説明

画像表示装置

【課題】ガンマ変換データの温度補正を行う場合に、表示画像の色の変化を目立たなくする。
【解決手段】画像表示装置1は、表示素子50R,50G,50Bと、入力映像信号と構成色ごとに設けられたガンマ変換データとを用いて表示素子を駆動するための信号を生成する制御手段70Aと、温度を検出する温度検出手段80と、該検出された温度に応じて、構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を行う補正処理手段70Bとを有する。補正処理手段は、ガンマ変換データが設けられた階調範囲を複数の階調領域に分割し、構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を該分割された階調領域ごとに順次行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタやモニタ等のカラー画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像表示装置には、液晶素子等の表示素子が用いられる。表示素子が光源からの強い照明光を受けたり、表示画像の明るさや画質が変化したり(例えば、表示モードが切り替えらたり)、装置の使用環境温度が変化したりすることで、表示素子の温度が変動する。
【0003】
液晶素子においては温度によって電気光学特性が変化することが知られている。これは、液晶分子の屈折率異方性に温度依存性があることや、温度変化に伴うセルギャップの変化によって液晶層に印加される実効電界が変化することや、液晶分子の配向状態が温度によって変化すること等、様々な要因により発生する。
【0004】
液晶素子の電気光学特性が変化すると、表示している画像の明るさや色が変化し、画質が劣化する。このため、液晶素子の温度を検出し、液晶素子の温度が変化することによって発生したリタデーションの変化を、液晶素子に印加する信号電圧の振幅を変化させることで補償する方法が特許文献1,2にて開示されている。このような液晶素子の電気光学特性の温度補償は、入力映像信号に対する液晶素子の駆動電圧を決めるガンマ変換データを、カラー画像の構成色ごとに、温度に応じて補正することで行われることが多い。
【特許文献1】特許第2589567号公報
【特許文献2】特許第2924073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際にカラー画像の全構成色に対するガンマ変換データを補正するための演算処理や通信処理を一度に短時間で行うことはきわめて困難である。例えば、RGBの3原色の画像を合成してカラー画像を表示する画像表示装置においては、10bitのガンマ変換テーブルを有する場合には、1024×3=3072個ものデータを一度に書き換える必要がある。
【0006】
また、ガンマ変換データを構成色ごとに書き換えていくことも可能である。ただし、この方法では、ある構成色のガンマ変換データは書き換えられたが、別の構成色のガンマ変換データはまだ書き換えられていないという状態が発生する。この状態では、表示画像の色バランスが崩れて、画質の劣化(特に、表示画像における無彩色領域での色づき)が目立つ。これは、色の変化に対して人間の目は非常に敏感であることに起因する。
【0007】
本発明は、ガンマ変換データの温度補正を行う場合に、表示画像の色の変化を目立たなくすることができるようにした画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての画像表示装置は、表示素子と、入力映像信号と構成色ごとに設けられたガンマ変換データとを用いて表示素子を駆動するための信号を生成する制御手段と、温度を検出する温度検出手段と、該検出された温度に応じて、構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を行う補正処理手段とを有する。そして、補正処理手段は、ガンマ変換データが設けられた階調範囲を複数の階調領域に分割し、構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を該分割された階調領域ごとに順次行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の一側面としての画像表示装置は、表示素子と、入力映像信号と構成色ごとに設けられたガンマ変換データとを用いて表示素子を駆動するための信号を生成する制御手段と、温度を検出する温度検出手段と、該検出された温度に応じて、構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を行う補正処理手段とを有する。