説明

画像検査装置、印刷システム、画像検査方法およびプログラム

【課題】ハイライトからシャドーまでの全濃度域において一定の検査精度を確保する。
【解決手段】プリンタ13は印刷媒体の属性情報を記憶するメモリ29aを有し、画像読取装置15で読み取られて出力された検査画像データと、プリンタ13へ入力された元基準画像データと、印刷媒体の属性情報と、を取得するデータ取得部20と、属性情報の補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶部21aと、データ取得部20で取得した属性情報に対応する補正パラメータを用いて元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成部21と、検査画像データおよび基準画像データから検査画像データを生成し、検査画像データと補正後基準画像データとの一致度を、予め定めた値を用いて比較して印刷画像の画像検査を行う画像検査部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取った画像と基準画像とを比較することにより画像検査を行う画像検査装置、その画像検査装置を含む印刷システム、画像検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を印刷するには、原稿に基づき紙に直接インキを吹き付ける方法や、原稿を基に版を作成し、これを媒体として紙にインキを転写する方法等がある。この版を用いる方法には、凸版、平版、凹版、孔版という印刷法があり、その中でも平版印刷法は、実際のイメージに近い表現ができ、高品質の印刷物を作成することができるという利点を有することから、商業印刷では主流となっている。
【0003】
平版印刷は、オフセット印刷であり、インキを画像が形成されている版に付着させ、そのインク画像の版をブランケットに接触させて転写し、ブランケットを介して紙に印刷するものである。このようにオフセット印刷は、版から紙へ直接印刷するのではなく、ブランケットという媒介物を介して印刷する技術である。この技術を用いた装置がオフセット印刷機であり、一度製版したら同じものを何部も印刷する印刷機として、印刷業等で用いられている。
【0004】
このオフセット印刷機には、印刷出力物を画像読み取り装置で読み取り、予め準備されている基準画像と比較することにより画像検査を行う画像検査装置が装着されているものがある。この画像検査装置の装着により、印字の良否判定を行うことができ、印刷物の画質を一定以上に維持することが可能となる。
【0005】
しかしながら、印刷物の紙の種類、たとえば、通常用いられている上質紙といった平滑性に優れたコピー紙と繊維面がある和紙ではインクのにじみ具合が異なり、紙の種類によって印刷画像の品質にばらつきが生じてしまうという問題があった。また、印刷する情報(細線画像とべた画像など)の内容によっても画質のレベルが異なる場合があった。
【0006】
近年、要求があり次第すぐに印刷を行うオンデマンド印刷が実用化され、このオンデマンド印刷でも画像検査の要望がある。オンデマンド印刷では、1部ごとに印刷内容が変更される場合があり、予め基準画像を準備しておくことは不可能である。そこで、印刷データから基準画像を作成することが必要となってくるが、印刷データには紙種に関する情報は含まれていないので、画像検査に必要とされる精度の基準画像を作成することは困難である。
【0007】
これらの問題に鑑み、紙の種類といった印刷媒体の種類に応じて検査の内容や印刷物の良否の判定基準を設定することができる装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この装置は、トレイと、各トレイに収容された印刷媒体の種類と、各印刷媒体に対して形成される画像の検査に関する検査情報とを対応付けして保持するようにし、画像が形成されたことに伴い印刷物の読み取り画像とその基準画像との比較を行うことで印刷物の検査を行う際に、画像が形成された印刷媒体に対して設定された判定基準を用いるようにして、印刷物の良否の判定を印刷媒体毎に設定した検査基準に基づき行うことができるようにされている。
【0008】
上述した装置では、紙の種類によって検査基準を変更することから、いずれの紙の種類であっても一定以上の画質を有する印刷物を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記に示されるような従来の技術にあっては、読み取った画像と基準画像との差は、紙の種類により生じるだけではなく、紙の種類によってハイライトからシャドーまでの濃度変化の度合いが異なることによっても生じることから、この装置では、紙の種類が変わった場合、ハイライトからシャドーまでの全濃度域において一定の検査精度を確保することはできなかった。このため、このような濃度の変動にも対応することができる画像検査装置の提供が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、紙の種類に応じて元基準画像を補正し、その紙の種類に応じた補正後基準画像を生成することにより、ハイライトからシャドーまでの全濃度域において一定の検査精度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像形成装置で印刷媒体上に印刷され出力された印刷画像を画像読取装置で読み取り、この読み取った印刷画像を検査する画像検査装置であって、前記画像形成装置は前記印刷媒体の属性情報を記憶する属性情報記憶手段を有し、前記画像読取装置により読み取られて出力された検査画像データと、前記画像形成装置へ入力された元基準画像データと、前記属性情報記憶手段から画像が印刷された印刷媒体の属性情報と、を取得するデータ取得部と、前記属性情報に対応する補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶部と、前記データ取得部により取得した前記属性情報に対応する補正パラメータを、前記補正パラメータ記憶手段から読み出し、当該補正パラメータを用いて前記元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成部と、前記検査画像データと補正後基準画像データとの一致度を、予め定めた値を用いて比較することにより前記印刷画像の画像検査を行う画像検査部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、紙の種類に応じて元基準画像を補正し、その紙の種類に応じた補正後の基準画像を生成して、両画像を検査することができるので、ハイライトからシャドーまでの全濃度域において一定の検査精度を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態にかかる画像検査装置を含む印刷システムの構成例を示す説明図である。
