説明

画像表示システム、画像処理装置及び画像表示方法

【課題】互いに離間した複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両において、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができるようにする。
【解決手段】画像表示システムにおいては、前乗降口の近傍の領域を示す部分画像SP1と、後乗降口の近傍の領域を示す部分画像SP2とが生成される。これら二つの部分画像SP1,SP2のうち、物体が検出された乗降口に対応する部分画像のみが表示装置に表示される。このため、安全確認が必要な乗降口のみに対して乗務員の注意を向けさせることができる。その結果、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客車両において画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バスなどの旅客車両においては、通常、車体側面に旅客の乗降口が設けられている。一方で、旅客車両の側方領域は乗務員(代表的にはドライバ)から死角になりやすいため、旅客が乗降する場合における安全確認を乗務員が適切に行うことができる技術が要望されている。
【0003】
このような要望に対応するため、乗降口の近傍を撮影する車載カメラをバスに配置し、この車載カメラで得られた撮影画像を、運転席から視認可能に設けられた表示装置に表示する画像表示システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−172978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バスなどの旅客車両においては、旅客の乗降効率を上げるために、互いに離間した複数の乗降口を一の側面に備えている場合が多い。この場合においては、複数の乗降口の全てに関して、旅客が乗降する場合の安全確認を乗務員が適切に行えるようにすることが望ましい。
【0006】
これに対応するため、旅客車両の側方領域の全体を撮影可能な車載カメラを設け、この車載カメラで得られた撮影画像を表示装置に表示することが考えられる。しかしながら、この場合においては、側方領域の全体という広い範囲の様子が表示装置に表示されるため、乗務員が安全確認をすべき範囲が広くなってしまい、乗務員の注意が散漫になる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、互いに離間した複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両において、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を表示し、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を非表示とする表示手段と、を備えている。
【0009】
また、請求項2の発明は、車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で表示する表示手段と、を備えている。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の画像表示システムにおいて、前記取得手段は、前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記複数の部分画像を取得する。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、前記複数の部分画像ごとに定められた画面上の位置に表示する。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項2に記載の画像表示システムにおいて、前記表示手段は、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像よりも強調する。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項2に記載の画像表示システムにおいて、前記表示手段は、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像に含まれる前記物体の像を強調する。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、対応する前記乗降口のサイズに応じたサイズで表示する。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、対応する前記乗降口の前記車両の運転席からの距離に応じたサイズで表示する。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項3に記載の画像表示システムにおいて、前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段、をさらに備えている。
【0017】
また、請求項10の発明は、車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段と、前記複数の部分画像を並べて表示する表示手段と、を備えている。
【0018】
また、請求項11の発明は、車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を含み、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を含まない表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、を備えている。
【0019】
また、請求項12の発明は、車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で含む表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、を備えている。
【0020】
また、請求項13の発明は、車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段と、前記複数の部分画像を並べて含む表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、を備えている。
【0021】
また、請求項14の発明は、車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、(a)前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、(b)前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する工程と、(c)前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を表示し、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を非表示とする工程と、を備えている。
【0022】
また、請求項15の発明は、車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、(a)前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、(b)前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する工程と、(c)前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で表示する工程と、を備えている。
【0023】
また、請求項16の発明は、車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、(a)前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、(b)前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる工程と、(c)前記複数の部分画像を並べて表示する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1,11及び14の発明によれば、物体が検出された乗降口に対応する部分画像のみを表示するため、安全確認が必要な乗降口のみに対して乗務員の注意を向けさせることができる。その結果、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。
【0025】
また、請求項2,12及び15の発明によれば、物体が検出された乗降口に対応する部分画像と、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像とを異なる態様で表示するため、安全確認が必要な乗降口と他の乗降口とを乗務員が容易に区別できる。その結果、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。
