説明

画像形成装置

【課題】記録媒体上の立体的画像の隆起量を高精度に制御することを課題とする。
【解決手段】入力された画像情報に基づいて、赤外光吸収剤を含有した透明トナーT(IR)を熱発泡性の記録媒体PWの表面に付着させることにより、透明トナーが付着した媒体表面領域を隆起させて記録媒体上に立体的画像を形成する画像形成装置において、単位面積当たりの媒体表面領域に付着する透明トナーの付着面積を示す付着面積率を変更することにより、隆起させる媒体表面部分の隆起量を制御する隆起量制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の表面を隆起させる隆起剤を記録媒体の表面に付着させることにより、該隆起剤が付着した媒体表面領域を隆起させて記録媒体上に立体的画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、例えば、熱発泡性(熱膨張性)シートの表面を選択的に発泡隆起させて、そのシート上に、点字、レリーフなどの立体的画像を形成するものが知られている。具体的には、例えば、光エネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換材料を添加した有色トナー(隆起剤)によるトナー画像を熱発泡性シート上に形成し、これに光を照射することでトナー画像部分を発熱させる。そして、トナー画像の発熱により、そのトナー画像が付着したシート部分(媒体表面領域)を発泡隆起させ、立体的画像を形成する。特に、このような有色トナーを利用すれば、着色された立体的画像(カラーのレリーフなど)を形成することができる。
【0003】
このような画像形成装置において、発泡隆起するシート部分の高さ(隆起量)はそのシート部分の加熱量に依存し、その加熱量は当該シート部分に付着する光熱変換材料の量すなわち有色トナーの量に左右される。よって、有色トナーの付着量が多くて画像濃度が高いシート部分では強めに加熱されて隆起量が多くなり、逆に、有色トナーの付着量が少なくて画像濃度が低いシート部分では弱めに加熱されて隆起量が少なくなる。しかしながら、隆起させたい量(高さ)は、必ずしも画像濃度と対応した関係にない。つまり、画像濃度の高い部分の隆起量を少なく抑えたい(高さを低くしたい)場合もあれば、画像濃度の低い部分の隆起量を多くしたい(高さを高くしたい)場合もある。
【0004】
特許文献1には、熱発泡性の記録媒体上に赤外線吸収剤を含有する透明トナー(隆起剤)からなる像を形成した後に赤外線を照射し、透明トナー像が形成された記録媒体部分を発泡させることにより立体画像を形成する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、記録媒体上に形成した透明トナー像の層厚を、発泡隆起させたい量(高さ)に応じて調整することで、立体的画像を着色する有色トナーの画像濃度に関係なく、立体的画像の隆起量を制御するとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1の画像形成装置は、一般的な電子写真方式で透明トナーを記録媒体上に転写する方式を採用している。一般に、透明トナー像を転写して記録媒体上に形成する場合、記録媒体上の透明トナー像の層厚を高精度に制御することは困難を伴う。そのため、上記特許文献1の画像形成装置のように、記録媒体上の透明トナー像の層厚を制御して発泡隆起させたい量(高さ)を調整する手法では、記録媒体上の立体的画像の隆起量を高精度に制御することが難しく、立体的画像の品質が低いという問題があった。特に、例えば、人間の顔のレリーフのように、隆起した媒体表面部分が滑らかな曲面(高さが滑らかに変化する面)を含む立体的画像を形成する場合には、隆起した媒体表面部分の曲面を滑らかにすることができず、立体的画像の品質低下の問題が顕著となる。
【0006】
なお、この問題は、隆起剤として透明トナーを用いる場合に限らず、有色トナーなどの不透明な隆起剤を用い、その層厚を制御して隆起量を調整する場合においても、同様に生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、記録媒体上の立体的画像の隆起量を高精度に制御することができ、高品質な立体的画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、入力された画像情報に基づいて、記録媒体の表面を隆起させる隆起剤を該記録媒体の表面に付着させることにより、該隆起剤が付着した媒体表面領域を隆起させて該記録媒体上に立体的画像を形成する画像形成装置において、単位面積当たりの媒体表面領域に付着する隆起剤の付着面積を変更することにより、隆起させる媒体表面部分の隆起量を制御する隆起量制御手段を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、記録媒体上の隆起剤の層厚を変更して隆起量を制御する場合よりも、高精度な制御が可能な単位面積当たりの媒体表面領域に付着する隆起剤の付着面積を変更することで隆起量を制御する。よって、本発明によれば、記録媒体上の立体的画像の隆起量を高精度に制御することができ、高品質な立体的画像を形成することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態における画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】同画像形成装置における立体的画像の画像形成プロセスの主要な制御に関わる画像処理部の制御ブロック図である。
【図3】(a)は、3つの媒体表面領域に付着する透明トナーの付着面積が互いに異なるように、透明トナーのみを記録媒体上に付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。(b)は、同記録媒体をその表面に平行な方向から見たときの模式図である。(c)は同記録媒体の各媒体表面領域が隆起した状態を示す模式図である。
【図4】(a)は、カラートナーが付着した2つの媒体表面領域に対し、同じ付着面積率で透明トナーを付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。(b)は、同記録媒体をその表面に平行な方向から見たときの模式図である。(c)は同記録媒体の各媒体表面領域が隆起した状態を示す模式図である。
【図5】(a)は、カラートナーが付着した2つの媒体表面領域と、黒トナーが付着した1つの媒体表面領域に対し、透明トナーを付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。(b)は、同記録媒体をその表面に平行な方向から見たときの模式図である。(c)は同記録媒体の各媒体表面領域が隆起した状態を示す模式図である。