【図2】図2は、印刷システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、画像生成部の構成例を示した機能ブロック図である。
【図4】図4は、ガンマ変換テーブルに対応する変換特性を例示したグラフである。
【図5】図5は、紙種に応じた変換特性を示すグラフの各色の切片の値を例示した図表である。
【図6】図6は、画像検査部の第1の機能構成例を示すブロック図である。
【図7】図7は、画像検査部の第2の機能構成例を示すブロック図である。
【図8】図8は、閾値変換テーブルに対応する変換特性を例示したグラフである。
【図9】図9は、画像生成部の別の機能構成例を示すブロック図である。
【図10】図10は、ガンマ変換テーブルに対応する変換特性を例示したグラフである。
【図11】図11は、画像検査装置により行われる画像検査処理の流れを例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像検査装置、印刷システム、画像検査方法およびプログラムの一実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態)
印刷物の色は、紙の色により変化する。この変化の度合いは、色材が紙面を完全に被覆するベタ(単色で塗りつぶされている状態)においてほぼ0となり、紙面が色材でほとんど被覆されないハイライト部分(最も明るく見える部分)では最大となる。このことは、紙の種類、厚さ、光沢度に関しても同様の傾向を示す。そこで、本実施の形態では、紙の種類によって検査基準を変更するのではなく、画像検査を行う際に使用する基準画像の画像データに、紙の色、種類、厚さ、光沢度といった紙の影響をハイライトからベタに対して連続的に与えて、その基準画像の画像データを補正することができるようにし、上記の濃度の変動にも対応可能な装置を実現する。すなわち、紙の種類に応じて基準画像を補正し、その紙の種類に応じた基準画像を生成することで、ハイライトからシャドーまでの全濃度域において一定の検査精度を確保するものである。以下、具体的に説明する。
【0016】
図1は、実施の形態にかかる画像検査装置を含む印刷システムの構成例を示す説明図である。この印刷システムは、ネットワーク10に接続されるクライアントPC(Personal Computer)11と、ネットワーク10に接続されるデジタルフロントエンド(DFE:Digtal Front End)12と、DFE12とケーブル等により接続される印刷装置としてのプリンタ13と、プリンタ13と接続される画像検査装置14と、を主に備えている。
【0017】
クライアントPC11は、ユーザが作成した文書やスキャナ装置により読み取った画像等を画像データとして記憶し、その文書や画像を印刷するために印刷データを、ネットワーク10を介してプリンタ13へ送信する。このため、クライアントPC11は、コンピュータ全体を管理するOS(Operating System)、ハードウェアの基本的な制御を行うファームウェア、スキャナ装置やプリンタ13を制御するためのドライバ、文書を作成するためのアプリケーション等を格納するための記憶装置、その記憶装置からそれらのプログラムを読み出し実行するプロセッサ、ネットワーク10を介した通信を可能にするためのネットワークインタフェース、データ入力を行うためのキーボードや、アイコンの選択、カーソル移動、スクロール等を実現するためのマウスといった入力装置、入力された文字や画像等を表示する表示装置を備えている。
【0018】
クライアントPC11は、作成した文書等を印刷するために印刷データをDFE12へ送信するが、クライアントPC11に実装されるドライバによってプリンタ13が解釈できるプリンタ言語で記述されたコマンドへ変換し、印刷指示の際にユーザが設定した印刷部数、用紙サイズ、集約印刷の有無、両面印刷の有無等の印刷設定情報を含めて印刷データを構成し、これをDFE12へ送信する。
【0019】
DFE12は、クライアントPC11からネットワーク10を介して送信されたプリンタ言語で記述されたコマンドを含む印刷データを受信し、この印刷データに含まれるコマンドのプリンタ言語を解析し、画像の描画を行う。たとえば、プリンタ13がページプリンタである場合、DFE12は、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたコマンドを含む印刷データを受信し、ページ記述言語を解釈して、ページ毎にプリンタ13が受け取ることができる形式であるビットマップ画像データを生成する。そして、DFE12は、ページ毎に生成したビットマップ画像データをページ毎にプリンタ13へ送信する。1つの例では、PostScript(登録商標)というページ記述言語で記述されたコマンドを含む印刷データを受信した場合、DFE12は、600dpiCMYKの8ビットのRIP(Raster Image Processor)イメージデータを生成し、そのイメージデータをプリンタ13へ送信する。RIPは、PostScript(登録商標)で記述されたデータを印刷可能なビットマップ画像に展開するハードウェアである。なお、上記dpiは、dot per inchの略称である。
【0020】
また、DFE12は、特定の用途向けの集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含み、画像の描画を行う際、濃淡画像を白黒2値へ変換する2値化や、濃度変化から物体の境界を検出するエッジ検出等の処理を行うことができる。
【0021】
プリンタ13は、DFE12から受け取ったビットマップ画像データに基づき画像形成を行い、印刷出力する。プリンタ13が上記のオフセット印刷機である場合、給紙部と、印刷部と、排紙部などを備えている。給紙部は、複数枚の紙を載せるための台と、紙を1枚ずつ印刷部へ送出する送出手段と、紙が2枚重なった状態で印刷へ送られないように検知手段を備える紙送り台とを含む。排紙部は、印刷出力物である印刷された紙を載せるための台と、その台まで印刷出力物を搬送する搬送手段と、載せた紙を揃える紙揃え手段とを含む。
【0022】
印刷部は、各色のインキが収容されたインキ壺と、水が収容された湿し水部と、ビットマップイメージデータに基づいて製版機で製版される版を巻きつけて回転させる版胴(シリンダ)と、版と接触し、版に盛られたインキが転写されるブランケットと、ブランケットを巻きつけて回転させるブランケット胴と、ブランケットと接触し、ブランケット上のインキ画像を紙に転写させるために紙をブランケットと接触させ、押圧しつつ紙を搬送する圧胴と、を含んで構成される。ここでは、プリンタ13としてオフセット印刷機について説明したが、これに限られるものではなく、電子写真方式のプリンタ等であってもよい。
