説明

画像評価装置、画像評価方法および画像形成装置

【課題】レーザ光源の光出力の時間変化を測定することにより、感光体に形成された静電潜像を評価し、レーザ光源などの性能ないしは特性を評価する画像評価装置、画像評価方法を得る。
【解決手段】感光体139上に形成される静電潜像を評価する。レーザ光源131と、レーザ光源を所定の変調信号で駆動することによりレーザ光を射出させる駆動装置と、レーザ光源131からのレーザ光を感光体139上で走査して感光体上に静電潜像を形成する走査装置と、感光体139上の静電潜像の測定装置と、を有し、測定装置は、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定することができ、この形状の変化からレーザ光源の光出力の時間変化特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した画像形成装置などに用いられる光源、感光体などの性能や特性を評価することができる画像評価装置、画像評価方法および評価された結果を画像形成に反映させる手段を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機あるいはレーザプリンタなどに応用されている電子写真プロセスにおいて、光書込みの高精細化を図る目的で、複数の発光源を配列させた垂直面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser:以下、単に「面発光レーザ」という)が用いられるようになってきている。面発光レーザを用いることにより、形成される画像の解像度が、従来、600dpi(dot per inch)程度であったものが、1200dpi、2400dpiさらには4800dpiというように飛躍的に高まっている。
【0003】
複数の発光源を配列させてなる面発光レーザの正面すなわち発光面を拡大した模式図を図4に示す。図4において、一つ一つの黒丸がそれぞれ面発光レーザの発光源(光源)を表している。垂直面発光レーザは半導体の製造プロセスを用いて半導体基板上にモノリシックに作製され、従って発光源をアレイ化することが容易であるという利点がある。発光源と発光源の間隔は数十μmといった大きさである。射出されるレーザ光の波長λは、例えば780nmであり、赤外領域の光を射出することが可能である。
【0004】
本発明者は、これまで、感光体上に形成した静電潜像の評価方法、評価装置を発明してきたが、光源として垂直面発光レーザを用いたものにおいて、垂直面発光レーザ固有の課題に対応した画像評価方法、画像評価装置についてはまだ実現していなかった。本発明者による発明のうち本発明に最も近い発明は特許文献1記載の発明である。特許文献1記載の発明は、主として静電潜像のばらつきの評価に関するものであるが、光源の光出力の時間変動に関する評価は考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
垂直面発光レーザは、ある時間継続して発光させると、数ナノ秒〜数十ナノ秒といった短い時間で光出力が変化するという問題がある。光出力とは、発光強度、例えば光パワーメータで測定すると単位はワット(W)、フォトダイオードを用いて応答波形として測定した場合、単位はボルト(V)等で表されるものをいう。光出力、特に発光開始時の光出力が所望の値まで到達しないことがある。その後光出力は上昇して所望の値に到達する。すなわち、光出力の時間変動である。この光出力の時間変動のため、感光体上に形成される静電潜像の形状が変化する。特に、静電潜像形成開始時と完了時とでは、静電潜像の大きさが変るといった問題が生じる。
【0006】
垂直面発光レーザには上記のように光出力の時間変動の問題がある。また、垂直面発光レーザにおける複数の発光源の各々に入力される電気的信号が同じであっても、光出力のばらつきが生じる問題がある。光出力のばらつきは、感光体の表面に形成される静電潜像の大きさのばらつきを引き起こす。このような不具合を解消するために、入力信号を調整することが考えられる。各々の光源によって形成される静電潜像のばらつきを測定し、それをもとに入力信号の調整量を決めると、静電潜像のばらつきを抑えて適切な静電潜像を得ることができる。光源において電流値をモニタすれば、静電潜像の変動を捉えることができる。しかしながら、感光体は入射する光の強度に対して非線形の応答特性を持つため、光源の電流値をモニタしたのでは必ずしも適切な調整ができない。
【0007】
各光源の光出力のばらつきは、例えば、垂直面発光レーザの製造工程における製造誤差等により引き起こされる。製造誤差を小さくすることも対策の一つであるが、入力信号の調整により光出力を同じにすることができれば、光源の製造誤差が比較的大きくても使用に耐えることができるため、光源の製造工程における見かけ上の歩留まりを向上させることができ、製造コストの面から好ましい。
【0008】
また、通常のフォトダイオード(PD)のような一次元の光検出器を用いると、複数の発光源を同時に発光させた場合、個々の発光源の光出力特性を分離して測定し評価することはできない。これに対して本発明に係る画像評価装置および画像評価方法は、後で詳細に説明するように、いわば像として見る二次元の検出器であるため、光出力特性を発光源ごとに分離して測定し評価することができる。また、発光源間の電気的クロストークの影響を検出することも可能となる。
【0009】
VCSELを用いた場合のビーム出力自動制御装置(APC:Auto Power Control)はすでに提案されている(例えば、特許文献2参照)。このビーム出力自動制御装置は、光源の光出力を一定に保持するものであるが、感光体に形成された静電潜像を測定し、この測定結果を用いて画像を評価するものではない。
【0010】
静電潜像で、ドット状、帯状、線状、破線状、格子状等の各種パターンを形成し、これらのパターンに基づいて静電潜像を評価することができる。垂直面発光レーザを用いた場合であっても、複数の光源を用いて上記のような各種パターンを形成することができる。しかし、パターン相互の形成位置のずれ、複数の光源相互間の位置ずれがある場合に、これらの位置調整に関して解決すべき課題が残っている。
【0011】
垂直面発光レーザはその設置角度を調整することにより解像度を変えることができる。換言すれば、垂直面発光レーザはその設置角度を正確に調整しなければ、解像度が所望の値からずれるという問題がある。そこで、感光体に形成された静電潜像から、垂直面発光レーザの設置角度と解像度の相関を把握して、垂直面発光レーザの設置角度を適正に調整するとよい。
【0012】
