説明

画像表示装置前面用複合フィルタ

【課題】画像表示装置の非点灯時においても複合フィルタの外観特性に優れたものを提供する。
【解決手段】観察者側から見て、最表面に外光反射防止層、最裏面に電磁波遮蔽材層を配し、その中間に少なくとも色素含有層及びミクロルーバ層を適宜の順番で、且つ、該ミクロルーバ層及び該電磁波遮蔽層を各々適宜の向きで積層してなる画像表示装置前面用複合フィルタであって、該電磁波遮蔽材層は、透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体組成物からなる導電体パターン層を有し、前記プライマー層のうち前記導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電体パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、該導電体組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電体パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電体パターンの頂部近傍において密である画像表示装置前面用複合フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、単にPDPと称する。)等の画像表示装置の前面に配置される画像表示装置前面用複合フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と称することがある。)、液晶表示装置(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、電場発光表示装置(ELD)等の画像表示装置の大型化、薄型化に対する要求が高まり、これに対応可能な表示媒体としてPDPが急速に市場を伸ばしつつある。しかし、PDPはキセノンやヘリウムの不活性ガス放電を利用するため、波長800〜1000nmの近赤外線を放出する。このような近赤外線は、コードレス電話、赤外線方式のリモートコントローラー等の誤作動を引き起こす可能性がある。また、不活性ガスに含まれるNe成分のオレンジ色の発光(Ne光)による色純度の低下が生じるという問題があった。
また、PDPは、外部が明るい条件、すなわち明室条件では、コントラストが不十分となり画像品質が低下するという問題があった。
さらに、PDPは高輝度な表示特性が得られるものの、kHz〜GHz帯域において強度の電磁波を放出し、各種の計器類に対して障害を及ぼすことが示唆されつつある。
【0003】
このような問題を解消するために、上記のような電磁波や近赤外線、Ne光の放出を抑え、また、明室でのコントラストを向上させることができる前面フィルタに対する要望が高まっており、例えば、コントラストを向上させるための層として、樹脂層中に台形のブラックマトリックスを有する外光遮蔽層を備えた多層構造のPDP用前面フィルタが開発されている。特許文献1には、外光遮蔽層としてのミクロルーバと色素フィルタと導電インキを印刷したメッシュからなる電磁波遮蔽フィルタとを積層したPDP用複合フィルタが提案されている。
【0004】
一方、電磁波遮蔽材は今までに種々検討されているが、例えば特許文献2には、導電体インキ組成物をメッシュパターンで透明基材に直接凹版印刷し、その透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波遮蔽材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272161号公報
【特許文献2】特開平11−174174号公報
【特許文献3】WO2008/149969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のPDP用前面フィルタは、近赤外線吸収兼ネオン光吸収層を独立の層として構成しているので、前面フィルタの層構成が多く複雑となり、製造コストの低減に限界があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の電磁波遮蔽材は、凹版から透明基材に直接導電体インキ組成物を転写する方式の為、オフセット印刷特有のブランケット胴によるパターン歪みの問題は無く、又、シルクスクリーン印刷に比べて微細パターン形成が可能である。但し、電磁波遮蔽材に適用する場合は、導電体インキの如き流動性の悪いインキを高塗布量で転写(転移とも言う)させる必要が有る。それ故に、新たに発生して来る問題として、導電体インキを転写する際に、未転写部が発生したり、密着性に劣る転写不良が発生したりすることがある。
【0008】
一般に、微細な凹版凹部内に充填された低流動性で高粘度の導電体インキの多くは通常の凹版印刷方式では該凹部内に残留する為、導電体インキの転移率〔=(凹部から転移したインキの体積/版凹部の体積)×100%、或いは印刷物と版とで線幅の変化が無視できると見做した場合には、(凹部から転移したインキの厚み/版凹部の深さ)×100%、の式で簡易的に概算する〕は低く、最大でも20%程度が限度であった。それ故、十分な厚みがあり十分な電気伝導度のパターンを形成することが困難となり、十分な電磁波遮蔽性を得ることが困難であった。
【0009】
そこで、本出願人は、凹版印刷により導電体材料組成物を透明基材上に転写し、導電体を有するパターンを形成してなる電磁波遮蔽材において、導電体材料組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波遮蔽材について、特許文献3で提案している。この、特許文献3に記載の発明では、図8(A)に示す導電体インキ組成物15の凹み6を、図8(B)に示す様に、硬化するまで流動性を保持できるプライマー層2が形成された透明基材1と圧着することによって、プライマー層2と凹部6内の導電体インキとを空隙無く密着する圧着工程を経て、プライマー層を硬化し、透明基材を版面から剥がして、凹部64内の導電体インキ組成物を硬化したプライマー層2上に転写するものである。
【0010】
しかしながら、かかる方法においては、なお、以下の如き要解決課題が残存していることが判明した。即ち、導電体粒子とバインダー樹脂を含む導電体組成物から成る導電体パターン層(導電体パターン層)の線幅が此のように細くなると;
(1)一般に物体の電気抵抗Rは、其の長さL及び体積抵抗率ρに比例し、その断面積Sに反比例する。即ち、R=ρL/Sとなる。その為、導電体組成物が同一(ρ一定)、平面視パターンも同一(L一定)、且つ厚みも同一とした場合、線幅の減少に比例して断面積も減少し、導電パターン部分の電気抵抗は高くなる。これに伴い、電磁波遮蔽性の指標である、シールド部材としての表面抵抗率も増大する。
(2)印刷厚みを一定として、パターン線幅が狭くなり、線幅と導電体粒子径とが近付いてくると、同じ粒子径及び粒子形状の導電体粒子であっても、該細線パターンの単位断面積中に於ける該導電体粒子同士が接触する部分の総面積の比率は低下する。其の結果、幾何学的断面積SGEOに比べて、現実の電流通路となり得る導電体粒子(群)の有効総断面積SAVは低下し(SAV<SGEO)、導電パターン部分の電気抵抗Rは、線幅減少による幾何学的要因(断面積S)の影響以上に高くなるため、電磁波遮蔽材の表面抵抗率も線幅から単純計算した値以上に上昇してしまう。其の結果、電磁波遮蔽性は低下する。
勿論、該導電体パターン層上に、電解めっき等によって、低体積抵抗率の金属層を形成すれば、此の電気抵抗の上昇分は相殺し得る。しかし、その場合は、工程数及び材料費の増加と歩留まりの低下を生じる為、好ましい形態とは言えなかった。
また、要求される低電気抵抗化のため、導電体粒子添加量を多くしても、必ずしも電気抵抗が下がる訳ではなく、導電体粒子添加量を多くすると材料コストが上昇し価格の上昇を余儀なくされ、特に、導電体粒子の添加量が多いと、インキの印刷適性が低下して、断線、パターン形成不良、転移率低下等の問題が発生する等の解決すべき問題があった。
【0011】
〔課題2〕
また、導電体粒子は一般に可視光線反射率も高い為、導電体組成物は可視光線反射率が高くなる。特に金属粒子はこの傾向が強く、中でも低抵抗化する為に通常採用される鱗片状の導電体粒子の場合、導電体パターン表面には大局的に見た場合に鏡面に近い面が形成される為、かかる反射は鏡面反射に近くなる。高可視光線反射率、中でも鏡面反射成分が多い場合、該導電体パターン表面は(透明基材側面及び透明基材とは反対側面の両面とも)電燈光、日光等の外光、或いはディスプレイ装置からの画像光を反射し、画面が白化したり、画像コントラストが低下したりする問題が生じる。
勿論、黒鉛のような可視光線反射率の低い導電体粒子を使用すれば、導電体パターンによる此の様な画面の白化、コントラスト低下は防げる。しかし、其の場合は、黒鉛の体積抵抗率が銀等の金属にくらべて高いため、同じ導電パターン設計をした場合には電磁波遮蔽性が劣る。これは、線幅が広い場合は比較的問題になり難いが、導電体パターンを細線化した場合には、前記の如く幾何学的要因による電気抵抗の上昇とも相俟って、電磁波遮蔽性能の不足につながると云う問題が生じる。更に、黒鉛のような炭素の粒子は、導電体組成物の構造粘性を上昇させ、流動性を低下させる場合も多い為、細線パターンの再現性不良、転移率低下の傾向を生じることも問題となる。
【0012】
また、画像表示装置前面用複合フィルタは、画像表示装置のコントラスト向上、及び、周辺の蛍光灯等の光源の映り込み防止のために、反射防止層を少なくとも設けているが、反射防止層そのもの、あるいは組み合わせている他の機能層からの反射の影響で、複合フィルタの外観上の色、特に、パネルの非点灯時の色が周辺の環境や見る人の嗜好に合わないなどの問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、反射防止機能、近赤外線・ネオン光吸収機能、コントラスト向上機能、電磁波遮蔽機能を有する画像表示装置前面用複合フィルタであって、特に、画像表示装置の非点灯時の当該複合フィルタの外観特性に優れたものを提供することを目的とする。
本発明は、
(1)観察者側から見て、最表面に外光反射防止層、最裏面に電磁波遮蔽材層を配し、その中間に少なくとも色素含有層及びミクロルーバ層を適宜の順番で、且つ、該ミクロルーバ層及び該電磁波遮蔽層を各々適宜の向きで積層してなる画像表示装置前面用複合フィルタであって、
(i)該外光反射防止層は、低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層からなり、
(ii)該色素含有層は、近赤外線領域に吸収をもつ色素、ネオン光領域に吸収域をもつ色素、ネオン光領域以外の可視光領域に吸収域をもつ調色色素、及び紫外線域に吸収域を有する色素からなる群から選択される少なくとも1種の光吸収色素と樹脂バインダーからなり、
(iii)該ミクロルーバ層は、透明基材の一方の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向と直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部と、隣接する前記暗色部間の透光性領域とを有し、
(iv)該電磁波遮蔽材層は、透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体組成物からなる導電体パターン層を有し、前記プライマー層のうち前記導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電体パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、該導電体組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電体パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電体パターンの頂部近傍において密である、
ことを特徴とする画像表示装置前面用複合フィルタ、及び
(2)前記(1)に記載の複合フィルタを画像表示装置の本体前面に配置してなる、
