説明

画像記録方法、記録物、および画像記録装置

【課題】パステル色調の色を再現するための新規な画像記録方法を提供すること、特にインクジェット記録方式に適した画像記録方法を提供すること。
【解決手段】被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、
被記録媒体に、カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物をこの順で付着させてパステル色調の画像を形成することを特徴とする、画像記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パステル色調の色を再現する画像記録方法に関する。また、前記画像記録方法により得られる記録物、および前記画像記録方法を具備した画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パステル色調の色再現は様々な方法でなされている。パステル色調とは、原色のように明確に定義された色ではなく、明度が高く彩度の低い領域に存在する中間色を指す。
このパステル色調色の再現方法としては、例えばボールペンなどの筆記用具においては、中空樹脂粒子や酸化チタンなどの白色色材とカラー色材とを混合した液状組成物をパステルインクとして再現している(例えば特許文献1〜3参照)。また、インクジェット記録方法などの画像形成においては、白色インク組成物を使用せず、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)等のカラーインク組成物を、被記録媒体上に、高い明度で彩度が低い色調となるように打滴することによって再現している。
【0003】
ところで、色空間を概念的に説明するカラーモデルの1つとして、CIE/L表色系が知られている。CIE/L表色系の3つのパラメータ(L、a、b)のうち、Lは色の明度(輝度)を、aおよびbは色相と彩度を示す色度を示す。ここで、L=0の場合は黒を表し、L=100は白を表す。また、aは、色の赤と緑の間における位置を表し、負の値は緑を示し、正の値は赤を示す。bは、色のイエローと青の間における位置を表し、負の値は青を示し、正の値はイエローを示す。Lカラーモデルは3次元であるから、色空間は3次元空間で表現され、明度は縦軸上に表わされる。しかしながら、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)等のカラーインク組成物のみを用いてインクジェット記録方法などにより画像形成する場合においては、彩度を下げるためにカラーインク組成物を被記録媒体上に薄く塗りつける必要が生じるため、特にL≧80の明度が高い領域では再現できないパステル色調があった。
【0004】
一方、特許文献4は、カラーインク組成物によって画像を形成した後、当該画像が所望の濃度になっていない場合に、白色インクを重ね撃ちすることにより濃度を制御し、濃度補正を行なう画像記録方法を開示している。しかしながら、特許文献4は、記録装置間による色の個体差がなく、かつ低濃度部から高濃度部に渡る厳密な色の調整を可能とすることを目的とした発明であり、画像が所望の濃度よりも低い濃度の場合に、画像の明度を上げるために微小量の白色インクを重ね撃ちするものであって、パステル色調の色の再現を目的としたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−157467号公報
【特許文献2】特開平03−277669号公報
【特許文献3】特開平09−316382号公報
【特許文献4】特開2005−125690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パステル色調の色を再現するための新規な画像記録方法を提供することにあり、特にインクジェット記録方式に適した画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、
被記録媒体に、カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物をこの順で付着させてパステル色調の画像を形成することを特徴とする、画像記録方法。
(2) 被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、
被記録媒体にカラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物を、記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させてパステル色調の画像を形成することを特徴とする、上記(1)記載の画像記録方法。
(3) 被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物でカラー画像を形成した後、前記カラー画像上に白色色材を含む白色インク組成物で白色層を形成する画像記録方法であって、
カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるように前記カラー画像上に前記白色層を形成することにより、パステル色調の画像を形成することを特徴とする、上記(1)記載の画像記録方法。
(4) 前記パステル色調が、CIE/Lにおいて、L≧60、−50≦a≦50、−50≦b≦50の範囲内の色であることを特徴とする、上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(5) 前記白色色材が、金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(6) 前記カラー色材が、顔料系または染料系の何れかであることを特徴とする、上記(1)〜(5)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(7) インクジェット記録方式により行なわれることを特徴とする、上記(1)〜(6)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一項に記載の画像記録方法により得られることを特徴とする、記録物。
(9) 上記(1)〜(7)の何れか一項に記載の画像記録方法を具備したことを特徴とする、画像記録装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像記録方法によれば、特にインクジェット記録方式による画像記録において従来再現が困難であったパステル色調を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、顔料系カラー印刷の後に、それぞれ、duty80%または100%の白印刷(白色色材として中空樹脂粒子を使用)を行なった場合(実施例1)の色再現領域との比較である。
【図2】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、顔料系カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(白色色材として二酸化チタンを使用)を行なった場合(実施例2)の色再現領域との比較である。