【0023】
なお、電子写真方式のプリンタであれば、画像書き込み光を照射する露光装置、その書き込み光が照射される感光体ドラム、感光体ドラムを帯電させる帯電ユニット、感光体ドラムの表面に書き込み光により形成された潜像にトナーを付着させ、現像を行う現像ユニット、現像により形成されたトナー像を用紙に転写する転写ユニット、転写されたトナー像を用紙に熱および圧力を加えて定着させる定着ユニット、用紙を給紙する給紙ユニット、トナー像が定着された用紙を排紙する排紙ユニットを含む構成とすることができる。
【0024】
画像検査装置14は、プリンタ13から印刷出力された印刷出力物を画像読取装置15により読み取り、出力されたその印刷出力物の画像データを検査画像データとして、その入力を受け付ける。また、画像検査装置14は、プリンタ13がDFE12から受け付けたビットマップ画像データを元基準画像データとして、その入力も受け付ける。さらに、画像検査装置14は、プリンタ13が印刷設定情報として受け付けた紙の種類から特定される印刷媒体の属性情報、すなわちその紙の種類、色、厚さ、光沢度、表面の凹凸等の表面状態、分光反射特性等も受け付ける。
【0025】
紙の種類には、一般のコピー用紙として使用される上質紙、カラー印刷に使用される光沢のあるコート紙、古紙を再生利用した再生紙、コート紙よりも強い光沢があり、表面が滑らかなアート紙等がある。コート紙やアート紙は、上質紙に比べて、その厚さが薄く、白いという特徴を有し、上質紙は、再生紙に比べて白いという特徴を有する。また、表面の凹凸は、アート紙等の表面が滑らかであるほど小さい。光沢度は、光の正反射の程度を表す量を示し、分光反射特性は、波長による反射強度の違いを表すものである。この分光反射特性は、100のエネルギーの光が物体に当たったときにどの程度が反射するかを表した割合である分光反射率で表すことができる。
【0026】
画像検査装置14は、プリンタ13から受け付けた属性情報に応じて得られる補正パラメータを用いて元基準画像データを補正し、基準画像データを生成する。これは、印刷媒体の種類、色、厚み、光沢度、表面状態、分光反射特性といった印刷媒体の属性によって画像検査に必要な基準画像の精度が変わり、一定の検査精度を確保するためには、これらの属性によって基準画像を補正する必要があるからである。なお、具体的な補正パラメータの算出については後述する。
【0027】
画像検査装置14は、このようにして補正された基準画像と、読み取った検査画像とを比較し、画像検査を行う。画像検査は、その検査画像が基準画像に対して一定の精度で再現できているかにより行われる。再現できているかどうかは、たとえば、色差が閾値より大きいか否かにより判断する。
【0028】
画像読取装置15は、これまでに知られているスキャナ装置を用い、光源、ミラー、レンズ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の撮像素子を含む構成とすることができる。なお、当然のことながら画像読取装置15の読取解像能力は、被検査画像を構成する解像度以上とする。
【0029】
図2は、印刷システムの機能構成を示すブロック図である。プリンタ13は、画像形成プロセスにしたがった作像部を有する印刷部27、印刷媒体である紙を給紙・搬送する給紙部28、プリンタ13全体を制御するコントローラ29、印刷媒体の属性情報を記憶するメモリ29aを有する。画像検査装置14は、後述する機能を実現する、データ取得部20、画像生成部21、画像検査部22を有するCPU23と、ROM24と、RAM25とを備える。画像生成部21は、印刷媒体の属性情報に対応する補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶部21aを有する。補正パラメータ記憶部21aは、たとえば、後述の図3に示すようなガンマ変換テーブルが記憶されているLUTが該当する。
【0030】
DFE12からビットマップ画像データを受け付けたプリンタ13は、そのデータに基づき印刷媒体へ印刷して出力する。出力された印刷出力物は、画像読取装置15へ送られ、印刷された情報が画像として読み取られる。読み取られた画像は、検査画像とされ、そのデータが画像検査装置14へ送られる。プリンタ13は、それと同時に、ビットマップ画像データおよび印刷媒体の属性情報を画像検査装置14へ送る。印刷媒体としては、紙のほか、プラスチックシートやプラスチックカード、金属シートやゴムシート等、印刷することができる媒体であればいかなるものであってもよい。以下、印刷媒体を紙として説明する。
【0031】
紙の属性情報は、プリンタ13が備えるメモリ29aに、予め紙の種類に対応付けて色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射率等として記憶しておき、クライアントPC11から受け付けた印刷データに含まれる紙の種類といった設定情報に基づき、対応するそれらの情報を読み出すことにより取得することができる。これは一例であるので、クライアントPC11が紙の種類を含む設定情報をプリンタ13へ送信する際、予め紙の種類に対応付けて記憶されている紙の色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射率等の情報を、その設定情報に含めて送信することも可能である。
【0032】
上記の機能を実現するために画像検査装置14は、印刷装置であるプリンタ13から、ビットマップ画像データを元基準画像データとして取得するとともに画像が印刷される紙の属性情報をメモリ29aを介して取得し、プリンタ13から印刷出力された印刷出力物を読み取る画像読取装置15から、読み取られた印刷出力物の画像データを検査画像データとして取得するデータ取得部20と、上記取得した属性情報に対応する補正パラメータを用いて元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成部21と、検査画像データと補正後基準画像とを比較することにより印刷出力物の画像の検査を行う画像検査部22と、を主に備えている。
【0033】
上記の例で言えば、画像生成部21は、データ取得部20が取得した元基準画像データであるCMYK8ビットのRIPイメージデータと、紙の種類、色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射特性に関する情報とを用い、その情報から補正パラメータを計算し、その補正パラメータを用いてRIPイメージデータを補正して、検査画像データと比較するための基準画像の補正後基準画像データを生成する。
