説明

画像監視装置

【課題】侵入検知の性能を維持しながら所定物品の設置を許容することにより、正規利用者の利便性を向上可能な画像監視装置を提供する。
【解決手段】変化領域抽出部231は、撮像部21により監視空間が順次撮像された監視画像と記憶部22に記憶された背景画像221とを比較して変化領域を抽出し、物体領域検出部232は変化領域の外形を所定図形にて近似して物体領域を検出する。物体領域追跡部233は前後する時刻に検出された物体領域のうち特徴が互いに類似する物体領域を対応付け、対応付けた物体領域ごと検出位置から移動距離を算出する。遮蔽異常判定部235は物体領域の移動距離を予め設定された静止判定値と比較するとともに当該物体領域に占める変化領域の割合を算出して予め設定された遮蔽容認値と比較し、移動距離が静止判定値未満且つ割合が遮蔽容認値以上であるときに侵入者の検知を妨げる遮蔽物があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空間を撮像した画像を用いて侵入者を異常検知するとともに侵入者の検知を妨げる遮蔽物の存在を異常検知する画像監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像部が撮像した画像を処理して侵入者を検知する画像センサにおいて、侵入検知を継続的に行うために撮像部の視野を遮る遮蔽物の存在を異常検知していた。
【0003】
特許文献1に記載の画像センサにおいては、画像を区分した判定ブロックごとに現画像と基準画像との類似度が判定され、類似度の小さい判定ブロック数が所定数以上であれば視野を遮る異常と判定される。
【0004】
またこの画像センサにおいては、判定ブロックごとにカウンタが設けられて、類似度が小さな判定ブロックのカウンタが増加され及び類似度が大きな判定ブロックのカウンタが減少されて、カウンタ値がしきい値以上である判定ブロック数が所定数以上であれば異常と判定される。これにより、一時的な環境変化による誤判定することなく視野を遮る障害物が置かれたことを判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−194866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来技術によると、居住者が敷地内にある程度の大きさを有しているが隙間があり監視の妨げにならない自転車や脚立などの物品を置いても視野を遮る異常と判定されてしまうため、居住者の利便性を低下させる可能性があった。
【0007】
すなわちこれらの物品が置かれると、侵入者を遮る程度の大きさを有していることから所定数以上の判定ブロックにて類似度が小さくなってしまい、また静止しているためカウンタは増加し続け、その存在が異常と判定されてしまうのである。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、侵入検知の性能を維持しながら所定物品の設置を許容することにより、正規利用者の利便性を向上可能な画像監視装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明は、監視空間を撮像した画像を用いて侵入者を検知する画像監視装置において、監視空間を順次撮像する撮像部と、少なくとも所定時刻に撮像された背景画像を記憶する記憶部と、所定時刻以降に撮像された監視画像を背景画像と比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、変化領域の外形を所定図形にて近似して物体領域を検出する物体領域検出部と、前後する時刻に検出された物体領域のうち特徴が互いに類似する物体領域を対応付け、対応付けた物体領域ごと検出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、物体領域の移動距離を予め設定された静止判定値と比較するとともに当該物体領域に占める変化領域の割合を算出して予め設定された遮蔽容認値と比較し、移動距離が静止判定値未満且つ割合が遮蔽容認値以上であるときに侵入者の検知を妨げる遮蔽物があると判定する遮蔽異常判定部と、を備えたことを特徴とする画像監視装置を提供する。
【0010】
かかる画像監視装置において、物体領域検出部は、予め設定された許容範囲内で互いに近接して検出された複数の変化領域があるときは当該複数の変化領域のまとまりに対して物体領域を検出することが好ましい。
【0011】
また、遮蔽異常判定部は、移動距離が静止判定値未満且つ割合が遮蔽容認値未満である物体領域を侵入者の検知を妨げない低遮蔽物領域と判定し、変化領域抽出部は、低遮蔽物領域内の背景画像を監視画像にて置換することが好ましい。
