説明

画像形成装置

【課題】少なくとも特定の幅の被記録媒体に対して、画像形成後に無端ベルトから急に剥離されるのを抑制して剥離放電を抑制すること。
【解決手段】図示省略したプロセスカートリッジの下を通って転写搬送ベルト12Cに搬送されたA4サイズ等の用紙はガイド面21Aに案内されて定着器5へ搬送されるが、ハガキは凹部21Bを通り、コロ21Fの下を抜けて、ガイド面22Aにより定着器5に案内される。コロ21Fがハガキの浮きを抑制するので、ハガキが転写搬送ベルト12Cから急に剥離されるのを抑制して、当該ハガキに形成された画像が剥離放電で乱れるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトによって被記録媒体を搬送しながらその被記録媒体に電子写真方式で画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、画像が形成された被記録媒体を定着手段に案内して画像を加熱定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無端ベルトによって被記録媒体としての用紙を搬送しながら電子写真方式でその用紙に画像を形成する画像形成装置では、画像形成後の用紙を前記無端ベルトから定着器に搬送することにより、その用紙に形成された画像を加熱定着している。また、この種の画像形成装置では、用紙を無端ベルトから定着器まで案内するガイドの後端部を揺動可能にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その場合、用紙の排出経路に柔軟性を持たせることができ、腰の強い用紙が無端ベルトと定着器との間で撓んでもその撓みを許容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−197652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前述のような画像形成装置では、転写ベルトとして機能する用紙搬送ベルト(無端ベルト)に用紙を吸着させて搬送しながら、転写電流を利用して電子写真方式による画像形成がなされるので、画像形成後の用紙を無端ベルトから急に剥離させると、いわゆる剥離放電が生じる。すなわち、例えば前記ガイドによって定着器に向けて剥離された用紙と無端ベルトとの間で放電が起こり、当該用紙に形成されていた画像が乱れてしまうのである。特許文献1のように、用紙の排出経路に柔軟性を持たせることは、その態様によっては剥離放電の抑制に有効な場合があるが、特許文献1ではそのような考察はなされていない。
【0005】
また、前述のような剥離放電は、A4等の一般的な上質紙に比べて、ハガキや各種カードなどのように腰の強い特定幅の用紙の方が生じやすい。そこで、本発明は、少なくとも特定の幅の被記録媒体に対して、画像形成後に無端ベルトから急に剥離されるのを抑制して剥離放電を抑制することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、複数のローラ間に架設されて回転駆動されることにより被記録媒体を搬送する無端ベルトと、前記無端ベルトによって搬送される被記録媒体に転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成する画像形成手段と、前記無端ベルトによる被記録媒体の搬送面に対し、当該搬送面の延長面から被記録媒体の剥離方向に片寄った位置に設けられ、前記画像形成手段によって被記録媒体に形成された画像を加熱定着する定着手段と、前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、前記定着手段に案内するガイド手段と、を備え、前記ガイド手段は、前記延長面に対して前記定着手段方向に傾斜して設けられ、前記無端ベルトによる搬送方向に直交する幅が第1の幅である第1被記録媒体を前記定着手段に案内する第1のガイドと、前記第1のガイドを少なくとも前記第1の幅の両端を残して被記録媒体の搬送方向に沿って凹ませる若しくは切り欠くことによって構成され、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2被記録媒体を、前記延長面に対する前記定着手段方向への用紙案内角度が前記第1のガイドよりも小さくなるようにして案内する第2のガイドと、前記第1のガイドと前記第2のガイドとの前記剥離方向中間の位置に設けられ、前記第2のガイドに案内される第2被記録媒体の浮きを抑制し、かつ、前記第1のガイドの表面には突出しない押さえ部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の画像形成装置では、無端ベルトによって搬送される際に転写電流を利用して電子写真方式で画像形成手段により画像が形成された被記録媒体は、ガイド手段によって定着手段に案内される。