説明

画像形成装置

【課題】付着物の飛散を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、用紙に画像を形成する画像形成動作と、保持ローラ55に保持された付着物を感光体ドラム53に移動させ、感光体ドラム53を介してベルトクリーニングユニット90に回収させる回収動作とを実行可能に構成されている。バイアス制御手段120は、画像形成動作のときに、感光体ドラム53の表面に付着した付着物が保持ローラ55に移動するような第1のバイアスを印加し、回収動作のときに、保持ローラ55に保持された付着物が感光体ドラム53に移動するような第2のバイアスを印加する。速度制御手段130は、回収動作の実行中に、バイアス制御手段120が保持ローラ55に第2のバイアスを印加する制御を始めてから少なくとも第1の時間、保持ローラ55を、画像形成動作のときの第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムや無端状のベルトなどの表面に付着した付着物を一時的に保持するローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体ドラムの表面に付着した残留トナーなどの付着物を一時的に保持するクリーニングローラなどのローラを備えた画像形成装置が知られている。このような画像形成装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、画像形成時には、付着物をクリーニングローラで一時的に回収し、画像形成終了後に、付着物を感光体ドラムに再付着させ、感光体ドラムおよび搬送ベルトを介してベルトクリーナで回収するように構成されている。
【0003】
そして、以上のような過程において、クリーニングローラには、付着物を回収するときには、付着物が感光体ドラムからクリーニングローラに移動するようなバイアスが印加され、付着物を感光体ドラムに再付着させるときには、付着物がクリーニングローラから感光体ドラムに移動するようなバイアスが印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クリーニングローラに印加するバイアスを、付着物をクリーニングローラに回収するときのバイアスから、付着物を感光体ドラムへ再付着させるときのバイアスに切り替えたとき、クリーニングローラの付着物を保持する力が低下するため、クリーニングローラの回転によって付着物がクリーニングローラの周囲に飛散してしまう。そして、飛散した付着物は、例えば、クリーニングローラの周辺の壁や帯電器などに付着し、そこからさらに用紙などに付着することで、画像品質を低下させたり、装置内を汚したりする可能性がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、付着物の飛散を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、感光体ドラムと、感光体ドラムの表面に付着した付着物を保持可能な保持ローラと、保持ローラに印加するバイアスを制御するバイアス制御手段と、保持ローラの回転速度を制御する速度制御手段とを備え、記録シートに画像を形成する画像形成動作と、保持ローラに保持された付着物を感光体ドラムに移動させ、感光体ドラムを介して回収手段に回収させる回収動作とを実行可能に構成されている。
バイアス制御手段は、画像形成動作のときに、感光体ドラムの表面に付着した付着物が保持ローラに移動するような第1のバイアスを印加し、回収動作のときに、保持ローラに保持された付着物が感光体ドラムに移動するような第2のバイアスを印加するように構成されている。
速度制御手段は、回収動作の実行中に、バイアス制御手段が保持ローラに第2のバイアスを印加する制御を始めてから少なくとも第1の時間、保持ローラを、画像形成動作のときの第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるように制御する。
【0008】
また、前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、感光体ドラムと、感光体ドラムに対向配置された無端状のベルトと、ベルトの表面に付着した付着物を保持可能な保持ローラと、保持ローラに印加するバイアスを制御するバイアス制御手段と、保持ローラの回転速度を制御する速度制御手段とを備え、記録シートに画像を形成する画像形成動作と、保持ローラに保持された付着物をベルトに移動させ、ベルトを介して回収手段に回収させる回収動作とを実行可能に構成されている。
バイアス制御手段は、画像形成動作のときに、ベルトの表面に付着した付着物が保持ローラに移動するような第1のバイアスを印加し、回収動作のときに、保持ローラに保持された付着物がベルトに移動するような第2のバイアスを印加するように構成されている。
速度制御手段は、回収動作の実行中に、バイアス制御手段が保持ローラに第2のバイアスを印加する制御を始めてから少なくとも第1の時間、保持ローラを、画像形成動作のときの第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるように制御する。
【0009】
このような構成によれば、保持ローラの付着物を保持する力が低下する、第2のバイアスが印加されているときに、保持ローラを遅い回転速度で回転させるので、個々の付着物に作用する遠心力を小さくすることができる。これにより、保持ローラの周囲への付着物の飛散を抑制することができるため、画像品質の低下や装置内の汚れを抑制することが可能となる。
【0010】
前記した各画像形成装置において、バイアス制御手段は、速度制御手段が保持ローラの回転速度を第2の回転速度に変更した後に、第2のバイアスを印加する構成とすることができる。
【0011】
このような構成によれば、個々の付着物に作用する遠心力を小さくした後に、保持ローラの付着物を保持する力を低下させることができるため、付着物の飛散をより抑制することができる。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、バイアス制御手段が保持ローラに第2のバイアスを印加する制御を始めるタイミングと、速度制御手段が保持ローラを第2の回転速度で回転させる制御を始めるタイミングとが、同時である構成とすることもできる。
【0013】
このような構成によれば、付着物の飛散を抑制しつつ、第2のバイアスを印加する制御を始めるタイミングと、第2の回転速度で回転させる制御を始めるタイミングとをずらした場合と比較して、回収動作の所要時間を短縮することができる。これにより、次の画像形成動作が可能となるまでの時間を短縮することができる。
【0014】
前記した各画像形成装置において、バイアス制御手段は、保持ローラに印加するバイアスを第1のバイアスから第2のバイアスに変更するとき、バイアス値を徐々に変化させていく構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、保持ローラが付着物を保持する力を徐々に低下させていくことができるため、付着物の飛散をより確実に抑制することができる。
【0016】
前記した感光体ドラム上の付着物を保持可能な保持ローラを備える各画像形成装置において、保持ローラは、感光体ドラムから回転駆動力が入力される構成とすることができる。
【0017】
感光体ドラム上の付着物を保持可能な保持ローラは、感光体ドラムの近くに配置されるため、感光体ドラムから回転駆動力が入力されるように構成することで、保持ローラを回転駆動させるための構成を簡単な構成とすることができる。
【0018】
