説明

画像記録装置および画像記録装置の制御方法

【課題】記録媒体や搬送機構の状態に影響されることなく、正確に記録媒体の側端位置を決定する。
【解決手段】搬送部材11の上を搬送される記録媒体50の左右の両端部を横断する方向に配置されたラインセンサ等の左端検出部4L、右端検出部4Rによって光学的に記録媒体50の側端位置を検出する場合に、左右の各々において、搬送方向のN個の側端検出結果のサンプルのうち、搬送中心11aに対してより相対的に外側のM(<N)個のサンプルを除外して移動平均を算出して記録媒体50の搬送方向の各位置での側端位置を確定することで、搬送部材11に形成された搬送ベルト孔16等のノイズに影響されることなく、正確に記録媒体50の左右の側端位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置および画像記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタやコピー機に代表される画像記録装置は、記録媒体を搬送して、その搬送途中に画像を記録している。例えば、インクジェット方式の画像形成装置においては、プラテン等の搬送部によって搬送されている媒体(例えば、プリンタ用紙)に対して、インクヘッドのヘッドノズルからインクを吐出して、画像記録(記録処理)を行っている。
【0003】
画像記録を行う際は、給送される媒体が搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に位置ずれしてしまっても、媒体の外側に露出している搬送系にインクを吐出して汚損しないために、媒体の側端部の位置を正確に検出する必要がある。
【0004】
側端部検出としては、一般に、イメージセンサや光学式ラインセンサなどが用いられる。このような受光素子での検知では、媒体とその媒体を支えている部材(例えば搬送ベルト)からの反射光のレベル差によって、媒体の端部位置を判定している。
【0005】
例えば、特許文献1においては、記録用紙に光を照射し、記録用紙からの反射光の光量に基づいて記録用紙の端部の位置を検出する端部検出方法において、記録用紙案内手段からの反射光量を記憶する工程と、記録用紙を先送りして当該記録用紙の反射光量を検出して媒体案内手段の反射光量との差分を演算する工程と、ゼロを超える1未満の値Cを差分に乗算して基準レベルを設定する工程と、記録用紙案内手段自体の反射光を検出できる位置まで記録用紙を下流側に引き戻す工程と、記録用紙を先送りして反射光量が基準レベルに一致した時点で記録用紙の始端が基準位置に到達したと判定する工程とを備える端部検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−136741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1の技術では、媒体案内手段および記録用紙の各々の反射光量を一定と仮定している。
【0008】
しかし、記録用紙に縁取り模様や背景模様など何らかのイメージ等が画像形成されている場合や裏面のイメージが裏写りしている場合は、そのイメージ等によって受光素子の出力レベルが変化し、その変化点を記録用紙の端部と誤検出することが懸念される。
【0009】
また、例えば、媒体案内手段としての搬送ベルトに多数の孔があり、端部検出部直下の搬送ベルト下に反射物が存在する場合や、搬送ベルトに汚損部が存在する場合などでは、搬送ベルトの孔や汚損部等からの反射光により記録用紙の端部以外を端部と誤検出してしまう懸念がある。
【0010】
さらに、特許文献1の場合には、記録用紙を搬送方向と逆方向に引き戻す工程が必要であり、搬送方向のみの記録用紙の移動を前提とした搬送機構の場合、記録用紙を幅方向に変位させることは困難であり、記録用紙の幅方向の側端部の検出には適用が困難なことも予想される。
【0011】
本発明の目的は、記録媒体や搬送機構の状態に影響されることなく、正確に記録媒体の側端位置を決定することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、記録媒体を第1方向に移動させる搬送機構と、
前記記録媒体が移動する前記第1方向に対して交差する第2方向に配列された記録手段を有する記録部と、
前記第1方向に移動する前記記録媒体の前記第2方向における側端位置を所望の周期で検出する側端検出部と、
前記側端検出部で得られた複数の前記側端位置の検出結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部から連続した複数の前記検出結果を読み出し、読み出した複数の前記検出結果から前記記録媒体の中心部に対して相対的に外側の前記側端位置を示す少なくとも一つの前記検出結果を除外した残りの前記検出結果の平均値を前記記録媒体の側端位置とする側端位置決定部と、