そして、補正処理手段は、構成色ごとの補正処理を、該補正処理の前後での各構成色の変化量が所定値以下となる範囲ごとに段階的に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガンマ変換データの補正を行っている途中での表示画像の明るさや色の変化が目立ちにくくなり、表示素子の温度が変化しても高画質の画像を表示し続けることが可能な画像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図2には、本発明の実施例1である液晶表示装置(画像表示装置)1の構成を示す。本実施例の液晶表示装置1は、反射型液晶表示素子を搭載した液晶プロジェクタであり、カラー画像をスクリーン200に投射して表示する。
【0013】
なお、本実施例では、プロジェクタについて説明するが、本発明は、液晶テレビ等の他の画像表示装置にも適用することができる。
【0014】
液晶表示装置1は、筐体1aと、ランプ10と、照明光学系20と、色分解合成光学系30と、投射レンズ40と、反射型液晶表示素子50R,50G,50Bと、メモリ部60と、コントロール部70とを有する。筐体1aは、液晶表示装置1を構成するこれらの構成要素を収納する。
【0015】
ランプ10は、発光管11と、リフレクタ12とを有する。発光管11は、図示しない電源供給部からの電力を受けて放電し、連続スペクトルの白色光を発する。
【0016】
リフレクタ12は、発光管11からの光を所定の方向に集光する。リフレクタ12は、反射率の高いミラー等によって構成されており、放物面形状や球面形状を有する。なお、AXLは、ランプ10から投射レンズ40までの光学全系の光軸である。
【0017】
照明光学系20は、ランプ10からの光を色分解合成光学系30に転送する。照明光学系20は、シリンダアレイ21及び22と、紫外線吸収フィルタ23と、偏光変換素子24と、フロントコンプレッサ25と、全反射ミラー26と、コンデンサーレンズ27と、リアコンプレッサ28とを有する。
【0018】
シリンダアレイ21は、光軸AXLおよび図の紙面に直交する垂直方向においてのみ屈折力を有する複数のレンズセルにより構成されたレンズアレイであり、ランプ10からの光を複数の光束に分割する。シリンダアレイ22は、シリンダアレイ21の個々のレンズセルに対応した複数のレンズセルを複数有するレンズアレイであり、上記複数の光束のそれぞれに偏光変換素子24の近傍にて2次光源像を形成させる。
【0019】
紫外線吸収フィルタ23は、ランプ10からの光のうち紫外線成分を吸収する。紫外線吸収フィルタ23は、シリンダアレイ21とシリンダアレイ22との間に配置されている。
【0020】
偏光変換素子24は、ランプ10からの無偏光光を所定の偏光方向を有する直線偏光に変換する。
【0021】
フロントコンプレッサ25は、光軸AXLに直交して図の紙面に平行な水平方向においてのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成されている。
【0022】
全反射ミラー26は、ランプ10(フロントコンプレッサ25)からの光を反射して、光学系の光軸AXLを90度曲げる。
【0023】
コンデンサーレンズ27は、シリンダアレイ21,22により分割された複数の光束を集光する。リアコンプレッサ28は、水平方向においてのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成されている。フロントコンプレッサ25、コンデンサーレンズ27およびリアコンプレッサ28の光学的作用により、上記複数の光束は互いに重なり合い、矩形の均一な照明エリアを形成する。この照明エリアに後述する反射型液晶表示素子50R,50G,50Bの表示面が配置される。
【0024】
色分解合成光学系30は、ランプ10からの白色光を青(B)、赤(R)、緑(G)に色分解して3つの液晶表示素子50R,50G,50Bに導き、該3つの液晶表示素子からの青光、赤光および緑光を合成する。色分解合成光学系30は、ダイクロイックミラー31と、偏光板32a,32b,32cと、偏光ビームスプリッタ33a,33b,33cと、1/4波長板35R,35G,35Bと、色選択性位相差板36a,36bとを有する。
【0025】
ダイクロイックミラー31は、青光と赤光を反射して緑光を透過する。
【0026】
偏光板32a,32b,32cは、透明基板に偏光素子を貼り合わせて製作され、S偏光のみを透過する。偏光板32aは、緑光の光路において偏光ビームスプリッタ33aの前に配置された入射側偏光板であり、偏光板32bは、赤青光の光路において偏光ビームスプリッタ33bの前に配置された入射側偏光板である。また、偏光板32cは、赤青光の光路において、偏光ビームスプリッタ33bと33cの間に配置された出射側偏光板である。