本発明は、以上のような従来の技術に見られる技術的な課題を解決すること、すなわち、レーザ光源の光出力の時間変化を測定することにより、感光体に形成された静電潜像を評価し、結果としてレーザ光源などの性能ないしは特性を評価することができる画像評価装置、画像評価方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明はまた、レーザ光源は複数の光源を有する面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができるものにおいて、複数の光源間における光出力特性のばらつき、複数の静電潜像の形成位置および複数の静電潜像の形成位置補正量を導出することができ、あるいは、静電潜像の解像度などを求めることができる画像評価装置、画像評価方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、上記のようにして評価された結果を画像形成に反映させることにより、解像度の高い画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る画像評価装置は、感光体上に形成される静電潜像を評価する画像評価装置であって、レーザ光源と、前記レーザ光源を所定の変調信号で駆動することによりレーザ光を射出させる駆動装置と、前記レーザ光源からのレーザ光を前記感光体上で走査して前記感光体上に静電潜像を形成する走査装置と、前記感光体上の静電潜像の測定装置と、を有し、前記測定装置は、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定することができ、この形状の変化から前記レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを最も主要な特徴とする。
【0016】
本発明に係る静電潜像評価方法は、感光体上に形成される静電潜像を評価する画像評価方法であって、レーザ光源を所定の変調信号で駆動することによりレーザ光を射出させる駆動ステップと、前記レーザ光源からのレーザ光を前記感光体上で走査して前記感光体上に静電潜像を形成する走査ステップと、前記感光体上の静電潜像の測定ステップと、を有し、前記測定ステップは、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定し、この形状の変化から前記レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを特徴とする。
【0017】
前記画像評価装置または画像評価方法において、静電潜像は帯状とし、前記測定装置または測定ステップは、静電潜像の形成開始時と形成完了時の前記帯状静電潜像の幅の変化を測定し、レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価するようにするとよい。
【0018】
前記画像評価装置または画像評価方法において、レーザ光源の光出力の時間変化特性を元に、前記静電潜像の形状の変化を解消するように書込み密度以下の時間で前記レーザ光源の光出力を調整する調整装置または調整ステップを有しているとなおよい。
【0019】
前記画像評価装置または画像評価方法において、前記測定装置または測定ステップは、前記調整装置または調整ステップによって前記レーザ光源の光出力を調整した後、再度静電潜像を形成し、静電潜像形成開始時と形成完了時の静電潜像の形状の変化を測定し、前記帯状の静電潜像の幅が一定になるレーザ光源の光出力特性を導出するようにするとなおよい。
【0020】
前記画像評価装置または画像評価方法において、レーザ光源は複数の光源を有する面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定装置または測定ステップは前記複数の静電潜像の大きさを測定して前記複数の光源間における光出力特性のばらつきを評価するようにするとなおよい。
【0021】
前記画像評価装置または画像評価方法において、レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定装置または測定ステップは前記複数の静電潜像の位置を測定して、この測定結果を元に複数の静電潜像の形成位置および複数の静電潜像の形成位置補正量を導出するようにするとなおよい。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、感光体を中心にして電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、本発明に係る画像評価方法によって評価された結果を画像形成に反映する手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定し、この形状の変化から前記レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価するため、レーザ光源の光出力の時間変化を測定することになり、そして感光体に形成された静電潜像を評価することになり、結果としてレーザ光源の性能ないしは特性を評価することができる。
【0024】
静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を、帯状の静電潜像で行えば、より正確にレーザ光源の光出力の時間変化を評価することができる。
レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザとすることにより感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、複数の静電潜像の位置を測定して、この測定結果を元に複数の静電潜像の形成位置および複数の静電潜像の形成位置補正量を導出することができる。これにより、静電潜像の大きさを、ばらつきがなく一定の大きさにすることができる。
また、複数の静電潜像の形成位置および各々の静電潜像の位置補正量を求めることができる。
複数の静電潜像において、その個数と基準となる長さから、解像度と回転角を求めることができ、その相関を求めることもできる。
【0025】
上記のようにして評価された結果を画像形成に反映させることにより、解像度が高く、高品位の画像を得ることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】静電潜像の各種パターン例を示す模式図である。
【図2】光源と受光器の概念図および光源への入力信号強度の変化と光出力強度の変化の例を示すグラフである。
【図3】静電潜像の形成開始時における静電潜像の幅と静電潜像の形成完了時の静電潜像の幅の関係を説明するための模式図である。
【図4】本発明に用いることができる垂直面発光レーザの例を示す拡大正面図である。
