説明

画像検査システム及び画像検査方法

【課題】低コストで効率的な運用を可能とする画像検査システムを提供する。
【解決手段】検査対象物における欠陥を検査する画像検査システム10であって、検査対象物の画像データに基づき画像検査を行う画像データ処理システム2と、画像データ処理システム2に前記画像データを含む電子メールを送信可能な画像データ取得装置1とを備えており、撮像して得た画像データを含む電子メールをメール処理装置5に送信する画像送信処理手段12と、結果メール作成送信手段53から送信される前記検査結果を含む電子メールを受信する結果メール受信手段13と、受信した前記検査結果を出力する出力手段14とを備えている画像検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査システム及び画像検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌着などの製品では、図9に示すように、品名やサイズ、加工方法等の特徴を記載した各種能書き100,101,102,103,104が、製品を包装するフィルムや箱などの包装材に印刷若しくはシール貼りされている。また、中身の製品を確認できるのぞき窓が箱などの包装材に形成されている場合には、包装材表面に印刷等された能書きの他、のぞき窓を介して確認できる製品の所定部分に、能書きが取り付けられている。
【0003】
上記各種能書きの組み合わせ間違いが発生した場合、その製品を購入した需要者に不利益を与えることになると共に、偽装表示と受け取られかねない事態となる。
【0004】
このような能書きの組み合わせ間違いが発生しないように、製品の製造工程においては、たとえば検査員の目視検査等によって検査されている。目視検査では、検査員の感覚、経験あるいは疲労状態などによって、検査基準がばらついたり、欠陥部分が見逃されたりする場合がある。さらに、所望の数量の製品を、予め定められた時間内に製造する場合には、検査員は、一定時間内に製品に発生し得る欠陥部分を見逃すことなく目視検査しなければならない。したがって、この場合、検査員の身体的負担が大きくなるという問題がある。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するために、CCDカメラ等の画像入力装置により検査対象物である製品を撮影した画像を画像処理によって検査する画像検査装置が実用化されている。このような画像検査装置は、検査対象である製品についての撮影画像と、検査の基準となる良品の撮像画像(マスター画像)とを比較し、画像の図柄(パターン)を特徴量として算出する画像処理アルゴリズムを用いて、画像の中から欠陥部分を検出する。
【0006】
このような画像検査装置を用いて、複数の製品生産拠点で製造された製品の検査・管理を行う画像検査システムとして、図10に示すようなシステムが知られている。この画像検査システム110は、各製品生産拠点(工場A,B,C,D)の検査部門や管理部門に設置される画像処理装置111と、検査結果が保存されるサーバ112と、検査結果を管理する統括コンピュータ113とが、ネットワークを介して接続されている。
【0007】
このように構成された画像検査システム110においては、まず、各生産拠点に設置された画像検査装置111が、検査対象物の画像データを取得し、マスター画像(良品の画像データ)と比較した上で、“欠陥無し”、或いは、“欠陥有り”といった検査結果を判定し、その検査結果をネットワークに接続されたサーバ112の記憶装置に送信保存する。サーバ112に検査結果が保存されると、統括コンピュータ113が保存された検査結果を取得し、検査結果の管理を行う。統括コンピュータ113が取得した検査結果は、欠陥の発生理由や発生頻度の算出に供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した画像検査システムにおいては、各製品生産拠点の検査部門や管理部門のそれぞれが、検査対象物の欠陥の有無を判定する検査機能を有する画像検査装置を備える必要があり、コスト面で大きな負担になるという問題があった。
【0009】
また、各製品生産拠点においては、それぞれ異なる製品を生産しているのが実情であり、製品の製造個数が各生産拠点で同等であることはまずない。この結果、各製品生産拠点に設置される各画像検査装置の作動頻度にバラツキが生じ、効率的な画像検査装置の運用が難しいという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、低コストで効率的な運用を可能とする画像検査システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、検査対象物における欠陥を検査する画像検査システムであって、検査対象物の画像データに基づき画像検査を行う画像データ処理システムと、前記画像データ処理システムに前記画像データを含む電子メールを送信可能な画像データ取得装置とを備えており、前記画像データ処理システムは、検査装置と、受信した電子メールに含