説明

画像監視センサ

【課題】画像による監視空間の一部を検知空間とする人体センサを備えた画像監視装置において、画像上に表示する人体センサの検知エリアを精度良く特定する。
【解決手段】監視空間内での作業員が移動してウォークテストを行い、測定タイミングにおける画像内での人像の位置とセンサ部の検知信号の信号レベルとを対応付けた測定データを取得する。測定データにより与えられる特性150において、ピーク値Pmaxに対応する測定データを代表点として選択し、その人像位置Xpを作業員の移動速度に応じて補正して補正ピーク位置Xpcを求める。この補正ピーク位置Xpcが中心となるように検知エリアを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の人体を検知するセンサを備えた画像監視センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視空間を撮影するカメラと受動型の赤外線(PIR:Passive Infrared Ray)センサとを備えた装置が存在する(下記特許文献1)。このような装置は、PIRセンサがその検知範囲(検知空間)にて侵入者を検知し発報したときに、カメラが撮影する画像によって当該検知範囲を含む範囲をモニタすることができる。
【0003】
また、当該装置はカメラの撮影画像をモニタ表示する際にPIRセンサによる検知エリアを画像上に示し、監視者によるモニタ画面上での状況確認を容易とする。
【0004】
ここで、装置の設置場所の状況などに応じてカメラの画角とPIRセンサの検知範囲の向きとの関係は変わり得るので、画像上での検知エリアを設置場所毎に特定し装置に設定する必要が生じる。この作業を容易に行う手法としてウォークテストがある(下記特許文献2)。ウォークテストでは例えば、設置作業者が監視空間内を歩き回り、PIRセンサが発報したときの画像上の人像の位置を記録する。そして、当該人像の集合が検知エリアと特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−023373号公報
【特許文献2】特開2006−178515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人体検知に目的としたPIRセンサは一般に焦電素子を用いて構成される。焦電型PIRセンサは、焦電素子の前に配置したレンズによって複数のゾーンからの赤外線を焦電素子に入射させる。複数のゾーンの集合が焦電型PIRセンサの検知範囲を規定する。
【0007】
焦電素子は入射する赤外線量の変化に応じて検知信号を出力する。この原理上、赤外線量の変化を検出するために遅延時間が生じるため、人体が通過した検知エリア内のゾーン位置と、PIRセンサが人体を検知したタイミングでの人体が存在する位置(画像上に現れる人の位置)とは必ずしも一致しない。つまり、カメラで撮影した画像上に設定されるPIRセンサの検知エリアが正確に特定されないことがあるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、人体センサの検知空間に対応して画像上での検知エリアが好適に特定される画像監視センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像監視センサは、監視空間を撮影して画像を取得する画像取得部と、前記監視空間内に設定された検知空間から得られる検知信号の信号レベルに応じて当該検知空間にて人体を検知する人体検知部と、を有するものにおいて、前記画像から人像を抽出する人像抽出部と、前記監視空間内を移動する人体に関し各測定タイミングにおける前記画像上での前記人像の位置と前記人体検知部による前記信号レベルとを対応付けた測定データを記録する記録部と、前記監視空間内での人体の移動速度を推定する速度推定部と、人体が検知される所定レベル以上の前記信号レベルを有する前記測定データについてその人像位置を前記移動速度に応じて補正して補正測定データを生成し、当該補正測定データに基づいて、前記画像上での前記検知空間に対応する検知エリアを特定するエリア特定部と、前記画像に対する前記検知エリアの位置関係を登録するエリア登録部と、を有する。
【0010】
