説明

画像表示装置

【課題】コントラストを向上させることができる画像表示装置を提供すること。
【解決手段】発光素子と、該発光素子の一端に電気的に接続される駆動トランジスタ12と、該駆動トランジスタ12に接続される容量素子15と、を有する画素を複数備えた画像表示装置であって、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める駆動トランジスタ12の面積S2の割合(S2/S1)が0.05以上であることを特徴とする画像表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関するものであり、特に、コントラストを向上させることができる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する有機EL(Electronic Luminescent)素子を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
かかる画像表示装置は、例えば、行列状に配置された複数の画素回路と、複数の画素回路に対して、複数の信号線を介して後述する輝度信号を供給する信号線駆動回路と、画素回路に対して、複数の走査線を介して輝度信号を供給する画素回路を選択するための走査信号を供給する走査線駆動回路とを備える。
【0004】
また、上記画素回路(1画素分)は、電流注入によって発光する機能を有し、上述した有機EL素子である発光素子と、発光素子に流れる電流を制御するためドライバ素子と、2つまたは3つのスイッチング素子とを備えている。これらのドライバ素子およびスイッチング素子は、薄膜トランジスタ(TFT)である。従って、従来の画像表示装置は、1つの画素回路あたり、3つ(1つのドライバ素子+2つのスイッチング素子)または4つ(1つのドライバ素子+3つのスイッチング素子)の薄膜トランジスタを有する3TFT構成または4TFT構成とされている。
【0005】
図15−1は、非特許文献1において提案されている画像表示装置の要部(1画素分)の構成を示す図である。同図に示す画像表示装置において、信号線供給回路102は、信号線101を介して輝度信号を供給する機能を備える。走査線駆動回路104は、走査線103を介して輝度電位を供給する画素回路を選択するための走査信号を供給する機能を備える。電源供給回路105は、静電容量112の一方の電極およびスイッチング素子108の電極へハイレベル電位を供給する機能を備える。リセット制御回路114は、リセット線115を介してスイッチング素子109へリセット電位を供給する。駆動制御回路116は、駆動制御線117を介して、スイッチング素子118へ制御信号を供給する。
【0006】
また、画像表示装置においては、発光素子107、スイッチング素子108、スイッチング素子109、静電容量112、スイッチング素子118、静電容量119およびスイッチング素子122が1画素分の画素回路を構成している。発光素子107は、電流注入によって発光する機構を有し、上述した有機EL素子によって形成される。スイッチング素子108は、発光素子107に流れる電流を制御するための機能を有する。
【0007】
ここで、発光素子107は、図16−1に示すように、閾値電圧Vth,i-v以上の電位差(アノード−カソード間電位差)が生じることにより、電流が流れるという電流−電圧特性を有している。また、発光素子107は、図16−2に示すように、閾値電圧Vth,L-v以上の電位差(アノード−カソード間電位差)が生じることにより、発光(輝度>0)するという輝度−電圧特性を有している。
【0008】
また、閾値電圧Vth,i-vは、閾値電圧Vth,L-vよりも低い値とされている。従って、発光素子107のアノード−カソード間の電位差が、閾値電圧Vth,L-v以上である場合には、発光素子107に電流が流れるとともに、発光するという状態とされる。なお、発光素子107のアノード−カソード間の電位差が、閾値電圧Vth,i-v以上閾値電圧Vth,L-v未満である場合には、発光素子107に電流が流れるが、発光しないという状態とされる。
【0009】
具体的には、ドライバ素子108は、第1端子と第2端子との間に印加される駆動閾値以上の電位差に応じて発光素子107に流れる電流を制御する機能を有し、かかる電位差が印加される間、発光素子107に対して電流を流し続ける機能を有する。ドライバ素子108は、p型の薄膜トランジスタによって形成され、第1端子に相当するゲート電極と、第2端子に相当するソース電極との間に印加される電位差に応じて発光素子107の発光輝度を制御している。
【0010】
上記構成において、リセット工程、閾値電圧検出工程、データ書き込み工程、発光工程という4つの工程が繰り返し実行される。以下では、最初のリセット工程について説明する。
【0011】
最初の工程として、過去の発光の際にドライバ素子108のゲート電極に印加された電位をリセットするリセット工程が行われる。このリセット工程においては、図15−2に示すように、信号線101がハイレベル電位とされ、リセット線115がローレベル電位とされ、駆動制御線117がローレベル電位とされ、走査線103がローレベル電位とされる。
【0012】
ここで、発光素子107のアノード−カソード間の電位差は、スイッチング素子118がオン状態で、Vaと0電位(発光素子107のカソードの電位)との差である。
【0013】
図17は、リセット工程における過渡応答特性を示す図である。すなわち、同図には、図15−1に示した電位Vaと、電位Vbと、発光素子107を流れる電流id_OLEDとの過渡応答特性が図示されている。
【0014】
この図からわかるように、Time=0.00でリセット工程が実行されると、ドライバ素子108のソース電極の電位がハイレベル電位であるため、電位Vbが急激に低下するとともに、電位Vaが上昇し、発光素子107のアノード−ソース間の電位差が急激に高くなり、図16−2に示す閾値電圧Vth,L-v以上となる。これにより、発光素子107を電流id_OLEDが流れるとともに、発光する。なお、リセット工程における発光は、後述するように、本来、不要なものである。
【0015】
そして、リセット工程が終了すると、上述した閾値電圧検出工程、データ書き込み工程を経て、発光工程で発光素子107が発光される。
【0016】
画像表示装置においては、1つの画素回路あたりの薄膜トランジスタの数が多いほど、精細度が低くなることが知られている。従って、3TFT構成または4TFT構成よりも2TFT構成のほうが精細度が高くなる。
【0017】
図18−1は、非特許文献2において提案されている2TFT構成の画像表示装置の要部(1画素分)の構成を示す図である。また、図18−2は、その動作を説明するタイムチャートを示す図である。図18−1に示した画像表示装置は、スイッチング素子T1、ドライバ素子T2、静電容量CCsおよび発光素子OLEDが図示のように接続されており、2TFT構成(スイッチング素子T1およびドライバ素子T2)とされている。スイッチング素子T1およびドライバ素子T2は、薄膜トランジスタである。
【0018】