前記した各画像形成装置において、速度制御手段は、回収動作の実行中において、回収動作が開始されてから第2の時間は保持ローラを第2の回転速度で回転させ、その後、保持ローラを第1の回転速度で回転させる構成とすることができる。
【0019】
回収動作の初期においては、保持ローラ上により多くの付着物が付着して付着物が飛散しやすくなっていると考えられるので、このときに保持ローラを遅い回転速度で回転させることで、付着物の飛散を効果的に抑制することができる。そして、第2の時間が経過した後、すなわち、保持ローラ上の付着物の量が減って付着物が飛散しにくくなったと考えられる段階で、保持ローラを速い回転速度で回転させることで、付着物の飛散を抑制しつつ、回収動作の所要時間を短縮することができる。
【0020】
前記した各画像形成装置は、画像を形成した記録シートの枚数をカウントするカウント手段を備え、カウント手段のカウント値が第1の閾値を超えた場合に、回収動作を実行する構成とすることができる。
【0021】
このような構成によれば、記録シートに対する画像形成が終了するたびに毎回回収動作を行う場合と比較して、特に複数枚の記録シートに連続して画像を形成するときの画像形成終了までの所要時間を短縮することができる。
【0022】
前記した画像形成装置は、画像形成装置本体内の湿度を検出する湿度検出手段をさらに備え、湿度検出手段の検出値が所定湿度以下である場合は、カウント手段のカウント値が第1の閾値よりも小さい第2の閾値を超えたときに、回収動作を実行する構成とすることができる。
【0023】
記録シートが特に紙の場合、湿度が低いと抵抗値が大きくなるため、感光体ドラム上により多くの付着物が残りやすくなり、保持ローラにより多くの付着物が短時間で保持される。そこで、湿度が低い場合に早めに回収動作を実行するようにすることで、付着物の飛散を効果的に抑制することができる。
【0024】
前記した感光体ドラム上の付着物を保持可能な保持ローラを備える各画像形成装置は、感光体ドラムに対向配置された無端状のベルトと、ベルトの表面に付着した付着物を回収する回収手段としてのベルトクリーニングユニットとを備えていてもよい。
この場合、回収動作では、保持ローラに保持された付着物を感光体ドラムおよびベルトを介してベルトクリーニングユニットに回収させる構成とすることができる。
【0025】
また、本発明の画像形成装置において、回収手段は、感光体ドラムに摺接して感光体ドラムの表面に付着した付着物を回収するブレードを含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、保持ローラに保持された付着物が感光体ドラムに移動するような第2のバイアスが印加されているときに、保持ローラを遅い第2の回転速度で回転させるので、保持ローラの周囲への付着物の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】プロセスユニット周辺の拡大図である。
【図3】保持ローラに印加するバイアスと保持ローラの回転速度を制御するための構成を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る保持ローラに印加するバイアスと保持ローラの回転速度を示すタイムチャートである。
【図5】カラープリンタの動作を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る保持ローラに印加するバイアスと保持ローラの回転速度を示すタイムチャートである。
【図7】第3実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図8】第4実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図(a)と、第4実施形態の変形例に係る画像形成装置の概略構成を示す図(b)である。
【図9】変形例に係る保持ローラに印加するバイアスと保持ローラの回転速度を示すタイムチャートである。
【図10】保持ローラの回転速度とトナーの飛散量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1の概略構成について簡単に説明した後、本発明の特徴部分に係る構成および制御について詳細に説明する。
【0029】
また、以下の説明において、方向は、カラープリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、手前側を「右」、奥側を「左」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0030】
<カラープリンタの概略構成>
図1に示すように、カラープリンタ1は、画像形成装置本体の一例としての本体筐体10内に、給紙部20と、画像形成部30と、回収手段の一例としてのベルトクリーニングユニット90とを主に備えている。本体筐体10の上側には、後側を支点として上下に回動可能(開閉可能)に構成されたアッパーカバー12が設けられている。
【0031】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、記録シートの一例としての用紙Sを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30に供給する用紙供給機構22とを主に備えている。給紙トレイ21内の用紙Sは、用紙供給機構22によって1枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0032】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスユニット50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0033】
LEDユニット40は、感光体ドラム53の上方に対向して配置され、その下端に左右方向に配列された図示しない複数のLEDを備えている。このLEDユニット40は、画像データに基づいて発光部が明滅することで、感光体ドラム53の表面を露光する。また、LEDユニット40は、保持部14を介してアッパーカバー12に保持されており、アッパーカバー12を開くことで感光体ドラム53から離間するように構成されている。
【0034】
プロセスユニット50は、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置されており、アッパーカバー12が開かれた状態において本体筐体10に対し着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスユニット50は、感光体ユニット51と、感光体ユニット51に対して着脱自在な現像ユニット61とを備えている。
【0035】
図2に示すように、感光体ユニット51は、感光体フレーム52内に、感光体ドラム53と、帯電器54と、保持ローラ55とを主に有して構成されている。また、現像ユニット61は、現像フレーム62内に、現像ローラ63と、供給ローラ64と、層厚規制ブレード65と、正帯電性のトナー(現像剤)を収容するトナー収容部66とを主に有して構成されている。
【0036】
図1に戻り、転写ユニット70は、給紙部20とプロセスユニット50との間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状のベルトの一例としての搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを主に備えている。搬送ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設され、外側の面が各感光体ドラム53に対向配置されており、その内側には各転写ローラ74が各感光体ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0037】