他の本発明に係る画像監視センサは、前記画像に基づいて前記監視空間での人体の移動方向を推定する方向推定部を有し、前記エリア特定部は、前記測定データの前記人像位置に対して前記移動方向と逆方向に前記移動速度に応じた距離の位置補正を行い前記補正測定データを生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、監視空間の画像を取得し、かつ監視空間内の検知空間にて人体を検知する画像監視センサにおいて、人体センサの検知空間に対応して画像上での検知エリアが好適に特定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である画像監視センサを用いて構成される警備システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】撮像部のカメラにより撮影される監視空間とセンサ部のPIRセンサの検知空間との位置関係の一例を示す模式図である。
【図3】警戒モードの動作を説明する概略の処理フロー図である。
【図4】登録モードの動作を説明する概略の処理フロー図である。
【図5】画像内強度特性に基づいて画像内での検知エリアを特定する処理を説明する模式図である。
【図6】画像内強度特性に基づいて画像内での検知エリアを特定する他の処理を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である画像監視センサ2について、図面に基づいて説明する。図1は、画像監視センサ2を用いて構成される警備システムの概略の構成を示すブロック図である。当該警備システムは、画像監視センサ2、警備装置4、操作表示器6、通信網8及び監視センタ10を含んで構成され、画像監視センサ2が監視エリアへ侵入した不審者を検出すると、異常通報信号と共に監視エリアの画像が監視センタ10へ送られる。異常通報を受けた監視センタ10では、送られた画像に基づいて監視員が状況を把握し警備員を派遣する等の適切な対処をとることができる。
【0014】
画像監視センサ2は監視対象の物件に設置される。例えば、画像監視センサ2は監視対象の家屋の庭や建物の外周をその監視エリアとして設置される。また、画像監視センサ2は屋内監視に用いることもできる。画像監視センサ2は監視エリア内にて人体センサによって不審者を検知すると、異常通報信号及びその前後所定期間の画像を警備装置4へ出力する。
【0015】
警備装置4は基本的に監視対象の物件毎に設置される。警備装置4は画像監視センサ2及び操作表示器6と無線/有線を介して相互に通信可能に接続され、また、通信網8を介して遠隔の監視センタ10と接続される。警備装置4は監視モードと監視解除モードとに設定可能であり、監視モードでは画像監視センサ2からの異常通報信号及び画像を監視センタ10へ中継する。一方、監視解除モードでは画像監視センサ2から異常通報信号を受けても、監視センタ10への中継は行わない。
【0016】
警備装置4には、監視対象の物件に設置される複数の画像監視センサ2を接続することができ、また、その他のセンサを接続することもできる。警備装置4は複数のセンサからの信号を統合判定して最終的な異常判定を行い、その結果に基づいて監視センタ10への通報などの処理を行っても良い。例えば、入構許可者が携帯すべきRFID(Radio Frequency IDentification)タグを検知するためのリーダを監視エリアに設置し、当該リーダがタグを検知していない状態で画像監視センサ2が発報した場合に警備装置4は侵入異常と判定する。
【0017】
操作表示器6は監視画像を表示するモニタを備える。例えば、監視対象家屋の居住者等、本警備システムのユーザは操作表示器6にて随時、監視エリアを画像により確認することができる。また、操作表示器6には警備装置4に対する各種操作を行うためのボタン、スイッチ、テンキーなどの入力手段、及び音声ガイドや異常検知時の警報を出力するスピーカ等を設けることができる。
【0018】
通信網8は警備装置4と監視センタ10との間の通信を担う。通信網8は公衆回線網の他、移動体通信などを用いて構成される。
【0019】
引き続き図1を参照して画像監視センサ2の構成を説明する。画像監視センサ2は、撮像部20、センサ部22、監視処理部24、記憶部26、表示部28、操作部30及び通信部32を含んで構成される。
【0020】
撮像部20は監視空間を撮影して画像を取得するカメラであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子等を用いて監視領域の画像信号を生成する。
【0021】
