説明

画像比較装置および画像比較プログラム

【課題】画像比較検査を容易且つ正確に実施することのできる画像比較装置および画像比較プログラムを提供する。
【解決手段】画像比較装置10は、基準となる画像と検査対象となる画像とを略同一の解像度で読み取ることにより、第1の画像データと第2の画像データとを生成する画像読取手段11,16と、第1の画像データおよび第2の画像データを画面上であおり表示する画像表示手段11,12と、第1の画像データと第2の画像データとを比較することで両画像データ間での差異を検出し、差異が所定の閾値を超えた場合に当該差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行う相違点抽出手段11と、を備えており、画像データ上に表示されるマーキングが、ポインティングデバイス15の操作によって追加・削除自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像比較装置および画像比較プログラムに係り、特に、画像比較検査を容易且つ正確に実施することのできる画像比較装置および画像比較プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、二つの画像を比較してその同一性を検査する画像比較検査が行われている。かかる画像比較検査の一手法としては、二つの画像を重合し、交互にあおり表示し、視覚的な残像効果によって二つの画像間での相違点を人間の目で発見することが知られている(本明細書および特許請求の範囲における「あおり表示」の語は、画像を交互に表示させる状態を示している。)。
【0003】
また、他の手法として、基準画像に対して比較画像を重合することで相違点を抽出し、この相違点を枠囲みでマーキングすることにより画像比較検査を行う手法も知られている。
【0004】
なお、この種の技術を開示する先行技術文献として、例えば下記特許文献1および2などが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−184953号公報
【特許文献2】特開2002−252751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、あおり表示による画像間相違点の抽出は、人の目で行う必要があることから検査者による時間的・疲労的負担が大きく、また、検査者の熟練度等によって検査精度にばらつきが生じてしまうという問題が存在していた。
【0007】
一方、マーキング表示による画像比較検査についても、人が行う場合には検査者による検査精度設定のばらつきが存在していた。そこで、この問題を解消するために、二つの画像間での明度や彩度、色相といった相違量や、画像や文字のズレ量といった数値データに基づいて、コンピュータ処理により自動的なマーキング表示を実施しようとする試みも提案されている。しかしながら、コンピュータ処理によるマーキング表示については、画像を取得する際の照明等の条件や、検査対象となる画像の条件が個別に異なるため、判断条件となる閾値等を検査条件が変更になるごとに設定し直さなければならない。したがって、コンピュータを用いた自動検査についても、一定の精度を確保するためには多くの手間と時間を要してしまうという課題が存在していた。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、画像比較検査を容易且つ正確に実施することのできる画像比較装置および画像比較プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像比較装置は、基準となる画像を表すデータとして作成された第1の画像データと、検査対象となる画像を表すデータとして作成された第2の画像データとをあおり表示することで、第1の画像データと第2の画像データとの相違点を自動的に抽出するようにした画像比較装置であって、前記基準となる画像と前記検査対象となる画像とを略同一の解像度で読み取ることにより、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを生成する画像読取手段と、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示する画像表示手段と、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較することで両画像データ間での差異を検出し、前記差異が所定の閾値を超えた場合に当該差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行う相違点抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像比較装置では、画像データ上に表示される前記マーキングが、ポインティングデバイスの操作によって追加・削除自在に構成されていることが好適である。
【0011】
