説明

画像診断支援装置、方法及びプログラム

【課題】肝臓の機能レベルを考慮して、切除する部分をより適切に決定する。
【解決手段】内部に血管を含む肝臓の形態を表した形態画像と、肝臓の各位置における機能レベルを表した機能画像とを取得し、形態画像から肝臓を支配する血管を表す血管領域を抽出し、抽出された血管領域中の特定の部分領域および該部分領域の血管により支配される肝臓の支配領域を決定する。その際、その部分領域を決定する処理および支配領域を決定する処理の少なくとも一つの処理を機能画像を用いて行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓・肺などの臓器の診断や手術において切除領域を決定する際に医師を支援するための画像診断支援装置、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓・肺などの臓器において患部を切除する手術を行う場合には、手術前に画像診断によってその切除する部分を適切に決めておくことが必要である。
【0003】
特許文献1には、肝臓のX線CT画像から血管や肝臓実質、腫瘍部分を抽出し、抽出された血管の芯線の位置や血管径等に基づいて、抽出された腫瘍がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって腫瘍に栄養を供給する血管を特定し、その血管の支配領域を切除すべき部分として表示する画像診断支援装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−54147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記切除する部分には、その臓器における機能の低下が著しい部分を含め、正常な部位は可能な限り残すことが望まれるところ、上記特許文献1記載の技術は、たとえば図7に示すように、肝臓51の血管52と腫瘍53の位置関係に基づいて腫瘍に栄養を供給する部分血管52p(位置Pから終端までの血管枝)を決定し、その部分血管52pの支配領域55bを切除すべき部分として決定するものではあるが、臓器の機能評価に着目したものではないため、その決定された切除領域55bに、機能低下が著しく切除の対象に含めるべき領域、たとえば図7中の領域56bを適切に含められない場合がある。なお、図7中の領域56は、肝臓の機能低下が著しい領域を表す。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、臓器の機能レベルを考慮して切除する部分をより適切に決定することを可能にする画像診断支援装置、方法及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像診断支援装置は、内部に管状の構造物を含む特定の臓器の形態を表した形態画像と、臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像とを記憶する画像記憶手段と、形態画像から臓器を支配する構造物を表す構造物領域を抽出する構造物領域抽出手段と、抽出された構造物領域中の特定の部分領域を決定する部分領域決定手段と、該決定された部分領域の構造物により支配される臓器の支配領域を決定する支配領域決定手段とを備え、部分領域決定手段による部分領域を決定する処理および支配領域決定手段による支配領域を決定する処理の少なくとも一つを機能画像を用いて行なうことを特徴とするものである。
【0008】
上記装置において、支配領域決定手段は、形態画像における臓器の各部分と決定された部分領域との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて支配領域を決定するものであってもよい。
【0009】
また、上記装置は、形態画像における臓器中の病変領域を取得する病変領域取得手段を備え、部分領域決定手段が、支配領域が病変領域取得手段により取得された病変領域を含むように部分領域を決定するものであってもよい。この病変領域取得手段は、形態画像中の、機能画像における機能レベルが所定の基準値より低い領域に対応する位置の領域を病変領域として取得するものであってもよい。
【0010】
また、構造物領域上の任意の位置を指定する指定手段を備え、部分領域決定手段が、指定された位置に基づいて部分領域を決定するものであってもよい。
【0011】
また、形態画像における臓器中の病変領域を取得する病変領域取得手段を備え、支配領域決定手段が、支配領域が病変領域取得手段により取得された病変領域を含み、かつ、該支配領域以外の領域内の各位置における機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように部分領域を決定するものであってもよい。
【0012】
また、臓器の各位置における機能レベルを、所定の機能レベルの値をゼロとする正または負の値に正規化する正規化手段を備え、上記評価値が、支配領域以外の領域内の各位置における正規化された機能レベルの総和であってもよい。