【0034】
画像検査部22は、データ取得部20が取得した検査画像データにより生成される検査画像、たとえばRGB各色8ビットまたはLab24ビットの画像と、基準画像データにより生成される基準画像とを比較する。ここで、Lab色空間(Lab color speace、以下、単にLabと記述する)は、一般的に知られている均等色空間の1つで、L軸は明度を表し、0〜100の値で表現され、a軸は緑色からマゼンタ色を表し、b軸は青色から黄色を表し、それぞれ−120〜+120の値で表現されるものである。L値が0のときは黒を表し、L値が100のときは白を表し、aおよびbが0のときは彩度が0でグレーを表し、aおよびbの値の絶対値が大きくなるほど、彩度が高いことを示す。
【0035】
たとえば、画像読取装置15から出力された検査画像データとプリンタ13から受け付けた元基準画像データの両方がLabにより出力されていれば、所定の演算式により簡単に色差を計算することができる。色差は、色の知覚的な違いを定量的に表したもので、両画像のL値、a値、b値の差の二乗和の平方根を求めることにより計算することができる。色差が計算できれば、その色差が所定の値である閾値より大きいかどうかを判断するだけで、検査を行うことができる。この色差が閾値より大きい場合には不一致という検査結果を出力することができる。この不一致という検査結果は、印刷出力物が望む品質に適合していない、すなわち品質基準を満たさないことを示すものである。この場合、警告やエラーを出力することも可能である。なお、色差は、Lab色空間内の幾何学的な距離で計算され、画像の明るさや色の違いを評価する値として用いられている。
【0036】
従来の画像検査装置では、元基準画像データ(CMYK)から補正後の基準画像データ(Lab)を得る際、常に理想的なある特定の状態の紙を想定し、データ変換を行っていた。このため、画像の検査精度の要求が低い場合は、使用される紙の種類、色、厚み等に関係なく、このデータ変換のみで十分に対応することができた。しかしながら、色差が3程度の差を検査しようとすると、基準画像データを精度良く生成する必要がある。
【0037】
ここで、色差が3というのは、人間が色の差を識別することができる閾値として、よく取り上げられる値である。人間が色の変化に敏感な肌色やグレー等は色差が2程度でも差を感じることができることから、元基準画像データ(CMYK)から補正後の基準画像データ(Lab)を得るときに紙の属性情報を考慮して正確な基準画像データを得ることが必要とされる。この色差2や色差3という値の評価基準は、米国基準局(NBS単位)で設定されているものであり、この評価基準では、色差2や色差3が含まれる色差1.5〜3は、色差が相当認められる、とされている。
【0038】
図3は、画像生成部21の構成例を示した機能ブロック図である。画像生成部21は、元基準画像データのCMYK各色データについて、C色(シアン)のガンマ変換を行うCガンマ変換部30,M色(マゼンタ)のガンマ変換を行うMガンマ変換部31,Y色(イエロー)ののガンマ変換を行うYガンマ変換部32,K色(ブラック)のガンマ変換を行うKガンマ変換部33と、ガンマ変換された各色の入力データをRGBまたはLab等の3次元の色空間に変換する色空間変換部34と、を備える。プリンタ13から受け付けたCMYK各色8ビットのRIPイメージデータは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)という4つの色の各色が8ビットのデータをもち、各色のデータがCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33に入力される。
【0039】
Cガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33は、入力8ビット、出力8ビットのLUT(Look Up Table)を用いてガンマ変換を行うが、プリンタ13から受け付けた紙の属性情報により補正パラメータであるガンマ変換特性を書き換え、書き換えられたガンマ変換特性から得られるガンマ値を用いてガンマ変換を行うことにより、各色データを補正することができる。具体的には、紙の属性情報により書き換えられたガンマ変換特性に基づき、LUTの入力値に対する出力値の値を書き換えた上で、元基準画像データの各色データを入力値とし、その書き換えたLUTを用いて出力値を求めることで、ガンマ変換され、紙の属性情報に応じて補正されたデータを出力することができる。
【0040】
色空間変換部34は、CMYKの4次元の色空間をRGBまたはLab等の3次元の色空間に変換し、検査画像データと比較するためのCMYK各色の補正後基準画像データを生成する。この色空間変換部34は、ガンマ変換された各色データを、検査画像データと比較可能な色空間データへ変換するものである。具体的には、CMYK空間上の格子点をRGBまたはLab空間上の格子点へ変換し、格子点間のデータを補間演算により求める。この方法として、既知の4面体補間方式を採用し、色空間変換部34は、この4面体補間方式を実装することができる。
【0041】
色空間変換部34もCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33と同様、LUTを用いて変換することができ、Cガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33のガンマ変換特性を出力=入力と設定しておき、ある特定の紙の種類、色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射特性の紙を想定し、Cガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33から出力されたデータを入力値とし、その入力値に対して得られる出力値を色空間変換パラメータとして決定することができる。しかしながら、このパラメータの決定には長時間を要することから、紙に応じてユーザが自由に変換することは難しく、予め代表的な紙の種類のいくつかに対して色空間変換パラメータが決定される。
【0042】
ある種類の紙に対して決定されたガンマ変換特性を例示した図を、図4(a)〜(d)に示す。図4(a)〜(d)は順に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の入力値と出力値との関係を示したグラフである。この図において、横軸は、CMYK各色の入力値(0〜255)を示し、縦軸は、その出力値(0〜255)を示す。値が0に近づくにつれて低濃度となり、値が255に近づくにつれて高濃度となることを表す。たとえば、入力値CMYK=(0,0,0,0)のデータであれば、紙には何も印字されていない状態を表す。Cガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33は、上記図4(a)〜(d)の各ガンマ変換特性を参照してYMCK各色のガンマ変換処理を行い、色空間変換部34に出力する。
