説明

画像読取装置、白基準チャート、シェーディング補正方法、画像形成装置

【課題】電源投入時から原稿画像の読取前までの任意のタイミングで、白基準チャートを用いることなく、原稿の画像データに対する正確なシェーディング補正を行うことができるようにする。
【解決手段】原稿読取装置100の制御部200は、工場出荷時又はメンテナンス時に、白基準チャート300を読み取った第1基準画像データと白基準板33を読み取った第2基準画像データとを記憶しておく。原稿読取装置100がユーザの使用場所に設置された後、電源投入時から原稿画像の読取前までの間に、白基準板33を読み取った第3基準画像データを第1基準画像データで乗算するとともに第2基準画像データで除算してシェーディング補正用の補正値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原稿搬送経路を搬送中の原稿の画像を読み取る読取手段とシェーディング補正用の基準白板とを原稿搬送経路を挟んで配置した原稿読取装置、この原稿読取装置におけるシェーディング補正時に用いる白基準チャート及びシェーディング補正方法、並びにこの原稿読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD等の撮像素子で構成された読取手段によって原稿の画像を読み取る画像読取装置では、読取手段に含まれる光学系や撮像系の特性による輝度ムラを排除し、読取画像の全面が一様な明るさとなるようにシェーディング補正が行われる。読取手段は原稿搬送方向に直交する方向で原稿の全幅に匹敵する長さの読取範囲を有しており、読取手段が白色原稿から読み取った画像データが搬送方向に直交する方向の全域で均一な明度となるようにシェーディング補正用の補正値が決定される。
【0003】
装置の工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時には、原稿搬送経路中にシェーディング補正用の白基準チャートを配置し、読取手段がチャートから読み取った画像データに基づいてシェーディング補正用の補正値を決定する。
【0004】
ところが、原稿搬送経路を搬送中の原稿から画像データを読み取る通常使用時にも読取手段の光学系や撮像径系の特性が経時変化する場合がある。また、読取手段は原稿搬送経路に露出した透明のガイド板の背面に配置されており、原稿搬送経路を原稿が通過する際にガイド板に付着した紙粉等の塵埃も読取手段によって読み取られ、原稿の画像データに搬送方向に沿って黒筋が発生する。
【0005】
そこで、原稿搬送経路を搬送中の原稿から画像を読み取る従来の画像読取装置では、原稿搬送経路の一部に読取手段と白基準部材とを原稿を挟む位置に対向させて配置したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
シェーディング補正時には、原稿搬送経路内を原稿が搬送されていない状態で、読取手段が読み取った白基準部材の画像データに基づいてシェーディング補正用の補正値を決定する。画像読取装置内に白基準部材が常時配置されており、装置の工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時だけでなく、原稿画像の読取時の任意のタイミングでシェーディング補正を行うことができる。また、原稿の画像データに対するガイド板に付着した塵埃の影響を除去することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−313794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、読取手段と白基準部材とは原稿搬送経路を挟んで配置されるため、読取手段から白基準部材までの距離は読取手段から原稿の画像面までの距離に一致せず、白基準部材の画像データに基づく補正値は、原稿の画像データの補正値に対して誤差を含む可能性がある。特に、原稿搬送経路を搬送中の原稿の画像の読取に使用されるCIS(密着型イメージセンサ)等の読取手段は、一般に被写界深度が浅く、原稿の画像面に焦点を合わせると白基準部材に合焦しない。このため、装置に常時配置された白基準部材の画像データのみを用いて決定された補正値のみによっては、原稿の画像面から読み取られた画像データを正確にシェーディング補正することができない。
【0009】