【0013】
また、支配領域決定手段により決定された支配領域を他の領域と区別可能な態様で表示する表示制御手段を備えたものであってもよい。
【0014】
また、本発明の画像診断支援方法は、上記画像診断支援装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータにより実行する方法である。
【0015】
また、本発明の画像診断支援プログラムは、上記画像診断支援装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムは、CD−ROM,DVDなどの記録メディアに記録され、またはサーバコンピュータに付属するストレージやネットワークストレージにダウンロード可能な状態で記録されて、ユーザに提供される。
【0016】
ここで、「臓器の各位置における機能レベル」とは、臓器の各位置における組織が正常に機能している度合いを意味する。
【0017】
「機能レベルを表した機能画像」は、機能レベルを直接的あるいは間接的に導きだすことができる画像を広く意味するものであって、機能レベルが画素値の高低として直接的に表された画像の他に、所定の解析処理を行うことによって機能レベルを間接的に評価することができる画像などを含むものである。
【0018】
「臓器を支配する」とは、その臓器に対し酸素や栄養分を供給することにより臓器の機能を正常に保つことを意味する。
【0019】
「管状の構造物」は、たとえば臓器が肝臓である場合における肝臓内部の血管、臓器が肺である場合における肺内部の気管支のようなものを意味する。
【0020】
「構造物を表す構造物領域」は、構造物を表す各画素の座標情報により特定されるものであってもよいが、構造物を表すいくつかの代表点の座標情報およびその代表点同士を連結するベクトル情報により特定されるものであってもよい。
【0021】
「任意の位置の指定」は、マウスやキーボードあるいはその他の入力装置によって任意の位置を指定することをいう。
【0022】
「評価値」は、その支配領域によって切除を行なった場合を仮定して臓器全体としての機能を評価した値であって、その値が大きいほど切除後の臓器が正常に機能すると判断し得るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の画像診断支援装置、方法およびプログラムによれば、内部に感情の構造物を含む特定の臓器の形態を表した形態画像と、臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像と取得し、形態画像から臓器を支配する構造物を表す構造物領域を抽出し、抽出された構造物領域中の特定の部分領域および該部分領域の構造物により支配される臓器の支配領域を決定する処理を、その部分領域を決定する処理および支配領域を決定する処理の少なくとも一つを機能画像を用いて行なうようにしたので、臓器の機能レベルを考慮して支配領域、すなわち切除する部分をより適切に決定することができる。
【0024】
上記方法及び装置並びにプログラムにおいて、形態画像における臓器の各部分と決定された部分領域との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて支配領域を決定するようにした場合には、支配領域(切除する部分)に臓器の機能低下が著しい部分をより適切に含めることができる。
【0025】
また、形態画像における臓器中の病変領域を取得し、支配領域が病変領域取得処理により取得された病変領域を含み、かつ、該支配領域以外の領域内の各位置における機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように部分領域を決定するようにした場合には、その支配領域による切除後の臓器がより正常に機能する状態となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像診断支援装置の概略構成を示す図
【図2】図1の画像診断支援装置が実行する処理の概要を示す図
【図3】支配領域の決定方法を説明するための図
【図4】決定された支配領域の一例を示す図
【図5】第2の実施形態における画像診断支援装置が実行する処理の概要を示す図
【図6】血管の部分領域の決定方法を説明するための図
【図7】従来の画像表示方法により表示された画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の画像診断支援装置、方法およびプログラムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