を具備した画像記録装置を提供する。
【0013】
本発明の第2の観点は、記録媒体を第1方向に移動させる搬送機構と、前記記録媒体が移動する前記第1方向に交差する第2方向に配置された記録手段とを有する画像記録装置の制御方法において、
前記第1方向に移動する前記記録媒体の前記第2方向における側端位置を所望の周期で検出する第1ステップと、
前記第1ステップで得られた複数の前記側端位置の検出結果を記憶する第2ステップと、
前記第2ステップで記憶された複数の前記検出結果から連続した複数の前記検出結果を読み出し、読み出した複数の前記検出結果から前記記録媒体の中心部に対して相対的に外側の前記側端位置を示す少なくとも一つの前記検出結果を除外した残りの前記検出結果の平均値を前記記録媒体の側端位置とする第3ステップと、
を含む画像記録装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録媒体や搬送機構の状態に影響されることなく、正確に記録媒体の側端位置を決定することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態である制御方法を実施する画像記録装置の構成の一例を概念的に示すブロック図である。
【図2A】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置の全体の構造の一例を模式的に示す側面図である。
【図2B】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端位置検出部を取り出して例示した平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端検出部の主な入出力信号の一例を示す波形図である。
【図4A】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端検出部による受光レベルとその時の記録媒体の配置を示した概念図である。
【図4B】誤検出の発生例における受光レベルとその時の記録媒体の配置を示す概念図である。
【図5A】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端検出部の検出の様子を模式的に表した略側面図である。
【図5B】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端検出部の検出の様子を模式的に表した略側面図である。
【図5C】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端検出部の検出の様子を模式的に表した略側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における制御テーブルの構成例を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る画像記録装置における側端位置決定処理に関する制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である制御方法を実施する画像記録装置の構成の一例を示す概念的に示すブロック図である。また、図2Aは、本実施の形態に係る画像記録装置の全体の構造の一例を模式的に示す側面図である。図2Bは、本実施の形態に係る画像記録装置における側端位置検出部を例示した平面図である。
【0017】
なお、図2Aおよび図2Bに示してある各方向を示す矢印は、X方向が主走査方向(第2方向)を示し、Y方向が副走査方向(第1方向)を示し、Z方向がX−Y平面に直交する方向を示しているものとする。
【0018】
本実施の形態に係る画像記録装置1は、記録媒体50の搬送経路の最上流側に少なくとも1つ配設される給送部3と、この給送部3より搬送経路の下流側に配設される搬送部10と、この搬送部10の上方に対向配置される側端検出部4より、側端検出部4の搬送経路の下流側に配設される画像記録部20(記録部)と、後述の本実施の形態の動作処理を実現する画像記録装置1の全体を統括制御する制御部2と、を少なくとも備えている。
【0019】
給送部3は、記録媒体50を複数枚積載して収納する少なくとも1つの給送トレイ3aと、この給送トレイ3aの上方に配設される給送機構3bと、給送機構3bの搬送経路の下流側に配設されるレジストレーションローラ対3cと、を備える。
【0020】
給送部3は、制御部2の指示により、給送トレイ3aに積載収納される記録媒体50を、給送機構3bにおける例えばピックアップローラを駆動させて1枚ずつ搬送経路の下流側へ給送させる。そして給送された記録媒体50は、レジストレーションローラ対3cにより斜行を矯正された後、搬送部10へ給送される。
【0021】
