説明

画像形成装置

【課題】 像担持体及び帯電手段の振動音が低減され、しかも、その両者の共振の低減によって像担持体の帯電が安定する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光体ドラム1と、帯電ローラ2と、露光装置4と、受光装置5と、コントローラ50と、を備え、コントローラ50が、第1振動速度M1>初期振動速度Yと判断すると、調整機構3の駆動を制御して、第1押圧力N1から、第2押圧力N2に向かって帯電ローラ2による押圧力を変更する画像形成装置100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体及び帯電手段を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、感光体ドラム(像担持体)に対して帯電ローラ(帯電手段)を接触させるものがある。この接触方式で帯電させる構成には、非接触方式であるコロナ帯電装置と比較してオゾン層の発生が大幅に少ないことや、装置の構成が比較的シンプルでコンパクトな設計ができる利点がある。その一方で、接触方式で帯電させる構成には、帯電動作中に高周波の騒音(帯電音)が発生する問題もある。
【0003】
接触方式で帯電させる構成では、帯電ローラに印加する電圧として、直流電流に交流電流を重畳させて感光体ドラムの表面の帯電の均一性を高める。そして、交流電流が重畳されると、帯電ローラの表面の極性と感光体ドラムの表面の極性が短時間に何度も入れ替わり、両者の間にはクーロン力による引力や斥力が生じ、前述の帯電音が発生する。
【0004】
このような帯電音を抑制するために、例えば、感光体ドラムの内部におもりやゴム等の防振部材が挿入することが考えられる。また、特許文献1や特許文献2には、帯電ローラの構造、材質、寸法によって、帯電音を減少させる構成が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、カオス発生器によって帯電ローラに印加する交流電圧の周波数に不定期な変化(ゆらぎ)を与えることにより、帯電音(共振)を防止する構成が開示されている。また、特許文献4には、画像形成時の形成画像にモアレ像干渉縞が発生することを防止できる範囲で、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数を極力低く設定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−43985号公報
【特許文献2】特開平6−11945号公報
【特許文献3】特開平6−186826号公報
【特許文献4】特開平5−11571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、感光体ドラムの内部に防振部材を挿入する構成、特許文献1又は2に記載される構成では、感光体ドラムの製造工数が増大する(製造コスト高を招く)上に、帯電ローラや感光体ドラムの経時変化(経時劣化)により帯電音が発生する問題があった。すなわち、感光体ドラムの膜厚摩耗や帯電ローラの表面摩耗、ガタ等の経時変化によって感光体ドラムや帯電ローラの弾性共振周波数が変動する。その結果、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数の4倍或いは6倍といった周波数の高調波と共振し、非常に耳障りな帯電音が発生するという問題点が生じ得た。この場合,劣化した部材を交換する以外に帯電音の解消策がない。
【0008】
また、特許文献3に記載される構成では,印加交流電圧の周波数にゆらぎが与えられるため、感光体ドラムの均一な帯電が損なわれるという問題点があった。さらに、特許文献3及び4に記載される構成では、いずれも帯電音の発生状況に応じて対応をとるものでないため、帯電音を有効に抑制できない状況が生じたり、無用に印加交流電圧の周波数が変更されて画像品質に悪影響を与えたりするという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、像担持体及び帯電手段の振動音を低減し、しかも、その両者の共振の低減によって像担持体の帯電を安定させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、画像を担持する像担持体と、交流電圧が印加されて前記像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体の振動速度を検知する検知手段と、前記帯電手段が前記像担持体を押圧する押圧力を調整する調整手段と、前記検知手段及び前記調整手段に接続されるコントローラと、を備え、前記検知手段が検知する前記像担持体の振動速度を振動速度実測値とし、前記像担持体のカウンタが0のときに前記検知手段が検知する前記像担持体の振動速度を振動速度初期値とした場合に、前記コントローラは、前記振動速度実測値>前記振動速度初期値と判断すると、前記調整手段の駆動を制御して、前記振動速度初期値に対応する第1押圧力から、前記振動速度初期値と同一の振動速度となる前記振動速度実測値に対応する第2押圧力に向かって前記帯電手段による押圧力を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検知手段が像担持体の振動速度を検知するので、帯電手段が振動することで生じる像担持体の振動音の発生状況が精度良く検知される。