説明

画像投写装置

【課題】走査方式の画像投写装置において、簡易な構成にて、有効画像領域の走査中に各レーザ光源から出射されるレーザ光の光強度を制御する。
【解決手段】画像投写装置は、赤色、緑色、青色のレーザ光をそれぞれ出射する赤色レーザ部201と、緑色レーザ部202と、青色レーザ部203と、各レーザ光を投写面上で走査させるMEMSミラー300と、各レーザ光の一部を分割するビームスプリッタ213と、分割されたレーザ光を受光するモニタPD214を備える。レーザ部201,202,203は、1画素区間において時分割で赤色、緑色、青色のレーザ光を出射する。モニタPD214は、1画素区間において赤色、緑色、青色のレーザ光を個別に受光し、受光量に応じた出力信号を出力する。この出力信号により、次の画素区間においてレーザ部201,202,203から出射されるレーザ光の光強度が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投写装置に関し、特に、光を投写面上で走査することによって画像を投写する、いわゆる走査方式の画像投写装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン上に画像を投写する投写装置(プロジェクタ)として、レーザ光を走査させるタイプのプロジェクタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このプロジェクタでは、一般に、赤色、緑色、青色の3色のレーザ光を発する光源が配され、これらレーザ光を可動型のミラーを用いて投写面上で走査させることによりカラー画像が投写される。
【0003】
このようなプロジェクタでは、投写画像のホワイトバランスが適正に設定されるように、レーザ光源から出射される赤色、緑色、青色の光強度が制御される必要がある。かかる光強度の制御は、赤色、緑色、青色のレーザ光源から出射された光量がモニタされることにより行われ得る(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
図7(a)ないし(c)は、このようにレーザ光源の光強度が制御される際の構成例を示す図である。
【0005】
レーザ光源11,12,13から出射された赤色、緑色、青色のレーザ光(以下、それぞれ「R光」、「G光」、「B光」という)は、それぞれ、集光レンズ14,15,16で集光されて平行よりやや狭まった光となる。さらに、R光、G光、B光は、それぞれ、アパーチャ17,18,19を通過することで、所定の形状およびサイズとなる。アパーチャ17を通過したR光は、ミラー20に入射される。また、アパーチャ18を通過したG光は、ダイクロイックプリズム21に入射され、アパーチャ19を通過したB光は、ダイクロイックプリズム22に入射される。
【0006】
ダイクロイックプリズム21は、G光を反射するとともに、R光を透過させる。ダイクロイックプリズム22は、B光を反射するとともに、R光およびG光を透過させる。
【0007】
ミラー20に入射したR光は、ミラー20によって反射されて略90度折り曲げられ、2つのダイクロイックプリズム21、22を透過し、ビームスプリッタ23に向かう。また、ダイクロイックプリズム21に入射したG光は、ダイクロイックプリズム21によって反射されて略90度折り曲げられ、ダイクロイックプリズム22を透過し、ビームスプリッタ23に向かう。ダイクロイックプリズム22に入射したB光は、ダイクロイックプリズム22によって反射されて略90度折り曲げられ、ビームスプリッタ23に向かう。
【0008】
こうして、R光、G光、B光は、ミラー20、ダイクロイックプリズム21,22によって光軸が整合され、ビームスプリッタ23に入射される。なお、以下、ダイクロイックプリズム22から出射されるR光、G光、B光をまとめて「投写光」と称することとする。
【0009】
ビームスプリッタ23は、投写光を所定の比率にて反射および透過する。ビームスプリッタ23を透過した投写光は、光源ユニット10から出射される。また、ビームスプリッタ23によって反射された投写光は、モニタPD(Photo Detector)24に入射される。
【0010】
同図(b)は、投写光が投写面上で走査されることを示す図である。光源ユニット10から出射された投写光は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー(図示せず)によって、投写面上に走査される。投写面上の投写光の走査は、左上から順に、有効画像領域を網羅するよう行われる。その際、有効画像領域よりもやや広く走査が行われる。続いて、モニタ走査領域の走査が行われる。モニタ走査領域の走査の後、左上に戻り、再び有効画像領域の走査が行われる。