また、本発明に係る画像比較装置では、前記ポインティングデバイスの操作によって画像データ上に表示される前記マーキングが追加又は削除されたときに、それまでマーキング表示を行うために設定されていた閾値が、当該ポインティングデバイスの操作による追加・削除に連動して変更自在に構成することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る画像比較装置では、前記マーキングが追加又は削除された箇所のみの前記閾値が、変更自在に構成されていることとすることができる。
【0013】
またさらに、本発明に係る画像比較装置では、前記差異の存在する領域もしくは前記差異の形状を取得し、当該差異がノイズによるものか否かを判断するノイズ判定手段を備えることとすることができる。
【0014】
さらにまた、本発明に係る画像比較装置では、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示する以前に、あるいはあおり表示後に、第1および第2の画像データを所定のフィルタリング処理により調整する事前調整手段を備えることとすることができる。
【0015】
本発明に係る画像比較プログラムは、基準となる画像を表すデータとして作成された第1の画像データと、検査対象となる画像を表すデータとして作成された第2の画像データとをあおり表示することで、第1の画像データと第2の画像データとの相違点を自動的に抽出させるための画像比較プログラムであって、コンピュータに、前記基準となる画像と前記検査対象となる画像とを略同一の解像度で読み取ることにより、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを生成させる画像読取工程と、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示させる画像表示工程と、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較することで両画像データ間での差異を検出し、前記差異が所定の閾値を超えた場合に当該差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行わせる相違点抽出工程と、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る画像比較プログラムでは、画像データ上に表示される前記マーキングが、ポインティングデバイスの操作によって追加・削除自在とされることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像比較検査を容易且つ正確に実施することのできる画像比較装置および画像比較プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る画像比較装置の一実施例を示す外観図である。
【図2】図1で示した画像比較装置のブロック構成図である。
【図3】本実施形態に係る画像比較装置を用いることによって実施される画像比較検査を説明するための概念図である。
【図4】本実施形態に係る画像比較プログラムを実行することで実施される処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る画像比較装置の一実施例を示す外観図である。また、図2は、図1で示した画像比較装置のブロック構成図である。
【0021】
本実施形態に係る画像比較装置10は、パーソナルコンピュータ本体11と、このパーソナルコンピュータ本体11に接続されたCRTディスプレイ12、マウス13、キーボード14、ポインティングデバイス15、およびCCDカメラ16によって構成されている。
【0022】
パーソナルコンピュータ本体11には、CPU11aが内蔵されており、このCPU11aはメインメモリ11b上にあるプログラムと呼ばれる命令列を順に読み込み、解釈し、その結果に従って画像比較装置10の動作を実行させる役割を担っている。なお、メインメモリ11bに一時記憶されるプログラムには、画像比較検査のためのソフトウェアが含まれており、このソフトウェアには、専用コンピュータシステムのほか、Web対応のアプリケーションソフトウエアを採用することが可能となっている。
【0023】
また、CPU11aには、バス11cを介して画像制御部11dやCCD制御部11e、操作入力部11f、および画像メモリ11gが接続されており、外部周辺機器とのデータやプログラムのやりとりを行うことができるようになっている。具体的に説明すると、画像制御部11dはCRTディスプレイ12の画面制御を行い、CCD制御部11eはCCDカメラ16によって撮影された画像データを画像メモリ11gに記憶させたり、CCDカメラ16の動作制御を行ったりすることが可能となっている。また、操作入力部11fについては、マウス13、キーボード14、ポインティングデバイス15からの入力信号をCPU11aに伝達し、画像比較装置10に対する動作指令を伝達・制御する役割を担っている。なお、CCDカメラ16には、一般的なCCD(Charge Coupled Device)カメラのほか、CMOSカメラや各種のラインセンサ、特殊イメージセンサ、もしくはアナログカメラの画像をデジタル変換する入力装置などを採用することも可能である。