まれる画像データを記憶装置に保存するメール処理装置とを有し、前記検査装置は、前記記憶装置への前記画像データの蓄積状況を監視する画像データ蓄積状況監視手段と、前記画像データ蓄積状況監視手段が前記画像データの蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記画像データを取得する画像データ取得手段と、取得した前記画像データ及び検査基準となる基準画像データに基づき検査結果を判定する判定手段と、前記検査結果を前記記憶装置に保存する結果保存手段とを備えており、前記メール処理装置は、前記画像データを含む電子メールの着信を検知した際に該電子メールから前記画像データを取得して前記記憶装置に保存するメール画像保存手段と、前記記憶装置への前記検査結果の蓄積状況を監視する検査結果蓄積状況監視手段と、前記検査結果蓄積状況監視手段が前記検査結果の蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記検査結果を取得して検査結果を含む電子メールに変換し、前記画像データ取得装置に送信する結果メール送信手段とを備えており、前記画像データ取得装置は、前記検査対象物を撮像する画像入力手段と、撮像して得た画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信する画像送信処理手段と、前記結果メール送信手段から送信される前記検査結果を含む電子メールを受信する結果メール受信手段と、受信した前記検査結果を出力する出力手段とを備えている画像検査システムにより達成される。
【0012】
また、上記画像検査システムにおいて、前記メール画像保存手段は、前記画像データを含む電子メールから前記画像データを取得するメールデータ取得手段と、取得した画像データを前記記憶装置に保存する画像登録手段とを備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記記憶装置は、前記メール処理装置から送信された前記画像データを蓄積する画像データ記憶部と、前記検査装置から送信された検査結果を蓄積する検査結果記憶部とを備えることが好ましい。
【0014】
また、前記記憶装置は、検査基準となる前記基準画像データを記憶する基準画像記憶部を備えており、前記検査装置は、前記画像データ取得手段が取得した前記画像データに対応する前記基準画像データを前記基準画像記憶部から取得する基準画像取得手段を備えることが好ましい。
【0015】
また、前記画像処理手段は、撮像した前記画像データを圧縮データ形式又は非圧縮データ形式のデータ形式で生成したのち、前記画像データを含む電子メールを前記電子メールサーバに送信することが好ましい。
【0016】
また、前記画像入力手段は、スキャナーであることが好ましい。
【0017】
また、前記画像送信処理手段は、一の画像データが生成されるたびに、前記画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信することが好ましい。
【0018】
また、前記検査装置を複数備えており、各前記検査装置は、前記記憶装置に蓄積された複数の画像データを分散して検査結果を判定することが好ましい。
【0019】
また、一の前記検査装置は、検査結果を判定する処理を開始する指令を他の前記検査装置に送信する処理開始指令手段を備えることが好ましい。
【0020】
また、上記目的は、検査対象物の画像データを取得可能な画像データ取得装置、メール処理装置、記憶装置及び検査装置により、検査対象物における欠陥を検査する画像検査方法であって、画像データ取得装置を用いて検査対象物の画像データを処理する取得画像処理ステップと、前記メール処理装置を用いて前記画像データを処理するメール処理ステップと、検査装置を用いて検査を行う検査ステップと、前記メール処理装置を用いて検査結果を処理する検査結果処理ステップと、前記画像データ取得装置を用いて検査結果を処理する第2検査結果処理ステップとを備え、前記取得画像処理ステップは、前記検査対象物を撮像する画像入力ステップと、撮像して得た画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信する画像メール送信ステップとを備え、前記メール処理ステップは、前記画像データを含む電子メールの着信を検知した際に該電子メールから前記画像データを取得して前記記憶装置に保存するメール画像保存ステップを備え、前記検査ステップは、前記記憶装置への前記画像データの蓄積状況を監視する画像データ蓄積状況監視ステップと、前記画像データ蓄積状況監視ステップが前記画像データの蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得した前記画像データ及び検査基準となる基準画像データに基づき検査結果を判定する判定ステップと、前記検査結果を前記記憶装置に保存する結果保存ステップとを備え、前記検査結果処理ステップは、前記記憶装置への前記検査結果の蓄積状況を監視する検査結果蓄積状況監視ステップと、前記検査結果蓄