また、コントローラは、振動速度実測値>振動速度初期値と判断すると調整機構が帯電手段の押圧力を第1の押圧力から第2の押圧力へと変更させるので、像担持体及び帯電手段の共振がより確実に低減されるように制御する。これらの結果、像担持体及び帯電手段の振動音が低減され、しかも、その両者の共振の低減によって像担持体の帯電が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】感光体ドラムの振動速度及び音圧の関係を示すグラフである。
【図3】帯電ローラの押圧力及び感光体ドラムの振動速度の関係を示すグラフである。
【図4】帯電ローラの押圧力及び感光体ドラムの振動速度の関係を示すグラフである。
【図5】帯電ローラの押圧力及び感光体ドラムの振動速度の関係を示すグラフである。
【図6】帯電ローラの押圧力及び感光体ドラムの振動速度の関係を示すグラフである。
【図7】調整機構の構成を示す断面図である。
【図8】(a)は、コントローラが初期振動データ(閾値)を検知するフローを示すフローチャートであり、(b)は、コントローラが印刷動作を繰り返し行った後に、振動検知から押圧力調整を行うまでのフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した電子写真方式を採用したレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部51が設けられる。画像形成部51は、画像を担持する『像担持体』である感光体ドラム1、『転写装置』である転写ローラ7等を含む。
【0015】
図1に示されるように、感光体ドラム1の周囲には、矢印R1に示す回転方向に沿って順に、帯電ローラ2、露光装置4、現像ローラ6を含む現像装置、転写ローラ7、クリーニング装置8が配置されている。また、帯電ローラ2の外方には、帯電ローラ2を感光体ドラム1に向かって押圧する押圧力を調整する調整機構3が配置されている。さらに、転写ローラ7よりも記録材Pの搬送方向の下流側には、定着装置9が配置されている。また、感光体ドラム1に対向して、かつ、露光装置4の近傍には、露光装置4が感光体ドラム1に光を照射したときの反射光を受光する受光装置5が配置されている。こうした画像形成に関与する各々の機器について、以下、順に詳述していく。
【0016】
感光体ドラム1は、負帯電特性の有機光半導体である感光層を有した円筒状(ドラム型)の電子写真感光体で構成される。この感光体ドラム1は、円筒状(ドラム型)の電子写真感光体である。感光体ドラム1は、中心軸(不図示)を中心に矢印方向に所定の速度(例えば230mm/secのプロセススピード(周速度))で回転駆動される。
【0017】
『帯電手段』である『帯電部材』としての帯電ローラ2は、交流電圧が印加されて感光体ドラム1を帯電するものである。帯電ローラ2は、接触帯電方式の一般的なローラであり、その軸体、その外周に形成される導電性弾性体層、その外周に軟化剤移行防止層、さらにその外周に形成される抵抗調整層(あるいは誘電層)、及び、保護層から構成されている。軸体としては、特に限定するものではなく、例えば金属製の円柱体からなる芯金や内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体が用いられる。帯電ローラ2は感光体ドラム1の回転に伴い従動回転し、電源から所定のバイアス電圧(直流電圧及び交流電圧)を印加することで回転する感光体ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。
【0018】
『調整手段』である調整機構3は、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力を調整する機構である。この調整機構3に関しては、図7を参照しつつ後述する。また、『検知手段』である露光装置4及び受光装置5は、感光体ドラム1の振動速度を検知する。すなわち、『検知手段』は、感光体ドラム1の表面に露光して静電像を形成する『露光手段』である露光装置4と、露光装置4が感光体ドラム1の表面に露光した反射光から感光体ドラム1の振動速度を検知する『受光手段』である受光装置5と、を有する。
