制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、第2の発光素子列および第3の発光素子列を用いない場合に比較して、形成される画像の乱れを抑制しつつ、主走査方向における色ずれの補正ができる。
請求項2の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、高速な画像形成ができる。
請求項3の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、拡大または縮小ができる箇所の設定がより容易になる。
請求項4の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より小型の画像形成装置が提供できる。
請求項5の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、拡大または縮小の制御がより容易になる。
請求項6の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、発光部をより容易に構成できる。
請求項7の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、形成される画質の乱れがより抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成の一例を示した図である。
【図2】発光素子ヘッドの構成を示した図である。
【図3】発光素子ヘッドにおける回路基板および発光部の上面図である。
【図4】発光チップの構成を説明した図である。
【図5】発光チップとして自己走査型発光素子アレイチップを採用した場合の信号発生回路の構成および回路基板の配線構成を示した図である。
【図6】発光チップの回路構成を説明するための図である。
【図7】発光チップにおける発光サイリスタの配列および隣接する発光チップの関係の一例を説明した図である。
【図8】倍率を縮小する倍率補正を説明した図である。
【図9】倍率を拡大する倍率補正を説明した図である。
【図10】発光チップの発光サイリスタを駆動するための信号発生回路および補正データ記憶部を説明した図である。
【図11】発光チップの発光サイリスタの動作を説明するタイミングチャートである。
【図12】発光素子ヘッドにおいて設定された倍率補正操作点αの一例について説明した図である。
【図13】発光素子ヘッドにおいて設定された倍率補正操作点αの他の一例について説明した図である。
【図14】第2の実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成の一例を示した図である。
【図15】発光素子ヘッドにおいて設定された倍率補正操作点αの一例について説明した図である。
【図16】発光素子ヘッドが感光体ドラムの主走査方向に対して傾いている場合の傾き補正および倍率補正を説明した図である。
【図17】発光素子ヘッドが感光体ドラムの主走査方向に対して湾曲している場合の傾き補正および倍率補正を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
<画像形成装置1>
図1は第1の実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成の一例を示した図である。
図1に示す画像形成装置1は、一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置である。この画像形成装置1は、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部10、画像形成プロセス部10を制御する画像出力制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3に接続され、これらから受信された画像データに対して予め定められた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0010】
画像形成プロセス部10は、予め定められた間隔を置いて並列的に配置される複数のエンジンからなる画像形成ユニット11を備えている。この画像形成ユニット11は、トナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kから構成されている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面に塗布された感光体を予め定められた電位で帯電する帯電手段の一例としての帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体を露光し静電潜像を形成する発光素子ヘッド14、発光素子ヘッド14によって形成された静電潜像を現像する現像手段の一例としての現像器15を備えている。ここで、各画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、現像器15に収納されたトナーを除いて、構成に違いはない。そして、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像を被転写体の一例としての記録用紙Pに多重転写させるために、この記録用紙Pを搬送する用紙搬送ベルト21と、用紙搬送ベルト21を駆動させるロールである駆動ロール22と、感光体ドラム12のトナー像を記録用紙Pに転写させる転写手段の一例としての転写ロール23と、記録用紙Pにトナー像を定着させる定着手段の一例としての定着器24とを備えている。
【0011】
この画像形成装置1において、画像形成プロセス部10は、画像出力制御部30から供給される各種の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。そして、画像出力制御部30による制御の下で、パーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3から受信された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、画像形成ユニット11に供給される。そして、例えば黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器13により予め定められた電位に帯電され、画像処理部40から供給された画像データに基づいて発光する発光素子ヘッド14により露光される。これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色のトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0012】
各画像形成ユニット11で形成された感光体ドラム12上の各色トナー像は、矢印B方向に移動する用紙搬送ベルト21の移動に伴って供給された記録用紙Pに、転写ロール23に印加された転写電界により、順次静電転写され、記録用紙P上に各色トナーが重畳された合成トナー像が形成される。
その後、合成トナー像が静電転写された記録用紙Pは、定着器24まで搬送される。定着器24に搬送された記録用紙P上の合成トナー像は、定着器24によって熱および圧力による定着処理を受けて記録用紙P上に画像として定着され、画像形成装置1から排出される。
ここでは、記録用紙P上に定着された画像のうち、各色トナーの画像を色画像と表記する。
【0013】
<発光素子ヘッド14>
図2は、発光素子ヘッド14の構成を示した図である。この露光手段の一例としての発光素子ヘッド14は、ハウジング61と、発光素子の一例としてのLED71(後述する図4参照)を複数備えた発光部63と、発光部63や信号発生回路100(後述の図3参照)等を搭載する回路基板62と、LED71から出射された光出力を結像させて感光体ドラム12を露光し静電潜像を形成させるための光学素子の一例としてのロッドレンズ(径方向屈折率分布型レンズ)アレイ64とを備えている。
なお、回路基板62が信号発生回路100を搭載していなくともよい。このときは、信号発生回路100は、回路基板62の外部に設けられ、発光部63を制御する制御信号などを、ケーブルなどを介して供給する。ここでは、回路基板62上に信号発生回路100が搭載されているとして説明する。
【0014】
ハウジング61は、例えば金属で形成され、回路基板62およびロッドレンズアレイ64を支持し、発光部63のそれぞれのLED71において光を出射する発光面とロッドレンズアレイ64の焦点面となるように設定されている。また、ロッドレンズアレイ64は、感光体ドラム12の軸方向(主走査方向)に沿って配置されている。
【0015】
<発光部63>
図3は、発光素子ヘッド14における回路基板62および発光部63の上面図である。
図3に示すように、発光部63は、回路基板62上に、60個の発光素子アレイチップの一例としての発光チップC1〜C60を、主走査方向(X方向)に二列に向かい合わせて千鳥状に配置して構成されている。発光チップC1〜C60の構成は同じであっても、異なっていてもよい。ここでは、発光チップC1〜C60は同じであるとして説明する。発光チップC1〜C60をそれぞれ区別しないときは、発光チップCまたは発光チップC(C1〜60)と表記する。なお、主走査方向(X方向)に直交するY方向は、副走査方向である。