上記構成において、図18−2の期間t1および図19−1に示すように、準備工程で、走査線Selectの電位がVgLであり、データ線Dataの電位が0電位であり、コモン線COMの電位がVGGであると、スイッチング素子T1がオフ状態とされ、ドライバ素子T2がオン状態とされ、ドライバ素子T2のゲート電極の電位aがVGG+VOLED(発光素子OLEDの電圧降下分)+Vdata'(データ電圧)+Vt(ドライバ素子T2の閾値電圧)となり、発光素子OLEDのアノードの電位bは、VGG+VOLEDとなる。これにより、電流iが流れ、電位aがVGG+VOLED+Vdata'+VtからVdata'+Vtとなり、電位bがVGG+VOLEDから0電位となる。
【0019】
つぎに、図18−2の期間t2および図19−2に示すように、閾値電圧検出工程で、走査線Selectの電位がVgHであり、データ線Dataの電位が0電位であり、コモン線COMの電位が0であると、スイッチング素子T1がオン状態とされ、ドライバ素子T2がオン状態とされ、ドライバ素子T2のゲート電極の電位aが0となり、電位bが0電位から−α(Vdata'+Vt)−(1−α)VGGとなる。そして、電流iが流れ、電位bが−α(Vdata'+Vt)−(1−α)VGGから−Vtとなる。ここで、αは、CCs/(CCs+COLED)である。CCsは、静電容量CCsの値である。COLEDは、発光素子OLEDの静電容量の値である。
【0020】
つぎに、図18−2の期間t3および図19−3に示すように、データ書き込み工程で、走査線Selectの電位がVgHであり、データ線Dataの電位がデータ電位Vdataであり、コモン線COMの電位が0であると、スイッチング素子T1がオン状態とされ、ドライバ素子T2がオン状態とされ、ドライバ素子T2のゲート電極の電位aが0からVdataとなり、電位bが−VtからαVdata−Vtとなる。そして、電流iが流れる。ここで、電位bは、VdataがVt未満である場合、−VtからVdata−Vtとなる。一方、VdataがVtよりも大きい場合、電位bは、0電位となる。
【0021】
つぎに、図18−2の期間t4および図19−4に示すように、発光工程で、走査線Selectの電位がVgLであり、データ線Dataの電位が0電位であり、コモン線COMの電位が−VEEであると、スイッチング素子T1がオフ状態とされ、ドライバ素子T2がオン状態とされ、ドライバ素子T2のゲート電極の電位aがVt+VOLED+VEEまたはVdata+VOLED+VEEとなる。
【0022】
ここで、電位aがVt+VOLED+VEEの場合は、図19−3に示した電位bがVdata−Vt(Vdata<Vt)に対応している。この場合、発光素子OLEDには、電流id(=0)が流れない(id=0)一方、電位aがVdata+VOLED+VEEの場合は、図19−3に示した電位bが0(Vdata>Vt)に対応している。この場合には、発光素子OLEDに電流id(=(β/2)(Vdata−Vt2)が流れる。すなわち、発光素子OLEDは、VdataとVtとの大小関係により、電流idが流れたり、流れなかったりするため、発光したり、しなかったりする。すなわち、発光素子OLEDの発光状態は、ドライバ素子T2の閾値電圧Vtに依存する。
【0023】
【非特許文献1】Dawson他、「ポリシリコンを用いたアクティブマトリクス型有機LEDディスプレイのための新しい画素回路デザイン(Design of an Improved Pixel for Polysilicon Active-Matrix Organic LED Display)」、ソサイエティ・オブ・インフォメーション・ディスプレイ 1998 ダイジェスト(Society of Information Display 1998 Digest)、1998年、p.11−14
【非特許文献2】J.L.Sanford et al.,Proc. of IDRC 03 p.38
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、非特許文献1で提案されているような画像表示装置では、図15−1に示したドライバ素子108のソース電極の電位がハイレベル電位であるため、リセット工程で発光素子107のアノード−カソード間の電位差が図16−2に示す閾値電圧Vth,L-v以上となるため、リセット工程で発光素子107が発光してしまい、本来黒画素が望ましいにもかかわらず白画素となり、コントラストが低下するという問題があった。
【0025】
また、上記した画像表示装置は、リセット工程においてドライバ素子がオン状態となっていることから、リセット工程で発光素子に流れる電流量が大きくなる。それ故、リセット工程における発光素子の発光量が大きくなり、コントラストが更に低下するという問題があった。
【0026】
従来の画像表示装置として、精細度を高めるために、図18−2および図19−1〜図19−4を参照して説明した2TFT構成のものが提案されているが、図19−3および図19−4を参照して説明したように、VdataとVtとの大小関係により、発光素子OLEDに電流idが流れる場合と流れない場合があり、発光素子OLEDの発光状態が不安定となる。すなわち、かかる2TFT構成の画像表示装置は、実用に供さないのである。
【0027】
従って、従来の画像表示装置は、実用段階では依然として3TFT構成または4TFT構成であり、精細度を高めることが難しいという問題があった。
【0028】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コントラストを向上させることができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像表示装置は、発光素子と、該発光素子に電気的に接続される駆動トランジスタと、該駆動トランジスタに電気的に接続される容量素子と、を有する画素を複数備え、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める駆動トランジスタの面積S2の割合(S2/S1)が0.05以上であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明にかかる画像表示装置は、発光素子と、該発光素子に電気的に接続される駆動トランジスタと、該駆動トランジスタに電気的に接続され、該駆動トランジスタと平面的に異なる領域に配置される容量素子と、を有する画素を複数備え、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める容量素子の面積S3の割合(S3/S1)が0.05以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、リセット工程において、発光素子に電流が流れ、かつ発光素子を非発光とする所定の電位を供給するようにしたことから、発光素子を介して駆動トランジスタのゲート電極の電位をリセットしても、発光素子が無駄に発光する時間を低減することができ、従来と比較してコントラストを向上させることができるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明によれば、1画素あたりのトランジスタ数を2つ、あるいは3つまで低減しても、駆動トランジスタの駆動閾値を検出・補償することができ、精細度を高めることができるという効果を奏する。
【0033】