定着ユニット80は、プロセスユニット50および転写ユニット70の後方に設けられ、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを主に備えている。
【0038】
ベルトクリーニングユニット90は、搬送ベルト73の下方に設けられ、クリーニングローラ91と、回収ローラ92と、掻き取りブレード93と、トナー貯留部94と、クリーニングローラ91との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されたバックアップローラ95とを主に備えている。
【0039】
<カラープリンタの動作の概略>
本実施形態のカラープリンタ1は、用紙Sに画像を形成する画像形成動作と、保持ローラ55に保持された付着物の一例としてのトナーをベルトクリーニングユニット90に回収させる回収動作とを主に実行可能に構成されている。以下、各動作の概略について説明する。
【0040】
カラープリンタ1は、図示しないパーソナルコンピュータなどの外部装置から、画像形成開始の指示や、形成すべき画像データ、画像形成枚数の情報などを含む印刷ジョブが入力されると、画像形成動作を開始し、感光体ドラム53や搬送ベルト73などを回転駆動させる。
【0041】
そして、回転駆動する感光体ドラム53の表面が、帯電器54により一様に正帯電された後、LEDユニット40によって露光されることで、感光体ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、このとき、トナー収容部66内のトナーは、供給ローラ64を介して現像ローラ63に供給され、現像ローラ63と層厚規制ブレード65の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ63上に担持される。
【0042】
その後、現像ローラ63上に担持されたトナーが、静電潜像が形成された感光体ドラム53に供給されることで、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム53上にトナー像が形成される。また、ここまでの間の適宜なタイミングにおいて、用紙供給機構22は、給紙トレイ21に収容された用紙Sを画像形成部30に供給する。
【0043】
そして、給紙部20から供給された用紙Sが、感光体ドラム53と搬送ベルト73(転写ローラ74)の間を搬送されることで、各感光体ドラム53上に形成されたトナー像が用紙S上に順次重ね合わせて転写される。その後、トナー像が転写された用紙Sが、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を搬送されることでトナー像が熱定着される。
【0044】
トナー像が熱定着された用紙S、すなわち、画像が形成された用紙Sは、本体筐体10内に設けられた搬送ローラ15および排出ローラ16によって本体筐体10内からの外部に排出され、排紙トレイ13上に載置される。
【0045】
また、カラープリンタ1は、回収動作を実行するときには、感光体ドラム53や保持ローラ55、搬送ベルト73、クリーニングローラ91、回収ローラ92を主に回転駆動させる。そして、保持ローラ55に保持されたトナーをまず感光体ドラム53に移動させ、さらに感光体ドラム53を介して搬送ベルト73に移動させる。
【0046】
その後、搬送ベルト73の表面に付着したトナーは、搬送ベルト73の回転駆動により、搬送ベルト73(バックアップローラ95)とクリーニングローラ91の間に移動し、クリーニングローラ91で回収される。クリーニングローラ91で回収されたトナーは、回収ローラ92によって回収され、掻き取りブレード93によって回収ローラ92から掻き落とされてトナー貯留部94に貯留される。
【0047】
<カラープリンタの詳細構成>
次に、本発明の特徴部分に係る構成および制御について詳細に説明する。
図3に示すように、カラープリンタ1は、本体筐体10内に、前記した感光体ドラム53、保持ローラ55、転写ユニット70およびベルトクリーニングユニット90のほか、さらに、制御装置100と、バイアス印加回路200と、モータ300と、湿度検出手段の一例としての湿度センサ400とを備えている。
【0048】
保持ローラ55は、感光体ドラム53の表面に付着したトナー(付着物)を保持可能なローラであり、導電性を有する回転軸と、回転軸の周囲を被覆する、導電性を有するローラ体とを主に有して構成されている。この保持ローラ55は、負のバイアス(第1のバイアス:トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)が印加されたときには、感光体ドラム53上の転写残トナーを引き寄せて一時的にその表面に保持し、感光体ドラム53の対向部分の表面電位よりも高い正のバイアス(第2のバイアス:トナーの帯電極性と同極性のバイアス)が印加されたときには、保持していたトナーを吐き出して感光体ドラム53上に移動させる。
【0049】
各保持ローラ55は、対応する感光体ドラム53から回転駆動力が入力されるように構成されている。具体的な駆動力伝達のための構成については特に限定されないが、例えば、保持ローラ55の回転軸の一端部に設けられたギヤと、感光体ドラム53の一端部に設けられたギヤとが噛み合うことで、感光体ドラム53から回転駆動力が入力されるように構成されていてもよい。また、例えば、保持ローラ55は、回転駆動する感光体ドラム53の表面との摩擦によって従動回転するように構成されていてもよい。
【0050】
本実施形態において、保持ローラ55は、感光体ドラム53の近くに配置されているため、感光体ドラム53から回転駆動力が入力されるように構成することで、保持ローラ55を回転駆動させるための構成を簡単な構成とすることができる。
【0051】
バイアス印加回路200は、各保持ローラ55にバイアス(電圧)を印加する回路であり、各保持ローラ55の回転軸に接続されている。このバイアス印加回路200は、公知の構成によって、保持ローラ55に印加するバイアスを変更可能に構成されている。
【0052】
モータ300は、感光体ドラム53や搬送ベルト73、クリーニングローラ91などに回転駆動力を付与する駆動源であり、その回転速度を変更可能に構成されている。本実施形態において、モータ300は、感光体ドラム53を介して保持ローラ55を回転駆動させている。そのため、後述するように、保持ローラ55が低速(第2の回転速度)で回転するときには、感光体ドラム53などの回転速度も画像形成動作のときの回転速度より遅くなる。
【0053】
湿度センサ400は、本体筐体10内の湿度を検出するセンサであり、本体筐体10内の適宜な位置に設けられている。湿度センサ400が検出した湿度(検出値)は、制御装置100に出力される。
【0054】
制御装置100は、予め設定されたプログラムなどに従ってカラープリンタ1の各部を制御する装置であり、図示しないCPU、RAM、ROM、入出力インターフェースなどを備えて構成されている。この制御装置100は、本発明に関連する機能部として、動作制御手段110と、バイアス制御手段120と、速度制御手段130と、カウント手段140とを備えている。
【0055】
カウント手段140は、画像を形成した用紙Sの枚数をカウントする機能部である。具体的に、本実施形態では、カウント手段140は、制御装置100に入力された印刷ジョブに含まれる画像形成枚数の情報に基づいて、画像を形成した用紙Sの積算枚数をカウントしている。また、カウント手段140は、回収動作が実行されたとき、または、回収動作が終了したときに、カウント値をリセットする(0とする)。カウント手段140のカウント値は、動作制御手段110に出力される。