さらに、回路基板62は、発光チップCの発光を制御する制御手段の一例としての信号発生回路100を搭載している。
【0016】
<発光チップC>
図4は、発光チップCの構成を説明した図である。
図4(a)は、発光チップCをLED71(本実施の形態では発光サイリスタL)の光を出射する方向から見た図である。また図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線での断面図である。
発光チップCは、基板70上に主走査方向に列状に配される複数のLED71が直線状に等間隔で配された発光素子アレイ81を備えている。また基板70の両端部に発光素子アレイ81を駆動する信号を入出力するためのボンディングパッドである電極部(Vcc端子、φ1端子、φ2端子、φS端子、φI端子)を備えている。ここでは、基板70の左端部に、Vcc端子、φ1端子が設けられている。基板70の右端部に、φ2端子、φS端子、φI端子が設けられている。発光素子アレイ81は、φ1端子とφ2端子との間に配されている。
そして、図4(b)に示すように、それぞれのLED71には光が出射する側にマイクロレンズ73が形成されている。このマイクロレンズ73により、LED71から出射した光が集光され、感光体ドラム12(図2参照)に対して、効率よく光を入射させる。
このマイクロレンズ73は、光硬化性樹脂等の透明樹脂からなり、より効率よく光を集光するためその表面は非球面形状をとることが好ましい。また、マイクロレンズ73の大きさ、厚さ、焦点距離等は、使用されるLED71の波長、使用される光硬化性樹脂の屈折率等により決定される。
なお、発光チップCの基板70の裏面にはGND端子を構成する裏面電極が設けられている。
【0017】
なお、「列状」とは、図4(a)に示したように複数の発光素子(LED71)が一直線上に配置されている場合に限らず、複数の発光素子のそれぞれの発光素子が、列方向と直交する方向に対して、互いに異なるずれ量を有して配置されている状態でもよい。例えば、発光素子の光を発生する部分である発光面を画素としたとき、それぞれの発光素子が、列方向と直交する方向に数画素分または数十画素分のずれ量をもって配置されていてもよい。また、隣接する発光素子間で交互に、または複数の発光素子毎に、ジグザグに配置されていてもよい。
【0018】
以上説明したように、LED71から出射した光がマイクロレンズ73で集光され、ロッドレンズアレイ64を介して、感光体ドラム12を露光し静電潜像を形成する。そして、静電潜像により、用紙搬送ベルト21上に画像が形成され、記録用紙Pに転写される。ここでは、1つのLED71から出射した光により、用紙搬送ベルト21上または記録用紙P上に形成された画像を画素(ドット)と呼ぶ。
【0019】
本実施の形態では、発光チップCとして自己走査型発光素子アレイ(SLED:Self−Scanning Light Emitting Device)を搭載したチップ(SLEDチップ)を使用するのが好ましい。SLEDチップは、LED71として、pnpn構造を持つ発光サイリスタ(後述する発光サイリスタL1〜L65)を用い、発光サイリスタL1〜L65を順次発光させる自己走査機能を有している。
【0020】
図5は、発光チップCとして自己走査型発光素子アレイ(SLED)チップを採用した場合の信号発生回路100の構成および回路基板62の配線構成を示した図である。
信号発生回路100には、画像出力制御部30(図1参照)より、ライン同期信号Lsync、画像データVdata、クロック信号clk、およびリセット信号RST等の各種制御信号が入力されるようになっている。そして、信号発生回路100は、これらの各種制御信号に基づいて、例えば画像データVdataの並べ替えや出力値の補正等を行い、各発光チップC1〜C60に対してそれぞれ発光信号φI1〜φI60を出力する。ここで、発光信号φI1〜φI60をそれぞれ区別しないときは、発光信号φIまたは発光信号φI(φI1〜φI60)と表記する。
本実施の形態では、各発光チップC(C1〜C60)のφI端子に、個別に発光信号φI(φI1〜φI60)が供給されるようになっている。
【0021】
また、信号発生回路100は、入力される各種制御信号に基づき、各発光チップC1〜C60のφS端子にスタート転送信号φS、φ1端子に第1転送信号φ1、そしてφ2端子に第2転送信号φ2を出力する。
【0022】
回路基板62には、各発光チップC1〜C60のVcc端子に接続される電力供給用の電源ライン101(電源電圧Vcc=−5.0V)およびGND端子に接続される接地用の電源ライン102(接地電圧GND=±0V)が設けられている。また、回路基板62には、信号発生回路100のスタート転送信号φS、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2を送信するスタート転送信号ライン103、第1転送信号ライン104、第2転送信号ライン105も設けられている。さらに、回路基板62には、信号発生回路100から発光チップC1〜C60に対して発光信号φI1〜φI60をそれぞれ出力する60本の発光信号ライン106_1〜106_60も設けられている。ここでも、発光信号ライン106_1〜106_60をそれぞれ区別しないときは、発光信号ライン106または発光信号ライン160(106_1〜106_60)と表記する。
なお、回路基板62には、60本の発光信号ライン106(106_1〜106_60)に過剰な電流が流れるのを防止するための60個の発光電流制限抵抗RIDが設けられている。また、発光信号φI(φI1〜φI60)は、ハイレベル(「H」)およびローレベル(「L」)の2状態を取りうる。そして、「L」は電源電圧Vcc(−5.0V)、「H」は接地電圧GND(±0.0V)となっている。
【0023】
図6は、発光チップCの回路構成を説明するための図である。
図6では、図4(a)と異なって、電極部(Vcc端子、φ1端子、φ2端子、φS端子、φI端子)を説明の便宜上、紙面の左側に示している。
発光チップCは、65個の転送サイリスタS1〜S65、65個の発光サイリスタL1〜L65を備えている。なお、転送サイリスタS1〜S65と発光サイリスタL1〜L65とは、pnpn構造を有している。発光サイリスタL1〜L65はpn接合における発光を利用して、発光ダイオード(LED)として機能するようになっている。なお、転送サイリスタS1〜S65もpn接合において発光しうるが、遮光などにより光が漏れないようになっている。
また、発光チップCは、64個のダイオードD1〜D64および65個の抵抗R1〜R65を備えている。さらに、発光チップCは、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2、そしてスタート転送信号φSが供給される信号線に、過剰な電流が流れるのを防止するための転送電流制限抵抗R1A、R2A、R3Aを有している。なお、発光素子アレイ81を構成する発光サイリスタL1〜L65は、図中左側からL1、L2、…、L64、L65の順で配列され、発光素子列すなわち発光素子アレイ81を構成する。また、転送サイリスタS1〜S65も、図中左側からS1、S2、…、S64、S65の順で配列され、スイッチ素子列すなわちスイッチ素子アレイ82を構成する。さらに、ダイオードD1〜D64も、図中左からD1、D2、…、D63、D64の順で配列されている。さらにまた、抵抗R1〜R65も、図中左からR1、R2、…R64、R65の順で配列されている。
ここでも、転送サイリスタS1〜S65、発光サイリスタL1〜L65をそれぞれ区別しないときは、転送サイリスタS、発光サイリスタLと表記する。また、ダイオードD1〜D64、抵抗R1〜R65をそれぞれ区別しないときは、ダイオードD、抵抗Rと表記する。
【0024】
発光素子アレイ81における発光サイリスタLの数は、予め定められた個数とすればよい。発光サイリスタLの数を例えば65個とすると、転送サイリスタSの数も65個である。同様に、抵抗Rの数も65個である。しかし、ダイオードDの数は、転送サイリスタSの数より1少ない64個である。
なお、転送サイリスタSの数は、発光サイリスタLの数より多くてもよい。
【0025】
では次に、発光チップCにおける各素子の電気的な接続について説明する。
各転送サイリスタS1〜S65のアノード端子は、GND端子に接続されている。このGND端子には、電源ライン102(図5参照)が接続され、接地(接地電圧GND(±0V))される。
【0026】
また、奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S65のカソード端子は、転送電流制限抵抗R1Aを介してφ1端子に接続されている。このφ1端子には、第1転送信号ライン104(図5参照)が接続され、第1転送信号φ1が供給される。
【0027】
一方、偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S64のカソード端子は、転送電流制限抵抗R2Aを介してφ2端子に接続されている。このφ2端子には、第2転送信号ライン105(図5参照)が接続され、第2転送信号φ2が供給される。
【0028】