ことを特徴とする画像表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像表示装置前面用複合フィルタは、可視透過率を高く、反射率を低くし、かつ、フィルタの反射色つまり反射光の色度座標を一定の範囲になるようにしているので、
外観特性にも優れ、外光が入射する場所で画像表示装置を使用してもコントラストが低下することがないとともに、画像の輝度及び画質も低下せず、画像表示装置から発生する近赤外線やネオン光、電磁波が観察者側に出射するのを防止することができる。
また、構成するフィルタの順番及び/又はコントラスト向上層としてのミクロルーバの向きを変えて積層することによって反射光の色度座標が変化するので、複合フィルタの表面(反射防止層)側から見た色相、明度を、用途、消費者や設計者の要望、性能に応じて適宜選択することができる。
【0015】
本発明の画像表示装置前面用複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材層は、その導電体パターン層を構成する導電体組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含み、しかも該導電体粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎に、又該導電体パターンの頂部近傍において密であるよう構成している。その為、該導電体パターンが細線化し、幾何学的因子(R=ρL/SにおいてSが小)的には高電気抵抗の環境下でも、限られた添加量の導電体粒子が、該導電体パターンの頂部近傍の密度を高く保たれ、ここで集中的に各導電体粒子同士の電気的接触が確保される。同時に該プライマー層近傍での界面剥離、脱落が抑えられ高い密着性が確保される。そのため、該パターンの線幅を微細化した場合においても、高電磁波遮蔽性と機械的強度、及び高透明性による高解像度とが両立できると言う効果を奏する。
【0016】
加えて、該導電体パターン層の該プライマー層側の界面において、該導電体粒子の分布が疎である為、ここでの光の鏡面反射率は低減される。その為、該導電体粒子の分布が疎な面側を外光側(画像観察者側)に向けた場合には、外光による画像の白化、コントラスト低下を防止出来る。一方、該導電体粒子の分布が疎な面側をディスプレイ装置側に向けた場合には、画像光の画面への反射による画像の白化、コントラスト低下を防止出来る。
【0017】
上記の画像表示装置前面用複合フィルタにおいて、更に、該導電体粒子は多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状を有するように構成したり、該導電体粒子は相対的に大粒子径の粒子と小粒子径の粒子との混合から成るように構成したり、該導電体粒子は平均粒子径が1μm以下の粒子から成るように構成したり、複数の導電体粒子が部分的に融合するようにしたり、複数の導電体粒子が部分的に融合した連なり(経路)の長さが、導電体パターン層幅の1/2を超える経路を少なくとも1以上有する様にしたり、或いは該導電体パターン層の線幅が30μm以下で、かつ該導電体パターン層の表面抵抗率が0.8Ω/□以下となるよう構成を選択した場合には、より一層、上記効果をも奏し得る。
【0018】
また、上記の画像表示装置前面用複合フィルタにおいて、更に、該導電体パターン層の表面に、更に金属層が形成されるように構成を選択した場合には、より一層、該パターンの電気抵抗が低くなり、上記各種構成のみでは発現が難しい程度の高性能の電磁波遮蔽性が求められる用途にも適用が可能となるという効果をも奏する。
【0019】
また、上記の画像表示装置前面用複合フィルタにおいて、更に、プライマー層のうち導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、凸状メッシュパターン層が形成されていない部分の厚さよりも大きく、かつ、凸状メッシュパターン層形成部におけるプライマー層と導電体パターン層との界面は、(a)プライマー層と導電体パターン層との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(b)プライマー層を構成する成分と導電体パターン層を構成する成分とが混合している層を有する断面形態、及び、(c)導電体パターン層を構成する導電体組成物中に該プライマー層に含まれる成分が存在している断面形態を選択した場合には、プライマー層と導電体組成物層との密着良好、凹版印刷でパターン形成する際に、導電体組成物の転移性が良好で、転移欠陥も無く、パターン再現性が良好で、而かも導電体組成物が凹版から転移する際の該導電体組成物の周囲の飛散を防止し、開口部の外観不良と光透過率低下を防止する。その結果良好な電磁波遮蔽性が得られる、という効果をも奏する。
【0020】
また、本発明の画像表示装置は、上記の特徴を有する複合フィルタを前面に配置してなるので、特に、非点灯時においても所定の反射色を呈し、全体として外観特性に優れたものとすることができ、パネルの色が周辺の環境に合わないと言った従来の問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像表示装置前面用複合フィルタの層構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の画像表示装置前面用複合フィルタの光学フィルタ層を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の複合フィルタを構成する電磁波遮蔽材層の模式的な平面図である。
【図4】図3におけるA−A’断面の拡大図である。
【図5】図4の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図である。
【図6】発明の複合フィルタの電磁波遮蔽材層の製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材層を製造する装置の概略構成図である。
【図8】本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材層を製造するにおいて、凹部内の導電体材料組成物の凹みにプライマー層を充填し、その導電体材料組成物が転写する形態を示す模式図である。
【図9】本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材層において、(A)導電体パターン層に対して電気抵抗低減化処理を施す前の導電体粒子の状態の模式図、(B)導電体パターン層に対して電気抵抗低減化処理を施した後の導電体粒子の状態の模式図である。
【図10】本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材層において実施例1の導電体パターンの断面SEM写真である。
【図11】本発明の複合フィルタを構成するミクロルーバの1例を示す(A)模式的な拡大断面図、(B)平面図である。
【図12】(A)実施例1の複合フィルタの層構成を示す模式図、(B)実施例2の複合フィルタの層構成を示す模式図、(C)実施例3の複合フィルタの層構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
本発明の画像表示装置前面用複合フィルタは、少なくとも外光反射防止層、色素含有層、ミクロルーバ層とで構成する光学フィルタと、電磁波遮蔽材層とを積層してなる。また、本発明の画像表示装置前面用複合フィルタは、外光反射防止層を観察者側に配置し、電磁波遮蔽材層を画像表示装置側に配置する他は、色素含有層及びミクロルーバ層を適宜の順番で、且つ、ミクロルーバ層及び電磁波遮蔽層を各々適宜の向きで積層されて構成される。
以下、電磁波遮蔽材層、光学フィルタの順に説明する。
【0024】
〔電磁波遮蔽材層〕
図3は、本発明の画像表示装置前面用複合フィルタの電磁波遮蔽材層(以下、単に「電磁波遮蔽材」ということがある。)の一例を示す模式的な平面図であり、図4は、図3におけるA−A’断面の拡大図であり、金属層4及び保護層9は必要に応じて設けられる層である。
また、図5(A)は、図4の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図、図5(B)は、導電体パターン層3上に形成された金属層4を有している場合を示している。
図6は、電磁波遮蔽材の製造方法の一例を示す工程図を示している。
本発明の電磁波遮蔽材10は、図4に示す如く、透明基材1の表面にプライマー層2を有し、該プライマー層2の表面に導電体パターン層3を形成しており、製造方法による特徴を反映して、図5(A)に示すように、プライマー層2のうち前記導電体パターン層3が形成されている部分Aの厚さTAは、前記導電体パターン層が形成されていない部分Bの厚さTBよりも厚くなっている。
また、導電体パターン層3は、導電体粒子3aとバインダー樹脂3bとからなり、導電体粒子3aの少なくとも一部は、図9(B)或いは図10に示すように、導電体パターン層3の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、隣接する粒子同士が互いに融合(融着)した連なりを有してなる部分を形成したものとすることができる。
【0025】
(透明基材)
電磁波遮蔽材層の構成要素の1つである透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0026】
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等である。
【0027】
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
また、プライマー層3との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
下地層としては、例えば、透明基材の材料がポリエステル樹脂から成り、プライマー層がアクリレート系の電離放射線重合性組成物から成る場合は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等からなる厚さ0.1〜1μm程度の塗膜であってもよい。
【0028】
(プライマー層)
複合フィルタの電磁波遮蔽材層に用いるプライマー層2は、その主目的が導電体パターン層3の印刷形成時に、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電体組成物)転移性を向上させ、転移後の導電体組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び導電体パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電体パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
更に、このプライマー層2は、流動性を保持できる状態で透明基材1上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層であり、最終的な電磁波遮蔽材が形成されたときに固化している層である。
【0029】
かかるプライマー層を構成する材料としては、本来特に限定はないが、本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。以下、この材料を中心に詳述する。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0030】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0031】
プライマー層を版表面で硬化させた後に剥離する際、剥離が重い(版との密着が良い)材料系を用いる場合には、版表面に離型加工をしたり、離型剤を塗布したりするなどの方法もとられるが、加工コストや離型能力の寿命などと勘案し、必要に応じてプライマー層に離型剤を添加する。本発明において用いる離型剤とは、電磁波遮蔽材の製造において、プライマー硬化工程を経た透明基材上のプライマー層が、版面からの剥離に要する力(剥離力)を小さくして、円滑に剥がれるように剥離性を向上させるための添加剤をいう。かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等が挙げられる。