センサ部22は監視空間の一部分に設定された検知空間から得られる赤外線の変化を検出する赤外線センサを人体センサとして備え、その検知信号の信号レベルに応じて検知空間にて人体を検知する人体検知部である。センサ部22は本実施形態では赤外線センサとして、焦電素子を用いたPIRセンサを備える。PIRセンサは赤外線をミラーやレンズなどの光学系により集光して焦電素子で受光する。例えば、焦電素子の前方に、それぞれ焦電素子を臨むように配置された複数のフレネルレンズからなる光学系が設けられる。光学系は複数のゾーンからの赤外線を焦電素子に入射させる構成とされ、これら複数のゾーンが一体となって焦電型PIRセンサの検知範囲を形成する。検知範囲はPIRセンサを中心として水平方向、垂直方向にそれぞれ扇形の検知空間を形成する。検知範囲の角度は撮像部20のカメラの画角より狭く設定される。例えば、水平方向に関する検出指向性をビーム状に絞った検知範囲を建物の外壁に沿って設定することで、建物に近づいた人体だけを検知可能となり、建物へ侵入しようとしている不審者を効率よく検知できる。
【0022】
センサ部22はPIRセンサが出力する検知信号(受光信号)の振幅に応じた量を検知信号の信号レベルとして抽出し、当該信号レベルに基づき当該検知信号を閾値判定して検知空間における人体の有無を判定する。センサ部22は、人体の有無を示す信号を監視処理部24へ出力すると共に、人体が存在すると判定した場合にはその際の検知信号の信号レベルも監視処理部24へ出力する。なお、センサ部22に設定される閾値Z3は、PIRセンサの受光信号が人体に起因したものでないことが明らかな場合が排除される程度に設定される。すなわち、センサ部22では、確実に人体であると判断できる場合だけでなく、人体であると疑わしき場合も監視処理部24へ出力する。
【0023】
図2は撮像部20のカメラにより撮影される監視空間50とセンサ部22のPIRセンサの検知空間52との位置関係の一例を示す模式図である。図2(a)は画像監視センサ2の位置を含み、カメラの撮影方向に沿った垂直面での画像監視センサ2、監視空間50及び検知空間52の位置関係を示しており、図2(b)は水平面での位置関係を示している。また図2(c)は、図2(a),(b)の配置におけるカメラの画像54上でのPIRセンサの検知エリア56を示している。
【0024】
撮像部20とセンサ部22とは必ずしも同じ位置でなくてもよいが、本実施形態ではそれらは比較的小型の画像監視センサ2として一個所に配置され、撮像部20のカメラの視軸60の原点とセンサ部22のPIRセンサの検知範囲の中心軸62の原点とは実質的に一致している。一方、カメラの視軸60とPIRセンサの中心軸62との間の角度は変更可能である。例えば、両者間のパン方向の角度θが変更可能とされ、この場合、画像54内での検知エリア56の位置はチルト方向(Y軸方向とする)には固定であり、パン方向(X軸方向)には変わり得る。また、画像監視センサ2の本体(筐体)に対するカメラやPIRセンサの向きを変更可能としてもよい。このように角度を変更可能とすることで、様々に異なり得る監視対象や設置位置に対して監視空間50及び検知空間52を好適に設定することができる。なお、カメラ、PIRセンサのチルト方向の角度も変更可能としてもよい。
【0025】
監視処理部24は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて、撮像部20が撮影した監視画像及びセンサ部22からの信号についての処理を行う。監視処理部24は異常監視手段40及びエリア登録手段42として機能する。異常監視手段40は画像監視センサ2を警戒モードで動作させる。具体的には、異常監視手段40としての監視処理部24は、センサ部22からの信号に基づいて侵入異常を判定して通報、警報する監視処理を行う。一方、エリア登録手段42は画像監視センサ2を登録モードで動作させる。具体的には、エリア登録手段42としての監視処理部24は、ウォークテストに伴うセンサ部22からの信号、及び撮像部20からの信号に基づいて画像上での検知エリアの位置を特定し、検知エリアの位置情報を記憶部26に登録するエリア登録処理を実行する。本実施形態では上述のように監視空間50内での検知空間52のパン方向の位置が変更可能である一方、チルト方向は固定される。このような点や構成の本質を理解容易とする観点から、本実施形態では、検知エリアのY軸方向の位置は予め設定される固定値とし、エリア登録手段42は、検知エリアの位置情報として画像54内での検知エリア56のX軸方向の位置だけを求めるものとする。なお、上述のようにチルト方向にも位置が変更される構成では、監視処理部24はX軸方向の位置と同様にして、Y軸方向の位置を特定するように構成される。
【0026】
記憶部26は、監視処理部24にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納される。特に、記憶部26は、エリア登録手段42による処理において、監視空間内での人体の位置毎に撮像部20の画像内での人像の位置とセンサ部22による検知信号の信号レベルとを対応付けた、検知信号の画像内強度特性を格納される。また、上述したように記憶部26は、エリア登録手段42によって特定された検知エリアの画像上の位置情報を記憶する。