また、各転送サイリスタS1〜S65のゲート端子G1〜G65は、各転送サイリスタS1〜S65に対応して設けられた抵抗R1〜R65をそれぞれ介してVcc端子に接続されている。このVcc端子には、電源ライン101(図5参照)が接続され、電源電圧Vcc(−5.0V)が供給される。
【0029】
さらに、各転送サイリスタS1〜S65のゲート端子G1〜G65は、対応する同番号の発光サイリスタL1〜L65のゲート端子に、1対1でそれぞれ接続されている。
【0030】
また、各転送サイリスタS1〜S64のゲート端子G1〜G64には、ダイオードD1〜D64のアノード端子が接続されており、これらダイオードD1〜D64のカソード端子は、それぞれに隣接する次段の転送サイリスタS2〜S65のゲート端子G2〜G65に接続されている。すなわち、各ダイオードD1〜D64は、転送サイリスタS1〜S65のゲート端子G1〜G65を挟んで直列接続されている。
【0031】
そして、ダイオードD1のアノード端子すなわち転送サイリスタS1のゲート端子G1は、転送電流制限抵抗R3Aを介してφS端子に接続されている。このφS端子には、スタート転送信号ライン103(図5参照)を介してスタート転送信号φSが供給される。
【0032】
次に、各発光サイリスタL1〜L65のアノード端子は、各転送サイリスタS1〜S65のアノード端子と同様に、GND端子に接続されている。
【0033】
また、各発光サイリスタL1〜L65のカソード端子は、φI端子に接続されている。このφI端子には、発光信号ライン106(発光チップC1の場合は発光信号ライン106_1:図5参照)が接続され、発光信号φI(発光チップC1の場合は発光信号φI1)が供給される。なお、他の発光チップC2〜C60には、それぞれ、対応する発光信号φI2〜φI60が供給される。
【0034】
<発光サイリスタLの配列と倍率補正>
次に発光素子ヘッド14における主走査方向の位置ずれについて説明を行なう。
発光素子ヘッド14への発光チップCの取り付け精度および各発光チップCにおける発光サイリスタLの形成精度には限界がある。また、上述したロッドレンズアレイ64(図2参照)には、焦点位置のばらつきが存在する。さらに、発光チップCが配される回路基板62(図2参照)に温度むらが生じることにより各発光チップCに熱膨張のむらが生じることがある。このような原因により感光体ドラム12の表面の主走査方向に対する露光範囲(主走査幅)が予め定められた範囲から変化することがある。つまり主走査方向において倍率が変化する。そのため、この主走査方向における倍率の変化を補正する必要が生じる。
【0035】
また、タンデム型と呼ばれる画像形成装置1では、発光素子ヘッド14が画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K毎に設けられている。それぞれの発光素子ヘッド14の取りつけ精度により、相対的な位置ずれが生じる。また、画像形成ユニット11毎に感光体ドラム12の表面の主走査方向に対する露光範囲(主走査幅)が異なっていることがある。これは、画像形成ユニット11間での温度の差によっても生じる。
これらにより、形成された画像に色ずれが生じる。そのため、この主走査方向における倍率の差を補正し、色ずれを抑制する必要が生じる。
なお以下、この主走査方向における倍率の変化の補正を単に「倍率補正」と言うことにする。
以下では、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K毎に設けられた発光素子ヘッド14をそれぞれ発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kと表記する。なお、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kをそれぞれ区別しないときは発光素子ヘッド14と表記する。
【0036】
本実施の形態では、以下に説明するように発光サイリスタLを配した発光チップCを使用する。
図7は、発光チップCにおける発光サイリスタLの配列および隣接する発光チップCの関係の一例を説明した図である。図7(a)は、発光チップCにおける発光サイリスタLの配列を示している。図7(b)は、隣接する発光チップCの関係を示している。
【0037】
始めに、図7(a)により、発光チップCにおける発光サイリスタLの配列について説明する。なお、発光チップC1〜C60の構成は、発光チップCと同じである。
発光チップCにおける発光サイリスタLは、3つの群に分けられている。すなわち、第1の発光素子群Iの発光サイリスタL3〜L62は、予め定められた第1の間隔P1(間隔はP1で表記する。)にて連続して配されている。
第2の発光素子群IIの発光サイリスタL1、L2は、第1の間隔P1とは異なる第2の間隔P2(間隔はP2で表記する。)にて連続して配されている。
第3の発光素子群IIIの発光サイリスタL63〜L65は、第1の間隔P1および第2の間隔P2と異なる第3の間隔P3(間隔はP3で表記する。)にて連続して配されている。
そして、第2の発光素子群IIは第1の発光素子群Iの一端部側に、第3の発光素子群IIIは第1の発光素子群Iの他端部側に設けられている。
ここで、第1の発光素子群I、第2の発光素子群II、第3の発光素子群IIIをそれぞれ区別しないときは、発光素子群と表記し、第1の間隔P1、第2の間隔P2、第3の間隔P3をそれぞれ区別しないときは、間隔Pと表記する。
【0038】
そして、間隔Pは、それぞれの発光素子群の発光サイリスタLが、予め定められた整数比による個数で配されように設定されている。本実施の形態では、第1の間隔P1の3倍(P1×3)が、第2の間隔P2の2倍(P2×2)に対応するように、第1の整数比の一例としての3:2で設定されている(P1×3=P2×2)。すなわち、第1の発光素子群Iの3個の発光サイリスタLの主走査方向の長さと、第2の発光素子群IIの2個の発光サイリスタLの主走査方向の長さとが等しい。
また、第1の間隔P1の2倍(P1×2)が、第3の間隔P3の3倍(P3×3)に対応するように、第2の整数比の一例としての設定されている(P1×2=P3×3)。すなわち、第1の発光素子群Iの2個の発光サイリスタLの主走査方向に占める長さと、第3の発光素子群IIIの3個の発光サイリスタLの主走査方向に占める長さとが等しい。
つまり、第3の間隔P3が最も小さく、第2の間隔P2が最も大きい(P3<P1<P2)。
なお、第1の発光素子群Iの発光サイリスタL、第2の発光素子群IIの発光サイリスタL、第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLのそれぞれの発光面の面積は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0039】
次に、図7(b)により、隣接する発光チップCの関係を説明する。
図7(b)では、発光チップC1、発光チップC2および発光チップC3の部分を示している。
発光チップC1と発光チップC3とは、図7(a)に示した発光チップCを紙面において2個左右に並べたものである。そして、発光チップC2も、図7(a)に示した発光チップCを紙面において、ずらして並べて、発光チップC1および発光チップC3に対して千鳥状に配したものである(図3参照)。
このとき、発光チップC1の第3の発光素子群III(発光サイリスタL63〜L65)が、発光チップC2の第1の発光素子群Iにおける発光サイリスタL3、L4に対向するように配され、発光チップC2の第2の発光素子群II(発光サイリスタL1、L2)が、発光チップC1の第1の発光素子群Iにおける発光サイリスタL60〜L62に対向するように、重複して配されている。
また、発光チップC3の第2の発光素子群II(発光サイリスタL1、L2)が、発光チップC2の第1の発光素子群Iにおける発光サイリスタL60〜L62に対向するように配され、発光チップC2の第3の発光素子群III(発光サイリスタL63〜L65)が、発光チップC3の第1の発光素子群Iにおける発光サイリスタL3、L4に対向するように、重複して配されている。
すなわち、発光部63において、発光チップC1〜C60で構成される発光部63において、それぞれの発光チップCの第1の発光素子群Iに属する発光サイリスタLが、全体として第1の発光素子列を構成する。同様に、第2の発光素子群IIに属する発光サイリスタLが、全体として第2の発光素子列に相当する。そして、第3の発光素子群IIIに属する発光サイリスタLが、全体として第3の発光素子列に相当する。
【0040】
なお、図4(a)に示すように、発光サイリスタL(発光素子アレイ81)が、基板70の長手方向の一方の側に近接して設けられている場合には、図7(b)に示すように発光チップCを配列すると、隣接する発光チップC(例えば発光チップC1と発光チップC2)間で発光サイリスタLの副走査方向(Y方向)の距離が、発光チップC2を180°回転させて配列する場合に比べ大きくなる。よって、この距離が小さいことが好ましい場合には、奇数番号の発光チップCと偶数番号の発光チップとをそれぞれ別に準備することになる。
【0041】
ここで、本実施の形態における倍率補正を説明する。
まず、主走査方向にける倍率が大きくなった場合(1以上となった場合)を説明する。この場合には、倍率を縮小する倍率補正を行う。
