説明

画像表示装置とその製造方法

【課題】下部電極と上部電極、その間に絶縁体や半導体からなる電子加速層を有し、上部電極から電子を放出する薄膜電子源アレイと蛍光面を有する画像表示装置において、上記上部電極への付着物による仕事関数の増大に金する電子放出特性の低下を抑制する。
【解決手段】薄膜電子源の上部電極成分として8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜、合金膜を用い、上部電極に付着しているS分等の量を、元素換算で、上部電極として用いられている元素総量の20mol%以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係り、特に薄膜電子源を用いた自発光型のフラット・パネル・ディスプレイとも称する画像表示装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
自発光型のフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)の1つとして、微少で集積可能な冷陰極型の薄膜電子源を利用する画像表示装置(フィールド・エミッション・ディスプレイ:FED)が開発されている。この種の画像表示装置の薄膜電子源は、電界放出型電子源とホットエレクトロン型電子源とに分類される。前者には、スピント型電子源、表面伝導型電子源、カーボンナノチューブ型電子源等が属し、後者には金属―絶縁体―金属を積層したMIM(Metal‐Insulator‐Metal)型、金属―絶縁体―半導体を積層したMIS(Metal‐Insulator‐Semiconductor)型、金属―絶縁体―半導体−金属型等の薄膜電子源がある。
【0003】
MIM型の薄膜電子源については、例えば特許文献1〜3に、金属―絶縁体―半導体型についてはMOS型が非特許文献1に、金属―絶縁体―半導体−金属型ではHEED型が非特許文献2などに記載されている。また、EL型が非特許文献3などに記載され、ポーラスシリコン型は非特許文献4などに記載されている。
【特許文献1】特開平7−65710号公報
【特許文献2】特開平10−153979号公報
【特許文献3】特願2003−135268号公報
【非特許文献1】J. Vac. Sci. Techonol. B11(2)p.429−432(1993)
【非特許文献2】high−efficiency−electro−emission device、Jpn、j、Appl、Phys、vol.36、pp.939
【非特許文献3】Electroluminescence、応用物理 第63巻、第6号、592頁
【非特許文献4】応用物理 第66巻、第5号、437頁
【0004】
このような薄膜電子源を複数の行(例えば水平方向)と複数の列(例えば垂直方向)に並べて二次元マトリクスを形成し、各薄膜電子源対応に配列した多数の蛍光体を真空中に配置した蛍光面とで画像表示装置を構成することができる。特に、下部電極と上部電極、その間に電子加速層を設けたホットエレクトロン型の薄膜型電子源はデバイス構造が電界放出型に比べ簡易であり、表示装置への適用が期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薄膜電子源を、複数の行(例えば、水平方向)と複数の列(例えば、垂直方向)に並べてマトリクスを形成し、各電子源対応に配列した多数の蛍光体を真空中に配置して画像表示装置を構成することができる。しかしながら、この様な冷陰極型の薄膜電子源は、熱陰極型と比べ低温で動作させるため電子放出部の表面がガス吸着などの汚染の影響を受けやすい。
【0006】
電子源アレイを作成する際に、レジスト、剥離、エッチング等の工程を用いるのが一般的であるが、これらの工程において用いるガス及び液剤等にS,Cl,F,N分や炭素分等が含まれていると、電子放出面に付着してしまう場合がある。この場合、上部電極から蛍光体への電子放出の妨げとなり、画像が暗くなってしまう等の不具合が生じる。
【0007】
更に、電子源アレイと蛍光面基板を貼り合せるガラス封着工程では、フリットガラスや蛍光面等のペースト中に用いているバインダや溶剤等の有機物が燃焼飛散し、電子放出部に吸着して電子放出が得られなくなる場合もある。
【0008】
この問題を解決するには、上部電極にS(硫黄),Cl(塩素),F(フッ素),N(窒素)分やC(炭素)分の付着、あるいはNH3やアミン類、NOX、CH、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、ルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物等で電子放出面が汚染されないようにする必要がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、これら付着物による汚染を抑制することで上部電極からのホットエレクトロン放出を容易とする薄膜電子源を備えた画像表示装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、下部電極と上部電極、その間に絶縁体や半導体からなる電子加速層(所謂、トンネル層)を有し、上部電極から電子を放出する薄膜電子源アレイ(二次元マトリクス配列アレイ)と蛍光面を有する。そして、前記上部電極の形成材料として、周期律表の8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜もしくは合金膜を用い、その表面の仕事関数を4.30eV以下とした。
【0011】
冷陰極型の薄膜電子源の電子放出特性は、上部電極表面の仕事関数により影響される。仕事関数が低い方が高い電流密度を取り出すことができる。一方、S元素は電気陰性度が2.5と高く(化学便覧基礎編II、日本化学会編、丸善)、上部電極に硫黄(S)
分が付着した場合、上部電極の仕事関数を下げる為、電子源の電子放出特性が低下すると考えられる。本発明は、前記表面の仕事関数を4.30eV以下とするため、前記上部電極に付着しているS分の量を元素換算で、上部電極として用いられている元素総量の20mol%以下とした。
【0012】
付着するS分としてはS、SO2、SO3、SO4、H2S等が考えられる。特にSO3、SO4は上部電極として8族に属する元素、例えば白金(Pt)等を用いた場合にPtに付着しやすく、電子放出特性の低下につながる。