【0026】
また、請求項3の発明によれば、必要なカメラの数を減らすことができる。
【0027】
また、請求項4の発明によれば、安全確認が必要な乗降口がいずれであるかを乗務員が直感的に把握できる。
【0028】
また、請求項5の発明によれば、安全確認が必要な乗降口を乗務員が容易に把握できる。
【0029】
また、請求項6の発明によれば、安全確認が必要な物体の位置を乗務員が容易に特定できる。
【0030】
また、請求項7の発明によれば、複数の部分画像のそれぞれを対応する乗降口のサイズに応じたサイズで表示するため、乗降口のサイズに応じて必要な範囲に乗務員の注意を向けさせることができる。
【0031】
また、請求項8の発明によれば、複数の部分画像のそれぞれを対応する乗降口の車両の運転席からの距離に応じたサイズで表示するため、運転席から直接的に確認しにくい乗降口の近傍を、乗務員が確認しやすくすることができる。
【0032】
また、請求項9の発明によれば、同一サイズの被写体を示す像のサイズを複数の部分画像で略一致させるため、部分画像に示される被写体のサイズを把握しやすい。
【0033】
また、請求項10,13及び16の発明によれば、カメラの撮影画像から複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像が並べて表示される。このため、乗務員は、複数の乗降口それぞれの近傍に注意力を向けることができ、旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。そして、部分画像に示される物体のサイズを把握しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、画像表示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、旅客車両を上方からみた様子を示す図である。
【図3】図3は、合成画像を生成する手法を説明するための図である。
【図4】図4は、画像表示システムの動作モードの遷移を示す図である。
【図5】図5は、周囲確認モードにおける仮想視点の位置の遷移を示す図である。
【図6】図6は、周囲確認モードで生成される合成画像の一例を示す図である。
【図7】図7は、周囲確認モードで生成される合成画像の一例を示す図である。
【図8】図8は、バックモードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【図9】図9は、フロントモードにおける表示モードの遷移を示す図である。
【図10】図10は、俯瞰モードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【図11】図11は、サイドミラーモードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【図12】図12は、第1の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【図13】図13は、第1の実施の形態の乗降モードで表示される部分画像が対応する領域を示す図である。
【図14】図14は、第1の実施の形態の画像表示システムの乗降モードにおける処理の流れを示す図である。
【図15】図15は、撮影画像から部分画像を取得する手法を説明する図である。
【図16】図16は、第1の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の遷移を示す図である。
【図17】図17は、第2の実施の形態の画像表示システムの乗降モードにおける処理の流れを示す図である。
【図18】図18は、第2の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の遷移を示す図である。
【図19】図19は、第3の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の遷移を示す図である。
【図20】図20は、第4の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の遷移を示す図である。
【図21】図21は、第5の実施の形態の乗降モードで表示される部分画像が対応する領域を示す図である。
【図22】図22は、第5の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【図23】図23は、第6の実施の形態の乗降モードで表示される表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0036】
<1−1.システム構成>
図1は、第1の実施の形態の画像表示システム120の構成を示すブロック図である。この画像表示システム120は、多数の旅客を輸送する旅客車両に搭載され、旅客車両の周辺の様子を示す画像を生成して車室内に表示する機能を有している。以下、旅客車両はバスであるものとして説明する。画像表示システム120のユーザとなる乗務員(代表的にはドライバ)は、この画像表示システム120を利用することにより、当該旅客車両の周辺の様子をほぼリアルタイムに把握できるようになっている。
【0037】
図1に示すように、画像表示システム120は、旅客車両の周辺の様子を示す表示画像を生成する画像処理装置100と、乗務員に対して各種情報を表示する表示装置20とを主に備えている。
【0038】
表示装置20は、液晶ディスプレイなどを備えており、画像処理装置100で生成された旅客車両の周辺の様子を示す表示画像を表示する。表示装置20は、旅客車両の運転席90から視認可能な位置に配置される(図2参照。)。
【0039】
画像処理装置100は、表示画像を生成する機能を有するECU(Electronic Control Unit)である本体部10と、旅客車両の周辺を撮影する撮影部5と、乗務員が操作可能な切替スイッチ6とを備えている。本体部10は、撮影部5で旅客車両の周辺を撮影して得られる撮影画像に基づいて、表示装置20に表示するための表示画像を生成する。本体部10は、表示装置20とは異なる旅客車両の所定の位置に配置される。
【0040】
撮影部5は、本体部10に電気的に接続され、本体部10からの信号に基づいて動作する。撮影部5は、複数の車載カメラ、具体的には、フロントカメラ51、左サイドカメラ52、右サイドカメラ53、及び、バックカメラ54を備えている。各車載カメラ51〜54は、レンズと撮像素子とを備えており電子的に画像を取得する。これら4つの車載カメラ51〜54は、旅客車両の前後左右の4面にそれぞれ配置される。
【0041】
図2は、旅客車両9を上方からみた様子を示す図である。図に示すように、旅客車両9は、前後方向に長い形状を有している。旅客車両9は、右ハンドル車であり、運転席90とは逆側の左側面9Lに旅客が乗降するための二つの乗降口91,92を備えている。各乗降口91,92にはドアが設けられており、乗務員からの指示に応じて開閉される。
【0042】
これら二つの乗降口91,92は、互いに離間して配置されている。前乗降口91は、旅客車両9の前後方向における運転席90と略同じ位置に配置される。一方、後乗降口92は、旅客車両9の前後方向の中央と後タイヤとの間に配置される。これら二つの乗降口91,92の、旅客車両9の前後方向のサイズは略同一となっている。
【0043】
二つの乗降口91,92を利用して旅客が乗降する際には、旅客車両9の左側の側方領域に旅客が存在することになる。しかしながら、この左側の側方領域は、旅客車両9の右側にある運転席90からは直接的には確認しにくい。
【0044】
フロントカメラ51は、旅客車両9の前面9Fにおける左右方向の中央の上部に設けられている。フロントカメラ51の光軸51aは、平面視で旅客車両9の直進方向に向けられている。バックカメラ54は、旅客車両9の後面9Bにおける左右方向の中央の上部に設けられている。バックカメラ54の光軸54aは、平面視で旅客車両9の直進方向の逆方向に向けられている。
【0045】
また、左サイドカメラ52は、旅客車両9の左側面9Lにおける前後方向の中央の上部に設けられている。左サイドカメラ52の光軸52aは、平面視で旅客車両9の左右方向に沿って旅客車両9の左側に向けられている。さらに、右サイドカメラ53は、旅客車両9の右側面9Rにおける前後方向の中央の上部に設けられている。右サイドカメラ53の光軸53aは、平面視で旅客車両9の左右方向に沿って旅客車両9の右側に向けられている。
【0046】
これらの車載カメラ51〜54のレンズとしては魚眼レンズが採用されており、各車載カメラ51〜54は180度以上の画角θを有している。このため、これら4つの車載カメラ51〜54を利用することで、旅客車両9の全周囲の撮影が可能となっている。
【0047】
左サイドカメラ52は、旅客車両9の前端から後端までの範囲を含む、旅客車両9の左側の側方領域の全体を撮影可能である。したがって、左サイドカメラ52は、前乗降口91の近傍と後乗降口92の近傍との双方を含む範囲を1度に撮影可能となっている。
【0048】
図1に戻り、切替スイッチ6は、表示装置20の表示内容を切り替える指示を乗務員から受け付ける。切替スイッチ6は、乗務員が操作しやすいように、本体部10とは別に運転席90の近傍に配置される。