【図5】光走査により形成される静電潜像の各種パターン例を示す模式図である。
【図6】レーザ光源に入力する信号強度をオーバーシュートさせることと、これによって静電潜像パターンが修正されることを概念的に示す模式図である。
【図7】縦方向に並ぶ複数の静電潜像によるパターンと各静電潜像の位置のばらつきの様子を示す模式図である。
【図8】静電潜像の形成、測定の手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】縦方向に並ぶ複数の静電潜像によるパターンと各静電潜像の大きさのばらつきの様子を示す模式図である。
【図10】静電潜像の形成、測定の手順の別の一例を示すフローチャートである。
【図11】垂直面発光レーザを、発光面の中心を通る光軸を中心に回転させる前と後の状態を示す拡大正面図である。
【図12】図11に示す発光源の配置で感光体上に静電潜像を形成した場合の各潜像パターンの例を示す模式図である。
【図13】本発明に適用可能な光走査学系の例を概念的に示す斜視図である。
【図14】本発明に係る画像評価装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図15】本発明に係る画像形成装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図16】感光体に静電潜像が形成される原理を示す模式図である。
【図17】本発明に係る画像評価装置または画像評価方法における画像評価の概念を総括して示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る画像評価装置、画像評価方法および画像形成装置の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0028】
まず、本発明に用いられる垂直面発光レーザの例について説明する。図4において、垂直面発光レーザは5行5列で合計25個の発光源を有している。図4は垂直面発光レーザの一例を示すものであって、発光源の数はこの数に限られるものではない。さらに多く、例えば5行8列で合計40個の発光源があってもよい。また、図4に示す例では、発光源の横方向の配列が傾いているが、このような傾きのあるものに限られるものではない。また傾きは可変であってもよい。
【0029】
いま、所望の静電潜像の形が、例えば、図1(a)に示すような正方形状であるとする。しかし、垂直面発光レーザの光出力が時間とともに変化することにより、図1(b)、(c)のような、時間の経過に従って静電潜像の幅が大きくなるもの、時間の経過に従って静電潜像の幅が小さくなるものがある。
【0030】
図2(a)は、光源21と受光器22からなる光学系を模式的に示している。光源21は垂直面発光レーザであり、受光器22はフォトダイオード(PD)などの一次元光検出器である。PDは、好ましくは数ナノ秒以下の高時間分解能を持つものが好ましい。光源21と受光器22の間に、レンズ、開口(アパーチャ)、ポリゴンミラーなど、後で詳細に説明する図13に示すような光走査学系が配置されていても構わない。図2(b)は垂直面発光レーザに入力される信号の例で、横軸が時間、縦軸が入力信号強度を示す。時間T0で入力信号が信号強度Iで立ち上がり、以後、信号強度Iが維持される。図2(c)、(d)は、信号強度Iの入力信号で駆動されることにより垂直面発光レーザからレーザ光が射出され、このレーザ光をPDで受光することによって測定される、垂直面発光レーザの光出力(応答)強度である。図2(a)の縦軸の入力信号強度と、図2(b)、(c)の縦軸の光出力強度を同じ高さに揃えて描いているが、便宜的に揃えたにすぎない。
【0031】
図2(c)(d)の縦軸の光出力強度は、レーザ光源の光出力に依存するが、例えば、1.6mWの光出力強度で射出されたレーザ光をレーザ光源の出射直後においてPDで測定したところ1V以下の値であった。図2(c)に示すように、光出力強度の立ち上がりが鈍ると、図1(b)に示すように、時間の経過とともに大きくなる静電潜像が感光体上に形成される。図2(d)に示すように、光出力強度の立ち上がり時に所定の光出力強度よりも大きく立ち上がっていわゆるオーバーシュートが生じている場合は、図1(c)に示すように、当初大きく、時間の経過とともに小さくなる静電潜像が感光体上に形成される。なお、図1(b)、(c)の静電潜像は時間の経過とともに左から右に向かって潜像が形成されるものとして時刻t0からt1に至る(t1>t0)潜像の変化を表している。この時刻t0とt1は、図2に示す時刻t0とt1に対応している。ポリゴンミラーなどの光偏向器を用いて光走査を行うと、静電潜像形成にt0とt1の時間差が生じる。ここで、t0は静電潜像の形成開始時、t1は静電潜像の形成完了時である。t0を零とするとt1は数ナノ秒〜十数ナノ秒といった値である。
【0032】
図3に示すように、静電潜像の形成開始時t0における静電潜像の幅(高さ)をh0、静電潜像の形成完了時の静電潜像の幅(高さ)をh1とすると、静電潜像の形成開始時と形成完了時の静電潜像の幅(高さ)の差Δhは、
Δh=h1−h0
となる。静電潜像の長さをLとすると、静電潜像の変化は、
Δh=(h0−h1)/L
と表すことができる。t0とt1の時間差Δtを、
Δt=t1−t0
として、静電潜像の幅(高さ)の時間変化は
Δh/Δt
で表される。この変化が静電潜像からみた、光源の光出力の時間変動である。h0、h1の大きさは、光源の光出力にも依存するが、数十μmから百数十μmの大きさである。Lも同程度の値である。
【0033】
図2に示すように、光出力強度の測定などからも静電潜像の変化を予測することは可能である。しかし、得られる情報としては図2に示すグラフのように1次元的なものである。このグラフから形成画像をある程度予測することはできても、正確な静電潜像の変化を予測することができる訳ではない。これは感光体が光出力に対して非線形に応答することにもよる。従って、図3に示すように2次元的な静電潜像から変化を予測するほうが正確である。また、複写機やプリンタを用いて感光体に形成した静電潜像をトナーで現像し、このトナー画像を紙に付着させ、このトナー画像から垂直面発光レーザの時間による強度変化を知ることも可能である。しかしながら、電子写真プロセスでは、静電潜像形成後にも複数のプロセスが入るため、静電潜像の変化を正確に知ることは難しい。
【0034】
次に、光走査による静電潜像形成について説明する。まず、時間軸上において変動のない理想的な帯状の静電潜像を図5(a)示す。図中左から右に向かって像を形成するものとする。実際には、ポリゴンミラーなどの光偏向器を用いて光走査を行うので、図5(b)に示すように、小さな複数のドットを順次形成することにより帯状の静電潜像を形成することになる。垂直面発光レーザの光出力の時間変化が無ければ、図5(a)、(b)のように、帯の幅は一定となるが、光出力が時間とともに変動すると、例えば、図5(c)のように、幅が場所とともに連続的に変る静電潜像が形成される。帯の幅の変化Δhは、