【0013】
S分の低減方法としては、上部電極へのS分付着量を低減できれば特に拘らない。S分の発生源としては、レジスト剤の含有成分の残渣やドライエッチング時のSF6が分解生成したもの等が考えられる。従って、レジストの残渣を除去する、エッチングガスとしてSF6を含まないCF4等にする等の方策により上部電極に付着するS分の量を低減させることができる。また、電子源アレイをAir(空気)やH2(水素ガス)に接触させながら熱処理する等の方法により付着したS分を低減することもできる。H2に接触させながら熱処理を行った場合、上部電極に付着したS分はSO2、SO3、H2S等のガスとなり、上部電極から除去されると考えられる。また、S分が炭素及び炭化水素とともに上部電極に付着している場合がある。この場合、Air(空気)を流通させながら熱処理を行うことでAir中に含まれる酸素により、炭素及び炭化水素がCOまたはCO2となり除去される為、S分も同時にSO2、SO3等のガスになって除去されると考えられる。この場合、熱処理温度として200℃以上が好ましく、350℃以上であれば更に好適である。熱処理温度が350℃以上の場合、H2及びAir中の酸素がS分、炭素及び炭化水素と反応しやすくなる為と考えられる。この上限温度は、上部電極の溶解温度以下で制限される
【0014】
上部電極に付着しているS分の量が元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の10mol%以下であると更に好適である。S分の量を10mol%以下に設定するとS分付着量に対する仕事関数の変動が小さくなり、仕事関数を低く保つ事ができる。
【0015】
更に、例えばエッチングレートを高める為にSF6を使用しなければならない等の理由により、上部電極からS分を完全には除去できない場合がある。その場合、上部電極に付着しているS分の量が元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の0.1mol%以上であっても特に不具合は生じない。即ち、上部電極に付着しているS分の量が元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の0.1mol%以上10mol%以下であれば上部電極の仕事関数は低く、高い電流密度を取り出すことができる。
【0016】
S分付着量に加えて更に、上部電極に付着している塩素(Cl)分の量が元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の10mol%以下であると更に良い。S元素と同様、Cl元素も電気陰性度が3.0と高く(化学便覧基礎編II、日本化学会編
、丸善)、Cl分が上部電極に付着した場合、上部電極表面の仕事関数を下げてしまい電子源の電子放出特性が低下する。付着するCl分としてはHCl、Cl2等が考えられる。HCl、Cl2は上部電極として8族に属する元素を用いた場合に付着しやすく、電子放出特性の低下につながる。
【0017】
特に、HClは腐食性の強いガスであるために、ガラス成分と結合して塩化物を形成し、その塩化物が蒸散して上部電極または配線部分に付着する場合も考えられる。Cl分の低減方法は上部電極へのCl分付着量が低減できれば特に拘らない。例えば、電子源アレイを空気(Air)や水素ガス(H2)に接触させながら熱処理する等の方法により付着したCl分を低減することができる。
【0018】
また、上部電極に付着しているフッ素(F)分の量が元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の3mol%以下であると更に良い。S元素やCl元素と同様に、F元素も電気陰性度が4.0と高く(化学便覧基礎編II、日本化学会編、丸善)、
F分が上部電極に付着した場合、上部電極表面の仕事関数を下げてしまい電子源の電子放出特性が低下する。付着するF分としてはCF4、SF6、SOF2等が考えられる。F源としてはドライエッチング時に使用するSF6、CF4等の残渣が考えられる。これらエッチングガスの使用量を低減させる、または電子源アレイをAirやH2に接触させながら熱処理する等の方法により付着したF分を低減することができる。
【0019】
さらに、前記上部電極に付着しているNH3及びアミン類の総量が窒素元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の30mol%以下であると更に良い。NH3もしくはアミン類は、S,Cl,F分と比較すると、上部電極表面の仕事関数低下への影響は小さい。しかしNH3もしくはアミン類は上部電極として用いられている8族またはIb族に属する元素に付着しやすい。そのため、やはり電子源の電子放出特性を低下させる要因となり得る。アミン類としては第一級アミン(RNH2、R:アルキル基)、第二級アミン(R2NH)、第三級アミン(R3N)のいずれも含む。また、アルキルアミンやアリールアミン等のアミノ基を有する全ての化合物を含む。
【0020】
NH3もしくはアミン類の低減方法は上部電極への付着量が低減できれば特に拘らない。NH3もしくはアミン類の発生源としては、レジストの剥離液等の残渣等がある。従って、剥離後の洗浄を十分に行うことでNH3もしくはアミン類の付着を抑制することができる。更に、上部電極へのNH3もしくはアミン類吸着力はS,Cl,F等と比較すると弱いので、電子源アレイを熱処理する等の方法により除去できると考えられる。
【0021】
また、上部電極に付着しているNOxの総量が前記上部電極として用いられている元素総量の20mol%以下であると更に良い。NOxは、上部電極として用いられている8族またはIb族に属する元素に付着すると、上部電極表面の仕事関数を低下させる。そのため、電子源の電子放出特性を低下させる要因となり得る。NOxとしてはNO,NO2,N2O,N2O3等、N−O結合を有する化合物を全て含む。
【0022】
NOxの低減方法は上部電極へのNOx付着量が低減できれば特に拘らない。NOxの発生源としては、エッチング液の残渣等が考えられる。従って、エッチング工程後の洗浄を十分に行うことでNOxの付着を抑制することができる。また、電子源アレイをAir、H2およびCOに接触させながら熱処理する等の方法により付着したS分を低減することもできる。