【0049】
また、画像処理装置100の本体部10は、装置全体を制御する制御部1と、撮影部5から撮影画像を取得する画像取得部41と、撮影画像に基づいて表示画像を生成する画像生成部3と、表示装置20に表示画像を出力する画像出力部42とを主に備えている。
【0050】
画像取得部41は、撮影部5が備える複数の車載カメラ51〜54それぞれから、撮影によって得られた撮影画像を受け取る。
【0051】
画像生成部3は、各種の画像処理が可能なハードウェア回路であり、画像取得部41が取得した撮影画像を処理し、表示装置20の表示に用いる表示画像を生成する。画像生成部3は、撮影画像切出部31、合成画像生成部32、部分画像調整部33及び表示画像生成部34を主な機能として備えている。
【0052】
撮影画像切出部31は、撮影部5で取得された撮影画像の一部の領域を切り出し、切り出した領域を一つの画像とすることで部分画像を取得する。撮影画像切出部31は、一つの撮影画像から複数の領域を切り出し、切り出した複数の領域それぞれを部分画像として取得することが可能である。
【0053】
合成画像生成部32は、撮影部5の複数の車載カメラ51〜54で取得された複数の撮影画像に基づいて、任意の仮想視点からみた旅客車両9の周辺の領域を示す合成画像を生成する。合成画像生成部32が合成画像を生成する手法については後述する。
【0054】
部分画像調整部33は、撮影画像切出部31が取得した部分画像に対して、被写体の像の拡大縮小などの各種の画像処理を行う。部分画像調整部33は、このような画像処理によって部分画像に含まれる被写体の像のサイズを調整する。
【0055】
表示画像生成部34は、撮影画像切出部31が取得した部分画像、及び、合成画像生成部32に生成された合成画像を用いて、表示装置20の表示に用いる表示画像を生成する。表示画像には、通常は部分画像及び合成画像の少なくとも1つが含まれており、この表示画像を視認することで乗務員は旅客車両の周辺の様子を把握できる。
【0056】
画像出力部42は、画像生成部3によって生成された表示画像を表示装置20に出力する。これにより、旅客車両9の周辺の少なくとも一部の領域を示す表示画像が表示装置20に表示される。
【0057】
制御部1は、CPU、RAM及びROMなどを備えたコンピュータである。制御部1の各種の制御機能は、所定のプログラムに従ってCPUが演算処理を行うことで実現される。図中に示す表示制御部11、及び、物体検出部12は、CPUが演算処理を実行することで実現される機能の一部である。
【0058】
表示制御部11は、表示装置20に表示させる内容に係る制御を行う。表示制御部11は、例えば、画像表示システム120の動作モードの変更に応じて、表示装置20に表示させる表示画像の内容を変更する。具体的には、表示制御部11は、画像生成部3に対して、表示画像に含むべき画像の種類やその画像の生成に必要なパラメータ等を指示する。また、乗務員によって切替スイッチ6が操作された場合、この操作に応答して表示制御部11は表示画像の内容を変更する。
【0059】
物体検出部12は、撮影画像切出部31が取得した部分画像に基づいて、旅客車両9の周辺に存在する物体を検出する。物体検出部12は、例えば、旅客車両9の周辺の同一の領域を示し、かつ、時間的に連続して取得された部分画像同士を比較し、部分画像間の相違に基づいて物体を検出する。
【0060】
また、画像処理装置100の本体部10は、不揮発性メモリ40、信号受信部43、及び、カード読取部44をさらに備えており、これらは制御部1に接続されている。
【0061】
不揮発性メモリ40は、電源オフ時においても記憶内容を維持可能なフラッシュメモリなどである。不揮発性メモリ40には、制御部1の機能を実現するプログラム(ファームウェア)とともに、車両データ4aが記憶されている。車両データ4aは、車体サイズなどの旅客車両9に固有の情報を含んでいる。
【0062】
信号受信部43は、旅客車両9に設けられた各種の車載装置からの信号を受信する。この信号受信部43を介して、画像表示システム120の外部からの信号が制御部1に入力される。具体的には、信号受信部43は、シフトセンサ81からの信号を受信して制御部1に入力する。信号受信部43は、シフトセンサ81から、旅客車両9の変速装置のシフトレバーの操作の位置、すなわち、”P(駐車)”,”D(前進)”,”N(中立)”,”R(後退)”などのシフトポジションを示す信号を受信する。
【0063】
また、カード読取部44は、可搬性の記録媒体であるメモリカードMCの読み取りを行う。カード読取部44は、メモリカードMCの着脱が可能なカードスロットを備えており、そのカードスロットに装着されたメモリカードMCに記録されたデータを読み取る。カード読取部44で読み取られたデータは、制御部1に入力される。メモリカードMCは、種々のデータを記憶可能なフラッシュメモリなどであり、画像表示システム120はメモリカードMCに記憶された種々のデータを利用できる。例えば、カード読取部44がメモリカードMCに記憶されたプログラムを読み出すことで、画像表示システム120は制御部1の機能を実現するプログラム(ファームウェア)を更新することが可能である。
【0064】
<1−2.画像合成処理>
次に、画像生成部3の合成画像生成部32が、撮影部5で得られた複数の撮影画像に基づいて、任意の仮想視点からみた旅客車両9の周辺の様子を示す合成画像を生成する手法について説明する。図3は、合成画像を生成する手法を説明するための図である。
【0065】
撮影部5のフロントカメラ51、左サイドカメラ52、右サイドカメラ53及びバックカメラ54で同時に撮影が行われると、旅客車両9の前方、左側方、右側方及び後方をそれぞれ示す4つの撮影画像P1〜P4が取得される。すなわち、撮影部5で取得される4つの撮影画像P1〜P4には、撮影時点の旅客車両9の全周囲を示す情報が含まれていることになる。
【0066】
次に、4つの撮影画像P1〜P4の各画素が、仮想的な三次元空間における立体曲面TSに投影される。立体曲面TSは、例えば略半球状(お椀形状)をしており、その中心部分(お椀の底部分)が旅客車両9が存在する位置として定められている。撮影画像P1〜P4に含まれる各画素の位置と、この立体曲面TSの各画素の位置とは予め対応関係が定められている。このため、立体曲面TSの各画素の値は、この対応関係と撮影画像P1〜P4に含まれる各画素の値とに基づいて決定できる。
【0067】
撮影画像P1〜P4の各画素の位置と立体曲面TSの各画素の位置との対応関係は、旅客車両9における4つの車載カメラ51〜53の配置(相互間距離、地上高さ、光軸角度等)に依存する。この対応関係を示すテーブルデータは、不揮発性メモリ40に記憶された車両データ4aに含まれている。
【0068】
また、車両データ4aに含まれる車体の形状やサイズが利用され、旅客車両9の三次元形状を示すポリゴンのモデルが仮想的に構成される。構成された旅客車両9のモデルは、立体曲面TSが設定される三次元空間において、旅客車両9の位置と定められた略半球状の中心部分に配置される。
【0069】
さらに、立体曲面TSが存在する三次元空間に対して、制御部1により仮想視点VPが設定される。仮想視点VPは、視点位置と視野方向とで規定され、この三次元空間における旅客車両9の近傍に相当する任意の視点位置に任意の視野方向に向けて設定される。
【0070】
そして、設定された仮想視点VPに応じて、立体曲面TSにおける必要な領域が画像として切り出される。仮想視点VPと、立体曲面TSにおける必要な領域との関係は予め定められており、テーブルデータとして不揮発性メモリ40等に予め記憶されている。一方で、設定された仮想視点VPに応じてポリゴンのモデルに関してレンダリングがなされ、その結果となる二次元の旅客車両9の像が、切り出された画像に対して重畳される。これにより、旅客車両9及びその旅客車両9の周辺を任意の仮想視点VPからみた様子を示す合成画像が生成されることになる。
【0071】
例えば、視点位置が旅客車両9の位置の略中央の直上で、視野方向が直下方向とした仮想視点VPaを設定した場合は、旅客車両9の略直上から旅客車両9を見下ろすように、旅客車両9及び旅客車両9の周辺の領域を示す合成画像CPaが生成される。また、図中に示すように、視点位置が旅客車両9の位置の左後方で、視野方向が旅客車両9における略前方方向とした仮想視点VPbを設定した場合は、旅客車両9の左後方からその周辺全体を見渡すように、旅客車両9及び旅客車両9の周辺の領域を示す合成画像CPbが生成される。
【0072】
なお、実際に合成画像を生成する場合においては、立体曲面TSの全ての画素の値を決定する必要はなく、設定された仮想視点VPに対応して必要となる領域の画素の値のみを撮影画像P1〜P4に基づいて決定することで、処理速度を向上できる。
【0073】
画像表示システム120では、このような合成画像生成部32の機能を利用することで、旅客車両9の周辺の任意の視点からみた合成画像を生成して、表示装置20に表示することができる。
【0074】
<1−3.動作モード>