【0024】
以上のような構成を有する画像比較装置10において、比較検査のための画像については、「画像データ」もしくは「入力可能な被写体」を想定している。すなわち、本明細書における「画像データ」とは、CAD装置などから、あるいはCAD、DTPからのポストスクリプトデータなどのベクターデータはRIPなどから、また、CPUと各種のアプリケーションソフトウエアで作成された画像データから、PDF,TIFF,Bitmap,JPEG,PICTなどにファイル変換されたものである。一方、本明細書における「入力可能な被写体」とは、スキャナーあるいはデジタルカメラ、医療用画像装置のMRI、レントゲン装置など、その他のあらゆる画像入力装置により入力された、あるいは入力後変換されたPDF,TIFF,Bitmap,JPEG,PICT,DAICOMなどのファイルである。なお、特許請求の範囲における「画像データ」の語には、上記「画像データ」および上記「入力可能な被写体」のいずれもが含まれることとする。
【0025】
続いて、本実施形態に係る画像比較装置10を用いた画像比較検査の内容について、図1乃至図3を用いて説明を行う。ここで、図3は、本実施形態に係る画像比較装置を用いることによって実施される画像比較検査を説明するための概念図である。
【0026】
まず、本実施形態に係る画像比較装置10では、CCDカメラ16によって基準となる画像を撮影し、この撮影画像から得られる第1の画像データ31を画像メモリ11gに記憶させる。次に、CCDカメラ16によって検査対象となる画像を撮影し、この撮影画像から得られる第2の画像データ32を画像メモリ11gに記憶させる。つまり、画像読取手段としてのパーソナルコンピュータ本体11とCCDカメラ16とを用いることによって、はじめに第1の画像データ31と第2の画像データ32とを生成するのである。このとき、基準となる画像と検査対象となる画像とは、略同一の解像度で読み取ることが好適である。
【0027】
なお、これら二つの画像データ31,32については、あらかじめパーソナルコンピュータ本体11の画像メモリ11gに保存をしておき、画像メモリ11gやネットワーク回線を介して、第1の画像データあるいは第2の画像データあるいは両方の画像データを呼び出すようにすることも可能である。また、上述した「入力可能な被写体」の場合には、比較する2つの画像をCCDカメラ16から取り込み、メインメモリ11bに一時インストールされた比較ソフトを用いて明度、彩度、色相、コントラスト(あるいは、ガンマも含めることができる)、位置ズレなどの検査精度値をあらかじめ設定し、多値化あるいは二値化データ同士での比較を行うように準備することも可能である。さらに、「入力可能な被写体」については、あらかじめパーソナルコンピュータ本体11の画像メモリ(記憶装置)11gに保存をしておくことも可能である。
【0028】
また、比較する画像データ31,32が、デジタルデータである場合や、レーザープリンター、インクジェットプリンタ、あるいはレントゲンやMRIなどからの出力物の場合、出力材の色や材質、あるいは反射率、出力機器の種類、装置の出力設定や出力精度のばらつき等により、画像や線分の太さが異なってしまうという事態が発生する場合がある。このように、比較する画像データ31,32の画質や線分の太さが違う場合には、第1の画像データ31と第2の画像データ32を別画像レイヤで重ねて表示させ、全体あるいは1箇所又は複数の特定部分をポインティングデバイス15で指示することにより、色調(明度・彩度・色相・コントラスト)などの画質調整、および画像や線分のそれぞれを太らせ、あるいは細らせ調整したりするといった、所定のフィルタリング処理および色調調整のためのカラーマネジメント処理などの所定の画像処理を実施することもできる。このような画像処理を実現するための具体的な手法としては、事前調整手段としてのパーソナルコンピュータ本体11を利用することで、比較する画像データ31,32を太さ差分の中間値で調整したり、あるいは第1の画像データ31に第2の画像データ32の画像・線分を合わせたり、第2の画像データ32に第1の画像データ31の画像・線分を合わせたりすることが採用できる。
【0029】
次に、画像メモリ11gに保存された第1および第2の画像データ31,32を画像表示手段としてのCRTディスプレイ12を用いることにより、この画面上であおり表示させる。あおり表示された二つの画像データの表示イメージが、図3中の符号33で示されている。
【0030】