【0011】
なお、有効画像領域外の走査時における投写光は、便宜上、同図(b)に示されているが、実際には光源ユニット10と投写面との間に配される遮光窓(図示せず)により、投写面上に到達しないよう遮光される。
【0012】
同図(c)は、モニタ走査領域の走査時におけるR光、G光、B光の駆動電流を示すタイミングチャートである。モニタ走査領域に対して投写光が走査される場合、図示の如く、レーザ光源11,12,13は、それぞれ、重なり合わないタイミングでR光、G光、B光を出射する。この場合、投写面上のモニタ走査領域には、同図(b)に示されるように、R光、G光、B光が個別に走査される区間が生じる。
【0013】
こうすると、有効画像領域の走査に加えて、モニタ走査領域の走査時に、R光、G光、B光が、それぞれ重なり合わないタイミングでモニタPD24に入射される。よって、モニタPD24で受光されるR光、G光、B光の光量が個別にモニタされることにより、レーザ光源11,12,13から出射されるR光、G光、B光の光強度が制御される。
【0014】
また、同図(d)は、同図(a)の構成と比べて、ビームスプリッタ23およびモニタPD24が除去され、替わりに、ビームスプリッタ25,26,27と、モニタPD28,29,30が追加された構成例を示す図である。
【0015】
アパーチャ17,18,19から出射されるR光、G光、B光は、それぞれ、ビームスプリッタ25,26,27に入射される。ビームスプリッタ25,26,27は、それぞれ、入射されたR光、G光、B光を所定の比率にて反射および透過する。ビームスプリッタ25,26,27を透過したR光、G光、B光は、それぞれ、ミラー20、ダイクロイックプリズム21、22に入射される。ビームスプリッタ25,26,27によって反射されたR光、G光、B光は、それぞれ、モニタPD28,29,30に入射される。
【0016】
この場合も、モニタPD28,29,30で受光されるR光、G光、B光の光量が個別にモニタされることにより、レーザ光源11,12,13から出射されるR光、G光、B光の光強度が制御される。
【特許文献1】特開2006−330583号公報
【特許文献2】特開2006−317681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、同図(a)ないし(c)に示す構成例では、モニタ走査領域に対する走査が有効画像領域の僅かに外側に対して行われるような場合には、R光、G光、B光が遮光窓によって遮光されずに有効画像領域内に投写されるという問題が生じる。他方、かかる走査が有効画像領域から大きく離れて行われる場合には、R光、G光、B光が有効画像領域に投写されることはないものの、MEMSミラーの走査角度が大きくなり、消費電力が増大するという問題が生じる。さらに、何れの場合も、有効画像領域の走査の後にR光、G光、B光の光量がモニタされるため、有効画像領域の走査中は光強度の制御が行われないという問題が生じる。
【0018】
また、同図(d)に示す構成例では、有効画像領域の走査中も光強度の制御が可能であるものの、部品点数が増大し、装置全体が複雑化するという問題が生じる。
【0019】
本発明は、このような課題を解消するものであり、簡易な構成にて、レーザ光源から出射されるR光、G光、B光の光量を有効画像領域の走査中にモニタ可能な画像投写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る画像投写装置は、複数の光源と、前記各光源からの光を投写面上において走査させる光走査部と、前記各光源からの光を統合して前記光走査部に導く光学系と、統合された前記各光源からの光の一部を分割する分割素子と、前記分割素子により分割された分割光を受光する光検出器と、前記光検出器からの出力信号と映像信号に基づいて前記複数の光源を制御する制御回路とを備える。ここで、前記制御回路は、1画素区間において時分割で前記各光源から前記光を出射させるとともに前記各光源の発光区間における前記光検出器からの出力信号に基づいて前記各光源に対する発光強度の調整を行う。
【0021】
本発明に係る画像投写装置によれば、1画素区間において時分割で前記各光源から前記光を出射されるため、有効画像領域の走査中も、光検出器からの出力信号をもとに各光源からの光の強度をモニタすることができる。よって、有効画像領域の走査中においても、適宜、各光源に対する光強度の調整を行うことができる。
【0022】
なお、本発明に係る画像投写装置では、一つの分割素子と一つの光検出器にて各光源からの光の強度がモニタされるため、図7(d)の構成例に比べ、部品点数の削減と構成の簡素化を図ることができる。
【0023】