Δh=h1−h0
であり、静電潜像の変化はΔh/Lである。時間変化Δtは
Δt=t1−t0
であり、静電潜像の幅の時間変化はΔh/Δtで、また、(Δt/L)/Δtで表わすことができる。
【0035】
このように、図5に示す例では、帯状の静電潜像の形成開始時の幅h0、静電潜像形成完了時の幅h1、帯状の静電潜像の長さL等を測定して、帯状の静電潜像の時間軸上における変化幅を求めるものである。帯状の静電潜像を用いることは、時間軸上における幅の変化を明確にするためである。図1乃至図3に示す例のように静電潜像が小さければ、h0、h1、Lが小さい分だけ誤差の影響が大きく、光出力の変化を高精度で求めることが難しくなる。
【0036】
この例におけるΔtは、前述の例と同様、数ナノ秒から数十ナノ秒である。h0、h1も前述の例と同じく、光源の光出力に依存するが、数十μmから百数十μmといった値である。しかし、静電潜像の長さLは、数十、数百μmから最大数mmである。従って、図1、図3に示す例における静電潜像の長さLと比較して、一桁以上大きくすることができる。このため、誤差が一定とすれば、長さLが大きい分正確に測定することが可能となる。
【0037】
図5(d)は、帯状の静電潜像を形成して測定し評価する場合の別の例で、帯状の静電潜像の形成開始時点をt0、静電潜像形成完了時点をt2とし、t0から中間の時点t1までは静電潜像の幅がh0からh1まで連続的に大きくなり、t1からt2までは一定の幅h1となっている例である。この例の場合も、図5(c)に示す例の場合と同様の手法によって静電潜像を評価し、ひいては感光体を評価することができる。
【0038】
図6(a)は、レーザ光源に入力する信号強度を、静電潜像の形成開始時点t0から例えば数ナノ秒〜数十ナノ秒程度の時間が経過する時点t1までの極めて短い時間に、前記平常の信号強度Iに信号を重畳させた強い信号を与える例を示している。所謂オーバーシュートを当てている。重畳する信号の強度をIovとすると、時点t0からt1までの短時間に強度I+Iovの信号が入力されることになる。t0からt1までの時間は、上記のように極めて短い時間であることから、光走査によって感光体に書き込むことができる時間よりも短い時間、すなわち、「書込み密度以下の時間」である。
【0039】
そこで、まず、図2(b)に示す一定の強度Iの入力信号を用いて、図6(b)に示すような時間とともに幅が大きくなる静電潜像を形成し、前述のように静電潜像の変化を測定する。次に、図6(a)に示すようにオーバーシュートのある入力信号を用いて、静電潜像を形成する。もしオーバーシュート分の信号強度Iovを重畳した入力信号強度(I+Iov)が適切であれば、静電潜像は図6(c)、(d)のように時間軸上での変化が解消されて形成される。オーバーシュート分の信号強度Iovが適切でなく、まだ静電潜像の変化があるようであれば、再度、適切なオーバーシュート(Iovの値)を与えて、図6(c)、(d)に示すような変化の解消された静電潜像を形成する。IovはIに対して例えば10%といった値である。このようにして、静電潜像が図6(c)、(d)のように均一な形状となるオーバーシュートの値(Iov)を求めることができる。そこで、このレーザ光源を備える画像形成装置に上記オーバーシュートの値を反映させる適宜の手段を設けることにより、解像度などが高く、高品質の画像を形成することができる。
【0040】
上記オーバーシュートによって静電潜像の形状を整える手順は以下のようにすることができる。(1)初期設定で静電潜像を形成し、静電潜像のサイズ(h0、h1、L)を測定し、Δh/Lを求める。(2)書き込み密度から求まるΔtを元に、光出力の変化をΔh/Δt、あるいは(Δh/L)/Δtで求める。(3)オーバーシュートの初期値を定め、再度静電潜像を形成する。再び(1)および(2)を実行し、光出力の変化を求める。この値が零(あるいは零に近い値)であれば形状の変化がなく、光源の光出力が零になったことを示しているので終了する。このときに変化の値が零でなければ、再度オーバーシュートを設定して、上記の手順を繰り返す。このようにして適切なオーバーシュートの値を求めることができる。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、縦方向に並ぶ5つの小さな静電潜像i−2,i−1,i,i+1,i+2からなる静電潜像のパターンの形成を考える。これは、図4に示した垂直面発光レーザにおける一行にある5つの光源から形成されるものとする。感光体上に形成される5つの小さな静電潜像は、図7(b)に示すように、初期状態では基準位置である中心線72に対してばらつき、位置が揃わない場合がある。図7(b)では、上記5つの小さな静電潜像の中心線72に対する位置ずれをそれぞれd1,d2,d3,d4,d5で表わしている。図7(a)に示すように各静電潜像が中心線71に揃った静電潜像パターンを形成するには、パターン形成の中心および各々の静電潜像の中心までの移動量d1,d2,d3,d4,d5を知る必要がある。
【0042】
そこでまず、各静電潜像の中心座標(xi、yi)を求める(ここでiは整数)。次に中心位置72を定める。これは例えば、x座標の平均値を求めることによって定める。座標の原点は適宜定めているものとする。中心線のx座標は、


で求めることができる。次に、各々の静電潜像のx座標から中心線71までの距離diを求める。これらの値を元に、各発光源の発光開始タイミング等を調整して、図7(a)に示すような所望のパターンを形成する。
【0043】
図8は、上記潜像の形成、測定の手順を示す。まず、複数の発光源により静電潜像を形成する(S1)。次に、各静電潜像の座標および上記中心線72を決定する(S2)。中心線72のx座標は上記の式


によって求める。中心線72に対する各静電潜像の中心までの距離(図7(b)に示すd1,d2,d3,d4,d5)を求める(S3)。中心線72に対する各静電潜像の中心までの距離diを元に書込み開始シフト量を求め(S4)、求めたシフト量に応じて各静電潜像の書込み開始タイミングをシフトして、再度静電潜像を形成する(S5)。再度形成された静電潜像が所望のパターンであるか否かを判定し(S6)、所望のパターンであれば終了、所望のパターンでなければステップS1に戻る。
【0044】