【0032】
当該電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。外観改善や塗工適性改善などのために溶剤を添加する場合には乾燥が必要となるが、溶剤の添加量が数%程度の量であるならば、硬化後に乾燥させてもよい。残留溶剤量はなるべく少ない方が好ましいが、物性、耐久性に影響が無ければ完全にゼロでなくても良い。
【0033】
プライマー層2の厚さ〔TB;図5(A)の如く、導電体パターン層(導電体パターン層の非形成部の厚みで評価〕は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm、好ましくは2μm〜50μm、より好ましくは5μm〜20μm程度となるように形成される。また、プライマー層2の厚さ(TB)は、通常は、導電体パターン層3とプライマー層2との合計値(総厚。図5(A)でいうと導電体パターン層3の頂部と透明基材1の表面との高度差)に対する比として1〜50%程度である。
【0034】
(導電体組成物からなる導電体パターン層)
本発明における電磁波遮蔽材は、導電体パターン層3がプライマー層2上に所定のパターンで設けられたものである。該パターンの平面視形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波シールドパターン部7の全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュの電磁波シールドパターンとは別に、其の周辺部の全周又は其の一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ(開口部無し)等の接地パターンが設けられる場合もある。この接地パターンはシールドパターン形成時に同時に形成しても良く、別途導電インキを使って形成してもよく、導電金属テープなどを貼ることにより形成しても良い。尚、斯かる別途導電インキで該接地パターンを形成する場合の印刷法としては、特に微細パターン再現精度は不要の為、導電体パターン層3と同様の印刷方法でも良いし、或はシルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の各種印刷方法によっても良い。
なお、線幅は、より高透明のものを得る為により一層微細化することが求められている観点から、50μm以下、好ましくは30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0035】
また、導電体パターン層3の厚さは、その導電体パターン層3の抵抗値によっても異なるが、電磁波遮蔽性能と該導電体パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電体パターン層3は、導電体粒子3aとバインダー樹脂3bを含む導電体組成物(導電体インキ或は導電体ペースト)を凹版印刷法によりプライマー層2上に形成することで得ることができる。
また、前記導電体パターン層3の表面に安定して電解めっきにより金属層4の形成が可能になる為には、該導電体組成物から成る導電体パターン層の表面抵抗率は低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が2Ω/□以下、となるよう構成することが好ましい。更に、前記導電体パターン層の表面に金属層を形成すること無く、且つ電磁波シールドメッシュとして多用される線幅が25μm以下、線厚みが20μm以下の領域にて十分な電磁波遮蔽性を発現せしめる為には、該導電体組成物から成る導電体パターン層の表面抵抗率は、更に低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が1.2Ω/□以下、より好ましくは0.8Ω/□以下となるよう構成すると良い。該導電体パターン層の表面抵抗率を0.8Ω/□以下とする為には、該導電体粒子の材料として体積抵抗率の低い銀、金、銅等の金属を選択すること、該導電体粒子の平均粒子径を1μm以下とすること、該導電体粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすること、該導電体パターン層の頂部に於ける該導電体粒子の密度を密にすること、及び該導電体パターン層を形成した後、酸処理や温水処理を施すことが有効である。
【0036】
導電体組成物自体の導電体を示す体積抵抗率は、印刷する形状により見かけの値が変化する。例えば、市販の導電ペーストをベタ形状(開口部がない形状)で形成した場合の体積抵抗率に比べ、下記の式で計算した、パターンで形成した場合の見かけの体積抵抗率は、形成するパターン形状を微細にするほど大きくなる。
(式):見かけの体積抵抗率〔Ω・cm〕=パターン部の表面抵抗率〔Ω/□〕×
パターン部厚み〔cm〕×パターン占有率
・パターン部厚み:パターン形成部の厚み− パターン非形成部(開口部)の全厚み
・パターン占有率:単位面積のうち、パターン形成されている部分の面積の割合
例えば、市販の乾燥硬化型銀ペーストをベタ塗りし乾燥させた場合の体積抵抗率は、通常10-5〔Ω・cm〕以下のオーダーであるが、実際にメッシュパターン印刷すると、見かけの体積抵抗率は1桁以上高くなることが多い。これは銀粒子の充填率や粒子同士の接触の機会が低減することによる。例えば、同じパターン占有率であっても、線幅や厚みが導電粒子の粒径に近くなるほど抵抗は増大する。ここで酸処理或いは温水処理の手段を用いれば、この体積抵抗率上昇を抑えられる。特に、酸処理後に温水処理を行うことで、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、70〜65%の値に低減する。
【0037】
導電体組成物を構成する導電体粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或は芯材粒子としての高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、無機非金属粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子、黒鉛粒子、導電体高分子粒子、導電体セラミックス粒子等を挙げることができる。
導電体粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電体粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる導電体パターン層の電気抵抗を低く〔前記の如く、好ましくは、表面抵抗率(単に、表面抵抗とも略称)が0.8Ω/□以下〕して良好な電磁波遮蔽性を得る為には、平均粒子径は小さい方が好ましく、此の観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。一般に「ナノ粒子」と呼ばれるような平均粒子径が数十nmと小さい粒子はコスト高につながり、また、バインダー樹脂を入れると性能が低下し、インキとしての安定性も低下する。また、粒子径の分布については、得られる導電体パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いものよりも、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系から成る方が良い。例えば、粒子径が0.01μm〜1μmの範囲の小粒子径粒子と粒子径5〜10μmの範囲の大粒子径粒子との混合系が好ましい。
かかる混合系に於ける両粒子の混合比は、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=1:9〜9:1、特に、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=5:5〜9:1の範囲が好ましい。当然のことながら、パターンの線幅や厚みよりも大きな粒子が混入すると、該導電性粒子同士の接触による電流の経路が途中で中断し易くなり印刷時に抜けやスジなどの不良が多発するため、大粒子径粒子の平均サイズ、あるいは最大粒子径はパターン設計により変わってくる。此の観点からは、平均粒子径 ≦ 線幅/4、とすると、これらの問題が事実上解消される為、好ましい。
また、異なる平均粒子径を持つ複数種類の粒子を混合する以外に、ある程度の粒度分布を持った粒子を最初から用いても良い。
【0038】
該導電体粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすると該導電体組成物(から成る導電体パターン層)の表面抵抗率が低下する理由としては、かかる系から成る導電体パターン層の断面を顕微鏡観察すると、大粒子径粒子の分布する間隙に小粒子径粒子が充填されて分布した形態が観察されることから推して、大粒子径粒子同士の接触が無い部分の間隙を、そこに介在する小粒子径粒子の接触によって補強し、導電体組成物内に分散する大小粒子相互の電気的接触面積の総和が増大する為(前記式R=ρL/SAVにおいて有効断面積Sが増加したことに相当)と考えられる。
また、該導電体パターン層内に於ける該導電体粒子の分布は、所望の特性や製造適性に応じて各種形態を選択可能であるが、特に好ましい形態としては、図10の如く、該導電体パターン層の頂部近傍(プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が小さく、粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数が高く(密に)なり、一方、該導電体パターン層の底部近傍(プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が大きく、粒子数密度が低く(疎或いは粗)になる分布が挙げられる。
【0039】
かかる分布形態の場合は、本発明の電磁波遮蔽材を画像表示装置の画面に設置する使用形態、即ち、該導電体パターン層側が観察者側に向かい、該透明基材側が画像の観察者側に向かう向きで使用する場合においては、画面側に対峙する該導電体粒子は、密度が粗の為、画像光を散乱させて、画像光の画面への反射による画像の白化、画像コントラストの低下を防止することが出来、好ましい。
一方、該導電体パターン層側が画像表示装置側に向かい、該透明基材側が画像の観察者側に向かう向きで使用する場合においては、観察者側に対峙する該導電体粒子は、密度が粗の為、外来光(電燈光、日光等)を散乱させて、観察者の目に入る反射光、特に鏡面反射光を低減する。その結果、外来光存在下に於ける画像の白化、周囲の風景の映り込みを防止し、画像コントラストの低下を防止することが出来、好ましい。
この効果をより一層有効に発現させる為には、該導電体粒子形状としては、鱗片状よりも、多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状を選択する方が、該導電体パターン層のプライマー層側表面に鏡面に近い面が形成され難い為、好ましい。また、該導電体粒子形状としては、鱗片状の物を採用する場合は、該導電体パターン層中の鱗片状導電体粒子の配向方向(例えば、該鱗片の一番広い面の法線方向として定義される)を乱雑(random)に分布するようにすると、鏡面反射が低減し、好ましい。尚、該導電体粒子形状が多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状の場合でも、其の配向方向を乱雑化することは、鏡面反射光の低減の点では好ましい。
且つ、同時に、画像表示装置側に対峙する該導電体粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電磁波シールド効果も高まる。尚、当然、かかる高密度に分布する導電体粒子は可視光線の反射率も高いが、該導電体粒子は画像観察者の目に触れない側(観察者と反対側)の面に位置する場合は、画像コントラスト等の低下の心配は無い。
しかしながら、本願においては、該導電体パターン層を画像観察者側に位置するように設置する使用形態であるため、必要に応じて、該導電体パターン層表面に、黒化処理などを施せばよい。