搬送部10は、例えば回転軸に搬送情報生成部13が接続された従動ローラ14bと、回転軸に搬送駆動部12を接続する駆動ローラ14aとの間に、複数の搬送ベルト孔16を有する無端ベルトからなる搬送部材11(搬送機構)を架設して構成されている。
【0022】
さらに、この搬送部材11の内側上方には、複数の図示しない吸引孔がZ方向に貫通して形成されたプラテン15と、このプラテン15の下方に配置された吸引ファン(不図示)とを備えている。
【0023】
搬送情報生成部13は、例えばロータリエンコーダにより構成する。また、搬送駆動部12は、制御部2の指示により駆動される例えばモータにより構成する。
【0024】
搬送部10は、制御部2の指示により、給送部3から受け渡し搬送された記録媒体50を吸引ファンの駆動により搬送部材11上に吸着保持しつつ、搬送駆動部12が搬送部材11を回動させることにより搬送経路の下流側へ搬送する。この時、搬送情報生成部13におけるロータリエンコーダは、搬送部材11(記録媒体50)の移動量に対応するパルス信号を生成して制御部2へ通知する。
【0025】
側端検出部4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等の反射型光学式ラインセンサにより構成される。
【0026】
本実施の形態では、一例として、側端検出部4は図2Bに示すように、搬送方向左側の媒体端部を検出するための左端検出部4L(側端検出部)と、搬送方向右側の媒体端部を検出するための右端検出部4R(側端検出部)の2つのラインセンサを、主走査方向に配置した構成としている。
【0027】
また、図2Bの図中に示しているp1からp2000は後述の受光素子4bを表しており、左端検出部4Lおよび右端検出部4Rがそれぞれ2000画素を有していることを示している。
【0028】
側端検出処理部31は、側端検出部4を駆動し、記録媒体50の主走査方向の側端51(左側端51L、右側端51R)の検出を行う。そして、側端位置決定部32(側端位置決定部)は、側端検出結果を元に側端位置を決定する。なお、この側端検出および側端位置決定については、詳しくは後述する。
【0029】
画像記録部20は、搬送方向(Y方向)に対して直交するX方向に複数のノズルを配列して形成されたノズル列から構成される記録手段としての記録ユニット20−1乃至20−n(n≧2、nは整数)を少なくとも1つ備える。ノズル列は、例えば複数のインク室内に貯えられたインクを、インク室毎に設けられた圧電部材(PZT)の変形による容積変化でインクを吐出させる方式のものを用いて構成する。
【0030】
制御部2は、制御プログラムや設定情報等を記憶するための不揮発メモリと、側端検出結果等を記憶するための揮発メモリとから構成される記憶部30と、側端検出部4を駆動するための側端検出処理部31と、側端検出結果から側端位置を決定するための側端位置決定部32と、を少なくとも備える。
【0031】
制御部2における記録処理方法について説明する。
記憶部30における不揮発性メモリには、側端検出部4より搬送経路の上流側に配設される記録媒体先端検出部(不図示)の検出位置から記録ユニット20−1乃至20−nの複数のノズル形成位置までの離間距離に対応する情報を、前述した搬送部10の搬送情報生成部13におけるロータリエンコーダのパルス信号数の累積値に換算して予め記憶させている。
【0032】
この離間距離に対応する情報は、記録ユニット20−1を例に説明すると、記録媒体50の先端部が記録媒体先端検出部(不図示)の検出位置から記録ユニット20−1の複数のノズル形成位置まで搬送された際に搬送情報生成部13におけるロータリエンコーダが生成するパルス信号数の累積値となる。また、同様に側端検出部4の検出位置から記録ユニット20−1乃至20−nの複数のノズル形成位置までの離間距離に対応する情報も予め記憶させている。
【0033】
制御部2は、例えば搬送される記録媒体50の先端部を媒体先端検出部(不図示)が検出した当該検出情報をトリガとして搬送情報生成部13におけるロータリエンコーダが生成するパルス信号数の累積値が、当該制御部2の不揮発性メモリに記憶される記録ユニット20−1の複数のノズル形成位置に対応するパルス信号数の累積値と一致した際に、記録ユニット20−1を制御して記録処理を行わせる。
【0034】
その際、側端検出部4と記録ユニット20−1の複数のノズル形成位置に対応するパルス信号数の累積値から記録ユニット20−1の直下を記録媒体50が通過する際の記録媒体50の側端51(右側端51R、左側端51L)の位置から主走査方向の画像形成を行わないマスク範囲を決定する。
【0035】
上位装置40は、本実施の形態の画像記録装置1の外部機器として、例えばLAN等を介して接続される。この上位装置40は、本実施の形態の画像記録装置1に記録処理を行わせるユーザのコンピュータに相当し、本実施の形態の画像記録装置1に対して記録処理に関する情報としてジョブ情報を通知する。
