説明

画像解析方法、プログラムおよび画像解析装置

【課題】オペレータが目視で確認しなくても、オペレータが注目している同じ種類の可能性が高い領域を特定し、その領域の付属情報を取得・表示することを目的とする。
【解決手段】撮像装置2から取得した観測データ131を解析する画像解析装置1であって、観測データ131から、オペレータが注目している空間領域である関心領域候補を抽出する関心領域候補抽出部104と、関心領域候補と、標本との特徴量の類似度を算出し、当該類似度が、閾値以上である場合、標本にひも付けられている付属情報143を対照データベース140から取得する検索処理部106と、付属情報143を表示部110に表示する付属情報表示処理部107と、を有することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析方法、プログラムおよび画像解析装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元空間上の観測データを解析するにあたり、観測データが占める位置に対応した付属情報(診断データや、レポートなど)を用いることで、解析の参考情報になることがある。
例えば、CT(Computerized Tomography)スキャンなどを使用した医療画像診断では、類似の画像に対する診断を参考にすることが行われている。例えば、特許文献1には、観測対象の画像上に関心領域を指定して、あらかじめ画像データベースに登録されている観測対象画像と類似した画像を検索し、当該関心領域に対応する診断データを参考情報として提示する類似画像検索装置および方法並びにプログラムが記載されている。特許文献1に記載の技術では、異なる患者や、同じ患者でも異なる日時に撮像した画像で、同じ種類と疑われる患部があった場合、オペレータが目視で同じ種類の患部であることを確認し、チェックを行うことで、その患部に関する付属情報を取得・表示している。
また、特許文献2には、関心領域の抽出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−275216号公報
【特許文献2】特開2003−265462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、他のデータ中において、患部が完全に同じ位置に出現することは稀である。このような場合、特許文献1に記載の技術のように、オペレータが目視で同じ種類の患部であるか否かを確認する必要がある。
しかし、同じ種類の患部であるか否かを、オペレータが目視で確認する作業は、煩雑であり、オペレータの負担となってしまう。
【0005】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、他の画像において、オペレータが注目している領域と、同じ種類の可能性が高い領域を特定し、その領域の付属情報を取得・表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、撮像装置から取得した撮像画像を解析する画像解析装置による画像解析方法であって、記憶部に、前記撮像画像と、前記撮像画像に対応する対照画像と、が格納されており、前記対照画像は、当該対照画像から予め抽出されている空間領域である標本データを含み、前記標本データには、前記標本データに関する情報である付属情報がひも付けられており、前記画像解析装置は、前記撮像画像から、オペレータが注目している空間領域である関心領域データを抽出し、前記関心領域データと、前記標本データとの特徴量の類似度を算出し、当該類似度が、閾値以上である場合、前記標本データにひも付けられている付属情報を前記記憶部から取得し、前記付属情報を表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、他の画像において、オペレータが注目している領域と、同じ種類の可能性が高い領域を特定し、その領域の付属情報を取得・表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る画像解析システムの構成例を示す図である。
【図2】断面像画面の例を示す図である。
【図3】ボリュームで表現される観測データの例を示す図である。
【図4】観測データおよび対照データにおいて、領域分けされた造形物データの例を示す図である。
【図5】付属情報が表示された断面像画面の例である。