この発明の目的は、原稿搬送経路中に配置した白色チャートと装置内に固定的に配置した白基準部材との両方から読み取った画像データに基づいて原稿画像の読取時の補正値を調整し、任意のタイミングで原稿の画像データに対する正確なシェーディング補正を行うことができる画像読取装置、シェーディング補正用の白基準チャート、シェーディング補正方法及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の画像読取装置は、原稿トレイ、排紙トレイ、複数の搬送部材、読取手段、白基準部材、制御部を備えている。原稿トレイは、画像読取前の原稿を載置する。排紙トレイは、画像読取後の原稿を収容する。複数の搬送部材は、原稿トレイから排紙トレイに至る原稿搬送経路に沿って配置されている。読取手段は、複数の搬送部材のうち隣接する2つの搬送部材の間に設定された読取位置で原稿の画像面に対向するように配置されている。白基準部材は、読取位置で原稿を挟むように読取手段に対向して配置されている。制御部は、原稿画像の読取時に読取手段が原稿トレイから搬送された原稿から読み取った画像データを補正するシェーディング補正を行う。この制御部は、所定の調整時に読取手段が読取位置に位置している白基準原稿から読み取った第1の基準画像データ及び読取手段が白基準部材から読み取った第2の基準画像データ、並びに原稿画像の読取前の画像読取時に原稿トレイから搬送された原稿が読取位置に達する前に読取手段が白基準部材から読み取った第3の基準画像データに基づいてシェーディング補正用の補正値を決定する。
【0011】
この構成では、例えば装置の工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時等の所定の調整時に、白基準原稿及び白基準部材から第1及び第2の基準画像データを読み取る。また、装置に対する電源投入後から原稿トレイから搬送される原稿の画像を読み取るまでの間の原稿画像の読取前に、原稿が読取位置に達する前に白基準部材から読み取った第3の基準画像データと第1及び第2の基準画像データとに基づいて決定された補正値により、原稿から読み取った画像データを補正する。第1の基準画像データは、原稿の画像面で白画像を読み取ったものである。
【0012】
したがって、原稿の画像面での白画像の読取結果が補正値に反映され、読取手段から原稿の画像面までの距離と読取手段から白基準部材までの距離との不整合による誤差を解消した補正値により、原稿から読み取った画像データのシェーディング補正が行われる。
【0013】
この構成において、制御部は、第3の基準画像データを第1の基準画像データで乗算するとともに第2の基準画像データで除算して補正値を算出するものとすることが好ましい。原稿の画像面での白画像の読取結果を補正値に容易に反映させることができる。
【0014】
また、制御部が、所定の調整時に第1の基準画像データ及び第2の基準画像データを記憶する記憶手段を有するものであり、原稿画像の読取時に記憶手段から第1の基準画像データ及び第2の基準画像データを読み出すものとすることが好ましい。通常の画像読取時に繰り返し原稿の画像面での白画像の読取結果を補正値に反映させることができる。
【0015】
制御部は、第2の基準画像データの一部における規定値以下のデータを、その部分の周りのデータに基づいて補完する第1の補完処理を実行するものとすることが好ましい。また、制御部は、第3の基準画像データの一部における規定値以下のデータを、その部分の周りのデータに基づいて補完する第2の補完処理を実行するものとすることが好ましい。さらに、制御部は、第1及び第2の基準画像データに基づいて読取手段及び白基準部材の清掃を促すものとすることが好ましい。白基準部材の部分的な汚損の影響を排除して、正確なシェーディング補正を行うことができる。
【0016】
制御部は、所定の調整時に、白基準原稿として原稿搬送方向に沿って白色部と開口部とを形成したシート状の白基準チャートが白色部を読取手段に対向させて原稿搬送路に配置された際に、白色部から第1の基準画像データを読み取った後、開口部が読取手段に対向する位置に白基準チャートを搬送し、開口部が読取手段に対向している状態で第2の基準画像データを読み取るものとすることが好ましい。白色部と開口部とを形成した白基準チャートを用いて、第1の基準画像データ及び第2の基準画像データを連続して読み取ることができる。
【0017】
この発明の白基準チャートは、所定の調整時に、読取位置に白基準原稿として配置され、隣接する2つの搬送部材の間隔内に読取手段に対向する白色部と開口部とを原稿搬送経路に沿って形成したものである。白色部は、開口部が読取手段に対向している状態で搬送部材に接触しない位置に形成されている。
【0018】
所定の調整時に、白色部が読取手段に対向するように白基準チャートを配置して第1の白基準データを読み取った後、開口部が読取手段に対向するように白基準チャートを移動させて第2の基準データを読み取ることができる。白色部は、白基準チャートの移動中に搬送部材に接触することがなく、汚損することがない。