【0036】
次に、本実施の形態に係る側端検出処理部31について説明する。
まず、側端検出部4は、後述の図5A等に例示されるように、主に発光部4aと個々の画素毎の受光素子4bから構成され、発光部4aから発せられた照明光4cによる反射光4dをライン上に配置された受光素子4bで光電変換し、各受光素子4b(画素)に蓄えられた電荷を順次出力する。
【0037】
図3は、側端検出部4の主な入出力信号の一例を示す波形図である。側端検出処理部31がクロック信号Scとスタート信号Ssを側端検出部4に対して出力することで、側端検出部4は各画素に蓄積された電荷を1画素目から順に出力する。最終画素を出力してから次のスタート信号Ssまでの間が露光時間(光電変換により電荷が蓄積される時間)となる。
【0038】
側端検出部4のアナログ出力Saを側端検出処理部31によりAD変換し、AD値を閾値αと比較することで、記録媒体50の側端51(右側端51Rおよび左側端51L)を検出する。側端検出結果としては、搬送中心11aから最も外側で閾値αを超えた画素とする。例えば左端検出部4Lにおいては、最初に閾値αを超えた画素であり、右端検出部4Rにおいては、最後に閾値αを下回った画素となる。
【0039】
これは、記録媒体50に縁飾りや背景などのイメージが画像形成されている場合や、裏写りしている場合においても正確に記録媒体50の側端51を検出するためである。
【0040】
側端51の検出の判定基準として、例えばN画素中M画素以上が閾値αを越える(もしくは下回る)とすることで、ノイズ等による誤検出を防ぐようにしてもよい。閾値αは、例えば記録媒体50からの受光レベルと搬送部材11からの受光レベルの間の値とする。また、閾値αは、記録媒体50の種類毎に異なる値として予め記憶しておいてもよいし、受光レベルに応じて変更してもよい。
【0041】
以上のような側端51の検出を図3で示す出力周期T毎に行い、側端検出結果をラッチする。出力周期Tは、側端検出部4の特性によって決まる。側端検出処理部31は、搬送情報生成部13により規定の搬送量毎に、ラッチされている側端検出結果を記憶部30の制御テーブル60(記憶部)に記憶していく。これにより、記録媒体50の位置と側端検出結果を対応できるようになる。
【0042】
図4Aおよび図4Bは、側端検出部4による受光レベルとその時の記録媒体50の配置を示した概念図である。
この場合、搬送部材11における搬送ベルト孔16の配列仕様は以下の通りである。すなわち、一例として、直径=φdの複数の搬送ベルト孔16が、搬送部材11の副走査方向(Y方向)にピッチ=rで、主走査方向(X方向)に位置をずらして千鳥状に配置形成されている。
【0043】
図4Aは正常に記録媒体50の側端51の検出を行える場合であり、図4Bは、誤検出が生じる場合を示している。これは、搬送ベルト孔16からの反射光の受光レベルが閾値αを越えてしまい、誤検出している。
【0044】
すなわち、この誤検出は、上述の図3の露光時間中に主走査方向の搬送ベルト孔16の配列領域が側端検出部4の直下を通過したことが原因と考えられる。
【0045】
先に述べた通り、裏写り等を考慮して最も外側のエッジを側端51と検出するので、例えばこの誤検出結果が、給紙トレイにある記録媒体幅検出部(不図示)の情報や、ユーザが設定した記録媒体サイズの情報によって、本来搬送されるべき位置との乖離によって、不適切な検出結果である、と判断できれば、この誤検出を回避することも可能ではある。
しかし、誤検出の結果が実際の側端51の位置に近づけば、誤検出と判断することが困難になる。
【0046】
図5A、図5B、図5Cは、側端検出部4の検出の様子を模式的に表した図である。
図5Aは、搬送部材11の平坦な部分からの反射光4dを受光している様子を表しており、図5Bは、搬送部材11の搬送ベルト孔16を通ってプラテン15からの反射光4dを受光している様子を表しており、図5Cは、記録媒体50からの反射光4dを受光している様子を示している。図5Bのような状態が記録媒体の外側で起きると、受光レベルが閾値αを超えて誤検出する可能性がある。
【0047】
また、搬送ベルト孔16の代わりに、搬送部材11に付着した異物や汚れ、傷等が存在しても同様に誤検出の一因となる。
【0048】
そこで、本実施の形態の場合には、制御部2の側端検出処理部31および側端位置決定部32は、後述のように、図4Bに示された実際の記録媒体50の側端51よりも外側のノイズのデータを除外して、記録媒体50の正しい位置が検出されるように動作する。
次に、図6を用いて、本実施の形態に係る側端位置決定部32について説明する。
【0049】
図6は、記憶部30に側端位置検出結果を記憶するための制御テーブルの構成例を示す概念図である。
制御テーブル60は、アドレス60Aに対して、左端検出結果60L(検出結果)と右端検出結果60R(検出結果)を対応付けて格納する構成となっている。
