説明

画像表示装置

【課題】簡易な方法によりフロントパネル上のアノード電極とグランド電極との間を絶縁することで、高い沿面耐圧を実現する画像表示装置を提供する。
【解決手段】 フロントパネル2とリアパネル1とを、矩形枠状の側壁部3とスペーサ10とを介して相対して形成され、内部を高真空とする画像表示装置であって、リアパネルは、電子を放出する複数の電子放出素子8を有しており、フロントパネルは、電子放出素子からの電子を加速するためのアノード電極13と、グランド電極14とを有しており、アノード電極とグランド電極との間には、粒径が1nm〜10μmの微粒子を主成分とする絶縁層9が形成されていることを特徴とする画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED:Field Emission Display)である平面型の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型の画像形成装置の開発が進められている。このような画像表示装置においては、蛍光面構造ではフロント基板とリア基板間で放電が発生した場合の放電電流を抑制するために、フロント基板上のメタルバック層を電気的に所定のパターンにて分断する必要がある。
【0003】
特許文献1には、画像表示装置及びその製造方法が示されており、ここでは、導電性をもつゲッタ層を電気的に複数に分離するために、ゲッタ分断をメタルバック層上に形成した微粒子層にて行っている。すなわち、粒子径を制御した微粒子を適度にメタルバック層上の所定の位置に膜状にパターニングすることにより、メタルバック層やゲッタ膜を分断している。
【特許文献1】特開2003−68237号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術が示すフロントパネルにおいて、メタルバック層等を分断するだけでは十分ではなく、例えば、メタルバック層に供給されるアノード電極と、フロントパネルのグランド電極との間は、側壁部への沿面放電の発生を抑制するべく、十分絶縁されなければならない。そこで、沿面距離をかせぐために、アノード電極とグランド電極間のガラス基板表面に、例えば、ブラスト処理を行う方法がある。
【0005】
しかしながらこの方法では、ブラスト処理をするためのコストがかかり、又、ブラスト処理後に帯電防止膜をアノード電極とグランド電極間に形成する必要があり、工程が煩雑になるといった問題がある。
【0006】
本発明は、簡易な方法によりフロントパネル上のアノード電極とグランド電極との間を絶縁することで、高い沿面耐圧を実現する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フロントパネルとリアパネルとを、矩形枠状の側壁とスペーサとを介して相対して形成され、内部を高真空とする画像表示装置であって、前記リアパネルは、電子を放出する複数の電子放出素子を有しており、前記フロントパネルは、前記電子放出素子からの前記電子を加速するためのアノード電極と、グランド電極とを有しており、前記アノード電極と前記グランド電極との間には、粒径が1nm〜10μmの微粒子を主成分とする絶縁層が形成されていることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【0008】
又、本発明は、フロントパネルとリアパネルとをスペーサを介して相対して形成した画像表示装置であって、前記リアパネルは、電子を放出する複数の電子放出素子を有しており、前記フロントパネルは、ガラス基板上に形成された複数の蛍光体層と、前記複数の蛍光体層間にそれぞれ設けられる複数の光吸収層と、前記複数の蛍光体層上に形成され、電気的に複数に分断されたメタルバック層と、前記メタルバック層に接続され、前記電子放出素子からの前記電子を加速するためのアノード電極と、グランド電極と前記アノード電極と前記グランド電極との間に形成される、粒径が1nm〜10μmの微粒子を主成分とする絶縁層とを有していることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明に係る画像表示装置は、フロントパネルにおいて、メタルバック層等のアノードを供給するアノード電極とグランド電極との間の絶縁を行うについて、ブラスト処理を行うことなく、粒径が1nm〜10μmの微粒子絶縁層を形成することで、高い沿面耐圧を実現し、沿面放電の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る表示装置の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るFEDを示す斜視図、図2は、本発明の一実施形態に係るFEDの、図1の線A−Aに沿った断面図、図3は、本発明の一実施形態に係るFEDの一例を示す詳細な断面図、図4は、本発明の一実施形態に係るFEDの沿面耐圧の一例を説明する図である。
【0011】
