説明

画像記録用粘着シート

【課題】多色画像の記録時生ずる各色画像の色ズレが少なく、しかも糊はみ出しが無く、接着性の良好な直接感熱画像記録用粘着シートを提供する。
【解決手段】画像記録層と支持体からなる直接感熱画像記録用シートの該記録層の反対面に粘着剤層を設けたシートと、発泡ポリエステルフィルムの片面に剥離剤層、もう一方の面に印刷易接着受理層を設けた剥離シートであって、該剥離剤層が粘着剤層と対峙するように順次積層させた直接感熱画像記録用粘着シートにおいて、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.4〜0.8の間にあり、かつ前記粘着剤のゲル分率が60〜66質量%であることを特徴とする画像記録用粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ,スキャナー,コンピューターによる画像等をフルカラー画像として出力する画像プリントシステムの内、熱を利用して画像を記録するプリント方式である直接感熱画像記録方式に好適に用いられ、被着体に貼付可能な粘着シートに関し、さらに詳しくはサーマルヘッドを利用して多色画像等を連続階調で記録媒体に記録する際に生ずる各色画像の位置ずれを少なくするのに有用な直接感熱画像記録用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の進歩により、(1)イエロー(2)マゼンタ(3)シアンの各色をサーマルヘッド等の発熱素子から熱エネルギーを印加して直接発色させる直接感熱記録方式、(2)熱エネルギーを印加して色素を昇華させて画像形成層に転写する昇華熱転写記録方式、(3)熱エネルギーを印加して溶融したインクを転写して画像形成する溶融型熱転写方式や(4)静電転写方式によりトナーで画像形成層に画像を形成し、熱で溶融・冷却して画像を固定する電子写真方式等の高度な印画方式により写真に近い画質を得ることが可能となってきており、これに粘着シートの構成とすることで、画像記録された後はシールとして被着体に貼り付けることが広く一般に普及している。
【0003】
特に、熱を利用する直接感熱画像記録方式の場合は、記録シート自体が温度変化にさらされることから、熱の影響により色ずれを生ずる問題があった。
また、この現象はプリンターの設置環境が低温である場合ほど著しく、5℃といった低温で鮮明な画像が得られないことが多い。また、近年の高画質化の流れに伴ってプリンターの高解像化が進み、印画時に各色の位置ズレが少なく品質の高い画像が益々市場から求められるようになっており、鮮明で色相に優れた多色画像を形成できる直接感熱画像記録用粘着シートの開発が重要となってきている。
これを解決するため、例えば、特開2002−180018号公報(特許文献1)には、使用環境温度下における剥離シートを粘着剤層から剥離する際の剥離力の最大値(Nmax)と最小値(Nmin)との比が3.5以下(好ましくは2.0以下)である粘着記録シートが提案されている。
しかしながら、特開2002−180018号公報の技術では、剥離力と色ずれとの関連が不明であり、色ずれと直接関係のない剥離力を規定するものであり、十分な効果が得られるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−180018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、いずれの印画方式においても、多色の画像を記録(印画)する場合には、各色を順次形成して多色(フルカラー)とすることが多いが、その際にプリンター内の画像記録シートの走行にずれを生じず、各色の位置ズレが発生しない、さらに画像がぼやけたり、あるいは色合いの変化が発生しない粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、プリンター搬送系における色ずれの機構を鋭意研究した結果、プリンター走行時の温度変化により記録シート自体の損失正接tanδの変化、特に粘着剤を塗布した直接感熱記録用表面シート/粘着剤/剥離シートからなる画像記録用粘着シートの場合、粘着剤の損失正接tanδの変化と粘着剤の架橋度を表すゲル分率が色ずれに大きく寄与していることを見いだし、本発明の直接感熱画像記録用粘着シートを完成するに至った。
ここで言う損失正接tanδは、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’との比であり、失われるエネルギーと保存されるエネルギーの比を表している。即ちtanδの値が大きいほど粘性体に近くエネルギーを吸収しやすい粘着剤であり、tanδの値が小さいほど弾性体に近い粘着剤となる。
【0006】
本発明は、この粘着剤の損失正接tanδの値が、5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)が0.4〜0.8にある場合、画像記録用シートとして好適な粘着性能を得ることが出来、粘着剤の損失正接の変化が少ないことで記録される各色画像の色ずれを少なくできることを見いだしたものである。