【0056】
動作制御手段110は、カラープリンタ1の動作を制御する機能部である。具体的に、本実施形態において、動作制御手段110は、印刷ジョブが入力された場合には、画像形成動作を実行し、入力された印刷ジョブに含まれる形成すべき画像の形成がすべて終了した場合には、回収動作を実行するように、制御装置100の各機能部(バイアス制御手段120や速度制御手段130など)およびカラープリンタ1の各部を制御する。
【0057】
また、本実施形態において、動作制御手段110は、カウント手段140のカウント値が第1の閾値(一例として60枚)を超えた場合にも、回収動作を実行するように、制御装置100の各機能部およびカラープリンタ1の各部を制御する。
【0058】
さらに、動作制御手段110は、湿度センサ400の検出値、すなわち、本体筐体10内の湿度が所定湿度(一例として20%RH)以下である場合には、カウント手段140のカウント値が第1の閾値よりも小さい第2の閾値(一例として20枚)を超えたときに、回収動作を実行するように、制御装置100の各機能部およびカラープリンタ1の各部を制御する。
【0059】
バイアス制御手段120は、画像形成動作や回収動作が実行されるときに、保持ローラ55に印加するバイアスを制御する機能部である。より詳細に、バイアス制御手段120は、図4に示すように、画像形成動作のとき(時刻t11以前参照)に、感光体ドラム53の表面に付着したトナーが保持ローラ55に移動するような第1のバイアスB1を印加し、回収動作のとき(時刻t11〜t14参照)に、保持ローラ55に保持されたトナーが感光体ドラム53に移動するような第2のバイアスB2を印加するように構成されている。
【0060】
また、本実施形態において、バイアス制御手段120は、保持ローラ55に印加するバイアスを第1のバイアスB1から第2のバイアスB2に変更するとき(時刻t11〜t12参照)には、バイアス値を徐々に(線形的に)変化させていくように構成されている。なお、本実施形態において、バイアス制御手段120は、保持ローラ55に印加するバイアスを第2のバイアスB2から第1のバイアスB1に変更するとき(時刻t15参照)には、バイアス値を急激に変化させるように構成されている。
【0061】
速度制御手段130(図3参照)は、画像形成動作や回収動作が実行されるときに、保持ローラ55の回転速度を制御する機能部である。より詳細に、速度制御手段130は、回収動作の実行中に、バイアス制御手段120が保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を始めてから(時刻t11参照)、少なくとも第1の時間T1、保持ローラ55を、画像形成動作のときの第1の回転速度V1よりも遅い(一例として第1の回転速度V1の半分の速度となる)第2の回転速度V2で回転させるように制御する。
【0062】
ここで、第1の時間T1とは、保持ローラ55が所定回数回転するように、保持ローラ55の径や回転速度などにより適宜設定される時間であり、本実施形態においては、保持ローラ55が1〜2回転するような時間として設定されている。
【0063】
また、速度制御手段130は、回収動作の実行中において、回収動作が開始されてから(時刻t11参照)、第2の時間の一例としての第1の時間T1は保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させるが、その後(時刻t13参照)、保持ローラ55を第1の回転速度V1で回転させる制御を始め、保持ローラ55を第1の回転速度V1で回転させる。
【0064】
なお、図4に示しているように、保持ローラ55に対して第1(または第2)の回転速度で回転させる制御を始めた時点から、保持ローラ55が実際に第1(または第2)の回転速度で回転するようになるまでには若干のタイムラグが生じることとなる。
【0065】
本実施形態において(時刻t11参照)、バイアス制御手段120が保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を始めるタイミングと、速度制御手段130が保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させる制御を始めるタイミングとは、同時となっている。
【0066】
<カラープリンタの動作および作用効果>
次に、カラープリンタ1の動作および作用効果について、図4および図5を参照しながら説明する。
【0067】
図5に示すように、印刷ジョブが入力された場合(START)、カラープリンタ1は、画像形成動作を実行する(S1)。また、カウント手段140は、カウント値Cに1を加算する(C←C+1)(S2)。
【0068】
画像形成動作が実行されているとき、保持ローラ55には、第1のバイアス(負のバイアス)が印加されており、感光体ドラム53上の正帯電性のトナーを引き寄せて一時的にその表面に保持する。
【0069】
カラープリンタ1は、本体筐体10内の湿度Hが所定湿度Hthを超えている場合(S3,No)、カウント値Cの閾値Cthに第1の閾値C1を代入し(S4)、本体筐体10内の湿度Hが所定湿度Hth以下である場合(S3,Yes)、カウント値Cの閾値Cthに第2の閾値C2(C2<C1)を代入する(S5)。
【0070】
入力された印刷ジョブが、カウント値Cの閾値Cth以下の枚数の用紙Sに画像を形成する印刷ジョブ、例えば、1枚の用紙Sに画像を形成する印刷ジョブであった場合、カウント値Cは閾値Cthを超えない(S6,No)ので、カラープリンタ1は、入力された印刷ジョブに含まれる形成すべき画像の形成がすべて終了したか否か(画像形成が終了したか否か)を判定する(S7)。
【0071】
入力された印刷ジョブが1枚の用紙Sに画像を形成する印刷ジョブであった場合は、当然、画像形成は終了する(S7,Yes)ので、カラープリンタ1は、回収動作を実行する(S8)。また、カウント手段140は、カウント値Cをリセットする(C←0)(S9)。
【0072】
図4に示すように、回収動作が開始される(時刻t11参照)と、バイアス制御手段120は、保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を開始し、速度制御手段130は、保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させる制御を開始する。
【0073】
このとき、バイアス制御手段120は、時刻t11から時刻t12にかけて、保持ローラ55に印加するバイアスを第1のバイアスB1から徐々に第2のバイアスB2に変化させていく。これに伴って、保持ローラ55に保持されたトナーが徐々に感光体ドラム53に移動するようになる。なお、本実施形態において、保持ローラ55は、印加されるバイアスが第2のバイアスB2となる前に、回転速度が第2の回転速度V2となる。
【0074】
以上のように、カラープリンタ1では、保持ローラ55のトナー保持力が低下する回収動作のとき(保持ローラ55に第2のバイアスB2が印加されているとき)に、保持ローラ55を低速(第2の回転速度V2)で回転させるので、個々のトナーに作用する遠心力を小さくすることができる。その結果、保持ローラ55の周囲への付着物の飛散を抑制することができるため、画像品質の低下や装置内の汚れを抑制することができる。
【0075】
また、カラープリンタ1では、保持ローラ55に印加するバイアスを第1のバイアスB1から徐々に第2のバイアスB2に変化させていくことで、保持ローラ55のトナー保持力を徐々に低下させていくことができる。これによって、保持ローラ55に印加するバイアスが切り替わる回収動作の初期において、トナーの飛散をより確実に抑制することができる。