次に、画像表示システム120の動作モードについて説明する。図4は、画像表示システム120の動作モードの遷移を示す図である。画像表示システム120は、周囲確認モードM1、フロントモードM2、及び、バックモードM3の3つの動作モードを有している。これらの動作モードは、乗務員の操作や旅客車両9の走行状態に応じて制御部1の制御により切り替えられるようになっている。
【0075】
周囲確認モードM1は、旅客車両9を見下ろした状態で旅客車両9の周囲を周回するようなアニメーションを行う動作モードである。フロントモードM2は、前進時に必要となる旅客車両9の前方や側方を主に示す表示画像を表示する動作モードである。また、バックモードM3は、後退時に必要となる旅客車両9の後方を主に示す表示画像を表示する動作モードである。
【0076】
画像表示システム120は起動すると、最初にフロントモードM2となる。このフロントモードM2の場合において、切替スイッチ6が所定時間(例えば、1秒)以上継続して押下されると、周囲確認モードM1に切り替えられる。周囲確認モードM1に切り替えられると、視点が旅客車両9の周囲を周回するようなアニメーションが表示装置20に表示される。そして、このアニメーションの終了後、所定時間(例えば、6秒)が経過すると、自動的にフロントモードM2に切り替えられる。
【0077】
また、フロントモードM2の場合において、シフトセンサ81からの信号が示すシフトポジションが”R(後退)”となったときは、バックモードM3に切り替えられる。すなわち、旅客車両9の変速装置が”R(後退)”の位置に操作されているときには、旅客車両9は後退する状態であるため、旅客車両9の後方を主に示すバックモードM3に切り替えられる。そして、バックモードM3の場合において、シフトポジションが”R(後退)”以外となったときは、フロントモードM2に切り替えられる。
【0078】
以下、周囲確認モードM1、バックモードM3及びフロントモードM2のそれぞれにおける、表示装置20での表示態様について説明する。
【0079】
<1−4.周囲確認モード>
まず、周囲確認モードM1における表示装置20の表示態様について説明する。周囲確認モードM1においては、旅客車両9の全周囲を示す合成画像が表示される。そして、この合成画像のための仮想視点VPが段階的かつ連続的に変化されることにより、アニメーションが実現される。
【0080】
具体的には、旅客車両9を見下ろすように仮想視点VPが設定され、図5に示すように、この仮想視点VPが旅客車両9の周辺を周回するように連続的に移動される。仮想視点VPは、最初に旅客車両9の後方に設定された後、右回りで旅客車両9の周辺を周回する。このようにして仮想視点VPが旅客車両9の左側、前方及び右側を経由して再び後方まで移動すると、仮想視点VPは旅客車両9の直上までさらに移動する。このように仮想視点VPが移動している状態で、複数の合成画像が時間的に連続して生成される。例えば、図6に示す合成画像CP11や、図7に示す合成画像CP12などに示すように、旅客車両9を見下ろす視点から旅客車両9の全周囲をみた合成画像が生成される。
【0081】
生成された複数の合成画像はそのまま表示画像として画像出力部42から順次に出力され、表示装置20において時間的に連続して表示される。これにより、旅客車両9を見下ろした状態で旅客車両9の周囲を周回するようなアニメーションが表示装置20に表示されることになる。
【0082】
乗務員は、このようなアニメーションを視認することで、旅客車両9を見下ろす視点から旅客車両9の全周囲の状況を確認することができ、直感的に旅客車両9の全周囲の障害物と旅客車両9との位置関係を把握できることになる。
【0083】
<1−5.バックモード>
次に、バックモードM3における表示装置20の表示態様について説明する。図8は、バックモードM3において表示装置20に表示される表示画像DP3の一例を示す図である。
【0084】
表示画像DP3は、旅客車両9をその直上から俯瞰する合成画像である俯瞰画像BP1と、バックカメラ54の撮影画像の一部の領域を切り出した部分画像BP2と、視野範囲を示す視野アイコンC3と並べて含んでいる。視野アイコンC3は、旅客車両9の周辺のうちの部分画像BP2に示される範囲を図形で示している。
【0085】
バックモードM3においては、このような二つの画像BP1,BP2を閲覧することができるため、乗務員は、旅客車両9の周囲全体とともに、進行方向である旅客車両9の後方の状況を一目で確認できる。
【0086】
<1−6.フロントモード>
次に、フロントモードM2における表示装置20の表示態様について説明する。フロントモードM2では、互いに表示態様が異なる3つの表示モードがある。図9に示すように、具体的には、これら3つの表示モードは、俯瞰モードM21、乗降モードM22及びサイドミラーモードM23である。これらの表示モードごとに、表示装置20に表示される表示画像に含まれる内容が異なっている。
【0087】
表示制御部11は、乗務員が切替スイッチ6を押下するごとに、俯瞰モードM21、乗降モードM22、サイドミラーモードM23の順で、表示モードを切り替える。また、サイドミラーモードM23の場合に乗務員が切替スイッチ6を押下すると、表示制御部11は、表示モードを俯瞰モードM21に戻すようになっている。
【0088】
<1−6−1.俯瞰モード>
まず、俯瞰モードM21について説明する。俯瞰モードM21は、前進時に汎用的に利用される表示モードである。図10は、俯瞰モードM21において表示装置20に表示される表示画像DP21の一例を示す図である。
【0089】
表示画像DP21は、旅客車両9をその直上から俯瞰する合成画像である俯瞰画像FP1と、フロントカメラ51の撮影画像の一部の領域を切り出した部分画像FP2と、視野範囲を示す視野アイコンC21と並べて含んでいる。視野アイコンC21は、旅客車両9の周辺のうちの部分画像FP2に示される範囲を図形で示している。
【0090】
俯瞰モードM21においては、このような二つの画像FP1,FP2を閲覧することができるため、乗務員は、旅客車両9の周囲全体とともに、進行方向である旅客車両9の前方の状況を一目で確認できる。
【0091】
<1−6−2.サイドミラーモード>
次に、サイドミラーモードM23について説明する。サイドミラーモードM23は、旅客車両9のサイドミラーに映る範囲と略同様の範囲を表示する表示モードである。図11は、サイドミラーモードM23において表示装置20に表示される表示画像DP23の一例を示す図である。
【0092】
表示画像DP23は、左サイドカメラ52の撮影画像の一部の領域を切り出した部分画像MP1と、右サイドカメラ53の撮影画像の一部の領域を切り出した部分画像MP2と、視野範囲を示す視野アイコンC23と並べて含んでいる。部分画像MP1は、旅客車両9の左側のサイドミラーに映る範囲と略同様の範囲を示している。一方、部分画像MP2は、旅客車両9の右側のサイドミラーに映る範囲と略同様の範囲を示している。また、視野アイコンC23は、旅客車両9の周辺のうちの二つの部分画像MP1,MP2に示される範囲を図形で示している。
【0093】
サイドミラーモードM23においては、このような二つの画像MP1,MP2を閲覧することができるため、乗務員はサイドミラーに映る範囲と略同様の範囲を表示装置20において確認することができる。
【0094】
<1−6−3.乗降モード>
次に、乗降モードM22について説明する。乗降モードM22は、乗務員が旅客の乗降の安全確認を行うために利用する表示モードである。図12は、乗降モードM22において表示装置20に表示される表示画像DP22の一例を示す図である。
【0095】
表示画像DP22は、左サイドカメラ52の撮影画像の一部の領域を切り出した第1部分画像SP1と、左サイドカメラ52の撮影画像の他の一部の領域を切り出した第2部分画像SP2と、視野範囲を示す視野アイコンC22と並べて含んでいる。視野アイコンC22は、旅客車両9の周辺のうちの二つの部分画像SP1,SP2に示される範囲を図形で示している。表示装置20は、この表示画像DP22を表示するため、第1部分画像SP1と第2部分画像SP2とを同一の画面上に並べて表示することになる。
【0096】
第1部分画像SP1は、図13に示すように、前乗降口91の近傍の領域SA1を示している。一方、第2部分画像SP2は、図13に示すように、後乗降口92の近傍の領域SA2を示している。すなわち、第1部分画像SP1は前乗降口91に対応し、第2部分画像SP2は後乗降口92に対応している。
【0097】
乗降モードM22においては、このような二つの部分画像SP1,SP2を閲覧することができるため、乗務員は、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍の状況を一目で確認できる。表示装置20においては、旅客車両9の左側の側方領域の全体ではなく、二つの乗降口91,92のそれぞれの近傍の領域のみが表示される。このため、乗務員は、注意が散漫とならずに、確認すべき領域である二つの乗降口91,92それぞれの近傍に適切に注意を向けることができる。その結果、乗務員は、旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。
【0098】
また、表示装置20は、二つの部分画像SP1,SP2の双方を常に表示するわけではなく、その近傍に物体が存在する乗降口に対応する部分画像のみを表示するようになっている。