即ち、tanδの値が粘着シートの使用領域である5℃または40℃で、0.4より小さい場合は各種被着体への接着性に乏しくなる。また、0.8より大きい場合はプリンター内部の搬送系において厚さ方向にかかる応力を熱エネルギーに変えて応力緩和するため、粘着剤の変形が大きくなることで該粘着シートの厚さ方向の変化が大きくなり、プリンターの搬送距離や搬送抵抗の変化を生じ各色画像の位置ズレを生ずることがある。
【0007】
また、記録される各色画像の位置ズレを制御するには、温度変化に伴う記録シートの損失正接tanδの変化を抑えることが重要であり、特に記録用粘着シートの場合は粘着剤の損失正接tanδの温度変化を小さくすることが重要である。
【0008】
粘着剤のtanδは、組成により変化させることが可能で、モノマー配合によりガラス転移温度(Tg)を下げる、タッキファイヤーを添加する等、粘性を高めることでtanδを上げることが出来る。一方、ガラス転移温度(Tg)を上げることやタッキファイヤーを入れないことで粘着剤の弾性が高まり、tanδを下げることが出来る。
具体的には、粘着剤の5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)との比率Tが1.5以下となるように粘着剤の分子量及び分子の分岐を調整することで色ズレを抑えることが出来る。
また、tanδの温度依存性を無くすには、分子量を上げて分子の分岐を少なくすることが有効だが、粘着力が下がる傾向にあるため、粘着性能と記録される各色画像の位置ズレのバランスをとることが重要である。
【0009】
比率Tが1.5を超える場合は、粘着剤層の温度による厚さ方向のクッション性の変化が大きくなり、直接感熱方式の画像記録においては、搬送距離や搬送抵抗の変化が大きくなることで色ズレが大きくなり不適である。
【0010】
さらに、各色画像の位置ズレを制御するためには、表面基材の直接感熱記録シート及び剥離シートの材質に合わせて、粘着剤の架橋度を示すゲル分率を60〜66質量%の範囲で調整する必要がある。
ここで言うゲル分率は、ソックスレー抽出器を用い、1g前後の粘着剤を酢酸エチルにより重量変化が無くなるまで、酢酸エチルの沸点で抽出し、残った粘着剤の残査(W1)と元の粘着剤の質量(W0)の比を測定した値である。

ゲル分率(質量%)=W1/W0×100
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る直接感熱画像記録用粘着シートにより、画像の色ズレが少なく、鮮明なデジタル写真の品質を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面シートとしては、例えば、富士写真フイルム(株)製の直接感熱画像記録用シートであるPrintpixペーパーを用い、粘着剤としては、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)の値が、0.4〜0.8の間にある特定のアクリル系粘着剤、剥離シートとしては、スキン層/発泡層/スキン層/印刷易接着受理層をもつ東洋紡績(株)製のクリスパーK5312 100μmの易接着受理層と反対面にシリコーン系剥離剤を塗布したものを用いた場合、粘着剤層のゲル分率を60〜66質量%に調整したものが、富士写真フイルム(株)製のPrintpixプリンター NC−370DおよびNC−471Dで印画した場合、記録される各色画像の位置ズレが最も小さくなる。
【0013】
また、表面基材として、富士写真フイルム(株)製Printpixペーパーを用い、粘着剤として粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.4〜0.8の間にある特定のアクリル系粘着剤、剥離シートとしてスキン層を持たない片面印刷易接着受理層を持つ東洋紡績(株)製クリスパーG5312の易接着受理層と反対面にシリコーン系剥離剤を塗布したものを用いた場合は、62〜64質量%のゲル分率のものが、富士写真フイルム(株)製Printpixプリンター NC−370DおよびNC−471Dで印画した場合、最も記録される各色画像の位置ズレが小さくなる。
ゲル分率が60質量%未満の場合は粘着剤の架橋度が低いことにより凝集力が不足し、粘着シートからの糊のはみ出しによりプリンターのサーマルヘッドやペーパーロール等を汚すおそれがある。また、ゲル分率が66質量%を超える場合は、架橋度が高すぎるため接着性が損なわれるという不都合が生ずるおそれがある。
【0014】
本発明の粘着シートを構成する直接感熱記録用表面シートとしては、記録層と支持体からなる。支持体としては、公知の材料が使用でき、例えば紙類、合成樹脂フィルム、合成紙、不織布、紙の両面に樹脂ラミネートした所謂RC紙などが挙げられる。この中でも、RC紙が好適に用いられる。また、記録層としては、直接感熱記録等の記録方式に適した、例えば、特開昭60−242093号公報、特開昭61−40192公報等に記載されたジアゾ化合物の光分解性と、ジアゾ化合物とカプラーとのカップリング反応により発色する性質とを利用した感熱記録層を用いることが出来る。