【0023】
さらに、上部電極に付着している炭素及び炭化水素の総量が炭素元素換算で、前記上部電極として用いられている元素総量の30mol%以下であると更に良い。炭素及び炭化水素は上部電極として8族に属する元素を用いた場合に付着しやすく、電子放出特性の低下要因となり得る。炭化水素としてはC−H結合を有する全ての化合物が対象となる。CxHyで表される炭化水素及びアルコール類も含まれる。
【0024】
電子源アレイと蛍光面基板を貼り合せるガラス封着工程では、フリットガラスや蛍光面等のペースト中に用いているバインダや溶剤等の有機物が燃焼飛散し、電子放出部に吸着して電子放出が得られなくなる場合もある。従ってこの場合、パネル内にO2を流通させながら熱処理を行う等の方法により炭素及び炭化水素の量を減らすことができる。
【0025】
冷陰極型の電子源の電子放出特性は表面の仕事関数により影響され、仕事関数が低い方が高い電流密度を取り出すことができる。従って、上部電極の仕事関数を下げることで電子放出特性を増加させることができる。具体的には、電気陰性度の低いアルカリ金属またはアルカリ金属化合物を上部電極中に含有させることで上部電極の仕事関数を低下させることができる。この手法によりS、Cl,F等の電気陰性度の高い元素を含有する化合物が少量付着しても、仕事関数の大幅な増加を抑制することができる。
【0026】
さらに、アルカリ金属またはアルカリ金属化合物を上部電極に含ませることで、ダイオード電流が低い閾値電圧で立ち上がり、駆動電圧を下げることができるため、消費電力の低減、電子源の長寿命化につながる。
【0027】
アルカリ金属、またはアルカリ金属化合物としてはアルカリ金属単体以外に、酸化物、炭酸塩、水酸化物、リン酸塩等、アルカリ金属元素が含まれていれば良い。考えられるアルカリ金属としてはLi,Na,K,Rb,Cs,Frが挙げられるが、性能、コスト及び原料の扱いやすさ等からKまたはCsが好適である。
【0028】
アルカリ金属またはアルカリ金属化合物の添加法は、塗布法、含浸法、蒸着法等の物理的調製方法や化学反応を利用した調製方法等いずれも適用可能である。出発原料としては、硝酸化合物、酢酸化合物、錯体化合物、水酸化物、炭酸化合物、有機化合物などの種々の化合物や金属及び金属化合物を用いることができる。
【0029】
また、アルカリ金属またはアルカリ金属化合物の添加量は、金属元素換算で、上部電極に使用されている8族またはIb族に属する元素総量に対して、0.5mol%以上50mol%以下とすることが望ましい。0.5mol%以下では添加効果が表れず、50mol%以上だとアルカリ金属またはアルカリ金属化合物によるホットエレクトロンの散乱が生じてしまい、電子放出特性が低下する。
【0030】
アルカリ金属土類またはアルカリ土類金属化合物も電気陰性度が低く、上部電極中に含有させることで上部電極の仕事関数を低下させることができる。アルカリ金属またはアルカリ金属化合物の場合と同様、この手法によりS,Cl,F等の電気陰性度の高い元素を含有する化合物が少量付着しても、仕事関数の大幅な増加を抑制することができる。
【0031】
さらに、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属化合物を上部電極に含ませることで、ダイオード電流が低い閾値電圧で立ち上がり、駆動電圧を下げる事ができるため、消費電力の低減、電子源の長寿命化につながる。
【0032】
アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属単体以外に、酸化物、炭酸塩、水酸化物、リン酸塩等、アルカリ土類金属元素が含まれていれば良い。考えられるアルカリ土類金属元素としてはBe,Mg,Ca,Sr,Baが考えられる。
【0033】
アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属化合物の添加法は、塗布法、含浸法、蒸着法等の物理的調製方法や化学反応を利用した調製方法等いずれも適用可能である。出発原料としては、硝酸化合物、酢酸化合物、錯体化合物、水酸化物、炭酸化合物、有機化合物などの種々の化合物や金属及び金属化合物を用いることができる。
またアルカリ土類金属またはアルカリ土類金属化合物の添加量は、金属元素換算で、上部電極に使用されている8族またはIb族に属する元素総量に対して、0.5mol%以上50mol%以下とすることが望ましい。0.5mol%以下の場合、添加効果が表れず、50mol%以上だとアルカリ土類金属またはアルカリ土類金属化合物によるホットエレクトロンの散乱が生じてしまい、電子放出特性が低下する。
【0034】
上部電極成分として用いられている8族またはIb族の元素が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と金属間化合物または合金、または複合化合物を形成させるようにすると、電子源の電子放出特性の低下が小さい。この理由は明らかでないが、上記金属間化合物または合金、または複合化合物を形成することで、S,Cl,F,NH3,アミン類,NOx、炭素及び炭化水素等の付着が抑制されたものと考えられる。8族またはIb族の元素と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属間化合物または合金、または複合化合物を形成させる為には各元素の原料及び熱処理温度、熱処理雰囲気を変化させる事で形成させることができる。
【0035】
上部電極成分として用いられている8族またはIb族の元素としてIr及びPt及びAuが含まれていると電子源の電子放出特性が良好になる。Auは表面に付着物が付着しにくく、付着物による電子放出特性の低下を抑制できる。Ptはホットエレクトロンの透過率が高い為、電子放出特性が良く、更に高融点である為、熱に対する安定性も良い。Irも高融点である為、熱に対する安定性が高いという長所がある。従って、上部電極を積層構造とする場合、Irを最も下部に設置し、その上にPt、さらにその上にAuを配置することで、耐熱性が高く、付着物による電子放出特性の低下が生じにくい電子源を構成することができる。
【0036】