このように、本発明に係る画像投写装置によれば、簡易な構成にて、各光源から出射される光の光量を有効画像領域の走査中に適宜モニタすることができる。
【0024】
本発明に係る画像投写装置において、前記制御回路は、前記1画素区間ごとに前記各光源の発光強度を調整する構成とされ得る。こうすると、一画素毎に発光強度が適正化されるため、投写画像の品質を高めることができる。
【0025】
また、前記制御回路は、一つの前記光源の連続する複数の前記発光区間における前記光検出器からの前記出力信号に基づいて、当該光源の発光強度を調整する構成とされ得る。こうすると、一つの発光区間における出力信号に突発的に大きなノイズが生じても、発光強度の調整がこれに敏感に反応することがない。よって、安定した発光強度の調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、簡易な構成にて、レーザ光源から出射されるレーザ光の光量を有効画像領域の走査中にモニタ可能な画像投写装置を提供することができる。
【0027】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図である。図1(a)はプロジェクタを上方から見た図であり、図1(b)はプロジェクタを側方から見た図である。
【0030】
図1を参照して、プロジェクタは、キャビネット100と、キャビネット100内に配された、光源ユニット200、MEMSミラー300、反射ミラー400を備えている。
【0031】
光源ユニット200は、赤色レーザ部201、緑色レーザ部202、青色レーザ部203の3つのレーザ部と、3つの集光レンズ204,205,206と、3つのアパーチャ207,208,209と、ミラー210と、2つのダイクロイックプリズム211,212と、ビームスプリッタ213と、モニタPD214を備えている。
【0032】
赤色レーザ部201からは赤色のレーザ光(以下、「R光」という)が出射される。また、緑色レーザ部202からは緑色のレーザ光(以下、「G光」という)が出射される。さらに、青色レーザ部203からは青色のレーザ光(以下、「B光」という)が出射される。
【0033】
各レーザ部201,202,203から出射されたR光、G光、B光は、それぞれ、集光レンズ204,205,206で集光されて平行よりやや狭まった光となる。さらに、R光、G光、B光は、それぞれ、アパーチャ207,208,209を通過することで、所定の形状およびサイズとなる。アパーチャ207を通過したR光は、ミラー210に入射される。また、アパーチャ208を通過したG光は、ダイクロイックプリズム211に入射され、アパーチャ209を通過したB光は、ダイクロイックプリズム212に入射される。
【0034】
ダイクロイックプリズム211は、G光を反射するとともに、R光を透過させる。ダイクロイックプリズム212は、B光を反射するとともに、R光およびG光を透過させる。
【0035】
ミラー210に入射したR光は、ミラー210によって反射されて略90度折り曲げられ、2つのダイクロイックプリズム211、212を透過し、ビームスプリッタ213に向かう。また、ダイクロイックプリズム211に入射したG光は、ダイクロイックプリズム211によって反射されて略90度折り曲げられ、ダイクロイックプリズム212を透過し、ビームスプリッタ213に向かう。ダイクロイックプリズム212に入射したB光は、ダイクロイックプリズム212によって反射されて略90度折り曲げられ、ビームスプリッタ213に向かう。
【0036】
こうして、R光、G光、B光は、ミラー210、ダイクロイックプリズム211,212によって光軸が整合され、ビームスプリッタ213に入射される。なお、以下では、ビームスプリッタ213に入射されるR光、G光、B光をまとめて「投写光」と称することとする。
【0037】
ビームスプリッタ213は、投写光を所定の比率にて反射および透過する。ビームスプリッタ213を透過した投写光は、光源ユニット200から出射され、MEMSミラー300に入射される。また、ビームスプリッタ213によって反射された投写光は、モニタPD214に入射される。モニタPD214における投写光の検出については、追って図4を参照して説明する。
【0038】
図2を参照して、MEMSミラー300の構成を説明する。MEMSミラー300は、走査ミラー301と、駆動基板302と、第1駆動コイル303と、第2駆動コイル304と、外枠305と、一対の第1磁石306と、一対の第2磁石307によって構成されている。
【0039】
駆動基板302は、走査ミラー301を2軸方向に回動可能に保持するものであり、保持板302aと、可動枠302bと、固定枠302cを備えている。