以下に示す各実施形態において、画像診断支援装置1は、一台のコンピュータに、各実施形態の画像診断支援プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションやパソコンでもよいし、もしくは、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。画像診断支援プログラムは、DVD,CD−ROM等の記録メディアに格納されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。もしくは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0029】
[実施形態1]
図1は、ワークステーションに画像診断支援プログラムをインストールすることにより実現された画像診断支援装置の概略構成を示す図である。同図が示すように、画像診断支援装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU2、メモリ3およびストレージ(画像記憶手段)4を備えている。また、画像診断支援装置1には、ディスプレイ5と、マウス6等の入力装置が接続されている。
【0030】
ストレージ4には、三次元形態画像7として、CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置が出力したスライスデータから再構成されたボリュームデータ、MS(Multi Slice)CT装置やコーンビームCT装置が出力したボリュームデータ等が記憶されている。
【0031】
また、ストレージ4には、三次元機能画像8として、単一光子放射断層撮影(SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)装置が出力したSPECT画像、EOB造影剤を用いたダイナミックMRI画像を用いて、腹部大動脈と肝臓実質における造影剤濃度の時系列的変化(Time Intensity Curve: TIC)を求め、これらの時系列的変化をデコンボリューション法で解析することにより生成された機能画像等が記憶されている。
【0032】
また、メモリ3には、画像診断支援プログラムが記憶されている。画像診断支援プログラムは、CPU2に実行させる処理として、肝臓領域抽出処理11、血管領域抽出処理12、木構造検出処理13、部分領域決定処理14、位置合わせ処理15、支配領域決定処理16および表示制御処理17を規定している。そして、CPU2がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、汎用のワークステーションは、肝臓領域抽出手段、血管領域抽出手段、木構造検出手段、部分領域決定手段、位置合わせ手段、支配領域決定手段および表示制御手段として機能することになる。
【0033】
図2は、画像診断支援プログラムにより実行される処理の流れを示すブロック図である。画像診断支援装置1は、まず、被検体のIDの一覧を表示し、ユーザによる選択操作を検出すると、選択された被検体に関連する画像ファイルをメモリ3にロードする。その被検体に対し複数種類の検査(例えばCT検査とSPECT検査)が行われ、その結果ストレージ4に記憶されている三次元形態画像7と三次元機能画像8をメモリ3にロードする。
【0034】
画像診断支援装置1は、三次元形態画像7をメモリ3にロードすると、まず、その三次元形態画像7を対象に、肝臓領域51を抽出する肝臓領域抽出処理11を実行する。具体的には、画像診断支援装置1は、三次元形態画像7を構成する各ボクセルデータの値について、肝臓の輪郭らしさを表す特徴量を算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルデータが肝臓の輪郭を表すものであるか否かを判断する。この判断を繰り返すことにより、肝臓全体の輪郭を表すボクセルデータが抽出される。本実施形態では、評価関数の取得にアダブーストアルゴリズムを用いている。なお、肝臓領域51の抽出は、他のマシンラーニング法や統計解析法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いて行ってもよい。
【0035】
次に、画像診断支援装置1は、三次元形態画像7の、肝臓領域抽出処理11により抽出された肝臓領域51を対象として、血管領域抽出処理12および木構造検出処理13を実行する。まず、肝臓領域51内の局所領域ごとに、3×3のヘシアン(Hessian)行列の固有値を算出することにより線状構造の探索を行う。線状構造が含まれる領域では、ヘシアン行列の3つの固有値のうち1つは0に近い値となり、他の2つは相対的に大きな値となる。また、値が0に近い固有値に対応する固有ベクトルは、線状構造の主軸方向を示すものとなる。血管領域抽出処理12では、この関係を利用して、局所領域ごとに、ヘシアン行列の固有値に基づいて線状構造らしさを判定し、線状構造が識別された局所領域については、その中心点を候補点として検出する。
【0036】