上部電極の平均膜厚あるいは平均粒径が4nm以下であると電子源の電子放出特性が良好になる。4nm以上になるとホットエレクトロンが上部電極を透過しづらくなり、電子放出特性が低下する為と考えられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、上部電極への付着物による仕事関数の増加を抑制でき、電子源の電子放出特性の低下を小さくすることで高輝度の画像表示を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。ここではMIM型の薄膜電子源を用いた画像表示装置を例として説明する。しかし、本発明は、MIM型の薄膜電子源に限るものではなく、背景技術の欄で説明した各種の電子放出素子を用いた画像表示装置にも同様に適用できる。
【0039】
本発明は、下部電極と上部電極、その間に絶縁体や半導体からなる電子加速層を有し、上部電極から電子を放出する電子源アレイと蛍光面を有する画像表示装置であって、更に該電子源アレイの上部電極成分として、8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜、合金膜を含む。そして、本発明は、前記上部電極の表面の仕事関数を4.30eV以下とする点に特徴を有するが、上部電極の表面の仕事関数を下げる典型的なものとしてはSがあり、このS分の量を元素換算で、上部電極として用いられている元素総量の20mol%以下とする。他の付着物については実施例の項で順次説明する。
【0040】
図1は、本発明に係る画像表示装置をMIM型の薄膜電子源を用いた表示装置を例として説明する模式平面図である。なお、図1では、薄膜電子源を有する基板(電子源アレイ基板、陰極基板、あるいは単に基板とも言う)10の平面を示し、蛍光体や陽極を形成した他方の基板(蛍光体基板、陽極基板)は、図示を省略している。
【0041】
電子源アレイ基板10には、信号線駆動回路50に接続する信号線(データ線)を構成する下部電極11、電子放出電極となる上部電極13、走査線駆動回路60に接続して信号線と直交配置された走査電極(上部電極への給電電極)16、走査電極の一部で上部電極を接続するためのコンタクト部17、上部電極13を各走査電極毎に分離するための段差構造18、その他の後述する機能膜等が形成されている。なお、薄膜電子源アレイ(電子放出部)は、下部電極11上の走査電極16間に配置され、絶縁層12を介して下部電極11に積層する上部電極13で形成され、電子放出部を制限する厚い保護絶縁層(フィールド絶縁層)14で囲まれた薄層部分で形成される絶縁層(トンネル絶縁層)12の部分から電子が放出される。
【0042】
なお、図示しない蛍光面基板の内面には、表示画像のコントラストを上げるための遮光層すなわちブラックマトリクス、赤色蛍光体、緑色蛍光体と青色蛍光体を典型とする複数色の蛍光体群を配列した蛍光面が形成されている。蛍光体としては、例えば、赤色にY22S:Eu(P22−R)、緑色にZnS:CuAl(P22−G)、青色にZnS:AgCl(P22−B)を用いることができる。陰極基板10と蛍光面基板とはスペーサ30で所定の間隔で保持され、表示領域の外周に図示しない封止枠を介在させて封着した後、内部が真空封止される。
【0043】
スペーサ30は、陰極基板10の走査電極16上に配置し、蛍光面基板のブラックマトリクスの下に隠れるように配置する。下部電極11は信号線駆動回路50へ接続し、走査電極配線である走査電極16は走査線駆動回路60に接続する。フルカラー表示の1画素(カラーピクセル)を構成する薄膜電子源のそれぞれは、前記の蛍光体のそれぞれに対応した単位画素(カラー表示の副画素:サブピクセル)を構成する。
【0044】
次に、図1に示した陰極基板における薄膜電子源の製造方法の一例を、図面を参照して説明する。図2〜図14は本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する平面図とその要部断面図である。先ず、図2に示したように、ガラス等の絶縁性の基板10上に下部電極11用の金属膜を成膜する。下部電極11の材料としてアルミニウム(Al)合金を用いる。Al合金を用いるのは、陽極酸化により良質の絶縁膜を形成できるからである。ここでは、ネオジム(Nd)を2原子量%ドープしたAl−Nd合金を用いた。成膜には、例えば、スパッタリング法を用いる。膜厚は600nmとした。
【0045】
下部電極11用の金属膜の成膜後、パターニング工程、エッチング工程によりストライプ形状の下部電極11を形成する(図3)。下部電極11の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、そのサブピクセルのピッチ程度、大体100〜200ミクロン(μm)程度とする。エッチングは、例えば、燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる。この電極は幅の広い簡易なストライプ構造のため、レジストのパターニングは安価なプロキシミティ露光や、印刷法などで行うことができる。
【0046】
次に、電子放出部を制限し、下部電極11のエッジへの電界集中を防止する保護絶縁層14と、絶縁層12を形成する。まず、図4に示した下部電極11上の電子放出部となる部分をレジスト膜25でマスクし、その他の部分を選択的に厚く陽極酸化して保護絶縁層14とする。化成電圧を200Vとすれば、厚さ約270nmの保護絶縁層14が形成される。その後、レジスト膜25を除去して残りの下部電極11の表面を陽極酸化する。例えば、化成電圧を6Vとすれば、下部電極11上に厚さ約10nmの絶縁層(トンネル絶縁層)12が形成される(図5)。
【0047】
次に、第1の層間膜(層間絶縁膜)15と、走査電極の下で段差18(図1、後述の図12参照)を形成するための第2の層間膜19をスパッタ法で連続成膜する(図6)。第1の層間膜15としては、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化膜などを用いることができる。ここでは、ArとN2雰囲気中で反応性スパッタにより成膜したシリコン窒化膜を用い膜厚は200nmとした。この第1の層間膜15は、陽極酸化で形成する保護絶縁層14にピンホールがあった場合、その欠陥を埋め、下部電極11と走査電極16間の絶縁を保つ役割を果たす。第2の層間膜19としては、第1の層間膜15に対し例えばF系ガスを用いたドライエッチングで高い選択比でエッチングできる材料、例えば第1の層間膜15がシリコン酸化物の場合はシリコン窒化物(SiN)、例えば第1の層間膜15がシリコン窒化物の場合はシリコン(Si)等を用いる。ここでは、ノンドープSiや、BやP等をドープしたSiターゲットを用い、Ar雰囲気中でスパッタ成膜した。厚さを200nmとした。スパッタで形成したSiは非常に高抵抗の半絶縁材料として用いることが可能である。