【0043】
当初想定した紙よりも検査しようとしている紙の方が、濃度が高い場合、特にハイライト部分ではその影響が大きい。このため、これを再現するためにガンマ変換特性は、ハイライト側(原点に近い側)で入力データを少し持ち上げるような特性とされている。これにより、紙白に近い部分ほど、紙による色の影響を受けている様子を再現することができる。
【0044】
色空間変換パラメータを決定したときの標準的な紙種Aの場合、これらのガンマ変換特性を表すグラフの切片がすべて0となり、傾きは1となる。しかしながら、標準的な紙より少し黄色っぽい紙種Bの場合、図4(c)に示すイエローのガンマ変換特性を表すグラフの切片が、たとえば15となり、図4(b)に示すマゼンタのガンマ変換特性を表すグラフの切片が10程度となる。標準的な紙より少し青っぽい紙種Cの場合、図4(a)に示すシアンのガンマ変換特性を表すグラフの切片が、たとえば15となり、図4(b)に示すマゼンタのガンマ変換特性を表すグラフの切片が5程度となる。
【0045】
図5は、紙の種類により書き換えられたガンマ変換特性を表すグラフの各色の切片の値をテーブルとして示したグラフである。このようなテーブルを用いることで、図3に示す画像生成部21の構成により紙の地肌のLab値を求めることができる。図5では、紙の地肌のLab値を求めるために、紙種Aについてはシアンのガンマ変換特性を表すグラフの切片が9、マゼンタのガンマ変換特性を表すグラフの切片が10、イエローのガンマ変換特性を表すグラフの切片は7が望ましく、紙種Bについてはシアンのガンマ変換特性を表すグラフの切片が10、マゼンタのガンマ変換特性を表すグラフの切片が11、イエローのガンマ変換特性を表すグラフの切片は14が望ましく、紙種Cについてはシアンのガンマ変換特性を表すグラフの切片が15、マゼンタのガンマ変換特性を表すグラフの切片が14、イエローのガンマ変換特性を表すグラフの切片は0が望ましい。
【0046】
紙の地肌の影響は、図5のテーブルに示す各値とすることが望ましいが、地肌以外の特性、すなわちガンマ変換特性を表すグラフの入力値が0以外の部分が、図4(a)〜(d)に示すような直線になるかどうかは実際にそれぞれの紙の上に所定の濃度のパッチを印刷して確認する必要がある。このように紙の種類に応じて切片を変更し、ガンマ変換特性を書き換えることで、LUTを書き換え、この書き換えられたLUTを用いて元基準画像データをガンマ変換することで、元基準画像データを補正することができる。
【0047】
図6は、画像検査部22の第1の機能構成例を示すブロック図である。画像検査部22は、色差計算部35と、色差判断部36とを含んで構成される。ここでは画像読取装置15から出力される検査画像データを図示していないが、この検査画像データは、画像読取装置15内でRGBのデータからLab色空間のデータへ変換されている。このため、色差計算部35は、この変換されたデータと、補正後基準画像データとを用い、それらの画像の色差を計算する。色差は、上述した方法である双方のデータのユークリッド距離を計算することにより計算される。そして、色差判断部36は、計算された色差と閾値とを比較して検査結果の合否判定を行う。
【0048】
たとえば、赤、青、緑等の色については色差が3以上であるかどうか、人間が色の変化に敏感な肌色やグレー等については色差2以上であるかどうかにより、検査画像データと補正後基準画像の両画像が一致するか不一致であるかを判断し、その印刷出力物の画像の合否が判定される。合格と判定された場合、納品可能な印刷出力物とし、不合格と判定された場合は、警告やエラー表示等がされ、その印刷出力物は廃棄等することができる。
【0049】
これまでは紙の色による基準画像データへの影響を考慮した画像検査装置について説明してきた。したがって、想定していない紙の色の印刷出力物を検査する場合においても正確な画像検査を行うことができる。しかしながら、基準画像データが影響を受けるのは、紙の色には限られない。紙の厚さによっても影響を受ける。これは、薄い紙は、紙の反対側の背景の状態の影響を強く受けるが、厚い紙はそのような影響を受けることはないからである。すなわち、紙は、その厚さにより地肌の色が背景の影響を受ける量が変化する。よって、画像検査装置14において、画像読取装置15の背景が紙の色と全く同じであれば上記のような問題は生じないが、どのような色の紙が通紙されるかわからないため、紙の色と背景色の色は必ず異なると考えることが妥当である。
【0050】
上記の例では、紙の種類を仮定してCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33および色空間変換部34が変換に使用するパラメータを決定している。その際、紙の厚さは十分に厚く、背景の影響はないものと仮定している。しかしながら、実際に使用される紙の厚さは様々であり、薄い紙の場合は背景の影響を受けることから、紙の厚さによる背景板の影響の補正を行う必要がある。
【0051】
たとえば、背景板と比較して紙の濃度が高くても低くても背景板が透けて見えた場合は紙だけの場合よりも濃度が少しだけ高めに見える。このような場合、図4(d)に示すブラックのガンマ変換特性を表すグラフのハイライト側を、切片を0より大きい値にして少し補正し、基準画像が少し暗めになるようにする。このときのグラフの切片は、紙の透過率や厚みによって変更されるパラメータで実験により求めることができる。
【0052】
このように、図4(a)〜(c)のシアン、マゼンタ、イエローに加えて、図4(d)のブラックについても切片を補正し、この補正を反映させたLUTを用いてガンマ変換を行うことにより、紙の色および厚さを考慮した基準画像データを生成することができる。
【0053】
紙の影響は、色、厚さだけに限られるものではなく、紙の光沢度、表面状態、分光反射特性等によっても受ける。光沢度については、実際に光沢紙を読み取り、試験を行うことにより、ガンマ変換特性や色空間変換パラメータを算出することができる。
【0054】
紙の光沢度の影響は主に紙白側に及び、光沢度が高い紙は直接反射成分が大きくなる。この光沢度が高い紙は濃度や明度を計測する場合の散乱光の成分が相対的に小さくなるので結果として濃度が高めに観測される。図4を参照してみても分かるように、入力値の数値が大きいほど出力値である紙面上の濃度が高い状態を表すため、紙の光沢が高い状態を表す際、図4(a)〜(c)に示すCMYのグラフのY切片を正にとることにより補正することができる。