【0012】
また、遮蔽異常判定部は、低遮蔽物領域にて抽出された変化領域を記憶部に記憶させ、当該記憶後に抽出される変化領域と記憶された変化領域を合わせた合成変化領域を用いて割合を算出することが好ましい。
【0013】
また、遮蔽異常判定部は、低遮蔽物領域を記憶部に記憶させ、当該記憶後に検出される物体領域と記憶された低遮蔽物領域の重複領域に占める合成変化領域の割合を算出して遮蔽物の判定を行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
侵入検知の性能を維持しながら隙間が多い自転車や脚立などの設置を許容できるので、正規利用者の利便性を向上させた画像監視装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】外周監視システムの全体図である。
【図2】画像センサーの構成を示したブロック図である。
【図3】脚立の背後を通過している侵入者が撮像された監視画像を背景差分処理して得られた差分画像から物体領域を検出する様子を説明する図である。
【図4】変化領域の分裂が生じない場合の例で、遮蔽されずに撮像された侵入者の像に対する変化領域及び物体領域を示す図である。
【図5】変化領域の分裂が生じない場合の例で、衝立の像に対する変化領域及び物体領域を示す図である。
【図6】変化領域の分裂が生じない場合の例で、脚立の像に対する変化領域及び物体領域を示す図である。
【図7】隙間の多い物品であっても複数の当該物品が画像上で重なると隙間を埋め合って侵入者の検知を妨げる場合の様子を説明する図である。
【図8】画像監視処理を説明するフローチャートである。
【図9】異常判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の画像監視装置の好適な実施形態の一例として、建物外周を監視して侵入者および遮蔽物を検知すると警備センターに通報する外周監視システム1について説明する。
【0017】
<外周監視システム1の構成>
図1は外周監視システム1の全体図である。外周監視システム1は画像センサー2、認証装置3、携帯端末4、コントローラー5及びセンター装置6を含んで構成される。
【0018】
画像センサー2及び認証装置3は通信線を介してコントローラー5に接続され、コントローラー5は電話回線又はインターネット回線等の広域通信網を介して警備センター等の遠隔地に設置されたセンター装置6と接続される。
【0019】
画像センサー2は屋外に設置されて監視空間である建物外周を監視する。画像センサー2は、監視空間への侵入者を検知すると侵入異常信号を出力し、侵入者の検知を阻害する遮蔽物を検知すると遮蔽異常信号を出力する。画像センサー2が出力したこれらの異常信号はコントローラー5を介してセンター装置6に送信される。
【0020】
認証装置3は監視空間内の携帯端末4と通信を行なうことにより監視空間内の居住者や従業員などの正規利用者を認証する。正規利用者が所持する携帯端末4は予め認証装置3に登録され、認証装置3は登録された携帯端末4を検出すると認証信号をコントローラー5経由で画像センサー2に出力する。画像センサー2は人を検知したときに認証信号の有無を参照して正規利用者か侵入者かを判別する。
【0021】
図2は画像センサー2の構成を示したブロック図である。画像センサー2は撮像部21、記憶部22及び通信部24が制御部23に接続されてなる。
【0022】
撮像部21はいわゆる監視カメラである。撮像部21は、監視空間を所定の時間間隔で順次撮像して監視画像を生成し、撮像した監視画像を制御部23に順次出力する。撮像間隔は例えば1/5秒である。以下この撮像間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
【0023】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部22は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部23との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、背景画像221、物体情報222、容認遮蔽物情報223及びカメラパラメーター224が含まれる。
【0024】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部22からプログラムを読み出して実行することで変化領域抽出部231、物体領域検出部232、物体領域追跡部233、侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235として機能する。