積状況監視ステップが前記検査結果の蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記検査結果を取得して検査結果を含む電子メールに変換し、前記画像データ取得装置に送信する結果メール送信ステップとを備えており、前記第2検査結果処理ステップは、前記結果メール送信ステップから送信される前記検査結果を含む電子メールを受信する結果メール受信ステップと、受信した前記検査結果を出力する出力ステップとを備えている画像検査方法により達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低コストで効率的な運用を可能とする画像検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像検査システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す画像検査システムの概略構成ブロック図である。
【図3】検査対象物の欠陥の有無を判定する際の手法を説明する説明図である。
【図4】図1に示す画像検査システムの作動を説明する概略構成図である。
【図5】図1に示す画像検査システムの変形例を示す概略構成図である。
【図6】図1に示す画像検査システムの他の変形例を示す概略構成図である。
【図7】図1に示す画像検査システムの他の変形例を示す概略構成図である。
【図8】図1に示す画像検査システムの他の変形例を示す概略構成図である。
【図9】製品の包装に付される能書きを説明する説明図である。
【図10】従来の画像検査システムの構成及び作動を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る画像検査システムは、検査対象物における欠陥を検査する検査システムであり、以下、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像検査システム10の概略構成を示す構成図であり、図2は、本画像検査システム10のブロック図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る画像検査システム10は、検査対象の画像データを含む電子メールを送信可能な画像データ取得装置1と、当該画像データ取得装置1が送信した電子メールに添付される画像データに基づき画像検査を行う画像データ処理システム2とを備えている。なお、画像データ取得装置1と画像データ処理システム2とは、メールサーバMを有する一般的な電子メールシステムを介して接続されている。
【0025】
画像データ処理システム2は、検査装置3と、画像データ取得装置1から送信された電子メールに含まれる画像データを記憶装置4に保存するメール処理装置5とを備えている。検査装置3、記憶装置4及びメール処理装置5は、ローカルエリアネットワーク(LAN)や、無線LAN等のネットワークNを介して接続されている。なお、ネットワークNは、多種多様な媒体を使って形成されてよく、例えば電気的なワイヤやケーブル、光学的な又は無線の接続でもよいが、これらに限定されない。
【0026】
記憶装置4は、図2に示すように、メール処理装置5から送信される画像データを蓄積する画像データ記憶部41と、検査装置3から送信される検査結果を蓄積する検査結果記憶部42とを備えている。この記憶装置4としては、例えば、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等におけるハードディスク(HDD)等の記憶領域を活用することができる。
【0027】
画像データ記憶部41は、各画像データ取得装置1に対応した記憶領域を備えている。具体的には、各画像データ取得装置1に対応した識別名称等がそれぞれ付された複数のフォルダやディレクトリを有している。各画像データ取得装置1において取得された画像データは、それぞれの画像データ取得装置1に対応する記憶領域に格納され、異なる画像データ取得装置1から送信された画像データが、同一の記憶領域内に保存されないように構成されている。検査結果記憶部42も、上記画像データ記憶部41と同様に構成されており、各画像データ取得装置1に対応した記憶領域を備えている。
【0028】
画像データ取得装置1は、例えば複数の工場(製品生産拠点)における検査部や管理部等にそれぞれ設置される装置であり、図2のブロック図に示すように、画像入力手段11と、画像送信処理手段12と、結果メール受信手段13と、出力手段14とを備えている。本実施形態においては、画像送信処理手段12、結果メール受信手段13及び出力手段14の機能をコンピュータに持たせるように構成している。
【0029】
画像入力手段11は、検査対象物を撮像する撮像装置であり、例えば、CCDカメラやスキャナー等を例示することができる。なお、画像入力手段11としては、設置の簡便性等を考慮して、コンピュータ等にUSB接続できるUSBカメラタイプのものが好ましい。本実施形態においては、USB接続できるスキャナーを画像入力手段11として採用している。
【0030】