【0099】
図14は、画像表示システム120の乗降モードM22における処理の流れを示す図である。この図14に示す処理は、所定の周期(例えば、1/30秒周期)で繰り返される。
【0100】
まず、画像取得部41が、左サイドカメラ52の一度の撮影により得られた撮影画像を左サイドカメラ52から取得する。この撮影画像には、前乗降口91の近傍の領域SA1、及び、後乗降口92の近傍の領域SA2の双方が示されている(ステップS11)。
【0101】
次に、撮影画像切出部31が、この左サイドカメラ52の撮影画像中の領域を切り出して二つの部分画像SP1,SP2を取得する(ステップS12)。具体的には、図15に示すように、撮影画像切出部31は、左サイドカメラ52の撮影画像P2から、前乗降口91の近傍の領域SA1(図13参照。)を示す領域A1を切り出して、第1部分画像SP1を生成する。さらに、撮影画像切出部31は、同一の撮影画像P2から、後乗降口92の近傍の領域SA2(図13参照。)を示す領域A2を切り出して、第2部分画像SP2を生成する。
【0102】
次に、部分画像調整部33が、同一サイズの被写体を示す像のサイズが二つの部分画像SP1,SP2で略一致するように、第1部分画像SP1に含まれる被写体の像のサイズを調整する(ステップS13)。
【0103】
魚眼レンズを利用して取得された撮影画像P2においては、周辺の領域ほど被写体の像が圧縮された状態で示される。このため、撮影画像P2においては、前乗降口91に対応する領域A1と後乗降口92に対応する領域A2とで、同一サイズの被写体を示す像であってもそのサイズが異なることになる。具体的には、同一サイズの被写体を示す像であれば、前乗降口91に対応する領域A1にある場合のほうが、後乗降口92に対応する領域A2にある場合よりも小さくなる。これは、前乗降口91が後乗降口92よりも左サイドカメラ52の光軸の位置から離れていることから、領域A1が領域A2よりも撮影画像P2の周辺側となるためである。
【0104】
このため、図15に示すように、部分画像調整部33は、第1部分画像SP1に含まれる被写体の像のサイズを拡大して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを二つの部分画像SP1,SP2で略一致させる。これにより、これらの部分画像SP1,SP2が同時に表示装置20に表示された場合においても、乗務員は、部分画像SP1,SP2に示される被写体のサイズを直感的に把握しやすくすることができる。
【0105】
本実施の形態では、二つの乗降口91,92の旅客車両9の前後方向のサイズは略同一であるため、第1部分画像SP1に示される前乗降口91の像のサイズと、第2部分画像SP2に示される後乗降口92の像のサイズとは略一致することになる。そして、第1部分画像SP1と第2部分画像SP2とで、画像自体のサイズも一致される。
【0106】
次に、物体検出部12は、二つの部分画像SP1,SP2を参照して、前乗降口91及び後乗降口92それぞれの近傍に存在する動く物体(動体:代表的には、旅客)を検出する(ステップS14)。乗降モードM22の場合は、通常、旅客車両9は停止している。このため、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍に物体が存在していない場合は、部分画像SP1,SP2のそれぞれの内容は時間が経過しても略一定となる。しかし、前乗降口91の近傍に動く物体が存在した場合は第1部分画像SP1の内容が時間的に変化し、後乗降口92の近傍に動く物体が存在した場合は第2部分画像SP2の内容が時間的に変化する。物体検出部12は、このような原理を利用して、前乗降口91及び後乗降口92それぞれの近傍に存在する物体を検出する。
【0107】
具体的には、物体検出部12は、前回の処理(図14に示す処理)で取得された第1部分画像SP1と、今回の処理(図14に示す処理)で取得された第1部分画像SP1とを比較し、二つの第1部分画像SP1の相互間において相違する領域を抽出する。そして、この相違する領域の大きさが所定の閾値を超える場合は、物体検出部12は、第1部分画像SP1に物体の像が含まれていると判断する。これにより、物体検出部12は、前乗降口91の近傍に存在する物体を検出する。
【0108】
同様に、物体検出部12は、前回の処理(図14に示す処理)で取得された第2部分画像SP2と、今回の処理(図14に示す処理)で取得された第2部分画像SP2とを比較し、二つの第2部分画像SP2の相互間において相違する領域を抽出する。そして、相違する領域の大きさが所定の閾値を超える場合は、物体検出部12は、第2部分画像SP2に物体の像が含まれていると判断する。これにより、物体検出部12は、後乗降口92の近傍に存在する物体を検出する。
【0109】
このようにして物体検出部12による物体の検出がなされると、次に、表示画像生成部34が表示装置20の表示に用いる表示画像DP22を生成する。この際、表示画像生成部34は、物体が検出された乗降口に対応する部分画像を含む一方で、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像を含まない表示画像DP22を生成する。
【0110】
具体的には、表示画像生成部34は、まず、物体検出部12により物体が検出されたか否かを判断する(ステップS15)。物体検出部12により二つの乗降口91,92のいずれの近傍においても物体が検出されなかった場合は、表示画像生成部34は、二つの部分画像SP1,SP2の双方を含まない表示画像DP22を生成する(ステップS17)。
【0111】
一方、物体検出部12により物体が検出された場合は、表示画像生成部34は、物体が検出された乗降口に対応する部分画像のみを含む表示画像DP22を生成する(ステップS16)。すなわち、前乗降口91の近傍のみで物体が検出された場合は、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1のみを含む表示画像DP22を生成する。また、後乗降口92の近傍のみで物体が検出された場合は、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2のみを含む表示画像DP22を生成する。さらに、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出された場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方を含む表示画像DP22を生成する。換言すれば、表示画像生成部34は、物体の像を含む部分画像のみを含む表示画像DP22を生成することになる。
【0112】
生成された表示画像DP22は、画像出力部42により表示装置20に出力される。これにより、表示装置20においては、物体が検出された乗降口に対応する部分画像のみが表示され、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像は非表示とされることになる(ステップS18)。
【0113】
図16は、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の遷移を示す図である。二つの乗降口91,92の双方の近傍において物体が存在しない場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方が非表示とされる(状態ST11)。
【0114】
この状態ST11において、前乗降口91の近傍において物体が検出されると、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1のみが表示装置20に表示される(状態ST12)。また、状態ST11において、後乗降口92の近傍において物体が検出されると、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2のみが表示装置20に表示される(状態ST13)。また、状態ST11において、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出されると、二つの部分画像SP1,SP2の双方が表示装置20に表示される(状態ST14)。
【0115】
このように、本実施の形態の画像表示システム120においては、物体(代表的には、旅客)が検出された乗降口に対応する部分画像のみが表示装置20に表示される。このため、安全確認が必要な乗降口のみに対して乗務員の注意を向けさせることができる。その結果、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。
【0116】
また、二つの部分画像のそれぞれは、表示装置20の画面上において、部分画像ごとに定められた位置に表示される。すなわち、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1は画面の上側の所定位置、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2は画面の下側の所定位置にそれぞれ配置される。したがって、表示されている部分画像の位置によって、いずれの乗降口に物体(代表的には、旅客)が存在しているかを乗務員が直感的に把握できる。