次に、探索により検出された候補点を、所定のアルゴリズムに基づいて連結する。これにより、候補点および候補点同士を連結する血管枝(エッジ)からなる木構造52が構築される。検出された複数の候補点の座標情報や、血管枝の方向を示すベクトル情報は、候補点や血管枝の識別子とともにメモリに記憶される。続いて、検出された候補点ごとに、周辺のボクセルの値(CT値)に基づき、血管経路に垂直な断面において、血管の輪郭(血管の外壁)を識別する。形状の識別は、Graph-Cutsに代表される公知のセグメンテーション手法を用いて行う。以上の処理により、抽出された血管領域の特定に必要な情報が生成され、メモリに記憶される。
【0037】
なお、本実施形態では、画像診断支援装置1は、上記手順を実行した後に、木構造検出処理13により検出された木構造52をディスプレイ5の画面に出力する。この画面において、ユーザがマウス6等の入力装置を用いて木構造52上の任意の位置Pを指定すると、画像診断支援装置1は、指定された位置Pに基づいて血管の部分領域52pを決定する部分領域決定処理14を実行する。本実施の形態では、木構造51全体のうちユーザにより指定された位置Pから終端までの血管枝が部分領域52pとして決定される。この部分領域52pの決定結果は、ボリュームデータとしてメモリ3に保存する。
【0038】
次に、画像診断支援装置1は、三次元形態画像7と三次元機能画像8との間で位置合わせ処理15を実行する。公知の剛体または非剛体レジストレーションを用いて、三次元形態画像7と三次元機能画像8との間で、肝臓領域の位置合わせを行い、それらの画像間での各画素の移動方向・移動量を求め、三次元機能画像8で抽出された肝臓領域の座標値をその移動方向・移動量を用いて変換する。これにより、それらの画像が、同一座標値において、それぞれ肝臓領域の同一位置における情報を表すものとすることができる。なお、この位置合わせ処理15は、肝臓領域抽出処理11や血管領域抽出処理12や木構造抽出処理13、部分領域決定処理14と並列に実行してもよい。
【0039】
続いて、画像診断支援装置1は、部分領域決定処理14において決定された部分領域を基準として、その部分領域の血管により支配される領域(支配領域)を決定する支配領域決定処理16を実行する。本実施形態では、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質)中の各点が、その点からの最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離が最も小さくなる血管に支配されていると判定することによって、部分領域決定処理14により決定された部分領域の支配領域を求める。
【0040】
以下、図3を参照して、支配領域決定処理16により、隣接する2本の血管A、Bの支配領域の境界を決定する方法について説明する。ここでは、理解を容易にするため、2本の血管A、Bが平行する同一径の血管である場合を例示している。この場合、血管AとBの主軸方向に垂直方向の各経路an〜bn(n=1、2、3、・・・)において、血管A、Bの支配領域の境界となる点cnを、次の式(1)により求める。ここで、αは最短経路上の各位置における機能レベルである。この処理により求められた複数の境界点は血管A、Bの支配領域の境界線Cを表すものとなる。
【数1】

【0041】
図3では、領域61の各位置における機能レベルαを1、領域62での機能レベルαが1/3、領域63での機能レベルαを2とし、その経路上の各位置における機能レベルの分布が異なる3つの経路an〜bn(n=1、2、3)において決定した境界点cnの具体例を示す。図3に示すように、支配領域の幅(血管の中心線からその支配領域の境界までの距離)は、その近傍における機能レベルの分布に依存する。すなわち、その近傍において機能レベルαが低い部分が有するところでは大きくなり、その近傍において機能レベルαが高い部分が有するところでは小さくなる。
【0042】
図4は、以上に説明した支配領域決定処理16の処理結果を例示したものである。上記処理により支配領域の境界線が定まることにより、同図に示すとおり、部分領域決定処理14により決定された部分領域52pの支配領域55aが決定される。ここで得られた処理結果はメモリ3に保存される。
【0043】
続いて、画像診断支援装置1は、表示制御処理17を行う。ディスプレイ5の画面に、支配領域決定処理16により決定された支配領域55aを他の領域と区別可能な態様で表示する。たとえば支配領域55aと他の領域に異なる色を割り当てることによって、支配領域55aの範囲を視覚的に識別可能な態様で提示する。
【0044】
以上に説明したとおり、本実施形態の画像診断支援装置およびプログラムによれば、内部に血管を含む特定の肝臓の形態を表した三次元形態画像7と、肝臓の各位置における機能レベルを表した三次元機能画像8と取得し、三次元形態画像7から肝臓を支配する血管を表す血管領域52を抽出し、抽出された血管領域52中の特定の部分領域52pを決定し、該部分領域52pの血管により支配される肝臓の支配領域55aを三次元機能画像8を用いて決定しているので、肝臓の機能レベルαを考慮して支配領域55a、すなわち切除する部分をより適切に決定することができる。