また、該導電体パターン層の頂部近傍において粒子が緻密に存在するという構造は、本メッシュを電磁波シールド部材として用いる場合に、接地部品との接触において接触抵抗を下げるという効果もある。
【0040】
該導電体パターン層中に於ける該導電体粒子の密度分布を制御し、図10のSEM断面写真に示す如く、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電パターンの頂部近傍において密である様にしたり、或いは該プライマー層近傍において粒子の配向方向が乱雑になり、且つ該導電体パターン層の頂部において配向方向を平行乃至略平行に配向せしめる為には、例えば、後述の如くの凹版印刷法を応用した電磁波遮蔽材の製造方法(図8参照)において、版面凹部内に充填された導電体組成物上面の凹み(図8(A)の符号6参照)に、透明基材上の流動状態のプライマー層2を押圧する圧力を高めに設定すると共に、未硬化状態に於ける該導電体組成物の粘度を低めに設定し、更に該導電体組成物を凹版凹部内で固化させずに、版面から離型後固化せしめることが有効である。
その他、これら導電体粒子の密度分布や配向状態は、導電体組成物のバインンダー樹脂の種類、導電体粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と導電体粒子との配合比、及び該導電体組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら導電体粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める導電体粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。
該導電体組成物中の導電体粒子の含有量は、導電体粒子の導電体や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電体組成物の固形分100質量部のうち、導電体粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した粒子径を平均した値を指している。
【0041】
導電体組成物を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として前記した物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電体ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できるが、プライマー層3の安定硬化を阻害したり、硬化後のプライマー層を膨潤、白化、溶解させたりしないものが好ましい。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0042】
また、導電体組成物の流動性や安定性を改善するために、導電体や、透明基材又はプライマー層との密着性に悪影響を与えない限りにおいて適宜充填剤や増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤などを添加してもよい。
【0043】
次に電磁波遮蔽材の製造方法について図により詳細に説明する。
図6は、本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材の製造方法の一例を示す工程図である。また、図7は、本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材の製造方法を実施する装置の概略構成図であり、図8は、凹部内の導電体材料組成物の凹みにプライマー層を充填し、その導電体材料組成物が転写する形態を示す模式図である。
【0044】
本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材を製造するには、図8(A)に示すように硬化するまで流動性を保持できるプライマー層2が一方の面S1に形成された透明基材1を準備する透明基材準備工程と、導電体パターンが形成された板状又は円筒状の版面63に、硬化後に導電体を有した硬化物を形成する導電体材料組成物15(3')を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電体材料組成物を掻き取って凹部64内に導電体材料組成物15を充填する充填工程と、充填工程後の版面63の凹部64側と透明基材準備工程後の透明基材1のプライマー層2側とを圧着して、凹部64内の導電体材料組成物15とプライマー層2とを空隙無く密着する圧着工程(図8(B)参照)と、圧着工程後にプライマー層2を硬化するプライマー硬化工程と、プライマー硬化工程後に透明基材1を版面63から剥がして凹部内の導電体材料組成物15(3')をプライマー層2上に転写する転写工程(図8(C)参照)と、転写工程後、プライマー層2上に所定のパターンで形成された導電体組成物層3’を硬化させてなる導電層を形成する硬化工程と、を少なくとも有するものである。
なお、かかるプライマー層の硬化と導電体組成物の硬化とを同時に行うことも出来る。その場合は、該プライマー硬化工程と該導電層を形成する硬化工程とは1工程で兼用される。その後、該転写工程となる。
【0045】
(電気抵抗低減化処理工程)
該導電体組成物を硬化させて導電層を形成した後、酸処理工程、温水処理工程、或いは酸処理と温水処理の両工程を経ることによって、該導電層の表面抵抗率が低下させ、電磁波遮蔽性能が向上させることができる。この現象は、特に導電体粒子が銀または銀を含む粒子である場合に観察される。この処理を電気抵抗低減化処理工程とも呼称する。これはいわゆる焼成処理とは異なり、PETなど一般のフィルム基材にダメージを与えるような長時間の加熱処理ではなく、また低温焼成用印刷インキとして知られたナノサイズ粒子の分散液ではなく、樹脂等の結着材を含んだ一般的な性状の導電インキを使用した場合の処理方法として極めて有効である。
【0046】
〔導電体パターン層〕
本発明の複合フィルタに用いる電磁波遮蔽材の導電体パターン層が、特に、メッシュ形状となる形態(この形態を導電メッシュパターン層とも呼称する)では、互いに方向の異なる2群以上の平行線群がから成る線部が交差して、これら線部に囲繞されて開口部(パターン非形成部)が形成される。尚、3群以上の平行線群(線部)が交叉する場合も、其の基本的な設計要領及び作用効果は共通の為、以下、通常広く用いられている2群の場合を例に絞って説明する。また、各線群の交叉角度、即ち、第一方向線部と第二方向線部との交叉角度θは、0°<θ<180°の範囲から選択できるが、θ=90°(正方格子)が通常広く用いられている。
【0047】
〔金属層(めっき層)〕
本発明の複合フィルタに用いられる電磁波遮蔽材は、導電体組成物からなる導電体パターン層3のみでは所望の導電体に不足する場合に、導電体を更に向上せしめるために、図4、図5(B)の如く、低抵抗率の金属層4を、必要に応じ形成することができ、導電体パターン層3上にめっきにより形成される。めっきの方法としては電解めっき、無電解めっきなどの方法があるが、電解めっきは無電解めっきに比べて通電量を増やすことでめっき速度を数倍に上げることができ、生産性を著しく向上させることができるため好ましい。
電解めっきの場合、導電体パターン層3への給電は導電体パターン層3が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、導電体パターン層2が電解めっき可能な程度の導電体(通常、100Ω/□以下)を有するので、電解めっきを問題なく行うことができる。金属層を構成する材料としては、導電性が高く容易にめっき可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。
金属層は、導電体パターン層3に比べると一般的に体積抵抗率が1桁以上小さいため、導電体パターン層単体で電磁波遮蔽性を確保する場合に比べて、必要な導電体材料の量を減らせるという利点がある。
なお、図6においては、追加処理ゾーンで、必要に応じて、金属めっき処理や黒化処理等を行うことができる。
【0048】
なお、金属層を形成した後においては、必要に応じて、その金属層を黒化処理したり、保護層9(図4参照)を設けてもよい。黒化処理は、例えば黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の処理を例示できるが必ずしもこれらの処理に限定されない。また、保護層は、導電体パターン層表面を被覆し保護する層である。通常は、保護層は図4の如く、導電体パターン層3の凹凸を充填、表面平坦化する所謂平坦化層としての機能も兼ねる。該保護層は、例えばアクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いて形成することができる。導電体パターン層や金属層に使用する金属が銅などの錆びやすい金属の場合には防錆処理を行うことが好ましく、クロメート処理剤等の一般的な防錆剤を使用でき、また防錆処理は黒化処理や保護層形成と兼ねてもよい。
【0049】
〔光学フィルタ〕
本発明の画像表示装置前面用複合フィルタは、電磁波遮蔽材の表面に光学機能層を含む各種の機能層を積層することによって、電磁波シールド機能と光学機能との両機能を具備する複合フィルタとしたものである。本発明の複合フィルタにおいて、先ず、観察者側に、外光反射防止層として、低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層から選択された層が配置される。さらに、光学機能層としては、例えば近赤外線吸収、ネオン光吸収、調色、及び/又は紫外線吸収の機能を備える色素含有層、コントラスト向上層としてのミクロルーバ層が、適宜の順番で配置される。また、必要に応じて、該光学フィルタには、更に、光学機能以外の機能を発現する機能層を複合することが出来る。かかる層としては耐衝撃層、帯電防止層、ハードコート層、抗菌層及び防汚層等を挙げることができる。
ここで、電磁波遮蔽材層の導電体パターン層側の面上に上記の機能層を形成する場合には、直接形成する方法、および別途形成した機能層を貼合する方法がある。直接形成する場合には、機能を発現する材料を導電体パターン層面にコーティング装置を用いて塗布形成する方法や、スパッタや蒸着などの一般的な手法が使用可能である。電磁波遮蔽材層側に積層する場合は、いずれにしても、本発明で使用している電磁波遮蔽材層において接着面となるプライマー層との密着性が良好な層であることが好ましい。
【0050】
機能を発現する材料を塗布形成する方法としては、グラビア(ロール)コート、ロールコート、コンマコート、孔版印刷、ダイコートなどの一般的な装置が使用可能であり、材料の性状や必要な塗布精度に合わせて適宜選定する。また、面内に於いて導電体パターン層の一部領域を露出させる必要がある場合は、孔版パターン印刷、間欠塗工、ストライプ塗工などの塗工時にパターン形成する方法や、露出させるべき箇所をマスクして全面塗工した後マスクを剥がす方法、あるいは不要な箇所の機能層を除去するなどの方法を使用可能である。
直接形成した機能層が空気と接触する界面(フィルターの最表面、あるいは最裏面)に位置する場合には、画像光及び外光の散乱やレンズ効果による画質低下を抑制するために平坦化されていることが好ましい。
直接形成した機能層は単層で機能を発現するようにしても良く、複数の層で機能を発現するようにしても良い。単層の場合の例としてはハードコート機能、平坦化機能、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、紫外線吸収機能、調色機能、外光反射防止機能(防眩機能も含む)、耐衝撃機能、帯電防止機能、防汚機能などの1つあるいは複数の機能を発現させてもよく、複数層の場合は例えば平坦化層+外光反射防止層、外光反射防止層+ハードコート層、近赤外線吸収層+ハードコート層などといった機能分担をさせることが可能である。