定着手段は、無端ベルトによる被記録媒体の搬送面に対し、当該搬送面の延長面から被記録媒体の剥離方向に片寄った位置に設けられ、その定着手段に案内された被記録媒体の画像を加熱定着する。
【0008】
ここで、ガイド手段は、第1のガイドと第2のガイドと押さえ部とを備えており、前記無端ベルトによる搬送方向に直交する幅が第1の幅である第1被記録媒体と前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2被記録媒体とを異なる経路で定着手段に案内する。なお、前記第1の幅とは、A4の上質紙等、比較的腰の弱い被記録媒体に対応する幅で、第2の幅とは、名刺,ハガキ,グリーティングカード等、比較的腰の強い被記録媒体に対応する幅である。この第1の幅,第2の幅は、当該画像形成装置が使用される国,地域の生活習慣や当該画像形成装置自身の大きさに応じて、設計時に予め設定される。
【0009】
第2被記録媒体を定着手段に案内する第2のガイドは、第1のガイドを少なくとも前記第1の幅の両端を残して被記録媒体の搬送方向に沿って凹ませる若しくは切り欠くことによって構成され、前記延長面に対する定着手段方向への用紙案内角度が第1のガイドよりも小さくなるようにして案内する。このため、第2被記録媒体は、少なくとも先端部が第2のガイドによって案内されている間は、第1のガイドに案内される第1被記録媒体よりも緩やかに無端ベルトから剥離される。
【0010】
また、第1のガイドと第2のガイドとの前記剥離方向中間の位置には押さえ部が設けられ、第2のガイドに案内される第2被記録媒体の浮きを抑制する。このため、第2被記録媒体の先端が定着手段まで案内されることによって当該先端が更に前記剥離方向に移動した場合でも、押さえ部が第2被記録媒体の浮きを抑制することにより、第2被記録媒体が無端ベルトから急に剥離されるのを抑制することができる。従って、本発明では、腰の強い第2被記録媒体が無端ベルトから急に剥離されるのをその搬送工程全体に亘って抑制することができ、剥離放電を良好に抑制することができる。
【0011】
一方、前記押さえ部は、第1のガイドの表面には突出せず、第1のガイドによる第1被記録媒体の案内に対して障害とならない。また、前記第2のガイドは、第1のガイドに、第1の幅の両端を残して形成されている。このため、第1被記録媒体は、第1のガイドによって良好に定着手段に案内される。なお、剥離放電のみを考慮した場合は、第1のガイドも第2のガイドと同様の傾斜で一体に構成しておき、第2の幅に対応する箇所に押さえ部を設けておけばよいが、その場合、第1被記録媒体の画像形成領域に押さえ部が当接して画像が乱れる場合がある。これに対して、本発明では、押さえ部が第1のガイドの表面に存在しないので、押さえ部の影響を受けることなく、第1被記録媒体に対する画像形成も良好に行える。
【0012】
なお、本発明は、前記第2のガイドの前記無端ベルトから離れた側に前記第2のガイドと一体または別体に連接され、前記第1のガイドの前記延長面に対する傾斜角よりも大きい傾斜角で第2被記録媒体を前記定着手段に案内する補助ガイドを、更に備えてもよい。この場合、第2のガイドによって定着手段方向への用紙案内角度が第1のガイドよりも小さくなるようにして搬送された被記録媒体を、押さえ部との対向部を通過後に、補助ガイドによって第1のガイドより大きい傾斜角で定着手段に案内することができるので、第1のガイドによって案内される第1被記録媒体と同様に、第2被記録媒体を定着手段に向かって良好に案内することができる。なお、この場合、第2被記録媒体の先端は、補助ガイドに差し掛かると前記大きい傾斜角に沿って移動することになるが、第2被記録媒体の押さえ部よりも無端ベルト側の部分は押さえ部によって傾斜角が大きくなるのを抑制されている。このため、前述のように、第2被記録媒体が無端ベルトから急に剥離されるのを抑制することができる。