【0040】
保持板302aは、可動枠302b内に配され、X軸方向(縦方向)に延びる一対の第1トーションバー302dによって可動枠302bと連結されている。保持板302aには、走査ミラー301が配されており、また、走査ミラー301の外周に、ループ状に第1駆動コイル303が配されている。
【0041】
可動枠302bは、固定枠302c内に配され、Y軸方向(横方向)に延びる一対の第2トーションバー302eによって固定枠302cと連結されている。可動枠302bには、枠に沿って、ループ状に第2駆動コイル304が配されている。
【0042】
駆動基板302は、外枠305の開口305aを覆うような状態で、外枠305に固定されている。これにより、保持板302aおよび可動枠302bが開口305a内に配されることになる。
【0043】
外枠305には、Y軸方向において互いに対向する一対の第1磁石306が配されており、また、X軸方向において互いに対抗する一対の第2磁石307が配されている。第1磁石306は、永久磁石であり、第1トーションバー302dに直交する方向(Y軸方向)に所定磁束密度の磁界を付与する。また、第2磁石307は、永久磁石であり、第2トーションバー302eに直交する方向(X軸方向)に所定磁束密度の磁界を付与する。
【0044】
こうして、第1駆動コイル303に電流が印加されると、保持板302aにローレンツ力による回転トルクが生じ、保持板302aは、第1トーションバー302dの復元力に抗してY−Z面内方向に回動する。また、第2駆動コイル304に電流信号が印加されると、可動枠302bにローレンツ力による回転トルクが生じ、可動枠302bは、第2トーションバー302eの復元力に抗してX−Z面内方向に回動する。このように、保持板302aおよび可動枠302bが回動することにより、走査ミラー301が2軸駆動される。
【0045】
プロジェクタによる投写時、第1駆動コイル303には、保持板302aに対する共振周波数(たとえば、20KHz)の交流電流信号(以下、「水平電流信号」という)が印加される。これにより、保持板302a、すなわち走査ミラー301は、共振による振幅でY−Z面内方向(水平方向)に往復運動する。また、第2駆動コイル304には、所定周波数(たとえば、60Hz)の交流電流信号(以下、「垂直電流信号」という)が印加される。これにより、可動枠302b、すなわち走査ミラー301は、X−Z面内方向(垂直方向)に往復運動する。
【0046】
図1に戻り、MEMSミラー300の走査ミラー301に入射した投写光は、走査ミラー301の回動角度に応じた方向に反射される。このとき、MEMSミラー300は、図1(b)に示すように、入射側の面が少し斜め上方を向くように傾けて配されており、また、光源ユニット200も投写光が少し上向きに出射されるよう傾けられている。これにより、投写光は、走査ミラー301によって全体的に斜め上向きに折り返され、光源ユニット200の上方に配された反射ミラー400に入射される。
【0047】
反射ミラー400は、自由曲面ミラーであり、その反射面が、所定の自由曲面形状に形成されている。反射ミラー400に入射した投写光は、反射ミラー400の曲面形状に応じた方向に反射され、キャビネット100に形成された出射窓101を通って、スクリーン面へ向かう。なお、反射ミラー400は、スクリーン面上の投写画像に歪みが生じないよう曲面形状が設定される。
【0048】
図3は、プロジェクタの駆動に係る回路構成を示すブロック図である。プロジェクタは、図1に示す各構成要素の他、I/V変換回路501と、変調信号生成回路502と、3つのレーザ駆動回路503,504,505と、ミラー駆動回路506と、ディスプレイ制御回路507を備えている。
【0049】
I/V変換回路501は、モニタPD214からの出力を電圧信号に変換し、変調信号生成回路502に出力する。
【0050】
変調信号生成回路502は、映像信号およびI/V変換回路501の出力信号に基づいて、R光、G光、B光を変調するための変調信号を生成し、生成した変調信号を、それぞれ、レーザ駆動回路503,504,505に出力する。ここで、変調信号生成回路502は、変調信号として、赤色レーザ部201、緑色レーザ部202および青色レーザ部203の出射強度のレベル値をレーザ駆動回路503、504、505に出力する。
【0051】
レーザ駆動回路503,504,505は、それぞれ、入力されたR光、G光、B光の変調信号に応じた駆動電流を、各レーザ部201,202,203に供給する。これにより、レーザ部201,202,203から出射されるR光、G光、B光の光強度が変調信号生成回路502にて設定されたレベル値に調整される。
【0052】