【0027】
色選択性位相差板36aは、偏光板32bから射出した青光の偏光方向を90度変換し、赤光の偏光方向は変換しない。
【0028】
偏光ビームスプリッタ33a,33b,33cは、P偏光を透過してS偏光を反射する偏光分離面を有する。偏光ビームスプリッタ33aは、偏光板32aから射出した緑のS偏光を反射する。また、偏光ビームスプリッタ33bは、色選択性位相差板36aから射出した青のP偏光を透過し、赤のS偏光を反射する。
【0029】
1/4波長板35R,35G,35Bはそれぞれ、偏光ビームスプリッタ33a,33bから射出した直線偏光の乱れを修正して液晶表示素子50R,50G,50Bに導く。
【0030】
本実施例の液晶表示装置1には、図1に示すように、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、テレビチューナ等の画像供給装置300から供給される画像情報(画像信号)が入力される。液晶表示装置1と画像供給装置により画像表示システムが構成される。
【0031】
コントロール部70は、入力された画像情報に応じて反射型液晶表示素子50R,50G,50Bを駆動する。これにより、液晶表示素子50R,50G,50Bに入射した光が画像変調されるとともに反射する。
【0032】
液晶表示素子50R,50G,50Bで反射した赤光、緑光および青光は、再び1/4波長板35R,35G,35Bを介して偏光ビームスプリッタ33a,33bに入射する。
【0033】
偏光ビームスプリッタ33aを透過した緑のP偏光は、偏光ビームスプリッタ33cに入射し、該偏光ビームスプリッタ33cを透過して投射レンズ40に向かう。偏光ビームスプリッタ33bを透過した赤のP偏光と偏光ビームスプリッタ33bで反射した青のS偏光は、色選択性位相差板36bに入射する。
【0034】
色選択性位相差板36bは、赤光の偏光方向を90度変換し、青光の偏光方向は変換しない。これにより、赤光と青光のS偏光が偏光ビームスプリッタ33cに入射し、該偏光ビームスプリッタ33cで反射されて投射レンズ40に向かう。
【0035】
投射レンズ40は、偏光ビームスプリッタ33cで色合成された光(カラー画像)をスクリーン200に向けて投射する。投射レンズ40は、鏡筒40a内に収納された不図示の複数のレンズで構成されている。
【0036】
ここで、反射型液晶表示素子50R,50G,50Bにおいては、入射する光の波長によって、該入射光を画像変調するために印加される信号電圧が異なる。
【0037】
本実施例において、液晶表示素子50R,50G,50Bへの入射光に与えるリタデーションは、各液晶表示素子のセルギャップdと液晶分子の平均複屈折率Δnと入射光の波長λとを用いて、
Δnd/λ
で表すことができる。
【0038】
また、液晶分子の平均複屈折率Δnは、例えば、垂直配向したVAN型液晶表示素子においては印加する電圧を大きくするにしたがって大きくなる。
【0039】
本実施例において、緑色光は、入射側偏光板32aから射出した後、偏光ビームスプリッタ33aに対してS偏光として入射し、偏光分離面で反射されて緑色用の反射型液晶表示素子50Gへと至る。緑色用の反射型液晶表示素子50Gには、緑色光に半波長分のリタデーションを与える信号電圧が印加される。これにより、画像変調された緑色の反射光はほとんど全てがP偏光に変調され、偏光ビームスプリッタ33aの偏光分離面を透過して偏光ビームスプリッタ33cに向かい、投射レンズ40によってスクリーン200に拡大投射される。これにより、最も明るい緑色画像が表示される。
【0040】
また、ダイクロイックミラー31を反射した赤色光と青色光は、偏光板32bに入射する。赤色光と青色光は、ダイクロイックミラー31によって分解された後もS偏光となっている。そして、赤色光と青色光は、偏光板32bから射出した後、色選択性位相差板36aに入射する。色選択性位相差板36aは、青色光の偏光方向を90度回転する作用を有する。このため、青色光はP偏光として、赤色の光はS偏光として、それぞれ偏光ビームスプリッタ33bに入射する。
【0041】
S偏光として偏光ビームスプリッタ33bに入射した赤色光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面で反射されて赤色用の反射型液晶表示素子50Rへと至る。また、P偏光として偏光ビームスプリッタ33bに入射した青色光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面を透過して青色用の反射型液晶表示素子50Bへと至る。