また本発明によれば、1画素あたりの駆動トランジスタに占める面積、あるいは、1画素あたりの容量素子の面積を5%以上に大きくすることができる。従って、駆動トランジスタの抵抗を小さくして画像表示装置の消費電力を小さくすることができる。また1画素の面積が7000μm2〜50000μm2と小さい場合であっても、容量素子の容量を適切な大きさに確保しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明にかかる画像表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態1にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。図1に示す画像表示装置は、コントラストを向上させるべくリセット工程での発光を防止する機能を備え、行列状に配置された複数の画素回路1と、複数の画素回路1に対して、複数の信号線2を介して後述する輝度信号を供給する信号線駆動回路3と、輝度信号を供給する画素回路1を選択するための走査信号を複数の走査線4を介して画素回路1に供給する走査線駆動回路5とを備える。
【0036】
また、画像表示装置は、画素回路1内に備わる発光素子10(後述)のアノードに対して一定のオン電位を供給する定電位供給回路6と、画素回路1内に備わる第2スイッチング素子11(後述)の駆動を制御線9を介して制御する駆動制御回路7と、ドライバ素子12のソース電極に、リセット工程でオン電位、その他の工程で0電位を供給する電源供給回路8とを備える。
【0037】
画素回路1は、アノードが定電位供給回路6と電気的に接続された発光素子10と、発光素子10のカソードに一方の電極が接続された第2スイッチング素子11と、n型の薄膜トランジスタによって形成され、ドレイン電極が第1スイッチング素子13の他方の電極に接続され、ソース電極が電源供給回路8と電気的に接続されたドライバ素子12と、ドライバ素子12を形成する薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間の導通状態を制御する第1スイッチング素子13によって形成された閾値電位検出部14とを備える。
【0038】
発光素子10は、電流注入によって発光する機構を有し、例えば有機EL素子によって形成される。有機EL素子は、Al、Cu、ITO(Indium Tin Oxide)等によって形成されたアノード層およびカソード層と、アノード層とカソード層との間にフタルシアニン、トリスアルミニウム錯体、ベンゾキノリノラト、ベリリウム錯体等の有機系の材料によって形成された発光層とを少なくとも備えた構造を有し、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する。
【0039】
第2スイッチング素子11は、発光素子10とドライバ素子12との間の導通を制御する機能を有し、本実施形態1では、n型の薄膜トランジスタによって形成される。すなわち、薄膜トランジスタのドレイン電極とソース電極とがそれぞれ発光素子10、ドライバ素子12に接続される一方で、ゲート電極が駆動制御回路7と電気的に接続された構成を有し、駆動制御回路7から供給される電位に基づいて、発光素子10とドライバ素子12との間の導通状態を制御している。
【0040】
ドライバ素子12は、発光素子10に流れる電流を制御するための機能を有する。具体的には、ドライバ素子12は、第1端子と第2端子との間に印加される駆動閾値以上の電位差に応じて発光素子10に流れる電流を制御する機能を有する。本実施形態1では、ドライバ素子12は、n型の薄膜トランジスタによって形成され、第1端子に相当するゲート電極と、第2端子に相当するソース電極との間に印加される電位差に応じて発光素子10の発光輝度を制御している。
【0041】
静電容量15は、信号線駆動回路3と組合わさることによって輝度電位/基準電位供給部16を形成する。この輝度電位/基準電位供給部16は、輝度電位供給手段として、ドライバ素子12の駆動閾値に対応した電位差(以下、「閾値電圧」と称する)を検出する機能と、基準電位を供給する機能を有する。
【0042】
閾値電位検出部14は、ドライバ素子12の閾値電圧を検出するためのものである。本実施形態1では、閾値電位検出部14は、n型の薄膜トランジスタたる第1スイッチング素子13によって形成されている。すなわち、第1スイッチング素子13は、薄膜トランジスタの一方のソース/ドレイン電極が、ドライバ素子12のドレイン電極に接続され、他方のソース/ドレイン電極が、ドライバ素子12のゲート電極に接続され、薄膜トランジスタのゲート電極が走査線駆動回路5に電気的に接続された構成を有する。従って、閾値電位検出部14は、走査線駆動回路5から供給される電位に基づいて第1スイッチング素子13を構成する薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間を導通させる機能を有し、ゲート・ドレイン間を導通させた際に閾値電圧を検出する機能を有する。
【0043】
図2は、動作時における本実施形態1にかかる画像表示装置の各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。図2において、走査線(n−1)は、前段に位置する画素回路1に対応した走査線および制御線のタイムチャートを参考のために示したものである。図3−1〜図3−4は、図2に示す期間t1〜期間t4に対応した画素回路1の状態を示した図である。
【0044】
まず、過去の発光の際にドライバ素子12のゲート電極に印加された電位をリセットするリセット工程が行われる。具体的には、図2の期間t1および図3−1に示すように、電源供給回路8、駆動制御回路7および走査線4(走査線駆動回路5)の電位がオン電位に変化する。なお、定電位供給回路6の電位は、常時、一定のオン電位とされている。一方、信号線2の電位は、VDLとされている。
【0045】
すなわち、図3−1に示すように、第2スイッチング素子11および第1スイッチング素子13は、オン状態となっている。一方、ドライバ素子12は、電源供給回路8の電位がオン電位であるため、オフ状態となっている。従って、静電容量15を形成する第1電極17の電位は、定電位供給回路6から発光素子10のアノード側に供給される電位から、発光素子10内における電圧降下分を差し引いた値となる。一般に定電位供給回路6から供給されるオン電位は十分高い値を有することから第1電極17の電位(すなわち、ドライバ素子12のゲート電極の電位)は、閾値電圧Vthよりも高い値であるVrに保持されることとなる。
【0046】
一方で、図2に示すように信号線2の電位がVDLとなっていることから、静電容量15を形成する他方の電極である第2電極18の電位は、VDLとなる。従って、図2の期間t1および図3−1に示す工程において、第1電極17に対してはVr(>Vth)の電位が供給され、第2電極18に対しては電位VDLが供給される。
【0047】
図4は、図3−1に示す第1スイッチング素子13がオン状態(ドライバ素子12:オフ状態)とされてからの過渡応答特性を示す図である。すなわち、同図には、発光素子10のカソードの電位Va'と、ドライバ素子12のゲート電極(第1電極17)の電位Vr(>Vth)と、発光素子10を流れる電流id_OLED'との過渡応答特性が図示されている。
【0048】
この図からわかるように、Time=0.00で第1スイッチング素子13がオン状態(ドライバ素子12がオフ状態)とされると、電位Vrが上昇するとともに、電位Va'がわずかに低下した後、上昇する。