【0015】
本発明の粘着剤を構成する成分としては、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤であり、これに架橋剤を配合し、乾燥し、固化させて使用するのが好ましい。
【0016】
粘着剤層のゲル分率を調整する架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、カルポジイミド系および金属キレート系等を用いることができ、1種または2種以上を併用しても良い。その中でも、記録シートの支持体との密着性向上の面で、イソシアネート系およびエポキシ系が好ましい。
【0017】
本発明の粘着シートを構成する剥離シートとしては、基材と剥離剤の層からなる。基材としては、公知の材料が使用でき、平滑性と適度なクッション性を有し、且つ熱拡散率の低い発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、アルキルペンダント系、縮合ワックス系のものが使用できるが、剥離紙からスムースに剥がれる点、及びプリンター走行中に剥がれを生じないようにするため、シリコーンレジンを配合した重剥離タイプのシリコーン系剥離剤が好適に使用できる。
【0018】
粘着剤層を形成する方法としては、(メタ)アクリル酸エステルを共重合させたアクリル系粘着剤に、架橋剤を添加した塗液を、剥離シート上に、塗布し、乾燥した後、記録シートの支持体側と貼り合わせて製造される。
また、粘着剤層の塗布装置としては、リバースロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、バーコーター、スロットダイコーター、バリオグラビアコーター、リップコーター、カーテンコーター等の公知の塗工装置が使用できる。
粘着剤の塗布量は、乾燥重量で5〜50g/mの塗布量あり、この中でも8〜25g/m2が好ましい。 塗布量が8g/m2未満では得られる記録シートの接着性能が不十分となるおそれがあり、25g/m2を超えると糊のはみ出し等によりプリンターの通紙不良を生ずるおそれがある。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
表面基材として富士写真フイルム(株)製の直接感熱画像記録用シートであるPrintpixペーパーを用い、粘着剤として、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)の値が0.76、40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.62であり、5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が1.2である2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とし、ガラス転移温度が−50℃の東洋インキ製造(株)製のアクリル系溶剤型粘着剤OPH−25(固形分40重量%)100質量部に日本ポリウレタン(株)製多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを3.5質量部添加してゲル分率65質量%となるように架橋度を調整したもの、剥離シートとして、スキン層/発泡層/スキン層/印刷易接着受理層をもつ東洋紡績(株)製のクリスパーK5312 100μmの易接着受理層と反対面にシリコーン系剥離剤を塗布したものを準備した。
この剥離シート上に、前記調整をした粘着剤を乾燥重量15g/mとなるように塗布乾燥し、Printpixペーパーの感熱記録面と反対側に貼り合わせて、Printpixペーパーに転写させることで、直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。
その結果、印画画像の色ズレは小さく、糊はみ出しが無く、接着性の良好な結果を得た。
【0020】
(実施例2)
粘着剤として、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)の値が0.71であり、40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.50であり、5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が1.4であるブチルアクリレートを主成分とし、ガラス転移温度が−35℃の東洋インキ製造(株)製のアクリル系溶剤型粘着剤OPE−11(固形分39.5質量%)100質量部に日本ポリウレタン(株)製の多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを3質量部添加し、ゲル分率62質量%となるように架橋度を調整したものを使った以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。