【0117】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態においては物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像を非表示としていた。これに対して、第2の実施の形態では、物体が検出された乗降口に対応する部分画像と、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像との双方を表示するが、これらを異なる態様で表示するようになっている。第2の実施の形態の画像表示システム120の構成及び処理の流れは第1の実施の形態と略同様であるため、以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0118】
図17は、第2の実施の形態の画像表示システム120の乗降モードM22における処理の流れを示す図である。この図17に示す処理も、所定の周期(例えば、1/30秒周期)で繰り返される。
【0119】
図17に示すステップS21〜S23の処理は、図14に示すステップS11〜S13の処理と同一である。すなわち、画像取得部41がまず、左サイドカメラ52から撮影画像を取得する(ステップS21)。次に、撮影画像切出部31が、この左サイドカメラ52の撮影画像中の領域を切り出して二つの部分画像SP1,SP2を取得する(ステップS22)。次に、部分画像調整部33が、同一サイズの被写体を示す像のサイズが二つの部分画像SP1,SP2で略一致するように、第1部分画像SP1に含まれる被写体の像のサイズを調整する(ステップS23)。
【0120】
次に、表示画像生成部34が表示装置20の表示に用いる表示画像DP22を生成する。この際、表示画像生成部34は、二つの部分画像SP1,SP2の双方を含む表示画像DP22を生成する(ステップS24)。
【0121】
次に、物体検出部12が、二つの部分画像SP1,SP2を参照して、前乗降口91及び後乗降口92それぞれの近傍に存在する動く物体を検出する(ステップS25)。この物体検出部12が物体を検出する手法は、図14のステップS14の手法と同様である。
【0122】
物体検出部12による物体の検出がなされると、次に、表示画像生成部34が物体検出部12により物体が検出されたか否かを判断する(ステップS26)。物体検出部12により二つの乗降口91,92のいずれの近傍においても物体が検出されなかった場合は、表示画像DP22はそのまま画像出力部42から出力され、表示装置20に表示される(ステップS28)。
【0123】
一方、物体検出部12により物体が検出された場合は、表示画像生成部34は、表示画像DP22に含まれる二つの部分画像SP1,SP2のうち、物体が検出された乗降口に対応する部分画像を強調する(ステップS27)。すなわち、前乗降口91の近傍のみで物体が検出された場合は、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1のみを矩形枠で囲って強調する。また、後乗降口92の近傍のみで物体が検出された場合は、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2のみを矩形枠で囲って強調する。さらに、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出された場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方を矩形枠で囲って強調する。換言すれば、表示画像生成部34は、物体の像を含む部分画像のみを矩形枠で囲って強調することになる。
【0124】
このような部分画像の強調がなされた表示画像DP22は、画像出力部42により表示装置20に出力される。これにより、表示装置20においては、物体が検出された乗降口に対応する部分画像が、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像よりも強調して表示されることになる(ステップS28)。
【0125】
図18は、第2の実施の形態の画像表示システム120において、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の遷移を示す図である。
【0126】
二つの乗降口91,92の双方の近傍において物体が存在しない場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方が非強調状態で表示される(状態ST21)。
【0127】
この状態ST21において、前乗降口91の近傍において物体が検出されると、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1のみに矩形枠Frが示され、第1部分画像SP1が第2部分画像SP2よりも強調して表示される(状態ST22)。また、状態ST21において、後乗降口92の近傍において物体が検出されると、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2のみに矩形枠Frが示され、第2部分画像SP2が第1部分画像SP1よりも強調して表示される(状態ST23)。また、状態ST21において、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出されると、二つの部分画像SP1,SP2の双方に矩形枠Frが示される(状態ST24)。
【0128】
このように、第2の実施の形態の画像表示システム120においては、物体(代表的には、旅客)が検出された乗降口に対応する部分画像と、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像とが異なる態様で表示画像DP22に含まれ、この表示画像DP22が表示装置20に表示される。より詳細には、物体が検出された乗降口に対応する部分画像には矩形枠Frが示され、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像よりも強調される。このため、安全確認が必要な乗降口と他の乗降口とを乗務員が容易に区別でき、安全確認が必要な乗降口に対して乗務員の注意を向けさせることができる。その結果、乗務員が旅客の乗降の安全確認を適切に行うことができる。
【0129】
<3.第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、矩形枠Frを示すことで、物体が検出された乗降口に対応する部分画像を物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像よりも強調していた。これに対して第3の実施の形態では、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像を目立たないようにすることで、相対的に、物体が検出された乗降口に対応する部分画像を強調するようにしている。
【0130】
具体的には、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像全体の輝度を低下させることで、当該部分画像を目立たないようにさせる。このような部分画像の輝度の調整は、物体検出部12の検出結果に基づいて、表示画像生成部34によって行われる。
【0131】
図19は、第3の実施の形態の画像表示システム120において、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の遷移を示す図である。
【0132】
二つの乗降口91,92の双方の近傍において物体が存在しない場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方が表示される。ただし、これら二つの部分画像SP1,SP2の双方の輝度は通常よりも低下されている(状態ST31)。
【0133】
この状態ST31において、前乗降口91の近傍において物体が検出されると、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1の輝度は通常の輝度とされるが、第2部分画像SP2の輝度は通常よりも低下された状態とされる(状態ST32)。また、状態ST31において、後乗降口92の近傍において物体が検出されると、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2の輝度は通常の輝度とされるが、第1部分画像SP1の輝度は通常よりも低下された状態とされる(状態ST33)。また、状態ST31において、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出されると、二つの部分画像SP1,SP2の双方が通常の輝度とされる(状態ST34)。
【0134】