【0042】
赤色用の反射型液晶表示素子50Rには、赤色光に半波長分のリタデーションを与える信号電圧が印加される。これにより、画像変調された赤色の反射光は、ほとんど全てがP偏光になる。そして、赤色の反射光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面を透過して色選択性位相板36bに向かう。
【0043】
また、青色用の反射型液晶表示素子50Bには、青色光に半波長分のリタデーションを与える信号電圧が印加される。これにより、画像変調された青色の反射光は、ほとんど全てがS偏光になる。そして、青色の反射光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面で反射して色選択性位相板36bに向かう。
【0044】
そして、色選択性位相板36bを通過したP偏光としての赤色光と、色選択性位相板36bでP偏光に変換された青色光は、偏光ビームスプリッタ33cの偏光分離面で反射されて、投射レンズ40によってスクリーン200に拡大投射される。これにより、最も明るい赤色画像と青色画像が表示される。
【0045】
図1には、コントロール部70及びメモリ部60の構成を示している。コントロール部70は、メインコントロール部(制御手段)70Aと温度補正処理部(補正処理手段)70Bとにより構成されている。また、メモリ部60には、液晶表示素子50R,50G,50B(以下の説明では、液晶表示素子50と記す)の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)80が接続されている。
【0046】
メモリ部60には、温度センサ80の出力に応じて後述するガンマ変換データの補正後のデータを算出するために用いられるガンマ補正関数を記憶した補正関数メモリ61が設けられている。メモリ部60には、複数の表示モード(Aモード、Bモード、Cモード)に応じたガンマ変換データを、カラー画像の構成色(R,G,B)ごとにデータテーブル形式で記憶した表示モードガンマテーブルメモリ62が設けられている。表示モードは、投射されたカラー画像の明るさや画質を変化させるために切り替えられる。
【0047】
温度補正処理部70Bには、ガンマ変換データの補正演算を行うガンマ補正演算回路74が設けられている。該補正演算は、補正関数メモリ61から読み出した、温度センサ80の出力に応じた構成色ごとのガンマ補正関数を、表示モードガンマテーブルメモリ62に記憶された、そのときの表示モードに対応する構成色ごとのガンマ変換データに適用することで行われる。補正演算の結果として得られた構成色ごとの補正ガンマ変換データは、メモリ部60に設けられたバッファメモリ63に一時的に保管される。
【0048】
メインコントロール部70Aには、画像生成部71とDAコンバータ72が設けられている。
【0049】
画像生成部71には、画像供給装置300から入力された入力映像信号のうち構成色ごとの階調レベルを示す入力階調レベルデータが入力される。また、画像生成部71内には、構成色ごとのガンマ変換データを保持するガンマテーブルメモリ72が設けられている。画像生成部71は、構成色ごとの入力階調レベルデータと、ガンマテーブルメモリ72に保持された構成色ごとのガンマ変換データとを用いて、液晶表示素子50を駆動するためのデジタル駆動信号を生成する。
【0050】
ガンマテーブルメモリ72には、温度補正処理部70Bから所定のタイミングごとにバッファメモリ63に保管された補正ガンマ変換データが転送(送信)される。これにより、ガンマテーブルメモリ72内にそれまで保持されていたガンマ変換データ(又は以前の補正ガンマ変換データ)は、新たに転送されてきた補正ガンマ変換データに書き換えられる。ガンマ変換データの補正演算及び書き換えを含む処理を温度補正処理という。
【0051】
DAコンバータ72は、画像生成部71からのデジタル駆動信号をアナログ信号に変換し、該アナログ信号の値に応じた信号電圧(入力映像信号に応じた電圧)を液晶表示素子50に印加する。ガンマ変換データが補正されることにより、液晶表示素子50に印加される信号電圧の振幅が変化し、これにより、液晶表示素子50の電気光学特性の温度補償が行われる。
【0052】
ただし、液晶表示素子50に印加する信号電圧のパルス幅を変化させることによって電気光学特性の温度補償を行うようにしてもよい。
【0053】
次に、本実施例におけるガンマ変換データの温度補正処理(以下、単に補正処理ともいう)の手順について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0054】