画像送信処理手段12は、画像入力手段11で撮像した映像をJPEG形式やTIFF形式等の圧縮データ形式又はBMP形式等の非圧縮データ形式の画像データに変換するファイル変換手段(図示せず)と、データ形式変換後の画像データを含む電子メールを生成してメール処理装置5に送信する電子メール送信手段(図示せず)とを備えている。このような構成により、画像入力手段11が撮像して得た画像データを添付した電子メールをメール処理装置5に送信することが可能となる。この画像送信処理手段12は、一の画像データが生成されるたびに、当該画像データを含む電子メールをメール処理装置5に送信するように構成することが、データ管理上好ましい。
【0031】
結果メール受信手段13は、メールサーバMをポーリング形式で監視し、後述するメール処理装置5から送信される検査結果を含む電子メールを受信する機能を有している。
【0032】
出力手段14は、結果メール受信手段13が取得した検査結果を含む電子メールにおける検査結果を出力する機能を有しており、例えば、コンピュータのモニター画面等の表示手段に検査結果を表示するように構成されている。
【0033】
メール処理装置5は、例えばCPUやHDD等を備えるコンピュータにより構成することが可能であり、図2のブロック図に示すように、メール画像保存手段51と、検査結果蓄積状況監視手段52と、結果メール作成送信手段53とを備えている。
【0034】
メール画像保存手段51は、メールサーバMをポーリング形式で監視しており、画像データ取得装置1から送信された画像データを含む電子メールの着信を検知した際に、この電子メールから画像データを取得するメールデータ取得手段511と、取得した画像データを記憶装置4の画像データ記憶部41に保存登録する画像登録手段512とを備えている。なお、画像登録手段512は、画像データを画像データ記憶部41に登録する際、画像データを取得した画像データ取得装置1に対応する画像データ記憶部41の記憶領域に画像データを保存登録する。
【0035】
検査結果蓄積状況監視手段52は、記憶装置4への検査結果の蓄積状況を監視する機能、すなわち、後述する検査装置3から送信された検査結果データが記憶装置4に保存されたか否かを判定する機能を有する。検査結果データの蓄積状況の監視は、常時行うように構成してもよく、或いは、数秒おき又は数分おき等、所定時間をあけて監視するように構成してもよい。
【0036】
結果メール作成送信手段53は、検査結果蓄積状況監視手段52が検査結果の新たな蓄積を検知した際にこの新たな検査結果を記憶装置4から取得する結果取得手段531と、取得した検査結果を含む電子メールを生成し、当該電子メールを画像データ取得装置1に送信する結果メール送信手段532とを備えている。
【0037】
検査装置3は、例えばCPUやHDD等を備えるコンピュータにより構成することが可能であり、図2のブロック図に示すように、画像データ蓄積状況監視手段31と、画像データ取得手段32と、判定手段33と、結果保存手段34とを備えている。
【0038】
画像データ蓄積状況監視手段31は、記憶装置4への画像データの蓄積状況を監視する機能、すなわち、メール処理装置5から送信された画像データが記憶装置4に保存されたか否かを判定する機能を有する。画像データの蓄積状況の監視は、常時行うように構成してもよく、或いは、数秒おき又は数分おき等、所定時間をあけて監視するように構成してもよい。
【0039】
画像データ取得手段32は、画像データ蓄積状況監視手段31が画像データの新たな蓄積を検知した際にこの新たに蓄積された画像データを記憶装置4から取得する機能を有している。なお、取得した画像データを記憶装置4から削除するように画像データ取得手段32を構成してもよい。
【0040】
判定手段33は、画像データ取得手段32が取得した画像データ及び検査基準となる基準画像データ(マスター画像データ)に基づき検査結果を判定する機能を有する。ここで、検査の基準となるマスター画像データは、良品の画像データであり、予めデータ取得された上、検査装置3が備える記憶部(図示せず)に格納されている。取得した画像データとマスター画像データとに基づいた検査結果の判定は、公知の種々の方法により行うことができるが、例えば、取得した画像データとマスター画像データとの差分画像データを生成し、この差分画像データが所定の閾値を満たすか否かにより検査結果の判定を行うことができる。差分画像データが閾値以下であれば“欠陥無し”と判定され、閾値を越えるようであれば“欠陥有り”と判定される。なお、検査対象物の画像データと、マスター画像データとを比較する場合、例えば、図3に示すように、検査対象物Zの画像データから、必要な部分のみを抽出した上、抽出画像データ(A1〜A7)と、この抽出画像データに対応するマスター画像データ同士を比較して欠陥の有無を検出するように構成してもよい。ここで、図3に示す検査対象物Zは、商品の包装材に印刷又はシール貼り、或いは取り付けられる能書きの一例である。
【0041】