図3中の符号33で示されるような画像重合の方法については、特徴点重合、1点重合、多点重合、マトリックス分割順次重合などの手法が既に知られており、これら既知の手法を用いることで実現できる。そして、本実施形態に係る画像比較装置10では、比較ソフトを用いることによって、比較する二つの画像データ31,32間での明度、彩度、色相、位置ズレなどを抽出し、多値化あるいは二値化データ同士での比較を実施するとともに両画像データ31,32間での差異を検出し、あらかじめ設定された閾値(検査精度値)を超えた場合に差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行うことが実施されている。これらの処理は、相違点抽出手段としてのパーソナルコンピュータ本体11とCPU11a、メインメモリ11bにインストールされた比較ソフトによって実現されており、その処理の結果得られるマーキング表示の具体的な態様は、符号33で示されたあおり表示画像データの中の符号34で示されるごとき破線の囲み表示である。
【0031】
以上のように、あらかじめ設定された閾値を用いることで第一段階の画像比較が実施されるのであるが、本実施形態に係る画像比較装置10では、第二段階として、画像データ上に表示されるマーキング34を、ポインティングデバイスの操作によって追加・削除することが可能となっている。具体的には、CRTディスプレイ12の画面上に表示された二つの画像データ31,32は、画面上であおり表示されているので、検査者はその画面を見ることによって容易に両画像データ31,32間での差異を検出することが可能である。
【0032】
そしてここで、例えば、差異が存在する箇所にマーキングが表示されていない場合には、ポインティングデバイス15を操作することによって画面上の差異点にマーキング34を追加することができる。さらに、本実施形態に係る画像比較装置10では、ポインティングデバイス15の操作によって画像データ上に表示されるマーキング34を追加した場合には、それまでマーキング表示を行うために設定されていた閾値を、ポインティングデバイス15の操作によるマーキング追加動作に連動させて自動的に変更することができるようにもなっている。つまり、マーキング34が追加された箇所の画像データに基づいて、閾値の最適化が実施されることになるのである。したがって、本実施形態に係る画像比較装置10によれば、現時点での比較検査対象となっている画像データに対する最適な閾値を簡易に設定することができるので、従来技術では実現できなかった、操作が容易で、しかも高い精度を有する画像比較装置が実現されているのである。
【0033】
なお、上述したようなポインティングデバイス15によってマーキング34を追加する場合には、あらかじめ設定されていた閾値があまく、差異点を見逃していたことが考えられるが、これとは逆に、あらかじめ設定されていた閾値が厳しすぎで、実用上差異と判定しない箇所についてもマーキングを表示してしまうような場合も考えられる。具体的には、図3の符号33で示されるあおり表示された画像データにおける符号35で示される破線の囲み表示のようなものである。このような場合には、操作者がポインティングデバイス15を操作することによって誤ったマーキング35を削除することで、この削除動作に連動して閾値が自動的に変更され、次回からより実用検査精度にあった閾値での画像比較検査を行うことが可能となるのである。
【0034】
以上、本実施形態に係る画像比較装置10を用いた画像比較検査の具体的な内容について説明を行った。次に、図1乃至図4を用いることにより、上述した画像比較検査を実現するために用いられる画像比較プログラムの処理内容について説明を行う。ここで、図4は、本実施形態に係る画像比較プログラムを実行することで実施される処理フロー図である。
【0035】
まず、本実施形態に係る画像比較処理では、CCDカメラ16によって基準となる画像を撮影し、この撮影画像から得られる第1の画像データ31を画像メモリ11gに記憶させる(ステップS40)。
【0036】
次に、CCDカメラ16によって検査対象となる画像を撮影し、この撮影画像から得られる第2の画像データ32を画像メモリ11gに記憶させる(ステップS41)。これらステップS40からステップS41までの処理(画像読取工程)によって、基準画像である第1の画像データ31と、検査対象画像である第2の画像データ32との取得が完了する。
【0037】
その後、色調調整のためのカラーマネジメント処理を実行する(ステップS42)。カラーマネジメント処理は、基準画像である第1の画像データ31と検査対象画像である第2の画像データ32との間に、本来同じ画像であるにも関わらず色の誤差が生じている場合に、この色の誤差を同一とみなすものである。なお、このカラーマネジメント処理では、一般的にはカラーチャートを使用することで第1の画像データ31と第2の画像データ32との比較が行われる。そして、差分を補うプロファイルを生成し、このプロファイルをカラーマネジメントプロファイルとして使用することで、上記カラーマネジメント処理が実行されることとなる。
【0038】