液晶表示装置1を使用している間に液晶表示素子50の温度が変化すると、温度センサ80がその時点での液晶表示素子50の温度に応じた信号を出力する(ステップ501)。すなわち、温度を検出する。温度センサ80からの出力は、補正関数メモリ61に入力され、ここで、検出された温度に応じたガンマ補正関数が生成される。ガンマ補正演算回路74は、補正関数メモリ61から、検出された温度に応じたガンマ補正関数を読み出す(ステップ503)。ガンマ補正関数は、構成色ごとに生成される。
【0055】
なお、図4のステップ502に示すように、今回検出された温度が前回検出された温度に対して所定値以上変化したか否かを判定し、所定値以上変化した場合にのみガンマ補正関数を生成するようにしてもよい。
【0056】
次に、ステップ504では、ガンマ補正演算回路74は、図3の下図に実線で示すように、ガンマ変換データが設けられている階調範囲(例えば、16bitで0〜4095)の全体を複数(例えば、8つ)の領域に分割する。分割された個々の領域を、以下の説明では分割階調領域又は領域1〜8という。なお、図3の下図において、横軸が入力階調レベルを示し、縦軸は出力階調レベルを示す。このことは、図3の上図でも同じである。また、図3の下図には、常温時での緑用のガンマ変換データを代表例として長い実線で示している。図3の上図には、常温時における赤用、緑用及び青用のガンマ変換データをそれぞれ長い点線、一点鎖線及び実線で示している。
【0057】
ガンマ補正演算回路74は、表示モードガンマテーブルメモリ62に保管されている、そのときの表示モードに対応する赤用のガンマ変換データのうち、まず領域1内のデータを読み出す。そして、ガンマ補正演算回路74は、この領域1内の赤用ガンマ変換データに対して、ステップ503で読み出した赤用のガンマ補正関数を適用し、領域1における赤用補正ガンマ変換データ(図3の上図にRCで示す)を演算する。
【0058】
温度補正処理部70Bは、この領域1における赤用補正ガンマ変換データをバッファメモリ63を介してガンマテーブルメモリ72に転送する(ステップ505,506)。これにより、ガンマテーブルメモリ72内にそれまで保持されていた領域1における赤用ガンマ変換データ(又は以前の赤用補正ガンマ変換データ)は、転送されてきた赤用補正ガンマ変換データに書き換えられる。こうして、領域1における赤用のガンマ変換データの補正処理(補正演算と書き換え処理)が完了する。
【0059】
ステップ507では、同一領域(ここでは、領域1)内の全ての構成色用のガンマ変換データの補正処理が完了したか否かを判定する。まだ終了していない場合には、ステップ503に戻る。
【0060】
次に、再びステップ504にて、ガンマ補正演算回路74は、表示モードガンマテーブルメモリ62に保管されている、そのときの表示モードに対応する緑用のガンマ変換データのうち領域1内のデータを読み出す。そして、ガンマ補正演算回路74は、この領域1内の緑用ガンマ変換データに対して、ステップ503で読み出した緑用のガンマ補正関数を適用し、領域1における緑用補正ガンマ変換データ(図3の下図及び上図にGCで示す)を演算する。
【0061】
温度補正処理部70Bは、この領域1における緑用補正ガンマ変換データをバッファメモリ63を介してガンマテーブルメモリ72に転送する(ステップ505,506)。これにより、ガンマテーブルメモリ72内にそれまで保持されていた領域1における緑用ガンマ変換データ(又は以前の緑用補正ガンマ変換データ)は、転送されてきた緑用補正ガンマ変換データに書き換えられる。こうして、領域1における緑用のガンマ変換データの補正処理が完了する。
【0062】
ステップ507では、再び、同一領域(ここでは、領域1)内の全ての構成色用のガンマ変換データの補正処理が完了したか否かを判定し、まだ終了していない場合にはステップ503に戻る。
【0063】
そして、再びステップ504において、ガンマ補正演算回路74は、表示モードガンマテーブルメモリ62に保管されている、そのときの表示モードに対応する青用のガンマ変換データのうち領域1内のデータを読み出す。そして、ガンマ補正演算回路74は、この領域1内の青用ガンマ変換データに対して、ステップ503で読み出した青用のガンマ補正関数を適用し、領域1における青用補正ガンマ変換データ(図3の上図にBCで示す)を演算する。
【0064】
温度補正処理部70Bは、この領域1における青用補正ガンマ変換データをバッファメモリ63を介してガンマテーブルメモリ72に転送する(ステップ505,506)。これにより、ガンマテーブルメモリ72内にそれまで保持されていた領域1における青用ガンマ変換データ(又は以前の青用補正ガンマ変換データ)は、転送されてきた青用補正ガンマ変換データに書き換えられる。こうして、領域1における青用のガンマ変換データの補正処理が完了する。