“欠陥無し”或いは“欠陥有り”といった検査結果は、検査を行った画像データに対応する識別番号等の画像データ情報と共に検査結果データに格納される。検査結果データのファイル形式は特に限定されないが、例えば、XML形式やCSV形式のテキストファイルが好ましい。
【0042】
結果保存手段34は、判定手段33にて判定した検査結果を記憶装置4に保存する機能を有している。具体的には、検査を行った画像データに対応する各種情報や、“欠陥無し”或いは“欠陥有り”といった検査結果等が記載された検査結果データを記憶装置4に保存する。なお、検査結果データは、記憶装置4の検査結果記憶部42に格納される。このとき、画像検査を行った画像データを取得した画像データ取得装置1に対応する記憶領域にデータ保存される。
【0043】
このように構成された画像検査システム10を用いて画像検査を行う方法について図2及び図4を用いて説明する。画像検査システム10を用いた画像検査を行う方法は、画像データ取得装置1を用いて検査対象物の画像データを処理する取得画像処理ステップと、メール処理装置5を用いて画像データを処理するメール処理ステップと、検査装置3を用いて検査を行う検査ステップと、メール処理装置5を用いて検査結果を処理する検査結果処理ステップと、画像データ取得装置1を用いて検査結果を処理する第2検査結果処理ステップとを備えている。なお、図4において、画像入力手段11を備える画像データ取得装置1は、各工場(工場A,工場B、工場C,工場D)に設置されている。また、画像データ処理システム2が備える記憶装置4における画像データ記憶部41は、各工場に対応した記憶領域(フォルダ:41a,41b,41c,41d)を有している。また、検査結果記憶部42も各工場に対応した記憶領域(フォルダ:42a,42b,42c,42d)を有している。
【0044】
まず、各工場において、画像データ取得装置1における画像入力手段11が検査対象物の画像データを撮像する(画像入力ステップS1)。その後、画像データ取得装置1における画像送信処理手段12が、画像入力手段11で撮像した映像を圧縮データ形式又は非圧縮データ形式の画像データに変換した後、当該画像データが添付された電子メールを作成しメール処理装置5に送信する(画像メール送信ステップS2)。
【0045】
メール処理装置5が画像データを含む電子メールを受信すると、メール画像保存手段51が、電子メールから画像データを取得し、この画像データを画像データ記憶部41における各工場に対応した記憶領域(フォルダ:41a,41b,41c,41d)内にそれぞれ保存する(メール画像保存ステップS3)。例えば、工場Aで取得された画像データは、画像データ記憶部41において工場Aと識別される記憶領域41aに、工場Bで取得された画像データは、工場Bと識別される記憶領域41bにそれぞれ保存される。
【0046】
検査装置3における画像データ蓄積状況監視手段31は、記憶装置4への画像データの蓄積状況を監視しており、記憶装置4における画像データ記憶部41に各工場から送信された画像データが保存されたか否かを判定する(画像データ蓄積状況監視ステップS4)。そして、新たな画像データが画像データ記憶部41に蓄積されたと判定した場合、画像データ取得手段32が、記憶装置4からこの新たに蓄積された画像データを取得する(画像データ取得ステップS5)。
【0047】
その後、検査装置3の判定手段33が、画像データ取得手段32が取得した画像データと、検査基準となる基準画像データ(マスター画像データ)とに基づき検査結果を判定する(判定ステップS6)。例えば、両者の差分画像データを算出し、この差分画像データが所定の閾値以下であれば“欠陥無し”と判断し、閾値以上であれば“欠陥有り”と判断する。
【0048】
判定手段33により判定された検査結果は、XML形式やCSV形式等のテキストファイルである検査結果データに格納され、結果保存手段34が記憶装置4に保存する(結果保存ステップS7)。なお、検査結果データには、検査を行った検査対象物を特定する情報(例えば、工場名称、製品シリアルナンバー、画像取得日時等)も付加されている。また、各検査結果データは、画像検査を行った画像データを取得した各工場に対応する記憶領域(フォルダ:42a,42b,42c,42d)にそれぞれデータ保存される。例えば、工場Aで取得された画像データの検査結果データは、記憶装置4の検査結果記憶部42において工場Aと識別される記憶領域42aに、工場Bで取得された画像データの検査結果データは、工場Bと識別される記憶領域42bにそれぞれ保存される。
【0049】
メール処理装置5の検査結果蓄積状況監視手段52は、記憶装置4への検査結果の蓄積状況を監視しており、記憶装置4における検査結果記憶部42に検査結果データが保存されたか否かを判定する(検査結果蓄積状況監視ステップS8)。そして、新たな検査結果データが検査結果記憶部42に蓄積されたことを検知した場合、メール処理装置5の結果取得手段531が、この新たに蓄積された検査結果データを記憶装置4から取得し、結果メール送信手段532が、取得した検査結果データを含む電子メールを作成し、画像データ取得装置1に送信する(結果メール送信ステップS9)。なお、検査結果データを含む電子メールは、画像検査の対象となった画像データを取得した画像データ取得装置1に送信される。