【0019】
この発明のシェーディング補正方法は、原稿搬送経路に沿って搬送中の原稿から画像データを読み取る画像読取装置で実行されるシェーディング補正方法であって、所定の調整時に行われる第1及び第2の工程と、通常の画像読取時に行われる第3及び第4の工程とを含む。第1の工程では、読取位置に配置された読取手段により、読取位置に位置している白基準原稿から第1の基準画像データを読み取る。第2の工程では、読取位置で読取手段との間に原稿を挟むように配置された白基準部材から第2の基準画像データを読み取る。第3の工程では、原稿が読取位置に達する前に読取手段が白基準部材から第3の基準画像データを読み取る。第4の工程では、第1〜第3の基準画像データに基づいて読取位置に達した原稿から読取手段が読み取った画像データを補正する。
【0020】
この構成では、例えば装置の工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時等の所定の調整時に、白基準原稿及び白基準部材から第1及び第2の基準画像データを読み取る。また、装置に対する電源投入後から原稿トレイから搬送される原稿の画像を読み取るまでの間の原稿画像の読取前に、原稿が読取位置に達する前に白基準部材から読み取った第3の基準画像データと第1及び第2の基準画像データとに基づいて決定された補正値により、原稿から読み取った画像データを補正する。第1の基準画像データは、原稿の画像面で白画像を読み取ったものである。
【0021】
したがって、原稿の画像面での白画像の読取結果が補正値に反映され、読取手段から原稿の画像面までの距離と読取手段から白基準部材までの距離との不整合による誤差を解消した補正値により、原稿から読み取った画像データのシェーディング補正が行われる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、原稿の画像面での白画像の読取結果を補正値に反映することができ、読取手段から原稿の画像面までの距離と読取手段から白基準部材までの距離との不整合による誤差を解消した補正値により、任意のタイミングで原稿の画像データに対する正確なシェーディング補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態に係る原稿読取装置の概略図である。
【図2】同原稿読取装置における第2画像読取装置の白色原稿及び白基準板の読取時の画像データを示す図である。
【図3】同原稿読取装置のシェーディング補正に用いられる白基準チャートの平面図である。
【図4】(A)〜(D)は、同白基準チャートの使用状態を示す図である。
【図5】同原稿読取装置の制御部のブロック図である。
【図6】同制御部の処理手順の一部を示すフローチャートである。
【図7】同制御部の処理手順における基準画像データの補完処理の一例を示す図である。
【図8】同制御部の処理手順の他の一部を示すフローチャートである。
【図9】同制御部の処理手順における塵埃の付着位置の判別方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、この発明の実施形態に係る原稿読取装置100は、例えば複写機等の画像形成装置の上部に配置される。原稿読取装置100は、自動原稿送り装置(以下、「ADF」と称する)1、第1画像読取装置10、第2画像読取装置20を備えている。
【0025】
ADF1は、制御部200を備え、原稿を原稿搬送路Fに沿って自動的に搬送する。第1画像読取ユニット10は、光源ユニット15、ミラーユニット16、レンズ13及びCCD(イメージセンサ)14を備えた縮小光学系の画像読取手段であり、原稿の表面側の画像を読み取る。
【0026】
第2画像読取装置20は、この発明の読取手段に相当し、光源21、第1〜第4ミラー22A,22B,22C,22D、レンズ23及びCCD(イメージセンサ)24を備えた縮小光学系の画像読取手段であり、原稿の裏面側の画像を読み取る。第2画像読取ユニット20は、ユニット化されてADF1内に収納されている。第2画像読取ユニット20は、小型化のために密着型イメージセンサ等の等倍光学系の画像読取手段とすることもできる。
【0027】
ADF1と主走査部2はヒンジ(図示せず)によって連結され、ADF1はヒンジの回動によって主走査部2の上面を開閉自在にされている。
【0028】
第1画像読取装置10は、上面に透明なガラス板からなる原稿台4を備えており、内部に光源ユニット15及びミラーユニット16を水平方向に往復移動自在に備えている。光源ユニット15は、光源11及び第1ミラー12Aを保持する。ミラーユニット16は、第2ミラー12B及び第3ミラー12Cを保持する。