【0025】
通信部24はコントローラー5との間の通信回路及びドライバソフトフェアから構成され、通信部24の一方には制御部23、他方にはコントローラー5がそれぞれ接続される。制御部23からの異常信号等は通信部24を介してコントローラー5に送信され、コントローラー5からの認証信号等は通信部24を介して制御部23に入力される。
【0026】
以下、記憶部22に記憶される背景画像221、物体情報222、容認遮蔽物情報223及びカメラパラメーター224について説明する。
【0027】
背景画像221は監視空間の背景のみが撮像されている画像である。背景画像221は、異常検知処理に先立って無人時の監視画像から生成されて記憶部22に記憶され、以降適宜に更新される。背景画像221には侵入者、正規利用者、新たに持ち込まれた遮蔽物が含まれておらず、背景画像221を監視画像と比較することによってこれらの物体の出現によって監視画像が変化した部分を変化領域として検出できる。
【0028】
物体情報222は、各時刻の監視画像から検出された物体の領域(物体領域)の検出位置及び特徴量を物体ごとに対応付けたデータである。物体領域は変化領域の外形を近似した領域である。物体領域の特徴量は物体領域の大きさ、物体領域の形状、物体領域における監視画像の輝度ヒストグラムなどである。また各時刻において検出された物体領域のうち同一物体により生じた物体領域は追跡処理によって対応付けられ、物体情報222の各要素は物体ごとの識別符号(物体ID)と対応付けて管理される。検出位置は物体領域の移動距離算出及び追跡に用いられ、特徴量は追跡に用いられる。
【0029】
容認遮蔽物情報223は遮蔽物のうち遮蔽の程度が低いために異常とせず容認された遮蔽物(低遮蔽物)の情報である。容認遮蔽物情報223には低遮蔽物の物体領域(低遮蔽物領域)及び当該低遮蔽物領域内にて抽出された変化領域が含まれる。
【0030】
カメラパラメーター224は、撮像部21の設置位置及び撮像方向といった外部パラメーター、撮像部21の焦点距離、画角、レンズ歪みその他のレンズ特性や、撮像素子の画素数といった内部パラメーターを含む。実際に計測するなどして得られたこれらのパラメーターが予め設定されて記憶部22に記憶されている。公知のピンホールカメラモデル等のカメラモデルにカメラパラメーター224を適用することにより、監視画像中の画素位置を撮像部21の撮像面における座標(撮像面座標)と実空間における座標(実座標)との間で座標変換することが可能となる。以下、撮像面座標から実座標への変換を逆透視変換、実座標から撮像面座標への変換を透視変換と称する。
【0031】
以下、制御部23がその機能として有する変化領域抽出部231、物体領域検出部232、物体領域追跡部233、侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235について説明する。
【0032】
変化領域抽出部231は、撮像部21から入力された監視画像を背景画像221と比較して当該監視画像における変化領域を検出し、検出した変化領域を物体領域検出部232及び遮蔽異常判定部235に出力する。
【0033】
具体的には変化領域抽出部231は背景差分処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部231は、監視画像と背景画像221の対応する画素間で画素値の差の絶対値を算出し、差の絶対値が差分閾値以上である画素のうち互いに隣接する画素をひとまとまりにして変化領域を検出する。差分閾値は事前実験に基づき予め設定される。
【0034】
別の実施形態において変化領域抽出部231は背景相関処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部231は、上記差に代えて画素値の相関値を算出し、相関値が予め設定された相関閾値以下である画素を変化領域として検出する。
【0035】
また変化領域抽出部231は、変化領域を正確に検出し続けるために、監視画像を用いて背景画像221を適宜更新することで背景画像221を監視空間の環境変化に適応させる。
【0036】
具体的には変化領域抽出部231は、後述する遮蔽異常判定部235により容認された低遮蔽物領域内の背景画像221を監視画像で置き換える。この更新により低遮蔽物が背景画像221に取り込まれて当該低遮蔽物による変化領域が抽出されなくなる。そのため容認された低遮蔽物領域に新たな物体が現れたとき、当該物体の物体領域が容認された低遮蔽物による変化領域を含んで不当に大きくなることを防止でき、後述する遮蔽判定を正しく行なうことが可能となる。なお容認された低遮蔽物を背景画像221に取り込むことは当該低遮蔽物の追跡終了をも意味する。