【0045】
また、本実施形態の画像診断支援装置およびプログラムは、血管領域52上の任意の位置Pの指定を受け付け、該指定された位置Pに基づいて血管領域中の部分領域52pを決定し、三次元形態画像7における肝臓51の各部分と決定された部分領域52pとの、最短経路上の各位置における機能レベルαを重み付けした距離を用いて支配領域を決定しているので、その支配領域(切除する部分)55aに肝臓の機能低下が著しい部分を、上記特許文献1記載の技術によって決定される支配領域の場合よりも広く含めることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、ユーザにより指定された木構造52上の位置Pに基づいて血管の部分領域52pを決定する場合について説明したが、これに限らず、たとえば三次元形態画像7における肝臓中の病変領域を取得し、肝臓領域内の各点がその点から最も近い血管に支配されていると判定することによって決定される部分領域の支配領域が、病変領域を含むものとなるように、血管の部分領域52pを決定するようにしてもよい。
【0047】
なお、この病変領域を取得する処理は、医者などがその三次元形態画像7または三次元機能画像8を読影して発見した結節・癌などの病変の位置を画像診断支援装置1に備えるマウス6等の入力装置を用いて入力したのを受けて取得するものであってもよいし、コンピュータ支援診断CAD(computer-aided diagnosis)システムによって病変を自動検出することにより病変領域を取得するものであってもよい。たとえば、三次元形態画像7中の、三次元機能画像8における機能レベルが所定の基準値より低い領域に対応する位置の領域を病変領域として取得するようにしてもよい。
【0048】
[実施形態2]
図5は、第2の実施形態における画像診断支援プログラムにより実行される処理の流れを示すブロック図である。本実施形態の画像診断支援装置は、部分領域を決定する前に、病変領域取得処理および機能レベルの正規化処理を行い、それらの処理の結果に基づいて部分領域を決定する点で、実施形態1の診断装置と異なる。以下、実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1と同じ処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
まず、三次元形態画像7における肝臓中の病変領域53を取得する病変領域取得処理30について説明する。病変領域取得処理30では、病変領域53を、医者などがその三次元形態画像7または三次元機能画像8を読影して発見した結節・癌などの病変の位置を画像診断支援装置1に備えるマウス6等の入力装置を用いて入力したのを受けて取得している。なお、コンピュータ支援診断CAD(computer-aided diagnosis)システムによって病変を自動検出することにより病変領域53を取得してもよい。たとえば、三次元形態画像7中の、三次元機能画像8における機能レベルが所定の基準値より低い領域に対応する位置の領域を病変領域として取得するようにしてもよい。
【0050】
次に、肝臓の各位置における機能レベルを正規化する正規化処理31について説明する。正規化処理31では、三次元機能画像8の画素値(機能レベル)を、肝臓の各位置における機能がその部分を切除の対象とすべきか否かの境界となる機能レベルの値をゼロとし、その境界となる機能レベルより低い値の機能レベルは負の値に、その境界となる機能レベルより高い値の機能レベルは正の値に正規化する。
【0051】
次に、上記病変領域取得処理30および正規化処理31の結果に基づいて部分領域を決定する部分領域決定処理32について説明する。本実施形態では、その支配領域が病変領域取得処理30により取得された病変領域を含み、かつ、その支配領域以外の領域内の各位置における機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように血管の部分領域を決定する。
【0052】
まず、図6に示すように、抽出された病変領域53がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって病変領域53に栄養を供給する血管枝52b(基点Pbから終端までの血管枝)を特定し、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)中の各点がその点から最も近い血管に支配されていると判定することによって、その特定された血管の支配領域55bを求める。また、その支配領域55b以外の領域内の各位置における正規化された機能レベルの総和(評価値)を求める。
【0053】
次に、血管枝52bの基点Pbを血管枝に沿って血管の上下流方向に所定の間隔で移動させながら、それぞれの位置において、その位置から終端までの血管枝により支配される支配領域およびその支配領域以外の領域内の各位置における正規化された機能レベルの総和を求め、その総和を最大とする基点Pcの位置を検出する。基点Pcが検出されると、その基点Pcから終端までの血管枝を最終的な部分領域52cとして決定する。