次に、画像メモリ11gに保存された第1および第2の画像データ31,32を画像表示手段としてのCRTディスプレイ12を用いることにより、ステップS42の処理で色調調整されたカラープロファイルを使用して、この画面上であおり表示させる(ステップS43;画像表示工程)。
【0039】
そして、画面上にあおり表示した段階で検査基準値を設定し(ステップS44)、所定のフィルタリング処理を実施する(ステップS45)。このフィルタリング処理は、比較する画像データ31,32の画質や線分の太さが違う場合にこれらの違いを補正するために実施される処理であり、具体的には、第1の画像データ31と第2の画像データ32を別画像レイヤで重ねて表示させ、全体あるいは1箇所又は複数の特定部分をポインティングデバイス15で指示することによって、太さや細さなどの画像条件の調整が実施されることとなる。
【0040】
以上のような処理を経た上で、二つの画像データ31,32が重合される(ステップS46)。重合された二つの画像データの表示イメージが、図3中の符号33で示されている。図3中の符号33で示されるような画像重合の方法については、特徴点重合、1点重合、多点重合、マトリックス分割順次重合などの手法が既に知られており、これら既知の手法を用いることで実現できる。さらに、再重合も可能としている。
【0041】
そして、本実施形態に係る画像比較処理では、比較ソフトを用いることによって、比較する二つの画像データ31,32間での明度、彩度、色相、位置ズレなどを抽出し、多値化あるいは二値化データ同士での画素比較を実施するとともに両画像データ31,32間での差異を検出し、あらかじめ設定された閾値(検査精度値)を超えた場合に差異の存在する領域に相違点があると判断し、あおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行う(ステップS47;相違点抽出工程)。これらの処理の結果得られるマーキング表示の具体的な態様は、符号33で示されたあおり表示画像データの中の符号34で示されるごとき破線の囲み表示である。
【0042】
以上のように、あらかじめ設定された閾値を用いることで第一段階(ステップS40〜ステップS47)の画像比較が実施されるのであるが、本実施形態に係る画像比較処理では、画像比較の第二段階として、画像データ上に表示されるマーキング34,35を、ポインティングデバイス15の操作によって追加・削除することが可能となっている(ステップS48)。なお、この段階で、操作者がマーキング34,35の追加・削除を行わなかった場合には、あらかじめ設定された閾値が正しいものであったと考えられ、このまま適切な設定条件での画像比較検査を継続することとなる。
【0043】
一方、操作者がマーキング34,35の追加・削除を行った場合には(ステップS48)、あらかじめ設定された閾値は、このマーキング34,35変更動作に連動して最適なものに変更され記憶されることとなる(ステップS49)。この処理により、以後の画像比較検査は最適な閾値によって実行されることとなる。
【0044】
以上の処理によって、従来技術では実現できなかった、操作が容易で、しかも高い精度を有する画像比較処理の実施が実現されることとなる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上述した画像比較処理には、ノイズを除去するための処理(ノイズ判定工程)を追加することも可能である。すなわち、「入力可能な被写体」と「画像データ」の多値化画像データでの比較検査の場合、マーキング削除する画像部分の画像エッジがあまい極少の数ドット以内のサイズのボケ具合をコンピュータ(あるいは大型コンピュータもしくは専用コンピュータ)とソフトウェアによって判断させ、重合後、入力可能な被写体の画像の一方だけに、画像エッジが甘い数ドット以内の画像があるとき(例えば、イメージ化のときに生じるボケなど)には、この画像データはノイズではないと判断し、閾値についてもこの動作に連動させて変更する。あるいは一方だけの画像データ部分の画像エッジがはっきりしているときには、入力画像情報以外のノイズであると判断し、閾値をこの動作に連動させて変換しないようにする。レンズ系を通して得られた極少サイズの画像については、データから得られた画素に比較して、画像のボケが異なるので、このような処理を行うことが有効である。
【0047】
また、あらかじめ埃、ゴミの形状をコンピュータのメモリに記憶させ、同じ形状のものがあったときには、ノイズと区分して、埃、ゴミと分離するという処理も、画像比較検査の精度を向上させる上で有効である。
【0048】
さらに、画像比較を実施するとき、一画像の中から選択した1箇所あるいはN箇所の部分のみを比較検査することができる。このような検査手法を採用するのは、検査時間の短縮の目的のほか、バーコードや、文字あるいは画像など、比較対象に応じて最適な精度での検査を実現するために取り得るものである。
【0049】