図8は、倍率を縮小する倍率補正を説明した図である。なお、発光チップC1と発光チップC2との境界部を例として示している。図8(a)は、倍率補正を行なわない場合の発光サイリスタLが発光する順序を説明する図である。図8(b)は、倍率補正(縮小)を行なう場合の発光サイリスタLが発光する順序を説明している。なお、画像データ#1〜#10の順に発光させるとして、画像データ#1〜#10の符号を発光サイリスタLに付した。
図8(a)に示すように、倍率補正(縮小)を行わない場合は、発光チップC1の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL58(#1)、L59(#2)、L60(#3)、L61(#4)、L62(#5)が順に発光し、次に発光チップC2の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL3(#6)、L4(#7)、L5(#8)、L6(#9)、L7(#10)が順に発光する。
【0042】
図8(b)は、倍率補正(縮小)を説明する図であって、発光チップC1の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL58(#1)、L59(#2)、L60(#3)、L61(#4)、L62(#5)を順に発光させ、次に発光チップC1の第3の発光素子群IIIの発光サイリスタL63(#6)、L64(#7)、L65(#8)を発光させる。そして、発光チップC2の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL5(#9)、L6(#10)を順に発光させる。
【0043】
すなわち、図8(a)に示す倍率補正を行わないときは、画像データ#1〜#10に対する主走査方向の長さはW1である。
これに対して、図8(b)に示す倍率補正(縮小)を行うときは、主走査方向に露光される長さはW2である。発光チップC2の発光サイリスタL7を使用しないため、長さW2は、倍率補正を行わないときの長さW1より小さい(W2<W1)。すなわち、主走査方向に露光される長さが縮小されている。
これは、発光チップCにおいて、第1の発光素子群Iの発光サイリスタLの代わりに、第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLを選択して用いたことによる。つまり、第1の発光素子群Iの第1の間隔P1に比べ、第3の発光素子群IIIにおける第3の間隔P3が小さく設定されていることによる。これにより、主走査方向の長さを、1ドット縮小できる。
ここで、第2の発光素子群IIと第3の発光素子群IIIとが対峙する2つの発光チップCの境界部(重複する箇所)であって倍率補正をする部分を、倍率補正操作点α(図8(b)に示す破線で囲まれた部分)と呼ぶ。
【0044】
なお、第2の発光素子群IIおよび第3の発光素子群IIIを備えない第1の発光素子群Iのみからなる発光チップCにおいて、倍率補正(縮小)を行うには、図8(a)において、画像データ#1〜#10のいずれかを省略することになる。例えば、発光チップC1の発光サイリスタL62(#5)の次に、発光チップC2の発光サイリスタL3を画像データ#7で発光させることになる。この方法では、画像データ#6による画素(ドット)が形成されないため、画像に乱れが生じる。
これに対し、本実施の形態では、すべての画像データにより画素(ドット)が形成されるため、画像の乱れが抑制される。
【0045】
主走査方向において倍率が小さくなった(倍率が1より小さい)場合を説明する。この場合には、倍率を拡大する倍率補正を行う。
図9は、倍率を拡大する倍率補正を説明した図である。なお、発光チップC1と発光チップC2との境界部を例として示している。図9(a)は、倍率補正を行なわない場合の発光サイリスタLが発光する順序を説明する図である。図9(b)は、倍率補正(拡大)を行なう場合の発光サイリスタLが発光する順序を説明する図である。なお、画像データ#1〜#10の順に発光させるとして、画像データ#1〜#10の符号を発光サイリスタLに付した。
図9(a)は、図8(a)と同様である。すなわち、倍率補正を行わない場合は、発光チップC1の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL58(#1)、L59(#2)、L60(#3)、L61(#4)、L62(#5)が順に発光し、次に発光チップC2の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL3(#6)、L4(#7)、L5(#8)、L6(#9)、L7(#10)が順に発光する。
【0046】
図9(b)は倍率補正(拡大)を説明する図であって、発光チップC2の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL58(#1)、L59(#2)を順に発光させ、次に発光チップC2の第2の発光素子群IIの発光サイリスタL1(#3)、L2(#4)を発光させる。そして、発光チップC2の第1の発光素子群Iの発光サイリスタL3(#5)、L4(#6)、L5(#7)、L6(#8)、L7(#9)、L8(#10)を順に発光させる。
【0047】
すなわち、図9(a)に示す倍率補正を行わないときは、画像データ#1〜#10に対して主走査方向に露光される長さはW1である。
これに対して、図9(b)に示す倍率補正(拡大)を行うときは、主走査方向に露光される長さはW3である。発光チップC2の発光サイリスタL8を使用するため、長さW3は、倍率補正を行わないときの長さW1より大きい(W1<W3)。すなわち、主走査方向に長さが拡大されている。
これは、発光チップCにおいて、第1の発光素子群Iの発光サイリスタLの代わりに、第2の発光素子群IIの発光サイリスタLを選択して用いたことによる。つまり、第1の発光素子群Iの第1の間隔P1に比べ、第2の発光素子群IIにおける第2の間隔P2が大きく設定されていることによる。これにより、主走査方向の長さを1ドット拡大できる。
ここでも、第2の発光素子群IIと第3の発光素子群IIIとが対峙する2つの発光チップCの境界部(重複する箇所)であって倍率補正をする部分を、倍率補正操作点α(図9(b)に示す破線で囲まれた部分)と呼ぶ。
【0048】
なお、第2の発光素子群IIおよび第3の発光素子群IIIを備えない第1の発光素子群Iからなる発光チップCでは、図9(a)において、画像データ#1〜#10のいずれかにおいて、発光サイリスタLを飛ばして発光させるか、2個の発光サイリスタLを連続して発光させることになる。例えば、発光チップC2の発光サイリスタL3を発光させず、発光チップC2の発光サイリスタL4を画像データ#6により発光させる。または、発光チップC2の発光サイリスタL3と発光サイリスタL4とを画像データ#6により発光させる。このようにすると、画素(ドット)が形成されなかったり(白すじ)、同じ画素(ドット)が繰り返して形成されたり(黒すじ)して、画像の乱れが生じる。
これに対し、本実施の形態では、すべての画像データが重複することなく形成されるため、画像の乱れが抑制される。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態の発光チップCは、第1の間隔P1で配された第1の発光素子群Iの発光サイリスタLに加え、第1の間隔P1より大きい第2の間隔P2で配した第2の発光素子群IIの発光サイリスタLと、第1の間隔P1より小さい第3の間隔P3で配された第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLとを備えているので、主走査方向において倍率補正(縮小および拡大)ができる。
なお、倍率補正(縮小または拡大)は、千鳥状に配された隣接する発光チップCの境界部の倍率補正操作点αで行われる。
【0050】
<発光チップCの動作>
次にこの構成で配した発光チップCの発光サイリスタLの動作の一例について説明を行なう。
図10は、発光チップCの発光サイリスタLを駆動するための信号発生回路100および補正データ記憶部111を説明した図である。
図10に示した信号発生回路100は、位置ずれ補正をするための補正データを格納する補正データ記憶部111から必要に応じ補正データを読み出す補正データ読み込み部112と、入力されるシリアル信号としての画像データVdataを並び替える画像データ並び替え部113と、画像データ並び替え部113からパラレル信号として送られる駆動信号を受信し、各発光チップC(C1〜C60)の各発光サイリスタLを駆動させるための発光信号を生成する発光信号生成部114_1〜114_60とを備える。
【0051】
図11は、発光チップの発光サイリスタの動作を説明するタイミングチャートである。
図11に示すタイミングチャートを参照しながら、感光体ドラム12を露光する発光チップCの動作を詳細に説明する。なお、図11では、図8で説明したような主走査方向を縮小することにより倍率補正する場合において、発光サイリスタLを発光させるためのタイミングチャートの例を示している。そして説明の便宜上、それぞれの発光サイリスタLを主走査方向で順に発光させる場合について説明を行なう。