【0029】
第1画像読取装置10は、ユーザが原稿台4上に載置した原稿の画像の読み取る原稿固定方式による画像読取と、ADF1が搬送する原稿の画像を読み取る原稿移動方式の両方式に対応している。
【0030】
原稿固定方式によって原稿画像を読み取る場合、光源ユニット15とミラーユニット16は、原稿固定方式に対応したホームポジションにそれぞれ移動する。その後、光源ユニット15は原稿に対して光を照射しながら一定の速度で副走査方向(紙面に対して左右方向)に移動して原稿の画像を走査し、同時にミラーユニット16は光源ユニット15の移動速度の1/2の移動速度で同じく副走査方向に移動する。
【0031】
光源ユニット15から照射され原稿から反射した光は第1ミラー12Aで反射した後、第2及び第3ミラー12B,12Cによって光路変換され、第3ミラー12Cから反射された光はレンズ13を介してCCD14に結像し、電気的な画像データに変換される。
【0032】
一方、原稿移動方式によって原稿画像を読み取る場合、光源ユニット15及びミラーユニット16は、図1に示されるホームポジションに静止したまま、ADF1によってホームポジションの上部を通過するように搬送される原稿の表面に光源11から光を照射して画像を走査する。原稿の表面で反射された光は、第1ミラー12Aによって反射された後、第2及び第3ミラー12B,12Cによって光路変換され、レンズ13を介してCCD14に結像し、電気的な画像データに変換される。
【0033】
ADF1は、原稿トレイ5から排紙トレイ30に至る原稿搬送路F内に、ピックアップローラ6、複数の搬送ローラ対7A〜7E、レジストローラ対8、プラテンローラ2、排紙ローラ9対を配置している。ピックアップローラ6は、原稿トレイ5に載置された原稿を1枚ずつ繰り出す。搬送ローラ対7A〜7Eは、原稿を原稿搬送路Fに沿って搬送する。プラテンローラ2は、原稿搬送路Fを搬送中の原稿をプラテンガラス29に向けて押圧する。レジストローラ対8は、原稿の搬送タイミングを調節する。排紙ローラ対9は、画像読み取りを終えた原稿を排紙トレイ30へ排出する。原稿搬送経路Fは、この発明の原稿搬送経路に相当し、第2画像読取装置20の周囲に略U字状に形成されている。
【0034】
第2画像読取装置20は、ユーザから両面読取の要求がなされた際に、原稿搬送路Fを搬送される原稿の裏面の画像を読み取る。即ち、第1画像読取装置10によって表面の画像が読み取られた原稿は、原稿搬送路Fに沿って排出トレイ30へ向けて搬送される間に光源21の下方を通過する。この際に光源21は原稿の裏面へ向けて光を照射し、原稿の裏面から反射された光は、ガラス等の透明部材で形成された読取窓32を通過してミラー22A〜22Dで順次光路変換された後、レンズ23を介してCCD24に結像し、電気的な画像データに変換される。
【0035】
ADF1の下面は、原稿台4上に載置された原稿を上側から押圧する押さえ板28にされている。ADF1は、プラテンローラ2から排紙ローラ対9までの間の原稿搬送路Fの位置で上下に分割可能にされている。ADF1を上下に分割すると、原稿搬送路Fのプラテンローラ2から排紙ローラ対9までの間が外部に開放する。原稿搬送路F中で、搬送ローラ7Dの上流側には原稿センサ34が配置されており、搬送ローラ7Eの下流側には原稿センサ35が配置されている。原稿センサ34,35は、原稿搬送路F中の原稿の有無を検出する。原稿センサ34,35は、原稿を検出した時にオフし、原稿を検出していない状態でオンする。
【0036】
原稿搬送路F中で読取窓32は、原稿を挟むように白基準板33に対向している。白基準板33は、シェーディング補正に用いられるこの発明の白基準部材であり、原稿搬送路Fの下面ガイドの一部を構成しており、上面に透明板材を備えたものであってもよい。
【0037】
第2画像読取装置20は、原稿搬送路Fにおける原稿搬送方向に直交する方向について、搬送可能な最大サイズの原稿の幅に匹敵する長さの撮像範囲を有している。第2画像読取装置20を構成する光源21、ミラー22A〜22D及びレンズ23の光学系、並びにCCD24の撮像系の特性により、第2画像読取装置20が読み取った白色原稿の画像データは、原稿搬送方向に直交する方向で均一にはならない。
【0038】
白色原稿の読取時にCCD24から出力される画像データは、例えば図2実線で示すように、中央部が両端部より高くなるように湾曲する。また、白基準板33の読取時にCCD24から出力される画像データは、図2中一点鎖線で示すように、両端部が白色原稿の画像データよりも低い状態で湾曲する。CCD24から白基準板33までの距離が、CCD24から原稿の裏面(画像面)までの距離よりも長いためである。