【0049】
ここで、実施形態1においては、電位Va'がわずかに低下した場合における発光素子10のアノード−カソード間の電位差(定電位供給回路6からのオン電位と電位Va'との差)が、前述した閾値電圧Vth,i-v(図14−1)以上であって、閾値電圧Vth,L-v(図14−2)未満となるように、つぎの(1)式のパラメータCsおよびCOLEDが設定されている。パラメータCsは、静電容量15の値である。パラメータCOLEDは、発光素子10の静電容量成分である。
th,L-v>(Cs/(Cs+COLED))・Vth,i-v (1)
従って、実施形態1においては、リセット工程で発光素子10のアノード−カソード間の電位差が閾値電圧Vth,i-v(図14−1)以上であって、閾値電圧Vth,L-v未満であるため、図4に示したようにわずかに電流id_OLED'が流れるが、発光しない。
【0050】
つぎに、図2の期間t2および図3−2に示すように、電源供給回路8の電位がオン電位から0電位にされる。また、駆動制御回路7の電位がオン電位からオフ電位にされて第2スイッチング素子11がオフ状態とされる。また、走査線4の電位がオン電位に維持されて第1スイッチング素子13がオン状態を維持する。さらに、信号線2の電位が0電位に維持される。
【0051】
まず、第1電極17の電位の変化について説明する。上述のようにドライバ素子12がオン状態に変化することから、ドライバ素子12においてゲート電極とドレイン電極とが電気的に接続されることとなる。一方で、既に述べたように前工程までにドライバ素子12のゲート電極には閾値電圧Vthよりも高い値であるVrが保持されており、ソース電極には電源供給回路8によって電位VDLが供給されることから、ゲート・ソース間電位差はVrとなり、ドライバ素子12はオン状態となっている。
【0052】
従って、ドライバ素子12に関して、ゲート電極から第1スイッチング素子13を介してドレイン電極、ソース電極のそれぞれが導通した状態となり、ゲート電極に保持された電荷に基づいて電流iが流れることとなる。かかる電流iは、ドライバ素子12がオフ状態になるまで流れることとなるため、最終的には、ドライバ素子12におけるゲート・ソース間電位差は閾値電圧Vthと等しい値となり、ソース電極は0電位を維持することからドライバ素子12のゲート電極の電位、すなわち第1電極17の電位はVthとなる。一方、第2電極18の電位は、信号線2を介して供給されるVDLとされる。なお、期間t2は例えばアモルファスシリコンによる薄膜トランジスタのような移動度の低い素子をドライバ素子として利用する場合に設置することが望ましく、ポリシリコンのように移動度の高いものは、この期間t2を設置しなくても動作させることが可能である。
【0053】
つぎに、図2の期間t3および図3−3に示すように、信号線駆動回路3から信号線2を介して輝度電位Vdataが供給される。この際にゲート電極の電位は再びVthより高くなり、第1スイッチング素子13およびドライバ素子12を介して電流が流れ、再びドライバ素子12のゲート電極の電位は、Vthとなる。最後に、発光工程において、図2の期間t4および図3−4に示すように、信号線駆動回路3から信号線2を介して基準電位VDHが供給されることにより、第1電極17の電位がVth−Vdata+VDHとされ、発光素子10に電流id(=(β/2)(VDH−Vdata2)が流れ、発光素子10が発光する。なお、βは、ドライバ素子12のキャリアの移動度に比例する値であり、その画素のドライバ素子12に固有の値である。
【0054】
以上説明したように、実施形態1によれば、過去の発光の際にドライバ素子12の第1端子(ゲート電極)に印加された電位をリセットするリセット工程において、発光素子10に電流が流れかつ発光しない所定範囲内の電位差を生じさせる電位を各部に供給することとしたので、リセット工程で発光せず、コントラストを向上させることができる。
【0055】
図5は、実施形態1の画像表示装置の拡大平面図である。特に図5は、発光素子10の下部電極(非表示)から下の層のレイアウトを示している。1つの画素内に3つのTFT(ドライバ素子12、第1スイッチング素子13、第2スイッチング素子11)と、静電容量15とが示されている。各素子を構成する層は、下層から順に、下部電極層(図中、ドットパターンで塗られた領域)と、絶縁層(図中、黒で塗りつぶされた部分以外の領域)と、活性層(図中、斜線で塗られた領域)と、上部電極層(図中、実線で囲まれ且つ塗りつぶしのない領域)とから構成されている。なお、図中の端子LTには、発光素子10の一端が接続される。
【0056】
下部電極層は、基板上に形成され、ドライバ素子12のゲート電極と、第1スイッチング素子13のゲート電極(走査線4)と、第2スイッチング素子11のゲート電極(制御線9)と、電源供給回路8に接続される電源線GLと、静電容量15の第1電極17とを含んでいる。絶縁層は、下部電極層の上の2つの開口(図中、黒で塗りつぶされた部分)を除いた全面に形成されている。この絶縁層は、3つのTFTにとってはゲート絶縁膜として機能し、静電容量15にとっては誘電体層として機能する。活性層は、絶縁層の上に形成され、3つのTFTの活性層を含んでいる。上部電極層は、活性層の上に形成され、3つのTFTのソース/ドレイン電極と、静電容量15の第2電極18と、信号線2とを含んでいる。
【0057】
また前記絶縁層は、電源供給回路8に接続される電源線GLとドライバ素子12のソース電極とを接続する開口と、静電容量15の第1電極17およびドライバ素子12のゲート電極と第1スイッチング素子のドレイン電極と接続する開口と、を有しており、これらの開口で上下の層と導通をとっている。
【0058】
なお、各層の構成材料として、下部電極層と上部電極層はアルミニウム又はその合金等を使用し、絶縁膜層はシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、又はそれらの混合物等を使用し、活性層はアモルファスシリコン、多結晶シリコン等を使用することができる。
【0059】
同図を見てわかるように、本実施形態1においては、閾値電圧Vthの補償を3TFTによって実現できるため、その分1画素のレイアウトに余裕ができ、ドライバ素子12や静電容量15の面積が大きくなっている。従って、ドライバ素子12の抵抗を小さくして画層表示装置の消費電力を小さくすることができる。特にドライバ素子12が、抵抗の大きいアモルファスシリコントランジスタにより形成されている場合、その効果が大きい。また本実施形態1によれば、1画素あたりの大きさが7000μm2〜50000μm2と非常に小さい場合であっても、静電容量15の容量を適度な大きさに確保することができる。
【0060】
なお、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占めるドライバ素子12の面積S2の割合(S2/S1)、および/または1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める静電容量15の面積S3の割合(S3/S1)が0.05以上(好ましくは0.07以上、より好ましくは0.1以上である。)に設定するのが望ましい。本実施形態1においては1画素あたりの大きさ51μm×153μmにおいて、S2/S1を0.1、S3/S1を0.12程度確保している。
【0061】