【図6】本実施形態に係る断面像取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る関心領域候補抽出処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図8】未領域候補の抽出のための開始画素の例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る付属情報検索処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係る画像解析システムの構成例を示す図である。
画像解析システム3は、CTスキャンや、MRI(Magnetic Resonance Imaging)などの撮像装置2と、撮像装置2から送られた画像を解析するための画像解析装置1とを有している。
画像解析装置1は、情報を処理する処理部100と、情報を表示する表示部110と、情報を入力する入力部120と、撮像装置2で撮像された観測データ131などが格納されている観測データベース(記憶部)130と、以前に撮像され、観測データ131との比較にために用いられる対照データ141などが格納された対照データベース(記憶部)140とを有する。
【0011】
観測データベース130には、観測データ131と、関心領域候補データ132とが格納されている。観測データ131とは、撮像装置2から送られた撮像画像のデータであり、解析対象となるデータである。この観測データ131には、関心領域候補抽出部104によって抽出された関心領域画像のデータである関心領域候補のデータ(関心領域候補データ132:関心領域データ)がひも付けられて格納している。
ここで、関心領域とは、観測データ131において、オペレータが注目している空間領域であり、例えば患部などである。
【0012】
対照データベース140には、1以上の対照データ141が格納されている。対照データ141とは、過去に撮像装置2で撮像されるなどして、画像解析装置1で解析された対照画像のデータである。対照データ141には、関心領域候補に対応する領域(以下、標本と称する)のデータ(標本データ142)や、標本を解析した結果、記述された診断レポートなどの付属情報143が、ひも付けられて格納されている。
ここで、標本とは、例えば、他の患者のデータや、同じ患者における以前に検査した観測データ131において、図7の処理を行い、関心領域として抽出された箇所などである。
【0013】
処理部100は、断面位置処理部101と、断面像生成部102と、断面像表示処理部103と、関心領域候補抽出部104と、関心領域候補表示処理部105と、検索処理部106と、付属情報表示処理部107と、を有する。
断面位置処理部101は、入力部120を介して入力された情報を基に、観測データ131中の位置データを取得すると同時に、スクロールなどの操作が停止しているか、継続しているかなどを検知する。つまり、断面位置処理部101は、断面位置の指定情報を経時的に収集し、操作パターンが、それまでの断面位置指定の操作パターンとは異なることを検知する。操作パターンが異なることの検知方法は種々の手段が可能である。例えば、指定位置が一定時間内に一定方向に変化する操作パターンであったものが、一定時間を過ぎても位置指定変更が行われなかったり、位置指定の変化の方向がそれまでと異なっていたりすることを検知する方法などが考えられるが、これらの手段に限られることはない。
【0014】
断面位置処理部101が検知した操作パターンの変化をトリガとして、関心領域候補抽出部104は関心領域候補の抽出処理を開始する。
【0015】
断面像生成部102は、断面位置処理部101からの情報を基に、観測データ131の断面像を生成する。
断面像表示処理部103は、断面像生成部102で生成された断面像を表示部110に表示する。
【0016】
関心領域候補抽出部104は、後記する領域拡張法などの方法により観測データ131中の関心領域を抽出する。
【0017】
関心領域候補表示処理部105は、関心領域候補抽出部104で抽出された関心領域の候補を表示部110に表示する機能を有する。
【0018】
検索処理部106は、対照データ141において、抽出された関心領域と関連する領域(標本)を検索し、この標本にひも付けられている付属情報143を取得する。
付属情報表示処理部107は、検索処理部106が取得した付属情報143を表示部110に表示する。
詳述すると、検索処理部106は、例えば特許文献1で記載されているような関心領域候補の特徴量と、対照データ141の標本の特徴量との類似度を計算し、この類似度が高い標本を検索し、付属情報表示処理部107が、この標本にひも付けられている付属情報143を表示部110に表示させる。
【0019】