【0054】
次に、部分領域決定処理32により決定された部分領域52cの支配領域を決定する支配領域決定処理34について説明する。本実施形態では、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)中の各点がその点から最も近い血管に支配されていると判定することによって、部分領域決定処理32により決定された部分領域の支配領域55cを決定する。
【0055】
以上に説明したとおり、本実施形態の画像診断支援装置およびプログラムによれば、特に、三次元機能画像8における肝臓51中の病変領域53を取得し、支配領域が病変領域取得処理により取得された病変領域53を含み、かつ、その支配領域以外の領域内の各位置における機能レベルαを用いて算出される評価値が最大となるように部分領域52cを決定しているので、その支配領域55cによる切除後の肝臓がより正常に機能する状態となるようにすることができる。
【0056】
なお、上記各実施形態において、三次元形態画像7と三次元機能画像8が、撮影体位や生成される画像の座標軸の設定等の撮影条件を合わせて撮影されてなるものである場合など、両者間の位置ズレが存在しない場合には、上記位置合わせ処理は不要となり、三次元機能画像8から得られた肝臓領域の各位置における機能レベルを三次元形態画像7の同一座標の位置に対応するものとしてそのまま用いることができる。
【0057】
また、実際の切除手術においては、切除道具の特性に起因して予め決めておいた切除領域よりも広い範囲で切除されてしまう傾向があることから、決定された支配領域を、他の領域との境界を所定の厚みで後退させたものに修正し、修正後の支配領域を利用に提供することがより好ましい。
【0058】
また、上記各実施の形態では、本発明の画像診断支援装置を肝臓の切除する部分を決定するものに適用した場合について説明したが、これに限らずたとえば肺など他の内部に管状の構造物を含む臓器において切除する部分を決定するものに適用することができる。
【0059】
また、上記切除すべき部分を決定する処理は、切除後の臓器の形態体積の量をさらに考慮して行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 診断支援装置
2 CPU
3 メモリ
4 ストレージ
5 ディスプレイ
6 マウス
7 三次元形態画像、
8 三次元機能画像
51 肝臓領域
52 血管領域
53 病変領域
56 機能低下領域
52p、52c 部分領域
55a、55b、55c 支配領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に管状の構造物を含む特定の臓器の形態を表した形態画像と、前記臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像とを記憶する画像記憶手段と、
前記形態画像から前記臓器を支配する前記構造物を表す構造物領域を抽出する構造物領域抽出手段と、
前記抽出された構造物領域中の特定の部分領域を決定する部分領域決定手段と、
該決定された部分領域の構造物により支配される前記臓器の支配領域を決定する支配領域決定手段とを備え、
前記部分領域決定手段による部分領域を決定する処理および前記支配領域決定手段による支配領域を決定する処理の少なくとも一つを前記機能画像を用いて行なうことを特徴とする画像診断支援装置。
【請求項2】
前記支配領域決定手段が、前記形態画像における前記臓器の各部分と前記決定された部分領域との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて前記支配領域を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記形態画像における前記臓器中の病変領域を取得する病変領域取得手段を備え、
前記部分領域決定手段が、前記支配領域が前記取得された病変領域を含むように前記部分領域を決定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
前記病変領域取得手段が、前記形態画像中の、前記機能画像における前記機能レベルが所定の基準値より低い領域に対応する位置の領域を前記病変領域として取得するものであることを特徴とする請求項3記載の画像診断支援装置。
【請求項5】
前記構造物領域上の任意の位置を指定する指定手段を備え、
前記部分領域決定手段が、前記指定された位置に基づいて前記部分領域を決定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像診断支援装置。
【請求項6】
前記形態画像における前記臓器中の病変領域を取得する病変領域取得手段を備え、