【0065】
以上のように領域1における全ての構成色用のガンマ変換データの補正処理が終了すると、ステップ507からステップ508に進み、領域1〜8の全ての分割階調領域において全構成色用のガンマ変換データの補正処理が終了したか否かを判定する。
【0066】
まだ終了していない場合は、ステップ509にてガンマ変換データの補正処理を行う領域を1つシフトする。そして、ステップ503に戻り、温度補正処理部70B(ガンマ補正演算回路74)は、領域2において領域1と同様に各構成色用のガンマ変換データの補正処理を行う。
【0067】
そして、このような分割階調領域ごとでの構成色ごとのガンマ変換データの補正処理を領域1から領域8まで順次行うことで、全階調範囲における全構成色用のガンマ変換データの補正処理が終了する。フローチャートでは、ステップ508からステップ501に戻る。
【0068】
なお、ここでは、各分割階調領域において、赤用、緑用、青用の順でガンマ変換データの補正処理を行う場合について説明したが、この順番は変更可能である。また、階調ごとに順番を変えてもよい。例えば、第1の階調において赤用、緑用、青用の順に補正し、次に第2の階調において順番を変えて青用、緑用、赤用の順にガンマ変換データを補正しても構わない。また、ここでは、各分割階調領域において、赤用、緑用、青用のガンマ変換データの補正処理を順次行う場合について説明したが、各分割階調領域での赤用、緑用、青用のガンマ変換データの補正処理を同時(並列的)に行うようにしてもよい。
【0069】
本実施例によれば、各構成色において、分割階調領域ごとに、つまりは全階調範囲に対して一部ずつガンマ変換データの温度補正処理を行う。これにより、全階調範囲を一度に補正する場合に比べて表示画像における色の変化(色バランスの崩れ)を目立ちにくくすることができる。また、ガンマ補正演算回路74の演算負荷を減少させることができる。
【実施例2】
【0070】
以下、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、分割階調領域ごとのガンマ変換データの温度補正処理を、該温度補正処理の前後での各構成色の変化量が所定値以下となるように行う。言い換えれば、ガンマ変換データの温度補正処理の前後での各構成色の変化量を、鑑賞者が視認できない量に抑える。
【0071】
図5には、液晶表示素子50の電気光学特性の温度依存性を示す。液晶表示素子50は、温度の変化に応じて(すなわち、低温時と高温時とでは)、同一の信号電圧を印加しても得られる明るさ(反射型液晶表示素子50では反射率)が異なる。このような液晶表示素子50を使用すると、実施例1で説明した分割階調領域ごとのガンマ変換データの温度補正処理を行う場合でも、構成色ごとに順次ガンマ変換データの温度補正処理が行われることにより、表示画像の明るさや色の変化が視認される場合がある。
【0072】
例えば、赤用、緑用及び青用のガンマ変換データのうち赤用のガンマ変換データの温度補正のみが行われると、画面全体が赤みがかったり青緑色がかったりする。
【0073】
本実施例では、各構成色用のガンマ変換データの1回の温度補正処理、すなわち実施例1で言えば各分割階調領域での各構成色用のガンマ変換データの温度補正処理におけるガンマ変換データの補正量を、La*b*色度での色差ΔEが3以下となる範囲で行う。また、より好ましくは、La*b*色度での色差ΔEが1以下となる範囲で行う。一般に、色差ΔEが3以下の色の変化は、人間の目で視認されない(言い換えれば、仮に視認されても気にならない)。
【0074】
なお、La*b*色度での色差ΔEが3以下(又は1以下)となる範囲でのガンマ変換データの温度補正処理は、実施例1にて説明した分割階調領域ごとのガンマ変換データの温度補正処理を行わない場合でも有効である。すなわち、ガンマ変換データの温度補正処理による色の変化が視認されないため、全階調範囲のガンマ変換データを一括して補正してもよい。
【0075】
また、温度変化が急峻で、本来必要なガンマ変換データの補正量が大きい場合でも、La*b*色度での色差ΔEが3以下(又は1以下)となる範囲ごとの補正を段階的に(順次)行うようにすればよい。これにより、色の変化を視認されずにガンマ変換データの大きな補正を行うことも可能である。例えば、本来必要なガンマ変換データの補正量が、La*b*色度での色差ΔEでいう5ある場合に、色差ΔEが3となる温度補正処理と色差ΔEが2となる温度補正処理とに分けて段階的に行えばよい。
【実施例3】