【0013】
また、前記押さえ部の前記延長面側の端面は、前記延長面に沿って搬送される第2被記録媒体における前記無端ベルトに当接しなかった側の面に当接してもよい。その場合、第2被記録媒体は、少なくとも押さえ部よりも無端ベルト側では、前記延長面(無端ベルトによる被記録媒体の搬送面の延長面)に沿って搬送される。従って、その場合、第2被記録媒体の画像形成時における剥離放電を一層良好に抑制することができる。
【0014】
また、前記押さえ部は、前記第2のガイドを構成する凹み若しくは切り欠き部分の前記幅方向両側側面から突出して前記第2被記録媒体における前記無端ベルトに当接しなかった側の面に当接してもよい。この場合、凹み若しくは切り欠き部分の側面に押さえ部を突出させたことにより、装置の構成を一層簡略化することができる。
【0015】
そして、その場合、前記押さえ部は、前記第2被記録媒体における画像形成領域の外側に当接し、前記幅方向の回転軸を中心に回転するコロであってもよい。その場合、押さえ部が幅方向の回転軸を中心に回転するコロであるため、第2被記録媒体の搬送に対して抵抗にならず、その押さえ部も画像形成領域の外側に当接するので、第2被記録媒体に対して一層良好に画像を形成することができる。
【0016】
また、前記押さえ部は、前記幅方向の回転軸を中心に回転し、外周に突起を有するスターホイールであってもよい。その場合、第2被記録媒体の画像形成領域の内側に当接させても画像を乱す虞がなく、剥離放電をより確実に抑制することができると共に、第2被記録媒体に対する画像形成をも良好に行える。
【0017】
また、前記押さえ部は、前記第2のガイドを構成する凹み若しくは切り欠き部分の前記幅方向両側側面から突出して前記第2被記録媒体の幅方向の端縁に当接する傾斜面を有するものであってもよい。すなわち、例えば前記押さえ部は、前記第2のガイドを構成する凹み若しくは切り欠き部分の前記幅方向両側側面から突出して、当該両側面の前記幅方向中心に向かって前記剥離方向に傾斜した傾斜面を有するものであってもよい。その場合、第2被記録媒体の幅方向の端縁に当接させても端縁近くまで形成された画像を乱す虞がなく、剥離放電を確実に抑制することができると共に、第2被記録媒体に対する画像形成をも良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を概略的に表す中央断面図である。
【図2】その画像形成装置の用紙案内機構を定着器及びベルトユニットと共に右前側から見た斜視図である。
【図3】その用紙案内機構,定着器,ベルトユニットの構成を表す断面図である。
【図4】その用紙案内機構の構成を表す図3のA部拡大図である。
【図5】他の実施形態の用紙案内機構の構成を表す側面図及び斜視図である。
【図6】更に他の実施形態の用紙案内機構の構成を表す側面図及び斜視図である。
【図7】更に他の実施形態の用紙案内機構の構成を表す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[画像形成装置の概略構成]
次に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、本実施形態は、本発明に係る画像形成装置を電子写真方式の画像形成装置に適用したものである。図1は本実施形態に係る画像形成装置1の構成を概略的に表す中央断面図である。なお、以下の説明において、図1における左側を前方、右側を後方とする。
【0020】
図1に示すように、被記録媒体の一例としての用紙やOHPシート(以下、用紙Pという)に画像を形成する画像形成部2(画像形成手段の一例)は、4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3C、露光器4、定着器5(定着手段の一例)、ベルトユニット10等から構成されている。なお、本実施形態では、画像形成部2として、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナー(現像剤)に対応した4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cによって形成された4種類のトナー像(現像剤像)を、用紙Pの上で重ね合わせることにより用紙Pにカラー画像を形成するダイレクトタンデム方式を採用している。