【図6】カラートナーによるベタ画像が付着した媒体表面領域に対し、図中左側から右側に向けて隆起量が徐々に増加する傾斜面を有する立体的画像を形成する場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。(b)は、同記録媒体をその表面に平行な方向から見たときの模式図である。(c)は同記録媒体の各媒体表面領域が隆起した状態を示す模式図である。
【図7】(a)〜(c)は、図6(a)〜(c)と同様に図中左側から右側に向けて隆起量が徐々に増加する傾斜面を有する立体的画像を形成する場合に、透明トナーの層厚を変更して隆起量を制御する従来構成を採用した場合の理想的な状態を示す模式図である。
【図8】(a)〜(c)は、同従来構成を採用した場合の実際の状態を示す模式図である。
【図9】(a)は、山の景色を示す入力画像例をグレースケール画像に変換したものを示す説明図である。(b)は、同グレースケール画像をネガポジ反転したネガポジ反転を示す説明図である。(c)は、背景の空に対応する画像領域が白色に変換されたグレースケール画像を示す説明図である。
【図10】(a)は、マグカップを示す入力画像例をグレースケール画像に変換したものを示す説明図である。(b)は、同グレースケール画像をネガポジ反転したネガポジ反転を示す説明図である。(c)は、背景及びマグカップ本体の内側部分に対応する画像領域が白色に変換されたグレースケール画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、記録媒体の表面を隆起させて立体的画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、電子写真方式の画像形成装置を例に挙げて説明するが、インクジェット方式などの他の画像形成方式を採用する画像形成装置であっても、本発明は適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態における画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
本画像形成装置は、着色物質である有色トナー及び隆起剤である透明トナーを記録媒体PW上に付着させて、着色された立体的画像を形成する画像形成装置である。なお、透明トナーの透明度は、透明トナーと有色トナーと重なって付着した部分において有色トナーによる着色状態が視認できればよく、必ずしも100%の透明度である必要はない。
【0013】
本画像形成装置のプリンタ部100には、使用者からのコマンド入力や、使用者への装置の状態報知等を行うための操作表示部200が設けられている。また、プリンタ部100の上部には、スキャナ(原稿読取り部)300が配設されている。スキャナ300は、原稿を光学的に走査して画像の画像情報を読み取る。また、本画像形成装置の画像処理部600は、プリンタ部100に内装したコントローラ(制御回路部(CPU等))で構成され、画像形成装置の動作を統括的に制御する。本画像形成装置の画像処理部600には、パーソナルコンピュータ・ファクシミリ装置等の外部入力機器(外部ホスト装置)700が、インターフェースを介して通信可能に接続されている。スキャナ300から入力された画像情報や外部ホスト装置700で作成した画像情報が画像処理部600に入力されることで、プリンタ部100がプリンタとして機能する。
【0014】
プリンタ部100の内部には、中間転写体としての中間転写ベルト10が配設されており、水平面に平行な中間転写ベルト10のベルト部分に対向するように、第1電子写真画像形成部P1、第2電子写真画像形成部P2、第3電子写真画像形成部P3、第4電子写真画像形成部P4、第5電子写真画像形成部P5が水平方向に沿って並んで配設されている。第1から第4の電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4は、着色物質付着手段として機能し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の有色トナーを用いて画像形成を行い、第5電子写真画像形成部P5は、隆起剤付着手段として機能し、透明トナーを用いて画像形成を行う。
【0015】
各電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4,P5は、使用するトナーが異なる点を除き、同様の電子写真プロセスでトナー画像を形成する。各電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4,P5には、ドラム状の感光体1がそれぞれ設けられている。感光体1の表面は、帯電装置2によって所定の帯電電位まで一様に帯電される。各電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4,P5の上方には、潜像形成手段としてのレーザー走査機構11が配置されている。レーザー走査機構11は、入力される画像情報に基づいて、各電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4,P5の感光体1の帯電後の表面部分に対し、それぞれ対応する静電潜像を形成するためのレーザー光を照射する。これにより、各感光体1の表面には静電潜像が形成される。
【0016】
各感光体1の表面上の静電潜像は、それぞれ、現像装置3によって、それぞれのトナーによって現像され、各感光体1の表面上にトナー像が形成される。このようにして各感光体1の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト10上で互いに重なり合うように、中間転写ベルト10の表面へ一次転写される。なお、中間転写ベルト10へ転写されずに各感光体1上に残留した転写残トナーは、図示しないクリーニング装置によって感光体表面から除去され、その後、徐電ランプによって感光体表面から残留電位が除去され、次の画像形成動作に以降する。
【0017】