【0037】
さらに変化領域抽出部231は監視空間の明るさ変動などに対応するために追跡中の物体領域を除いた監視画像を背景画像221にて更新(置換、平均化処理など)してもよい。
【0038】
物体領域検出部232は、侵入者の大きさ及び形状に設定された物体枠内に包含される変化領域の統合を許容して、変化領域の外形を所定図形にて近似して物体領域を検出し、検出された物体領域を物体領域追跡部233、侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235に出力する。物体枠は侵入者の最大サイズを模した矩形(例えば縦2m×横1m)とすることができ、物体領域は変化領域の外接矩形とすることができる。別の実施形態においては矩形に代えて楕円とすることもできる。
【0039】
侵入者が隙間のある遮蔽物の背後を通過すると、侵入者の像と対応する位置において互いに近接する複数の変化領域が抽出される。図3は脚立30の背後を通過している侵入者31が撮像された監視画像32を背景差分処理して得られた差分画像33から物体領域を検出する様子を示したものである。処理時点で脚立30の像は既に背景画像221に取り込まれており、侵入者31の像と対応する部分から複数の変化領域34(斜線部)が抽出されている。
【0040】
物体領域検出部232は、差分画像33の各位置に物体枠35(一点鎖線)を設定して包含する変化領域の面積を算出し、面積がピークを示す物体枠の位置にて当該物体枠に包含される変化領域に同一のラベルを付与する。同一のラベルが付与された変化領域は同一の物体により生じたひとまとまりの変化領域と認識されることになる。図3に示した例では、複数の変化領域34のそれぞれに同一のラベルが付与される。
【0041】
ここで画像上において侵入者の見かけ上の大きさは撮像部21からの距離によって変化するため、物体領域検出部232は画像上の各位置に応じた見かけ上の大きさで物体枠を設定する。すなわち物体領域検出部232は実空間の大きさで予め設定された物体枠を監視画像における見かけ上の大きさに透視変換して各位置に物体枠を設定する。なお各変化領域の最下端を侵入者の足下位置(接地面)と仮定し、物体領域検出部232は各変化領域の最下端を物体枠の最下端とする位置のみに物体枠を設定すればよい。
【0042】
また物体領域検出部232は統合処理の対象とならなかった各変化領域に対してそれぞれ個別のラベルを付与する。
【0043】
こうして各変化領域にラベルを付与した物体領域検出部232は、ラベルごとに変化領域を包含する最小の矩形を物体領域として求める。図3に例示した複数の変化領域34に対してはこれらのまとまりに外接する矩形の物体領域36が検出される。
【0044】
他方、図4〜図6は変化領域の分裂が生じない場合の例である。図4は遮蔽されずに撮像された侵入者41の像、侵入者41の像と対応して抽出された変化領域44、及び変化領域44に基づき検出された侵入者41の物体領域46を示している。図5は衝立50の像、衝立50の像と対応して抽出された変化領域54、及び変化領域54に基づき検出された衝立50の物体領域56を示している。図6は脚立60の像、脚立60の像と対応して抽出された変化領域64、及び変化領域64に基づき検出された脚立60の物体領域66を示している。
【0045】
物体領域追跡部233は追跡処理により物体領域の移動距離を算出する移動距離算出部である。物体領域追跡部233は、前後する時刻の監視画像から検出された物体領域のうち互いに特徴が類似する物体領域を対応付け、対応付けられた物体領域の検出位置から当該物体領域の移動距離を算出し、算出した移動距離を侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235に出力する。また物体領域追跡部233は追跡処理のために物体ID、物体領域の検出位置の履歴、物体領域の特徴量を物体情報222に記憶させる。物体領域が複数同時に存在する場合、上記処理は各物体領域に対して行なわれる。
【0046】
侵入異常判定部234は、移動距離が予め設定された静止判定値以上である物体領域に基づいて侵入異常信号を出力する。すなわち侵入異常判定部234は、各時刻における各物体領域の移動距離を静止判定値と比較するとともに当該時刻における認証信号の有無を確認し、移動距離が静止判定値以上の物体領域があり、且つ認証信号が確認されない場合に監視空間に侵入者が存在するとして侵入異常信号を出力する。他方、移動距離が静止判定値を超える物体領域がない場合及び認証信号が確認された場合、侵入異常判定部234は侵入異常信号を出力しない。