【0019】
露光装置4は、帯電ローラ2により帯電処理された感光体ドラム1にレーザ光Lを照射する半導体レーザを備えたレーザビームスキャナである。具体的には、画像形成装置にネットワークケーブルを介して接続されたホストコンピュータから送信されてくる画像信号に基づいて、露光装置4はレーザ光Lを出力する。このレーザ光Lは、帯電処理済みの感光体ドラム1の表面を、露光装置4において主走査方向に沿って露光する。感光体ドラム1が回転している間にこの主走査方向に沿った露光を繰り返すことにより、感光体ドラム1の表面の帯電面のうち、レーザ光Lが照射された部分の電位が低下し、画像情報に対応した静電潜像が形成される。また、この露光装置4は特定の波長(例えば770〜780nm)のレーザ光Lで感光体ドラム1の表面に露光する。
【0020】
受光装置5は、露光装置4により帯電処理された感光体ドラム1に照射されたレーザ光Lを受光する素子をそなえたフォトダイオードである。フォトダイオードは光起電力効果を利用したものであり、内部のPN接合面に光を照射すると、再結合とは逆のプロセスで電子とホールの対ができ、その時に流れる電流から光の有無、波長等を検出するものである。なお、受光装置により本例における振動検知を行うが、振動検知の詳細については後に詳述する。受光装置5は、感光体ドラム1の所定の回転数毎に感光体ドラム1の振動速度を検知する
【0021】
コントローラ50は、装置本体100Aの内部機器の駆動を制御する。従って、コントローラ50は、前述の露光装置4、受光装置5、及び、調整機構3に接続される。なお、帯電ローラ2には、電圧印加装置2aが接続され、現像ローラ6には、電圧印加装置6aが接続され、転写ローラ7には、電圧印加装置7aが接続されている。
【0022】
図2は、感光体ドラム1の振動速度、及び、音圧の関係を示すグラフである。感光体ドラム1を帯電させるために接触式の帯電ローラ2に交流電圧を印可すると、感光体ドラム1が印加交流電圧の1〜4倍の周波数で振動することで帯電音となり、非常に耳障りな音となる。この交流電圧を印可したときの感光体ドラム1の振動及び音圧を測定した場合には、演算部でFFT処理を行うと印加交流電圧の1〜4倍の周波数成分まで振動及び音圧が検知される。そして、図2に示されるように、感光体ドラム1の振動速度に比例して帯電音の音圧が大きくなる。
【0023】
したがって、感光体ドラム1の振動速度が検知されると、マイク等を装置本体100Aに配置しなくても感光体ドラム1から発生する帯電音の大きさが検知できる。また、感光体ドラム1の振動を測定することで帯電音の発生が検知できれば、ノイズ等の影響が少ない状態で帯電音のみを精度良く検知することができる。
【0024】
図3は、帯電ローラ2及び感光体ドラム1が初期状態において、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力及び感光体ドラム1の振動速度の関係を示すグラフJである。すなわち、このグラフJは、感光体ドラム1等を含むカートリッジを装置本体100Aに装着する初期の状態のものである。帯電音の大きさは、構成する部品が同じである以上、印加周波数及び印加電圧のピークトゥピーク(Vpp)によって変化することが解っている。また、帯電ローラ2の押圧力と感光体ドラム1の振動速度は、帯電ローラ2や感光体ドラム1の摩耗等による接触状態の変化によっても大きく変化することが分かった(図4を参照して後述する)。
【0025】
帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力が変化すると、帯電ローラ2と感光体ドラム1の接触状態が変化することで、感光体ドラム1の振動速度すなわち帯電音が変化する。図3によると、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力が200gfから235gfへと増大する領域では、感光体ドラム1の振動速度が微妙に小さくなっている。また、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力が235gfから500gfへと増大すると、感光体ドラム1の振動速度が大きくなっている。
【0026】
なお、グラフ上の数値は、感光体ドラム1に接触する他の機器の接触具合等によって若干異なる場合もある。例えば、感光体ドラム1の周囲に配置される現像ブレード、転写ローラ7、クリーニングブレード等の影響があり得る。
【0027】