各電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4,P5の現像装置3は、トナーと磁性キャリア粒子とを混合した二成分現像剤を用いて現像処理を行う二成分現像装置である。すなわち、第1〜第4の電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4の現像装置3は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の有色トナーと磁性キャリア粒子とを混合した二成分現像剤を用い、第5電子写真画像形成部P5の現像装置3は、透明トナーと磁性キャリア粒子とを混合した二成分現像剤を用いて、現像処理を行う。各現像装置3には、図示しないトナー補給装置が接続されている。画像処理部600は、現像装置3の内部に収容される現像剤のトナー濃度が目標濃度に維持されるように、トナー補給装置から各トナーが適宜補給するトナー補給制御を実施する。
【0018】
また、プリンタ部100の内部下部には、記録媒体PWが多数セットされた給紙カセット12 が設けられている。本実施形態で使用する記録媒体PWは、熱発泡性を有する記録媒体であるが、これに限らず、隆起剤(透明トナー)が付着した媒体表面部分が隆起するように作用するものであれば、例えば隆起剤と化学反応を起こして隆起するものであってもよい。給紙カセット12にセットされた記録媒体PWは、一枚ずつピックアップされたレジストローラ対13へ送られる。レジストローラ対13は、中間転写ベルト10と二次転写ローラ14とが対向する二次転写領域に中間転写ベルト10上のトナー画像が到達するタイミングに合わせて、記録媒体PWを二次転写領域へ送り出す。
【0019】
また、プリンタ部100の内部には、二次転写領域よりも記録媒体搬送方向下流側に、電磁波照射手段としての赤外光定着装置16が設けられている。赤外光定着装置16は、二次転写領域で記録媒体PW上に付着したトナー画像に電磁波である赤外光を照射し、有色トナーによるトナー画像を記録媒体PWに定着させるとともに、透明トナーを発熱させて透明トナーが付着した媒体表面領域を隆起させる。その後、記録媒体PWは、排紙トレイ15上に排出される。
【0020】
本実施形態において、記録媒体PWの表面上に形成されるトナー画像は、最上層から順に、透明トナー、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、黒トナーの順序でトナー層が重なって構成される。有色トナーと透明トナーとを用いて立体的画像を形成する従来の構成では、有色トナーの階調制御については面積階調方式を採用していたが、透明トナーの階調制御については濃度階調方式を採用していた。このように異なる階調制御方式を併用していたため、着色された立体的画像を形成するための作像プロセスにおいて複雑な構成が必要であった。本実施形態では、後述するように、透明トナーの階調制御についても面積階調方式を採用するので、すべてのトナーの階調制御が面積階調方式に統一されている。よって、従来構成よりも、構成が簡略化され、部品点数や製作コストの面で有利である。
【0021】
図2は、立体的画像の画像形成プロセスの主要な制御に関わる画像処理部600の制御ブロック図である。
立体的画像の画像形成プロセスの制御を担う画像処理部600は、所定の画像処理を実行するためのASICやメモリを備えており、外部ホスト装置700からインターフェースを介して取得したRGB形式の画像情報に基づいて、プリンタ部100で処理可能な形式の画像情報を生成する。プリンタ部100が処理可能な形式の画像情報とは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、透明(T)の各トナーに対応した色情報の集合のことである。
【0022】
インターフェースを介して取得されたRGB形式の画像情報は、まず、補正処理部50に供給される。補正処理部50は、画像情報の色空間をRGB形式からYMCK色空間に変換する色変換処理を行う。具体的には、RGB形式の画像情報に対し、メモリに記憶されているルックアップテーブルを適用して、Y、M、Cの3色の色成分を算出した後、周知の下色除去処理(UCR処理)を行うことにより、Kの色成分を算出する処理である。この色変換処理によって、RGB形式の画像情報を、Y、M、C、Kの4色の色成分からなる画像情報に変換することができる。以上のYMCK形式の画像情報に含まれる色成分は、各色のトナーの階調値を表している。
【0023】
このYMCK形式の画像情報であるYMCK階調データは、画像合成部56及び立体画像形成部60に送られる。立体画像形成部60における処理の詳細は後述するが、立体画像形成部60では立体的画像の画像情報である透明トナーの階調データ(版)を生成する。
【0024】
画像合成部56は、補正処理部50からのYMCK階調データと、立体画像形成部60からの透明トナー階調データとを合成し、その合成結果を出力階調補正部57へ出力する。出力階調補正部57では、利用者(ユーザー)の操作により外部ホスト装置700に入力された所定の媒体領域を発泡隆起させる隆起量を増減させる入力情報に基づいた調整や、黒色トナー像が形成されている領域を抽出し、そこに形成される透明トナー像の面積率を低めにする強制的な調整などが行われる。
【0025】
以下、本発明の特徴部分である、立体的画像の隆起量制御について説明する。
図3(a)は、3つの媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に付着する透明トナーT(IR)の付着面積が互いに異なるように、透明トナーT(IR)のみを記録媒体PWの表面上に付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。
図3(b)は、図3(a)に示す記録媒体PWをその表面に平行な方向から見たときの模式図である。
図3(c)は、記録媒体PWの媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3が隆起した状態を示す模式図である。
【0026】
本実施形態では、3つの媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3をそれぞれ所望の高さまで隆起させるのに必要な透明トナーT(IR)の付着量を、単位面積当たりの付着面積の違いによって調整している。言い換えると、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3の全面積に対する透明トナーT(IR)が付着した部分の面積の比率(以下「付着面積率」という。)を互いに異ならせることにより、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3の隆起量を制御する。本実施形態の面積階調制御は、網点階調法を利用したものを例に挙げて説明するが、他の面積階調法を採用してもよい。
【0027】
媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に対して赤外光定着装置16から赤外線を照射すると、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に付着している透明トナーT(IR)に含まれる赤外線吸収剤が発熱する。これにより、媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3が発熱した透明トナーT(IR)によって加熱される。本実施形態の記録媒体PWは、上述したように熱発泡性を有しているので、透明トナーT(IR)が付着した媒体部分が発泡し、これにより各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3が隆起する。このときの隆起量は、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3の加熱量に依存し、その加熱量は当該媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に付着する赤外線吸収剤の量すなわち透明トナーT(IR)の量に応じて決まる。
【0028】
図3(a)及び(b)に示す例では、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に付着する透明トナーT(IR)の付着面積率が互いに異なり、これに応じて各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3に付着する透明トナーの量も互いに異なっている。その結果、図3(c)に示すように、各媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3は、それぞれに付着する透明トナーの付着面積率に応じた隆起量(高さ)までそれぞれ発泡隆起する。その結果、透明トナー像T(IR)が付着した媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3が、透明トナー像T(IR)の付着していない媒体表面領域PWaよりも良好かつ確実に所望の高さまで隆起して凸部をなし、これにより記録媒体PW上に所望の凹凸が形成されて立体的画像が形成される。
【0029】
媒体表面領域PWb1,PWb2,PWb3を発泡隆起させるために用いられた透明トナーT(IR)は、定着処理後、薄い透明樹脂層として記録媒体PW上に存在しつづける。すなわち、本実施形態で用いる隆起剤は透明であるから、そのまま記録媒体PW上に残存していても、有色トナーによって記録媒体PW上に形成される着色画像が視認可能である。よって、立体的画像の着色に影響を与えることなく、立体的画像の隆起量を制御できる。
【0030】
透明トナーT(IR)の付着面積率は、階調データが8ビット(0〜255)である場合には、0/255〜255/255の256段階から選ぶことができる。図3の例では、図中左側に示す第1媒体表面領域PWb1は、透明トナー像T(IR)の付着面積率が100/255であり、図中中央に示す第2媒体表面領域PWb2は、透明トナー像T(IR)の付着面積率が150/255であり、図中右側に示す第3媒体表面領域PWb3は、透明トナー像T(IR)の付着面積率が50/255である場合の例である。
【0031】
第2媒体表面領域PWb2に付着した透明トナーT(IR)は、第1媒体表面領域PWb1の透明トナーT(IR)よりも付着面積率が高いので、第2媒体表面領域PWb2は、第1媒体表面領域PWb1よりも加熱量が多い。その分、その媒体部分の発泡度合いが大きくなるので、第2媒体表面領域PWb2は、第1媒体表面領域PWb1よりも相対的に隆起量が多くなり、図3(c)に示すように高さが高くなる。
【0032】
本実施形態において、記録媒体PWの隆起量(高さ)は透明トナーT(IR)の発熱量に比例し、透明トナーT(IR)の発熱量は透明トナーT(IR)の付着面積率に比例する関係にある。したがって、例えば、付着面積率が150/255である第2媒体表面領域PWb2の隆起量(高さ)は、付着面積率が100/255である第1媒体表面領域PWb1の隆起量(高さ)の1.5倍となる。
【0033】
従来構成のように、透明トナーの層厚を調整して隆起量を制御する場合には、目標とする透明トナーの層厚と実際に転写されて得られる透明トナーの層厚との誤差が大きいため、隆起箇所の高さを高精度に制御できず、立体的画像の品質が悪い。仮に、隆起箇所の高さを高精度に制御できたとしても、透明トナーを256階調という多段階で制御しようとすると、256段階という多段階で透明トナーの層厚を調整する必要があるが、トナーの層厚をこのような多段階で制御することは不可能に近い。
【0034】
これに対し、本実施形態のように透明トナーの付着面積率を調整することで隆起量を制御する場合、目標とする透明トナーの付着面積率と、実際に転写されて得られる透明トナーの付着面積率との誤差は小さい。そのため、隆起箇所の高さを高精度に制御することができ、高品質な立体的画像を形成することができる。更に、透明トナーを256階調という多段階で制御する場合でも、256段階という多段階で付着面積率を制御することは、一般的な画像形成装置の面積階調制御ですでに実現されており、容易に実現できる。
【0035】
次に、黒を除く有色トナーT(Y,M,C)の少なくとも1つ(以下「カラートナー」という。)と透明トナーT(IR)とを記録媒体PWの表面上に付着させて、着色された立体的画像を形成する場合の一例について説明する。
図4(a)は、カラートナーT(Y,M,C)が付着した2つの媒体表面領域PWb4,PWb5に対し、同じ付着面積率で透明トナーT(IR)を付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。
図4(b)は、図4(a)に示す記録媒体PWをその表面に平行な方向から見たときの模式図である。
図4(c)は、記録媒体PWの媒体表面領域PWb4,PWb5が隆起した状態を示す模式図である。
【0036】
このように着色された立体的画像を形成する場合、第1から第3の電子写真画像形成部P1,P2,P3においてそれぞれの着色領域に応じた各カラートナー像を中間転写ベルト10上に一次転写するとともに、そのトナー像に重なり合うように、隆起させたい各領域の隆起量に応じた透明トナーの像を中間転写ベルト10上に一次転写する。そして、このようにしてカラートナーT(Y,M,C)と透明トナーT(IR)とによって形成された中間転写ベルト10上のトナー画像を記録媒体PW上に二次転写した後、赤外光定着装置16により赤外線を照射して、カラートナーT(Y,M,C)を記録媒体PWに定着させるとともに、透明トナーT(IR)を発熱させて各媒体表面領域を発泡隆起させる。