【図3】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、染料系カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(白色色材として中空樹脂粒子を使用)を行なった場合(実施例3)の色再現領域との比較である。
【図4】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、染料系カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(白色色材として二酸化チタンを使用)を行なった場合(実施例4)の色再現領域との比較である。
【図5】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、顔料系カラーインク組成物および白色インク組成物(白色色材として中空樹脂粒子を使用、duty80%で印刷)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例5)の色再現領域との比較を示す。
【図6】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、顔料系カラーインク組成物および白色インク組成物(白色色材として二酸化チタンを使用、duty80%で印刷)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例6)の色再現領域との比較を示す。
【図7】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、染料系カラーインク組成物および白色インク組成物(白色色材として中空樹脂粒子を使用、duty80%で印刷)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例7)の色再現領域との比較を示す。
【図8】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、染料系カラーインク組成物および白色インク組成物(白色色材として二酸化チタンを使用、duty80%で印刷)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例8)の色再現領域との比較を示す。
【図9】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例1の色再現領域と、実施例5の色再現領域を示す。
【図10】顔料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例2の色再現領域と、実施例6の色再現領域を示す。
【図11】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例3の色再現領域と、実施例7の色再現領域を示す。
【図12】染料系カラーインク組成物で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例4の色再現領域と、実施例8の色再現領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の画像記録方法は、パステル色調の色を再現するための新規な画像記録方法に関する。かかる本発明の画像記録方法は、被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、被記録媒体に、カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物をこの順で付着させることで、パステル色調の画像を形成することを特徴とする。
尚、本発明において、パステル色調とはCIE/Lにおいて明度が高く彩度の低い領域に存在する中間色を意味し、L≧60、−50≦a≦50、−50≦b≦50の範囲内の色であることが好ましい。また、カラー色材および白色色材の量比は、被記録媒体に画像形成された際の単位面積当りの色材量(質量単位)比を意味する。以下、本発明の画像記録方法について詳細に説明する。
【0011】
[白色インク組成物]
本発明における白色インク組成物は、白色色材として金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種と、前記色材を定着する樹脂成分とを含んでいることが好ましい。
【0012】
1.金属化合物、中空樹脂粒子
本発明における金属化合物としては、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明における金属化合物としては、二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1.0〜20.0質量%であり、より好ましくは5.0〜10.0質量%である。金属酸化物の含有量が20.0質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1.0質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
【0013】
金属化合物の平均粒子径(外径)は、好ましくは30〜600nmであり、より好ましくは200〜400nmである。外径が600nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径30nm未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0014】
金属化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0015】
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0016】
また、本発明における白色インク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
【0017】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0018】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
【0019】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0020】
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0021】
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0022】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0024】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0025】
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0026】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
3.定着樹脂
本発明における白色インク組成物は、中空樹脂粒子を定着させる樹脂を含むことが望ましい。係る樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0027】
4.浸透性有機溶剤