図中発光チップC1、C2の発光信号φIとして発光信号φI1、φI2を図示している。なお説明をわかりやすくするため発光信号φI1、φI2については並行して図示しているが、それぞれの発光信号φI1、φI2について、このように互いに時間的に同時性を有して信号が送られるとは限らない。
【0052】
ここで初期状態においては、スタート転送信号φSがローレベル(「L」)に、第1転送信号φ1がハイレベル(「H」)に、第2転送信号φ2が「L」に、そして発光信号φI(φI1、φI2)が「H」に、それぞれ設定されているものとする。
【0053】
動作の開始に伴い、信号発生回路100から入力されるスタート転送信号φSが、「L」から「H」に変更される。これにより、発光チップCの転送サイリスタS1のゲート端子G1に「H」のスタート転送信号φSが供給される。このとき、ダイオードD1〜D64を介して、他の転送サイリスタS2〜S65のゲート端子G2〜G65にもスタート転送信号φSが供給される。ただし、各ダイオードD1〜D64でそれぞれ電圧降下が生じるため、転送サイリスタS1のゲート端子G1にかかる電圧が最も高くなる。
【0054】
そして、スタート転送信号φSが「H」となっている状態で、信号発生回路100から入力される第1転送信号φ1が、「H」から「L」に変更される。また、第1転送信号φ1が「L」に変更されてから第1の期間taが経過した後、第2転送信号φ2が、「L」から「H」に変更される。
【0055】
このように、スタート転送信号φSが「H」となっている状態において、「L」の第1転送信号φ1が供給されると、発光チップCでは、「L」の第1転送信号φ1が供給される奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S65のうち、ゲート電圧が最も高く、閾値以上となる転送サイリスタS1がターンオンする。また、このとき、第2転送信号φ2は「H」となっているので、偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S64のカソード電圧は高いままとなり、ターンオフの状態が維持される。このとき、発光チップCでは、奇数番目の転送サイリスタS1のみがターンオンした状態になる。これに伴い、奇数番目の転送サイリスタS1とゲート同士が接続された発光サイリスタL1がターンオンし、発光可能な状態におかれる。
【0056】
転送サイリスタS1がターンオンしている状態において、第2転送信号φ2が「H」に変更されてから第2の期間tbが経過した後、第2転送信号φ2が「H」から「L」に変更される。すると、「L」の第2転送信号φ2が供給される偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S64のうち、ゲート電圧が最も高く、閾値以上となる転送サイリスタS2がターンオンする。このとき、発光チップCでは、奇数番目の転送サイリスタS1とこれに隣接する偶数番目の転送サイリスタS2とが、共にターンオンした状態になる。これに伴い、既にターンオンしている発光サイリスタL1に加えて、偶数番目の転送サイリスタS2とゲート同士が接続された発光サイリスタL2がターンオンし、共に発光可能な状態におかれる。
【0057】
転送サイリスタS1および転送サイリスタS2が共にターンオンしている状態において、第2転送信号φ2が「L」に変更されてから第3の期間tcが経過した後、第1転送信号φ1が「L」から「H」に変更される。これに伴い、奇数番目の転送サイリスタS1はターンオフし、偶数番目の転送サイリスタS2のみがターンオンした状態になる。これに伴い、奇数番目の発光サイリスタL1はターンオフして発光不能な状態におかれ、偶数番目の発光サイリスタL2のみがターンオンを維持して発光可能な状態におかれる。なお、この例では、第1転送信号φ1が「H」に変更されるのに合わせて、スタート転送信号φSが「H」から「L」に変更されている。
【0058】
転送サイリスタS2がターンオンしている状態において、第1転送信号φ1が「H」に変更されてから第4の期間tdが経過した後、第1転送信号φ1が「H」から「L」に変更される。これに伴い、「L」の第1転送信号φ1が供給される奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S65のうち、ゲート電圧が最も高い転送サイリスタS3がターンオンする。このとき、発光チップCでは、偶数番目の転送サイリスタS2とこれに隣接する奇数番目の転送サイリスタS3とが、共にターンオンした状態になる。これに伴い、既にターンオンしている発光サイリスタL2に加えて、奇数番目の転送サイリスタS3とゲート同士が接続された発光サイリスタL3がターンオンし、共に発光可能な状態におかれる。
【0059】
転送サイリスタS2および転送サイリスタS3が共にターンオンしている状態において、第1転送信号φ1が「L」に変更されてから第5の期間teが経過した後、第2転送信号φ2がローレベルから「H」に変更される。これに伴い、偶数番目の転送サイリスタS2はターンオフし、奇数番目の転送サイリスタS3のみがターンオンした状態になる。これに伴い、偶数番目の発光サイリスタL2はターンオフして発光不能な状態におかれ、奇数番目の発光サイリスタL3のみがターンオンを維持して発光可能な状態におかれる。
【0060】
このように、発光チップCでは、第1転送信号φ1および第2転送信号φ2が共に「L」に設定される重なり期間を設けつつ、交互に「H」、「L」が切り換えられることにより、転送サイリスタS1〜S65が番号順に順次ターンオンする。また、これに伴い、発光サイリスタL1〜L65も番号順に順次ターンオンする。このとき、第2の期間tbでは、奇数番目の転送サイリスタ(例えば転送サイリスタS1)のみがターンオンし、第3の期間tcでは、奇数番目の転送サイリスタおよび次段に設けられた偶数番目の転送サイリスタ(例えば転送サイリスタS1および転送サイリスタS2)がターンオンし、第4の期間tdでは、偶数番目の転送サイリスタ(例えば転送サイリスタS2)のみがターンオンし、第5の期間teでは、偶数番目の転送サイリスタおよび次段に設けられた奇数番目の転送サイリスタ(例えば転送サイリスタS2および転送サイリスタS3)がターンオンし、その後、再び第2の期間tbにおいて奇数番目の転送サイリスタ(例えば転送サイリスタS3)がターンオンする、という過程を繰り返すことになる。
【0061】
一方、発光信号φI1〜φI2は、基本的に、奇数番目の転送サイリスタが単独でターンオンする第2の期間tbおよび偶数番目の転送サイリスタが単独でターンオンする第4の期間tdにおいて、「H」から「L」への変更および「L」から「H」への変更が行われる。
【0062】
ただし、発光信号φI1においては、左端の2個の転送サイリスタS1〜S2がターンオンする期間については、このような変更は行われない。これにより発光チップC1では、発光サイリスタL3、L4、…、L64、L65が、1個ずつ順番に発光する。つまり本実施の形態では、主走査方向に拡大することで位置ずれ補正をするための発光サイリスタL1〜L2は使用しないため、この2個の発光サイリスタL1〜L2を発光させない制御を行なう。一方、主走査方向で縮小することで倍率補正するための発光サイリスタL63〜L65は使用するため、これについては発光させる制御を行なう。
【0063】
また発光信号φI2においては、左端の4個の転送サイリスタS1〜S4がターンオンする期間および右端の3個の転送サイリスタS63〜S65がターンオンする期間については、対応する発光サイリスタLを発光させない制御を行なう。そして、発光チップC1の発光サイリスタL63〜L65に対向する発光サイリスタL3、L4を発光させない。これにより発光チップC2では、発光サイリスタL5、L6、…、L62を発光させる制御を行なう。
【0064】
次に、画像形成装置1において、色ずれを抑制する方法を説明する。
これまで、第1の発光素子群Iに属する発光サイリスタL、第2の発光素子群IIに属する発光サイリスタL、第3の発光素子群IIIに属する発光サイリスタLを備えた発光チップCを用いることにより、主走査方向における倍率の変化を補正することを説明した。
前述したように、タンデム型の画像形成装置1では、それぞれの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kがそれぞれ発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kを備えている。
したがって、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kの取り付け精度により、形成される画素(ドット)の位置にずれが生じることがある。
また、温度の上昇により、それぞれの発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kの倍率の変化が同じように生じたり、それぞれの発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kの倍率の変化が個別に生じたりする。
このような場合に、予め定められた基準、例えば発光素子ヘッド14のうちの一つを基準にして倍率の補正が行われる。倍率の補正は、前述した隣接した発光チップCの境界部を倍率補正操作点αとして行われる。ただし、すべての境界部を倍率補正操作点αとする必要はなく、補正する倍率に対応して倍率補正操作点αの個数を設定すればよい。