またさらに、画像比較検査を繰り返すことで得られた閾値は、その後の検査の制御データとして複数登録保持しておき、同様の画像比較検査を行うときに、複数の閾値から必要な制御データを選択して使用することが好適である。
【0050】
さらにまた、二つの画像データ31,32を画面上であおり表示させる(ステップS43;画像表示工程)以前に、比較する画像データ31,32を太さ差分の中間値で調整したり、あるいは第1の画像データ31に第2の画像データ32の画像・線分を合わせたり、もしくは第2の画像データ32に第1の画像データ31の画像・線分を合わせたりするといったような、所定のフィルタリング処理(事前調整工程)を追加することも好適である。例えば、比較する画像データ31,32が、デジタルデータである場合や、レーザープリンター、インクジェットプリンタ、あるいはレントゲンやMRIなどからの出力物の場合、出力材の色や反射率、出力機器の種類、装置の出力設定や出力精度のばらつき等により、画像や線分の太さが異なってしまうという事態が発生する場合がある。そこで、上記のような事前調整工程を実行することによって、二つの画像データ31,32間に存在するばらつき等を補正することができるので、画像比較検査の精度を簡易に向上させることが可能となる。
【0051】
また、上述した実施形態では、検査対象画像である第2の画像データ32が1個の場合を例示して説明したが、この比較検査対象画像である第2の画像データ32については、複数個であっても本発明を適用することが可能である。
【0052】
さらに、本発明の閾値は、1組の比較対象画像データに対して複数設定することが可能である。例えば、画像データ中のエリアを分割してこれら分割エリアのそれぞれに閾値を設定しておき、マーキング34,35の追加・削除が行われた分割エリアのみ閾値を変更するようにすることも可能である。かかる構成の採用によって、より検査精度の高い画像比較装置を実現することができる。
【0053】
またさらに、複数組の比較対象画像データに対して、あらかじめ複数パターンの閾値を設定しておき、比較対象画像データの組ごとでそれぞれ異なる閾値パターンを指定し、これらをバッチ処理にて画像比較検査を連続して実行することも可能である。
【0054】
さらにまた、上述した実施形態では、ポインティングデバイスとして符号15で示す専用の端末を設置した場合を例示して説明したが、本発明に係るポインティングデバイスについては、マウス13によって代用させることも可能である。
【0055】
また、上述した実施形態では、メインメモリ11bと画像メモリ11gを別々のHDD(記憶装置)として設けた場合を例示して説明したが、これらは1つのHDD(記憶装置)として構成することも可能である。また、上述した実施形態では、相違点抽出手段に利用される比較ソフトがメインメモリ11bにインストールされている場合を例示して説明したが、この比較ソフトについては、メインメモリ11bにインストールせずに、一時読み出しにて使用することも可能である。
【0056】
さらに、本発明に係る比較検査処理については、ネットワークを介して行うこともできる。具体的には、比較対象となる画像データを同一のあるいは異なるネットワークを介して取得することにより、社内あるいは遠隔地からの比較検査を行うようにすることも可能である。
【0057】
またさらに、上述した実施形態では、CCDカメラ16によって第1の画像データ31と第2の画像データ32を取得する場合について例示したが、これらの画像データについては、CADなどの三次元データであったり、DTPからのポストスクリプトデータ等であったりしても良い。
【0058】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る画像比較装置および画像比較プログラムは、例えば、CAD図面、建築用外観画像、地図・航空写真、衛星写真、医療用検査画像、各種会社等文書、契約文書、特許文書、印刷物、パッケージ、家電・電子機器の基盤あるいは部品、また車などの各種製造ライン分野における画像比較検査に好適に用いることができる。このときの比較検査対象としてのプリント、フィルム、あるいは出力可能な出力物については、各種印刷物のほか、家電・電子機器の基盤あるいは部品、車などの工業製品あるいは部品、人体、人物、顔、印影、農産物、布、流動体、動植物、建造物、地形などの入力可能なあらゆる被写体が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0060】
10 画像比較装置、11 パーソナルコンピュータ本体、11a CPU、11b メインメモリ、11c バス、11d 画像制御部、11e CCD制御部、11f 操作入力部、11g 画像メモリ、12 CRTディスプレイ、13 マウス、14 キーボード、15 ポインティングデバイス、16 CCDカメラ、31 第1の画像データ、32 第2の画像データ、33 あおり表示された二つの画像データの表示イメージ、34,35 マーキング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる画像を表すデータとして作成された第1の画像データと、検査対象となる画像を表すデータとして作成された第2の画像データとをあおり表示することで、第1の画像データと第2の画像データとの相違点を自動的に抽出するようにした画像比較装置であって、