【0076】
速度制御手段130は、回収動作が開始されてから(時刻t11において第2の回転速度V2で回転させる制御を開始してから)、第1の時間T1が経過するまでは保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させ、第1の時間T1が経過した後(時刻t13参照)、保持ローラ55を第1の回転速度V1で回転させる制御を開始する。
【0077】
したがって、本実施形態では、保持ローラ55は、第2のバイアスB2が印加される一連の回収動作において、回収動作が開始されてから、最初は低速で回転し、その後、高速で回転することとなる。
【0078】
ここで、回収動作の初期においては、保持ローラ55上により多くのトナーが付着してトナーが飛散しやすくなっていると考えられる。そこで、カラープリンタ1では、回収動作の初期に保持ローラ55を低速で回転させることで、トナーの飛散を効果的に抑制することができるようになっている。そして、第1の時間T1が経過した後、すなわち、保持ローラ55上のトナーの量が減ってトナーが飛散しにくくなったと考えられる段階で、保持ローラ55を高速で回転させることで、カラープリンタ1では、トナーの飛散を抑制しつつ、回収動作の所要時間を短縮することができるようになっている。
【0079】
なお、本実施形態においては、保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を始めるタイミングと、保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させる制御を始めるタイミングとが同時であるため、これらのタイミングをずらして実行する場合と比較して、回収動作の所要時間を短縮することができるようになっている。以上により、カラープリンタ1では、次の画像形成動作が可能となるまでの時間を短縮することができるようになっている。
【0080】
回収動作が終了すると、バイアス制御手段120は、保持ローラ55へのバイアスの印加を停止し、速度制御手段130は、保持ローラ55を停止させる制御を開始する(時刻t14参照)。そして、保持ローラ55が停止することで、図5に示すように、カラープリンタ1は動作を終了する(END)。
【0081】
一方、入力された印刷ジョブが、例えば、2枚の用紙Sに画像を形成する印刷ジョブであった場合、1枚目の用紙に対する画像形成が終了した段階では、ステップS7において、画像形成は終了していない(S7,No)ので、カラープリンタ1は、ステップS1に進んで、2枚目の用紙に対する画像形成動作を実行し、その後、ステップS2以降の処理を実行する。
【0082】
なお、図4において太い破線で示すように、回収動作後に画像形成動作を再開する場合には、速度制御手段130は、保持ローラ55を第1の回転速度V1で回転させ続け、バイアス制御手段120は、保持ローラ55に印加するバイアスを第2のバイアスB2から第1のバイアスB1に変更する(時刻t15参照)。
【0083】
入力された印刷ジョブが、カウント値Cの閾値Cthを超える枚数の用紙Sに画像を形成する印刷ジョブであった場合で、図5のステップS6において、実際に、カウント値Cが閾値Cthを超えたとき(S6,Yes)、カラープリンタ1は、回収動作を実行する(S10)。また、カウント手段140は、カウント値Cをリセットする(S11)。
【0084】
このように、カウント手段140のカウント値Cが閾値Cthを超えた場合に回収動作を実行する構成とすることで、用紙Sに対する画像形成が終了するたびに毎回回収動作を実行する場合と比較して、すべての用紙Sに画像が形成されるまでの所要時間を短縮することができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、本体筐体10内の湿度Hが所定湿度Hth以下である場合は、カウント値Cが第1の閾値C1よりも小さい第2の閾値C2を超えたとき、すなわち、本体筐体10内の湿度Hが所定湿度Hthを超える場合よりも早めに回収動作を実行している。
【0086】
ここで、湿度が低いと用紙Sの抵抗値が大きくなるため、感光体ドラム53上により多くの転写残トナーが付着し、保持ローラ55により多くのトナーが短時間で保持されることとなる。そこで、湿度が低い場合に早めに回収動作を実行することで、カラープリンタ1では、トナーの飛散を効果的に抑制することができるようになっている。
【0087】
ステップS10の回収動作が終了すると、カラープリンタ1は、画像形成が終了したか否かを判定し(S12)、画像形成が終了していない場合(S12,No)には、画像形成動作を再開して、ステップS1以降の処理を実行し、画像形成が終了した場合(S12,Yes)には、動作を終了する(END)。
【0088】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、先に説明した実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その説明を省略することとする。また、本実施形態のカラープリンタ1は、前記第1実施形態のカラープリンタ1(図1〜図3参照)と同様の構成を有している。
【0089】
前記第1実施形態のバイアス制御手段120は、保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させる制御を始めるタイミングと同時に、保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を始めるように構成されていた(図4の時刻t11参照)。また、前記第1実施形態のバイアス制御手段120は、保持ローラ55に印加するバイアスを第1のバイアスB1から徐々に第2のバイアスB2に変化させていくように構成されていた(図4の時刻t11〜t12参照)。
【0090】
図6に示すように、本実施形態において、バイアス制御手段120は、画像形成動作のとき(時刻t21以前参照)に、保持ローラ55に第1のバイアスB1を印加し、回収動作のとき(回収動作中)(時刻t21〜t24参照)に、保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加するように構成されている。そして、本実施形態のバイアス制御手段120は、速度制御手段130が保持ローラ55の回転速度を第2の回転速度V2に変更した後のタイミング(時刻t22参照)に、第2のバイアスB2を印加する制御を開始するように構成されている。
【0091】
また、本実施形態のバイアス制御手段120は、保持ローラ55に印加するバイアスを、第1のバイアスB1から第2のバイアスB2に変更するとき、および、第2のバイアスB2から第1のバイアスB1に変更するときに、バイアス値を急激に変化させるように構成されている(時刻t22,t25参照)。
【0092】
このように、速度制御手段130が保持ローラ55の回転速度を第2の回転速度V2に変更した時点(変更する制御を開始した時点)(時刻t21参照)よりも後(時刻t22参照)に、第2のバイアスB2を印加する構成とすることで、保持ローラ55上の個々のトナーに作用する遠心力を小さくした後に、保持ローラ55のトナー保持力を低下させることができるため、トナーの飛散をより抑制することができる。
【0093】
また、第2のバイアスB2を印加する時点(時刻t22参照)では、保持ローラ55が低速で回転していることで、すでに個々のトナーに作用する遠心力が小さくなっているので、保持ローラ55に印加するバイアスを急激に変化させても、トナーの飛散を抑制することができる。これにより、本実施形態では、保持ローラ55に印加するバイアスを徐々に変化させる構成を採用するよりも、回収動作の所要時間を短縮することができる。