【0037】
図中左側に示す媒体表面領域PWb4は、透明トナーT(IR)及びカラートナーがいずれも全領域に付着したものである。一方、図中右側に示す媒体表面領域PWb5は、カラートナーについては全領域に付着しているが、透明トナーT(IR)については、その一部の領域にだけ付着している。ただし、いずれの媒体表面領域PWb4,PWb5においても、透明トナーT(IR)の付着面積率は100/255である。
【0038】
これらの媒体表面領域PWb4,PWb5をに対し、赤外光定着装置16により赤外線を照射すると、図4(c)に示すように、各媒体表面領域PWb4,PWb5が、それぞれに付着する透明トナーの付着面積率に応じた隆起量(高さ)までそれぞれ発泡隆起する。その結果、透明トナー像T(IR)が付着した媒体表面領域PWb4,PWb5が、透明トナー像T(IR)の付着していない媒体表面領域PWaよりも良好かつ確実に所望の高さまで隆起して凸部をなし、これにより記録媒体PW上に所望の凹凸が形成されて立体的画像が形成される。なお、本例では、いずれの媒体表面領域PWb4,PWb5も透明トナーT(IR)の付着面積率が同じであるため、それぞれの隆起量(高さ)が同じになる。
【0039】
次に、カラートナーT(Y,M,C)と、黒トナーT(K)と、透明トナーT(IR)とを記録媒体PWの表面上に付着させて、着色された立体的画像を形成する場合の一例について説明する。
図5(a)は、カラートナーT(Y,M,C)が付着した2つの媒体表面領域PWb4,PWb7と、黒トナーT(K)が付着した1つの媒体表面領域PWb6に対し、透明トナーT(IR)を付着させた場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。
図5(b)は、図5(a)に示す記録媒体PWをその表面に平行な方向から見たときの模式図である。
図5(c)は、記録媒体PWの媒体表面領域PWb4,PWb6,PWb7が隆起した状態を示す模式図である。
【0040】
隆起させたい媒体表面領域に付着している有色トナーがカラートナーT(Y,M,C)である場合、例えば、カラートナーT(Y,M,C)が付着した媒体表面領域PWb4の隆起量(高さ)の半分の隆起量を得たいときは、上述したように、透明トナーT(IR)の付着面積率を、その媒体表面領域PWb4における透明トナーT(IR)の付着面積率である100/255の半分、すなわち50/255とすればよい。しかしながら、隆起させたい媒体表面領域に付着している有色トナーが黒トナーT(K)である場合、カラートナーT(Y,M,C)と同じように、透明トナーT(IR)の付着面積率を単純に媒体表面領域PWb4の半分にしても、その媒体表面領域PWb4の隆起量(高さ)の半分の隆起量を得ることができない。
【0041】
これは、黒トナーT(K)が、カラートナーT(Y,M,C)と比較して赤外線吸収効率が高く、赤外線照射時の発熱量がカラートナーT(Y,M,C)よりも高いことに依存する。すなわち、透明トナーT(IR)の付着面積率が同じであっても、黒トナーT(K)が付着した媒体表面領域の隆起量(高さ)は、カラートナーT(Y,M,C)が付着した媒体表面領域よりも高くなる。よって、カラートナーT(Y,M,C)を基準として付着面積率を制御する場合、黒トナーT(K)が付着する媒体表面領域について所望の隆起量(高さ)を得るには、その媒体表面領域に付着させる透明トナーT(IR)の付着面積率を補正する必要がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、画像処理部600における出力階調補正部57において、黒トナーT(K)が付着する媒体表面領域に対する透明トナーT(IR)の付着面積率を補正することとしている。具体的には、出力階調補正部57は、画像合成部56から黒トナーT(K)の階調データを受け取ったら、その黒トナーT(K)と重なる透明トナーの画像領域について、透明トナーの付着面積率を所定の割合だけ小さい値に変更する補正処理を行う。これにより、黒トナーT(K)が付着した媒体表面領域PWb6においては、透明トナーT(IR)の付着面積率がカラートナーの場合よりも少ないが、カラートナーの場合と同等の隆起量(高さ)が得られる。
【0043】
一方、隆起させたい媒体表面領域に付着している有色トナーがカラートナーT(Y,M,C)である場合、上述したように、例えば、カラートナーT(Y,M,C)が付着した媒体表面領域PWb4の隆起量(高さ)の1.5倍の隆起量を得たいときは、補正処理を行わずに、透明トナーT(IR)の付着面積率を、その媒体表面領域PWb4における透明トナーT(IR)の付着面積率である100/255の1.5倍、すなわち150/255とすればよい。これにより、カラートナーT(Y,M,C)が付着した媒体表面領域PWb7においては、カラートナーT(Y,M,C)が付着した媒体表面領域PWb4の1.5倍の隆起量(高さ)が得られる。
【0044】
次に、隆起量(高さ)が滑らかに変化する部分を有する立体的画像を形成する場合の一例について説明する。
図6(a)は、カラートナーによるベタ画像が付着した媒体表面領域に対し、図中左側から右側に向けて隆起量が徐々に増加する傾斜面を有する立体的画像を形成する場合の記録媒体表面をその法線方向から見たときの模式図である。
図6(b)は、図6(a)に示す記録媒体PWをその表面に平行な方向から見たときの模式図である。
図6(c)は、記録媒体PWの媒体表面領域が隆起した状態を示す模式図である。
【0045】
本例では、記録媒体PW上にカラートナーT(Y,M,C)によるベタ画像を形成し、図中左側から右側に向けてそのベタ画像の画像濃度が減少しているものとし、図中左側の高濃度部PWb8から図中右側の低濃度部PWb9にかけて一定の割合で隆起量(高さ)が増加する立体的画像を形成する。従来構成のように透明トナーT(IR)の層厚によって隆起量(高さ)を制御する場合、図7(b)に示すように、高濃度部PWb8上の透明トナー像T(IR)の層厚は薄くし、低濃度部PWb9上の透明トナー像T(IR)の層厚は厚くし、高濃度部PWb8から低濃度部PWb9にかけて層厚が一定の割合で増加した透明トナーT(IR)を記録媒体上に形成する必要がある。仮に、このように層厚が一定の割合で増加した透明トナーT(IR)を記録媒体上に形成できたとすれば、図7(c)に示すように、隆起量(高さ)が滑らかに変化する傾斜面を得ることが可能である。
【0046】