またS2/S1およびS3/S1は0.25以下であることが好ましい。S2やS3が大きすぎると、他の回路が占有できる面積が小さくなり、回路配置が煩雑になるからである。
【0062】
またドライバ素子12には第1および第2スイッチング素子13,11よりも大電流が流れるため、各第1および第2スイッチング素子13,11の面積S4に対するドライバ素子の面積S2の割合(S2/S4)を2〜10(より好ましくは5〜10)に設定することが望ましい。
【0063】
なお、面積S1とは、各画素を等しい面積で区分する境界線によって囲まれる面積をいう。また面積S2とは、ドライバ素子12のソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に挟まれた活性層との総和の面積をいう。なお、ソース電極およびドレイン電極とは、これらの電極を構成する電極層のうち、活性層と接する領域をいう。さらに面積S3とは、静電容量15の第1電極17と第2電極18が対向する領域の面積をいう。また面積S4とは各スイッチング素子11,13のソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極とに挟まれた活性層の総和の面積をいう。
【0064】
さて、前述した実施形態1では、図1に示すように、画素回路1に3つの薄膜トランジスタ(第2スイッチング素子11、ドライバ素子12および第1スイッチング素子13)を有する3TFT構成のリセット工程で発光を防止する機能を適用した例について説明したが、1つの画素回路に2つの薄膜トランジスタを有する2TFT構成にかかる機能を適用してもよい。以下では、この例を実施形態2として説明する。
【0065】
図6は、本発明の実施形態2にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。図6に示す画像表示装置は、図1に示した画像表示装置と同様にして、コントラストを向上させるべくリセット工程での発光を防止する機能を備え、行列状に配置された複数の画素回路20と、複数の画素回路20に対して、複数の信号線21を介して後述する輝度信号を供給する信号線駆動回路22と、画素回路20に対して、複数の走査線23を介して輝度信号を供給する画素回路20を選択するための走査信号を供給する走査線駆動回路24とを備える。この画像表示装置は、2TFT構成とされている。
【0066】
また、画像表示装置は、画素回路20内に備わる発光素子27(後述)のアノードに対して、リセット時にオン電位を供給する第1電源供給回路25と、ドライバ素子28のソース電極に、リセット工程でオン電位、その他の工程で0電位もしくは負電位を供給する第2電源供給回路26とを備える。
【0067】
画素回路20は、アノード側が第1電源供給回路25と電気的に接続された発光素子27と、ソース電極が第2電源供給回路26と電気的に接続されたドライバ素子28と、ドライバ素子28を形成する薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間の導通状態を制御するスイッチング素子29によって形成された閾値電位検出部30とを備える。
【0068】
発光素子27は、電流注入によって発光する機構を有し、例えば有機EL素子によって形成される。ドライバ素子28は、発光素子27に流れる電流を制御するための機能を有する。具体的には、ドライバ素子28は、第1端子と第2端子との間に印加される駆動閾値以上の電位差に応じて発光素子27に流れる電流を制御する機能を有し、かかる電位差が印加される間、発光素子27に対して電流を流し続ける機能を有する。本実施形態2では、ドライバ素子28は、n型の薄膜トランジスタによって形成され、第1端子に相当するゲート電極と、第2端子に相当するソース電極との間に印加される電位差に応じて発光素子27を制御している。
【0069】
静電容量31は、信号線駆動回路22と組合わさることによって輝度電位/基準電位供給部32を形成する。この輝度電位/基準電位供給部32は、輝度電位供給手段として、発光素子27の輝度に対応した発光輝度電圧を供給する機能と、基準電位を供給する機能を有する。
【0070】
図7は、動作時における本実施形態2にかかる画像表示装置の各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。図7において、走査線(n−1)は、前段に位置する画素回路20に対応した走査線および制御線のタイムチャートを参考のために示したものである。図8−1は、図7に示す期間t1〜t6のうち期間t1、すなわちリセット工程に対応した画素回路20の状態を示した図である。
【0071】
まず、過去の発光の際にドライバ素子28のゲート電極に印加された電位をリセットする第1リセット工程が行われる。具体的には、図7の期間t1および図8−1に示すように、第1電源供給回路25および第2電源供給回路26の電位がVDDとされ、走査線23(走査線駆動回路24)の電位がオン電位とされる。
【0072】
すなわち、図8−1に示すように、スイッチング素子29は、オン状態となっている。一方、ドライバ素子28は、第2電源供給回路26の電位がVDDであるため、オフ状態となっている。従って、静電容量31を形成する第1電極33の電位は、第1電源供給回路25から発光素子27のアノードに供給される電位VDDから、発光素子27内における電圧降下分VOLEDを差し引いた値となる。一般に第1電源供給回路25から供給される電位VDDは十分高い値を有することから第1電極33の電位(すなわち、ドライバ素子28のゲート電極の電位)は、閾値電圧Vthよりも高い値である(VDD−VOLED)に保持されることとなる。
【0073】
一方で、図7に示すように信号線21の電位がVDLとなっていることから、静電容量31を形成する他方の電極である第2電極34の電位は、VDLとなる。従って、図7の期間t1および図8−1に示す工程において、第1電極33に対しては電位(VDD−VOLED)が供給され、第2電極34に対しては電位VDLが供給される。
【0074】
図8−1においては、スイッチング素子29がオン状態(ドライバ素子28がオフ状態)とされると、電位(VDD−VOLED)が上昇するとともに、発光素子27のカソードの電位である電位Vaがわずかに低下した後、上昇する。
【0075】
ここで、発光素子27は、図16−1に示したように、閾値電圧Vth,i-v以上の電位差(アノード−カソード間電位差)が生じることにより、電流が流れるという電流−電圧特性を有している。また、発光素子27は、図16−2に示したように、閾値電圧Vth,L-v以上の電位差(アノード−カソード間電位差)が生じることにより、発光(輝度>0)するという輝度−電圧特性を有している。
【0076】
また、閾値電圧Vth,i-vは、閾値電圧Vth,L-vよりも低い値とされている。従って、発光素子27のアノード−カソード間の電位差が、閾値電圧Vth,L-v以上である場合には、発光素子27に電流が流れるとともに、発光するという状態とされる。なお、発光素子27のアノード−カソード間の電位差が、閾値電圧Vth,i-v以上閾値電圧Vth,L-v未満である場合には、発光素子27に電流が流れるが、発光しないという状態とされる。
【0077】