【0065】
図12は、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kにおいて設定された倍率補正操作点αの一例について説明した図である。図12(a)は、発光部63の配列を説明した図である。図12(b)は、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kにおける倍率補正操作点αを説明した図である。図12(b)では、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14KをそれぞれHead(Y)、Head(M)、Head(C)、Head(K)と表記する。
図12(a)に示すように、隣接した発光チップCの境界部の一部は倍率補正操作点αとして用いられるが、他は倍率補正操作点αとして用いられない。
そして、図12(b)に示すように、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kの操作点が、主走査方向において、ずらして設定されている。
第1の実施の形態における倍率補正では、第1の発光素子群Iの発光サイリスタLの代わりに、第1の発光素子群Iの第1の間隔P1より大きい間隔(第2の間隔P2)の第2の発光素子群IIの発光サイリスタL、または第1の発光素子群Iの第1の間隔P1より小さい間隔(第3の間隔P3)の第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLを用いる。このため、倍率補正を行った倍率補正操作点αでは、濃度のムラが生じることがある。そして、少なくとも2つの発光素子ヘッド14が同じ位置で倍率補正を行うと、濃度ムラが重畳してより目立つようになってしまう。
よって、本実施の形態では、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kのそれぞれの倍率補正操作点αの主走査方向における位置をずらして設定している。
なお、倍率補正操作点αの主走査方向における位置を「ずらす量」は、濃度ムラが重畳して倍率補正をした倍率補正操作点αにおける濃度ムラが重畳して目立たないように設定すればよい。
【0066】
例えば、発光部63が60個の発光チップC1〜C60で構成されているとすると、59か所の境界部がある。倍率補正を±10ドットの範囲で行うとすると、それぞれの発光素子ヘッド14において、20か所の操作点を設けることとなる。よって、それぞれの発光素子ヘッド14で倍率補正操作点αが重ならないように設定しうる。
なお、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kの全てにおいてそれぞれの倍率補正操作点αが互いにずれていることが好ましい。しかし、全ての発光素子ヘッド14において倍率補正操作点αが互いにずれていなくともよい。
【0067】
図13は、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kにおいて設定された倍率補正操作点αの他の一例について説明した図である。図13(a)は、発光部63の配列を説明した図である。図13(b)は、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kにおける倍率補正操作点αを説明した図である。なお、図13(a)は図12(a)と同じである。
図13(b)に示すように、それぞれの発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kは、発光チップC間の境界部が主走査方向において重ならないように、ずらして配置されている。このため、境界部に設定される倍率補正操作点αも互いにずれて設定される。
発光素子ヘッド14をずらす量は、上記の「ずらす量」と同様に、倍率補正に用いられた倍率補正操作点αにおける濃度ムラが重畳して目立つことが抑制できればよい。
【0068】
[第2の実施の形態]
図14は、第2の実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成の一例を示した図である。図14に示す画像形成装置1は、一般にマルチプル型と呼ばれる画像形成装置である。第1の実施の形態と同様のものには、同じ符号を付して、この画像形成装置1を説明する。
この画像形成装置1も、第1の実施の形態における画像形成装置1と同様に、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部10、画像形成プロセス部10を制御する画像出力制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3に接続され、これらから受信された画像データに対して予め定められた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
さらに画像形成装置1は、矢印C方向に回転可能な感光体ドラム12、矢印D方向に回転可能に配設され、感光体ドラム12上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト31に順次転写(一次転写)して保持させる一次転写部32、中間転写ベルト31上に転写された重ねトナー像を記録用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部33、二次転写された画像を記録用紙P上に定着させる定着器24、画像形成装置1の各機構部を制御する画像出力制御部30を備えている。なお、一次転写部32および二次転写部33は転写手段の一例である。
【0069】
感光体ドラム12の周囲には、感光体ドラム12の表面に塗布された感光体を予め定められた電位で帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体を露光し静電潜像を形成する発光素子ヘッド14、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色成分トナーが収容されて感光体ドラム12上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器16Y,16M,16C,16Kを回転可能に取り付けた回転式現像装置16、感光体ドラム12上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト31に転写する一次転写ロール34が配置されている。
図14において示す回転式現像装置16は、6個の現像器を備えることができるようになっている。なお、図14では、4個の現像器16Y,16M,16C,16Kを示している。
【0070】
中間転写ベルト31は、複数のロールに掛け渡されている。
二次転写部33は、中間転写ベルト31のトナー像を保持する面側に配置される二次転写ロール35と、中間転写ベルト31の他の面側に配置されるバックアップロール36とによって構成されている。
【0071】
画像形成装置1において、画像形成プロセス部10は、画像出力制御部30から供給される各種の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。そして、画像出力制御部30による制御の下で、パーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3から受信された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、画像形成プロセス部10に供給される。そして、例えば黒(K)色では、感光体ドラム12が矢印C方向に回転しながら、帯電器13により予め定められた電位に帯電され、画像処理部40から供給された画像データに基づいて発光する発光素子ヘッド14により露光される。これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は黒(K)色のトナーを内包する現像器16Kで現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色のトナー像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成されたトナー像は、感光体ドラム12と中間転写ベルト31とが接する一次転写部32において一次転写ロール34に印加される一次転写バイアスにより感光体ドラム12から中間転写ベルト31に一次転写される。
【0072】
このとき、単色画像を形成する際には、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像を直ちに記録用紙Pに二次転写するが、複数色のトナー像を重ね合わせたカラー画像を形成する場合には、感光体ドラム12上でのトナー像の形成並びに感光体ドラム12上に形成されたトナー像の一次転写の工程が色数分だけ繰り返される。例えば、四色のトナー像を重ね合わせたフルカラー画像を形成する場合、感光体ドラム12上には順次イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および黒(K)のトナー像が形成され、これら各色のトナー像は順次中間転写ベルト31に一次転写される。一方、中間転写ベルト31は、一次転写されたトナー像を保持したまま感光体ドラム12と同一周期で回転し、中間転写ベルト31上にはその一回転毎にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および黒(K)のトナー像が転写され重ねられ合成トナー像が形成される。