【0039】
この発明の白基準チャート300は、一例としてA4サイズのシートに、開口部301〜303、白基準部304を形成したものである。白基準チャート300が白色のシートを素材とする場合には、白基準部304を形成する必要はない。
【0040】
図4に示すように、開口部302及び白基準部304は、矢印Xで示す原稿搬送方向について、隣接する2つの搬送ローラ対7D,7Eの間に位置するように形成されている。開口部301は、開口部302が読取窓32に対向している時に原稿センサ34に対向する位置に形成されている。開口部303は、白基準部304が読取窓32に対向している時に原稿センサ35に対向する位置に形成されている。
【0041】
図5に示すように、制御部200は、ROM202及びRAM203を備えたCPU201に画像メモリ204、パネルコントローラ205、モータドライバ゛206、光源ドライバ207、A/D変換器208を接続して構成されている。
【0042】
CPU201には、原稿センサ34,35の検出信号が入力される。CPU201は、ROM202に予め格納されているプログラムに従って各入出力機器を統括して制御する。
【0043】
CPU201には、パネルコントローラ205から操作パネル210内の操作スイッチの操作データが入力される。CPU201は、パネルコントローラ205を介して操作パネル210内のディスプレイに表示すべき表示データを出力する。
【0044】
CPU201は、原稿センサ34,35の検出信号に応じた駆動信号をモータドライバ206、光源ドライバ207に出力する。モータドライバ206は、CPU201が出力した駆動信号に基づいて搬送モータ220を駆動する。光源ドライバ207は、CPU201が出力した駆動信号に基づいて光源21を駆動する。A/D変換器208は、CCD24の出力信号をディジタルデータに変換してCPU201に入力する。CPU201は、A/D変換器208から入力されたディジタルデータを画像データとして画像メモリ204に格納する。RAM203は、バッテリバックアップされており、CPU201に入出力されるデータを一時格納する。RAM203のメモリエリアMA1,MA2は、後述する第1基準画像データ及び第2基準画像データの記憶エリアにされている。また、RAM203のメモリエリアMA3は、後述するフラグFに設定されている。
【0045】
なお、制御部200は原稿読取装置100が配置される画像形成装置内又は画像形成装置の制御部内に設けることもできる。
【0046】
CPU201は、原稿読取装置100の工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時等の所定の調整時に、図6に示す調整時の処理により、図3に示した白基準チャート300を用いて、シェーディング補正用の第1及び第2基準画像データを作成する。
【0047】
この処理は、工場作業者又はサービスマンの図示しない210操作パネルの操作スイッチの操作により、調整モードが選択された場合に実行される。CPU201は、工場作業者又はサービスマンが調整モードを選択すると、操作パネル210のディスプレイに、白基準チャート300を図4(A)に示す状態で原稿半嘘路F内に配置する旨を通知する。図4(A)に示す状態では、原稿センサ34,35が白基準チャート300を検出し、かつ開口部302及び白基準部304が搬送ローラ対7Dと搬送ローラ対7Eとの間に位置する。工場作業者又はサービスマンは、ADF1を上下に分割して原稿搬送路Fを外部に開放した状態で白基準チャート300を配置し、ADF1を一体化する。
【0048】
CPU201は、原稿センサ34,35が白基準チャート300を検出すると(S1)、光源21を点灯し(S2)、光源21の光量が安定した後、所定の光量調整を行い(S3)、搬送モータ220を駆動して搬送ローラ対7D,7Eによる白基準チャート300の矢印X方向への搬送を開始する(S4)。光量調整は、例えば、中央部100mmの範囲のデータの平均が840(10bit)となるように光源21の光量及び入力ゲインを調整する。光量調整は、ステップS5の後に行ってもよい。
【0049】
白基準チャート300の搬送により、図4(B)に示すように、原稿センサ35に開口部303が対向すると、原稿センサ35が白基準チャート300を検出しなくなる。CPU201は、原稿センサ35がオンすると、白基準部304が読取窓32に対向していると判断し、第1基準画像データの読取を行い(S5)、白基準部304から読み取った第1基準画像データをRAM203のメモリエリアMA1に記憶する(S6)。なお、白基準チャート300を搬送しつつ複数回読み取った画像データの平均を第1基準画像データとすることで、白基準部304に付着した塵埃の影響を除去することができる。