本発明における白色インク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0028】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0029】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0030】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0031】
5.界面活性剤
本発明における白色インク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0032】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0033】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明における白色インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0035】
上記界面活性剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0036】
6.第三級アミン
本発明における白色インク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、白色インク組成物のpHを容易に調整することができる。
【0037】
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0038】
上記第三級アミンの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0039】
7.溶剤および添加剤
本発明における白色インク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0040】
本発明における白色インク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0041】
8.調整方法
本発明における白色インク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0042】
[カラーインク組成物]
本発明におけるカラーインク組成物は、カラー色材を含むものであれば良く、好ましくは白色以外を呈するカラーインク組成物である。本発明におけるカラーインク組成物は特に限定されることなく、市販のカラーインク組成物を使用することができる。
カラー色材としては、顔料系および染料系のいずれでも良く、例えば、特開2003−192963号、特開2005−23253号公報、特開平9−3380号公報、特開2004−51776号公報に記載されたカラーインク組成物を好適に使用することができる。
また、本発明における“カラー”とは特定の色領域ではなく一般的に色があると言われている領域全てを指す。つまり、“L座標上でL=100、a=0、b=0(理想的な白)以外の座標に位置する色”を示す。
【0043】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、被記録媒体に、カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物をこの順で付着させることで、パステル色調の画像を形成することを特徴とする。
【0044】
カラーインク組成物と白色インク組成物による画像形成は、後述するように、パステル色調を形成すべき任意の領域において、カラーインク組成物によってカラー画像層を予め形成(付着・乾燥)した後、該カラー画像層上に白色インク組成物によって白色層を形成する態様、あるいはパステル色調を形成すべき任意の領域において、カラーインク組成物および白色インク組成物を画像記録装置の記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させて画像を形成する態様が含まれる。後者には、例えば、インクジェット記録装置等の液滴を吐出可能な記録ヘッドを具備した画像形成装置で行なわれる画像形成が該当する。かかる画像形成装置では、記録ヘッドと記録媒体を相対的に走査させながらインクを記録ヘッドから記録媒体に吐出させて画像形成がなされる。相対的な走査は、記録ヘッドと記録媒体の少なくとも一方を他方に対して移動させながら記録ヘッドからインクを吐出させ記録媒体に付着させるものである。記録ヘッドを具備した画像形成装置では、まず、ホストコンピュータ等に設けられた画像データ形成部から受け取った画像データに基づいて、白色インク組成物およびカラーインク組成物による各種ドットパターンデータを形成される。次いで、前記ドットパターンデータに対応した各種ドット(白色ドット、カラードット)を被記録媒体に記録すべく、記録ヘッドのノズル列から吐出された各種インクが被記録媒体上に付着することによって画像が形成される。この時、被記録媒体における記録ヘッドが走査する際に対向する領域にある画素に対して、順に、走査方向に、カラー、白色の各種ドットが記録され、画像が形成される。走査方向は、記録ヘッドを記録媒体に対して移動させ走査させる場合は記録ヘッド移動方向であり、記録媒体を記録ヘッドに対して移動させ走査させる場合は媒体搬送方向である。従って該画素を構成する各種ドットは記録ヘッドと記録媒体との同一の走査にて、記録媒体の同一の領域(1回の走査領域)に形成されることとなる。また、その際、記録ヘッドに備えられたノズル列のうちカラーインク組成物を吐出するノズル列を、白インク組成物を吐出するノズル列よりも、記録ヘッドが記録媒体に対して相対的に走査する方向の前方側の位置に配置させる。こうすることで、カラーインク組成物および白色インク組成物を記録媒体の同一領域にこの順で付着させる。記録ヘッドを記録媒体に対して移動させる走査を行なう場合は、いわゆる単方向印刷を行なう。
本発明においては、ドットはカラードットに白色ドットが完全に重なる必要はなく、少なくとも一部重なっていれば良い。また、混色する部分があってもよい。
【0045】
前者のようにカラー画像層を予め形成(付着・乾燥)して該層上に白色層を形成する場合には、カラー画像形成および白色層の形成方法は特に限定されることはなく、例えば、凸版印刷方式、凹版印刷方式、平版印刷方式、孔版印刷方式、電子写真記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット記録方式による記録方法である。
【0046】
インクジェット記録方式としては、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどが挙げられる。
【0047】
白色色材は、カラー色材1等量に対して、10〜500等量とすることが好ましく、100〜300等量とすることがより好ましい。カラー色材および白色色材の量比は、被記録媒体に画像形成された際の単位面積当りの色材量(質量単位)比である。特に、インクジェット記録装置等を用いて本発明の画像記録方法を行なう場合には、画像形成部で形成された画像データに基づいてドットパターンデータを作成する際に、白色色材の量を固定値としてカラー色材を白色色材に対する量として調整することが望ましい。
本発明によれば、画像記録されるカラー色材に対する白色色材の量を調整することって、任意のパステル色調の色を再現することが可能である。