【0048】
続いて、走査電極材料となるAl膜を4.5μmの厚さでスパッタ成膜し(図7)、ホトエッチング工程により、下部電極11とはする走査電極16を形成した。エッチングは例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる(図8)。
【0049】
続いて、ドライエッチングを用いて、第2の層間膜19と第1の層間膜15を保護絶縁膜14上で選択的にエッチングし、コンタクト部17の下地となる部分を開口する(図9)。ドライエッチングは、CF4とO2の混合ガス、またはSF6とO2の混合ガスにより行った(ドライエッチング工程A)。
【0050】
続いて、走査電極16の一部としてコンタクト部となるAl‐Nd膜を600nmの厚さでスパッタ成膜し(図10)、ホトエッチング工程により、下部電極11とは直交し、電子放出部側の端面が第1の層間膜15と第2の層間膜19を開口している部分に至り、反対側の端面が走査電極16上に位置するように加工する。このエッチングは例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる(図11)。
【0051】
続いて、ドライエッチングにより第2の層間膜19のSiを第1の層間膜15のSiNに対し高い選択比でエッチングし、走査電極16の電子放出部とは反対側の端面の下に段差18を形成する(図12)。このドライエッチングは、CF4とO2の混合ガス、またはSF6とO2の混合ガスにより行った(ドライエッチング工程B)。これらのガスはSiとSiNをともにエッチングするが、O2の比率を最適化することにより、Siのエッチング選択比を高めることができる。
【0052】
続いて、ホトレジストを用い、電子放出部上の第1の層間膜15を加工し、電子放出部を開口する。このエッチングは、例えばCF4やSF6を主成分とするエッチング剤を用いたドライエッチングによって行うことができる(ドライエッチング工程C)(図13)。
【0053】
次に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の無機塩及び有機塩の水溶液を塗布、乾燥させる。アルカリ金属としてはCs,Rb,L,Na,Liが有効である。アルカリ土類金属としてはMg,Ca,Sr,Ba等を用いることができる。塩としてはリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、塩化物、水酸化物等が適用できる。
【0054】
次に、上部電極13膜の成膜を行う。この成膜法は、例えばスパッタ成膜を用いる。上部電極13としては、例えばIr、Pt、Auの積層膜を用い、膜厚は例えば3nmとする(図14)。
【0055】
以上の工程により、走査電極16の片側側面に上部電極13を切断するための段差18を有し、走査電極16のもう一方の側面は上部電極13を接続するためコンタクト部17を設けた電子源アレイを作成することができる。なお、外側の2本の走査電極については、図9、図11、図12の工程でレジストパターンを変えることにより、段差18を設けず、両側にコンタクト部17を作成する。
【0056】
更に、画像表示装置を構成する陰極基板と蛍光面基板はスペーサと枠部材を介し、ガラスフリットを用いて350〜450℃の高温プロセスにより焼成、封着される。この際、上記の無機塩は酸化し、かつ上部電極中に混合、上部電極材料と合金相を有する一部は合金化し、アルカリ金属、遷移金属がドープされた状態になる。例えば、炭酸Csで処理した場合は、炭酸が分解、酸化して酸化Csとなり、その一部はAuと反応してAuCsやAu5Cs等の金属間化合物を形成する。この際、炭酸の分解には白金族のIrやPtが触媒として作用し、分解を促進する効果があると考えられる。
【0057】
以下、本発明の画像表示装置の薄膜電子源の形成プロセスを実施例により具体的に説明する。
【実施例1】
【0058】
上記した薄膜電子源アレイの製作時に、前記のドライエッチング工程の工程A、工程B及び工程CにおいてCF4ガスを使用し、使用したレジストにSを含まないものを用いた、実施例1の画像表示装置を作成した。上記電子源アレイ基板の対角線の長さは、公称17インチとした。上部電極の成膜前に、炭酸K水溶液を基板に塗布することにより、金属元素換算で2.5μmolのKを基板に添加し、乾燥させ、次いで上部電極として金属元素換算で3.4μmolのIr、10.5μmolのPt、9.4μmolのAuを順に積層させたものを用いた。
【実施例2】
【0059】
レジストにS分が含有されているものを用いたこと以外は実施例1と同様の電子源アレイを用いた画像表示装置の薄膜電子源を製作した。
【実施例3】
【0060】
前記のドライエッチング工程の工程A、及び工程Bにおいて、SF6ガスを使用したこと以外は実施例2と同様の手法で画像表示装置の薄膜電子源を作成した。更にこの画像表示パネル内にAirを1L(リットル)/minで流通させながら440℃×1h(時間)の処理を行った。
【実施例4】
【0061】
実施例3において、Airの代わりに3%H2−Arを1L/minで流通させること以外は同様の手順で作成した。
【0062】
次に、本発明の効果を明確にするための比較例を説明する。
【比較例1】
【0063】
実施例3において、Air流通による熱処理を行わなかった画像表示装置の比較例1を作成した。
【比較例2】
【0064】
比較例1の画像表示装置のパネル内に20ppmSO2‐N2ガスを1L/minで30L流通させた。
【比較例3】
【0065】
比較例1の画像表示装置のパネル内に20ppmSO2‐N2ガスを1L/minで60L流通させた。
【比較例4】
【0066】
比較例1の画像表示装置のパネル内に20ppmSO2‐N2ガスを1L/minで90L流通させた。
【0067】
表1に実施例1〜4、比較例1〜5をまとめて示す。
【表1】

【0068】
次に、本発明の薄膜電子源を製造するに当たって製造試験を行った。以下、この試験で製造した試験例の薄膜電子源と、新たな実施例の薄膜電子源とを評価した結果について説明する。