しかしながら、上述したとおり、層厚が一定の割合で増加した透明トナーT(IR)を記録媒体上に形成することは、実際には困難である。仮に、感光体1上において所望の層厚をもった透明トナーT(IR)を形成できたとしても、これを転写した後は感光体上の層厚をそのまま維持することはできない。そのため、記録媒体上に形成される透明トナーT(IR)の層は、図7(b)に示すような層厚が一定の割合で増加するようなものとはならず、実際には、図8(b)に示すように、ばらついた層厚を有するものとなる。その結果、記録媒体上には、図8(c)に示すように、隆起量(高さ)がばらついた立体的画像が形成され、図中左側の高濃度部PWb8から図中右側の低濃度部PWb9にかけて一定の割合で隆起量(高さ)が増加するという所望の立体的画像を形成することはできない。
【0047】
これに対し、本実施形態では、透明トナーT(IR)の付着面積率によって隆起量(高さ)を制御するので、図6(b)に示すように、図中左側の高濃度部PWb8から図中右側の低濃度部PWb9にかけて一定の割合で付着面積率が増加するように、透明トナーT(IR)の像を感光体1上に形成する。本実施形態では、透明トナーT(IR)が付着している部分の層厚は一様であり、感光体1の透明トナーT(IR)を中間転写ベルト10を経て記録媒体PW上に転写する場合でも、記録媒体PW上における透明トナーT(IR)の付着面積率は、感光体1上に形成した透明トナーT(IR)の付着面積率をほぼ維持できる。その結果、図6(c)に示すように、高濃度部PWb8から低濃度部PWb9にかけて隆起量(高さ)が一定の割合で増加した傾斜面を記録媒体上に形成することができる。
【0048】
なお、ここでは、隆起量(高さ)が滑らかに変化する部分を有する立体的画像として、隆起量(高さ)が一定の割合で増加する傾斜面を有する場合について例示したが、丸みを帯びた凸部などを有する立体的画像も同様に高い精度で形成することができる。
【0049】
また、上述した説明では、画像濃度が高い箇所(高濃度部)における隆起量(高さ)が低く、画像濃度が低い箇所(低濃度部)における隆起量(高さ)が高くなる例について説明したが、逆に、高濃度部の隆起量(高さ)を高くし、低濃度部の隆起量(高さ)を低くした立体的画像を形成してもよい。この場合、特に、グレースケールにおいては、黒い部分はその画像濃度に応じて隆起し、白い部分は隆起せずに平らになる。
【0050】
ここで、図9に示すような山の景色の立体的画像を形成する場合について考える。この場合、グレースケール変換部51は、山の景色に係る入力画像情報に基づく補正処理部50からのYMCK階調データを、図9(a)に示すようなグレースケール画像の画像データに変換し、これを画像選択部53へ出力する。また、グレースケール変換部51は、グレースケール画像の画像データをネガポジ反転部52にも出力する。ネガポジ反転部52は、図9(a)に示すグレースケール画像のネガポジ反転させた図9(b)に示すネガポジ反転画像の画像データを生成し、これを画像選択部53へ出力する。
【0051】
画像選択部53は、入力された2つの画像データに基づいて、図9(a)に示すグレースケール画像及び図9(b)に示すネガポジ反転画像を、操作表示部200に表示させ、利用者にいずれの画像がより自然な立体的画像が得られるかを選択させる。本例における山の景色の入力画像は、手前の山が背景の山よりも高い画像濃度で表現されている。一般には、手前の山が背景の山よりも隆起している立体的画像の方が自然な立体的画像となるので、利用者は、操作表示部200に表示された2つの画像を比較して、画像濃度が高い箇所ほど隆起量が多くなる方の画像、すなわち、図9(a)に示すグレースケール画像が選択される。
【0052】
利用者が操作表示部200を操作して図9(a)に示すグレースケール画像を選択する選択操作を行ったら、画像選択部53は、この選択操作に応じたグレースケール画像の画像データを、立体画像領域選択部54に送る。立体画像領域選択部54は、利用者が隆起させたくない画像領域を選択させる処理を行う。例えば、図9(a)に示すグレースケール画像において、一般には、背景の空に対応する画像領域Aは隆起させない方が、山に対応する画像領域の立体的部分が際だつので、好まれる。利用者は、このように隆起させない方がよい画像領域を指定して、その画像領域の隆起量をゼロにするように指示する指示操作を操作表示部200に対して行うことができる。このときの指示操作は、例えば、画像処理部600の画像処理により予め画像の輪郭を自動認識して区分された画像領域を利用者が指示する方法でもよいし、隆起させない方がよい画像領域をマウスやタッチペン等で利用者が直接指定する方法でもよい。立体画像領域選択部54は、利用者の指示操作により指示された画像領域を白色にする処理を実行する。これにより、図9(c)に示すように、例えば、背景の空に対応する画像領域Aが白色に変換されたグレースケール画像が得られる。
【0053】
また、例えば、図10に示すようなマグカップの立体的画像を形成する場合について考える。この場合も、山の風景の場合と同様に、画像選択部53によって、図10(a)に示すグレースケール画像と図10(b)に示すネガポジ反転画像が操作表示部200に表示される。この場合、一般には、手前に迫り出した取手部分を他の箇所よりも隆起させるのが自然である。図10(a)に示すグレースケール画像では、取手部分が白い一方で、マグカップ本体の影の部分(マグカップ本体の奥の方)が黒くなっているため、このグレースケール画像が選択されると、隆起させたい立体的に形成したい取手部分が平らになり、隆起させる必要がなり影の部分(マグカップ本体の奥の方)が隆起して立体的なものとなる。
【0054】
このような場合、利用者は、図10(b)に示すネガポジ反転画像を選択すれば、取手部分のように手前に突出している部分の画像濃度が高くなって隆起した立体部分となり、かつ、マグカップ本体の影の部分のように奥の方の箇所の画像濃度が低くなって隆起しない(又は隆起量が低い)部分となる。その結果、より自然な立体的画像を形成することができる。
【0055】
また、図10(a)に示すグレースケール画像において、一般には、背景、マグカップ本体の内側部分に対応する画像領域は隆起させない方が、より自然な立体的画像を得る場合に好まれる。利用者は、このように隆起させない方がよい画像領域については、操作表示部200を操作して選択することができる。立体画像領域選択部54は、利用者の選択操作により選択された画像領域を白色にする処理を実行し、図10(c)に示すように、例えば、背景やマグカップ本体の内側部分に対応する画像領域が白色に変換されたグレースケール画像が得られる。
【0056】
グレースケール画像よりもネガポジ反転画像を選択した方が好まれるケースは、立体的でかつ白色の被写体画像で多く見受けられる。例えば、人間の顔や白い建造物などの被写体画像の立体的画像を形成する場合には、ネガポジ反転画像を選択した方が好まれることが多い。