【0027】
表示部28は液晶ディスプレイ等の画像表示手段であり、登録モードにて作業員が撮像部20の画像を確認するために利用される。
【0028】
操作部30は、作業員がモード切替操作を行ったり、登録モードにて各種の設定、情報、指示等を監視処理部24に入力したりする手段であり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ボタンなどである。
【0029】
表示部28及び操作部30は、携帯情報端末などにより構成し、画像監視センサ2から分離して登録モードにてウォークテストを行う作業員が携帯できるようにしてもよい。分離中は表示部28及び操作部30と画像監視センサ2本体とは無線接続される。また、表示部28及び操作部30は画像監視センサ2とは別構成とし、作業員がエリア登録作業を行う際に、表示部28及び操作部30として使用する端末を携行し、これを画像監視センサ2に無線接続してもよい。
【0030】
通信部32は警備装置4との通信インターフェースである。
【0031】
次に警戒モード及び登録モードでの監視処理部24の処理を説明する。図3は警戒モードの動作を説明する概略の処理フロー図である。監視処理部24は、センサ部22から入力されるPIRセンサの検知信号の信号レベル(P値)を監視し(S70)、P値が発報基準を定める所定の閾値Th以上となると(S70にて「Yes」の場合)侵入異常と判定する(S72)。この場合、監視処理部24は撮像部20が撮影した画像にPIRセンサの検知エリアを合成する(S74)。図2(c)を用いて具体的に述べると、監視処理部24は、記憶部26に登録されている検知エリアの位置情報に基づき、画像54において検知エリア56を識別可能に表示した合成画像を生成する。例えば、合成画像は、検知エリア56を示す枠を重畳した画像とすることができる。監視処理部24は、この合成画像を監視センタ10へ送信する所定期間内の各フレームの画像に対して生成し(S74)、これら合成画像と侵入異常を知らせる信号とを警備装置4を介して監視センタ10へ送信する(S76)。これにより、監視センタ10では画像上で検知エリアを視認することができ、発報要因の判断を容易に行える。なお、合成画像の生成は監視センタ10で実行させる構成としてもよい。この場合、画像監視センサ2からは画像と共に検知エリアの位置情報を送信する。
【0032】
一方、P値が閾値Th未満である場合には(S70にて「No」の場合)、監視処理部24は撮像部20に対する障害物の有無を判断し(S78,S80)、監視に支障を来すような異常を検出した場合には(S78及びS80にて「Yes」の場合)、障害物異常と判定する(S82)。この場合にも、監視処理部24は処理S74と同様に、撮像部20が撮影した画像に対するPIRセンサの検知エリアの合成を行う(S84)。そして、障害物異常を知らせる信号と所定期間の合成画像とを警備装置4を介して監視センタ10へ送信する(S86)。
【0033】
障害物の有無の判定は、撮像部20からの画像の変化の有無に基づいて判定することができる(S78)。監視処理部24は、異常検知時に監視センタ10へ送信するために、記憶部26に所定期間の過去の画像を順次更新しながら記録しており、この過去の画像と現在の画像とを比較して変化を検出する。障害物には、カメラのレンズ又はその直前のフィルタなどに飛来し付着した虫のように比較的小さいものもあるし、木の葉や紙、布のように面積が大きいものもある。また、偶発的な場合だけでなく、侵入者等の悪意を有する者が大きな障害物を置くといった画策の場合もある。処理S78にてどの程度の大きさ、内容の変化を障害物有りとして検出するかは、ユーザの監視ニーズや画像監視センサ2の設置環境などを考慮して適宜設定することができる。本実施形態では、画像に一定以上の大きさの変化が生じた場合に監視処理部24が障害物による画像変化と判定する。ここで、障害物がセンサ部22の検知空間に存在すると、その背後の人体をセンサ部22で検知できなくなり侵入異常の失報原因となる。そこで本実施形態では、処理S78で画像変化が検出された場合のうち(S78にて「Yes」の場合)、当該画像変化がセンサ部22の検知エリア内である場合に限って(S80にて「Yes」の場合)障害物異常と判定する。これにより、侵入異常検出に特に支障を来たし得る場合に限定して監視センタ10への通報が行われ、監視センタ10での対応負担が軽減される。
【0034】