次に、垂直面発光レーザの複数の光源からのレーザ光によって形成される複数の静電潜像の面積がばらついていて、この面積のばらつきを修正する手順について説明する。図9(a)に示すように、5つの小さな静電潜像i−2,i−1,i,i+1,i+2からなる静電潜像パターンの形成を考える。これは図4に示した垂直面発光レーザにおける一行にある5つの光源から形成されるものとする。感光体上に形成される5つの小さな静電潜像は初期状態では、図9(b)に示すように、大きさが揃わず、それぞれの面積がS1,S2,S3,S4,S5というようにばらついている。図9(b)では便宜的に各静電潜像の大きさのばらつきを誇張して描いてある。このように静電潜像の大きさにばらつきが生じるのは、垂直面発光レーザにおける各光源に光出力のばらつきがあるためである。これは各光源の製造ばらつき等に起因するもので、図2(a)に示すような入力信号を、等しく複数の光源に入力した場合でも生じる。
【0045】
各静電潜像の大きさのばらつきをなくすために、所望の静電潜像の面積Sおよびこの所望の面積Sに対する各静電潜像の面積の差を知る必要がある。そこで、各静電潜像の大きさすなわち面積S1〜S5を測定する。所望の面積Sに対する各静電潜像の面積S1〜S5のずれΔSを求め、各ΔSの値に応じて各光源の入力信号を求める。このようにすると、図9(a)に示すように、大きさの均一な静電潜像を形成することができる。ここで所望の面積Sは、例えば、各静電潜像の大きさの平均値である。すなわち、


の式で求めることができる。次に、各静電潜像の大きさと平均値との差ΔSiを求め、次に、ΔSiに応じた入力信号強度を決定する。具体的には、図2(b)のIの値を上下させる。決定した強度の入力信号で再度静電潜像を形成し、測定する。
【0046】
以上の潜像形成、測定の手順を図10に示す。まず、複数の発光源により静電潜像を形成する(S11)。次に、各静電潜像の大きさを測定し、その平均値を上記式によって算出する(S12)。上記面積の平均値と各静電潜像の面積S1〜S5の差ΔSを求め(S13)、これらのΔSに基づいて各発光源の発光光量を求める(S14)。具体的には、各発光源に入力される信号の強度が、求めた発光光量に対応した強度に設定される。求めた発光光量に応じて再度静電潜像を形成(S15)し、再度、形成された静電潜像が所望のパターンであるか否かを判定(S16)する。所望のパターンであれば終了、所望のパターンでなければステップS12に戻る。
【0047】
次に、解像度を可変する例について説明する。いま、垂直面発光レーザを、発光面の中心を通る光軸を中心にして回転させることを考える。図11(a)において中心点×を通る紙面に直交する方向の軸を光軸と想定し、この光軸を中心に回転させるものとする。図11(b)は、図11(a)に示す態様から反時計方向に適宜の角度だけ回転させた状態を示す。図11(a)に示すように、一行に並んでいる5つの発光源の配列に傾きがなく、発光源相互の幅(距離)が最大でこれをpとすると、図11(b)における発光源相互の幅p’はpよりも小さくなる。すなわち、p>p’であることが分る。そして、図11(a)に示すように縦方向に並ぶ発光源の行に傾きがない態様において、横方向に並ぶ5つの発光源の列は所定の角度傾いている。図11(b)に示す態様では、上記横方向に並ぶ5つの発光源の列の傾き角度が小さくなっている。したがって、一行をなす5つの発光源のピッチは、図11(a)ではp/5であり、図11(b)ではp’/5である。すなわち、図11(a)に示す態様から図11(b)に示す態様に回転させることにより解像度が向上する。従って、垂直面発光レーザを回転させることにより解像度を可変とすることができる。
【0048】
垂直面発光レーザを光走査光学系における治具などに設置する際に、所望の位置あるいは角度からずれることがある。いわゆる組み付け誤差である。そこで、例えば、回転ステージに冶具を搭載し、冶具で垂直面発光レーザを保持すると、正確な回転調整が可能となるが、治具および回転ステージが大型化し、コスト高になる。仮に、単にネジを回すだけで回転できる手段のみで回転調整が可能であるとすれば、治具の小型化、低コスト化が可能になる。ここでは正確な回転角を知ることが必要であり、併せて静電潜像の測定を行うことによって解像度の調整が可能となる。
【0049】
図11(a)、(b)に示す発光源の配置で感光体上に静電潜像を形成すると、それぞれ図12(a)、(b)に示すような静電潜像パターンになる。図12に示すように、正方形状の静電潜像が5つ斜めに形成されている。これらの静電潜像の中心を通るように斜線を引き、この斜線を斜辺とした高さP、底辺L、底辺と斜辺のなす角度θ1、θ2の直角三角形を形成する。図12(a)に示す直角三角形において、θ1=tan−1(P/L)であり、図12(b)に示す直角三角形において、θ2=tan−1(P’/L’)である。ここで、P、P’が基準長さである。静電潜像の数は5で、解像度はそれぞれP/5とP’/5である。このようにして、静電潜像から解像度を求めることができる。
【0050】
本発明によれば、上記のように静電潜像の解像度と回転角を求めることができ、両者の相関を導出することが可能となる。
ここでは8つの静電潜像を用いて実験を行った。光出力は光源出射直後で1.59mWである。Pが44μmであり、θが6.2°であった。従って解像度は約4600dpiであった。また光源を約4°回転させたとき、θ=10.8°、Pが61μmであり、解像度は約3300dpiであった。このようにθと解像度との相関を求めることが可能となる。
【0051】
図13に垂直面発光レーザを用いた走査光学系の一例を示す。走査光学系は、光源131、コリメートレンズ132、シリンドカルレンズ133、第一のミラー134、ポリゴンミラー135、第一の走査レンズ136、第二の走査レンズ137、第二のミラー138を有してなる。この走査光学系は一例であり、光学素子の構成、配置はこの例に限られるものではない。ポリゴンミラー135は回転軸1351を中心に1万rpm前後から数万rpm(rpm:revolution per minute)の高速で回転し、ポリゴンミラーに入射される光を走査する。この走査方向を主走査方向と呼ぶ。これは、感光体139の長手方向であり、感光体139の表面をその長手方向に光走査する。また、感光体139は、回転軸1391の回りに回転する。この回転による感光体表面の移動方向を副走査方向と呼ぶ。
【0052】
図13では、感光体139上に光照射により形成される静電潜像の例を符号1392で示している。感光体139上に帯状の静電潜像1392が形成されている様子を、その大きさおよび変化幅を誇張して描いてある。書込み方向は図中の矢印で示す方向である。感光体139自体は必ずしも走査光学系に含まれなくてもよい。また、図示していないが、光源131の直前に開口(アパーチャ)を設ける。光源131は垂直面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surcafe Emitting Laser)とする。波長λは780nmである。