【0057】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
入力された画像情報に基づいて、記録媒体PWの表面を隆起させる透明トナーT(IR)等の隆起剤を記録媒体PWの表面に付着させることにより、該隆起剤が付着した媒体表面領域を隆起させて該記録媒体PW上に立体的画像を形成する画像形成装置において、単位面積当たりの媒体表面領域に付着する隆起剤の付着面積を示す付着面積率を変更することにより、隆起させる媒体表面部分の隆起量を制御する立体画像形成部60等の隆起量制御手段を有することを特徴とする。
これによれば、記録媒体上の隆起剤の層厚を変更して隆起量を制御する場合よりも、隆起量を高精度に制御することができるので、高品質な立体的画像を形成することができる。
【0058】
(態様B)
上記態様Aにおいて、上記隆起量制御手段は、上記付着面積を面積階調方式により変更することを特徴とする。
これによれば、隆起量を多段階で高精度に制御することが容易となる。
【0059】
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、上記隆起剤は透明であることを特徴とする。
これによれば、立体的画像の着色に影響を与えることなく、又は、立体的画像の着色に与える影響が少ない状態で、立体的画像の隆起量を制御することができる。
【0060】
(態様D)
上記態様A〜Cのいずれかの態様において、上記記録媒体PWは、熱膨張性材料で形成されたものであり、上記隆起剤は、赤外光等の電磁波の照射を受けることで発熱する赤外光吸収剤等の物質を含んでおり、上記記録媒体PWの表面に付着させた隆起剤に上記電磁波を照射する赤外光定着装置16等の電磁波照射手段を設け、該電磁波照射手段が照射する電磁波によって該隆起剤を発熱させて、該隆起剤が付着した媒体部分を膨張させてその媒体表面領域を隆起させることを特徴とする。
これによれば、簡易な構成で、隆起量が高精度に制御された立体的画像を形成することができる。
【0061】
(態様E)
上記態様A〜Dのいずれかの態様において、上記隆起剤を付着させた後の記録媒体PWの表面又は上記隆起剤を付着させる前の記録媒体PWの表面に、立体的画像を着色する有色トナーT(Y,M,C,K)等の着色物質を付着させる第1〜第4の電子写真画像形成部P1,P2,P3,P4等の着色物質付着手段を有することを特徴とする。
これによれば、着色された立体的画像を形成することができる。
【0062】
(態様F)
上記態様Eにおいて、上記隆起量制御手段は、黒トナーT(K)等の着色物質と隆起剤とが記録媒体PW上で重なる媒体表面領域については、該媒体表面領域に付着する着色物質の作用による隆起量を差し引いた隆起量となるように、上記付着面積を変更することを特徴とする。
これによれば、隆起剤による隆起量と着色物質の作用による隆起量とを併せて目標とする隆起量となり、着色物質の作用による隆起量の誤差を少なくして、より高精度な隆起量制御が可能となる。
【0063】
(態様G)
上記態様A〜Fのいずれかの態様において、上記隆起量制御手段は、記録媒体PW上における各媒体表面領域の隆起量を、入力された画像情報に基づく画像の画像濃度に基づいて決定し、決定した各媒体表面領域の隆起量に従って各媒体表面領域に対応する上記付着面積を決定することを特徴とする。
立体物を撮影した写真画像などの入力画像の画像濃度は、入力画像上において当該立体物の手前に迫り出した部分や奥に引っ込んだ部分に対応している場合が多い。本態様Gによれば、入力された画像情報の画像濃度に応じて隆起量が制御されるので、立体物をより自然な形で表現した立体的画像を形成することが可能となる。
【0064】
(態様H)
上記態様A〜Gのいずれかの態様において、入力された画像情報に基づく画像の少なくとも一箇所の画像領域についての目標隆起量を指示する利用者の操作を受け付ける操作表示部200等の操作受付手段を有し、上記隆起量制御手段は、上記操作受付手段が受け付けた利用者操作によって指示された画像領域が該利用者操作によって指示された目標隆起量となるように、該画像領域に対応する記録媒体PW上の媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする。
これによれば、利用者の要望に応じた立体的画像を形成することができる。
【0065】
(態様I)
上記態様Hにおいて、入力された画像情報が多階調カラー画像を示すものである場合に該多階調カラー画像に対応したグレースケール画像を表示するグレースケール変換部51、ネガポジ反転部52、操作表示部200等のグレースケール画像表示手段を有し、上記隆起量制御手段は、記録媒体PW上における各媒体表面領域の隆起量がグレースケール画像表示手段に表示されるグレースケール画像(上記実施形態におけるグレースケール画像のほか、上記実施形態におけるネガポジ反転画像も含まれる。)の画像濃度に対応するように、各媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする。
これによれば、利用者は、グレースケール画像表示手段に表示されるグレースケール画像の画像濃度の違いによって、立体的画像の形成前に、形成される立体的画像における各領域の隆起量を把握できる。よって、利用者は、これを見て、上記操作受付手段に対して適切な利用者操作を入力することができ、利用者所望の立体的画像を容易に得ることができる。
【0066】
(態様J)
上記態様Iにおいて、上記グレースケール画像表示手段は、上記グレースケール画像として、互いにネガポジ反転した2種類のグレースケール画像(上記実施形態におけるグレースケール画像とネガポジ反転画像)を表示するものであり、上記操作受付手段が受け付ける利用者の操作には、上記2種類のグレースケール画像のいずれかを選択する操作が含まれ、上記隆起量制御手段は、記録媒体上における各媒体表面領域の隆起量が上記操作受付手段により受け付けた利用者の操作に対応する種類のグレースケール画像の画像濃度に対応するように、各媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする。
入力画像の内容によっては、入力画像の画像濃度が高い画像部分を隆起させた方が自然な立体的画像となる場合と、入力画像の画像濃度が低い画像部分を隆起させた方が自然な立体的画像となる場合がある。本態様Jによれば、利用者が適切な選択操作を行うことで、入力画像の内容がいずれの場合であっても、自然な立体的画像を形成することができる。