【0047】
なお侵入異常判定部234は、さらに物体領域の大きさ、動き、物体領域における監視画像と背景画像221のテクスチャの類似性などを用いて物体領域の外乱属性値及び人属性値を算出し、外乱属性値よりも人属性値の方が高いことを侵入異常信号の出力条件に加えることもできる。
【0048】
遮蔽異常判定部235は、移動距離を予め設定された静止判定値と比較するとともに物体領域に占める変化領域の割合(遮蔽度)を算出して当該遮蔽度を予め設定された遮蔽容認値と比較し、移動距離が静止判定値未満、且つ遮蔽度が遮蔽容認値以上の物体領域があるときに遮蔽異常信号を出力する。他方、移動距離が静止判定値未満である物体領域がない場合、及び遮蔽度が遮蔽容認値以上である物体領域がない場合、遮蔽異常判定部235は遮蔽異常信号を出力しない。
【0049】
具体的には遮蔽異常判定部235は、物体領域中の変化領域数を当該物体領域の総画素数で除して遮蔽度を算出する。遮蔽容認値は例えば30%相当の画素数に設定することができる。
【0050】
このように移動距離と遮蔽度に基づき遮蔽異常信号を出力することで、現に侵入者の検知を妨げる遮蔽物が存在するときは遮蔽異常信号を出力でき且つ侵入者の検知を妨げない遮蔽物が存在しても遮蔽異常信号を出力しない制御が可能となる。そのため、侵入者の検知性能を損ねることなく、正規利用者の利便性向上を図ることが可能となる。
【0051】
例えば図5に示した衝立50の例では、物体領域56の移動距離は略0であり、変化領域54が物体領域56の殆どを占めているため遮蔽容認値よりも高い遮蔽度が算出される。そのため衝立50は侵入者の検知を妨げる遮蔽物であるとして遮蔽異常信号が出力される。実際、衝立50の存在を放置していると、その背後を通る侵入者の追跡が途絶して移動距離が正しく算出できなくなったり、該侵入者の物体領域が欠損して物体領域の特徴量が正しく抽出・判定できなくなったりして侵入者の検知性能が低下する。遮蔽異常信号を出力して衝立50の存在を知らせることで衝立50を排除するなどの対処が可能になる。
【0052】
図6に示した脚立60の例では、物体領域66の移動距離は略0であるが、物体領域66に占める変化領域64の割合は少ないため遮蔽容認値よりも低い遮蔽度が算出される。そのため脚立60は侵入者の検知を妨げない低遮蔽物であるとして遮蔽異常信号は出力されない。よって正規利用者が監視空間内に脚立や自転車など隙間の多い物品を置くことを容認して侵入検知を行うことができる。
【0053】
一方、図3,図4に示した侵入者31,侵入者41の例では物体領域36,物体領域46の移動距離が静止判定値以上となり遮蔽異常信号は出力されない。侵入者31,侵入者41に対しては侵入異常判定部234により侵入異常信号が出力される。
【0054】
ここで、隙間の多い物品であっても複数の当該物品が画像上で重なると隙間を埋め合って侵入者の検知を妨げる場合がある。図7はこのときの様子を示すものである。そこで遮蔽異常判定部235は、移動距離が静止判定値未満であったが遮蔽度が遮蔽容認値未満である物体領域(低遮蔽物領域)72に含まれる変化領域71を容認遮蔽物情報223に記憶させ、新たに抽出された変化領域73と記憶されている変化領域71とを重ね合わせた合成変化領域75を用いて遮蔽度を算出する。こうすることにより単独では侵入検知の妨げとならない遮蔽物であっても複数が重なって侵入検知の妨げとなったときにこれを見落とすことなく遮蔽異常信号を出力できる。
【0055】
このとき遮蔽異常判定部235は、容認遮蔽物情報223に低遮蔽物領域72をも記憶させておき、新たに検出された物体領域74と記憶されている低遮蔽物領域72の重複領域76に占める合成変化領域75の割合を遮蔽度として算出する。これにより現に隙間の埋め合いが生じている領域だけで遮蔽度が算出できるので、遮蔽異常の見落としをさらに減少させることができる。
【0056】
<外周監視システム1の動作>
画像センサー2の動作を中心に外周監視システム1の動作を説明する。
【0057】
監視空間が無人であることを確認した管理者が画像センサー2を起動させると、撮像部21が撮像を開始し、制御部23の変化領域抽出部231は予め設定された初期化時間の間だけ撮像部21からの監視画像を平均化することにより初期の背景画像221を作成して記憶部22に記憶させる。
【0058】
初期化時間が経過すると図8のフローチャートで示す画像監視処理が始まる。画像監視処理においては、撮像部21から制御部23に監視画像が入力されるたびにステップS10〜S18の処理が繰り返される。以下、新たな監視画像が入力された時刻を現時刻と称する。
【0059】