【0021】
画像形成部2の下方に装着された給紙カセット6に載置されている複数枚の用紙Pのうち、給紙機構(フィーダ部)7により拾い上げられた積層方向最上位に位置する用紙Pは、紙粉取りローラ8にて紙粉が除去された後、レジストローラ9まで搬送される。レジストローラ9は、駆動ローラ9Aとピンチローラ9Bとから構成され、用紙Pの斜行を矯正して所定のタイミングでベルトユニット10へ送り出す。そして、4つのプロセスカートリッジ3K等は、ベルトユニット10の用紙搬送面側において、用紙Pの搬送方向に沿って上流からプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの順に直列に配設されている。
【0022】
このため、ベルトユニット10上を搬送される用紙Pには、4種類のトナー像が順次、転写されていき、用紙Pへの転写が完了したトナー像は、定着器5にて加熱されて用紙Pに定着する。そして、定着器5から排出された用紙Pは、その搬送方向が上方側に転向された後、画像形成装置1の上端面側に設けられた排紙トレイ1Aに排出される。
【0023】
なお、各プロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cには、トナー像が担持される感光体ドラム3A、及び、感光体ドラム3Aを帯電させる帯電器(図示省略)等が収納されている。そして、帯電した感光体ドラム3Aを露光器4にて露光して感光体ドラム3Aの外周面に静電潜像を形成した後、トナーを感光体ドラム3Aに供給すると、感光体ドラム3Aの外周面にトナー像が担持(形成)され、そのトナー像が用紙Pに転写される。
【0024】
また、定着器5は、トナーを加熱してトナー像を用紙Pに定着させる加熱ローラ5Aと、搬送されてくる用紙Pを挟んで加熱ローラ5Aと反対側に配設されて用紙Pを加熱ローラ5A側に押し付ける加圧ローラ5Bとを備えている。
【0025】
ベルトユニット10は、前述したように、4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの各感光体ドラム3Aに対向する位置に配設されて用紙Pを搬送するものである。具体的には、ベルトユニット10は、感光体ドラム3Aの回転軸と平行な回転軸を有する駆動ローラ12A及び従動ローラ12B、並びに駆動ローラ12Aと従動ローラ12Bとの間に架設された転写搬送ベルト12C(無端ベルトの一例)等から構成されており、用紙Pは、転写搬送ベルト12C上に載置された状態(吸着された状態)で搬送されていく。なお、駆動ローラ12Aは、装置本体(図示省略した本体フレーム)に設けられたモータ(図示省略)から動力の供給を受けて転写搬送ベルト12Cを回転駆動し、従動ローラ12Bは転写搬送ベルト12Cの回転と共に駆動ローラ12Aに従動して回転する。
【0026】
また、各プロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3Cの各感光体ドラム3Aと対向する転写搬送ベルト12Cの張架面は、転写搬送ベルト12Cのうち用紙Pを搬送する平面状の搬送面とされている。この搬送面は、必ずしも水平である必要はなく、多少傾斜していてもよいが、本実施形態では、水平面とほぼ一致する。また、ベルトユニット10の、各感光体ドラム3Aと半導電性の転写搬送ベルト12Cを挟んで対向する位置には、一定の転写電流を通電されることによって感光体ドラム3Aに担持されたトナー像を用紙Pに転写させる転写ローラ12Eが、それぞれ設けられている。
【0027】
ところで、前述の4つのプロセスカートリッジ3K,3Y,3M,3C、及び、ベルトユニット10は、外観意匠面を構成する筐体1Cに覆われた装置本体(本体フレーム)に着脱可能に装着されている。そして、筐体1Cのうち排紙トレイ1Aが設けられたトップカバー1Fは、筐体1Cに揺動(開閉)可能に組み付けられており、このトップカバー1Fを上方側に開放することにより、4つのプロセスカートリッジ3K、3Y、3M、3Cが交換可能となる。
【0028】