【0053】
図14は、本発明に係る画像評価装置の実施例を模式的に示す。基本的な構成要素として、電子銃142、コンデンサレンズ143、走査レンズ144、対物レンズ145、光照射光学系146、試料147(感光体)、試料ステージ1450、電子検出器1430を備えていて、これらの構成要素は真空チャンバー141内に組み込まれている。真空チャンバー141内は真空ポンプ149によって真空に近い状態に保たれている。真空チャンバー141の外側には、インターフェース148、電子計算機(コンピュータおよびディスプレイ)1410が配置されている。符号1440は、帯電した試料としての感光体147上に光照射により形成した任意のパターンの静電潜像を誇張しかつ拡大して示したものである。また、符号1410は、入力情報および観察した静電潜像を、コンピュータ上でデータ処理・画像処理をしている様子を示している。
【0054】
この画像評価装置では、感光体147の表面に帯電させるために荷電粒子を照射させるようになっている。図14において、感光体147を帯電させるための荷電粒子を発生させる手段は具体的には電子銃142および各レンズ143、144、145であり、感光体に光照射させる手段は具体的には光照射光学系146であり、感光体上に形成された任意のパターンの静電潜像を観察する手段は、具体的には電子銃141、各レンズ143、144、145及び電子検出器1430である。電子銃142は、例えば走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)で用いられているものでよい。電子銃には熱フィラメント、フィールドエミッションなどがあり、いずれであっても構わない。
【0055】
電子銃142を用いて電子で感光体を帯電させることを考えると、電子銃142および感光体147他を真空中に置く必要がある。これは、本装置に固有のことではなく、SEMと同様である。このため真空ポンプ149を用いて装置を組み込んだ真空チャンバー141内部を真空に引く。図14では真空ポンプ149は便宜的に一つのみ描いてあるが、達成させる真空度に応じて、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンスパッタポンプ等複数を併用する場合もある。荷電粒子は負の極性を持つ電子が一般的である。しかし、FIB(Focused Ion Beam)で用いられているイオン銃を用いてイオンを発生し照射してもよい。イオン種としては、例えばGaなどである。
【0056】
コンデンサレンズ143、走査レンズ144、対物レンズ145はいずれも磁界レンズ、あるいは静電レンズである。走査レンズ144により荷電粒子ビームを試料としての感光体147上で二次元的に走査する。
【0057】
感光体の帯電に、好適には電子を用いる。電子を用いた場合、感光体表面の帯電電位は、主として電子の加速電圧と照射時間による。電子の加速電圧が高いほど、感光体表面の帯電電位は高くなる。本発明においては、電子写真と同等の条件にする必要がある。その条件としての加速電圧(Vacc)は1.0〜数kV程度であり、時間は数十秒から数十分程度である。帯電電位は例えば汎用の表面電位計を用いて測定すると−600〜―1000V程度の値が得られる。この帯電電位は、実際の複写機、プリンタと同等の帯電電位となる。また、加速電圧Vaccを変える代りに、感光体にバイアス電圧をかけるなどして、帯電電位を調整しても良い。
【0058】
感光体上に光照射させ任意のパターンの静電潜像を形成する手段は、光照射光学系146である。具体的には、図13に示した走査光学系である。図14では、光学系は真空チャンバー141の内部に配置されているが、真空チャンバー141の外(大気中)にあっても良い。この場合、真空チャンバー141内の真空を維持するために、真空チャンバー141に透過率の高いガラスなどの透明な窓を密封させ設ける等して、走査光学系からの光を感光体まで導くようにすればよい。図14において試料の感光体147は平板(あるいはシート状)のものとして描かれているが、図13に符号139で示すような円筒状のドラムであっても構わない。試料ステージ1450は、互いに直交するx、y、zに三次元的に移動できるものである。感光体に静電潜像が形成される原理については、後で図16を参照しながら説明する。
【0059】
静電潜像を観察する手段は、好適には、電子ビームを用いる。図14に示す実施例では帯電用に用いた電子銃142を用いて電子ビームを放出する。ただし、電流値を弱くする必要がある。例えば、帯電の際の電流値が数nAであったとして、観察時の電流値は数pAと、千分の一程度にする。これは静電潜像が電子の照射によって消えてしまうのを防ぐためである。照射する電子線の電流値が高ければ高い程、静電潜像は速く消失する。
【0060】
電子検出器1430は二次電子検出器である。観察用の電子は感光体に到達し、感光体から二次電子を放出させる。電子によって静電潜像を測定することができる原理は以下のとおりである。すなわち、静電潜像が形成されている所から二次電子はあまり放出されず、静電潜像が形成されていない所から二次電子は良く放出されることによる。二次電子の検出は、二次電子検出器1430で行う。二次電子検出器1430は、電子が照射されることにより光を放出する蛍光体、導光路、放出された光を増倍する光電子増倍などからなる。またこれは、走査型の検出器であるが、感光体上における電子線の走査に追随する。
上記の各手段は、インターフェース148を介してコンピュータ1410で制御する。各手段の詳細な制御はコンピュータ内のソフトウェアで行う。
【0061】
いま、図14に符号1429で示すような静電潜像を形成しているものとする。この静電潜像はコンピュータのディスプレイ上に表示され(符号1420参照)、目視で観察することができるとともに、コンピュータによって各種データ処理、画像処理がなされる。コンピュータは、上記のようにデータ処理、画像処理を行い、前記角度θ、解像度、静電潜像パターン形成の中心、各静電潜像の中心までの移動量、静電潜像の面積、平均値、平均値までのずれないしは差を求める。データ処理・画像処理、ずれないしは差の算出等の演算は特別なものでなく、汎用のデータ・画像処理ソフト等を用いても行うことができる。
【0062】