画像解析装置1は、例えばPC(Personal Computer)などで実現され、処理部100と、処理部100における各部101〜107は、図示しないROM(Read Only Memory)や、HDD(Hard Disk Drive)に格納されたプログラムが、RAM(Random Access Memory)に展開され、CPU(Central Processing Unit)によって実行されることによって具現化する。
【0020】
(処理概要)
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態の処理概要を画面例を用いて説明する。
図2〜図5は、画面構成の一例と、観測データ131における断面との関係を示す図であり、このうち図2は、断面像画面の例を示す図であり、図3は、ボリュームで表現される観測データの例を示す図である。
オペレータ(例えば読影医)は、入力部120を操作することにより、ボリュームデータとして撮像装置2から取得した観測データ131を体軸方向に沿って走査する。例えば、スクロール操作が体軸方向に沿った断面位置を指定する手段だとすると、オペレータのスクロール操作により断面像生成部102が指定された断面位置でのアキシャル像(体軸に対する垂直断面像:以下、断面像(またはスライス像)と称する)を生成し、断面像表示処理部103が指定の断面位置での断面像を表示部110に表示する。
【0021】
この点を図2と図3を参照して説明する。図2の断面像画面200は、断面像表示エリア201と、スクロールバー202とを有している。この図2では断面像表示エリア201には、1枚分のスライス画像が表示されている。
また、観測データ131は、撮像装置2から入力された撮像画像を累積することによって(換言すると1スライス分の撮像画像を累積することによって)生成されるデータであり、図3に示すように3次元情報を有したデータである。ちなみに、図3は、等方的なボクセル(voxel)の画像データであると考えることができる。これは、例えば1スライス512×512ピクセル(pixel)の撮像画像から等方的に再構成したデータである。
オペレータが、図2のスクロールバー操作方向を示す矢印203で示す方向に、スクロールバー202を操作することは、図3の観測データ131における断面302が矢印301方向へ移動することを意味する。つまり、図2のスクロールバー202を矢印203方向に移動させることは、図3におけるZ軸方向の奥に位置するスライス像から手前に位置するスライス像へと(矢印301方向へと)、1枚ずつスライス像を切り替えて図2の断面像表示エリア201に表示させることである。なお、符号303については後記する。
【0022】
オペレータは断面像(スライス像)を観察しながら順次スクロール操作を行う。何ら異常が見当たらない場合、一通りスクロール操作が終了すると「異常所見なし」などのレポートを作成して診断を終了するのであるが、スクロールの途中に病変が疑われる部分を見つけた場合、オペレータは、スクロール操作をいったん止め、病変が疑われる箇所をよく観察する。この際、オペレータは、スクロールを止めた箇所で指定される断面像ばかりでなく、その前後の断面像も丁寧に観察することが一般的である。
【0023】
図4は、観測データおよび対照データにおいて、領域分けされた造形物データの例を示す図である。なお、造形物は、例えば骨格や臓器である。
造形物データ401は、造形物毎に、その造形物が空間に占める範囲(座標範囲)が記述されている。図4における断面402は、図3の断面302に対応している。このようにすることで、図3の断面302が、どの造形物と交わるかの判定が可能となり、関心領域の候補を迅速に挙げることができる。
【0024】
図5は、付属情報が表示された断面像画面の例である。
図5の断面像画面501は、図2と同様の構成に加えて、関心領域候補抽出部104で抽出された関心領域候補502が強調表示され、さらにこの関心領域候補に関する付属情報143が表示されている。関心領域候補や付属情報143は1つとは限らず、複数提示してもよい。
【0025】
(フローチャート)
次に、図1を参照しつつ、図6〜図9に沿って本実施形態に係る画像解析方法を説明する。
(断面像取得処理)
図6は、本実施形態に係る断面像取得処理の手順を示すフローチャートである。
まず、断面位置処理部101が、断面位置取得回数iを「0」に設定する(S101)。
次に、オペレータが図2のスクロールバー202をスライドさせることにより、断面像の位置が移動し、断面位置処理部101は、現在の断面のZ座標(図3の断面302のZ座標)をZ(i)に設定し、取得時刻をTiに設定する(S102)。ここで、Z(i=0)は、図3の一番端303(Z軸の一番奥のスライス像(断面像))に相当する。
次に、断面像生成部102が、Zに相当する断面像を生成し(S103)、断面像表示処理部103が、生成した断面像を表示部110に表示する(S104)。