【0067】
(態様K)
上記態様H〜Jのいずれかの態様において、上記操作受付手段が受け付ける利用者の操作には、入力された画像情報に基づく画像の少なくとも一箇所の画像領域(図9に示す画像では背景の空の領域、図10に示す画像では背景やマグカップ本体の内側部分の領域)を指定して、その画像領域の目標隆起量を指示する利用者操作が含まれ、上記隆起量制御手段は、上記操作受付手段が画像領域を指定して該画像領域の目標隆起量を指示する利用者操作を受け付けた場合には、該画像領域に対応した記録媒体PW上における媒体表面領域の隆起量が該利用者操作に対応する目標隆起量となるように該媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする。
これによれば、利用者の要望に応じて個別に画像領域を指定して目標隆起量を指示することができるので、利用者の要望に応じた立体的画像をより適切に形成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 感光体
2 帯電装置
3 現像装置
10 中間転写ベルト
11 レーザー走査機構
16 赤外光定着装置
50 補正処理部
51 グレースケール変換部
52 ネガポジ反転部
53 画像選択部
54 立体画像領域選択部
56 画像合成部
57 出力階調補正部
60 立体画像形成部
100 プリンタ部
200 操作表示部
300 スキャナ
600 画像処理部
700 外部ホスト装置
P1,P2,P3,P4,P5 電子写真画像形成部
T(Y,M,C,K) 有色トナー
T(IR) 透明トナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2006−220740号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像情報に基づいて、記録媒体の表面を隆起させる隆起剤を該記録媒体の表面に付着させることにより、該隆起剤が付着した媒体表面領域を隆起させて該記録媒体上に立体的画像を形成する画像形成装置において、
単位面積当たりの媒体表面領域に付着する隆起剤の付着面積を変更することにより、隆起させる媒体表面部分の隆起量を制御する隆起量制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記隆起量制御手段は、上記付着面積を面積階調方式により変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
上記隆起剤は、透明であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記記録媒体は、熱膨張性材料で形成されたものであり、
上記隆起剤は、電磁波の照射を受けることで発熱する物質を含んでおり、
上記記録媒体の表面に付着させた隆起剤に上記電磁波を照射する電磁波照射手段を設け、該電磁波照射手段が照射する電磁波によって該隆起剤を発熱させて、該隆起剤が付着した媒体部分を膨張させてその媒体表面領域を隆起させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記隆起剤を付着させた後の記録媒体の表面又は上記隆起剤を付着させる前の記録媒体の表面に、立体的画像を着色する着色物質を付着させる着色物質付着手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
上記隆起量制御手段は、上記着色物質と上記隆起剤とが記録媒体上で重なる媒体表面領域については、該媒体表面領域に付着する着色物質の作用による隆起量を差し引いた隆起量となるように、上記付着面積を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記隆起量制御手段は、記録媒体上における各媒体表面領域の隆起量を、入力された画像情報に基づく画像の画像濃度に基づいて決定し、決定した各媒体表面領域の隆起量に従って各媒体表面領域に対応する上記付着面積を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
入力された画像情報に基づく画像の少なくとも一箇所の画像領域についての目標隆起量を指示する利用者の操作を受け付ける操作受付手段を有し、
上記隆起量制御手段は、上記操作受付手段が受け付けた利用者操作によって指示された画像領域が該利用者操作によって指示された目標隆起量となるように、該画像領域に対応する記録媒体上の媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、
入力された画像情報が多階調カラー画像を示すものである場合に該多階調カラー画像に対応したグレースケール画像を表示するグレースケール画像表示手段を有し、
上記隆起量制御手段は、記録媒体上における各媒体表面領域の隆起量がグレースケール画像表示手段に表示されるグレースケール画像の画像濃度に対応するように、各媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記グレースケール画像表示手段は、上記グレースケール画像として、互いにネガポジ反転した2種類のグレースケール画像を表示するものであり、
上記操作受付手段が受け付ける利用者の操作には、上記2種類のグレースケール画像のいずれかを選択する操作が含まれ、
上記隆起量制御手段は、記録媒体上における各媒体表面領域の隆起量が上記操作受付手段により受け付けた利用者の操作に対応する種類のグレースケール画像の画像濃度に対応するように、各媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記操作受付手段が受け付ける利用者の操作には、入力された画像情報に基づく画像の少なくとも一箇所の画像領域を指定して、その画像領域の目標隆起量を指示する利用者操作が含まれ、
上記隆起量制御手段は、上記操作受付手段が画像領域を指定して該画像領域の目標隆起量を指示する利用者操作を受け付けた場合には、該画像領域に対応した記録媒体上における媒体表面領域の隆起量が該利用者操作に対応する目標隆起量となるように該媒体表面領域の上記付着面積を決定することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97211(P2013−97211A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240696(P2011−240696)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】