図8−1の場合、電位Vaがわずかに低下した場合における発光素子27のアノード−カソード間の電位差(第1電源供給回路25からの電位VDDと電位Vaとの差)が、前述した閾値電圧Vth,i-v(図16−1)以上であって、閾値電圧Vth,L-v(図16−2)未満となるように、上記した(1)式のパラメータCsおよびCOLEDが設定されている。本実施形態2の場合、パラメータCsは、静電容量31の値である。パラメータCOLEDは、発光素子27の静電容量成分である。
【0078】
従って、図8−1においては、第1リセット工程で発光素子27のアノード−カソード間の電位差が閾値電圧Vth,i-v(図16−1)以上であって、閾値電圧Vth,L-v未満であるため、電流id_OLEDが流れるが、発光しないため、コントラストが向上する。
【0079】
つぎに、図7の期間t2および図8−2に示すように、準備工程で、第1電源供給回路25の電位が−VE(<Vth)であり、信号線21の電位がVDHであり、第2電源供給回路26の電位がVDDであり、走査線23の電位がオフ電位であると、ドライバ素子28のゲート電極の電位は、VDD−VOLED(発光素子27の電圧降下分)+VDH−VDLとなり、ドライバ素子28の閾値電圧Vthよりも高くなる。また、スイッチング素子29は、オフ状態である。これにより、ドライバ素子28がオン状態となり、電流iが流れる。
【0080】
つぎに、図7の期間t3および図8−3に示すように、閾値電圧検出工程で、第1電源供給回路25の電位が0電位であり、信号線21の電位がVDHであり、第2電源供給回路26の電位が0電位であり、走査線23の電位がオン電位であると、スイッチング素子29がオン状態とされる。これにより、スイッチング素子29およびドライバ素子28を介して電流iが流れる。
【0081】
つぎに、図7の期間t4および図8−4に示すように、データ書き込み工程で、第1電源供給回路25の電位が0電位であり、信号線21から輝度電位VDATAが供給され、第2電源供給回路26の電位が0電位であり、走査線23の電位がオン電位であると、スイッチング素子29がオン状態とされる。これにより、ドライバ素子28のゲート電極の電位は、α(VDATA−VDH)+Vthとされる。なお、αは、Cs/(Cs+COLED)である。
【0082】
ここで、発光素子27のカソード電極の電位は、スイッチング素子29がオン状態とされているため、ドライバ素子28のゲート電極の電位と同電位である。
【0083】
つぎに、図7の期間t5および図8−5に示すように、第2リセット工程で、第1電源供給回路25の電位が−VEであり、信号線21の電位がVDHであり、第2電源供給回路26の電位が−VEであり、走査線23の電位がオフ電位であると、スイッチング素子29がオフ状態とされる。これにより、ドライバ素子28のゲート電極の電位は、(1−α)(VDH−VDATA)+Vthとされる。この期間t5によって、発光素子27のカソードの電位は、−VEとなり、リセットされる。
【0084】
つぎに、図7の期間t6および図8−6に示すように、発光工程で、第1電源供給回路25の電位がVDDであり、信号線21の電位がVDHであり、第2電源供給回路26の電位が0電位であり、走査線23の電位がオフ電位であると、発光素子27に電流id(=(β/2)((1−α)(VDH−Vdata))2)が流れ、発光素子27が発光する。ここで、電流idは、閾値電圧Vthに依存しない。
【0085】
以上説明したように、実施形態2によれば、第1端子と第2端子との間に印加される、所定の閾値電圧Vthよりも高い電位差に応じて発光素子27を制御するドライバ素子28と、第1端子と第2端子との間における閾値電圧Vthに対応した電位差を検出するスイッチング素子29とを有し、発光素子27を発光させる発光工程前に、発光工程よりも前の工程で行われる閾値電圧の検出時における閾値電圧Vthよりも低い電位として−VE(図7および図8−5参照)をドライバ素子28および発光素子27へ供給し、発光工程(図8−6参照)で、閾値電圧Vthに依存しない電流idを流すための電位を供給することとしたので、ドライバ素子28およびスイッチング素子29という2TFT構成により、精細度を高めることができる。
【0086】
図9は実施形態2の画像表示装置の拡大平面図である。図中には、発光素子27の下部電極(非表示)から下の層のレイアウトを示している。1つの画素内に2つのTFT(ドライバ素子28、スイッチング素子29)と、静電容量31とが示されている。各素子を構成する層は、下層から順に、下部電極層(図中、ドットパターンで塗られた領域)と、絶縁層(図中、黒で塗りつぶされた部分以外の領域)、活性層(図中、斜線で塗られた領域)と、上部電極層(図中、実線で囲まれ且つ塗りつぶしのない領域)とから構成されている。なお、図中の端子LTには、発光素子27の一端が接続される。
【0087】
下部電極層は、基板上に形成され、ドライバ素子27のゲート電極と、スイッチング素子29のゲート電極(走査線23)と、第2電源供給回路26に接続される電源線GLと、静電容量31の第1電極33とを含んでいる。絶縁層は、下部電極層の上に形成され、2つの開口を除いた全面に形成されている。この絶縁膜は、2つのTFTにとってはゲート絶縁膜として機能し、静電容量31にとっては誘電体層として機能する。活性層は、絶縁層の上に形成され、2つのTFTの活性層を含んでいる。上部電極層は、活性層の上に形成され、2つのTFTのソース/ドレイン電極と、静電容量31の第2電極34と、信号線21とを含んでいる。
【0088】
また絶縁層は、第2電源供給回路26に接続される電源線とドライバ素子12のソース電極とを接続する開口と、静電容量31の第1電極33およびドライバ素子28のゲート電極とスイッチング素子29のドレイン電極とを接続する開口と、を有しており、これらの開口で上下の層と導通をとっている。なお、各層の構成材料は、実施形態1と同様である。
【0089】
同図を見てわかるように、本実施形態2においては、閾値電圧Vthの補償を2TFTによって実現できるため、本実施形態1の場合よりもドライバ素子28や静電容量31の面積を大きくすることができる。なお、本実施形態2においては1画素あたりの大きさ51μm×153μmにおいて、S2/S1を0.15、S3/S1を0.14程度確保している。
【0090】
図10は、本発明の実施形態3にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。図10に示す画像表示装置は、行列状に複数配置された複数の画素回路50と、複数の画素回路50に対して、複数の信号線51を介して後述する輝度信号を供給する信号線駆動回路52と、輝度信号を供給する画素回路50を選択するための走査信号を複数の走査線53を介して画素回路50に供給する走査線駆動回路54とを備える。この画像表示装置は、2TFT構成とされている。
【0091】
また、画像表示装置は、画素回路50内に備わるドライバ素子58(後述)のドレインに対して電位を供給する第1電源供給回路55と、発光素子57のカソードに電位を供給する第2電源供給回路56とを備える。
【0092】
画素回路50は、カソード側が第2電源供給回路56と電気的に接続された発光素子57と、ドレイン電極が第1電源供給回路55と電気的に接続されたドライバ素子58と、ドライバ素子58を形成する薄膜トランジスタのゲート・ソース間の導通状態を制御するスイッチング素子59によって形成された閾値電位検出部60とを備える。
【0093】