塗布形成する機能層が耐擦傷機能(ハードコート)層である場合は、JISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と前述の透明(樹脂)基材と同様な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂の例としては、前記の電磁波遮蔽材層のプライマー層の材料の記載箇所に例示されているのでここでは省略する。
【0051】
〔外光反射防止層〕
外光反射防止層としては、日光、電燈光等の外部から画像表示装置に入射する外光(外来光)が画面で反射、特に鏡面反射を起こして、画面が白化したり、画像コントラスト(白色画像と黒色画像との輝度比)が低下したり、或いは主意の風景画画面に映り込む不具合を低減する機能を有する層である。斯かる外光反射防止層としては、低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層を用いる。又、外光反射防止層は画像表示装置前面用複合フィルタの最外面(最も画像観察者側)に形成する。
該低屈折率層から成る反射防止層としては、低屈折率層の単層、或いは、低屈折率層と高屈折率層とを、該低屈折率層が最上層に位置する様に交互に、積層した多層構成が一般的でる。
なお、ここで低屈折率層とは、該層と隣接する層(透明基材シート、或いは高屈折率層)と比較して該層の屈折率が相対的に低い層を意味する。又、高屈折率層とは、該層と隣接する層(透明基材シート、或いは低屈折率層)と比較して該層の屈折率が相対的に高い層を意味する。
一般に、相対的に高い屈折率nHを有する基材H(高屈折率層の上に低屈折率層を積層する場合には、高屈折率層がこれに当たる)の上に、相対的にこれよりも低い屈折率nLを有し、且つ厚みがhLの低屈折率層Lを積層するとする。
この場合、両者の屈折率が;

の関係を満たす樣に選択すると、低屈折率層L表面の反射率は最小となる。厳密に此の式の通りの屈折率関係が実現出来無くとも、極力此の式の関係に近付ければ、低屈折率層Lが無い場合に比べて表面の反射率は低下する。
また、(式1)を満たす場合に於いても、低屈折率層L表面の反射率は光の波長及び低屈折率層Lの厚みhLによって変化する。そして;
(式2) hL=λmax/4nL1
を満たす波長λmaxに於いて、反射率は最小化する。また、これに伴って、此の波長λmaxによって、反射防止層は多少なりとも着色する(赤、青、緑等)。よって、所望の波長に於ける反射率を最小化したい場合、或いは反射防止層表面の色調を所望の色調に調節する場合には、(式2)によって、低屈折率層Lの厚みhLを設計する。
【0052】
低屈折率層を構成する材料としては、無機系材料としては、珪素酸化物、弗化物等が用いられる。具体的にはSiO2(屈折率n=1.45)、MgF2(屈折率n=1.38)、CaF2(屈折率n=1.44)、3NaF・AlF3(屈折率n=1.4)等がある。有機系材料としては、弗素系有機化合物(弗素樹脂)、珪素系有機化合物等を挙げることができる。
また、低屈折率層には、空隙を有する微粒子を用いても良い。空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。
また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部に微小多孔質構造の形成が可能な微粒子も含まれる。空隙を有する微粒子は、無機物、有機物のいずれでもあってよく、例えば、金属、金属酸化物、樹脂からなるものが挙げられ、好ましくは、酸化珪素(シリカ)微粒子が挙げられる。
さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルと弗素系樹脂の皮膜形成剤を混合した材料を使用することも出来る。
【0053】
低屈折率層の形成方法(製膜法)としては、無機系材料の場合は、上記の材料自体を、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法で、透明基材フィルム上或いは高屈折率層上に形成したり、或いは上記材料を微粒子化した上で、適宜の樹脂バインダー中に分散させ、溶剤で希釈した塗料を、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿式塗工法で基材上或いは高屈折率層上に塗工し、溶剤を乾燥除去し、必要に応じて更に、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により、架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させることによって得ることができる。
有機系材料の場合には、これを適宜溶剤中に溶解乃至は分散せしめて塗料化し、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿潤式塗工法で透明基材フィルム上或いは高屈折率層上に塗工し、溶剤を乾燥除去し、必要に応じて更に、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により、架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させることによって形成することができる。
【0054】
高屈折率層を構成する材料としては、無機系材料としては、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO(屈折率n=1.95)、ZrO(屈折率n=2.05)等を挙げることができる。有機系材料としては、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
高屈折率層の形成方法(製膜法)としては、無機系材料の場合は、上記の如き気相法で、透明基材フィルム上或いは最表面層では無い低屈折率層上に形成したり、或いは湿式塗工して形成することが出来る。
有機系材料の場合には、上記の如き湿式塗工法で透明基材フィルム上或いは最表面層では無い低屈折率層上に塗工して形成することが出来る。
【0055】
該防眩層としては、外光を散乱もしくは拡散させるために、光の入射面を粗面化することが基本である。この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により透明基材フィルム表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法;透明基体フィルム表面に放射線、熱の何れかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂バインダ中に、光拡散性粒子としてシリカなどの無機フィラーや、樹脂粒子などの有機フィラーを含有させた塗膜により粗面化層を設ける方法;及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等を挙げることができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、上記ハードコート層同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用される。
防眩層の厚みは特に限定され無いが、0.07μm以上20μm以下が好ましい。
また、斯かる防眩層の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の十点平均粗さをRzとした場合に、Smが60μm以上250μm以下であり、θaが0.3度以上1.0度以下であり、Rzが0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
なお、ここで、Rz、Sm、θaは下記の通り定義される。
≪凹凸の平均間隔Sm(μm)、平均傾斜角θa、10点平均粗さ(Rz)≫
防眩層の表面が凹凸形状を有するとき、Sm(μm)とは、この防眩層の凹凸の平均間隔を表し、θa(度)は凹凸部の平均傾斜角を表し、(Rz)は、10点平均粗さを表す。
これらの用語の定義は、JIS B0601 1994に準拠し、表面粗さ測定器(型番:SE−3400/小坂研究所製)の取り扱い説明書(1995,07,20改訂)にも記載されている。
【0056】
〔色素含有層〕
色素含有層は、複合フィルタを構成する機能層を貼着するための粘着剤層を兼ねる色素含有粘着剤層とすることもできるし、透明基材上に塗布形成した独立な層とすることもできる。色素含有層には、以下に記載する吸収剤(色素)が適宜配合される。
【0057】
(近赤外線吸収剤)
近赤外線吸収剤は、本発明の光学フィルタの代表的な用途であるPDPに適用する場合、PDPがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長領域を吸収し、且つ可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長領域では吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。そして、粘着剤層に添加する場合、上記近赤外線領域での近赤外線の吸収量が、透過率でいえば20%以下、更に好ましくは10%以下となるように、近赤外線吸収剤の種類、近赤外線吸収剤の粘接着剤層中での含有量、及び粘接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このような近赤外線吸収剤としては、具体的には、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、ジチオール金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物系等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸収剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸収剤が挙げられ、耐久性の面から、無機系近赤外線吸収剤が好ましい。
このうち、金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどの微粒子が挙げられる。
これらの中で、近赤外線の高吸収率と可視光線の高透過率との両立性、及び高温高湿度条件下における分光透過率特性の変化に対する耐久性の点から、酸化タングステン系化合物が好ましく、特にセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから特に好適である。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、吸収層中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0058】
(ネオン光吸収剤)
ネオン光吸収剤は、本発明の複合フィルタの代表的な用途であるPDPに適用する場合、PDPから放射されるネオン光を吸収させる色素である。該ネオン光は、ネオン原子の発光スペクトル帯域、即ち550〜640nmの波長領域(ネオン光領域)を吸収し、且つ該波長領域を除いた可視光領域380nm〜780nmの波長領域中ではなるべく吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。
そして、粘接着剤層に添加する場合、上記Ne光領域の中心波長を590nmとすれば、該590nmにおける光線の透過率が50%以下になるように、ネオン光吸収剤の粘接着剤層中での含有量、及び粘接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このようなネオン光吸収剤としては、具体的には、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば充分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、充分な量の可視光線を透過できる。
【0059】
(調色光吸収剤)
調色光吸収剤は、表示画像を好みの色調(天然色、或いは天然色から多少偏移した色)に補正するための色素である。このような調色光吸収剤としては、有機系色素、無機系色素などを1種単独使用、又は2種以上併用することができる。具体的には、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層中に0.01〜10質量%程度含有する。