画像評価装置に関して、装置の制約がある場合がある。例えば、電子線を走査する範囲を広くできない、あるいは試料(感光体)のサイズに制約があるなどである。電子線の走査範囲に関しては、汎用のSEMと比較して、数nmといった分解能を犠牲にすれば、ある程度の範囲(例えば、数mm×数mm)を走査することは可能である。しかし、感光体は直径が数cm、長手方向の長さが数十cmの大きさのものが多い。この感光体全面を一度に走査することは難しい。したがって、感光体を動かしながら部分的な走査を繰り返すことになる。また、この大きさの感光体を試料とすると、試料ステージが大型になり、また真空チャンバーも大容量にする必要がある。従って、感光体を切り出して測定するなどの工夫が必要になる。この場合、走査はごく狭い範囲で構わなくなる。
【0063】
次に、画像形成装置が採用している電子写真ないしは電子写真プロセスについて説明する。まず、一般的な電子写真プロセスについて概要を説明する。このプロセスは、(1)帯電、(2)露光、(3)現像、(4)転写、(5)クリーニング、(6)定着からなる。
(1)帯電:暗所において帯電器を用いて光半導体である感光体の表面を均一に帯電させる。
(2)露光:帯電させた感光体に光照射を行い、光が照射された部分の電荷を除去し、これにより静電潜像を形成する。現在、デジタル機器においてはネガが主流である。
(3)現像:静電潜像と逆極性に帯電させた微小な粒子であるトナーを、静電潜像に静電的に付着させ、潜像を顕像化する。
(4)転写:記録媒体である紙を現像後のトナー像に重ね、紙の裏側の帯電器で、トナーの帯電極性とは逆極性の電荷を紙に与え、静電力により、トナーを紙に転写する。
(5)クリーニング:転写されずに感光体に残った残留トナーをブレード、磁気ブラシ等のクリーナを用いて除去する。
(6)定着:転写紙に付着したトナーを熱ローラ定着機に送り、熱および圧力で定着する。
【0064】
上記(1)から(6)までの電子写真プロセスを実行する画像形成装置をまとめたものを図15に示す。図15において、感光体(OPC)151、帯電チャージャー152、露光用レーザ光153、トナー154、転写紙155、転写チャージャー156、定着ローラ157、クリーニングブレード158、除電用光源159を備えている。
【0065】
この画像形成装置を上記のプロセスと対応させて説明すると、以下のとおりである。
(1)感光体151の帯電が帯電チャージャー152により行われる。
(2)一様に帯電された感光体151の表面に露光用レーザ光153が照射されることにより感光体151の表面が露光され、所定のパターンの静電潜像が形成される。
(3)現像機から上記静電潜像にトナー154が供給されてトナーが潜像に静電的に付着し、静電潜像がトナー154によって顕像化される。
(4)転写チャージャー152により感光体151上のトナーが紙に転写されることにより転写が行われる。
(5)クリーニングブレード158により感光体151上に残ったトナーを取り除くことによりクリーニングが行われる。
(6)定着ローラ157により転写紙上のトナーが転写紙に定着される。
【0066】
上記画像形成装置で使用する現像装置およびトナーおよび現像剤について説明する。上記(3)の現像には幾つかの方式があるので、現像方式からトナーおよび現像剤を分類する。まず現像方式には乾式と湿式があり、高速性の上で乾式が主流である。乾式には、一成分現像剤と二成分現像剤がある。また一成分現像剤には非磁性トナー、磁性トナーがある。二成分現像剤はトナーとキャリアとからなる。このトナーには非磁性トナー、磁性トナーがある。トナーは大部分ポリマーからなり、着色剤等が含まれる。大きさは数μmから十数μmである。キャリアは鉄粉などの金属系材料であり、数十から数百μmの大きさである。
【0067】
次に感光体について説明する。感光体は光導電材料(Photoconductor)である。現在、低コストで、加工性が良好であるなどの点から有機電子写真感光体(OPC:Organic Photoconductor)が主として使われている。一般的にOPCは次のような層構成で作られている。導電性支持体(導電層)の上に中間層を設け、度の上に電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)が積層され、さらにその上に電荷輸送層(CTL:Charge Transfer Layer)が積層されている。この構成が順層構成であって、負帯電方式になる。CGLとCTLとの積層順を逆にした構成では正帯電となる。また、電荷発生と電荷輸送とを混合させた材料を用いた単層感光体もある。上記中間層は、電荷リークなどを防止するために設けられる。
【0068】
感光体の層構成および帯電、光照射の様子を模式的に図16に示す。図16に示す例は順層構成であって、導電層である導電性支持体161、電荷発生層(CGL)162、電荷輸送層(CTL)163がこの順に積層されている。符号166は電子を、167はホールを、164は照射光を、165はホールの電荷輸送層中の移動方向をそれぞれ示している。表面を帯電させたOPCに光を照射すると、CGL162において光が吸収され、正負電荷が発生する。この正負の電荷は表面の電界により、一方の電荷がCTL163に、他方の電荷が導電性支持体161に注入される。CTL163に注入された電荷は、CTL163を通り感光体表面に到達し、表面にある電荷を打ち消す。照射する光を二次元的に走査させることにより、文字、画像のパターンを形成する。このパターンに応じて、上記の電荷発生、移動が起り、表面の電荷が打ち消される。これが静電潜像である。一般的にCGL162の厚みはサブμm程度である。またCTL163は数十μmである。静電潜像は通常文字、画像であるが、最小単位はドットである。
【0069】
上記電子写真プロセスの(6)では、トナーが主として記録媒体としての紙に定着されるが、オーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用シートのような高分子材料も記録媒体として用いられる場合がある。
【0070】
図17は、以上説明してきた画像評価装置または画像評価方法における画像評価の概念を総括して示す。潜像の評価は、所望の静電潜像を形成する光出力の時間変化特性、好適なオーバーシュート、潜像形成位置・サイズ、解像度、回転角の各項目のうち少なくとも一つについて行う。この評価は、デジタル複写機、レーザプリンタといった電子写真装置の電気電子回路、あるいは装置に付属している電子計算機のソフトウェアに初期設定値として与えるものである。この初期設定値をもとに、所望の静電潜像が得られるように、上記ソフトウェアが各光源の駆動タイミング、信号強度、回転角度などを制御する。これによって、電子写真プロセスによる画像形成装置は、解像度が高く、かつ高品質の画像を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る画像評価装置および画像評価方法によれば、従来は考慮されなかったレーザ光源の光出力の時間変化に着目し、静電潜像の時間変化を測定することにより、感光体に形成された静電潜像を評価するようにしたため、より高いレベルで静電潜像を評価することができる。そして、本発明に係る画像評価装置および画像評価方法で評価されたレーザ光源、感光体等を画像形成装置に組み込み、画像形成装置に内蔵しているコンピュータなどの制御部に上記評価結果を記録しておけば、この記録データを初期設定値としてより高品質の画像を形成するための画像形成に反映させることができ、より高性能の画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