【0094】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、各構成(図示しないものを含む)は、基本的に、前記第1実施形態のカラープリンタ1の同名の構成と略同様に配設されている。
【0095】
前記した実施形態では、保持ローラ55は、感光体ドラム53の表面に付着したトナーを保持可能に設けられていた。本実施形態は、保持ローラが、無端状のベルトの表面に付着したトナー(付着物)を保持可能に設けられている。
【0096】
図7に示すように、本実施形態のカラープリンタは、本体筐体内に、給紙部と、画像形成部と、制御装置100と、バイアス印加回路200と、モータ300と、湿度センサ400と、回収手段の他の例としてのドラムクリーニングユニット500と、保持ローラ56と、バックアップローラ57とを主に備えている。
【0097】
また、画像形成部は、4つのLEDユニットと、感光体ドラム53を有する4つのプロセスユニットと、転写ユニット70’と、定着ユニットとから主に構成されている。本実施形態の各プロセスユニットは、前記した実施形態の保持ローラ55を備えていない。
【0098】
転写ユニット70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状のベルトの他の例としての中間転写ベルト73’と、4つの1次転写ローラ74と、2次転写ローラ75とを主に備えている。各1次転写ローラ74は、中間転写ベルト73’を挟んで感光体ドラム53と対向配置され、2次転写ローラ75は、中間転写ベルト73’を挟んで駆動ローラ71と対向配置されている。
【0099】
このようなカラープリンタでは、画像形成動作のときに各感光体ドラム53上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト73’上に順次重ね合わせて転写されることとなる。そして、給紙部から搬送された用紙Sが、中間転写ベルト73’と2次転写ローラ75との間を搬送されることで、中間転写ベルト73’上のトナー像が用紙Sに転写される。トナー像が転写された用紙Sは、定着ユニットを通過した後、排出ローラによって排紙トレイ上に載置される。
【0100】
保持ローラ56は、中間転写ベルト73’の表面に付着したトナーを保持可能なローラであり、導電性を有する回転軸と、回転軸の周囲を被覆する、導電性を有するローラ体とを主に有して構成されている。この保持ローラ56は、中間転写ベルト73’を挟んでバックアップローラ57と対向配置されている。
【0101】
この保持ローラ56は、バックアップローラ57との間で、負のバイアス(第1のバイアス:トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)が印加されたときには、中間転写ベルト73’上のトナーを引き寄せて一時的にその表面に保持し、中間転写ベルト73’の表面電位よりも高い正のバイアス(第2のバイアス:トナーの帯電極性と同極性のバイアス)が印加されたときには、保持していたトナーを吐き出して中間転写ベルト73’上に移動させる。
【0102】
また、本実施形態において、保持ローラ56は、図示しないギヤ列などからなる駆動力伝達機構を介してモータ300から回転駆動力が入力されるように構成されている。ちなみに、本発明において、保持ローラ56は、例えば、転写ユニット70’の駆動ローラ71や従動ローラ72などから、ギヤ列などを介して回転駆動力が入力されるように構成されていてもよい。
【0103】
ドラムクリーニングユニット500は、中間転写ベルト73’の搬送方向における最上流側に位置する感光体ドラム53(53A)に近接して設けられており、ブレード510と、トナー貯留部520とを主に備えている。ブレード510は、感光体ドラム53Aに摺接して感光体ドラム53の表面に付着したトナーを回収する部材であり、トナー貯留部520は、ブレード510によって回収された(掻き取られた)トナーが貯留される容器状の部材である。
【0104】
このようなカラープリンタでは、回収動作のときには、保持ローラ56に保持されたトナーをまず中間転写ベルト73’に移動させ、さらに中間転写ベルト73’を介して感光体ドラム53Aに移動させる。その後、感光体ドラム53Aの表面に付着したトナーは、感光体ドラム53Aの回転駆動により、ブレード510によって掻き取られ、トナー貯留部520に貯留される。
【0105】
なお、回収動作時における、保持ローラ56に印加するバイアスの制御や、保持ローラ56の回転速度の制御については、前記した第1実施形態または第2実施形態の制御方法を採用することができるので、本実施形態においては詳細な説明を省略する。
【0106】
以上のように構成された本実施形態のカラープリンタによっても、保持ローラ56のトナーを保持する力が低下する、第2のバイアスが印加されているときに、保持ローラ56を低速で回転させることで、保持ローラ56の周囲へのトナーの飛散を抑制することができる。これにより、画像品質の低下や装置内の汚れを抑制することが可能となる。
【0107】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
前記した実施形態では、保持ローラ55,56は、感光体ドラム53上や中間転写ベルト73’上のトナーを積極的に回収するローラであったが、本発明の保持ローラは、これに限定されるものではない。
【0108】
図8(a)に示すように、本実施形態の画像形成装置は、感光体ドラム53の表面を露光するユニット、プロセスユニット(感光体ドラム53)および転写ローラ74を1つずつ備えた、モノクロ画像のみを形成するプリンタである。そして、このプリンタは、保持ローラの他の例としての帯電ローラ55’と、ドラムクリーニングユニット500とを備えている。
【0109】
帯電ローラ55’は、露光前の感光体ドラム53の表面を一様に正帯電させるローラであり、画像形成動作のときに、感光体ドラム53の表面電位よりも高い正のバイアス(第1のバイアス:トナーの帯電極性と同極性のバイアス)が印加される。
【0110】
このようなプリンタでは、画像形成動作のときに感光体ドラム53上に形成されたトナー像は、給紙部から供給された用紙Sが、感光体ドラム53と転写ローラ74の間を搬送されることで、用紙S上に転写される。このとき、転写ローラ74には、負のバイアスが印加されるため、感光体ドラム53と転写ローラ74の間を搬送される用紙S上の紙粉は負に帯電し、一部が感光体ドラム53の表面に付着することとなる。
【0111】
感光体ドラム53の表面に付着した付着物としての紙粉は、その大部分がドラムクリーニングユニット500によって回収されるが、一部が帯電ローラ55’との対向部分に到達し、正のバイアスが印加された帯電ローラ55’に引き寄せられて、帯電ローラ55’に付着してしまう(保持されてしまう)。
【0112】
そこで、本実施形態では、回収動作のときに、帯電ローラ55’に負のバイアス(第2のバイアス:トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を印加することで、紙粉を感光体ドラム53上に移動させるように構成している。また、本実施形態では、回収動作のときに、転写ローラ74にバイアスを印加しないように構成している。これにより、感光体ドラム53上に再付着した紙粉は、ドラムクリーニングユニット500によって回収されることとなる。
【0113】