【試験例1】
【0069】
画像表示装置の電子源アレイ部から1cm×1cmの大きさに基板を切出した。この基板に対しXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)測定を実施した。1486.6eVのエネルギーを有するX線を照射し、Sの2p軌道に起因するピークの存在範囲(157eV〜177eV)、Ir,Pt,Auの4f軌道に起因するピークの存在範囲(55eV〜95eV)をスキャンした。Sに起因する全てのピークの面積の和及びIr,Pt,Auに起因する全てのピークの面積の和を求めて、それぞれ感度因子を掛けることにより金属元素換算でIr+Pt+Au量に対するS量のmol比を見積もった。
【0070】
更に、cut offエネルギーを測定することで上部電極表面の仕事関数を評価した。仕事関数の測定の際には−10eVのオフセットをかけているため、仕事関数は式(1)で求められる。
仕事関数(eV)=1486.6−(cutoffエネルギー+10)・・・(1)
【0071】
上記方法でIr+Pt+Au量に対するS量のmol比及び仕事関数を評価する試験を試験例1とする。試験例1により実施例1〜4、比較例1〜5を評価した結果を図15に示す。図15に示されたように、Ir+Pt+Au量に対するS量が20mol%以下の場合、仕事関数が4.30eV以下となり、電子源の電子放出特性が高まることが分かる。
【0072】
Kを添加しなかった事以外は実施例2と同様の作成法により作成した画像表示装置の実施例5を作成した。同様に、Kの代わりにNa,Cs,Sr,Baを添加した事以外は実施例2と同様の手法により作成した画像表示装置の実施例6,7,8,9を作成した。
【0073】
実施例5〜9を試験例1により評価した結果を図16に示す。各実施例ともにIr+Pt+Au量に対するS量は元素換算で3mol%〜5mol%であった。図16から分かるように、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含まない実施例5でも仕事関数は4.30eVで十分低いが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を添加した実施例6〜9は仕事関数が実施例5よりも更に低く、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の添加により電子源の電子放出特性が高まることが分かる。
【試験例2】
【0074】
Sの2p軌道に起因するピークの代わりにClの2p軌道に起因するピークの存在範囲(190eV〜210eV)をスキャンしたこと以外は試験例1と同様の評価を行い、Ir+Pt+Au量に対するCl量のmol比及び、仕事関数を評価した試験を試験例2とした。
【0075】
実施例2の画像表示装置のパネル内に5ppmHCl−N2ガスを1L/minで20L及び40L流通させ、実施例10−1、実施例10−2とした。このようにして得られた画像表示装置の薄膜電子源アレイ部を試験例2にて評価を行った。図17にその結果を示す。図17から明らかなように、Ir+Pt+Au量に対するCl量のmol比が10mol%を超えると仕事関数の急激な増加が生じる。従って、Ir+Pt+Au量に対するCl量が10mol%以下の場合、仕事関数が低く保たれ、電子源の電子放出特性が高く維持できる。
【試験例3】
【0076】
Sの2p軌道に起因するピークの代わりにFの1s軌道に起因するピークの存在範囲(675eV〜695eV)をスキャンしたこと以外は試験例1と同様の評価を行い、Ir+Pt+Au量に対するF量のmol比及び、仕事関数を評価する試験を試験例3とした。
【0077】
実施例2作成時のドライエッチング工程A及びBにてドライエッチング時間を長くしたこと以外は同様の作成法により作成した画像表示装置の実施例11−1、実施例11−2、実施例11−3を作成した。このようにして得られた画像表示装置の電子源アレイ部を試験例3にて評価を行った。図18に結果を示す。ドライエッチング時間を長くするとF分の残留量が多くなる。図18から明らかなように、Ir+Pt+Au量に対するF量のmol比が3mol%を超えると仕事関数の急激な増加が生じる。従って、Ir+Pt+Au量に対するF量が3mol%以下の場合、仕事関数が低く保たれ、電子源の電子放出特性が高く維持できる。
【試験例4】
【0078】
Sの2p軌道に起因するピークの代わりにNの1s軌道に起因するピークの存在範囲(390eV〜410eV)をスキャンした事以外は試験例1と同様の評価を行い、N−C結合に起因するピーク(401eV付近)、−NH−,N=C結合に起因するピーク(399eV付近)の面積に感度係数を掛けてIr+Pt+Au量に対するNH3、アミン類の総量のmol比及び、仕事関数を評価した試験を試験例4とした。
【0079】
実施例2の画像表示装置のパネル内にAirを1L/minで流通させながら440℃で30min及び1hの処理を行ったものを実施例12−1、実施例12−2とした。一方、実施例2の画像表示装置のパネル内に25ppmNH3−N2ガスをそれぞれ40L、60L流通させ、これらを実施例12−3、実施例12−4とした。このようにして得られた画像表示装置の薄膜電子源アレイ部を試験例4にて評価を行った。図19にその評価結果を示す。図19から明らかなように、Ir+Pt+Au量に対するNH3及びアミン類の総量のmol比が30mol%を超えると仕事関数の増加が生じる。従って、Ir+Pt+Au量に対するNH3及びアミン類の総量が30mol%以下の場合、仕事関数が低く保たれ、薄膜電子源の電子放出特性が高く維持できる。
【試験例5】
【0080】
Sの2p軌道に起因するピークの代わりにNの1s軌道に起因するピークの存在範囲(390eV〜410eV)をスキャンしたこと以外は試験例1と同様の評価を行い、N−O結合に起因するピーク(402eV付近)の面積に感度係数を掛けてIr+Pt+Au量に対するNOxの総量のmol比及び、仕事関数を評価した試験を試験例5とした。
【0081】
実施例2の画像表示装置のパネル内に25ppmNO−N2ガスを室温で1L/minで流通させながらそれぞれ20L、40L、60L流通させ、実施例13−1、実施例13−2、実施例13−3を作成した。
【0082】