前記部分領域決定手段が、前記支配領域が前記取得された病変領域を含み、かつ、該支配領域以外の領域内の各位置における前記機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように前記部分領域を決定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の画像診断支援装置。
【請求項7】
前記臓器の各位置における機能レベルを、所定の機能レベルの値をゼロとする正または負の値に正規化する正規化手段を備え、
前記評価値が、前記支配領域以外の領域内の各位置における前記正規化された機能レベルの総和である
ことを特徴とする請求項6記載の画像診断支援装置。
【請求項8】
前記決定された支配領域を他の領域と区別可能な態様で表示する表示制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項9】
内部に管状の構造物を含む特定の臓器の形態を表した形態画像と、前記臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像とが記憶された記憶媒体から、前記機能画像および前記形態画像を読み出す画像取得処理と、
前記形態画像から前記臓器を支配する前記構造物を表す構造物領域を抽出する構造物領域抽出処理と、
前記抽出された構造物領域中の特定の部分領域を決定する部分領域決定処理と、
該決定された部分領域の構造物により支配される前記臓器の支配領域を決定する支配領域決定処理とを備え、
前記部分領域決定処理および前記支配領域決定処理の少なくとも一つを前記機能画像を用いて行なうことを特徴とする画像診断支援方法。
【請求項10】
前記部分領域決定処理が、前記構造物領域上の任意の位置の指定を受け付け、該指定された位置に基づいて前記部分領域を決定するものであり、
前記支配領域決定処理が、前記形態画像における前記臓器の各部分と前記決定された部分領域との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて前記支配領域を決定するものである
ことを特徴とする請求項9記載の画像診断支援方法。
【請求項11】
前記形態画像における前記臓器中の病変領域を取得する病変領域取得処理を備え、
前記部分領域決定処理が、前記支配領域が前記取得された病変領域を含み、かつ、該支配領域以外の領域内の各位置における前記機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように前記部分領域を決定するものである
ことを特徴とする請求項9記載の画像診断支援方法。
【請求項12】
コンピュータを、
内部に管状の構造物を含む特定の臓器の形態を表した形態画像と、前記臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像とを記憶する画像記憶手段と、
前記形態画像から前記臓器を支配する前記構造物を表す構造物領域を抽出する構造物領域抽出手段と、
前記抽出された構造物領域中の特定の部分領域を決定する部分領域決定手段と、
該決定された部分領域の構造物により支配される前記臓器の支配領域を決定する支配領域決定手段として機能させるものであり、
前記部分領域決定手段による部分領域を決定する処理および前記支配領域決定手段による支配領域を決定する処理の少なくとも一つを前記機能画像を用いて行なうことを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータを、前記構造物領域上の任意の位置を指定する指定手段としてさらに機能させるためのものであり、
前記部分領域決定手段が、前記指定された位置に基づいて前記部分領域を決定するものであり、
前記支配領域決定手段が、前記形態画像における前記臓器の各部分と前記決定された部分領域との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて前記支配領域を決定するものであることを特徴とする請求項12記載の画像診断支援プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを、前記形態画像における前記臓器中の病変領域を取得する病変領域取得手段としてさらに機能させるためのものであり、
前記部分領域決定手段が、前記支配領域が前記取得された病変領域を含み、かつ、該支配領域以外の領域内の各位置における前記機能レベルを用いて算出される評価値が最大となるように前記部分領域を決定するものであることを特徴とする請求項12記載の画像診断支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−34988(P2012−34988A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180143(P2010−180143)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】