なお、侵入異常も障害物異常も検知されない場合は(S78又はS80にて「No」の場合)監視処理部24は自動的に警戒モードでの動作を続行する。
【0035】
図4は登録モードの動作を説明する概略の処理フロー図である。作業員は監視処理部24を登録モードに切り替え、監視空間内を動き回ってセンサ部22に検知されるか否かを調べるウォークテストを行う。監視処理部24はウォークテスト中のPIRセンサの検知信号の信号レベル(P値)を監視し、監視空間内にてP値が所定の閾値Z2以上となる作業員の位置毎に(S100にて「Yes」の場合)、そのときの撮影画像における作業員の人像の位置とP値とを対応付けた測定データを記憶部26に記録する(S102)。
【0036】
処理S102にて監視処理部24は人像抽出部として機能する。画像からの人像の抽出は、例えば、背景差分により作業者に起因する画像変化領域を求めることにより行われる。また、人像の位置は、例えば、画像内にて人像を示す領域の重心とする。
【0037】
ウォークテストは作業員が終了の操作を行うまで継続することもできるし、開始時にタイマーをセットし所定時間経過後に自動的に終了するように監視処理部24を構成することもできる。P値の監視(S100)及び測定データの記録(S102)はウォークテストが終了するまで継続される(S104にて「No」の場合)。
【0038】
ウォークテストが終了すると(S104にて「Yes」の場合)、記憶部26には測定データが蓄積される。当該測定データの集合は画像内での検知信号の信号レベルの変化特性(画像内強度特性)を表現する。当該画像内強度特性は、画像内での位置に応じた検知信号の信号レベルの変化を表し、基本的には画像のXY平面上で定義されるが、本実施形態では、画像内での検知エリアのX軸方向の位置のみが変更可能であることに対応して、X軸上に投影した一次元の画像内強度特性P(X)を取り扱う。
【0039】
図5は画像内強度特性P(X)に基づいて画像内での検知エリアを特定する処理を説明する模式図である。同図において横軸がX軸であり、縦軸がP値であり、特性曲線150の実線部分が画像内強度特性P(X)を表している。ウォークテストで得た測定データはX軸に対して必ずしも連続的にならないため、画像内強度特性P(X)は各測定データの近似曲線として表される。また、X軸上の同位置に対応して複数の測定データが得られている場合は、P値が最大の測定データを当該位置の代表測定データとして採用する。
【0040】
監視処理部24は人体が検知される基準レベル以上のP値を有する測定データについてその人像位置を監視空間内での人体の移動速度に応じて補正して補正測定データを生成し、当該補正測定データに基づいて、検知エリアを特定するエリア特定部としての処理を実行する。ここで、人体検知の基準レベルとして適当である値をZ1とする。つまり、Z1は人体と判断するのが妥当であるP値のレベルであり、発報基準の閾値Thとし得る値のうち最小の値、すなわちZ1≦Thである。具体的には誤報率が例えば数%未満となることなどに基づいて設定される。監視処理部24は、Z1以上のP値を有する測定データについて移動速度に関する補正を行う。
【0041】
補正対象とする測定データはP(X)≧Z1である測定データの全部でもよいし、一部でもよい。本実施形態では、監視処理部24はP(X)≧Z1である測定データのうちP値が最大となるものを代表点とし、当該代表点に対して補正を行う。監視処理部24は特性P(X)に基づいて代表点のP値である代表ピーク値Pmax、及び画像上の位置である代表ピーク位置Xpを求める(S106)。
【0042】
続いて、監視処理部24は、画像に基づいて監視空間内での人体の移動速度を推定する速度推定部としての処理、及び画像に基づいて人体の移動方向を推定する方向推定部としての処理を実行する(S108)。例えば、監視処理部24は、代表点の測定時刻に撮影された画像とその1つ前の画像との間で人像の位置の変化量及び変化方向を求める。そして、当該変化量及び画像の撮影時刻の差から移動速度の推定値を算出する。また、当該変化方向を代表点の測定時における移動方向と推定する。
【0043】
監視処理部24は、移動速度及び移動方向の推定結果に基づいて、代表ピーク位置Xpを補正する(S110)。具体的には監視処理部24は代表点の測定データを構成する人像位置に対し、推定した移動方向と逆の方向に移動速度に比例した距離の位置補正を行い補正測定データを生成する。移動距離の算出に際して、移動速度に乗じられる比例係数は経験的に得られている値を用いることができる。なお、センサ部22に用いるPIRセンサの応答時間が既知である場合には、当該応答時間を比例係数として用いることが好適である。また、応答時間を推定するためのウォークテストを行ってもよい。例えば、センサ部22の検知範囲を横切る1本の直線を設定し、作業員は当該直線上を等速で移動して検知範囲を横切る。この動作を同じ直線上にて移動方向を変えて行い、その際の画像内強度特性P(X)を求める。例えば、当該動作を1又は複数往復行い、往路の画像内強度特性P(X)と復路の画像内強度特性P(X)とのX軸方向の位置ずれを検出し、その位置の差と作業者の移動速度とからPIRセンサの応答時間を求めることができる。