このように、第3の実施の形態では、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像の輝度を低下させて当該部分画像を目立たないようにする。これにより、物体が検出された乗降口に対応する部分画像が、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像よりも強調される。このため、安全確認が必要な乗降口と他の乗降口とを乗務員が容易に区別でき、安全確認が必要な乗降口に対して乗務員の注意を向けさせることができる。
【0135】
なお、本実施の形態では、部分画像の輝度を低下させているが、部分画像を目立たないようにするためには別の手法を用いてもよい。例えば、部分画像の彩度を低下させ、通常はカラーの部分画像をモノクロの部分画像に変更するようにしてもよい。
【0136】
また、二つの乗降口91,92の双方の近傍において物体が存在しない場合は二つの部分画像SP1,SP2の双方の輝度を通常の輝度としておき、いずれかの乗降口の近傍において物体が検出されたことに応答して、物体が検出されていない乗降口に対応する部分画像の輝度を低下させるようにしてもよい。
【0137】
<4.第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、物体が検出された乗降口に対応する部分画像の全体を強調していた。これに対して第4の実施の形態では、部分画像の全体ではなく、部分画像に含まれる物体の像のみを強調するようにしている。
【0138】
前述のように、物体検出部12は、時間的に連続する部分画像の相互間において相違する領域を抽出することで物体を検出する。この物体を検出する際に抽出される領域は物体の像が含まれる位置に相当する。このため、本実施の形態では、表示画像生成部34が、部分画像中のこのような物体の像が含まれる位置に矩形枠を示すことで、物体の像を強調する。
【0139】
図20は、第4の実施の形態の画像表示システム120において、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の遷移を示す図である。
【0140】
二つの乗降口91,92の双方の近傍において物体が存在しない場合は、二つの部分画像SP1,SP2の双方が非強調状態で表示される(状態ST41)。
【0141】
この状態ST41において、前乗降口91の近傍において物体が検出されると、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1に含まれるその物体の像に矩形枠Fsが示され、物体の像が強調される(状態ST42)。また、状態ST41において、後乗降口92の近傍において物体が検出されると、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2に含まれるその物体の像に矩形枠Fsが示され、物体の像が強調される(状態ST43)。また、状態ST41において、前乗降口91及び後乗降口92の双方の近傍で物体が検出されると、二つの部分画像SP1,SP2のそれぞれに含まれる物体の像に矩形枠Fsが示され、物体の像が強調される(状態ST44)。
【0142】
このように、第4の実施の形態では、物体が検出された乗降口に対応する部分画像に含まれる物体の像を強調するため、安全確認が必要な物体の位置を乗務員が容易に特定できる。
【0143】
<5.第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、二つの乗降口91,92の旅客車両9の前後方向のサイズは略同一であり、第1部分画像SP1と第2部分画像SP2とは同一のサイズで表示されていた。これに対して、第5の実施の形態では、二つの乗降口91,92の旅客車両9の前後方向のサイズが異なっており、二つの部分画像SP1,SP2はそれぞれ対応する乗降口のサイズに応じたサイズで表示されるようになっている。
【0144】
図21は、第5の実施の形態における前乗降口91及び後乗降口92の旅客車両9における位置を示す図である。第5の実施の形態においては、後乗降口92は前乗降口91よりも広くなっており、後乗降口92の旅客車両9の前後方向のサイズは前乗降口91の約1.5倍となっている。
【0145】
一般に、旅客車両9の周辺において乗降口を利用する旅客が存在する位置は、当該乗降口のサイズに合わせて変化する。すなわち、乗降口のサイズが大きければ旅客は比較的広い範囲に存在し、乗降口のサイズが小さければ旅客は比較的狭い範囲に存在することになる。したがって、乗務員は、比較的広い後乗降口92の近傍のほうが、比較的狭い前乗降口91の近傍よりも広い範囲を対象に安全確認を行う必要がある。
【0146】
このため、第5の実施の形態では、二つの部分画像SP1,SP2が、それぞれ対応する乗降口91,92のサイズに応じたサイズで表示装置20に表示される。図22は、第5の実施の形態において、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の一例を示す図である。図に示すように、後乗降口92に対応する第2部分画像SP2のサイズは、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1よりも大きくなっている。具体的には、第2部分画像SP2の上下方向(旅客車両9の前後方向に対応する方向)のサイズは、第1部分画像SP1の約1.5倍となっている。
【0147】
第5の実施の形態においても、同一サイズの被写体を示す像のサイズが二つの部分画像SP1,SP2で略一致するように、部分画像調整部33が、第1部分画像SP1に含まれる被写体の像のサイズを調整している。したがって、第2部分画像SP2が示す後乗降口92の近傍の領域SA2は、第1部分画像SP1が示す前乗降口91の近傍の領域SA1と比較して広くなる(図21参照。)。
【0148】
このように第5の実施の形態では、二つの部分画像SP1,SP2のそれぞれを対応する乗降口91,92のサイズに応じたサイズで表示するため、乗降口のサイズに応じて必要な範囲に乗務員の注意を向けさせることができる。
【0149】
<6.第6の実施の形態>
次に、第6の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、第1部分画像SP1と第2部分画像SP2とは同一のサイズで表示されていた。これに対して、第6の実施の形態では、対応する乗降口の旅客車両9の運転席からの距離に応じたサイズで部分画像が表示されるようになっている。第6の実施の形態では、二つの乗降口91,92の旅客車両9の前後方向のサイズは略同一である。
【0150】
図2に示すように、前乗降口91は運転席90に比較的近く、後乗降口92は運転席90から比較的遠くなっている。このため、前乗降口91の近傍の領域は運転席90から直接的に確認することが比較的容易であるが、後乗降口92の近傍の領域は運転席90から直接的に確認することは困難である。すなわち、乗降口の旅客車両9の運転席からの距離が離れるほど、当該乗降口の近傍の領域を運転席90から直接的に確認することが難しくなり、死角となりやすくなる。
【0151】
このため、第6の実施の形態では、二つの部分画像SP1,SP2が、それぞれ対応する乗降口91,92の運転席90からの距離に応じたサイズで表示される。具体的には、乗降口の旅客車両9の運転席からの距離が離れるほど、対応する部分画像のサイズが大きくされる。
【0152】
図23は、第6の実施の形態において、乗降モードM22で表示装置20に表示される表示画像DP22の一例を示す図である。図に示すように、運転席90からの距離が比較的遠い後乗降口92に対応する第2部分画像SP2の上下方向(旅客車両9の前後方向に対応する方向)のサイズは、前乗降口91に対応する第1部分画像SP1よりも大きくなっている。
【0153】
このように第6の実施の形態では、二つの部分画像SP1,SP2のそれぞれを対応する乗降口91,92の運転席90からの距離に応じたサイズで表示するため、運転席90から直接的に確認しにくい乗降口の近傍を、乗務員が確認しやすくすることができる。
【0154】
<7.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態で説明した形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0155】
上記実施の形態では、前乗降口91の近傍と後乗降口92の近傍との双方を含む範囲を1度に撮影可能な左サイドカメラ52を設け、この左サイドカメラ52の撮影画像から二つの部分画像を取得していた。これに対して、前乗降口91の近傍のみを撮影する車載カメラと、後乗降口92の近傍のみを撮影する車載カメラとを配置し、それぞれの車載カメラで部分画像を取得するようにしてもよい。すなわち、複数の乗降口の近傍をそれぞれ撮影する複数の車載カメラを設け、これら複数の車載カメラにより複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得するようにしてもよい。ただし、必要な車載カメラの数を減少させるため、上記実施の形態のように、一つの車載カメラで得られた撮影画像から複数の乗降口に対応する複数の部分画像を取得するほうが望ましい。
【0156】