ミラー駆動回路506は、上述した水平電流信号および垂直電流信号をMEMSミラー300に供給する。ディスプレイ制御回路507は、ミラー駆動回路506による投写光のスクリーン面上におけるスキャン動作と、変調信号生成回路502の変調動作およびレーザ駆動回路503,504,505によるR光、G光、B光の駆動とを同期させる等、画像投写に関する各種の処理を制御する。
【0053】
上記の構成を備えることにより、プロジェクタによる投写時には、MEMSミラー300の走査ミラー301が2軸駆動され、光源ユニット200から出射された投写光が、MEMSミラー300および反射ミラー400を介して、スクリーン面上で2次元方向(水平方向と垂直方向)に走査される。これにより、映像信号に応じて変調されたR光、G光、B光による投写画像がスクリーン面に映し出される。
【0054】
図4は、レーザ部201,202,203の駆動電流、出射タイミングおよび出射時間について説明するタイミングチャートである。なお、同図には便宜上、1画素区間に亘ってR光、G光、B光を出射させる従前の制御方式(従来例)が併せて記載されている。横軸は、各図において経過時間を表す。縦軸は、同図(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)、(b−2)、(b−3)では赤色レーザ部201、緑色レーザ部202および青色レーザ部203の駆動電流であり、同図(c)ではモニタPD214の出力信号である。1画素区間とは、各色のレーザ光が、投写面上の1画素に対応する領域を水平方向に走査する期間のことである。
【0055】
従来例では、同図(a−1)、(a−2)、(a−3)で示されるように、R光、G光、B光が1画素区間に亘り発光されて、投写画像がスクリーン面上に映し出される。この場合、図1の構成では、モニタPD24にR光、G光、B光が同時に入射するため、各光の光量を個別にモニタすることができない。よって、この場合、投写画像がスクリーン面に映し出されている間は、赤色レーザ部201、緑色レーザ部202、青色レーザ部203に対するパワー制御(APC:Automatic Power Control)を行えない。
【0056】
したがって、この場合には、たとえば上記特許文献2のように、モニタPD24が個別にR光、G光、B光を受光できるよう、有効画像領域の後にモニタ走査領域が設けられ(図7(b)参照)、モニタ走査領域の走査時に、時分割でR光、G光、B光が出射される。
【0057】
しかしながら、この場合には、上記の如く、モニタ走査領域における走査が有効画像領域近傍で行われると、R光、G光、B光が有効画像領域内に投写されるという問題が生じる。また、かかる走査が有効画像領域から大きく離れたところで行われる場合には、MEMSミラーの走査角度が大きくなり、消費電力が増大するという問題が生じる。さらに、何れの場合も、有効画像領域の走査の後にR光、G光、B光の光量がモニタされるため、有効画像領域の走査中は光強度の制御が行われ得ないという問題が生じる。
【0058】
図4(b−1)、(b−2)、(b−3)および(c)は、本実施の形態の制御方式を示すタイミングチャートである。
【0059】
本実施の形態では、同図(b−1)、(b−2)、(b−3)に示すように、1画素区間を3分割した各区間において、R光、G光、B光が出射される。ここで、対応する発光区間におけるR光、G光、B光の駆動電流は、閾値電流を超える値について、各々同図(a−1)、(a−2)、(a−3)の場合の駆動電流の3倍である。閾値電流については、追って図6を参照して説明する。
【0060】
また、R光は1画素区間の前半3分の1の区間にて出射され、G光は1画素区間の中盤3分の1の区間にて出射され、B光は1画素区間の後半3分の1の区間にて出射される。さらに、各レーザ光の出射時間に合わせて、モニタPD214は、1画素区間の3分の1の区間で受光量を検出できるよう設計される。
【0061】
よって、同図(b−1)、(b−2)、(b−3)で示されるように各レーザ光が出射されれば、同図(c)に示されるように、R光、G光、B光は、モニタPD214に時分割で入射される。このため、モニタPD214は、順次入射するR光、G光、B光に対して、個別に出力信号を出力することができる。したがって、画像投写時においても、かかる出力信号に基づいて、各レーザ部201,202,203から出射されるR光、G光、B光の光強度が制御され得る。
【0062】
次に、図5を参照して、モニタPD214の出力信号に基づくR光、G光、B光の光強度の制御方法をさらに詳細に説明する。なお、同図において、Rk、Gk、Bkは、それぞれ、画素区間(k)においてR光、G光、B光を受光したときのモニタPD214からの出力信号である。上記のとおりモニタPD214の出力信号は、各画素区間において、赤色、緑色、青色の順に出力される。