本発明の一実施形態に係るFEDは、図1及び図2に示すように、それぞれ矩形状のガラスからなるフロントパネル2、及びリアパネル1を備え、これらのパネルは1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、フロントパネル2及びリアパネル1は、矩形枠状の側壁部3を介して周縁部同士が接合され、内部が10−4Pa程度以下の高真空に維持された偏平な矩形状の真空外囲器4を構成している。
【0012】
フロントパネル2の内面には蛍光面が形成されている。この蛍光面は、後述するように、赤、緑、青に発光する蛍光体層6とマトリックス状の遮光層11とで構成されている。蛍光面上には、アノード電極として機能するメタルバック層7が形成されている。表示動作時、メタルバック層7には所定のアノード電圧が印加される。
【0013】
又、リアパネル1の内面上には、蛍光体層6を励起する電子ビームを放出する多数の電子放出素子8が設けられている。これらの電子放出素子8は、画素毎に対応して複数列及び複数行に配列されている。電子放出素子は図示しないマトリックス配線により駆動される。
【0014】
又、リアパネル1及びフロントパネル2の間には、耐大気圧のため、板状あるいは柱状に形成された多数のスペーサ10が配置されている。
蛍光面にはメタルバック層7を介してアノード電圧が印加され、電子放出素子8から放出された電子ビームはアノード電圧により加速され蛍光面に衝突する。これにより、対応する蛍光体層6が発光し映像が表示される。
【0015】
(詳細な構造と微粒子層)
次に、本発明の一実施形態である画面表示装置の詳細な構成の一例を図3に基づいて説明する。すなわち、本発明の一実施形態である画面表示装置は、図3において、図1及び図2に記載されている蛍光体層6と遮光層11、メタルバック層7及びスペーサ10、又、リアパネル1の電子放出素子8に加えて、フロントパネル2側には、遮光層11に隣接して設けられた抵抗層12と、アノード電極13とが設けられている。
【0016】
更に、側壁部3は、バインダーであるインジウム15を介して、フロントパネル2及びリアパネル1に接続されており、特に、フロントパネル2においては、図3に示すようにグランド電極14がインジウム15とフロントパネル2の間に設けられている。
【0017】
このような構成において、アノード電極13とグランド電極14とは、電気的に絶縁されなければならず、その方法の一つが、フロントパネル2であるガラス基板をブラスト処理することである。
【0018】
これ以外の方法として、本発明に係る実施形態では、アノード電極13とグランド電極14との間に、微粒子抵抗層9を形成することにより、ブラスト処理同様に沿面距離をかせぐことができる。この微粒子の粒径は、1nm〜10μmの範囲である必要があり、1nm以下では、形成した微粒子抵抗層9の表面粗さが不足することから、目的とする沿面距離をかせぐことができなく、逆に10μm以上では、微粒子抵抗層9の形成が著しく低下し、膜はがれ等による品位低下が免れない。又、微粒子抵抗層9の膜厚としては、30μm以下でなくてはならない。30μm以上では膜強度が低下し、膜はがれ等による品位の低下やそれ自身が放電源となることによる耐圧特性の劣化が発生する。
【0019】
この微粒子は、SiO、Al、TiO、PbOなどを用いることができるが、耐熱性に優れ粒径が制御されていれば、これらに限定されるものではない。又、微粒子抵抗層9の形成方法としては、スクリーン印刷法や、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法などを用いることができる。スクリーン印刷法で微粒子抵抗層9を形成する場合は、フィラーとしての微粒子と粘度調整のための樹脂、更に、溶媒を用いて混錬したペーストをスクリーン板を用いて所定の位置にパターニングすることにより得られる。更に、前述のペーストにガラスフリットを導入することにより、更に膜強度を向上させ、安定した微粒子抵抗層9を形成することが可能となる。
【0020】
更に、この微粒子抵抗層9へ抵抗剤を導入することにより、帯電防止効果を併せ持たせることができる。この抵抗剤の抵抗値としては1E4Ω/□〜1E14Ω/□の範囲でなくてはならない。1E4Ω/□以下では抵抗値が低すぎ、アノード電極13とグランド電極14間を電気接続してしまうことから、帯電防止効果が得られない。又、1E14Ω/□以上では、抵抗値が高すぎることから帯電防止効果が得られない。抵抗剤としては、ATO、ITO、PTOなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
ガラス基板上の所定の位置に蛍光体層6とメタルバック層7を具備したパネルを準備し、アノード電極13を蛍光面メタルバック層7に接続し、その周辺にグランド電極14を設置し、アノード電極13、グランド電極14の間にスクリーン印刷法にて組成Bペーストを用いて微粒子抵抗層9を形成した。その後、微粒子抵抗層9上へ帯電防止膜を形成し、このパネルを450℃で焼成することにより有機分を焼失させフロントパネルAを得た。
【0023】
組成B SiO2 15wt%
ガラスフリット 20wt%
エチルセルロース 6wt%