【0076】
以下、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、分割階調領域ごとのガンマ変換データの温度補正処理を、複数の分割階調領域のうちカラー画像の表示に使用される頻度が他の階調領域に比べて少ない階調領域から行う。
【0077】
具体的には、プロジェクタ1への入力映像信号のヒストグラムを作成するヒストグラム作成回路を図1に示した補正演算部70B内に設ける。ガンマ補正演算回路74は、該ヒストグラムから図3に示した領域1〜8の使用される頻度(度合い)を求める。そして、該頻度が他の領域よりも少ない又は最も少ない(全く使用されない場合も含む)領域においてまず、各構成色用のガンマ変換データの補正処理を行う。続いて、該頻度が少ない領域の順又は各時点で最も頻度が少ない領域ごとに各構成色用のガンマ変換データの補正処理を行っていけばよい。
【0078】
本実施例によれば、使用頻度が少ない階調からガンマ変換データの温度補正処理を行うので、ガンマ変換データの補正処理による画像の色の変化が視認される可能性を低くすることができる。
【0079】
上記各実施例では、データテーブル形式で保管されたガンマ変換データをガンマ補正関数を用いて補正する場合について説明したが、本発明はこの場合に限られない。例えば、ガンマ変換データを表現した関数を保管しておき、温度に応じて該関数を変化させることによってガンマ変換データの温度補正処理を行うようにしてもよい。
【0080】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1であるプロジェクタにおけるコントロール部及びメモリ部の構成を示すブロック図。
【図2】実施例1のプロジェクタの構成を示す面。
【図3】実施例1におけるガンマ変換データとその温度補正処理の様子を示す図。
【図4】実施例1におけるガンマ変換データの温度補正処理の手順を示すフローチャート。
【図5】液晶表示素子の電気光学特性の温度依存性を示す図。
【符号の説明】
【0082】
50R,50G,50B 反射型液晶表示素子
61 ガンマ補正関数メモリ
62 表示モードガンマテーブルメモリ
70A メインコントロール部
70B 温度補正処理部
71 画像生成部
72 ガンマテーブルメモリ
74 ガンマ補正演算部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成色を含むカラー画像を表示する画像表示装置であって、
表示素子と、
入力映像信号と前記構成色ごとに設けられたガンマ変換データとを用いて前記表示素子を駆動するための信号を生成する制御手段と、
温度を検出する温度検出手段と、
該検出された温度に応じて、前記構成色ごとの前記ガンマ変換データの補正処理を行う補正処理手段とを有し、
前記補正処理手段は、前記ガンマ変換データが設けられた階調範囲を複数の階調領域に分割し、前記構成色ごとの前記ガンマ変換データの前記補正処理を、該分割された階調領域ごとに順次行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記補正処理手段は、前記階調領域ごとの前記補正処理を、該補正処理の前後での前記各構成色の変化量が所定値以下となるように行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記補正処理手段は、前記階調領域ごとの前記補正処理を、前記複数の階調領域のうち前記カラー画像の表示に使用される頻度が他の階調領域に比べて少ない階調領域から行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
複数の構成色を含むカラー画像を表示する画像表示装置であって、
表示素子と、
入力映像信号と前記構成色ごとに設けられたガンマ変換データとを用いて前記表示素子を駆動するための信号を生成する制御手段と、
温度を検出する温度検出手段と、
該検出された温度に応じて、前記構成色ごとの前記ガンマ変換データの補正処理を行う補正処理手段とを有し、
前記補正処理手段は、前記構成色ごとの前記補正処理を、該補正処理の前後での前記各構成色の変化量が所定値以下となる範囲ごとに段階的に行うことを特徴とする画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−294265(P2009−294265A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145191(P2008−145191)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】