カートリッジが装置本体100Aに組み込まれると、コントローラ50は、以下のように制御する。即ち、調整機構3が、感光体ドラム1の回転が所定のカウンタになる毎に、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力を変更すると共に、露光装置4及び受光装置5は、調整機構3が変更する帯電ローラ2による押圧力毎に感光体ドラム1の振動速度を検知する。そして、コントローラ50は、グラフJに示す特性を認識し、記憶することができるようになっている。ただし、ここでは、コントローラ50の記憶部には、帯電ローラ2による押圧力が300gfで、感光体ドラム1の振動速度が3mm/sである点が初期値ポイントGとして設定されている。
【0028】
図4は、感光体ドラム1のカウンタが10k枚に到達した中途状態において、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力及び感光体ドラム1の振動速度の関係を示すグラフKである。すなわち、このグラフKは、画像形成された記録材P(紙等)の枚数が初期状態から10k枚(10000枚)に到達した状態のときのものである。なお、図4中にも前述の初期値ポイントGを示している。図3を参照しつつ前述したプリント動作がまだであるカートリッジの初期状態と、図4に示すプリント動作が寿命の半分程度まで行われたカートリッジの中途状態とでは、帯電ローラ2による押圧力が同じでも、感光体ドラム1の振動速度に違いがある。
【0029】
これは、感光体ドラム1の膜厚摩耗や帯電ローラ2の表層摩耗、カートリッジ全体の経時変化による部材劣化により、同じ押圧力でも感光体ドラム1と帯電ローラ2の表面状態により、交流電圧の印加によって共振振動が変化しているためである。こうした感光体ドラム1の振動を一定以下に保つためには、個々の部材劣化に応じて適切な押圧力に変化させる必要がある。
【0030】
図4の初期値ポイントGは、前述したように、装置本体100Aにカートリッジが取り付けられ、帯電ローラ2が感光体ドラム1に接触させられて初期値としてコントローラ50に設定されたポイントである。
【0031】
図4のグラフKは、カートリッジが装置本体100Aに装着された後に感光体ドラム1が画像形成する回転数が所定のカウンタ(ここでは、10k枚)になったときのものである。帯電ローラ2が感光体ドラム1に接触した状態で、コントローラ50は、帯電ローラ2による押圧力を変更していき、その各々における感光体ドラム1の振動速度を測定する。即ち、感光体ドラム1の回転が所定のカウンタになると、調整機構3が、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力を変更しつつ、露光装置4及び受光装置5は、調整機構3が変更する帯電ローラ2による押圧力毎に感光体ドラム1の振動速度を検知する(グラフK)。
【0032】
図4のグラフKから、帯電ローラ2の押圧力が200gfから500gfへと減少するに従って、感光体ドラム1の振動速度が減少することが分かる。なお、図3〜図5中の横軸となる帯電ローラ2の押圧力は、帯電ローラ2の片側の押圧力であり、一般的に、帯電ローラ2の片側の押圧力は300gf〜400gfに設定される。
【0033】
コントローラ50は、グラフKのデータから第1中途値ポイントK1及び第2中途値ポイントK2を認識する。第1中途値ポイントK1は、帯電ローラ2による第1押圧力N1が300kfで、感光体ドラム1の第1振動速度M1が4mm/sのポイントである。この第1中途値ポイントK1は、帯電ローラ2による押圧力が初期値ポイントGと同一のポイントである。第2中途値ポイントK2は、帯電ローラ2による第2押圧力N2が375gfで、感光体ドラム1の第2振動速度M2が3mm/sのポイントである。この第2中途値ポイントK2は、感光体ドラム1の振動速度が初期値ポイントGと同一のポイントである。
【0034】
帯電ローラ2による押圧力が初期値ポイントGと同様に300gfに設定された状態で感光体ドラム1による画像形成でカウンタが所定枚数(例えば10k枚)以上になる場合を想定する。この場合に、『振動速度実測値』である第1中途値ポイントK1の第1振動速度M1(4mm/s)は、『振動速度初期値』である初期値ポイントGの初期振動速度Y(3mm/s)よりも大きい状態となる。なお、後述していく押圧力の調整は、感光体ドラム1による画像形成でカウンタが所定枚数(例えば10k枚)以上になる毎に行う。
【0035】
なお、初期押圧力X(300gf)は、初期振動速度Y(3mm/s)のときに帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力に相当する。また、『振動速度実測値』である第1振動速度M1(4mm/s)は、露光装置4及び受光装置5が検知する感光体ドラム1の振動速度である。『振動速度初期値』である初期振動速度Y(3mm/s)は、感光体ドラム1のカウンタが0のときに露光装置4及び受光装置5が検知する感光体ドラム1の振動速度である。