なお、保持ローラとしての帯電ローラ55’を採用した構成は、図8(b)に示すように、感光体ドラム53を複数備えるカラープリンタにも適用することができる。この場合、ドラムクリーニングユニット500は、搬送ベルト73の搬送方向における最下流側に位置する感光体ドラム53に対してのみ設けられていてもよいし、図示はしないが、各感光体ドラム53に対応して1つずつ設けられていてもよい。図8(b)に示すような構成においては、紙粉をドラムクリーニングユニット500で回収するため、各転写ローラ74に適宜バイアスが印加されることとなる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0115】
前記実施形態では、図4の時刻t11や図6の時刻t21に示されているように、回収動作に入るときに、保持ローラ55の回転速度を第1の回転速度V1から、直接第2の回転速度V2に変更していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、回収動作(時刻t32以降参照)に入る前に、第1の回転速度V1で回転していた保持ローラを一旦停止させ(時刻t31参照)、その後、第2の回転速度V2で回転させる(時刻t32以降参照)ように構成してもよい。
【0116】
前記実施形態では、入力された印刷ジョブに含まれる形成すべき画像の形成がすべて終了した場合と、カウント手段140のカウント値が閾値を超えた場合に回収動作を実行するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置は、カウント手段のカウント値が閾値を超えた場合だけ回収動作を実行するように構成されていてもよいし、1枚の記録シートに対する画像形成が終了するごとに毎回回収動作を実行するように構成されていてもよい。
【0117】
前記実施形態では、図4(時刻t11〜t13参照)に示したように、回収動作の実行中に保持ローラ55に第2のバイアスB2を印加する制御を始めてから保持ローラ55を第2の回転速度V2で回転させる時間(第1の時間T1)と、回転動作の実行中において回収動作が開始されてから保持ローラ55の回転速度を第2の回転速度V2から第1の回転速度V1に変更するまでの時間(第2の時間)とが等しい時間であったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、第1の時間と第2の時間とは、異なる時間であってもよい。
【0118】
前記実施形態では、カウント手段140が、印刷ジョブに含まれる画像形成枚数の情報に基づいて画像を形成した用紙S(記録シート)の枚数をカウントするように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カウント手段は、画像形成装置本体内に設けられる、記録シートの通過を検知するセンサの検知結果に基づいて記録シートの枚数をカウントするように構成されていてもよい。
【0119】
前記実施形態では、用紙S(記録シート)の枚数をカウントするカウント手段140を備え、カウント手段140のカウント値が閾値を超えた場合に回収動作を実行するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置は、記録シートに形成される画像のドット数をカウントするドットカウント手段を備え、ドットカウント手段のカウント値が閾値を超えた場合に回収動作を実行するように構成されていてもよい。
【0120】
前記実施形態では、保持ローラ55は、感光体ドラム53から回転駆動力が入力されることで回転駆動するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保持ローラは、感光体ドラムを回転駆動させるモータとは別のモータから回転駆動力が入力されることで回転駆動するように構成されていてもよい。なお、保持ローラの回転速度は、モータの回転速度の変更によって変える構成に限定されず、例えば、複数のギヤなどからなる変速機構によって変える構成としてもよい。
【0121】
前記実施形態では、保持ローラ55に印加するバイアスを変更するとき、バイアス値を徐々に変化させたり(図4のt11〜t12参照)、急激に変化させたり(図6のt22参照)したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保持ローラに印加するバイアスを変更するときには、バイアス値を段階的に変化させるようにしてもよい。
【0122】
前記実施形態では、湿度センサ400(湿度検出手段)を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置は、記録シート(紙)の抵抗値を検出する検出手段を備え、当該検出手段の検出値が所定抵抗値を超えたときに回収動作を実行するように構成されていてもよい。
【0123】
前記実施形態では、本発明を正帯電性のトナー(現像剤)を使用する画像形成装置に適用した例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、負帯電性の現像剤を使用する画像形成装置にも適用することができる。この場合、第1のバイアスと第2のバイアスの正負は、前記第1実施形態(図4参照)とは逆になる。
【0124】
前記実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【0125】
前記実施形態では、記録シートとして、いわゆる普通紙などの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【実施例】
【0126】
次に、保持ローラの回転速度を遅くすることでトナーの飛散量が少なくなることを確認した実施例について説明する。
【0127】
本実施例では、前記第1実施形態と同様の構成を有するプリンタHL−3040CN(ブラザー工業製)を用いて、30枚の用紙に連続して画像形成(一定濃度のベタ印刷)を行い、保持ローラ周辺の壁の内面(図2の壁52Aの太線部分参照)に付着したトナーの量を測定した。
【0128】
具体的には、保持ローラ周辺の壁の内面に付着したトナーをメンディングテープによって採取し、このメンディングテープを用紙に貼り付けた後、メンディングテープを貼り付けた部分(メンディングテープ、飛散トナーおよび用紙)の透過濃度をマクベス透過濃度計TD904(マクベス社製)により測定した。なお、図10に示す透過濃度値は、測定値から、メンディングテープおよび用紙の透過濃度を差し引いた値である。
【0129】
比較例は、保持ローラ(外径9mm)を含むプロセスユニットを16ppm(全速)で駆動させたときの透過濃度である。比較例の場合の保持ローラの回転数はおよそ337rpmとなる。また、実施例は、保持ローラ(外径9mm)を含むプロセスユニットを8ppmで(半速)で駆動させたときの透過濃度である。実施例の場合の保持ローラの回転数はおよそ169rpmとなる。ここで、ppmとは、1分あたりの印刷枚数(page per minute)を意味し、rpmとは、1分あたりの回転数(revolution per minute)を意味する。
【0130】
図10に示すように、比較例(16ppm)は、透過濃度が約0.12であるの対し、実施例(8ppm)は、比較例の半分程度の透過濃度(約0.06)であった。以上より、保持ローラの回転速度を遅くすることで、トナーの飛散量が少なくなることが確認された。したがって、保持ローラに保持されたトナー(付着物)が感光体ドラムに移動するようなバイアスが印加されているときに、保持ローラを遅い回転速度で回転させることで、保持ローラの周囲への付着物の飛散を抑制することができるといえる。
【符号の説明】
【0131】
1 カラープリンタ
53 感光体ドラム
55 保持ローラ
56 保持ローラ
73 搬送ベルト
73’ 中間転写ベルト
90 ベルトクリーニングユニット
120 バイアス制御手段
130 速度制御手段
140 カウント手段
400 湿度センサ