【0048】
カラー画像形成および白色層は各種記録媒体に塗布することができる。被記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
【0049】
[記録物、記録装置]
本発明は、上記画像記録方法によって従来再現が困難であったパステル色調の画像が記録された記録物を提供することができる。
本発明はまた、上記画像記録方法を具備した画像記録装置を提供することができる。かかる画像記録装置によれば、従来再現が困難であったパステル色調の画像を形成することが可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0051】
[白色インク組成物]
まず、表1に記載の組成に従って、白色中空樹脂粒子または金属化合物を色材として含む白色インク組成物(インク1、インク2)を調製した。尚、表中の数値は質量%である。
【0052】
【表1】

【0053】
中空樹脂粒子は、表1に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。
【0054】
金属酸化物は、表1に記載の市販品「NanoTek (R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek (R) Slurryは、平均粒子径36nmの二酸化チタンを固形分として15%の割合で含むスラリーである。
【0055】
「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、ポリシロキサン系界面活性剤である。
【0056】
ウレタン樹脂は、「WBR−022U」(大成ファインケミカル社(製))を用いた。
【0057】
[画像記録(1) カラー画像層上に白色層を形成することによるパステル色調の再現]
(画像記録(1)−1 顔料系カラーインク組成物を使用)
カラー画像の形成は、市販のインクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)およびインクセット(EPSON IC9CL3337 フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いて印刷することにより行なった。
【0058】
また、白色画像の形成は、まず表1に記載の白色インク組成物をインクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室に充填し、次いで、このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着して印刷することにより行った。
【0059】
上記の各色の印刷方法により、まず、インクジェットプリンタ「PX−5500」を用いてメディア(セイコーエプソン社製、写真用紙<光沢>)でカラー印刷(印刷条件:用紙選択−写真用紙光沢、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷)を行ったサンプルに、インクジェットプリンタ「PX−G930」を用いて白色インク組成物をduty80%または100%の条件で後から印刷したときのガマットを測定した。本実施例においては、被記録媒体に印刷される白色色材とカラー色材の量比が200:1〜1:1となるように印刷した。量比が200〜1と幅広いのは、ガマットを表示するためのカラーインクの使用量が一定でないため、白色の最大使用量:カラーインクの最小使用量=200:1を上限に量比を決めたことによる。
【0060】
尚、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0061】
実施例1
図1に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタおよびライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラー印刷の後に、それぞれ、duty80%または100%の白印刷(インク組成物1(白色色材として中空樹脂粒子)を使用)を行なった場合(実施例1)の色再現領域との比較を示す。尚、図1において、Lが80未満の領域では、duty100%だとインクが溢れてしまうため、duty80%の場合のガマットのみ示す。
【0062】
尚、本発明において、CIE/L値はGretag Macbeth SpetroscanおよびSpectrolino(X-Rite社製)により測定した。
【0063】
図1から、明度の高い領域(Lが70以上の領域であって、特に、L=80、90のガマット)において、カラー組成物のみ(シアン、マゼンタ、イエロー、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、マットブラック、グレー、ライトグレーによるコンポジット)では再現ができない領域を、カラー印刷の後に白印刷を行なうことで色再現できたことがわかる。
【0064】
実施例2
図2に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタおよびライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(インク組成物2(白色色材として二酸化チタン)を使用)を行なった場合(実施例2)の色再現領域との比較を示す。
図2から、明度の高い領域(Lが64以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(シアン、マゼンタ、イエロー、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、マットブラック、グレー、ライトグレーによるコンポジット)では再現ができない領域を、カラー印刷の後に白印刷を行なうことで色再現できたことがわかる。
【0065】
(画像記録(1)−2 染料系カラーインク組成物を使用)
カラー画像の形成は、市販のインクジェットプリンタ(「EPSON PM−A840」セイコーエプソン株式会社製)およびインクセット(EPSON IC6CL50 ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いて印刷することにより行なった。
【0066】
また、白色画像の形成は、まず表1に記載の白色インク組成物をインクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室に充填し、次いで、このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着して印刷することにより行った。
【0067】
上記の各色の印刷方法により、まず、インクジェットプリンタ「EPSON PM−A840」を用いてメディア(セイコーエプソン社製、写真用紙<光沢>)でカラー印刷(印刷条件:用紙選択−写真用紙光沢、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷)を行ったサンプルに、インクジェットプリンタ「PX−G930」を用いて白色インク組成物をduty80%の条件で後から印刷したときのガマットを測定した。本実施例においては、被記録媒体に印刷される白色色材とカラー色材の量比が200:1〜1:1となるように印刷した。量比が200〜1と幅広いのは、ガマットを表示するためのカラーインクの使用量が一定でないため、白色の最大使用量:カラーインクの最小使用量=200:1を上限に量比を決めたことによる。