【0055】
ところで、印刷の置き換えをねらうような高速プリンタは、様々な紙の種類に対応すべきとの要求がある。紙は、種類に応じて色、厚さ、光沢度が異なり、表面の凹凸も異なる。表面の凹凸が大きい紙の場合、画像検査時の読み取りデータのばらつきが大きく、そのばらつきはハイライトの方が大きい。このため、基準画像データの明度を示すL値によって閾値を変化させることで、この表面状態に応じた補正を行うことができる。
【0056】
このため、画像検査部22は、図7の第2の機能構成例に示すように、画像読み取りデータ(Lab)と、基準画像データ(Lab)とを受け付け、それらから色差を計算する色差計算部35と、基準画像データを受け付け、この基準画像データのL値によって閾値を変化させ、紙に応じた閾値を生成する閾値生成部37と、計算された色差と生成された閾値とから、色差が閾値より大きいか否かを判断し、大きい場合には不一致を検査結果として出力する色差判断部36とを含んで構成することができる。
【0057】
図8は、閾値生成部37で用いる閾値変換テーブルに対応する変換特性を示したグラフである。L値は明るいほど大きな値を取り、L値が大きな紙白に近い場合には検査閾値を大きめにする。紙の表面が色材に覆われていて、紙の凹凸の影響が少なくなってくる領域では検査閾値を一定とする。図8では、基準画像データのL値を横軸に、検査閾値を縦軸にとり、L値がある値までは一定とし、その以上は検査閾値が一定の割合で大きくなるようにされている。この変換特性に基づき閾値変換テーブルが作成され、閾値生成部37が、この閾値変換テーブルを用い、基準画像データのL値に基づき閾値を生成することができる。
【0058】
ここでは、検査閾値がL値にのみ変化する例を提示したが、CMYの色によってトナーの付着量に対するL値が異なるので、LabのL値、a値、b値の3つの要素から検査閾値を決定することが望ましい。
【0059】
図9は、画像生成部の別の機能構成例を示すブロック図である。この例では、4つの第1ガンマ変換部40〜43と、それら第1ガンマ変換部40〜43から変換された4つのデータ(CMYK)を受け付け、CMYK→RGBへの色空間変換を行い、3つのデータ(RGB)を出力する第1色空間変換部44と、第1色空間変換部44から出力された3つのデータ(RGB)の各々を受け付け、さらにガンマ変換を行う第2ガンマ変換部45〜47と、第2ガンマ変換部45〜47から出力された3つのデータ(RGB)を受け付け、色空間変換を行い、3つのデータ(Lab)を出力する第2色空間変換部48とから構成されている。
【0060】
元基準画像データ(CMYK)からビットマップ画像データを生成するまでの流れは、図3に示す構成と同様である。この例では、第1ガンマ変換部40〜43および第1色空間変換部44により得られた3つのデータに対して、さらにガンマ変換を行い、出力された3つのデータに対して色空間変換を行い、Lab色空間のデータへ変換している。
【0061】
紙の種類によって、赤外光の反射成分が大きいものや、光源の紫外線の成分で励起されて発光し、白く見せるものが存在する。このため、赤外光の反射成分が大きいものついては、ハイライト部分でのR成分(赤成分)を大きくするようなガンマ補正を行うことで近似することができ、また、紫外線の成分で励起され、白く見せるものについては、ハイライト部分でのRGB成分すべてのチャンネルのデータを大きくするようなガンマ補正を行うことで近似することができる。
【0062】
このような2つの補正が必要とされるデータに対し、ガンマ変換部と色空間変換部からなる2組の変換部により画像生成部21を構成することにより、その2つの補正を実現することができる。したがって、複数の補正が必要とされるデータに対しては、複数組の変換部により画像生成部21を構成することができる。
【0063】
上記の例では、第1ガンマ変換部40〜43および第1色空間変換部44によりCMYKデータをRGBデータへ変換した後、さらにガンマ変換を行うことで、特異な分光特性をもつ紙に出力した画像に対する基準画像データを正確に生成することができるため、このような種類の紙に対しても一定精度の画像検査を実現することができる。
【0064】
光沢度が高い色材を用いて画像形成を行った場合、通常の光沢度の色材を用いて画像形成を行う場合に比べて濃度が高めになる。これは、特にトナーが十分に乗ったベタ領域で濃度が高くなる。これを補正するために、図3に示す構成と同様の装置を用い、適用するガンマ変換特性を図10(a)〜(d)に示すグラフのように、シャドー側を持ち上げたものとする。すなわち、そのグラフの入力値が大きい側の出力値を持ち上げる。
【0065】
このような操作を行うことで、定着特性を変更して、光沢度がアップするような制御を行った場合であっても、正確な濃度検査を実施することができる。
【0066】
ここで図11を参照して、画像検査装置14により実行される画像検査方法について詳細に説明する。図11は、この画像検査装置14により行われる処理の流れを示したフローチャート図である。この処理を開始すると、まず、データ取得部20は、プリンタ13から元基準画像データおよび紙(印刷媒体)の属性情報を取得する(ステップS101)。続いて、画像生成部21は、上記取得した紙の属性情報に応じて補正パラメータであるガンマ変換特性を表すグラフの切片の値を、図5に示すテーブルから求め、ガンマ変換特性を書き換え、その書き換えたガンマ変換特性に基づきLUTを書き換える(ステップS102)。
【0067】
続いて、画像生成部21は、書き換えたLUTを用い、元基準画像データをガンマ変換し、色空間変換して補正を行い、印刷出力物に使用された紙と同じ条件の、比較の基準となる補正後基準画像データを生成する(ステップS103)。
【0068】
続いて、データ取得部20は、印刷出力物を読み取った画像読取装置15から読み取った画像データである検査画像データを取得する(ステップS104)。さらに、画像検査部22は、データ取得部20から検査画像データを受け付け、画像生成部21から補正後基準画像データを受け付け、両画像データを比較し、画像検査を行う(ステップS105)。
【0069】
続いて、上記画像検査において検査画像データと補正後基準画像データの両画像が一致するか否かを判断する(ステップS106)。ここで、両画像データが一致すると判断した場合(ステップS106、NO)、検査を終了する。一方、ステップS107において両画像データが一致しないと判断した場合(ステップS106、YES)は、両画像データが一致しない旨の警告やエラーを検査結果として出力し(ステップS107)、本検査処理を終了する。
【0070】