まず制御部23は現時刻の監視画像を取得し(S10)、制御部23の変化領域抽出部231は現時刻の監視画像と背景画像221を比較して変化領域を抽出する(S11)。すなわち変化領域抽出部231は監視画像と背景画像221を差分処理して変化領域内の画素値を1、変化領域外の画素値を0に設定した差分画像を生成する。
【0060】
次に制御部23の物体領域検出部232は、現時刻に抽出された変化領域を基に物体領域を検出する(S12)。
【0061】
まず物体領域検出部232は物体枠に基づく変化領域のラベリングを行なう。すなわち物体領域検出部232は、差分画像から各変化領域の最下部座標(最大のY座標値)を求めて実空間座標系に逆透視変換し、逆透視変換した各最下部座標を底辺の各部とする実寸大の物体枠を撮像部21からの視線と垂直に設定し、設定した物体枠を透視変換して監視画像の座標系に順次設定して見かけ上の物体枠を導出し、見かけ上の各物体枠内に収まる変化領域の画素数を算出して画素数がピークとなる物体枠の設定を求める。そして物体領域検出部232は、ピークを形成した物体枠ごとに当該物体枠に収まる変化領域に同一ラベルを付与する。
【0062】
次に物体領域検出部232は残余の変化領域のラベリングを行なう。すなわち物体領域検出部232は、ラベル未付与の各変化領域に互いに異なるラベルを付与する。
【0063】
続いて物体領域検出部232は、ラベルごとに当該ラベルが付与された変化領域を構成する画素のX座標、Y座標の最大値、最小値を求めてX座標最小値とY座標最小値の組及びX座標最大値とY座標最大値の組を対角2点の座標とする矩形を物体領域として検出する。また物体領域検出部232は物体領域の底辺の中点座標(足下位置に相当)を物体領域の検出位置として算出する。
【0064】
検出処理を終えた物体領域検出部232は物体領域の検出結果を制御部23の物体領域追跡部233に出力する。なお、変化領域がない場合、物体領域検出部232は物体領域がない旨を物体領域追跡部233に出力する。
【0065】
物体領域追跡部233は、現時刻に検出された物体領域と一時刻前に検出された物体領域との間で類似する物体領域を対応づける(S13)。そのために物体領域追跡部233は一時刻前までに検出された各物体の物体領域の検出位置及び特徴量を物体情報222として記憶部22に記憶させている。物体領域追跡部233は、現時刻に検出された各物体領域の大きさ(画素数)を求めて記憶されている各物体領域の大きさとの差を算出し、現時刻に検出された各物体領域の形状(縦横比)を求めて記憶されている各物体領域の形状との差を算出し、現時刻に検出された各物体領域の輝度ヒストグラムを求めて記憶されている各物体領域の輝度ヒストグラムとの差を算出し、記憶されている各物体領域の検出位置の履歴に現時刻の検出位置を外挿して外挿された検出位置と現時刻に検出された各物体領域の検出位置との差を算出し、物体領域の組み合わせごとにこれらの各差を予め設定された評価関数に適用して類似度を算出し、予め設定された類似度閾値を超える組み合わせを対応付ける。
【0066】
対応付けを終えた物体領域追跡部233は、対応付け結果により物体情報222を更新する(S14)。すなわち物体領域追跡部233は、現時刻の物体領域の検出位置及び特徴量に対応付けが得られた物体情報222と同じ物体IDを付与して物体情報222に追記する。また物体領域追跡部233は、対応付けが得られなかった現時刻の物体領域を新規出現物体であるとして、当該物体領域の検出位置及び特徴量に新たな物体IDを付与して物体情報222に加える。さらに物体領域追跡部233は、対応付けが得られなかった物体情報222を消失物体であるとして、当該物体情報222を記憶部22から削除する。
【0067】
続いて物体領域追跡部233は、物体情報222を参照して各物体の検出位置からその移動距離を算出する(S15)。すなわち物体領域追跡部233は、各物体についてその検出位置を逆透視変換により実位置に変換して前後する時刻の実位置間の距離を累積して移動距離を算出する。
【0068】
こうして追跡処理と移動距離算出処理が進捗すると、制御部23の侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235により異常判定が行なわれる(S16)。図9を参照して異常判定処理を説明する。
【0069】
異常判定において制御部23は物体情報222に記憶されている各物体を順次注目物体に設定し、追跡中の物体についてS20〜S34のループ処理を実行する。
【0070】
物体のループ処理において、まず侵入異常判定部234は注目物体の移動距離を静止判定閾値と比較し(S21)、移動距離が静止判定閾値未満であれば以降のステップS22〜S25をスキップする(S21にてNO→S26)。