【0036】
コントローラ50は、前述のように『振動速度実測値』である第1振動速度M1>『振動速度初期値』である初期振動速度Yと判断する。そして、コントローラ50は、調整機構3の駆動を制御して、第1振動速度M1(4mm/s)に対応する第1押圧力N1(300gf)から、第1振動速度M1と同一の振動速度となる『振動速度実測値』である第2振動速度M2(3mm/s)に対応する第2押圧力N2(375gf)に向かって帯電ローラ2による押圧力を変更する。簡単に言えば、感光体ドラム1の第1振動速度M1(4mm/s)が初期振動速度Y(3mm/s)以上である場合は、感光体ドラム1の振動速度を初期振動速度Y(3mm/s)に近づけるために、帯電ローラ2による押圧力を第1押圧力N1(300gf)から第2押圧力N2(375gf)に向かって増加させるのである。こうして、感光体ドラム1の振動速度が減少することで、帯電音はユーザが気にならないように減少する。
【0037】
なお、図4のグラフによると、第1押圧力N1が第2押圧力N2よりも小さく、第1振動速度M1が第2振動速度M2よりも大きくなっている。この場合、コントローラ50は、第1振動速度M1(4mm/s)>初期振動速度Y(3mm/s)と判断すると、調整機構3の駆動を制御して、第1の押圧力N1(300gf)から第2の押圧力N2(375gf)に向かって帯電ローラ2による押圧力を増加させる。こうして、第2振動速度M2(3mm/s)と初期振動速度Y(3mm/s)とを一致させる。
【0038】
図5は、感光体ドラム1のカウンタが10k枚に到達した中途状態において、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力及び感光体ドラム1の振動速度の関係を示すグラフKである。ただし、この図5は図4と比べると、第2中途値ポイントK2の第2振動速度M2が初期値ポイントGの初期振動速度Yよりも小さくなっている点で異なる。
【0039】
この場合、コントローラ50は、第1振動速度M1(4mm/s)>初期振動速度Y(3mm/s)と判断すると、調整機構3の駆動を制御して、第1の押圧力N1(300gf)から第2の押圧力N2(400gf)に向かって帯電ローラ2による押圧力を増加させる。こうして、第2振動速度M2(2.7mm/s)を初期振動速度Y(3mm/s)よりも小さくする。このような場合も、一応、第2振動速度M2は、第1振動速度M1から初期振動速度Y(3mm/s)に向かって低減されたことになる。
【0040】
図6は、感光体ドラム1のカウンタが10k枚に到達した中途状態において、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力及び感光体ドラム1の振動速度の関係を示すグラフKである。ただし、この図6は図4と比べると、第2中途値ポイントK2の第2振動速度M2及び第2押圧力N2は、第1中途値ポイントK1の第1振動速度M1及び第1押圧力N1よりも小さくなっている。図4及び図5では、グラフKは右肩下がりであったが、図6では、グラフKは右肩上がりになっている。このように、帯電ローラ2による押圧力、及び、感光体ドラム1の振動速度の関係は、用いられる帯電ローラ2や感光体ドラム1の材質や形状等の特徴によって異なる場合もある。
【0041】
この場合、コントローラ50は、第1振動速度M1(4mm/s)>初期振動速度Y(3mm/s)と判断すると、調整機構3の駆動を制御して、第1の押圧力N1(300gf)から第2の押圧力N2(230gf)に向かって帯電ローラ2による押圧力を減少させる。こうして、第2振動速度M2(3mm/s)と初期振動速度Y(3mm/s)とを一致させる。このような場合も、第2振動速度M2は、第1振動速度M1から初期振動速度Y(3mm/s)に向かって低減されたことになる。
【0042】
図7は、調整機構3の構成を示す断面図である。図7に示される調整機構3は、感光体ドラム1の回転軸方向の端部の近傍に配置され、装置本体100Aに支持されている。調整機構3は支持装置36を有する。
【0043】
支持装置36には、モータ35の駆動力により回転する偏心カム34が回転自在に支持されている。偏心カム34にはモータ35(ステッピングモータ)が接続されている。このモータ35は、コントローラ50によって偏心カム34が所定角度だけ回転するように構成されている。
【0044】