また、筐体1Cの前方に設けられたフロントカバー1Gは、一部が手差しトレイ60として揺動(開閉)可能に組み付けられており、二点鎖線で示すようにこの手差しトレイ60を開放することにより、給紙カセット6を介さずに装置の前方から用紙Pをレジストローラ9に供給することができる。更に、筐体1Cの後方にはリアカバー1Hが揺動(開閉)可能に組み付けられており、二点鎖線で示すようにこのリアカバー1Hを開放することにより、定着器5を通過した用紙Pを装置の後方に排出することができる。ハガキ等、腰の強い用紙Pに対する画像形成がなされる場合は、用紙Pに大きな湾曲が加えられるのを抑制するため、ユーザはこの手差しトレイ60,リアカバー1Hを開放することにより、用紙Pの供給及び排出を行う場合が多い。
【0029】
なお、図示省略したが、給紙カセット6,手差しトレイ60のいずれも、用紙Pの位置を前記搬送方向に直交する幅方向両側から規制する一対の用紙ガイドを備えており、その用紙ガイドは、幅方向中心に対して対称に移動するいわゆるセンタレジとなっている。このため、給紙カセット6または手差しトレイ60からレジストローラ9を介してベルトユニット10に搬送される用紙Pは、そのサイズに拘わらず中心の位置は一定である。
【0030】
[用紙案内機構の詳細]
プロセスカートリッジ3Cよりも用紙搬送方向下流側の転写搬送ベルト12Cから定着器5に至る用紙Pの搬送経路には、次のような用紙案内機構20(ガイド手段の一例)が設けられている。以下、この用紙案内機構20の構成について説明する。
【0031】
図2は、その用紙案内機構20を定着器5及びベルトユニット10と共に右前側から見た斜視図であり、図3は、その用紙案内機構20,定着器5,ベルトユニット10の構成を表す中央断面図である。図2に示すように、ベルトユニット10は、前述の駆動ローラ12A,従動ローラ12B,転写ローラ12Eを軸方向両側から支持するベルトユニットフレーム組13を備えている。なお、ベルトユニットフレーム組13は、左右2個のサイドフレームが各部で連結されて、上下方向に薄手かつ平面視略矩形状の枠体形状を形成している。図3に示すように、ベルトユニット10と定着器5との間には、第1シュート部21と第2シュート部22とからなる用紙案内機構20が設けられている。
【0032】
図4は、この用紙案内機構20の構成を詳細に表す図3のA部拡大図である。図4に示すように、定着器5の加熱ローラ5Aと加圧ローラ5Bとのニップ部は、前記搬送面の延長面から用紙Pの剥離方向に片寄った位置に設けられている。これは、次のような事情によるものである。
【0033】
すなわち、この種の画像形成装置1では、加熱ローラ5A,加圧ローラ5Bによる用紙Pの搬送速度を、転写搬送ベルト12Cによる用紙Pの搬送速度よりも小さくすることがなされる場合がある。これは、画像形成中の用紙Pが加熱ローラ5A,加圧ローラ5Bに引っ張られて、いわゆる色ずれが生じるのを抑制するためである。このような場合、転写搬送ベルト12Cの表面から加熱ローラ5Aと加圧ローラ5Bとのニップ部に至る途中で用紙Pに撓みが生じる場合があるが、定着器5を前述のように片寄った位置に設けることで、用紙Pの搬送経路を予め湾曲させ、用紙Pを当該湾曲方向に安定して撓ませるためである。
【0034】
第1シュート部21は、駆動ローラ12Aの直近後方かつ前記搬送面の下方から前記ニップ部に向けて、用紙PのうちでもA4サイズ等の一般的な上質紙としての用紙P1(第1被記録媒体の一例:図4参照)を前記ニップ部に案内するガイド面21A(第1のガイドの一例)を備えている。このガイド面21Aには、幅方向中央に、図2に示すように、ハガキの短辺の長さに相当する幅に亘って凹部21Bが用紙搬送方向に沿って形成され、その凹部21Bの底面21C(第2のガイドの一例)は、前記搬送面の延長面よりも低い水平な平面状に構成されている。また、凹部21Bの両側の側面21Eからは、前記幅方向に沿った中心軸回りに回転自在な円筒状のコロ21F(押さえ部の一例)がそれぞれ突出している。図4に示すように、一対のコロ21Fは、側面視で、前記延長面とガイド面21Aとに同時に接する円形に構成されており、底面21Cは下方からコロ21Fと対向する位置まで後方に向かって延びている。
【0035】