【0071】
他方、移動距離が静止判定閾値以上であれば(S21にてYES)、注目物体は侵入者の可能性があるとして、侵入異常判定部234はステップS22に処理を進める。侵入異常判定部234は注目物体の人属性値及び外乱属性値を算出してこれらの値を大小比較し(S22,S23)、人属性値が外乱属性値以上であれば注目物体は人であるとして認証信号の受信有無を確認する(S23にてYES→S24)。認証信号が受信されていなければ侵入異常判定部234は注目物体が侵入者であるとして侵入異常情報を生成して記憶部22に一時記憶させる(S24にてNO→S25)。
【0072】
一方、人属性値が外乱属性値未満であれば注目物体は小動物等の外乱であるとして侵入異常判定部234はステップS24,S25をスキップする(S23にてNO→S26)。また認証信号を受信していれば注目物体は正規利用者であるとして侵入異常判定部234はステップS25をスキップする(S24にてYES→S26)。外乱及び正規利用者の物体領域は消失するまで追跡されることになる。
【0073】
続いて遮蔽異常判定部235による注目物体の判定が行なわれる。
【0074】
まずステップS26,S27にて遮蔽異常判定部235は注目物体が静止物体であることを確認する。すなわち遮蔽異常判定部235は、注目物体の移動距離を静止判定閾値と比較し(S26)、移動距離が静止判定閾値以上であれば以降のステップS27〜S33をスキップする(S26にてNO→S34)。移動距離が静止判定閾値未満であれば(S26にてYES)、遮蔽異常判定部235はさらに追跡時間を静止判定時間と比較する(S27)。静止判定時間を確認するのは一時停止している移動物体を誤認しないようにするためである。静止判定時間は例えば10秒程度の時間に予め設定される。物体情報222に記憶されている注目物体の検出位置の数を追跡時間として用いることができる。追跡時間が静止判定時間未満であれば、遮蔽異常判定部235は以降のステップS28〜S33をスキップする(S27にてNO→S34)。
【0075】
注目物体が静止物体であることが確認されると、遮蔽異常判定部235は注目物体の遮蔽度を算出する。
【0076】
すなわち遮蔽異常判定部235は、記憶部22の容認遮蔽物情報223に注目物体の物体領域と重複する低遮蔽物領域が記憶されているか否かを確認し(S28)、記憶されていればステップS11にて生成された差分画像と容認遮蔽物情報223の変化領域との論理和画像を合成変化領域として生成し(S28にてYES→S29)、注目物体の物体領域と記憶されている低遮蔽物領域との重複領域内において論理和画像の画素値が1の画素数を計数して計数結果を重複領域の画素数で除して注目物体の遮蔽度を算出する(S30)。一方、重複する低遮蔽物領域が記憶されていなければ(S28にてNO)、遮蔽異常判定部235は、合成変化領域を用いずに、注目物体の物体領域内において差分画像の画素値が1の画素数を計数して計数結果を注目物体の物体領域の画素数で除して注目物体の遮蔽度を算出する(S30)。なおステップS30において重複領域が侵入検知を妨げない程度に小さい場合は重複領域を用いずに遮蔽度を算出することもできる。この場合遮蔽異常判定部235は、重複領域の画素数が予め設定された重なり下限値(植木鉢程度の大きさに設定)より小さければ注目物体の物体領域内における論理和画像の画素値が1の画素数を計数して計数結果を注目物体の物体領域の画素数で除して注目物体の遮蔽度を算出し、重複領域の画素数が重なり下限値以上であれば上述したように重複領域内と合成変化領域とから遮蔽度を算出する。
【0077】
続いて遮蔽異常判定部235は、算出した遮蔽度を遮蔽容認値と比較し(S31)、遮蔽度が遮蔽容認値以上であれば注目物体は侵入検知を妨げる遮蔽物であるとして遮蔽異常情報を生成して記憶部22に一時記憶させる(S31にてNO→S32)。
【0078】
他方、遮蔽度が遮蔽容認値未満であれば注目物体は侵入検知を妨げない低遮蔽物であるとして、遮蔽異常判定部235はステップS32をスキップして注目物体の物体領域(低遮蔽物領域)及び変化領域の情報を新たに容認遮蔽物情報223に記憶させる(S31にてYES→S33)。
【0079】
遮蔽異常判定部235がステップS32又はS33の処理を終えると、制御部23は全物体の判定が終わったか確認する(S34)。全物体の判定が終わっていなければ(S34にてNO)、制御部23はステップS20に処理を戻して次の物体の判定を開始し、全物体の判定が終わったならば(S34にてYES)、制御部23は図8のステップS17へ処理を進める。
【0080】