131 レーザ光源(面発光レーザ)
135 光偏向器
139 感光体
146 光照射光学系
147 資料(感光体)
1430 電子検出器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2008−233376号公報
【特許文献2】特開2007−240682号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体上に形成される静電潜像を評価する画像評価装置であって、
レーザ光源と、
前記レーザ光源を所定の変調信号で駆動することによりレーザ光を射出させる駆動装置と、
前記レーザ光源からのレーザ光を前記感光体上で走査して前記感光体上に静電潜像を形成する走査装置と、
前記感光体上の静電潜像の測定装置と、を有し、
前記測定装置は、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定することができ、この形状の変化から前記レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを特徴とする画像評価装置。
【請求項2】
前記静電潜像は帯状であり、前記測定装置は、静電潜像の形成開始時と形成完了時の前記帯状静電潜像の幅の変化を測定し、レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを特徴とする請求項1記載の画像評価装置。
【請求項3】
レーザ光源の光出力の時間変化特性を元に、前記静電潜像の形状の変化を解消するように書込み密度以下の時間で前記レーザ光源の光出力を調整する調整装置を有する請求項2記載の画像評価装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記調整装置によって前記レーザ光源の光出力を調整した後、再度静電潜像を形成し、静電潜像形成開始時と形成完了時の静電潜像の形状の変化を測定し、前記帯状の静電潜像の幅が一定になるレーザ光源の光出力特性を導出することを特徴とする請求項3記載の画像評価装置。
【請求項5】
レーザ光源は複数の光源を有する面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定装置は前記複数の静電潜像の大きさを測定して前記複数の光源間における光出力特性のばらつきを評価する請求項1記載の画像評価装置。
【請求項6】
レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定装置は前記複数の静電潜像の位置を測定してこの測定結果を元に複数の静電潜像の形成位置および複数の静電潜像の形成位置補正量を導出することを特徴とする請求項1記載の画像評価装置。
【請求項7】
レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定装置は前記複数の静電潜像を測定してこの測定結果を元に静電潜像の解像度および回転角を求め両者の相関を導出することを特徴とする請求項1記載の画像評価装置。
【請求項8】
感光体上に形成される静電潜像を評価する画像評価方法であって、
レーザ光源を所定の変調信号で駆動することによりレーザ光を射出させる駆動ステップと、
前記レーザ光源からのレーザ光を前記感光体上で走査して前記感光体上に静電潜像を形成する走査ステップと、
前記感光体上の静電潜像の測定ステップと、を有し、
前記測定ステップは、静電潜像の形成開始時と形成完了時の形状の変化を測定し、この形状の変化から前記レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを特徴とする画像評価方法。
【請求項9】
前記静電潜像は帯状であり、前記測定ステップは、静電潜像の形成開始時と形成完了時の前記帯状静電潜像の幅の変化を測定し、レーザ光源の光出力の時間変化特性を評価することを特徴とする請求項8記載の画像評価方法。
【請求項10】
レーザ光源の光出力の時間変化特性を元に、前記静電潜像の形状の変化を解消するように書込み密度以下の時間で前記レーザ光源の光出力を調整する調整ステップを有する請求項9記載の画像評価方法。
【請求項11】
前記測定ステップは、前記調整ステップによって前記レーザ光源の光出力を調整した後、再度静電潜像を形成し、静電潜像形成開始時と形成完了時の静電潜像の形状の変化を測定し、前記帯状の静電潜像の幅が一定になるレーザ光源の光出力特性を導出することを特徴とする請求項10記載の画像評価方法。
【請求項12】
レーザ光源は複数の光源を有する面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定ステップは前記複数の静電潜像の大きさを測定して前記複数の光源間における光出力特性のばらつきを評価する請求項8記載の画像評価方法。
【請求項13】
レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定ステップは前記複数の静電潜像の位置を測定してこの測定結果を元に複数の静電潜像の形成位置および複数の静電潜像の形成位置補正量を導出することを特徴とする請求項8記載の画像評価方法。
【請求項14】
レーザ光源は配列した複数の光源を有する垂直面発光レーザであって感光体上に複数の静電潜像を形成することができ、前記測定ステップは前記複数の静電潜像を測定してこの測定結果を元に静電潜像の解像度および回転角を求め両者の相関を導出することを特徴とする請求項8記載の画像評価方法。
【請求項15】
感光体を中心にして電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、請求項8乃至14のいずれかに記載の画像評価方法によって評価された結果を画像形成に反映する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−33794(P2011−33794A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179338(P2009−179338)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】