そして、断面位置処理部101は、i>2であるか否かを判定する(S105)。ここで、「2」としたのは、一番端の断面像Z(i=0)を次のステップS106以降の処理対象から外すためであり、「i>1」としてもよい。
【0026】
ステップS105の結果、i>2でない場合(S105→No)、すなわちi≦1であった場合、断面位置処理部101はiに1を加算して(S106)、ステップS102へ処理を戻す。
ステップS105の結果、i>2であった場合(S105→Yes)、断面位置処理部101は、T−Ti―1>TかつZ−Zi−1=0であるか否かを判定する(S107)。
ここで、Tは、所定の値である。つまり、ステップS107において、断面位置処理部101は、無操作の時間が所定の時間以上であり、かつ、その間断面像の位置が動いていないか否かを判定している。
【0027】
ステップS107の結果、T−Ti―1>TかつZ−Zi−1=0でない場合(S107→No)、すなわち、T−Ti―1≦TまたはZ−Zi−1≠0である場合、断面位置処理部101は、iに1を加算して(S106)、ステップS102へ処理を戻す。
ステップS107の結果、T−Ti―1>TかつZ−Zi−1=0である場合(S107→Yes)、関心領域候補抽出部104が、図7で後記する関心領域候補抽出処理を行う(S108)。
関心領域候補抽出処理終了後、断面位置処理部101は、操作終了であるか否かを判定する(S109)。操作終了であるか否かは、例えば、表示画面状の図示しない終了ボタンが選択入力されたか否かなどによって判定される。
ステップS109の結果、操作終了でない場合(S109→No)、断面位置処理部101は、iに1を加算して(S106)、ステップS102へ処理を戻す。
ステップS109の結果、操作終了の場合(S109→Yes)、処理部100は、処理を終了する。
【0028】
図7は、本実施形態に係る関心領域候補抽出処理(図6のステップS108)の詳細な手順を示すフローチャートである。
関心領域の候補の生成方法としては、濃度しきい値法、領域拡張法などを用いることができる。例えば特許文献2に記載されているような領域拡張法をベースとした方法であれば、開始画素を設定する必要があるが、開始画素としてはオペレータが関心を示している可能性の高い箇所、例えば断面像表示処理部103で提示される表示画像の中央付近で一定の大きさ以上の領域を、その候補とすることができる。この場合、後記するように関心領域の候補とした領域が、領域拡張の進行とともに広がるが、その状況を関心領域候補表示処理部105を介して表示部110に表示することによりオペレータに提示し、開始画素の指定や領域の拡張方向などがオペレータの意図と異なる場合には、入力部120を介して変更を行うことができるように構成することが好ましい。
【0029】
ここでは、特許文献2に記載の領域拡張法を用いることとする。
なお、領域拡張法とは、断面像の中心画素を基準にとり、徐々に画素範囲を、隣合う画素の濃度が大きく変化するまで拡張していき、濃度が大きく変化しない範囲の画素を関心領域候補として抽出する方法である。
【0030】
関心領域候補抽出部104は、まず、断面像の中心画素を開始画素として設定する(S201)。
次に、関心領域候補抽出部104は、領域拡張抽出条件を図示しない記憶部から取得する(S202)。領域拡張抽出条件とは、後記する画素間の濃度差の閾値Na、Nbなどである。
そして、関心領域候補抽出部104は、現在処理対象となっている画素群より1つ外側に位置する画素群を取得する領域拡張処理を行う(S203)。
続いて、関心領域候補表示処理部105は、ステップS203で取得した画素群と、既に関心領域候補(開始画素を含む)と判定されている画素群とを関心領域候補として表示部110に表示する(S204)。
続いて、関心領域候補抽出部104は、領域拡張抽出条件(濃度差の閾値Na、Nb)が、変更されたか否かを判定する(S205)。この処理は、例えば、ステップS202〜S207の繰り返しで、関心領域候補が徐々に拡大していく様子をオペレータが目視で確認し、拡大の大きさや、方向がオペレータが意図しているものと異なるとき、オペレータが画面上に表示されている図示しない「条件変更」ボタンを選択入力することによって、関心領域候補抽出部104が領域拡張抽出条件の変更を検知する。これは、ステップS204で表示された関心領域候補から、領域拡張抽出条件が適切であるか否かをオペレータが判断して領域拡張処理に介入するためである。なお、この処理は、関心領域候補の領域が異常でないか否かを判定するためのものであり、特許文献1に記載の技術における目視とは異なるものである。
【0031】