第2シュート部22は、コロ21F及び底面21Cの下方から、加熱ローラ5Aと加圧ローラ5Bとのニップ部に向けて、用紙Pのうちでもハガキ等の用紙P2(第2被記録媒体の一例)を案内するガイド面22A(補助ガイドの一例)を備えている。すなわち、前述のように、凹部21Bはハガキの短辺の長さに相当する幅を有しており、かつ、転写搬送ベルト12Cの幅方向中央に設けられているので、縦長の姿勢で搬送されたハガキ等の用紙P2は、凹部21Bの内側を通過する。そして、幅方向両端がコロ21Fの下側端面に接触しながら更に搬送されて、先端がガイド面22Aに当接する。ガイド面22Aは、そのような用紙P2を、前記ニップ部に案内するのである。
【0036】
なお、A4サイズ,リーガルサイズ,レターサイズ等の一般的な上質紙としての用紙P1は、幅方向両側にハガキよりも大きいので、幅方向両端が前述のようにガイド面21Aに案内されて、前記ニップ部に搬送される。このとき、前述のように、当該用紙P1の搬送経路にコロ21Fが突出していないので、用紙P1は良好に定着器5に案内される。
【0037】
[実施形態の効果及びその変形例]
以上説明したように、本実施形態では、ハガキのように腰の強い用紙P2はガイド面21Aに沿って前記ニップ部に案内されるのではなく、そのまま前記延長面に沿って搬送された後、ガイド面22Aによって前記ニップ部に案内される。また、用紙P2の先端がガイド面22Aに案内されて上昇するときも、コロ21Fが用紙P2の浮きを抑制する。このため、本実施形態では、用紙P2が転写搬送ベルト12Cから急に剥離されるのを抑制して、用紙P2に形成された画像が剥離放電で乱れるのを抑制することができる。
【0038】
特に、手差しトレイ60を開放して用紙P2としてのハガキを2回挿入することにより、当該ハガキの両面に画像を形成する場合、2面目の画像形成時にはハガキが1面目の側を円弧の中心とするように反っているので、一層剥離放電が起こりやすい。これに対して、本実施形態では、前述のように用紙P2が転写搬送ベルト12Cから急に剥離されるのを抑制することができるので、そのような場合にも良好に剥離放電が生じるのを抑制することができる。
【0039】
更に、本実施形態では、コロ21Fが回転することにより、用紙P2の浮きを抑制しながらもその搬送に抵抗が加わるのを良好に抑制することができる。しかも、そのコロ21Fは凹部21Bの側面21Eに設けられているので、装置の構成を一層簡略化することができる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、前記実施形態では、第1シュート部21のガイド面21Aを、A4サイズ等の一般的な上質紙としての用紙P1を案内する第1のガイドとして構成し、そのガイド面21Aの幅方向中央に凹部21Bを形成して、ハガキ等の用紙P2を案内する第2のガイドを構成している。すなわち、凹部21Bの底面21Cを転写搬送ベルト12Cのうち用紙Pを搬送する平面状の搬送面よりも低い水平な平面状に構成して、前記搬送面に沿って搬送されるハガキ等の用紙P2が、そのまま水平方向に向かって搬送されるようにしているが、例えば、凹部21Bの代わりに、ガイド面21Aの幅方向中央を切り欠くことにより、用紙P2を前記搬送面に沿ってそのまま水平方向に搬送されるようにするための案内するための第1のガイドとして構成してもよい。但し、凹部21Bを形成し、その凹部21Bの底面21Cを第1のガイドとして構成した場合には、例えば、用紙P2の先端が下向きにカールしているようなときであっても、その先端を底面21Cの表面で受け止めて第2シュート部22のガイド面22Aに円滑に案内することかできる。また、用紙P2が転写搬送ベルト12Cから外れたときには、その用紙P2の後端を底面21Cの表面で受け止めて、下方向への急激な抑制することかでき、第2シュート部22のガイド面22Aに円滑に案内することかできる。更に、底面21Cは、例えば、転写搬送ベルト12C側の端縁を傾斜させたり、丸みを持たせたりして、用紙P2の先端が衝突しないように構成しておけば、必ずしも前記搬送面よりも低く形成しておく必要はないし、また、水平ではなく、その後端側(定着器5側)の部分が高くなるように若干傾斜するように形成してもよい。
【0041】
また、第1シュート部,第2シュート部は揺動可能であってもよい。図5(A)は、そのような構成を採用した用紙案内機構120の構成を模式的に表す側面図であり、図5(B)はその斜視図である。