【0073】
このようにして中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト31の回転に伴って二次転写部33へと搬送される。一方、記録用紙Pは、予め定められたタイミングで二次転写部33に供給される。二次転写部33では、二次転写ロール35とバックアップロール36との間に働く二次転写電界の作用で、中間転写ベルト31に保持されたトナー像が記録用紙Pに静電転写(二次転写)される。その後、トナー像が転写された記録用紙Pは定着器24まで搬送される。定着器24に搬送された記録用紙P上の合成トナー像は、定着器24によって熱および圧力による定着処理を受けて記録用紙P上に定着され、画像形成装置1から排出される。
【0074】
第2の実施の形態の画像形成装置1では、発光素子ヘッド14は1つである。そして、発光素子ヘッド14の構成および発光素子ヘッド14の発光チップCの構成は第1の実施の形態と同様である。よって、これらについての説明を省略する。
【0075】
図15は、発光素子ヘッド14において設定された倍率補正操作点αの一例について説明した図である。図15(a)は、発光部63の配列を説明した図である。図15(b)は、発光素子ヘッド14における倍率補正操作点αを説明した図である。なお、図15(a)は図12(a)と同じである。
第2の実施の形態の画像形成装置1では、発光素子ヘッド14は一つである。したがって、形成された画像において色ずれすることがない。しかし、画像を主走査方向に縮小または拡大する場合には、第1の実施の形態で説明した倍率補正を行うことが好ましい。倍率補正では、画像データが失われない。
そこで、図15(b)に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および黒(K)の各色で倍率補正を行う倍率補正操作点αをずらして設けている。これにより、第1の発光素子群Iに属する発光サイリスタLの第1の間隔P1と異なる間隔の第2の発光素子群IIに属する発光サイリスタLまたは第3の発光素子群IIIに属する発光サイリスタLを使用して形成された画像における濃度ムラを抑制している。なお、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および黒(K)の各色で倍率補正を行う倍率補正操作点αが重なると、倍率補正操作点αに生じる濃度ムラが重なって現れて、画像の質が劣化する。
倍率補正操作点αをずらす量は、前述の「ずらす量」と同様に、倍率補正に用いられた倍率補正操作点αにおける濃度ムラが重畳して目立つことが抑制できればよい。
【0076】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態および第2の実施の形態では、発光素子ヘッド14は、感光体ドラム12の主走査方向に傾く(skew)こともなく、湾曲する(bow)こともなく取り付けられているとした。
しかし、第1の実施の形態における発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kまたは第2の実施の形態における発光素子ヘッド14が、取り付け精度に限界があることに起因して、感光体ドラム12の主走査方向に対して傾いた状態または湾曲した状態になる場合がある。これらの場合に、色ずれが生じることがある。なお、湾曲した状態は、部分的に見れば傾いた状態と同じである。
なお、第1の実施の形態における発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kまたは第2の実施の形態における発光素子ヘッド14と感光体ドラム12とは相対的な関係にあるので、感光体ドラム12が第1の実施の形態における発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kまたは第2の実施の形態における発光素子ヘッド14に対して傾いても同様である。
ここでは、第1の実施の形態における発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kのいずれかまたは第2の実施の形態における発光素子ヘッド14を発光素子ヘッド14として説明する。
発光素子ヘッド14が感光体ドラム12の主走査方向に対して傾いたりまたは湾曲したりした場合には、「傾き補正」が行われる。
傾き補正は、発光素子ヘッド14の発光部63を複数の部分に分けて、時系列的に発光させることで行う。すなわち、副走査方向において先の部分ほど時間的に後に発光させ、後ろになる部分ほど時間的に先に発光させることで行う。このようにすると、発光素子ヘッド14が傾いていても、形成された画像における傾きの量が小さくなる。発光部63を複数の部分に分けた境界部であって、傾き補正を行う境界部を傾き補正操作点βと呼ぶ。
【0077】
図16は、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12の主走査方向に対して傾いている場合の傾き補正および倍率補正を説明した図である。図16(a)は、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12に対して傾いた状態で画像形成した場合を説明した図である。図16(b)は、発光素子ヘッド14における傾き補正操作点βを説明した図である。図16(b)は、発光素子ヘッド14における倍率補正操作点αを説明した図である。なお、図16(c)では、発光素子ヘッド14をHeadと表記する。
図16(a)に示すように、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12の主走査方向に対して傾いている場合、主走査方向(X方向)に画素(ドット)を形成しても、形成された画素(ドット)は主走査方向(X方向)に対して傾いて形成され、副走査方向(Y方向)にずれていく。
これに対して、図16(b)に示すように、傾き補正操作点βを設定して、傾き補正を行うことで、形成された画素(ドット)は副走査方向(Y方向)に対するずれが、傾き補正をしない場合に比べ、抑制される。
しかし、図16(b)に示すように、傾き補正操作点βでは形成された画像に段差が生じている。
【0078】
そこで、第3の実施の形態において、図16(c)に示すように、傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとをずらして設けている。
もし、傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとが重なると、傾き補正によって生じた段差による濃度ムラと倍率補正による濃度ムラとが重なって、濃度ムラが目立つようになる。
傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとをずらす量は、第1の実施の形態で説明したように、形成された画像における濃度のムラが目立たない距離であればよい。
【0079】
図17は、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12の主走査方向に対して湾曲している場合の傾き補正および倍率補正を説明した図である。図17(a)は、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12に対して湾曲した状態で画像形成した場合を説明した図である。図17(b)は、発光素子ヘッド14における傾き補正操作点βを説明した図である。図17(c)は、発光素子ヘッド14における倍率補正操作点αを説明した図である。なお、図17(c)では、発光素子ヘッド14をHeadと表記する。
図17(a)に示すように、発光素子ヘッド14が感光体ドラム12の主走査方向に対して湾曲している場合、主走査方向(X方向)に画素(ドット)を形成しても、形成された画素(ドット)は主走査方向(X方向)に対して湾曲して形成され、副走査方向(Y方向)にずれる。
これに対して、図17(b)に示すように、傾き補正操作点βを設定して、傾き補正を行うことで、形成された画素(ドット)は副走査方向(Y方向)に対するずれが、傾き補正をしない場合に比べ、抑制される。
しかし、図17(b)に示すように、傾き補正操作点βでは形成された画像に段差が生じている。
【0080】
そこで、第3の実施の形態においては、図17(c)に示すように、傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとをずらして設けている。
前述したように、傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとが重なると、傾き補正によって生じた段差による濃度ムラと倍率補正による濃度ムラとが重なって、濃度ムラが目立つようになる。