【0050】
アドレス60Aは、記録媒体50の搬送方向(副走査方向)の位置に対応し、記録媒体50の規定搬送量X0mm毎に増加する。すなわち、記録媒体50の搬送方向の所定の間隔毎に当該記録媒体50の左端検出結果60Lと右端検出結果60Rのペアが格納される。
【0051】
アドレス60A=0〜2番地と98〜100番地は、両端とも0になっているのは、側端51を検出できなかったことを示しており、記録媒体50が側端検出部4の下に到達していないことを意味している。なお、先にも述べたが、記憶部30への側端検出結果の記憶は、規定搬送量X0mm毎に行われ、対応するアドレス60Aに左端検出結果60Lおよび右端検出結果60Rのペアが格納される。
【0052】
例えば、図6での適正な側端検出結果は、左端では400画素目であり、右端では1600画素目であるとすると、アドレス60A=5、8、91、94、97番地に記憶されている左端検出結果60Lと、アドレス60A=4、7、10、92、97番地に記憶されている右端検出結果60Rは誤検出(上述の図4Bの実際の側端51よりも外側のノイズ)である。
【0053】
側端位置決定部32は、ある時点での側端51の位置を決定するときは、その時点から過去(すなわち、アドレス60Aの小さい方)のNサンプル分の検出結果を制御テーブル60から読み出し、搬送中心11aに対してより外側の検出結果Mサンプルを除外した平均値により、側端51の位置を決定する(N、Mは、N>Mとなる整数)。
例えば、N=8、M=3とした場合のアドレス60A=10番地目の左端検出結果60Lの側端位置決定処理方法を説明する。
【0054】
まず、アドレス60A=10〜3番地の左端検出結果60Lの中から、より外側の検出結果である390、392、400画素目という3つのサンプルを除外し、残り5サンプルの平均をとり、側端51Lの位置とする(この場合では5サンプルとも400画素なので、400画素が左側端51Lの位置と確定される)。
【0055】
同様に、右端検出結果60Rの中から、より外側の結果である1615、1613、1620画素目という3つのサンプルを除外して残り5サンプルの平均をとり、側端51Rの位置とする(この場合では5サンプルとも1600画素なので、1600画素が右側端51Rの位置と確定される)。
【0056】
アドレス60A=11番地の左側端51Lおよび右側端51Rの位置検出では、アドレス60A=11〜4番地のデータを使用し、同様の処理を行う。アドレス60A=9番地以前の側端位置に関しては、アドレス60A=0〜2番地では、側端検出ができていないので、アドレス60A=10番地での側端位置とする。このように、(N−M)サンプルで移動平均をとりながら記録媒体50の左右の側端位置を決定する。
【0057】
この処理におけるサンプル数Nは、例えば、求められる側端検出の追従性等により決定する。サンプリング周期をX0[mm]とすると、N回サンプリングするまでの搬送量はX0×N[mm]となる。記録媒体50が、搬送中心に対して最大θ度傾いて搬送されるとすると、N回サンプリングするまでの間、側端位置は最大でN×X0×tanθ[mm]ずれることとなる。この値が最小の余白幅より小さいことが、記録媒体外にインクを吐出しないために最低限満たすべき条件となる。つまり余白幅をd0とすると、次式を満たす必要がある。
N < d0/(X0×tanθ)
(例えば、X0=2[mm]、θ=1度、d0=0.5[mm]とするとN<14)

さらに、側端検出部4から側端部位置を検出していなければいけない位置までの距離をd1[mm]とすると、次式も満たす必要がある。
N < d1/X0
(例えば、X0=2[mm]、d1=30[mm]とするとN<15)

また、除外サンプル数Mは、例えば、N回サンプリングするまでの搬送量X0×N[mm]で、起こりうる搬送ベルト孔16による誤検出の回数によって決定する。搬送方向にr[mm]ピッチでベルト孔16があるとすると、N×X0/rの小数点を切り上げた整数KがN回サンプリングする間に搬送方向に通過するベルト孔16の数である。ここで、側端検出部4の出力周期Tを搬送量に換算した値をX1[mm]とすると、
X0<X1の場合は、M>Kを満たす必要がある。
X0>X1の場合は、同じベルト孔を2回誤検出してしまう可能性があるため、除外サンプル数Mは、例えば、M>2Kを満たす必要がある。(実際は必ずしも2Kである必要はないが。)
ただし、除外後のサンプル数(N−M)が小さくなり過ぎては、平均化する効果がなくなってしまうため、サンプル数Nによっては、除外サンプル数Mが上記関係を満たさないほうが良い場合がある。実際は、除外後のサンプル数(N−M)に、誤検出結果が混ざっていたとしても、平均化することにより、誤検出の影響は緩和される。以上のことから、必ずしもM>Kや、M>2Kを満たす必要があるわけではなく、各パラメータや誤検出の確率等から適切なMを決定することが好ましい。