また、支持装置36には、支持押圧基盤33が上下方向に移動自在に支持されている。『軸押圧部材』である支持押圧基盤33は、偏心カム34の動作に従って帯電ローラ2の『軸』である芯金部30を感光体ドラム1へと押圧可能な部材である。この支持押圧基盤33は、偏心カム34の外周面に当接する凸部33aを有している。支持押圧基盤33には上下方向に沿って貫通孔が形成されている。この貫通孔には、支持部材31の基部31aが挿通されている。こうして、支持押圧基盤33には、支持部材31が上下方向に移動自在に支持されることになっている。
【0045】
さらに、支持部材31における感光体ドラム1の側の端部には、支持部31bが形成されている。支持部31bは、基部31aよりもその軸径方向に出っ張って形成されている。支持押圧基盤33の下面と支持部31bとの間には圧縮バネ32が配置されている。この『付勢部材』である圧縮バネ32は、支持押圧基盤33を基準として支持部材31を感光体ドラム1の方へと付勢して、帯電ローラ2の芯金部30を感光体ドラム1へと付勢部材である。
【0046】
また、支持部31bには上方向に凹む凹部31cが形成されている。この凹部31cには感光体ドラム1の芯金部30の端部が係合している。なお、この支持装置36は、感光体ドラム1のもう一方の端部の近傍にも配置されている(不図示)。そして、これら一対の支持装置36によって帯電ローラ2が回転自在に支持されると共に、感光体ドラム1の外周面に当接するように構成されている。
【0047】
コントローラ50は、モータ35に接続されている。そして、コントローラ50は、モータ35を駆動して、偏心カム34が所定角度だけ回転して、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力Fを制御するようになっている。
【0048】
ここで、図1に戻って、感光体ドラム1の振動速度を検知する構成に関して説明する。図1に示されるように、感光体ドラム1の表面に対向して露光装置4が配置されており、この露光装置4と感光体ドラム1の回転方向で隣接するように受光装置5が配置されている。この受光装置5は、感光体ドラム1の回転開始後に帯電ローラ2に交流電圧を印可し、露光装置4が感光体ドラム1に特定の波長を持ったレーザを露光したときに、その反射光を受光するものである。
【0049】
このときに、露光装置4から特定の波長で照射されたレーザは、感光体ドラム1の振動の影響を受け、波長が変化した状態で反射されるが、これは光のドップラー効果によるものである。受光装置5では、初期の波長に対する波長の変化量を読み取り、そこから感光体ドラム1の振動状態(感光体ドラム1の変位量)を検知し、この感光体ドラム1の変位量を演算部でFFT処すると、印加交流電圧の1〜4倍の周波数成分まで振動速度が検知される。
【0050】
以下に、図8(a)及び図8(b)を参照しつつ、本実施例における帯電音の測定のための感光体ドラム1の振動速度の検知から、帯電ローラ2が感光体ドラム1を押圧する押圧力を調整機構3が調整するまでの流れを、説明する。
【0051】
図8(a)は、コントローラ50が初期値(閾値)を検知するフローを示すフローチャートである。コントローラ50は、カートリッジが装置本体100Aに装着された後に(ステップ1、以下「ステップ」を「S」という)、最初の起動を行った際に、感光体ドラム1の回転を開始し、帯電ローラ2に直流電圧及び交流電圧を印加させる(S2)。そして、感光体ドラム1に向かって露光装置4から特定波長のレーザ光が照射される。コントローラ50は、受光装置5によってそのレーザ光の反射光を受光させ、波長の変化量から感光体ドラム1の振動速度を検知し、この振動速度を初期振動データ(振動速度の閾値)として記憶部へ保存する(S3)。
【0052】
図8(b)は、コントローラ50が印刷動作を繰り返し行った後に、振動検知から押圧力調整を行うフローを示すフローチャートである。コントローラ50は、記録材Pの10k枚目を含む印刷動作を検知して印刷動作を終了し(S11)。コントローラ50は、その10k枚目の検知をフラグとして、感光体ドラム1を回転し、帯電ローラ2に直流電圧及び交流電圧を印可させ(S12)、露光装置4から感光体ドラム1への特定波長のレーザ光を照射させる。
【0053】
コントローラ50は、受光装置5によってレーザ光の反射光を受光して、波長の変化量から検知された感光体ドラム1の振動速度を検知する(S13)。そして、コントローラ50は、図8(a)を参照しつつ説明した初期設置時に検知して記憶部に記憶した初期振動データ(振動速度の閾値)(初期値)、及び、現在計測されている計測振動データ(振動速度の計測値)(実測値)を比較する(S13)。
【0054】
コントローラ50は、計測振動データが初期振動データを超えているか否かを判断する(S14)。コントローラ50は、S14の判断の結果、YESの場合には、帯電ローラ2の押圧力を変更できる規定範囲内(例えば、200gf〜500gf)で押圧力を変更し、それぞれの押圧力における振動速度を計測する(S15)。そして、コントローラ50は、帯電ローラ2の押圧力を初期振動データに最も近い押圧力に変更する(S16)。コントローラ50は、S14の判断の結果、NOの場合には、帯電ローラ2の押圧力は変化させない(S17)。