なお、上記のステップS103では、画像生成部21が備えるCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33が、データ取得部20が取得した元基準画像データの各色データを、紙の属性情報に応じて変更されるガンマ変換テーブルを用いてガンマ変換し、色空間変換部34が、そのガンマ変換された各色データを、検査画像データと比較可能な色空間データへ変換する。
【0071】
また、ステップS106では、画像検査部22が、検査画像データと基準画像データの色差が閾値を超えるか否かを判断し、超える場合にステップS107へ進み、検査結果として印刷出力物の画像が基準画像と不一致である旨の警告やエラーを出力する。
【0072】
具体的には、画像検査部22が備える色差計算部35が、ステップS105において、検査画像データと補正後基準画像データとを用いて、検査画像データと補正後基準画像データの色差を計算し、色差判断部36が、ステップS106において、ステップS105で計算された色差が予め設定された閾値を超えるか否かを判断する。
【0073】
この閾値を補正後基準画像データから算出する場合、ステップS105において、閾値生成部37が、紙の凹凸を考慮し、閾値変換テーブルを用い、補正後基準画像データに基づき閾値を算出する。
【0074】
ところで、本実施の形態で実行されるプログラムは、ROM24に予め組み込まれて提供するものとしているが、これに限定されるものではない。本実施の形態で実行されるプログラムを、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0075】
また、本実施の形態で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施の形態で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0076】
本実施の形態で実行されるプログラムは、上述したデータ取得部20、画像生成部21、画像検査部22を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU23(プロセッサ)が上記記録媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部がメモリ等の主記憶装置上にロードされ、データ取得部20、画像生成部21、画像検査部22が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0077】
以上に説明してきたように、紙の属性情報である種類、色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射特性に応じてガンマ変換特性を変更し、また、閾値変換特性を変更し、これらの特性に対応する変換テーブルを用い、元基準画像データを補正して補正後基準画像データを生成することで、画像読取装置15により読み取った印刷出力物の画像を、その印刷出力物の紙の種類、色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射特性とほぼ同じ条件の基準画像と比較することができ、これにより、一定の検査精度を確保することができる。
【0078】
また、画像生成部21は、データ取得部20が取得した元基準画像データの各色データを、属性情報に応じて変更されるガンマ変換テーブルを用いてガンマ変換するCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33と、ガンマ変換された各色データを、検査画像データと比較可能な色空間データへ変換する色空間変換部34とを含む。このCガンマ変換部30,Mガンマ変換部31,Yガンマ変換部32,Kガンマ変換部33により元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成することができ、色空間変換部34により検査画像と比較することができる該検査画像と同じ色空間のデータへ変換することができる。たとえば、元基準画像データがCMYK色空間データで、検査画像データがLab色空間データであれば、色空間変換部34により、元基準画像データを、検査画像データと同じLab色空間データへ変換することができる。
【0079】
また、画像生成部21は、印刷媒体の種類に応じて、2以上のガンマ変換部と、そのガンマ変換されたデータを色空間データへ変換する2以上の色空間変換部とを備えることも可能である。紙の種類によって赤外光の反射成分が大きいものや、光源の紫外光の成分で励起されて発光して白く見せているもの等がある。このため、第1のガンマ変換部で赤色成分を大きくするようなガンマ補正を行い、第2のガンマ変換部で赤色、青色、緑色のすべての成分を大きくするようなガンマ補正を行うことができる。
【0080】
また、画像検査部22は、検査画像データと基準画像データの色差が閾値を超えるか否かを判断し、超える場合、検査結果として当該印刷出力物の画像が基準画像と不一致である旨を出力する。この場合、画像検査装置14は、印刷を指示した情報処理装置や印刷装置の表示画面上に警告やエラーを表示させることができる。
【0081】
これを実現するべく、画像検査部22は、検査画像データと補正後基準画像データとを用いて、検査画像と基準画像の色差を計算する色差計算部35と、計算された色差が予め設定された閾値を超えるか否かを判断する色差判断部36とを含むことができる。
【0082】
また、画像検査部22は、紙の凹凸を考慮し、閾値変換テーブルを用い、補正後基準画像データに基づき閾値を算出する閾値生成部37をさらに含むことができる。
【0083】
なお、これまで本発明を、画像検査装置、印刷システム、画像検査方法として上述した実施の形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
10 ネットワーク
11 クライアントPC
12 DFE
13 プリンタ
14 画像検査装置
15 画像読取装置
20 データ取得部
21 画像生成部
21a 補正パラメータ記憶部
22 画像検査部
23 CPU
24 ROM
25 RAM
27 印刷部
28 給紙部
29 コントローラ
29a メモリ
30 Cガンマ変換部
31 Mガンマ変換部
32 Yガンマ変換部
33 Kガンマ変換部
34 色空間変換部
35 色差計算部
36 色差判断部
37 閾値生成部
40〜43 第1ガンマ変換部
44 第1色空間変換部
45〜47 第2ガンマ変換部
48 第2色空間変換部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2005−205703号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置で印刷媒体上に印刷され出力された印刷画像を画像読取装置で読み取り、この読み取った印刷画像を検査する画像検査装置であって、