次に、本実施の形態の画像記録装置1における側端位置決定処理について説明する。
【0058】
図7は、本実施の形態に係わる側端位置決定処理に関する制御方法を示すフローチャートである。
この図7のフローチャートに例示される動作処理は、制御部2が側端検出処理部31および側端位置決定部32等の制御プログラムを実行することにより実現される。
【0059】
制御部2は、図7において処理が開始されると、まずステップS1において、側端検出部4(左端検出部4L、右端検出部4R)の発光部4aを点灯して記録媒体50を搬送する搬送部材11に照明光4cを照射し、ステップS2に処理を移す。
【0060】
制御部2は、ステップS2において、側端検出部4の各画素毎の出力値をAD変換し、ステップS3(第1ステップ)に処理を移す。
【0061】
制御部2は、ステップS3において、左端検出部4Lおよび右端検出部4Rの各々で、搬送中心11aから最も外側で、AD値が閾値を超えた位置を側端位置検出結果(左端検出結果60L、右端検出結果60R)としてラッチし、ステップS4(第2ステップ)に処理を移す。
【0062】
制御部2は、ステップS4において、側端位置検出結果を規定の搬送量(ピッチ)毎に取得し、記憶部30の制御テーブル60の対応するアドレス60Aのエントリに格納し、ステップS5(第3ステップ)に処理を移す。
【0063】
制御部2は、ステップS5において、記憶部から過去Nサンプル分の側端検出結果(左端検出結果60L、右端検出結果60R)から搬送中心11aからより外側のMサンプルを除外して(N−M)サンプルで平均をとり、左側端51Lおよび右側端51Rの各々の位置と決定し、本動作処理を終了する。
【0064】
その後、制御部2は、ステップS5で確定した記録媒体50の左側端51Lおよび右側端51Rの位置情報に基づいて、画像記録部20における記録媒体50に対する幅(X)方向の記録範囲を制御する。
【0065】
このように、本実施の形態の画像記録装置1では、記録媒体50の搬送中心11aに対して左右方向の各々で、N個の左端検出結果60L、右端検出結果60Rのサンプルから、相対的に外側の所定数のM個(<N)のサンプルを除外して平均することで、上述の図4Bに例示された搬送部材11の搬送ベルト孔16や表面の汚損、傷等、さらには、記録媒体50の縁取り模様や裏写り等に起因するノイズに影響されることなく、すなわち、搬送部材11や記録媒体50の状態に影響されることなく、正確に記録媒体50の左側端51Lおよび右側端51Rの双方の位置を検出することができる。
【0066】
すなわち、本実施の形態の画像記録装置1の場合、搬送部材11にノイズ源が存在しても、記録媒体50の左右の側端位置が実際の位置よりも外側に検出されることはない。
【0067】
この結果、画像記録部20において、記録媒体50の幅方向の外側の搬送部材11の領域にインクを吐出する等の誤動作が防止され、搬送部材11の汚損を確実に防止でき、画像記録装置1の保守管理の頻度や保守管理コストの削減、稼働率の向上を実現できる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本発明は、前述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明をなすことができる。例えば本発明は、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、さらには各実施の形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0069】
例えば、画像記録部20としては、インクを用いる構成に限らず、他の構成でもよい。
【0070】
(付記)
記録媒体を搬送させる搬送機構と、前記記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に複数のノズルによって形成されたノズル列を配設して成る少なくとも1つの記録ユニットとを有し、前記複数のノズルからインクを吐出させて前記記録媒体上に記録処理を行う画像記録装置において、
前記記録媒体の側端位置を検出する側端検出部と、前記側端検出部の検出結果を記憶する記憶部と、前記記憶部から連続した前記側端検出結果をNサンプル読み出し、Nサンプルの前記側端検出結果から搬送中心に対してより外側のMサンプルを除外したN−Mサンプルの平均値を側端位置とする側端位置決定部と、
を少なくとも備える、ことを特徴とする画像記録装置。
【符号の説明】
【0071】
1 画像記録装置
2 制御部
3 給送部
3a 給送トレイ
3b 給送機構
3c レジストレーションローラ対
4 側端検出部
4L 左端検出部
4R 右端検出部
4a 発光部
4b 受光素子
4c 照明光
4d 反射光