【0050】
その後、画像データ取得装置1の結果メール受信手段13が、送信されてきた検査結果データ付きの電子メールを受信し(結果メール送受信ステップS10)、出力手段14が、取得した検査結果データに基づいて、モニター画面等の表示手段に検査結果を表示する(出力ステップS11)。表示手段に表示された検査結果を検査担当者等が確認し、“欠陥有り”と判断された製品を製造ラインから除外し、市場に流通することを避ける。
【0051】
本実施形態に係る画像検査システム10においては、各製品生産拠点において取得した検査対象物の画像データを集約して欠陥の有無を判定するように構成されている。この結果、各製品生産拠点の検査部門や管理部門のそれぞれが、検査対象物の欠陥の有無を判定する検査機能を有する装置を備える必要がなく、低コストで画像検査システム10を構築することができる。
【0052】
また、各製品生産拠点において取得した検査対象物の画像データを集約して検査処理を一括して行うことができる結果、従来問題となっていたような各製品生産拠点間において生じる検査頻度のバラツキの影響を受けずに、効率的な画像検査システム10の運用が可能となる。
【0053】
更に、上記実施形態においては、各製品生産拠点に設置される画像データ取得装置1と、一括して画像検査を行う画像データ処理システム2との間でなされる各種データ(画像データや検査結果データ)の送受信を、一般的に普及している電子メールシステムを利用して行っている。このような構成により、広域イーサネット、IP−VPN、インターネットVPN等のネットワークサービスや、ファイルサーバ利用サービスなどのインフラ整備が遅れている国や地域に製品生産拠点を設立して画像データ取得装置1を設置したとしても、確実にかつ効率よく画像データを画像データ処理システム2に集約することができる。また、このような国や地域に、広域イーサネット等のネットワークサービスやファイルサーバ利用サービスなどを新たに整備する必要がないため、製品生産拠点の選択の幅が広がると共に、低コストで画像検査システム10の運用を行うことが可能となる。
【0054】
以上、本発明に係る画像検査システム10の実施形態について説明したが、画像検査システム10の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、検査装置3が、画像検査の検査基準となる基準画像データ(マスター画像データ)を予め記憶するように構成されているが、図5の概略構成図に示すように、記憶装置4が、基準画像データ(マスター画像データ)を記憶する基準画像記憶部43を備えるように構成してもよい。このような構成を採用した場合、画像データ取得手段32が取得する画像データに対応する基準画像データを基準画像記憶部43から取得する基準画像取得手段(図示せず)を、検査装置3が備えるように構成する。このような構成によれば、基準画像データの保守管理が簡便となる。なお、記憶装置4における基準画像記憶部43は、品名やサイズ、加工方法等の製品情報に対応した記憶領域(フォルダ:43a,43b,43c,43d)を備えており、具体的には、各製品情報に対応した識別名称等がそれぞれ付された複数のフォルダを有しており、各記憶領域(フォルダ)にそれぞれの製品に対して画像取得される検査対象物の基準画像データが格納されるように構成してもよい。また、基準画像記憶部43が、各工場における画像データ取得装置1に対応した記憶領域を有しており、各記憶領域(フォルダ)にそれぞれの工場で画像取得される検査対象物の基準画像データを格納するように構成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、メール処理装置5から送信される画像データを記憶する画像データ記憶部41と、検査装置3から送信される検査結果データを記憶する検査結果記憶部42とが、単一の記憶装置4内に格納されるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、図6に示すように、画像データ記憶部41と検査結果記憶部42とが別々の記憶装置4a,4b内に格納されるように構成してもよい。また、検査装置3の記憶部内に基準画像データを格納する代わりに、図7に示すように、更に別の記憶装置4c内に基準画像データを格納するように構成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、画像データ取得装置1が備える出力手段14が、モニター等の表示手段に検査結果を表示するように構成されているが、このような構成に限定されず、例えば、“欠陥有り”の製品を自動的に振り分けるような装置や、“欠陥有り”と判断された場合に点灯するライト、警告音を発するスピーカー等の外部機器に検査結果を出力するように構成することもできる。
【0057】