【0060】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系等の有機系化合物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、あるいは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体等の無機系化合物からなる公知の化合物を用いることができる。
なお、紫外線吸収剤を添加する場合、他の吸収剤(色素)を外来光から保護するために、他の吸収剤(色素)を添加した層と同じ層か、或いはその層よりも観察者側に近い層に添加する。また、耐光性が堅牢な色素を使用する場合は、紫外線吸収剤の添加は不要である。
【0061】
〔ミクロルーバ層〕
ミクロルーバ層は、特開2007−272161号公報等に記載されたものを好適に使用できる。該ミクロルーバ層は、図11に示すように透明樹脂層300の中に複数條の吸光性楔形部400を互いに平行に一定周期で埋設してなる。斯かるミクロルーバ層(300+400;以降、両者を綜合して図12の如く符号CRFで表す場合も有る)は、日光、電燈光等の外光を吸光性楔形部400で選択的に吸収し、画像光は吸光性楔形部400間の透明樹脂層300から透過せしめて、外光存在下での画像コントラストを向上せしめる。
【0062】
本発明の複合フィルタに用いるミクロルーバ層(画像コントラスト向上層)としては、例えば、透明基材の視聴者側の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部をなす吸光性楔形部400と、隣接する前記暗色部間の透光性領域をなす透明樹脂層300とを有し、暗色部の幅は視聴者側へ向かって増加し、透明樹脂層300から成る透光性領域の幅は視聴者側へ向かって減少する、或いは吸光性楔形部400から成る暗色部の幅は視聴者側へ向かって減少し、前記透光性領域の幅は視聴者側へ向かって増加する、画像コントラスト向上層であって、前記暗色部は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部内に、暗色粒子と透明樹脂とで充填されてなり、前記透光性領域は、その表面が透明樹脂からなる透明保護層で覆われてなるものが好適に使用できる。以下、ミクロルーバ層の構成について説明する。
【0063】
(透明樹脂層)
透明樹脂層300としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂材料、あるいは硝子等の無機透明材料が各種使用可能である。通常は、溝状凹部43を形成し易く、軽量で薄くすることが可能であり、可撓性にも優れるという点で、樹脂材料が好ましく用いられる。電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂については、前述のプライマー層の透明樹脂の説明箇所で例示するものと同様のものの中から選択して使用できる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、等が使用できる。
【0064】
この透明樹脂層300には溝状凹部43が形成されるため、その厚さは溝状凹部43の深さHよりも厚い必要があり、通常、20μm〜5000μm程度の範囲である。即ち、透明樹脂層300は厚さ的には、所謂フィルム、シート、或いは板の各種形態をとり得る。
【0065】
(吸光性楔形部)
吸光性楔形部(以下、「暗色部」ということがある。)400は、透明樹脂層300の一方の面S1に形成されており、透明樹脂層300の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向に直交する断面形状が台形又は略台形の形態からなるものである。そして、この暗色部400は、断面形状が台形又は略台形の溝状凹部43内に、暗色粒子41と透明樹脂42とが充填されて構成されている。
【0066】
先ず、溝状凹部43の形状について説明する。溝状凹部43は、断面形状が台形又は略台形である。ここで、断面形状とは、直線状に延びる溝状凹部43の延長方向に直交する断面の形状をいう。また、台形の溝状凹部とは、図11(A)に示すように、透明樹脂層300の一方の面S1側(観察者側又は画像表示装置側)の辺(下底)の幅Wが広く、他方の面S2側(画像表示装置側又は観察者側)の辺(上底)の幅が狭い態様で構成されたものである。また、略台形の溝状凹部としては、両辺(上底と下底)の幅の差が小さい形状、すなわち長方形や正方形に近い形状を含み、また、楔型の3角形の頂点近傍をS1側の辺(下底)に平行に切断した3角形に近似する
形状も含む。なお、溝状凹部43はこうした台形又は略台形に限らず、正方形、長方形等の4角形や、3角形、5角形等の多角形であってもよいが、好ましくは上記した台形又は略台形である。
【0067】
溝状凹部43と透明樹脂層300との界面からなる斜面45が出光面の法線となす角度θは、所定の角度に形成されていることが好ましく、例えばθが3°〜15°の範囲であることが好ましい。θがこの範囲内であると、画像表示装置からの表示光が観察者側に十分に到達し、輝度向上効果が得られる。しかも、画面に斜め方向に入射する外光については、十分な断面積を持つ吸光性楔形部400で吸収できるため、外光反射を抑止して画像コントラストを向上させることができる。
【0068】
なお、溝状凹部43の大きい方の底辺の長さ(すなわち最大幅W)は10μm〜100μm程度であることが好ましく、深さHは10μm〜200μm程度であることが好ましく、溝状凹部43の周期(ピッチ)は10μm〜900μm程度であることが好ましく、開口率は50%〜90%程度であることが好ましい。
【0069】
次に、暗色部400を構成する材料、すなわち溝状凹部43に充填される材料について説明する。暗色部400は、可視光線波長域の大部分を吸収し、入射する可視光線(外光)を高い割合で吸収することが望ましく、その結果、暗色部400で反射する外光が目立たず、その反射光が画像光に混入しても画像コントラストの低下が目立たないようになる。したがって、暗色部400には、そうした作用を発揮する色に設定することが望ましい。暗色部400の色は完全な黒色が理想であるが、実用上は完全な黒色にする必要はなく、上記の作用を発揮するものであれば有彩色であってもよい。具体的には、黒、濃い灰色等の無彩色、褐色、臙脂色、紺色、深緑色、濃紫色等の低明度の有彩色であってもよい。
【0070】
暗色部400を構成する暗色粒子41としては、所定の粒径からなる各色の粒子を用いることができる。例えば、黒色粒子としては、カーボンブラック(墨)、黒色酸化鉄等の黒色顔料や、アクリル等の透明粒子をカーボンブラック等の黒色顔料で染色した樹脂粒子等が用いられる。
【0071】
また、暗色粒子41は、黒色粒子以外の、青色、紫色、黄色、赤色の各種顔料を混合して無彩色化した顔料粒子であってもよいし、それらの顔料で染色した樹脂粒子であってもよい。青色顔料としては、銅フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、コバルトブルー、群青等が用いられ、紫色顔料としては、ジオキサジンバイオレット等が用いられ、黄色顔料としては、ジスアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、黄鉛等が用いられ、赤色顔料としては、クロモフタルレッドタイペル、キナクリドンレッド、弁柄等が用いられ、緑色顔料としては、銅フタロシアニングリーン、緑青等が用いられる。また、低明度の有
彩色とした暗色粒子1であってもよく、その例としては、前記の青色、紫色、黄色、赤色、又は緑色の各種顔料を1種類又は2種類以上適宜混合分散し、必要に応じ、更に黒色顔料を混合した着色顔料、あるいは、アクリル等の透明粒子をこれら顔料で着色した樹脂粒子であってもよい。これらの暗色粒子41の中では、黒色粒子がもっとも光吸収性が高く、しかも画像コントラスト向上層自体の色相に影響を与えないので好ましい。
【0072】
暗色粒子41の粒子径として、通常は、0.1μm〜100μmの範囲内から任意に選択される。
暗色粒子41とともに暗色部400を構成する透明樹脂42としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。電離放射線硬化性樹脂とは、既に述べた様に、電磁波又は荷電粒子線、例えば紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋又は重合反応にて硬化する樹脂を意味する。このような電離放射線硬化性樹脂としては、プライマー層用として既に述べたものが使用できるので、ここでは説明を省略する。
【0073】
(透光性領域)
透光性領域50は、隣接する暗色部400,400間に位置し、透明樹脂層300の表面S1が透明保護層42Lで覆われて構成されている。この透明保護層42Lは、溝状凹部43に暗色粒子41とともに充填される透明樹脂42のみが、透明樹脂層300の溝状凹部非形成部(凸部、又は透光性開口部ともいう。)、すなわち透光性領域50を被覆して構成されたものである。透明保護層42Lの厚さtは、用いる暗色粒子1の最小粒径及び最大粒径との関係で規定されるが、後述する関係を満たす範囲であれば、0.1μm〜30μmの範囲であることが好ましい。透明保護層42Lの厚さtが0.1μm未満では、通常の製法において、透明樹脂層300の溝状凹部43以外の平坦部47である凸部上に形成した透明保護層42Lを研磨や拭き取り無しで実現することは困難であるとともに、主に透光性領域50の表面の汚染や擦り傷からの保護層としても不十分となる。また、透明保護層42Lの厚さtが30μmを超えると、表面の保護機能としては過剰品質となり、不要な価格高騰をきたすため、好ましくない。透明保護層42Lを汚染や擦り傷から保護する上では、高硬度で耐擦傷性に優れる電離放射線硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂が好ましい。
【0074】
〔透明粘着剤層〕
粘着剤層は、本発明の表示装置用前面フィルタを画像表示装置本体に接着する役割を有する層である。位置ずれ、シワ存在等、接着に失敗しても、再剥離して貼り直しが可能である。また、表示装置の廃棄時に該フィルタの分別回収が容易であるという利点もある。
【0075】
粘着剤層に用いる粘着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の粘着剤の中から、粘着性(接着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。
保管、搬送、画像表示装置の通常の使用条件下において、自然剥離、脱落することのない程度の十分な接着力を有し、且つ、貼り直しができる再剥離性を有するために、粘着剤層200の粘着力は5〜8N/25mm幅(JIS Z0237に準拠し、180℃剥離試験により測定した粘着力)であることが好ましい。
このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。
【0076】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤を適当な溶剤に溶解させた粘着剤溶液からなる塗工液を、任意の機能層の裏面又は(それがない場合は)画像コントラスト向上層CRFとなるミクロルーバ層(300+400)の裏面(S2面)上に塗工し、塗膜を形成させた後、乾燥させることにより形成される。
【0077】
これら粘着剤層の厚さとしては、5〜800μmの範囲が好ましい。厚さが5μm以上であると、粘着剤としての機能を十分に果たし、硝子基板又は画像表示装置等との十分な接着を得ることができるとともに、所定の吸収剤を添加することによって近赤外線等の所定の不要輻射を十分に吸収することができる。粘着剤層の厚さは10〜500μmの範囲がさらに好ましく、20〜300μmの範囲が特に好ましい。
なお、粘着剤層の厚さを200μm以上とすることにより、画像表示装置に加わる衝撃力を吸収緩和する耐衝撃層としての機能を持たせることもできる。
【0078】