10 搬送部
11 搬送部材
11a 搬送中心
12 搬送駆動部
13 搬送情報生成部
14a 駆動ローラ
14b 従動ローラ
15 プラテン
16 搬送ベルト孔
20 画像記録部
20−1〜20−n 記録ユニット
30 記憶部
31 側端検出処理部
32 側端位置決定部
40 上位装置
50 記録媒体
51 側端
51L 左側端
51R 右側端
60 制御テーブル
60A アドレス
60L 左端検出結果
60R 右端検出結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を第1方向に移動させる搬送機構と、
前記記録媒体が移動する前記第1方向に対して交差する第2方向に配列された記録手段を有する記録部と、
前記第1方向に移動する前記記録媒体の前記第2方向における側端位置を所望の周期で検出する側端検出部と、
前記側端検出部で得られた複数の前記側端位置の検出結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部から連続した複数の前記検出結果を読み出し、読み出した複数の前記検出結果から前記記録媒体の中心部に対して相対的に外側の前記側端位置を示す少なくとも一つの前記検出結果を除外した残りの前記検出結果の平均値を前記記録媒体の側端位置とする側端位置決定部と、
を具備したことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像記録装置において、
前記側端位置決定部は、前記記録媒体の前記第1方向への移動に伴って前記記憶部からの読み出し位置をずらして得られたN個の前記検出結果から、相対的に外側のM(<N)個の前記検出結果を除外して移動平均を算出することで前記記録媒体の前記第1方向における異なる位置での前記側端位置を逐次決定することを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像記録装置において、
前記側端検出部は、前記搬送機構を照明する発光部と、前記搬送機構の側からの反射光を検出する受光部を備え、前記搬送機構と前記記録媒体の反射光量の差に基づいて前記側端位置を検出し、
前記搬送機構は、前記記録媒体を吸着保持するための吸引孔を具備した無端ベルトを含むことを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
記録媒体を第1方向に移動させる搬送機構と、前記記録媒体が移動する前記第1方向に交差する第2方向に配置された記録手段とを有する画像記録装置の制御方法において、
前記第1方向に移動する前記記録媒体の前記第2方向における側端位置を所望の周期で検出する第1ステップと、
前記第1ステップで得られた複数の前記側端位置の検出結果を記憶する第2ステップと、
前記第2ステップで記憶された複数の前記検出結果から連続した複数の前記検出結果を読み出し、読み出した複数の前記検出結果から前記記録媒体の中心部に対して相対的に外側の前記側端位置を示す少なくとも一つの前記検出結果を除外した残りの前記検出結果の平均値を前記記録媒体の側端位置とする第3ステップと、
を含むことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の画像記録装置の制御方法において、
前記第3ステップでは、前記記録媒体の前記第1方向への移動に伴って前記第2ステップで記憶された複数の前記検出結果からの読み出し位置をずらして得られた複数のN個の前記検出結果から、相対的に外側のM(<N)個の前記検出結果を除外して移動平均を算出することで前記記録媒体の前記第1方向における異なる位置での前記側端位置を逐次決定することを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1記載の画像記録装置の制御方法において、
前記側端検出部は、光学的に前記側端位置を検出し、
前記搬送機構は、前記記録媒体を吸着保持するための吸引孔を具備した無端ベルトを含むことを特徴とする画像記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2A】
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【図3】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図2B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−86921(P2012−86921A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233404(P2010−233404)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】