発光素子57は、電流注入によって発光する機構を有し、前述した有機EL素子によって形成される。ドライバ素子58は、発光素子57に流れる電流を制御するための機能を有する。具体的には、ドライバ素子58は、第1端子と第2端子との間に印加される駆動閾値以上の電位差に応じて発光素子57に流れる電流を制御する機能を有し、かかる電位差が印加される間、発光素子57に対して電流を流し続ける機能を有する。本実施形態3では、ドライバ素子58は、n型の薄膜トランジスタによって形成され、第1端子に相当するゲート電極と、第2端子に相当するソース電極との間に印加される電位差に応じて発光素子57を制御している。
【0094】
静電容量61は、信号線駆動回路52と組合わさることによって輝度電位/基準電位供給部64を形成する。この輝度電位/基準電位供給部64は、輝度電位供給手段として、ドライバ素子58の輝度に対応した発光輝度電圧を供給する機能と、基準電位を供給する機能を有する。
【0095】
図11は、動作時における本実施形態3にかかる画像表示装置の各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。図11において、走査線(n−1)は、前段に位置する画素回路50に対応した走査線および制御線のタイムチャートを参考のために示したものである。図12−1は、図11に示す期間t1〜t4のうち期間t1、すなわち、閾値電圧検出工程に対応している。
【0096】
すなわち、図11の期間t1および図12−1に示すように、閾値電圧検出工程で、第1電源供給回路55の電位が0電位であり、信号線51の電位が電位VDHであり、第2電源供給回路56の電位が電位VE2であり、走査線53の電位がオン電位であると、スイッチング素子59がオン状態とされる。これにより、スイッチング素子59およびドライバ素子58を介して電流iが流れる。
【0097】
つぎに、図11の期間t2および図12−2に示すように、データ書き込み工程で、第1電源供給回路55の電位が0電位であり、信号線51から輝度電位VDATAが供給され、第2電源供給回路56の電位がVE2であり、走査線53の電位がオン電位であると、スイッチング素子59がオン状態とされる。これにより、ドライバ素子58のゲート電極の電位は、α(VDATA−VDH)+Vthとされる。なお、αは、Cs/(Cs+COLED)である。
【0098】
つぎに、図11の期間t3および図12−3に示すように、リセット工程で、第1電源供給回路55の電位が−VE1(<−Vth)であり、信号線51の電位がVDHであり、第2電源供給回路56の電位がVE2であり、走査線53の電位がオフ電位であると、スイッチング素子59がオフ状態とされる。これにより、ドライバ素子58のゲート電極の電位は、(1−α)(VDH−VDATA)+Vthとされる。この期間t3によって、発光素子57のアノードの電位は、−VE1となり、リセットされる。
【0099】
つぎに、図11の期間t4および図12−4に示すように、発光工程で、第1電源供給回路55の電位が0電位であり、信号線51の電位がVDHであり、第2電源供給回路56の電位が−VEEであり、走査線53の電位がオフ電位であると、発光素子57に電流id(=(β/2)((1−α)(VDH−VDATA)−(VEE+VOLED))2)が流れ、発光素子57が発光する。ここで、電流idは、閾値電圧Vthに依存しない。
【0100】
なお、図13−1や図14−1に示した構成の画像表示装置についても、リセット工程で発光を防止する機能を適用してもよい。図13−1に示した画像表示装置(実施形態4)は、スイッチング素子T1、スイッチング素子T2、スイッチング素子T3、ドライバ素子T4、静電容量C1、静電容量C2および発光素子OLEDが図示のように接続されてなり、図13−2に示したタイミングチャートに従って動作する。
【0101】
スイッチング素子T1〜T3およびドライバ素子T4は、p型の薄膜トランジスタである。リセット工程では、Power(オフ電位)がドライバ素子T4に供給される。この場合、発光素子OLEDのカソードが接地されており、オフ電位とされていることから、ドライバ素子T4がオフ状態となり、スイッチング素子T2がオン状態とされる。この場合、実施形態1と同様にして、発光素子OLEDは、電流が流れるが発光しない。
【0102】
また、図14−1に示した画像表示装置(実施形態5)は、スイッチング素子T1'、スイッチング素子T2'、スイッチング素子T3'、ドライバ素子T4'、静電容量C1'、静電容量C2'および発光素子OLED'が図示のように接続されてなり、図14−2に示したタイミングチャートに従って動作する。
【0103】
スイッチング素子T1'〜T3'およびドライバ素子T4'は、n型の薄膜トランジスタである。リセット工程では、Power(オン電位)がドライバ素子T4'に供給される。この場合、発光素子OLEDのカソードにオン電位VDDが供給されていることから、ドライバ素子T4'がオフ状態となり、スイッチング素子T2'がオン状態とされる。この場合、実施形態1と同様にして、発光素子OLED'は、電流が流れるが発光しない。
【0104】
以上説明したように、実施形態4および5によれば、実施形態1と同様の効果を奏する。なお、上述の実施形態1〜5においては、上述の式(1)を満足している場合について説明したが、上述の実施形態1〜5において式(1)を満足していない場合であっても、リセット工程においてドライバ素子がオフ状態であるため、発光素子を通過する電流量が従来と比較して小さくなり、発光素子の発光量を小さくすることができ、コントラストを従来よりも高めることが可能である。
【0105】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0106】
例えば、本実施形態1〜2においては、リセット工程において、駆動トランジスタのゲート電極に駆動閾値Vthよりも高い電位Vrを供給するようにしたが、この電位Vrは必ずしも駆動閾値Vthよりも高い必要はなく、駆動閾値Vthより高い方が好ましい。電位Vrが駆動閾値Vthより低い場合には、閾値電圧検出工程の初期の駆動トランジスタのソース電位や信号線電位等を調整することで、閾値電圧検出工程の初期の駆動トランジスタのゲート・ソース間電位差を、駆動閾値Vthより大きくする。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明にかかる画像表示装置は、有機EL素子を用いた表示装置として有用であり、特に、高精細表示が要求される画像表示に適している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態1にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】実施形態1にかかる画像表示装置の動作を説明するために、各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。
【図3−1】実施形態1にかかる画像表示装置のリセット工程を示す図である。
【図3−2】実施形態1にかかる画像表示装置の閾値電圧検出工程を示す図である。
【図3−3】実施形態1にかかる画像表示装置のデータ書き込み工程を示す図である。
【図3−4】実施形態1にかかる画像表示装置の発光工程を示す図である。
【図4】図3−1に示した第1スイッチング素子13がオン状態とされてからの過渡応答特性を示す図である。