また、上記実施の形態では、物体検出部12が時間的に連続して取得された部分画像同士を比較して部分画像間の相違に基づいて物体を検出していた。これに対して、超音波が物体で反射することを利用して物体を検出するクリアランスソナーなどの物体検出センサを利用して、複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出するようにしてもよい。
【0157】
また、上記実施の形態では、第1部分画像SP1に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを二つの部分画像SP1,SP2で略一致させていた。これに対して、第2部分画像SP2に含まれる被写体の像のサイズを調整してもよく、二つの部分画像SP1,SP2の双方の被写体の像のサイズを調整するようにしてもよい。
【0158】
また、上記実施の形態では、乗降モードM22においては、表示装置20に第1部分画像SP1と第2部分画像SP2とが表示されていたが、旅客車両9をその直上から俯瞰する合成画像である俯瞰画像を併せて表示するようにしてもよい。
【0159】
また、上記実施の形態では、旅客車両としてバスを例に説明を行ったが、路面電車やケーブルカーなど、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であれば、どのような旅客車両であっても上記で説明した技術を適用可能である。
【0160】
また、上記実施の形態では、旅客車両は二つの乗降口を一の側面に備えたものであったが、3以上の乗降口を一の側面に備えた旅客車両であっても、上記で説明した技術を適用可能である。
【0161】
また、上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【符号の説明】
【0162】
11 表示制御部
12 物体検出部
20 表示装置
31 撮影画像切出部
33 部分画像調整部
34 表示画像生成部
41 画像取得部
52 左サイドカメラ
91 前乗降口
92 後乗降口
100 画像処理装置
120 画像表示システム
SP1 部分画像
SP2 部分画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、
前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を表示し、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を非表示とする表示手段と、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項2】
車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、
前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示システムにおいて、
前記取得手段は、前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記複数の部分画像を取得することを特徴とする画像表示システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、
前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、前記複数の部分画像ごとに定められた画面上の位置に表示することを特徴とする画像表示システム。
【請求項5】
請求項2に記載の画像表示システムにおいて、
前記表示手段は、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像よりも強調することを特徴とする画像表示システム。
【請求項6】
請求項2に記載の画像表示システムにおいて、
前記表示手段は、前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像に含まれる前記物体の像を強調することを特徴とする画像表示システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、
前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、対応する前記乗降口のサイズに応じたサイズで表示することを特徴とする画像表示システム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像表示システムにおいて、
前記表示手段は、前記複数の部分画像のそれぞれを、対応する前記乗降口の前記車両の運転席からの距離に応じたサイズで表示することを特徴とする画像表示システム。
【請求項9】
請求項3に記載の画像表示システムにおいて、
前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段、
をさらに備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項10】
車両に搭載され、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示システムであって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段と、
前記複数の部分画像を並べて表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項11】
車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、
前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を含み、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を含まない表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する検出手段と、
前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で含む表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
車両に搭載された表示装置に、前記車両の周辺の画像を出力して表示させる画像処理装置であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する取得手段と、
前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる調整手段と、
前記複数の部分画像を並べて含む表示画像を前記表示装置に出力して表示させる出力手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
(a)前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、
(b)前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する工程と、
(c)前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像を表示し、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像を非表示とする工程と、
を備えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項15】
車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
(a)前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、
(b)前記複数の乗降口それぞれの近傍に存在する物体を検出する工程と、
(c)前記物体が検出された前記乗降口に対応する前記部分画像と、前記物体が検出されていない前記乗降口に対応する前記部分画像とを異なる態様で表示する工程と、
を備えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項16】
車両に搭載された表示装置において、前記車両の周辺の画像を表示する画像表示方法であって、
前記車両は、互いに離間して配置された複数の乗降口を一の側面に有する旅客車両であり、
(a)前記複数の乗降口全ての近傍を含む範囲を撮影可能なカメラで得られた撮影画像から、前記複数の乗降口の近傍を示す領域をそれぞれ切り出すことで、前記車両の周辺における前記複数の乗降口の近傍をそれぞれ示す複数の部分画像を取得する工程と、
(b)前記複数の部分画像の少なくとも一に含まれる被写体の像のサイズを調整して、同一サイズの被写体を示す像のサイズを前記複数の部分画像で略一致させる工程と、
(c)前記複数の部分画像を並べて表示する工程と、
を備えることを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−134825(P2012−134825A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285983(P2010−285983)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】