ステップS205の結果、関心領域抽出条件を変更する場合(S205→Yes)、関心領域候補抽出部104は、関心領域抽出条件を、入力部120を介して入力された新たな関心領域抽出条件に変更して(S206)、ステップS201へ処理を戻す。
ステップS205の結果、関心領域抽出条件を変更しない場合(S205→No)、関心領域候補抽出部104は、領域拡張が完了したか否かを判定する(S207)。領域拡張が完了したか否かの判定は、以下のように行うこととする。現在処理対象となっている画素の濃度値をfnとし、現在処理対象となっている画素の外側における隣接画素の濃度値をfiとし、開始画素の濃度値をf0とするとき、|fn−f0|<Naかつ|fn−fi|<Nbであるか否かを、関心領域候補抽出部104が判定することである。すなわち、関心領域候補抽出部104は、ステップS207において、現在処理対象となっている画素の濃度値が開始画素や、外側に隣接する画素の濃度と大きく異なっていないか否かを判定している。
【0032】
ステップS207の結果、領域拡張が完了していない場合(S207→No)、すなわち、|fn−f0|≧Naまたは|fn−fi|≧Nbである場合、関心領域候補抽出部104は、ステップS202へ処理を戻す。
ステップS207の結果、領域拡張が完了している場合(S207→Yes)、すなわち、|fn−f0|<Naかつ|fn−fi|<Nbである場合、関心領域候補抽出部104は、現在の関心領域候補の領域サイズが予め設定してある関心領域最小サイズより大きいか否かを判定する(S208)。この処理は、関心領域候補の大きさがあまりにも小さい場合には、ノイズとして除外することを目的とするものである。
【0033】
ステップS208の結果、領域サイズが関心領域最小サイズより大きくない場合(S208→No)、つまり、領域サイズが関心領域最小サイズ以下の場合、関心領域候補抽出部104は、ステップS210へ処理を進める。
ステップS208の結果、領域サイズが関心領域最小サイズより大きい場合(S208→Yes)、関心領域候補抽出部104は、抽出した領域を関心領域候補として観測データベース130に登録する(S209)。
そして、関心領域候補抽出部104は、断面像上の中心付近に未領域候補の画素があるか否かを判定する(S210)。未領域候補とは、関心領域候補として検出されていない領域のことである。これは、図8に示すように、例えば、中心画素(開始画素801)から関心領域候補802が右に偏った領域で抽出されてしまった場合、画素803の周辺が新たな関心領域として抽出できる可能性があるため行われる処理である。
【0034】
ステップS210の結果、断面像上の中心付近に未領域候補の画素がある場合(S210→Yes)、関心領域候補抽出部104は、この画素を開始画素に設定して(S211)、ステップS202へ処理を戻す。
ステップS210の結果、断面像上の中心付近に未領域候補の画素がない場合(S210→No)、検索処理部106が図9で後記する付属情報検索処理を実行し(S212)、図6の処理へリターンする。
【0035】
図9は、本実施形態に係る付属情報検索処理(図7のステップS212)の詳細な手順を示すフローチャートである。
まず、検索処理部106が観測データ131と、各対照データ141との位置合せを行う(S301)。これは、観測データ131と、対照データ141とで、臓器がおよそ同じ位置となるよう調整することであり、検索処理部106は、例えば、観測データ131や、対照データ141とは別に予め設定されているモデルを基に位置合せを行う。
次に、検索処理部106は、入力部120を介して対照データ検索条件を取得する(S302)。対照データ検索条件は、例えば、性別、病歴、年齢(あるいは年齢層)などである。
そして、検索処理部106は、ステップS302で取得した対照データ検索条件を基に、対照データ141を絞り込む(S303)。ここでは、複数の対照データ141に設定されている属性情報を基に、例えば、病歴、年齢、性別などの対照データ検索条件に合致するものを絞り込む。
【0036】
そして、検索処理部106は、対照データ検索条件(条件)を満たす対照データ141があるか否かを判定する(S304)。
ステップS304の結果、対照データ検索条件を満たす対照データ141がない場合(S304→No)、検索処理部106は図7の処理へリターンする。
ステップS304の結果、対照データ検索条件を満たす対照データ141がある場合(S304→Yes)、検索処理部106は、図7の処理で抽出した関心領域の座標領域を取得し(S305)、対照データ141において、取得した座標領域と、少なくとも一部が重複する標本があるか否かを判定する(S306)。ステップS306の処理は、例えば、後記する特徴量の類似度が近い値を有していても、重複していない患部は別の種類の患部とみなすために行われる。