電磁波遮蔽材層10と積層する光学機能層Foptの具体例の1例の模式的断面図を図2に示す。図2の光学機能層Foptは、画像観察者側(図2に於ける上方)から順に、外光反射防止層100、透明基材シート200、ミクロルーバ層(300及び400)、遮断(バリア)層500、及び色素含有粘着剤層600をこの順に積層してなる。
外光反射防止層100は、低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層から選択される。低屈折率層から成る反射防止層の場合は、隣接する直下の透明基材シート200よりも低屈折率の材料の層からなる。例えば、弗化マグネシウムの蒸着膜、中空シリカ粒子を分散させたフッ素系樹脂の塗膜等が用いられる。
透明基材シート200は、前記透明基材1と同様の物の中から適宜選択する。例えば、ポリエチレンテレフタレートのシートが用いられる。
ミクロルーバ層(300及び400)は、前記のものであり、透明樹脂層300の中に複数條の吸光性楔形部400を互いに平行に一定周期で埋設してなる。斯かるミクロルーバ層(300+400)は、日光、電燈光等の外光を吸光性楔形部400で選択的に吸収し、画像光は吸光性楔形部400間の透明樹脂層300から透過せしめて、外光存在下での画像コントラストを向上せしめる。
【0079】
遮断層500は、色素含有粘着剤層600の中の色素がミクロルーバ層(300+400)中の物質と反応して、其の吸収スペクトルが変動することを防止する為の層である。色素の吸収スペクトルを変動させ得る物質としては、色素含有粘着剤層600中にジイモニウム系化合物、テトラアザポルフィリンの如き有機系色素を含む場合に於いては、(1)ミクロルーバ層の透明樹脂層300が(メタ)アクリレート系の紫外線硬化性樹脂からなる場合には、アセトフェノン、ベンゾフェノン等の光反応開始剤の未反応残渣又は分解生成物、或いは該紫外線硬化性樹脂組成物を構成する(メタ)アクリレート単量体又は(メタ)アクリレートプレポリマーの未反応物等、(2)吸光性楔形部400中の酸化鉄等の遷移金属原子を含む色素を含有する場合には、これら遷移金属原子を含む色素、及び紫外線硬化性樹脂の未硬化残留樹脂等が挙げられる。かかる物質と色素含有粘着剤層の中の色素との組み合わせの場合に於いては、例えば、ガラス転移温度が80℃以上のポリメチルメタクリレートの厚さ1〜20μm程度の層が挙げられる。
【0080】
図1に、かかる光学機能層Foptと電磁波遮蔽材10とを積層してなる複合フィルタFcomの模式的断面図を示す。図1の構成の複合フィルタは、其の透明基材1側を、透明粘着剤層を介して、画像表示装置の画面上に直接接着するか、或いはフィルタ基板上に、透明粘着剤層を介して、接着した上で、更に画像表示装置の画面前面に装着される。
なお、図1又は図2の光学機能層Foptは、あくまでも1例であって、必要に応じて、適宜構成を変更し得る。かかる図1又は図2の変形形態としては、例えば、図1及び図2では、ミクロルーバ層(300及び400)は、吸光性楔形部400の広幅の底辺の方が画像表示装置側(図1及び図2に於ける下方)を向いているが、これとは逆に、吸光性楔形部400の狭幅の底辺の方が画像表示装置側(図1及び図2に於ける下方)を向いていても良い。
或いは、図1及び図2では、外光反射防止層100として低屈折率層から成る反射防止層が用いられているが、これに代えて、透明塗膜の表面に微細凹凸を賦形したり、又は透明塗膜内に光拡散性粒子を分散させた構成からなる防眩層を用いても良い。
【0081】
或いは、図1及び図2では、色素含有粘着剤層600中に全色素が添加されているが、これに代えて、色素を、色素含有粘着剤層600中及び他の層中と分散させて添加しても良い。例えば、色素含有粘着剤層600中には、着色色素及びネオン光吸収色素を添加し、近赤外線吸収色素は、基材シート200とミクロルーバ層の透明樹脂層300との間に、近赤外線吸収色素を含む塗膜として形成し得る。
さらに、図1及び図2では、色素含有粘着剤層600中に全色素が添加され、透明基材シート200と透明樹脂層300とが直接積層されているが、これに代えて、例えば、透明基材シート200の画像表示装置側(図1及び図2に於いては下方側)に、樹脂バインダー中に近赤外線吸収色素を含有する塗膜を形成し、該塗膜側と透明樹脂層300の観察者側(図1及び図2に於いては上方側)とを色素無添加の無色透明粘着剤層を介して積層せしめ、且つ色素含有粘着剤層600中には、着色色素及びネオン光吸収色素を添加し得る。
或いは、上記例示の各種形態に於いて、更に、基材シート200中に紫外線吸収色素を添加しても良い。
なお、画像表示装置から輻射される電磁波の強度が比較的弱く、周囲の機器に与える影響が無視し得る場合には、電磁波遮蔽材層10は省略し、図2の如き構成の光学機能層Foptのみを、色素含有粘着剤層600を介して、画像表示装置の画面上に直接接着したり、或いはフィルタ基板上に、色素含有粘着剤層600を介して、接着した上で、更に画像表示装置の画面前面に装着したりすることも可能である。
【0082】
〔画像表示装置〕
本発明に係る画像表示装置は、画像表示装置の表示面に、上記電磁波遮蔽材及び光学フィルタを含む複合フィルタを備えてなることを特徴とする。このような画像表示装置においては、外光が入射する場所で画像表示装置を使用してもコントラストが低下することがないとともに、画像の輝度及び画質も低下せず、画像表示装置から発生する近赤外線やネオン光、電磁波が観察者側に出射するのを防止することができる。
画像表示装置としては、従来公知のディスプレイ、例えば、PDPの他、LCD、CRT、ELD等を挙げることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0084】
〔透明基材の準備〕
透明基材1として、片面にポリエステル樹脂系の易接着層を塗工して易接着処理がされた幅1000mm、厚さ100μmで1000m巻きの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。また、プライマー層の紫外線硬化性樹脂組成物として、エポキシアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能モノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能モノマー9質量部、さらに光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名;イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部添加したものを用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、斜線版のグラビアリバースロールコート方式で、該紫外線硬化性樹脂組成物を該PETフィルムの易接着処理面に厚み20μmにコーティングし、透明基材を準備した。
【0085】
〔電磁波遮蔽材の製造〕
図7に示す装置により電磁波遮蔽材を製造した。先ず、版パターンが線幅17μm、ピッチ270μm、版深12μmであるグラビア版ロール62を用い、充填容器68に満たされた導電体材料組成物15である銀ペーストインキ(略球形状から成り、粒子径分布が0.1〜0.5μmの粒子と粒子径分布が1〜3μmの粒子との混合系で平均粒子径2μmの銀粒子93質量部を熱可塑性のアクリル系バインダー樹脂4質量部中に分散させ固形分約88.5%)をピックアップロール61により版部にコーティングし、余剰インキをドクターブレード65により掻き取った版面63と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側とをニップロール66で圧着し、引続き紫外線照射ゾーン(図示は略すが、図5で「UVゾーン」と示す部位の凹版ロール62の上方に存在)間を走行する間に、プライマー層の紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、ニップロール67を介して、版面63から離版させて、PETフィルム上にプライマー層を介して上記版胴表面の版パターンを賦形された導電体材料組成物15を転写させてメッシュ形状の凸部から成る導電体パターン層3’となし、電磁波遮蔽材(転移フィルム)を製造した。なお、透明基材はエンドレスのロールのものを用い、印刷速度10m/minでロール・トゥ・ロール方式にて印刷した。
次いで、転移フィルムを120℃の乾燥ゾーンに通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させて硬化せしめ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電体パターン層3を形成した。このときの導電体パターン層の厚さ(該導電体パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は10μmであり、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率(83%)で転移していた。また、断線や形状不良も見られなかった。
得られた電気抵抗低減化処理が未処理の電磁波遮蔽材からサンプルを切り出し、表面抵抗率を測定したところ、1.5Ω/□であった。また、得られた電磁波遮蔽材の導電体パターン層3の線條部を其の延在方向と直交する断面で切断したものを透過型電子顕微鏡で撮影したところ、一部の隣接する導電体粒子3a同士が点接触している部分は認められるのみである。
【0086】
〔電気抵抗低減化処理〕
次いで、電気抵抗低減化処理を以下の方法で行った。
サンプルを1質量%の塩酸を含んだ25℃の塩酸水溶液を満たした酸処理槽に30秒間浸漬することにより酸処理を施し、酸処理槽から取り出して、水温90℃の純水からなる温水槽に30秒間浸漬することにより温水処理を施し、しかる後、水分を飛ばす程度に乾燥させて、電磁波遮蔽材のサンプルを得た。この電磁波遮蔽材の表面抵抗率は、0.5Ω/□であり、約67%の表面抵抗率の低下が確認された。なお、酸処理後の電磁波遮蔽材の表面抵抗率は、0.8Ω/□であった。
得られた電磁波遮蔽材の導電体パターン層3の線條部を其の延在方向と直交する断面で切断したものを透過型電子顕微鏡で撮影したところ、図10のSEM断面写真に示す如く、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、かつ、該導電パターンの頂部近傍において密であり、一部の隣接する導電体粒子3a同士の中には、面(断面写真上では線)で接触しているものが多数存在することがわかる。これらは、導電体粒子3a同士が互いに融合していると判断される。そして、該導電体パターン層2の左右の斜面表面の間が、斯かる融合した導電体粒子3aの連なり(クラスター乃至団塊)によって連通していることがわかる。
【0087】
次いで、前面複合フィルタの光学フィルタ層を、市販品あるいは調製により準備した。
〔外光反射防止層〕
外光反射防止層として、防眩性低反射フィルムであるリアルック1700(日油社製)を防眩層として用いた。
【0088】
〔ミクロルーバ層の作製〕
厚さ188μmで連続帯状の透明2軸延伸PETフィルムから成る透明基材シート200の一方の表面に、液状のウレタンアクリレート系のプレポリマー及びアクリレート系単量体、及びベンゾフェノン系光開始剤の混合液とから成る液状紫外線硬化樹脂を硬化後の膜厚が155μmとなる様に塗布した。次に、版表面の面方向に沿って円周方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する断面が、高さ150μm、版表面側底辺の長さが30μm、版から遠い側の底辺の長さが6μmの台形となる溝状凸部を、60μm周期で複数條互いに平行に配列した凸條群(暗色凸條部と同形状)を形成されたロール金型とPETフィルムとの間に、塗布した紫外線硬化樹脂を挟んだ状態で水銀燈からの紫外線を照射することにより、該紫外線硬化樹脂を架橋硬化せしめて透明樹脂層とし、しかる後ロール金型を離型することにより、該透明樹脂層表面に、該透明樹脂層表面の面方向に沿って一方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する断面が、高さ150μm、透明樹脂層表面側底辺の長さが30μm、PETフィルム側の底辺の長さが6μmの台形となる凹條溝群を表面に有する透明樹脂層300を該透明基材200の一方の面上に形成した。