【0063】
画素区間(n)においてRn、Gn、Bnの出力信号が出力されると、変調信号生成回路502(図3参照)は、Rn、Gn、BnをそれぞれI/V変換した電圧値を、画素区間(n)の本来あるべき基準電圧値と比較し、その比較結果と映像信号に基づいて、次の画素区間(n+1)におけるR光、G光、B光の変調信号(出射強度のレベル値)を設定する。
【0064】
変調信号生成回路502は、こうして設定したR光、G光、B光の変調信号(出射強度のレベル値)を、画素区間(n+1)のR光、G光、B光の出力タイミングに同期させて、それぞれ、レーザ駆動回路503、504、505に出力する。これにより、レーザ駆動回路503,504,505が駆動され、画素区間(n+1)において各レーザ部201,202,203からR光、G光、B光が時分割で出射される。
【0065】
こうして、画素区間(n+1)においてR光、G光、B光が出射されると、画素区間(n)のときと同様、変調信号生成回路502は、各色光の発光によりモニタPD214から出力される出力信号Rn+1、Gn+1、Bn+1をそれぞれI/V変換した電圧値を参照し、これら電圧値を、画素区間(n+1)の本来あるべき基準電圧値と比較する。そして、その比較結果と映像信号に基づいて、次の画素区間(n+2)におけるR光、G光、B光の変調信号(出射強度のレベル値)を設定する。
【0066】
変調信号生成回路502は、こうして設定したR光、G光、B光の変調信号(出射強度のレベル値)を、画素区間(n+2)のR光、G光、B光の出力タイミングに同期させて、それぞれ、レーザ駆動回路503、504、505に出力する。これにより、レーザ駆動回路503,504,505が駆動され、画素区間(n+2)において各レーザ部201,202,203からR光、G光、B光が時分割で出射される。
【0067】
変調信号生成回路502は、以降の画素区間(n+3)、…についても同様の処理を繰り返す。これにより、順次、1画素区間で、R光、G光、B光の光強度が制御される。
【0068】
なお、ここでは、画素区間(n)でモニタPD214から出力されるR光、G光、B光の出力信号に基づいて、次の画素区間(n+1)における各色光の変調信号を設定するようにしたが、かかる変調信号の設定に要する処理時間との関係から、次の画素区間(n+1)における各色光の変調信号の設定がその発光タイミングに間に合わない場合も想定され得る。この場合、画素区間(n)でモニタPD214から出力されるR光、G光、B光の出力信号に基づいて、画素区間(n+2)以降の画素区間における各色光の変調信号を設定するようにしても良い。これにより、1画素区間で各色光の変調信号が制御されないものの、従来例のように1画面毎に各色光の変調信号が制御される場合に比べると、R光、G光、B光の変調信号が制御される頻度が高められ得る。
【0069】
また、連続する複数の画素区間の出力信号をもとに、各レーザ光の変調信号を制御するようにしても良い。たとえば、画素区間(n)〜(n+2)における出力信号に基づいて、画素区間(n+3)において各レーザ部からR光、G光、B光が出射されるようにしても良い。具体的には、各画素区間におけるモニタPD214からの各色光の出力信号の電圧値を順次サンプルホールドし、画素区間(n)〜(n+2)における電圧値を加算した加算値と、これら画素区間における各色光の基準電圧値の加算値とに基づいて、画素区間(n+3)における各色光の変調信号を設定する。このように、複数画素区間におけるモニタPD214からの出力信号が用いられるようにすると、モニタPD214の出力信号に大きな変動(ノイズ、等)が生じたような場合、光強度制御がこれに敏感に応答するのを抑制でき、光制御の安定化を図ることができる。
【0070】
以上のとおり、本実施の形態によれば、各レーザ部201,202,203から出射されるR光、G光、B光の光量を画像表示中(有効画像領域の走査中)にモニタすることができ、R光、G光、B光の光強度制御(APC)を、画像表示中に行うことができる。よって、一画面分の投写画像中に明るさのムラや明るさの低下した領域が発生するのを抑制でき、高品位の画像を提供することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、図4を参照して分かるとおり、R光、G光、B光が短い区間で発光されるため、従来例のように1画素区間に亘って連続的に発光される場合に比べ、滲みのないクリアな画像を表示することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、レーザ光を走査させて画像を表示するため、投写画像にスペックルが発生し得る。