【0037】
ステップS306の結果、重複する標本がない場合(S306→No)、検索処理部106は他に対照データ検索条件を満たす対照データ141があるか否かを判定する(S307)。
ステップS307の結果、他に対照データ検索条件を満たす対照データ141がある場合(S307→Yes)、検索処理部106はステップS305に戻り、この対照データ141についてステップS305,S306の処理を行う。
ステップS307の結果、他に対照データ検索条件を満たす対照データ141がない場合(S307→No)、検索処理部106は図7の処理へリターンする。
【0038】
ステップS306の結果、重複する標本がある場合(S306→Yes)、検索処理部106は関心領域と、標本との間の特徴量の類似度を算出する(S308)。特徴量は、例えば、関心領域(標本)の形状、大きさ、濃淡パターン特性、位置、方向、数などを用いてもよいし、さらに断面像全体の濃淡パターン特性、臓器の形状や大きさなどを示す指標値、検出された関心領域(標本)の悪性度合などを判断するために用いられる指標値(例えば、腫瘤陰影の場合には、円形度、輪郭のエッジ情報、領域の濃度ヒストグラム情報)などが考えられる。
【0039】
そして、検索処理部106は、ステップS308で算出した類似度が予め設定してある閾値以上であるか否かを判定する(S309)。
ステップS309の結果、類似度が閾値以上でない場合(S309→No)、すなわち類似度が閾値未満である場合、検索処理部106はステップS307へ処理を進める。
ステップS309の結果、類似度が閾値以上である場合(S309→Yes)、付属情報表示処理部107は、該当する標本にひも付けられている診断データなどの付属情報143を取得し(S310)、付属情報143を表示部110に表示して(S311)、図7の処理へリターンする。
【0040】
ステップS309で、類似度が閾値以上の標本が複数存在する場合、検索処理部106は、最も類似度の高い標本を選択してもよいし、類似性の高いものから順に、標本を列挙・表示してもよい。また、年齢層や性別、あるいは当該被検者の時系列情報に限って付属情報143を検索するのであれば、これらの情報に従って標本を、さらに絞り込んでもよい。
【0041】
表示された付属情報143がオペレータの意図に合致しない場合、該当する標本にひも付けられている他の付属情報143があれば、その付属情報143を表示してもよいし、入力部120を介して対照データ検索条件を調整してもよいし、その組み合せを行ってもよい。
【0042】
なお、特許文献2で記載されるような一般化ハフ変換に基づく手法を用いれば、関心領域の候補が対照データ141における標本とは完全には一致しなくても、並進、拡大・縮小、回転などの処理を行って位置あわせができ、局所的な形状の違いがあっても、関心領域候補と、標本との同定を行うことができる。このため、経時的かつ局所的に形状を変化させてゆく観測データ131であれば、時系列順で各観測データ131からの関心領域候補を抽出した後、抽出した関心領域候補を、標本として対照データベース140に順次登録することで、関心領域候補の経時的な変化に追随しながら、付属情報143を表示するよう構成することができる。このような登録はオペレータの手動登録で行ってもよいし、検索処理部106によって行ってもよい。
【0043】
本実施形態では、単純に断面像を生成する断面の位置指定のためのスクロール操作による断面位置の指定パターンの変化(具体的にはスクロールの停止)を、関心領域候補抽出開始のトリガとしたが、これに限らない。例えば、観測データ131を回転させた画像を表示可能である場合には、アキシャル軸(体軸)に沿っての断面の移動から、断面の法線方向を回転させ、異なる方向からの観測を始めたことをトリガとしてもよい。断面の指定方法は、スクロールやマウスドラッグ操作によるモニタ上の仮想断面の仮想空間上での操作ばかりでなく、例えばカメラか磁気センサなどによって位置を特定できるようにした板面(携帯端末などでもよい)を断面に見立てた上で、その板面の実空間上の操作によってもよい。また断面は平面とは限らず、空間上の位置を指定できる形状であれば曲面でもよい。
【0044】
関心領域候補の表示方法は、断面と無関係に表示するよりは、図5の形式のように断面像に重ねて提示するようにしたほうが、関心領域候補の位置関係を把握しやすい場合が多いので好適である。その場合、例えば、関心領域候補の箇所に適当な色をつけて半透明にし、断面像が透けて見えるように重ねて表示するなどしてもよい。
【0045】