また、上記実施形態においては、単一の検査装置3を備える構成であるが、このような構成に特に限定されない。例えば、図8に示すように、複数の検査装置3a,3bを複数備えるように構成し、工場A,B,C,Dにより取得された各検査対象物の画像データを各検査装置3a,3bに振り分けて画像検査を行うように構成してもよい。なお、各検査装置3a,3bは、ネットワークNを介して接続されている。具体的には、検査装置3aが備える画像データ蓄積状況監視手段31が、例えば、記憶装置4における画像データ記憶部41の工場A及び工場Bに対応する記憶領域41a,41bにおける画像データの蓄積状況を監視する一方、検査装置3bの画像データ蓄積状況監視手段31が、画像データ記憶部41の工場C及び工場Dに対応する記憶領域41c,41dにおける画像データの蓄積状況を監視するように構成する。そして、各画像データ蓄積状況監視手段31が、画像データ記憶部41への新たな画像データの蓄積を検知した場合、検査装置3a,3bの各画像データ取得手段32が、記憶装置4から新たに蓄積された画像データをそれぞれ取得し、判定手段33が、取得した画像データと基準画像データとの比較を行い、結果保存手段34が、検査結果を記憶装置4の検査結果記憶部42に送信するように構成することもできる。なお、検査結果の一元管理が必要な場合には、例えば、検査装置3bが判定した検査結果を記憶装置4の検査結果記憶部42に送信する際に、検査装置3aにも送信し、当該検査装置3aにて検査結果を保存管理すればよい。
【0058】
また、検査装置3を複数備える場合の具体例としては、上記の他、例えば、各検査装置3a,3bが、記憶装置4における画像データ記憶部41の全ての記憶領域41a,41b,41c,41dにおける画像データの蓄積状況を監視し、一の検査装置3aが、“busy”のとき、つまり、画像検査処理件数が多く、検査装置3aだけでは検査結果の出力(結果保存ステップS7)が遅れてしまうような場合に、他の検査装置3bが、検査装置3aを補助して画像検査を行うように構成することもできる。具体的には、一の検査装置3aが、検査結果を判定する処理を開始する指令(作動指令)を他の検査装置3bに送信する処理開始指令手段(図示せず)を備えるように構成する。ここで、他の検査装置3bへの作動指令は、例えば、一の検査装置3aが所定の処理速度以下となった際に、検査装置3aから検査装置3bにネットワークNを介して送信される。また、一の検査装置3aから他の検査装置3bに送信される作動指令には、記憶装置4の画像データ記憶部41におけるどの記憶領域(フォルダ)に蓄積された画像データの画像検査を行うかを示す情報を含むようにしてもよい。
【0059】
このように、複数の検査装置3a,3bを備え、画像検査処理の分散化を図るように構成することにより、製品生産拠点に設置される画像データ取得装置1が増加したり、或いは、検査対象物の検査内容が複雑化した場合であっても、画像検査処理が遅延することを効果的に防止でき、画像検査システム1のより一層の効果的な運用を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 画像検査システム
1 画像データ取得装置
11 画像入力手段
12 画像送信処理手段
13 結果メール受信手段
14 出力手段
2 画像データ処理システム
3,3a,3b 検査装置
31 画像データ蓄積状況監視手段
32 画像データ取得手段
33 判定手段
34 結果保存手段
4,4a,4b,4c 記憶装置
41 画像データ記憶部
42 検査結果記憶部
5 メール処理装置
51 メール画像保存手段
511 メールデータ取得手段
512 画像登録手段
52 検査結果蓄積状況監視手段
53 結果メール作成送信手段
531 結果取得手段
532 結果メール送信手段
M メールサーバ
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物における欠陥を検査する画像検査システムであって、
検査対象物の画像データに基づき画像検査を行う画像データ処理システムと、前記画像データ処理システムに前記画像データを含む電子メールを送信可能な画像データ取得装置とを備えており、
前記画像データ処理システムは、検査装置と、受信した電子メールに含まれる画像データを記憶装置に保存するメール処理装置とを有し、
前記検査装置は、前記記憶装置への前記画像データの蓄積状況を監視する画像データ蓄積状況監視手段と、前記画像データ蓄積状況監視手段が前記画像データの蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記画像データを取得する画像データ取得手段と、取得した前記画像データ及び検査基準となる基準画像データに基づき検査結果を判定する判定手段と、前記検査結果を前記記憶装置に保存する結果保存手段とを備えており、
前記メール処理装置は、前記画像データを含む電子メールの着信を検知した際に該電子メールから前記画像データを取得して前記記憶装置に保存するメール画像保存手段と、前記記憶装置への前記検査結果の蓄積状況を監視する検査結果蓄積状況監視手段と、前記検査結果蓄積状況監視手段が前記検査結果の蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記検査結果を取得して検査結果を含む電子メールに変換し、前記画像データ取得装置に送信する結果メール送信手段とを備えており、