【0042】
図5に示すように、この用紙案内機構120では、前記実施形態の第1シュート部21と同様にガイド面121A,凹部121B,底面121C,側面121E,コロ121Fを備えた第1シュート部121は、前端に設けられた軸121Pを中心に揺動可能である。また、前記実施形態の第2シュート部22と同様にガイド面122Aを備えた第2シュート部122も、前端(下端)に設けられた軸122Pを中心に揺動可能である。そして、第1シュート部121は圧縮コイルバネ126によって、第2シュート部122は圧縮コイルバネ127によって、それぞれ上方に付勢されている。
【0043】
このように構成された用紙案内機構120では、用紙Pの腰の強さに応じて、第1シュート部121,第2シュート部122が圧縮コイルバネ126,127の付勢力に抗して揺動する。従って、腰の強い用紙Pも円滑に定着器5へ案内することができる。
【0044】
また、図6(A)の側面図、及び、図6(B)の斜視図に模式的に示す用紙案内機構220のように、前述のガイド面121A、凹部121B、底面121C、側面121E、コロ121F、及び、ガイド面122Aは、一体のシュート部223に設けてもよい。このシュート部223も、前端に設けられた軸223Pを中心に揺動可能で、圧縮コイルバネ227によって上方に付勢されている。この用紙案内機構220では、用紙案内機構120とほぼ同様の効果を、一層簡単な構成によって得ることができる。
【0045】
また、押さえ部としては、コロ21F等以外にも種々の形態が考えられる。例えば、コロ21Fの代わりに、回転しない円柱状の突起を突設してもよい。そして、突起としては、図7(A)に示すように、下面321Gが傾斜した突起321Fを凹部21Bの側面21Eに突設することも考えられる。すなわち、下面321Gは、一対の側面21Eの幅方向中心に向かって上方に傾斜している。このため、図7(A)に示すように、下面321Gは用紙P2の幅方向両端縁にのみ当接し、用紙P2の表面には当接しない。コロ21F等では、そのコロ21Fを用紙P2の画像形成領域外に設ける必要があったが、このような突起321Fを利用すれば、用紙P2の全面に画像を形成することができる。
【0046】
また、図7(B)に示すように、幅方向中心寄りの端面が小径の円錐台状のコロ421Fを、一対の側面21Eに回転自在に設けてもよい。その場合、前述のように用紙P2の全面に画像が形成できる効果に加えて、コロ421Fが回転するので用紙P2の搬送に抵抗が加わるのを一層良好に抑制することができる。
【0047】
更に、前記押さえ部は、前記幅方向の回転軸を中心に回転し、外周に突起を有するスターホイールであってもよい。その場合、当該スターホイールが用紙P2の画像形成領域に当接しても画像を乱す虞がなく、剥離放電をより確実に抑制することができると共に、用紙P2に対する画像形成をも良好に行える。
【0048】
また、前記各実施形態では、凹部21B等の幅をハガキが通過可能な幅としているが、この幅は、名刺,グリーティングカード等、比較的腰の強い被記録媒体に対応する幅であればよい。この種の幅は、当該画像形成装置が使用される国,地域の生活習慣や当該画像形成装置自身の大きさに応じて、設計時に予め適宜設定される。更に、第2シュート部22等は必ずしも設けなくてもよく、加圧ローラ5Bの径が十分に大きく用紙P2の先端を下方から巻き込んでいく場合は省略することができる。その場合も、コロ21Fによってそのコロ21Fよりも用紙搬送方向上流側では用紙P2がほぼ水平に配設されるので、剥離放電を良好に抑制することができる。
【0049】
更に、図1〜図4に示される実施形態においても、図5に示される各実施形態と同様に、第1シュート部21及び第2シュート部22を図示の位置から下側に退避できるように揺動自在に構成すると共に、圧縮コイルバネ126,127と同様の圧縮コイルバネを付設することによって、常には、図示位置に弾性的に保持されるようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1…画像形成装置 1H…リアカバー 2…画像形成部
3A…感光体ドラム 5…定着器 5A…加熱ローラ
5B…加圧ローラ 10…ベルトユニット 12C…転写搬送ベルト
12E…転写ローラ 20,120,220…用紙案内機構