図8に戻り、侵入異常判定部234及び遮蔽異常判定部235は一時記憶した異常情報の有無を確認し(S17)、侵入異常情報があれば侵入異常判定部234は当該情報を通信部24に出力し、遮蔽異常情報があれば遮蔽異常判定部235は当該情報を通信部24に出力する(S17にてYES→S18)。いずれの異常情報もなければ(S17にてNO)、ステップS18はスキップされる。
【0081】
続いて変化領域抽出部231は監視画像を用いて背景画像221を更新する(S19)。すなわち変化領域抽出部231は、監視画像から現時刻にて物体領域が検出されなかった領域を切り出して切り出した画像と背景画像221とをα:(1−α)の割合で重み付け加算して背景画像221を更新し、さらに現時刻にて低遮蔽物領域と判定された領域があれば監視画像から当該領域を切り出して、背景画像221における対応部分を切り出した画像で置換して背景画像221を更新する。ただしαは、0<α<1の範囲で予め設定された値である。
【0082】
以上の処理を終えると、処理はステップS10へ戻され、次時刻の監視画像に対する処理が行われる。


【符号の説明】
【0083】
1・・・外周監視システム
2・・・画像センサー
3・・・認証装置
4・・・携帯端末
5・・・コントローラー
6・・・センター装置
21・・・撮像部
22・・・記憶部
221・・・背景画像
222・・・物体情報
223・・・容認遮蔽物情報
224・・・カメラパラメーター
23・・・制御部
231・・・変化領域抽出部
232・・・物体領域検出部
233・・・物体領域追跡部
234・・・侵入異常判定部
235・・・遮蔽異常判定部
24・・・通信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間を撮像した画像を用いて侵入者を検知する画像監視装置において、
前記監視空間を順次撮像する撮像部と、
背景画像を記憶する記憶部と、
前記撮像された監視画像を前記背景画像と比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記変化領域の外形を所定図形にて近似して物体領域を検出する物体領域検出部と、
前後する時刻に検出された前記物体領域のうち特徴が互いに類似する物体領域を対応付け、対応付けた物体領域の検出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、
前記物体領域の前記移動距離を予め設定された静止判定値と比較するとともに当該物体領域に占める前記変化領域の割合を算出して予め設定された遮蔽容認値と比較し、前記移動距離が前記静止判定値未満且つ前記割合が前記遮蔽容認値以上であるときに前記侵入者の検知を妨げる遮蔽物があると判定する遮蔽異常判定部と、
を備えたことを特徴とする画像監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像監視装置において、
前記物体領域検出部は、予め設定された許容範囲内で互いに近接して検出された複数の前記変化領域があるときは当該複数の変化領域のまとまりに対して前記物体領域を検出する画像監視装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像監視装置において、
前記遮蔽異常判定部は、前記移動距離が前記静止判定値未満且つ前記割合が前記遮蔽容認値未満である物体領域を前記侵入者の検知を妨げない低遮蔽物領域と判定し、
前記変化領域抽出部は、前記低遮蔽物領域内の前記背景画像を前記監視画像にて置換する画像監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像監視装置において、
前記遮蔽異常判定部は、前記低遮蔽物領域にて抽出された前記変化領域を前記記憶部に記憶させ、当該記憶後に抽出される前記変化領域と前記記憶された変化領域を合わせた合成変化領域を用いて前記割合を算出する画像監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像監視装置において、
前記遮蔽異常判定部は、前記低遮蔽物領域を前記記憶部に記憶させ、当該記憶後に検出される前記物体領域と前記記憶された低遮蔽物領域の重複領域に占める前記合成変化領域の割合を算出して前記遮蔽物の判定を行なう画像監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208878(P2012−208878A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75702(P2011−75702)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】