【0044】
処理S110にて補正された代表点の画像上での位置を補正ピーク位置Xpcと表す。ここで、画像上における実際の検知エリアの大きさWは撮像部20のカメラの画角とセンサ部22のPIRセンサの検知範囲の角度とによって与えられる。監視処理部24は、補正ピーク位置Xpcを中心とし幅がWの範囲を検知エリアと定め(S112)、このX軸上の範囲を画像上の検知エリアの位置情報として記憶部26に登録する(S114)。この登録モードで登録された検知エリアは、上述した警戒モードにて利用される。
【0045】
このような補正を行うことにより、ウォークテスト時の作業員の移動速度による位置ずれを吸収することができ、移動速度が大きい場合であっても画像上の検知エリアの位置を適切に設定することができる。
【0046】
なお、処理S108にて上述した移動速度、移動方向の求め方は一例であり、それ以外の方法で求めてもよい。例えば、移動速度は、PIRセンサから出力される検知信号波形の変動周期から推定することも可能である。具体的には、変動周期が短いほど移動速度が大きいと推定される。さらに上記例に限らず、別途の方法・手段で移動速度、移動方向を取得してもよい。
【0047】
上述の実施形態は検知エリアの中心にて画像内強度特性P(X)が最大となることを前提としている。このような前提は、PIRセンサの検知範囲がパン方向に関して単一のゾーンで構成される場合、或いは検知範囲の中心方向(パン方向幅の中心)における感度が最も高い場合に好適に成り立ち得る。
【0048】
一方、位置補正の対象とする測定データをピーク1点だけとせずに、P(X)≧Z1である測定データを複数点にて補正し、それら複数の補正測定データから、P(X)≧Z1となる範囲の補正後の位置を推定し、その補正後のP(X)≧Z1となる範囲を中心として検知エリアを設定する構成とすることもできる。例えば、P(X)≧Z1となる測定データ全てについて補正を行って、それらの補正後の位置Xの集合を包含する範囲に基づいて検知エリアを設定することができる。このような構成では検知エリアの中心にて画像内強度特性P(X)が最大となるという前提は不要となる。
【0049】
また、ウォークテストにて作業員がX軸の正の向き又は負の向きのいずれか特定の方向に移動しているときにだけ測定データを取得すれば、監視処理部24は移動方向を推定する必要はなくなり、移動速度だけ推定する構成とすることができる。
【0050】
上述の応答時間が分かる場合には、処理S108にて移動速度、移動方向を求める際の人像位置は、代表点の測定時刻よりも当該応答時間遡及した時刻に撮影された画像に基づいて定めてもよい。
【0051】
図6は上述したP(X)≧Z1となる補正測定データの人像位置を包含する範囲に基づいて検知エリアを特定する処理を説明する模式図である。同図において横軸がX軸であり、縦軸がP値であり、特性曲線200の実線部分はP(X)≧Z2の測定データを位置補正して得られる画像内強度特性P(X)を表している。
【0052】
監視処理部24は、補正後の特性P(X)に基づいて、P値が閾値Z1以上である人像位置Xを包含する検知位置分布範囲Roを抽出する。ここで、1つのセンサ部22に対応する検知エリアに関しても、P(X)≧Z1となるXの集合は必ずしも1つの連続した範囲とならず、複数の範囲に分かれる場合もある。この点に関し、1つのセンサ部22に対する検知エリアは本来的に1つの範囲であるはずであること、及び閾値Z1を上述のように確実に人体であるといえる程度に設定していることから、P(X)≧Z1となるXのうち最小値Xmin1と最大値Xmax1とで規定される区間R(≡[Xmin1,Xmax1])の全体を検知エリアの核となる検知位置分布範囲Roと定義する。監視処理部24はこの範囲Roが中心に位置するように幅Wの検知エリアを設定することができる。
【0053】