【0068】
実施例3
図3に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(インク組成物1(白色色材として中空樹脂粒子)を使用)を行なった場合(実施例3)の色再現領域との比較を示す。
【0069】
図3から、明度の高い領域(Lが74以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタによるコンポジット)では再現ができない領域を、カラー印刷の後に白印刷を行なうことで色再現できたことがわかる。
【0070】
実施例4
図4に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラー印刷の後に、duty80%の白印刷(インク組成物2(白色色材として二酸化チタン)を使用)を行なった場合(実施例4)の色再現領域との比較を示す。
図4から、明度の高い領域(Lが67以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタによるコンポジット)では再現ができない領域を、カラー印刷の後に白印刷を行なうことで色再現できたことがわかる。
【0071】
二酸化チタンより中空樹脂粒子の方が明度が高いため、同条件で印刷すると中空樹脂粒子の方がパステル調になるL値が高い。逆にL値が比較的低い60〜70程度では二酸化チタンの方が有効である。
【0072】
[L値 数値データ]
図1〜4において、カラー印刷に白印刷を重ねた場合のガマットの端点部(カラーのみと比較したとき、はみ出す部分の右上端点)と、その点を基準にL値、b値を固定したときの、カラーのみのa値の端点部の比較を下記表2に示す。いずれもカラー印刷後に白色印刷を施した画像サンプルの方がa値の正方向にガマットが広がっている。
【0073】
【表2】

【0074】
[画像記録(2) カラーインク組成物と白色インク組成物を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させることによるパステル色調の再現]
(画像記録(2)−1 顔料系カラーインク組成物を使用)
カラー画像および白色画像の形成は、市販のインクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)を用いて行なった。
カラーインク組成物にはインクセット(EPSON IC9CL3337 フォトブラック、マットブラック、グレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いた。白色インク組成物には表1に記載の白色インク組成物を用い、インクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのライトグレーインク室に充填した。次いで、作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へカラーインク組成物と白色インク組成物を付着させて印刷することにより画像の形成を行った。
【0075】
上記の印刷方法により、インクジェットプリンタ「PX−5500」を用いてメディア(セイコーエプソン社製、写真用紙<光沢>)にカラー印刷および白色印刷を(印刷条件:用紙選択−写真用紙光沢、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷)白色インク組成物のduty80%の条件で印刷したときのガマットを測定した。本実施例においては、被記録媒体に印刷される白色色材とカラー色材の量比が200:1〜1:1となるように印刷した。量比が200〜1と幅広いのは、ガマットを表示するためのカラーインクの使用量が一定でないため、白色の最大使用量:カラーインクの最小使用量=200:1を上限に量比を決めたことによる。
【0076】
実施例5
図5に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタおよびライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラーインク組成物および白色インク組成物(インク組成物1(白色色材として中空樹脂粒子)を使用)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例5)の色再現領域との比較を示す。白色ドットはduty80%で形成した。
図5から、明度の高い領域(Lが70以上の領域であって、特に、L=80、90のガマット)において、カラー組成物のみ(シアン、マゼンタ、イエロー、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、マットブラック、グレー、ライトグレーによるコンポジット)では再現ができない領域の色を再現できたことがわかる。
【0077】
実施例6
図6に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(フォトブラック、マットブラック、グレー、ライトグレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタおよびライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラーインク組成物および白色インク組成物(インク組成物2(白色色材として二酸化チタン)を使用)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例6)の色再現領域との比較を示す。白色ドットはduty80%で形成した。
図6から、明度の高い領域(Lが64以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(シアン、マゼンタ、イエロー、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、マットブラック、グレー、ライトグレーによるコンポジット)では再現ができない領域の色を再現できたことがわかる。
【0078】
(画像記録(2)−2 染料系カラーインク組成物を使用)
カラー画像および白色画像の形成は、インクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに、市販のインクセット(EPSON IC6CL50 ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を充填し、次いで作製されたインクカートリッジをプリンタに装着した。白色画像の形成には表1に記載の白色インク組成物をインクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのライトグレーインク室に充填し、次いで作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へカラーインク組成物と白色インク組成物を付着させて印刷することにより画像の形成を行った。
【0079】