前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示する画像表示手段と、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較することで両画像データ間での差異を検出し、前記差異が所定の閾値を超えた場合に当該差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行う相違点抽出手段と、
操作入力に従って前記マーキング表示の操作を行うポインティングデバイスと
を備え、
前記相違点抽出手段は、前記ポインティングデバイスによるマーキング表示の操作に基づいて前記閾値を調整する
を備えることを特徴とする画像比較装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像比較装置において、
画像データ上に表示される前記マーキングが、前記ポインティングデバイスの操作によって追加・削除自在に構成されていることを特徴とする画像比較装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像比較装置において、
前記ポインティングデバイスの操作によって画像データ上に表示される前記マーキングが追加又は削除されたときに、それまでマーキング表示を行うために設定されていた閾値が、当該ポインティングデバイスの操作による追加・削除に連動して変更自在に構成されていることを特徴とする画像比較装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像比較装置において、
前記マーキングが追加又は削除された箇所のみの前記閾値が、変更自在に構成されていることを特徴とする画像比較装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像比較装置において、
前記差異の存在する領域もしくは前記差異の形状を取得し、当該差異がノイズによるものか否かを判断するノイズ判定手段を備えることを特徴とする画像比較装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像比較装置において、
前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示する以前に、あるいはあおり表示後に、第1および第2の画像データを所定のフィルタリング処理により調整する事前調整手段を備えることを特徴とする画像比較装置。
【請求項7】
基準となる画像を表すデータとして作成された第1の画像データと、検査対象となる画像を表すデータとして作成された第2の画像データとをあおり表示することで、第1の画像データと第2の画像データとの相違点を自動的に抽出させるための画像比較プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1の画像データおよび前記第2の画像データを画面上であおり表示させる画像表示工程と、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較することで両画像データ間での差異を検出し、前記差異が所定の閾値を超えた場合に当該差異の存在する領域に相違点があると判断してあおり表示されている画像データ上にマーキング表示を行わせる相違点抽出工程と、
ポインティングデバイスからの入力に従って前記マーキング表示を操作するマーキング表示操作工程と、
前記マーキング表示操作工程に基づいて前記閾値を調整する閾値調整工程と
を含む処理を実行させることを特徴とする画像比較プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の画像比較プログラムにおいて、
画像データ上に表示される前記マーキングが、前記ポインティングデバイスの操作によって追加・削除自在であることを特徴とする画像比較プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−80524(P2013−80524A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21944(P2013−21944)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2008−195143(P2008−195143)の分割
【原出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(508229769)
【Fターム(参考)】