傾き補正操作点βと倍率補正操作点αとをずらす量は、第1の実施の形態で説明したように、形成された画像における濃度のムラが目立たない距離であればよい。
【0081】
なお、第3の実施の形態を第1の実施の形態の画像形成装置1に適用する場合には、第1の実施の形態における発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14Kのそれぞれにおいて、倍率補正操作点αと傾き補正操作点βとをずらすとともに、発光素子ヘッド14Y、14M、14C、14K相互間においても、倍率補正操作点αと傾き補正操作点βとをずらすことが好ましい。なお、全てにおいてずらさなくとも、一部であってもよい。
また、第3の実施の形態を第2の実施の形態の画像形成装置1に適用する場合には、第2の実施の形態における発光素子ヘッド14の各色の倍率補正操作点α(Y)、α(M)、α(C)、α(K)と、傾き補正操作点βとを主走査方向においてずらすことが好ましい。なお、全てにおいてずらさなくとも、一部であってもよい。
【0082】
さらに、本実施の形態において、発光チップCについては、上述した例に限られるものではない。
例えば、1つの発光チップCに、図6に示したSLEDが2個左右反転した状態となるように設けられていてもよい。このとき、中央部には、第2の間隔P2の第2の発光素子群IIや、第3の間隔P3の第3の発光素子群IIIを設けない。すなわち、2つのSLEDの中央部では、第1の間隔P1の第1の発光素子群Iの発光サイリスタLが設けられるようにする。そして、左側のSLEDの左端に第2の発光素子群IIの発光サイリスタLを、右側のSLEDの右端に第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLが設けられるようにすればよい。
また、一方の端に第2の発光素子群IIを設けた発光チップCと、一方の端に第3の発光素子群IIIを設けた発光チップCとを用いてもよい。
【0083】
SLEDは、発光サイリスタLと転送サイリスタSとから構成されているが、他に制御サイリスタを含むものであってもよい。
【0084】
また、副走査方向に重複して配される第1の発光素子群Iの発光サイリスタLの個数と第2の発光素子群IIの発光サイリスタLの個数との整数比は、上述した例では、3:2であったが、これに限られるものではない。同様に、副走査方向に重複して配される第1の発光素子群Iの発光サイリスタLの個数と第3の発光素子群IIIの発光サイリスタLの個数との整数比は、上述した例では、2:3であったが、これに限られるものではない。整数比として、3:4または4:3などを採ることもできる。
これらの値は、発光チップCの配列において縮小または拡大する倍率によって決めればよい。
【符号の説明】
【0085】
1…画像形成装置、10…画像形成プロセス部、11、11Y、11M、11C、11K…画像形成ユニット、12…感光体ドラム、14、14Y、14M、14C、14K…発光素子ヘッド、15、16Y、16M、16C、16K…現像器、21…用紙搬送ベルト、23…転写ロール、24…定着器、31…中間転写ベルト、32…一次転写部、33…二次転写部、62…回路基板、63…発光部、64…ロッドレンズアレイ、81…発光素子アレイ、82…スイッチ素子アレイ、100…信号発生回路、111…補正データ記憶部、C1〜C60…発光チップ、S1、S2、S3、…、S65…転送サイリスタ、L1、L2、L3、…、L65…発光サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、
主走査方向に列状に配される発光素子から構成される第1の発光素子列と、
前記主走査方向に列状に配される発光素子から構成され、前記第1の発光素子列の少なくとも一部において当該主走査方向と交差する副走査方向に重複するとともに、当該第1の発光素子列と重複する箇所において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の間隔より大きい間隔で配された第2の発光素子列と、
前記主走査方向に列状に配される発光素子から構成され、前記第1の発光素子列の少なくとも一部において前記副走査方向に重複するとともに、当該第1の発光素子列と重複する箇所において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の間隔より小さい間隔で配された第3の発光素子列とを備える発光部と、
前記発光素子の光出力を結像させて前記像保持体を露光し静電潜像を形成させる光学素子とを有する発光素子ヘッドを備えた露光手段と、
前記露光手段により露光され前記像保持体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、
前記像保持体に現像された画像を被転写体に転写する転写手段と
前記画像が、それぞれ色の異なる複数の色画像の重ね合わせにより構成され、前記複数の色画像のいずれかが前記主走査方向において予め定められた基準に対して狭い場合には、当該色画像の露光において、前記第2の発光素子列に属する発光素子を当該第2の発光素子列と重複する箇所における前記第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに選択して当該色画像を拡大し、広い場合には、前記第3の発光素子列に属する発光素子を当該第3の発光素子列と重複する箇所における当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに選択して当該色画像を圧縮するとともに、当該複数の色画像のうち、少なくとも2の色画像において、当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに当該第2の発光素子列の発光素子を用いる箇所または当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに当該第3の発光素子列の発光素子を用いる箇所が、当該主走査方向において互いにずれるように制御する制御手段と
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記露光手段が、複数の発光素子ヘッドを有し、前記複数の色画像のそれぞれの色画像が、当該複数の発光素子ヘッドのそれぞれの発光素子ヘッドによる露光によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の発光素子ヘッドのそれぞれの発光素子ヘッドの前記発光部は、前記主走査方向に互いにずらして配置されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記露光手段の発光素子ヘッドが、前記複数の色画像をそれぞれ形成する露光を時系列的に行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の発光素子列と前記第2の発光素子列とが重複する箇所の発光素子は、当該第1の発光素子列に属する発光素子と当該第2の発光素子列に属する発光素子とで予め定められた第1の整数比による個数で配され、当該第1の発光素子列と前記第3の発光素子列とが重複する箇所の発光素子は、当該第1の発光素子列に属する発光素子と当該第3の発光素子列に属する発光素子とで予め定められた第2の整数比による個数で配されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記発光部は、
発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子列の一部を構成する第1の発光素子群と、
発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子群の一端部側に当該第1の発光素子群に属する発光素子の配される間隔より大きい間隔にて配され、前記第2の発光素子列の一部を構成する第2の発光素子群と、
発光素子が列状に連続して配され、前記第1の発光素子群の他端部側に前記第1の発光素子群に属する発光素子の配される間隔より小さい間隔にて配され、前記第3の発光素子列の一部を構成する第3の発光素子群と
を有する発光チップを複数備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記露光手段における前記発光素子ヘッドが前記像保持体の軸方向である前記主走査方向に対して傾いている場合に、当該発光素子ヘッドを当該主走査方向に複数の部分に分けて、時間をずらして露光して傾きの補正を行う箇所と、前記色画像の前記第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに前記第2の発光素子列の発光素子を用いる箇所、または当該第1の発光素子列に属する発光素子の代わりに前記第3の発光素子列の発光素子を用いる箇所とが、当該主走査方向においてずれるように制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−71260(P2013−71260A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209797(P2011−209797)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】