その結果、印画画像の色ズレは小さく、糊はみ出しが無く、接着性の良好な結果を得た。
【0021】
(実施例3)
粘着剤として、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)の値が0.55であり、40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.50であり、5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が1.1である2エチルヘキシルアクリレートを主成分とし、ガラス転移温度が−55℃の東洋インキ製造(株)製のアクリル系溶剤型粘着剤OFM−11(固形分37重量%)100質量部に日本ポリウレタン(株)製の多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを1.5質量部添加し、ゲル分率61質量%となるように架橋度を調整したものを使い、粘着剤の塗布量を10g/mとした以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、印画画像の色ズレは小さく、糊はみ出しが無く、接着性の良好な結果を得た。
【0022】
(実施例4)
実施例1で用いたアクリル系粘着剤OPH−25を使用し、多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを2.5質量部配合し、ゲル分率63質量%となるように架橋度を調整したものを用い、剥離シートとしてスキン層の無い発泡層のみの発泡ポリエステルフィルム 東洋紡績(株)製のクリスパーG5312 100μmの易接着受理層と反対面にシリコーン系剥離剤を塗布したものを用いた以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、印画画像の色ズレは小さく、糊はみ出しが無く、接着性の良好な結果を得た。
【0023】
(比較例1)
粘着剤として、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)の値が1.22であり、40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.78であり、5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が1.6である2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とし、ガラス転移温度が−50℃の東洋インキ製造(株)製のアクリル系溶剤型粘着剤OSJ−22(固形分46質量%)100質量部に、日本ポリウレタン(株)製の多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを2.5質量部を添加し、ゲル分率51質量%となるように架橋度を調整したものを用いた以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、プリンターNC−370D、NC−471Dで印画した画像ともに色ズレが大きく、鮮明な画像が得られなかった
【0024】
(比較例2)
粘着剤として、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)の値が0.54であり、40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.26であり、5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が2.1である2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とし、ガラス転移温度が−30℃の日本カーバイド(株)製のアクリル系溶剤型の粘着剤OPS−7(固形分40質量%)100質量部に、日本カーバイド(株)製のエポキシ系架橋剤CK−202を1質量部配合し、ゲル分率48質量%となるように架橋度を調整したものを用いた以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、プリンターNC−370Dで印画した画像の色ズレが大きく、鮮明な画像が得られなかった。
【0025】
(比較例3)
実施例1で用いたアクリル系粘着剤OPH−25を使用し、多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを1.5質量部配合し、ゲル分率57質量%となるように架橋度を調整したものを用いた以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、比較例2同様に、プリンターNC−370Dで印画した画像の色ズレが大きく、鮮明な画像が得られなかったばかりか、糊のはみ出し性も悪かった。
【0026】
(比較例4)