21,121…第1シュート部 21A,22A,121A,122A…ガイド面
21B,121B…凹部 21C,121C…底面 21E,121E…側面
21F,121F,421F…コロ 22,122…第2シュート部
60…手差しトレイ 121P,122P,223P…軸
126,127,227…圧縮コイルバネ 223…シュート部
321F…突起 321G…下面 P,P1,P2…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラ間に架設されて回転駆動されることにより被記録媒体を搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトによって搬送される被記録媒体に転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成する画像形成手段と、
前記無端ベルトによる被記録媒体の搬送面に対し、当該搬送面の延長面から被記録媒体の剥離方向に片寄った位置に設けられ、前記画像形成手段によって被記録媒体に形成された画像を加熱定着する定着手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、前記定着手段に案内するガイド手段と、
を備え、
前記ガイド手段は、
前記延長面に対して前記定着手段方向に傾斜して設けられ、前記無端ベルトによる搬送方向に直交する幅が第1の幅である第1被記録媒体を前記定着手段に案内する第1のガイドと、
前記第1のガイドを少なくとも前記第1の幅の両端を残して被記録媒体の搬送方向に沿って凹ませる若しくは切り欠くことによって構成され、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2被記録媒体を、前記延長面に対する前記定着手段方向への用紙案内角度が前記第1のガイドよりも小さくなるようにして案内する第2のガイドと、
前記第1のガイドと前記第2のガイドとの前記剥離方向中間の位置に設けられ、前記第2のガイドに案内される第2被記録媒体の浮きを抑制し、かつ、前記第1のガイドの表面には突出しない押さえ部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2のガイドの前記無端ベルトから離れた側に前記第2のガイドと一体または別体に連接され、前記第1のガイドの前記延長面に対する傾斜角よりも大きい傾斜角で第2被記録媒体を前記定着手段に案内する補助ガイドを、
更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押さえ部の前記延長面側の端面は、前記延長面に沿って搬送される第2被記録媒体における前記無端ベルトに当接しなかった側の面に当接することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記押さえ部は、前記第2のガイドを構成する凹み若しくは切り欠き部分の前記幅方向両側側面から突出して前記第2被記録媒体における前記無端ベルトに当接しなかった側の面に当接することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記押さえ部は、前記第2被記録媒体における画像形成領域の外側に当接し、前記幅方向の回転軸を中心に回転するコロであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記押さえ部は、前記幅方向の回転軸を中心に回転し、外周に突起を有するスターホイールであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記押さえ部は、前記第2のガイドを構成する凹み若しくは切り欠き部分の前記幅方向両側側面から突出して前記第2被記録媒体の幅方向の端縁に当接する傾斜面を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−83712(P2013−83712A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221964(P2011−221964)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】