前記画像データ取得装置は、前記検査対象物を撮像する画像入力手段と、撮像して得た画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信する画像送信処理手段と、前記結果メール送信手段から送信される前記検査結果を含む電子メールを受信する結果メール受信手段と、受信した前記検査結果を出力する出力手段とを備えている画像検査システム。
【請求項2】
前記メール画像保存手段は、前記画像データを含む電子メールから前記画像データを取得するメールデータ取得手段と、取得した画像データを前記記憶装置に保存する画像登録手段とを備えている請求項1に記載の画像検査システム。
【請求項3】
前記記憶装置は、前記メール処理装置から送信された前記画像データを蓄積する画像データ記憶部と、前記検査装置から送信された検査結果を蓄積する検査結果記憶部とを備える請求項1又は2に記載の画像検査システム。
【請求項4】
前記記憶装置は、検査基準となる前記基準画像データを記憶する基準画像記憶部を備えており、
前記検査装置は、前記画像データ取得手段が取得した前記画像データに対応する前記基準画像データを前記基準画像記憶部から取得する基準画像取得手段を備える請求項1から3のいずれかに記載の画像検査システム。
【請求項5】
前記画像送信処理手段は、撮像した前記画像データを圧縮データ形式又は非圧縮データ形式のデータ形式で生成したのち、前記画像データを含む電子メールを前記電子メールサーバに送信する請求項1から4のいずれかに記載の画像検査システム。
【請求項6】
前記画像入力手段は、スキャナーである請求項1から5のいずれかに記載の画像検査システム。
【請求項7】
前記画像送信処理手段は、一の画像データが生成されるたびに、前記画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信する請求項1から6のいずれかに記載の画像検査システム。
【請求項8】
前記検査装置を複数備えており、各前記検査装置は、前記記憶装置に蓄積された複数の画像データを分散して検査結果を判定する請求項1から請求項7のいずれかに記載の画像検査システム。
【請求項9】
一の前記検査装置は、検査結果を判定する処理を開始する指令を他の前記検査装置に送信する処理開始指令手段を備える請求項8に記載の画像検査システム。
【請求項10】
検査対象物の画像データを取得可能な画像データ取得装置、メール処理装置、記憶装置及び検査装置により、検査対象物における欠陥を検査する画像検査方法であって、
画像データ取得装置を用いて検査対象物の画像データを処理する取得画像処理ステップと、前記メール処理装置を用いて前記画像データを処理するメール処理ステップと、検査装置を用いて検査を行う検査ステップと、前記メール処理装置を用いて検査結果を処理する検査結果処理ステップと、前記画像データ取得装置を用いて検査結果を処理する第2検査結果処理ステップとを備え、
前記取得画像処理ステップは、前記検査対象物を撮像する画像入力ステップと、撮像して得た画像データを含む電子メールを前記メール処理装置に送信する画像メール送信ステップとを備え、
前記メール処理ステップは、前記画像データを含む電子メールの着信を検知した際に該電子メールから前記画像データを取得して前記記憶装置に保存するメール画像保存ステップを備え、
前記検査ステップは、前記記憶装置への前記画像データの蓄積状況を監視する画像データ蓄積状況監視ステップと、前記画像データ蓄積状況監視ステップが前記画像データの蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得した前記画像データ及び検査基準となる基準画像データに基づき検査結果を判定する判定ステップと、前記検査結果を前記記憶装置に保存する結果保存ステップとを備え、
前記検査結果処理ステップは、前記記憶装置への前記検査結果の蓄積状況を監視する検査結果蓄積状況監視ステップと、前記検査結果蓄積状況監視ステップが前記検査結果の蓄積を検知した際に前記記憶装置から前記検査結果を取得して検査結果を含む電子メールに変換し、前記画像データ取得装置に送信する結果メール送信ステップとを備えており、
前記第2検査結果処理ステップは、前記結果メール送信ステップから送信される前記検査結果を含む電子メールを受信する結果メール受信ステップと、受信した前記検査結果を出力する出力ステップとを備えている画像検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−153993(P2011−153993A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17137(P2010−17137)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】