実施例1で用いたアクリル系粘着剤OPH−25を使用し、多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを4質量部配合し、ゲル分率68質量%となるように架橋度を調整したものを用いた以外は、実施例1と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、比較例3とは逆に、プリンターNC−471Dで印画した画像の色ズレが大きく、鮮明な画像が得られなかったばかりか、接着性が悪くなった。
【0027】
(比較例5)
実施例2で用いたアクリル系粘着剤OPE−11を使用し、多官能性芳香族イソシアネート架橋剤コロネートLを4質量部配合し、ゲル分率69質量%となるように架橋度を調整したものを用いた以外は、実施例2と同様に直接感熱画像記録用粘着シートを作製し評価を行った。その結果、比較例4と同様に、プリンターNC−471Dで印画した画像の色ズレが大きく、鮮明な画像が得られなかったばかりか、接着性が悪くなった。
【0028】
(品質評価)
上記で得られた粘着シートを下記の評価方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
[tanδの測定方法]
動的粘弾性測定装置を用いて約2mm厚の板状に成膜した粘着剤を周波数1Hzで剪断変形させたときに得られる動的複素弾性率の内、応力と同位相の貯蔵弾性率G’と90゜位相の遅れた損失弾性率G’’より、損失正接tanδ=G’’/G’として求められる。尚、損失正接tanδが0であれば完全弾性体、∞であれば完全粘性体となる。
[印画画像の色ズレ]
作製した直接感熱画像記録用粘着シートを、富士写真フイルム(株)製Printpixプリンター NC−370DおよびNC−471Dを用い、5℃、20%RH、23℃50%RH、35℃、80%RHの環境下でテストパターン「2−10」を10枚連続印画し、マゼンタ(M)に対するイエロー(Y)とシアン(C)の色ズレを測定した。
(評価基準)
○:全ての環境において、色ズレが±150μm以下の場合。
△:±150μmを超え、±170μm以下。
×:±170μm超えた場合。
【0030】
[糊はみ出し]
作製した直接感熱画像記録用粘着シートを10枚重ね、学振式試験機にポリエステルフィルム50μmに端部が当たるようにセットし、1.5Kg荷重で100往復擦り、ポリエステルフィルムに付着した粘着剤の量を目視で判定する。
(評価基準)
○:目視でほとんどわかないレベル。
△:付着の少ないもの。
×:付着の多い物。
【0031】
[接着性]
16mm×23mmの大きさに打ち抜いた直接感熱画像記録用粘着シートを微塗工紙(商品名:ニューエージ81.4g/m)、コート紙(商品名:OK金藤片面84.9g/m)、キャストコート紙(商品名:Nミラー84.9g/m)に貼り、40℃、1日後の四隅の浮きを測定した。
(評価基準)
○:最大浮き上がり量が、0.1mm以下。
△:最大浮き上がり量が、0.1mmを超え、1mm未満。
×:最大浮き上がり量が、1mm以上。
【0032】
【表1】

【0033】
表中の剥離シート基材 Kは、クリスパーK5312 100μm
Gは、クリスパーG5312 100μm
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、デジタルカメラ,スキャナー,コンピューターによる画像等をフルカラー画像として出力する直接感熱画像記録方式に使用する粘着シートの各色画像の色ズレが少なくなるので、鮮明な画像の粘着シートに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録層と支持体からなる直接感熱画像記録用シートの該記録層の反対面に粘着剤層を設けたシートと、発泡ポリエステルフィルムの片面に剥離剤層、もう一方の面に印刷易接着受理層を設けた剥離シートであって、該剥離剤層が粘着剤層と対峙するように順次積層させた直接感熱画像記録用粘着シートにおいて、粘着剤層の5℃における損失正接tanδ(5)と40℃における損失正接tanδ(40)の値が0.4〜0.8の間にあり、かつ前記粘着剤のゲル分率が60〜66質量%であることを特徴とする画像記録用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の5℃の損失正接tanδ(5)と40℃の損失正接tanδ(40)との比T=tanδ(5)/tanδ(40)が、1.5以下である請求項1記載の画像記録用粘着シート。

【公開番号】特開2006−7438(P2006−7438A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183900(P2004−183900)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(595178748)王子タック株式会社 (76)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】