さらに、対照データ141そのものを付属情報143として扱ってもよい。つまり、付属情報143として対照データ141の画像を表示するなどしてもよい。また、本実施形態では医療診断に例をとって説明したが、本実施形態は医療分野に限らず、観測データ131の断面を指定して付属情報143を取得するような分野で広く変形実施が可能である。
【0046】
(まとめ)
図10は、本実施形態の概要を示す図である。
図10に示すように、関心領域候補1002に相当する患部と、標本1001に相当する患部の位置がずれた状態であり、断面1003が関心領域候補1002にかかっているが、標本1001にかかっていない状態でも、特徴量の類似度を基に関心領域1002と、標本1001が同種の患部であるか否かを判定し、同種であれば、標本1001にひも付けられている付属情報143を取得・表示することができる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、オペレータが行う断面位置の指定操作から、関心領域の候補を生成し、付属情報143を簡便に提示することができ、オペレータの負担を低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 画像解析装置
2 撮像装置
3 画像解析システム
100 処理部
101 断面位置処理部
102 断面像生成部
103 断面像表示処理部
104 関心領域候補抽出部
105 関心領域公報表示処理部
106 検索処理部
107 付属情報表示処理部
110 表示部
120 入力部
130 観測データベース(記憶部)
131 観測データ(撮像画像)
132 関心領域候補データ(関心領域データ)
140 対照データベース(記憶部)
141 対照データ(対照画像)
142 標本データ(標本データ)
143 付属情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から取得した撮像画像を解析する画像解析装置による画像解析方法であって、
記憶部に、前記撮像画像と、前記撮像画像に対応する対照画像と、が格納されており、
前記対照画像は、当該対照画像から予め抽出されている空間領域である標本データを含み、前記標本データには、前記標本データに関する情報である付属情報がひも付けられており、
前記画像解析装置は、
前記撮像画像から、オペレータが注目している空間領域である関心領域データを抽出し、
前記関心領域データと、前記標本データとの特徴量の類似度を算出し、
当該類似度が、閾値以上である場合、前記標本データにひも付けられている付属情報を前記記憶部から取得し、
前記付属情報を表示部に表示する
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項2】
前記関心領域データの抽出は、処理対象となっている画面中央の画素を開始画素として、隣接する画素の濃度の変化量が、所定の値以下である領域を関心領域とする領域拡張法による
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項3】
前記画像解析装置は、
前記撮像画像を検索しているときに、一定時間操作が停止すると、前記関心領域データの抽出処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項4】
前記画像解析装置は、
前記関心領域データと、前記標本データと、において、少なくとも一部が重複している箇所が存在するときに、前記類似度の算出を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
撮像装置から取得した撮像画像を解析する画像解析装置であって、
記憶部に、前記撮像画像と、前記撮像画像に対応する対照画像と、が格納されており、
前記対照画像は、当該対照画像から予め抽出されている空間領域である標本データを含み、前記標本データには、前記標本データに関する情報である付属情報がひも付けられており、
前記撮像画像から、オペレータが注目している空間領域である関心領域データを抽出する関心領域候補抽出部と、
前記関心領域データと、前記標本データとの特徴量の類似度を算出し、当該類似度が、閾値以上である場合、前記標本データにひも付けられている付属情報を前記記憶部から取得する検索処理部と、
前記付属情報を表示部に表示する付属情報表示処理部と、
を有することを特徴とする画像解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−29966(P2012−29966A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173345(P2010−173345)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】