さらに、監視処理部24は、検知位置分布範囲Roから所定の拡張限度距離B内に存在しP(X)≧Z2となる人像位置Xを包含するように、検知位置分布範囲を拡張補正して補正分布範囲Reを求め、この範囲Reが中心に位置するように検知エリアを設定することとしてもよい。具体的には、拡張補正により範囲Roの下限より外側へは、範囲[Xmin1−B,Xmin1]にてP(X)≧Z2を満たす位置Xの最小値Xmin2まで拡張され、範囲Roの上限より外側へは、範囲[Xmax1,Xmax1+B]にてP(X)≧Z2を満たす位置Xの最大値Xmax2まで拡張され、範囲[Xmin2,Xmax2]が補正分布範囲Reとされる。閾値Z2は人体である可能性が否定できないP値のレベルであり、人体と高い確度で判定可能なレベルである閾値Z1に比べて若干低く設定される。また、誤報要因を多分に含むレベルである閾値Z3より高く設定される。なお、拡張補正処理で用いる閾値を元の画像内強度特性P(X)を取得する際の処理S100における閾値と同じZ2としたが、当該閾値は異ならせてもよい。
【0054】
検知エリアはウォークテストにてセンサ部22が発報した範囲をできるだけよく含むように設定されることが好適であり、よって、検知エリア内での画像内強度特性P(X)の積分値が最大化されることが検知エリア設定の指針となり得る。この点、補正分布範囲Reは特性P(X)の値が大きな範囲を好適に捉えるので、当該範囲Reを中心とすれば検知エリアの位置をより好適に設定可能である。
【0055】
距離Bは大きいほど範囲Reが特性P(X)の主要部分を好適に捉えることが可能となる一方で、範囲Reが実際の検知エリアを越えた外側まで拡張されると、推定される検知エリアの位置の精度・信頼性は却って低下し得る。よって、範囲Reが実際の検知エリアの外側に達しにくいように距離Bを設定することが好適である。具体的には、拡張限度距離Bは、検知エリアの大きさWと検知位置分布範囲Roの大きさ(ここではRoと表す)との差(W−Ro)が大きいほど大きく、また差が小さいほど小さく設定することができる。例えば、Bは差(W−Ro)の半分に設定するとよい。このように検知位置分布範囲Roの大きさに応じて距離Bを可変的に制限して拡張補正を行うことで、検知エリアから外れた位置で何らかの理由で閾値以上のP値が得られた場合でも、当該位置を除外して検知エリアを適切に設定することができる。
【0056】
なお、センサ部22は空間に存在する人体による状態変化を検知可能な他のセンサを用いて構成することも可能であり、例えば、超音波センサやマイクロ波センサなどを用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
2 画像監視センサ、4 警備装置、6 操作表示器、8 通信網、10 監視センタ、20 撮像部、22 センサ部、24 監視処理部、26 記憶部、28 表示部、30 操作部、32 通信部、40 異常監視手段、42 エリア登録手段、50 監視空間、52 検知空間、54 画像、56 検知エリア、60 視軸、62 中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間を撮影して画像を取得する画像取得部と、前記監視空間内に設定された検知空間から得られる検知信号の信号レベルに応じて当該検知空間にて人体を検知する人体検知部と、を有する画像監視センサにおいて、
前記画像から人像を抽出する人像抽出部と、
前記監視空間内を移動する人体に関し各測定タイミングにおける前記画像上での前記人像の位置と前記人体検知部による前記信号レベルとを対応付けた測定データを記録する記録部と、
前記監視空間内での人体の移動速度を推定する速度推定部と、
人体が検知される所定レベル以上の前記信号レベルを有する前記測定データについてその人像位置を前記移動速度に応じて補正して補正測定データを生成し、当該補正測定データに基づいて、前記画像上での前記検知空間に対応する検知エリアを特定するエリア特定部と、
前記画像に対する前記検知エリアの位置関係を登録するエリア登録部と、
を有することを特徴とする画像監視センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の画像監視センサにおいて、
前記画像に基づいて前記監視空間での人体の移動方向を推定する方向推定部を有し、
前記エリア特定部は、前記測定データの前記人像位置に対して前記移動方向と逆方向に前記移動速度に応じた距離の位置補正を行い前記補正測定データを生成すること、
を特徴とする画像監視センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104963(P2012−104963A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250195(P2010−250195)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】