【図5】図1の画像表示装置の拡大平面図である。
【図6】本発明の実施形態2にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。
【図7】実施形態2にかかる画像表示装置の動作を説明するために、各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。
【図8−1】実施形態2にかかる画像表示装置の第1リセット工程を示す図である。
【図8−2】実施形態2にかかる画像表示装置の準備工程を示す図である。
【図8−3】実施形態2にかかる画像表示装置の閾値電圧検出工程を示す図である。
【図8−4】実施形態2にかかる画像表示装置のデータ書き込み工程を示す図である。
【図8−5】実施形態2にかかる画像表示装置の第2リセット工程を示す図である。
【図8−6】実施形態2にかかる画像表示装置の発光工程を示す図である。
【図9】図6の画像表示装置の拡大平面図である。
【図10】本発明の実施形態3にかかる画像表示装置の全体構成を示す図である。
【図11】実施形態3にかかる画像表示装置の動作を説明するために、各構成要素の電位変動の態様を示すタイムチャートである。
【図12−1】実施形態3にかかる画像表示装置の閾値電圧検出工程を示す図である。
【図12−2】実施形態3にかかる画像表示装置のデータ書き込み工程を示す図である。
【図12−3】実施形態3にかかる画像表示装置のリセット工程を示す図である。
【図12−4】実施形態3にかかる画像表示装置の発光工程を示す図である。
【図13−1】実施形態4にかかる画像表示装置の要部の構成を示す図である。
【図13−2】実施形態4にかかる画像表示装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図14−1】実施形態5にかかる画像表示装置の要部の構成を示す図である。
【図14−2】実施形態5にかかる画像表示装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図15−1】従来の画像表示装置の要部(1画素分)の構成を示す図である。
【図15−2】従来の画像表示装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図16−1】発光素子(有機EL素子)における電流−電圧特性を示す図である。
【図16−2】発光素子(有機EL素子)における輝度−電圧特性を示す図である。
【図17】図15−1に示したスイッチング素子109およびドライバ素子108がオン状態とされてからの過渡応答特性を示す図である。
【図18−1】従来の2TFT構成の画像表示装置の要部(1画素分)の構成を示す図である。
【図18−2】従来の2TFT構成の画像表示装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図19−1】図18−1に示した画像表示装置の準備工程を示す図である。
【図19−2】図18−1に示した画像表示装置の閾値電圧検出工程を示す図である。
【図19−3】図18−1に示した画像表示装置のデータ書き込み工程を示す図である。
【図19−4】図18−1に示した画像表示装置の発光工程を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1,20,50 画素回路
6 定電位供給回路
8 電源供給回路
10,27,57 発光素子
11 第2スイッチング素子
12,28,58 ドライバ素子
13 第1スイッチング素子
25,55 第1電源供給回路
26,56 第2電源供給回路
29,59 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、該発光素子に電気的に接続される駆動トランジスタと、該駆動トランジスタに電気的に接続される容量素子と、を有する画素を複数備え、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める駆動トランジスタの面積S2の割合(S2/S1)が0.05以上であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記割合(S2/S1)が0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素は前記駆動トランジスタ以外の他のトランジスタを更に備え、該他のトランジスタの1個あたりの面積S4に対する前記駆動トランジスタの面積S2の割合(S2/S4)が2〜10であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める前記容量素子の面積S3の割合(S3/S1)が0.05以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記割合(S3/S1)が0.25以下であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
発光素子と、該発光素子に電気的に接続される駆動トランジスタと、該駆動トランジスタに電気的に接続され、該駆動トランジスタと平面的に異なる領域に配置される容量素子と、を有する画素を複数備え、1画素の面積S1に対する1画素あたりに占める容量素子の面積S3の割合(S3/S1)が0.05以上であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
前記割合(S3/S1)が0.25以下であることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記駆動トランジスタと前記容量素子とは略同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記駆動トランジスタはアモルファスシリコントランジスタであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記1画素の面積は、7000μm2〜50000μm2であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記発光素子は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記複数の画素のそれぞれは、トランジスタの数が3個であることを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図19−3】
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【図19−4】
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【公開番号】特開2006−313368(P2006−313368A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166471(P2006−166471)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【分割の表示】特願2006−519559(P2006−519559)の分割
【原出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】