【0055】
実施例の構成によれば、受光装置5が感光体ドラム1の振動速度を検知するので、帯電ローラ2が振動することで生じる振動音の発生状況が精度良く検知される。また、コントローラ50は、第1振動速度M1>初期振動速度Yと判断すると調整機構3が帯電ローラ2の押圧力を第1の押圧力N1から第2の押圧力N2へと変更させるように制御する。即ち、感光体ドラム1の振動状態に応じて帯電ローラ2の押圧力を適正に制御することとなる。そのために、感光体ドラム1及び帯電ローラ2の共振がより確実に低減される。これらの結果、感光体ドラム1及び帯電ローラ2の振動音が低減され、しかも、その両者の共振の低減によって感光体ドラム1の帯電が安定する。ひいては、周波数の変更による画像品質への悪影響を防止することもできる。
【0056】
なお、前述のコントローラ50の制御は、帯電音の悪化が、個々の部材の劣化及び状態変化によって発生することから画像形成回数が所定回数になったとき(前回の制御が行われてからの印刷動作枚数が10k枚後)のタイミングで実施されることが好ましい。使用環境が変化したときのそれぞれのタイミングで実施するのである。
【0057】
また、実施例では、振動検知手段として露光装置4の反射光を受光する受光装置5を用いたが、この構成に限定されない。感光体ドラム1で発生した振動を検知できる構成であれば、他の構成を用いても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 調整機構(調整手段)
4 露光装置(検知手段)
5 受光装置(検知手段)
50 コントローラ
M1 第1振動速度(振動速度実測値)
Y 初期振動速度(振動速度初期値)
N1 第1押圧力
N2 第2押圧力
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持する像担持体と、
交流電圧が印加されて前記像担持体を帯電する帯電手段と、
前記像担持体の振動速度を検知する検知手段と、
前記帯電手段が前記像担持体を押圧する押圧力を調整する調整手段と、
前記検知手段及び前記調整手段に接続されるコントローラと、を備え、
前記検知手段が検知する前記像担持体の振動速度を振動速度実測値とし、前記像担持体のカウンタが0のときに前記検知手段が検知する前記像担持体の振動速度を振動速度初期値とした場合に、
前記コントローラは、
前記振動速度実測値>前記振動速度初期値と判断すると、
前記調整手段の駆動を制御して、
前記振動速度初期値に対応する第1押圧力から、前記振動速度初期値と同一の振動速度となる前記振動速度実測値に対応する第2押圧力に向かって前記帯電手段による押圧力を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体の回転が所定のカウンタになる毎に、
前記調整手段は前記帯電手段が前記像担持体を押圧する押圧力を変更すると共に、
前記検知手段は前記調整手段が変更する前記帯電手段による押圧力毎に前記像担持体の振動速度を検知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1押圧力>前記第2押圧力である場合には、
前記コントローラは、
前記振動速度実測値>前記振動速度初期値と判断すると、
前記調整手段の駆動を制御して、前記第1押圧力から前記第2押圧力に向かって前記帯電手段による押圧力を増加させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知手段は、
前記像担持体の表面に露光して静電像を形成する露光手段と、
前記露光手段が前記像担持体の表面に露光した反射光から前記像担持体の振動速度を検知する受光手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記調整手段は、
ステッピングモータの駆動力により回転する偏心カムと、
前記偏心カムの動作に従って前記帯電手段の軸を前記像担持体へと押圧可能な軸押圧部材と、
前記軸押圧部材を前記像担持体へと付勢して前記帯電手段の軸を前記像担持体へと付勢する付勢部材と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80100(P2013−80100A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219870(P2011−219870)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】