このようにして得られた画像表示装置の薄膜電子源アレイ部を試験例5にて評価を行った。図20にその評価結果を示す。図20から明らかなように、Ir+Pt+Au量に対するNOxの総量のmol比が20mol%を超えると仕事関数の増加が生じる。従って、Ir+Pt+Au量に対するNOxの総量が20mol%以下の場合、仕事関数が低く保たれ、電子源の電子放出特性が高く維持できる。
【試験例6】
【0083】
画像表示装置の薄膜電子源アレイ部から1cm×1cmの大きさに基板を切出した。この基板を真空容器の中に入れ、容器内の圧力を1.0×10-9Torr以下に設定し、その後容器内にて基板の温度を50℃から600℃まで昇温させた。このときに基板から脱離してくるガスを質量分析計にて検出し、基板表面に付着している炭化水素量を見積もった。上記方法で基板に付着している炭化水素の量を評価する試験を試験例6とした。
【0084】
実施例2の画像表示装置のパネル内にAirを1L/minで流通させながら440℃で30min及び1hの処理を行った実施例14−1、実施例14−2を作成した。一方、実施例2の画像表示装置のパネル内に25ppmC36−N2ガスを40L流通させ、実施例14−3を作成した。このようにして得られた画像表示装置の薄膜電子源アレイ部を試験例6にて評価を行った。また、各基板の仕事関数は試験例1に基づいて行った。図21にその評価結果を示す。図21から明らかなように、Ir+Pt+Au量に対する炭化水素量が炭素原子換算でmol比が30mol%を超えると仕事関数の増加が生じる。従って、Ir+Pt+Au量に対する炭化水素量が炭素原子換算で総量が30mol%以下の場合、仕事関数が低く保たれ、電子源の電子放出特性が高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のMIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置を例とした模式平面図である。
【図2】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図である。
【図3】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図2に続く図である。
【図4】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図3に続く図である。
【図5】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図4に続く図である。
【図6】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図5に続く図である。
【図7】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図6に続く図である。
【図8】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図7に続く図である。
【図9】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図8に続く図である。
【図10】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図9に続く図である。
【図11】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図10に続く図である。
【図12】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図11に続く図である。
【図13】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図12に続く図である。
【図14】本発明の薄膜型電子源の製法を示す図13に続く図である。
【図15】仕事関数に対するS量とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【図16】仕事関数に対する電子源へのアルカリ金属及びアルカリ土類金属添加の影響を示した図である。
【図17】仕事関数に対するCl量とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【図18】仕事関数に対するF量とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【図19】仕事関数に対するNH3+アミン類量とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【図20】仕事関数に対するNOx量とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【図21】仕事関数に対する炭化水素量(炭素原子換算)とIr+Pt+Au量のモル比の影響を示した図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・薄膜電子源アレイ基板、11・・・下部電極、12・・・絶縁層(トンネル絶縁層)、13・・・上部電極、14・・・保護絶縁層、15・・・第1の層間膜、16・・・走査電極、17・・・コンタクト部、18・・・段差、19・・・第2の層間膜、25・・・レジスト膜、30・・・スペーサ、50・・・信号線駆動回路、60・・・走査線駆動回路、110・・・蛍光面基板、120・・・ブラックマトリクス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元配列された複数の薄膜電子源および、前記薄膜電子源のそれぞれに対応して配列された複数色の蛍光体からなる蛍光面を有し、前記薄膜電子源から放出される電子で前記蛍光体を励起発光させて画像を表示する画像表示装置であって、
前記薄膜電子源アレイは、下部電極と上部電極および該下部電極と該上部電極の間に挟持される電子加速層で構成され、前記上部電極から電子を放出する複数の薄膜電子源からなり、
前記上部電極の形成材料が、周期律表の8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜もしくは合金膜からなり、