上述の工程により形成された透明樹脂層300の該凹條溝群を含む透明樹脂層300の表面に、透明樹脂中に黒色の光吸収粒子が添加された黒色の液状材料を全面に塗工し、次いで該塗膜を鉄製ドクターブレードでスキージし該凹條溝外の該液状材料のみを掻き取り除去し、該凹條溝内のみに該液状材料を充填して暗色の吸光性楔形部400を形成することで、ミクロルーバ層CRF(300+400)を完成した。また、透明樹脂層42と暗色凸條部400とが接する斜面が、出光面の法線Vとなす角度θは、45度であった。
【0089】
〔色素含有層〕
(1.近赤外線・ネオン光吸収及び調色用粘着フィルム1の作製)
透明樹脂としてアクリル樹脂系粘着剤〔東洋インキ(株)製、感圧性粘着剤 BPS6212(固形分27%) 〕100質量部、溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる組成物の固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解した樹脂溶液中に、対イオン(X- )が1価陰イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」であるジインモニウム系近赤外線吸収色素0.03質量部 、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素〔IR−14:商品名、(株)日本触媒製〕0.02質量部、〔IR−12:商品名、(株)日本触媒製〕0.05質量部、 の3種類の近赤外線吸収色素及び粘土鉱物(商品名クニピアD36);クニミネ工業株式会社製)0.05質量部、さらに、テトラアザポルフィリン系のNe光吸収化合物「TAP−2」(商品名、山田化学(株)製)を0.01質量部、可視域の調色色素として「カヤセットBlueA−2R」(商品名、日本化薬製)を0.015質量部、及び紫外線吸収剤(サイテック社製、CyasorbUV24)4質量部、光安定剤(チバ社製、TINUBIN 144)2質量部、酸化防止剤(東京化成工業社製、1,2,3ベンゾトリアゾール)0.015質量部を添加して十分分散させて得た塗布用溶液を用い、剥離紙上に塗布し乾燥させ、組成物表面を別の剥離紙で貼り合せ、厚みが100μmの近赤外線・ネオン光吸収及び調色用粘着フィルム1を得た。
【0090】
(2.近赤外線吸収・ネオン光吸収・調色コート層2)
防眩性低反射フィルムであるリアルック1700(日油社製)の防眩層と反対側に、前記近赤外線・ネオン光吸収及び調色用粘着フィルム1に用いた塗布液を塗布し、乾燥させ、厚みが25μmの近赤外線・ネオン光吸収及び調色コート層を得た。
【0091】
(透明粘着剤層)
複合フィルタの構成層及び電磁波遮蔽材の透明基材側を貼り合わせるための粘着剤として厚み25μmの粘着剤(巴川製紙社製、TD−06A)を用いた。
一方、実施例2においては、電磁波遮蔽材層の導電体パターンの平坦化のため、アクリル系樹脂からなる粘着剤を積層した。
【0092】
(画像表示装置前面用複合フィルタの作製)
上記で得られた各機能層、粘着剤層を用い、図12(A)〜(C)に示すような層構成に積層して画像表示装置前面用複合フィルタを得た。
【0093】
(前面用複合フィルタの反射率の測定)
作製した該前面用複合フィルタの電磁波遮蔽材層の基材側の無色透明粘着剤層700に、黒色テープ(ヤマト社製ビニールテープ、品番:No.200 黒)を気泡なく貼り付け、分光器UV−3100PC(島津社製)を用い、C光源を用い、複合フィルタの反射防止層の法線に対する入射角を2°として、反射測定をSCE(Specular Component Exclude)で行った。
【0094】
(前面用複合フィルタの反射色の測定)
前面用複合フィルタの反射防止層側の反射色の色調を、JIS−Z8729に準拠した表色系「L*、a*、b*」で表すべく、分光側色計CM−600d(コニカミノルタ社製)を用い、F10光源を用い、SCEで測定を行った。L*(明度)が小さいことに加えて、「a*」及び「b*」の絶対値が小さい(彩度が低い)方が、複合フィルタが非視認性が高く好ましく、また、b*<0の方が、青みが強く好ましいと評価できる。
【0095】
実施例1
図12(A)に示すように、画像表示装置(PDP)側から、無色透明粘着剤層700、電磁波遮蔽材層10、平坦化層を兼ねる近赤外線・ネオン光吸収及び調色用色素含有粘着剤層600、透明基材シート、(暗色楔PDP側向き)ミクロルーバ層CRF(300+400)、無色透明粘着剤層700、基材フィルム、反射防止層の順で積層して、複合フィルタを得た。なお、透明基材シート200とは、電磁波遮蔽層、ミクロルーバ層、及び反射防止層の透明基材として用いたPETシートを示す。
得られた複合フィルタの反射率(Y)、反射色(L*、a*、b*)を上記の測定方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0096】
実施例2
図12(B)に示すように、画像表示装置(PDP)側から、無色透明粘着剤層、基材、電磁波遮蔽材層、平坦化層を兼ねる無色透明粘着剤層、基材、(暗色楔PDP側向き)ミクロルーバ層、無色透明粘着剤層、近赤外線・ネオン光吸収及び調色コート層、基材、反射防止層の順で積層して、複合フィルタを得た。
得られた複合フィルタの反射率(Y)、反射色(L*、a*、b*)を上記の測定方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0097】
実施例3
図12(C)に示すように、画像表示装置(PDP)側から、無色透明粘着剤層、基材、電磁波遮蔽材層、平坦化層を兼ねる近赤外線・ネオン光吸収及び調色用粘着剤層(フィルム1)、基材、(暗色楔観察者側向き)ミクロルーバ層、基材、反射防止層の順で積層して、複合フィルタを得た。
得られた複合フィルタの反射率(Y)、反射色(L*、a*、b*)を上記の測定方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示すように、本発明の実施例の複合フィルタは、いずれも反射率が極めて低く、かつ、実施例1及び実施例2では、反射色の明度、彩度も近似していた。
一方、ミクロルーバ層の楔の向き及びPET基材層数が2で、実施例1及び2より少ない実施例3では、明度が一番低く、a*が大、b*が小の傾向で、目視においても、無色に近い傾向であった。
【0100】
本発明の画像表示装置前面用フィルタにおいては、ディスプレイの視認性および周辺の光源、屋内の照明装置等の写りこみを低減する観点から反射率(Y)は1.3%以下であることが好ましい。
また、表色系で示す色度座標におけるL*、a*、及びb*に関し、L*はPDPのスペック(透過率)にも依存するのでそれらを勘案して、少なくとも20以下とすることが好ましい。また、a*、及びb*は下記の範囲であることが、赤味や黄味は余り好まれないと言う実情から −10<a*<10、−10<b*<10 が好適な範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の画像表示装置前面用複合フィルタは、可視透過率を高く、反射率を低くし、かつフィルタの反射色つまり反射光の色度座標を一定の範囲になるようにしているので、
外観特性に優れ、外光が入射する場所で画像表示装置を使用してもコントラストが低下することがないとともに、画像の輝度及び画質も低下せず、画像表示装置から発生する近赤外線やネオン光、電磁波が観察者側に出射するのを防止することができ、画像表示装置前面用複合フィルタとして有効に利用できる。
また、構成するフィルタの順番及び/又はコントラスト向上層としてのミクロルーバの向きを変えて積層することによって反射光の色度座標が変化するので、複合フィルタの表面(反射防止層)側から見た色相、明度を、用途、要望、性能に応じて適宜選択して、多様な要請に対応可能な画像表示装置前面用複合フィルタとして有効に利用できる。
また、本発明の画像表示装置は、上記の特徴を有する複合フィルタを前面に配置してなるので、非点灯時においても、全体として外観特性に優れ、顧客の嗜好に適合した画像表示装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 透明基材
2 プライマー層
3 導電体パターン層(3’導電体材料組成物層)
4 金属層
5 サイドエッジ
6 凹み
7 電磁波シールドパターン部
8 接地部
9 保護層
10 電磁波遮蔽材
15 導電体材料組成物
41 暗色粒子
42 透明樹脂
43 溝状凹部
45 斜面
47 平坦部
50 透光性領域
51 グラビアロール
52 バックアップロール
53 樹脂組成物充填容器
54 ドクターブレード
61 ピックアップロール
62 凹版ロール
63 版面
64 凹部
65 ドクターブレード
66 ニップロール
67 ニップロール
68 充填容器
100 外光反射防止層(低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層)
200 透明基材シート
300 ミクロルーバ層の透明樹脂層
400 ミクロルーバ層の吸光性楔形部
500 遮断(バリア)層
600 色素含有粘着剤層
700 無色透明粘着剤層
A 導電体材料層が形成されている部分
TA Aの厚さ
B 導電体材料層が形成されていない部分
TB Bの厚さ
Fcom 複合フィルタ
Fopt 光学機能層
S1 透明基材の一方の面
S2 透明基材の他方の面
CRF (=300+400)ミクロルーバ層(コントラスト向上層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者側から見て、最表面に外光反射防止層、最裏面に電磁波遮蔽材層を配し、その中間に少なくとも色素含有層及びミクロルーバ層を適宜の順番で、且つ、該ミクロルーバ層及び該電磁波遮蔽層を各々適宜の向きで積層してなる画像表示装置前面用複合フィルタであって、
(i)該外光反射防止層は、低屈折率層から成る反射防止層又は防眩層からなり、
(ii)該色素含有層は、近赤外線領域に吸収をもつ色素、ネオン光領域に吸収域をもつ色素、ネオン光領域以外の可視光領域に吸収域をもつ調色色素、及び紫外線域に吸収域を有する色素からなる群から選択される少なくとも1種の光吸収色素と樹脂バインダーからなり、
(iii)該ミクロルーバ層は、透明基材の一方の面に、該透明基材の面内方向に沿って平行に並設された直線状の、且つその延長方向と直交する断面形状が台形又は略台形の暗色部と、隣接する前記暗色部間の透光性領域とを有し、
(iv)該電磁波遮蔽材層は、透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体組成物からなる導電体パターン層を有し、前記プライマー層のうち前記導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電体パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、該導電体組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電体パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電体パターンの頂部近傍において密である、
ことを特徴とする画像表示装置前面用複合フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の複合フィルタを画像表示装置の本体前面に配置してなる、
ことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−154211(P2011−154211A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15955(P2010−15955)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】