500 ドラムクリーニングユニット
510 ブレード
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの表面に付着した付着物を保持可能な保持ローラと、
前記保持ローラに印加するバイアスを制御するバイアス制御手段と、
前記保持ローラの回転速度を制御する速度制御手段と、を備え、
記録シートに画像を形成する画像形成動作と、前記保持ローラに保持された付着物を前記感光体ドラムに移動させ、前記感光体ドラムを介して回収手段に回収させる回収動作とを実行可能に構成された画像形成装置であって、
前記バイアス制御手段は、前記画像形成動作のときに、前記感光体ドラムの表面に付着した付着物が前記保持ローラに移動するような第1のバイアスを印加し、前記回収動作のときに、前記保持ローラに保持された付着物が前記感光体ドラムに移動するような第2のバイアスを印加するように構成され、
前記速度制御手段は、前記回収動作の実行中に、前記バイアス制御手段が前記保持ローラに前記第2のバイアスを印加する制御を始めてから少なくとも第1の時間、前記保持ローラを、前記画像形成動作のときの第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記バイアス制御手段は、前記速度制御手段が前記保持ローラの回転速度を前記第2の回転速度に変更した後に、前記第2のバイアスを印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記バイアス制御手段が前記保持ローラに前記第2のバイアスを印加する制御を始めるタイミングと、前記速度制御手段が前記保持ローラを前記第2の回転速度で回転させる制御を始めるタイミングとは、同時であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記バイアス制御手段は、前記保持ローラに印加するバイアスを前記第1のバイアスから前記第2のバイアスに変更するとき、バイアス値を徐々に変化させていくことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保持ローラは、前記感光体ドラムから回転駆動力が入力されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記速度制御手段は、前記回収動作の実行中において、前記回収動作が開始されてから第2の時間は前記保持ローラを前記第2の回転速度で回転させ、その後、前記保持ローラを前記第1の回転速度で回転させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像を形成した記録シートの枚数をカウントするカウント手段を備え、
前記カウント手段のカウント値が第1の閾値を超えた場合に、前記回収動作を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置本体内の湿度を検出する湿度検出手段をさらに備え、
前記湿度検出手段の検出値が所定湿度以下である場合は、前記カウント手段のカウント値が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を超えたときに、前記回収動作を実行することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記感光体ドラムに対向配置された無端状のベルトと、
前記ベルトの表面に付着した付着物を回収する前記回収手段としてのベルトクリーニングユニットと、を備え、
前記回収動作では、前記保持ローラに保持された付着物を前記感光体ドラムおよび前記ベルトを介して前記ベルトクリーニングユニットに回収させることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記回収手段は、前記感光体ドラムに摺接して前記感光体ドラムの表面に付着した付着物を回収するブレードを含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムに対向配置された無端状のベルトと、
前記ベルトの表面に付着した付着物を保持可能な保持ローラと、
前記保持ローラに印加するバイアスを制御するバイアス制御手段と、
前記保持ローラの回転速度を制御する速度制御手段と、を備え、
記録シートに画像を形成する画像形成動作と、前記保持ローラに保持された付着物を前記ベルトに移動させ、前記ベルトを介して回収手段に回収させる回収動作とを実行可能に構成された画像形成装置であって、
前記バイアス制御手段は、前記画像形成動作のときに、前記ベルトの表面に付着した付着物が前記保持ローラに移動するような第1のバイアスを印加し、前記回収動作のときに、前記保持ローラに保持された付着物が前記ベルトに移動するような第2のバイアスを印加するように構成され、
前記速度制御手段は、前記回収動作の実行中に、前記バイアス制御手段が前記保持ローラに前記第2のバイアスを印加する制御を始めてから少なくとも第1の時間、前記保持ローラを、前記画像形成動作のときの第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記バイアス制御手段は、前記速度制御手段が前記保持ローラの回転速度を前記第2の回転速度に変更した後に、前記第2のバイアスを印加することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記バイアス制御手段が前記保持ローラに前記第2のバイアスを印加する制御を始めるタイミングと、前記速度制御手段が前記保持ローラを前記第2の回転速度で回転させる制御を始めるタイミングとは、同時であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記バイアス制御手段は、前記保持ローラに印加するバイアスを前記第1のバイアスから前記第2のバイアスに変更するとき、バイアス値を徐々に変化させていくことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記速度制御手段は、前記回収動作の実行中において、前記回収動作が開始されてから第2の時間は前記保持ローラを前記第2の回転速度で回転させ、その後、前記保持ローラを前記第1の回転速度で回転させることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
画像を形成した記録シートの枚数をカウントするカウント手段を備え、
前記カウント手段のカウント値が第1の閾値を超えた場合に、前記回収動作を実行することを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
画像形成装置本体内の湿度を検出する湿度検出手段をさらに備え、
前記湿度検出手段の検出値が所定湿度以下である場合は、前記カウント手段のカウント値が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を超えたときに、前記回収動作を実行することを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記回収手段は、前記感光体ドラムに摺接して前記感光体ドラムの表面に付着した付着物を回収するブレードを含むことを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97128(P2013−97128A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238976(P2011−238976)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】