前記上部電極は、その表面に付着しているS分の量が、元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の20mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記上部電極の表面に付着しているS分の量が、元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の10mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記上部電極の表面に付着しているS分の量が元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の0.1mol%以上10mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、
前記上部電極の表面に付着しているCl分の量が元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の10mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、
前記上部電極の表面に付着しているF分の量が元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の3mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、
前記上部電極の表面に付着しているNH3及びアミン類の総量が窒素元素換算で、当該上部電極の前記形成材料の元素総量の30mol%以下であることを特徴とする画像表示装置
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、
前記上部電極の表面に付着しているNOxの総量が当該上部電極の前記形成材料の元素総量の20mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、
前記上部電極に付着している炭素及び炭化水素の総量が炭素元素換算で、前記上部電極の前記形成材料の元素総量の30mol%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかにおいて、
前記上部電極がアルカリ金属、またはアルカリ金属化合物を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかにおいて、
前記上部電極がアルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
二次元配列された複数の薄膜電子源および、前記薄膜電子源のそれぞれに対応して配列された複数色の蛍光体からなる蛍光面を有し、
前記薄膜電子源アレイは、下部電極と上部電極および該下部電極と該上部電極の間に挟持される(電子加速層で構成され、前記上部電極から電子を放出する複数の薄膜電子源からなり、
前記薄膜電子源から放出される電子で前記蛍光体を励起発光させて画像を表示する画像表示装置の製造方法であって、
前記上部電極の形成材料が、周期律表の8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜もしくは合金膜であり、
前記電子加速層の上に、前記上部電極の形成材料を用いて当該上部電極を形成する工程と、
前記上部電極にH2含有ガスを接触させながら該薄膜電子源を200℃以上、好ましくは350℃以上、上部電極の溶解温度以下の温度に保つ工程を含み、
前記上部電極の表面に付着しているS分の量を、元素換算で該上部電極の形成材料の元素総量の20mol%以下とすることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項12】
二次元配列された複数の薄膜電子源および、前記薄膜電子源のそれぞれに対応して配列された複数色の蛍光体からなる蛍光面を有し、
前記薄膜電子源アレイは、下部電極と上部電極および該下部電極と該上部電極の間に挟持される(電子加速層で構成され、前記上部電極から電子を放出する複数の薄膜電子源からなり、
前記薄膜電子源から放出される電子で前記蛍光体を励起発光させて画像を表示する画像表示装置の製造方法であって、
前記上部電極の形成材料が、周期律表の8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜もしくは合金膜であり、
前記電子加速層の上に、前記上部電極の形成材料を用いて当該上部電極を形成する工程と、
前記上部電極に空気を接触させながら該薄膜電子源を200℃以上、好ましくは350℃以上、上部電極の溶解温度以下の温度に保つ工程を含み、
前記上部電極の表面に付着しているS分の量を、元素換算で該上部電極の形成材料の元素総量の20mol%以下とすることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項13】
二次元配列された複数の薄膜電子源および、前記薄膜電子源のそれぞれに対応して配列された複数色の蛍光体からなる蛍光面を有し、
前記薄膜電子源アレイは、下部電極と上部電極および該下部電極と該上部電極の間に挟持される電子加速層で構成され、前記上部電極から電子を放出する複数の薄膜電子源からなり、
前記薄膜電子源から放出される電子で前記蛍光体を励起発光させて画像を表示する画像表示装置の製造方法であって、
前記上部電極の形成材料が、周期律表の8族またはIb族に属する元素、あるいはそれらの積層膜もしくは合金膜であり、
前記電子加速層の上に、前記上部電極の形成材料を用いて当該上部電極を形成する工程と、
前記上部電極に酸素を接触させながら該薄膜電子源を200℃以上、好ましくは350℃以上、上部電極の溶解温度以下の温度に保つ工程を含み、
前記上部電極の表面に付着しているS分の量を、元素換算で該上部電極の形成材料の元素総量の20mol%以下とすることを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−159392(P2008−159392A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346569(P2006−346569)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】