上記の印刷方法により、インクジェットプリンタ「PX−5500」を用いてメディア(セイコーエプソン社製、写真用紙<光沢>)でカラー印刷および白色印刷を(印刷条件:用紙選択−写真用紙光沢、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷)白色インク組成物のduty80%の条件で印刷したときのガマットを測定した。本実施例においては、被記録媒体に印刷される白色色材とカラー色材の量比が200:1〜1:1となるように印刷した。量比が200〜1と幅広いのは、ガマットを表示するためのカラーインクの使用量が一定でないため、白色の最大使用量:カラーインクの最小使用量=200:1を上限に量比を決めたことによる。
【0080】
実施例7
図7に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラーインク組成物および白色インク組成物(インク組成物1(白色色材として中空樹脂粒子)を使用)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例7)の色再現領域との比較を示す。白色ドットはduty80%で形成した。
図7から、明度の高い領域(Lが74以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタによるコンポジット)では再現ができない領域の色を再現できたことがわかる。
【0081】
実施例8
図8に、上記印刷条件にて、カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラーインク組成物および白色インク組成物(インク組成物2(白色色材として二酸化チタン)を使用)を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合(実施例8)の色再現領域との比較を示す。白色ドットはduty80%で形成した。
図8から、明度の高い領域(Lが74以上の領域)において、カラーインク組成物のみ(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタによるコンポジット)では再現ができない領域の色を再現できたことがわかる。
【0082】
二酸化チタンより中空樹脂粒子の方が明度が高いため、同条件で印刷すると中空樹脂粒子の方がパステル調になるL値が高い。逆にL値が比較的低い60〜70程度では二酸化チタンの方が有効である。
【0083】
[L値 数値データ]
図5〜8において、カラーインク組成物と白色インク組成物を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた場合のガマットの端点部(カラーのみと比較したとき、はみ出す部分の右上端点)と、その点を基準にL値、b値を固定したときの、カラーのみのa値の端点部の比較を下記表3に示す。いずれもカラーインク組成物と白色インク組成物を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させた画像サンプルの方がa値の正方向にガマットが広がっている。
【0084】
【表3】

【0085】
図9に、顔料系カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例1の色再現領域と、実施例5の色再現領域を示す。また、図10に、顔料系カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例2の色再現領域と、実施例6の色再現領域を示す。また、図11に染料系カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例3の色再現領域と、実施例7の色再現領域を示す。更に、図12に、染料系カラーインク組成物(ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)で再現可能なパステル色調の色再現領域と、実施例4の色再現領域と、実施例8の色再現領域を示す。
これらの結果から、カラー画像層上に白色層を形成することにより再現可能なパステル色調の色再現領域と、カラーインク組成物と白色インク組成物を記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させることで再現可能なパステル色調の色再現領域は完全に一致しておらず、即ち、所望のパステル色調に応じて再現技法を選択することで、より高精細な画像を形成することが可能となることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、
被記録媒体に、カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物をこの順で付着させてパステル色調の画像を形成することを特徴とする、画像記録方法。
【請求項2】
被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物と白色色材を含む白色インク組成物で画像を形成する画像記録方法であって、
被記録媒体にカラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるようにカラーインク組成物および白色インク組成物の各インク組成物を、記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へ付着させてパステル色調の画像を形成することを特徴とする、請求項1記載の画像記録方法。
【請求項3】
被記録媒体上に、カラー色材を含有するカラーインク組成物でカラー画像を形成した後、前記カラー画像上に白色色材を含む白色インク組成物で白色層を形成する画像記録方法であって、
カラー色材1等量に対して白色色材が1〜1000等量となるように前記カラー画像上に前記白色層を形成することにより、パステル色調の画像を形成することを特徴とする、請求項1記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記パステル色調が、CIE/Lにおいて、L≧60、−50≦a≦50、−50≦b≦50の範囲内の色であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記白色色材が、金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記カラー色材が、顔料系または染料系の何れかであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の画像記録方法。
【請求項7】
インクジェット記録方式により行なわれることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の画像記録方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の画像記録方法により得られることを特徴とする、記録物。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の画像記録方法を具備したことを特徴とする、画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−131990(P2010−131990A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253028(P2009−253028)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】