ブチルカルビトールアセテート 59wt%
その後、電子放出素子8を有するリアパネル1とスペーサ19を介して張り合わせ、内部を高真空に保ち、アノード電極13を高圧供給部へ、グランド電極14をグランドへ接続することにより画像表示パネルCを得た。
【実施例2】
【0024】
更に、実施例1の組成Bペーストの代わりに組成Dペーストを用いて、帯電防止の微粒子抵抗層9を形成し、450℃で焼成することによりフロントパネルEを得、実施例1と同様のプロセスにより画像表示パネルFを得た。
【比較例】
【0025】
実施例1の組成Bペースト印刷の代わりに、アノード電極13とグランド電極14間にブラスト処理を行い、その後、処理面上へ帯電防止膜を形成し、450℃にて焼成することによりフロントパネルGを得、実施例1と同様のプロセスにて画像表示パネルHを得た。
【0026】
これらの3つのフロントパネルA,E、Gの沿面耐圧の測定をそれぞれ行った結果と画像表示パネルC、F、Hの耐圧特性と各プロセスの簡便性を、図4の説明図に示している。これによれば、実施例1については、沿面耐圧につき、20kVを得ており、実施例2については、沿面耐圧につき、25kVを得ており、どちらも、ブラスト処理を行った場合の沿面耐圧、18kVを上回った値を得ており、更に、工程の簡便性についても、ブラスト処理を行った場合を上回っている。
【0027】
従って、本発明の実施形態によれば、アノード電極13とグランド電極14との間に微粒子抵抗層9を形成することによって、沿面耐圧、工程安定性、耐圧特性に優れた沿面構造を有する画像表示装置を提供することが可能であることがわかる。
【0028】
以上記載した様々な実施形態により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るFEDを示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るFEDの、図1の線A−Aに沿ったの断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るFEDの一例を示す詳細な断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るFEDの沿面耐圧の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0030】
1…リアパネル、2…フロントパネル、3…側壁、4…真空外囲器、6…蛍光面、7…メタルバック層、7a…非酸化領域、7b…酸化領域、8…電子放出素子、9…微粒子絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルとリアパネルとを、矩形枠状の側壁とスペーサとを介して相対して形成され、内部を高真空とする画像表示装置であって、
前記リアパネルは、電子を放出する複数の電子放出素子を有しており、
前記フロントパネルは、前記電子放出素子からの前記電子を加速するためのアノード電極と、グランド電極とを有しており、前記アノード電極と前記グランド電極との間には、粒径が1nm〜10μmの微粒子を主成分とする絶縁層が形成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記絶縁層は、その膜厚が30μm以下であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記絶縁層の微粒子の抵抗値は、1E4Ω/□〜1E14Ω/□であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項4】
フロントパネルとリアパネルをスペーサを介して相対して形成した画像表示装置であり、
前記リアパネルは、電子を放出する複数の電子放出素子を有しており、
前記フロントパネルは、
ガラス基板上に形成された複数の蛍光体層と、
前記複数の蛍光体層間にそれぞれ設けられる複数の光吸収層と、
前記複数の蛍光体層上に形成され、電気的に複数に分断されたメタルバック層と、
前記メタルバック層に接続され、前記電子放出素子からの前記電子を加速するためのアノード電極と、
グランド電極と、
前記アノード電極と前記グランド電極との間に形成される、粒径が1nm〜10μmの微粒子を主成分とする絶縁層とを有していることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、その膜厚が30μm以下であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記絶縁層の微粒子の抵抗値は、1E4Ω/□〜1E14Ω/□であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−73247(P2006−73247A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252699(P2004−252699)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】