特に、緑色レーザ部202としてSHG(Second Harmonic Generation)レーザが用いられる場合には、G光のコヒーレンス長が長くなるため、R光、B光に比べてG光においてスペックルが発生し易い。さらに、G光は、R光およびG光よりも視覚的にスペックルが目立つ性質を有する。しかしながら、本実施の形態では、各レーザ部の出射時間が従来例に比べ数段短くなるため、投写画像上におけるスペックルが軽減される。よって、本実施の形態では、従来例に比べ、スペックル抑制による投写画像の高品位化を図ることができる。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、以下のように、各レーザ部201,202,203の消費電力を抑制できるとの効果を奏することもできる。
【0074】
図6は、レーザ光源の駆動電流と光強度の関係を模式的に示す図である。横軸はレーザ光源の駆動電流を表し、縦軸はレーザ光源から出射されるレーザ光の光強度を表す。レーザ光源の駆動電流が閾値電流Ishを超えるまでは、出射レーザ光の光強度はほとんど上昇せず、レーザ光源の駆動電流が閾値電流Ishを超えると、出射レーザ光の光強度は上昇し始める。
【0075】
図示の如く、レーザ光の光強度がP0からP0の3倍であるP1まで上昇するためには、レーザ光源の駆動電流がI0からI1まで上昇すれば良く、I0の3倍の駆動電流は要しない。本実施の形態の場合、図4に示す如く、各レーザ部から出射されるR光、G光、B光の光強度は、閾値電流Ishを超える値について、従来例の3倍であるが、出射時間は3分の1であることから、従来例と比べて、1画素区間の発光に要する各レーザ部201,202,203の総駆動電流量が抑制される。結果、画像投写時における各レーザ部201、202、203の消費電力を抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図
【図2】実施形態に係るMEMSミラーの構成を示す図
【図3】実施の形態に係るプロジェクタの駆動に係る回路構成を示すブロック図
【図4】実施の形態に係る各レーザ部の駆動電流およびモニタPD214の出力信号を示す図
【図5】実施の形態に係る各レーザ光の光強度が制御されることを示す図
【図6】レーザ光源の駆動電流と光強度の関係を模式的に示す図
【図7】各レーザ光の光強度が制御されることを示す図
【符号の説明】
【0078】
201 赤色レーザ部(光源)
202 緑色レーザ部(光源)
203 青色レーザ部(光源)
210 ミラー(光学系)
211 ダイクロイックプリズム(光学系)
212 ダイクロイックプリズム(光学系)
213 ビームスプリッタ(分割素子)
214 モニタPD(光検出器)
300 MEMSミラー(光走査部)
502 変調信号生成回路(制御回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
前記各光源からの光を投写面上において走査させる光走査部と、
前記各光源からの光を統合して前記光走査部に導く光学系と、
統合された前記各光源からの光の一部を分割する分割素子と、
前記分割素子により分割された分割光を受光する光検出器と、
前記光検出器からの出力信号と映像信号に基づいて前記複数の光源を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、1画素区間において時分割で前記各光源から前記光を出射させるとともに前記各光源の発光区間における前記光検出器からの出力信号に基づいて前記各光源に対する発光強度の調整を行う、
ことを特徴とする画像投写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投写装置において、
前記制御回路は、前記1画素区間ごとに前記各光源の発光強度を調整する、
ことを特徴とする画像投写装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像投写装置において、
前記制御回路は、一つの前記光源の連続する複数の前記発光区間における前記光検出器からの前記出力信号に基づいて、当該光源の発光強度を調整する、
ことを特徴とする画像投写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−107615(P2010−107615A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277746(P2008−277746)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】