前記画像形成装置は前記印刷媒体の属性情報を記憶する属性情報記憶手段を有し、
前記画像読取装置により読み取られて出力された検査画像データと、前記画像形成装置へ入力された元基準画像データと、前記属性情報記憶手段から画像が印刷された印刷媒体の属性情報と、を取得するデータ取得部と、
前記属性情報に対応する補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶部と、
前記データ取得部により取得した前記属性情報に対応する補正パラメータを、前記補正パラメータ記憶手段から読み出し、当該補正パラメータを用いて前記元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成部と、
前記検査画像データと補正後基準画像データとの一致度を、予め定めた値を用いて比較することにより前記印刷画像の画像検査を行う画像検査部と、
を備えることを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
前記印刷媒体は、紙であり、前記印刷媒体の属性情報は、紙の種類、色、厚さ、光沢度、表面状態、分光反射特性に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、
前記データ取得部が取得した前記元基準画像データの各色データを、前記属性情報に応じて変更されるガンマ変換テーブルを用いてガンマ変換するガンマ変換部と、
前記ガンマ変換部によりガンマ変換された前記各色データを、前記検査画像データと比較可能な色空間データへ変換する色空間変換部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記ガンマ変換部は、前記印刷媒体の種類に応じて、2以上のガンマ変換を行い、
前記色空間変換部は、前記ガンマ変換部により2以上のガンマ変換されたデータを色空間データへ変換する色空間変換を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記画像検査部は、前記検査画像データと前記補正後基準画像データの色差が予め定めた閾値を超えるか否かを判断し、前記閾値を超える場合、検査結果として前記印刷画像が前記基準画像と不一致である旨を出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記画像検査部は、
前記検査画像データと前記基準画像データとを用いて、前記検査画像データと前記基準補正後画像データの色差を計算する色差計算部と、
前記色差計算部により計算された前記色差が予め設定された閾値を超えるか否かを判断する色差判断部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記画像検査部は、
前記検査画像データと前記補正後基準画像データとを用いて、前記検査画像データと前記補正後基準画像データの色差を計算する色差計算部と、
閾値変換テーブルを有し、この閾値変換テーブルを用い、前記補正後基準画像データに基づき前記閾値を算出する閾値算出部と、
前記色差計算部により計算された前記色差が、前記閾値算出部で算出された前記閾値を超えるか否かを判断する色差判断部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像検査装置と、
前記元基準画像データの入力を受け付け、前記印刷画像を出力するとともに、前記画像検査装置へ前記元基準画像データおよび前記印刷媒体の属性情報を送信する前記画像形成装置と、
前記画像形成装置から出力された前記印刷画像を読み取り、前記検査画像データを出力する画像読取装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
画像形成装置で印刷媒体上に印刷され出力された印刷画像を画像読取装置で読み取り、この読み取った印刷画像を検査する画像検査方法であって、
前記画像形成装置は前記印刷媒体の属性情報を記憶する属性情報記憶手段と、
前記属性情報に対応する補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶手段と、
を有し、
前記画像読取装置により読み取られて出力された検査画像データと、前記画像形成装置へ入力された元基準画像データと、前記属性情報記憶手段から画像が印刷された印刷媒体の属性情報と、を取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程により取得した前記属性情報に対応する補正パラメータを、前記補正パラメータ記憶手段から読み出し、当該補正パラメータを用いて前記元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成工程と、
前記検査画像データと前記補正後基準画像データとの一致度を、予め定めた値を用いて比較することにより前記印刷画像の画像検査を行う画像検査工程と、
を含むことを特徴とする画像検査方法。
【請求項10】
画像形成装置で印刷媒体上に印刷され出力された印刷画像を画像読取装置で読み取り、この読み取った印刷画像を検査するコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記コンピュータは、前記印刷媒体の属性情報を記憶する属性情報記憶手段と、前記属性情報に対応する補正パラメータを記憶しておく補正パラメータ記憶手段と、を有し、
前記画像読取装置により読み取られて出力された検査画像データと、前記画像形成装置へ入力された元基準画像データと、前記属性情報記憶手段から画像が印刷された印刷媒体の属性情報と、を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにより取得した前記属性情報に対応する補正パラメータを、前記補正パラメータ記憶手段から読み出し、当該補正パラメータを用いて前記元基準画像データを補正し、補正後基準画像データを生成する画像生成ステップと、
前記検査画像データと前記補正後基準画像データとの一致度を、予め定めた値を用いて比較することにより前記印刷画像の画像検査を行う画像検査ステップと、
を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−137481(P2012−137481A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258777(P2011−258777)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】