【0050】
ここで、CPU201は、第1基準画像データ中に規定値(例えば、840に対して100)以下のデータがあるか否かを判別する(S7)。読取窓32に紙粉等の塵埃が付着している場合、塵埃が付着している位置に対応するCCD24のピクセルのデータは著しく低下する。CPU201は、第1基準画像データ中に規定値以下のデータがある場合、白基準チャート300の搬送を停止して操作パネル210のディスプレイに読取窓32の清掃を促す通知を行い、処理を中止する(S8)。
【0051】
第1基準画像データ中に規定値以下のデータがない場合には、CPU301は、開口部302が読取窓32に対向する位置まで白基準チャート300が搬送されることを待機する(S9)。
【0052】
白基準チャート300の搬送により、図4(C)に示すように、原稿センサ35に開口部303が対向しなくなり、原稿センサ34に開口部301が対向すると、原稿センサ34が白基準チャート300を検出しなくなる。CPU201は、原稿センサ34がオンすると、開口部302を経由して白基準板33が読取窓32に対向していると判断し、白基準板33から第2基準画像データの読取を行い(S10)、読み取った第2基準画像データをRAM203のメモリエリアMA2に記憶する(S11)。なお、ステップS10の前に、上述の光量調整を再度行うようにしてもよい。
【0053】
ここで、CPU201は、第2基準画像データ中に規定値(例えば、840に対して100)以下のデータがあるか否かを判別する(S12)。白基準板33の上面に紙粉等の塵埃が付着している場合、塵埃が付着している位置に対応するCCD24のピクセルのデータは著しく低下する。CPU201は、第2基準画像データ中に規定値以下のデータがある場合、白基準チャート300の搬送を停止して操作パネル210のディスプレイに白基準板33の清掃を促す通知を行い、処理を中止する(S13)。
【0054】
第2基準画像データ中に規定値以下のデータがない場合には、CPU301は、図4(D)に示すように、開口部301が原稿センサ34に対向する位置まで白基準チャート300が搬送された時に、搬送モータ220の駆動を停止し、処理を完了する(S14)。
【0055】
ステップS1〜S14の処理において、白基準チャート300における白基準部304は、搬送ローラ対7D,7Eに接触しないため、白基準部304の汚損を防止できる。
【0056】
なお、ステップS8又はS13で読取窓32又は白基準板33の清掃を促すとともに第1基準画像データの補完処理(第1の補完処理)又は第2義順画像データの補完処理(第2の補完処理)を選択できるようにしてもよい。この場合に、補完処理の選択状況に応じて、読取範囲の各ピクセルについて、RAM203のメモリエリアMA3にフラグを設定する。例えば、ステップS8のみで補完処理が選択された時には“1”のフラグを設定し、ステップS13のみで補完処理が選択された時には“2”のフラグを設定し、ステップS8及びS13の両方で補完処理が選択された時には“3”のフラグを設定する。ステップS14の後、フラグに応じて、第1基準画像データ又は第2基準画像データの補完処理を行う。なお、白基準板33の汚損は、白基準板33の上面を通過する原稿からの画像の読取に大きな影響を及ぼさないため、S13の処理を省略することもできる。
【0057】
補完処理は、例えば、図7に示すように、M番目のピクセルからM+D番目のピクセルまで“1”のフラグが設定されている場合、第1基準画像データについて、M番目のピクセル及びM+D番目のピクセルの近傍における所定数Eのピクセルの平均値A1,A2を取る。そして、メモリエリアMA1に記憶している第1基準画像データを図7中破線で示すように、M番目のピクセルからM+D番目のピクセルのデータを平均値A1,A2を結ぶ直線上の値に補完する。第2基準画像データについても補完処理を同様に行うことができる。
【0058】
CPU201は、原稿読取装置100がユーザの使用場所に設置された後、電源投入時から原稿画像の読取開始時までの任意のタイミングで図9に示す処理を実行する。このタイミングは、例えば、原稿トレイ5に原稿が載置された時や所定回数の原稿画像の読取終了時等を含む。なお、図9に示す処理は、原稿読取装置100に対する電源投入時や画像形成装置の予熱復帰時等の原稿画像の読取直前を除くタイミングで実行することが好ましい。
【0059】
CPU201は、原稿センサ34,35がオンしており、読取窓32の配置位置である読取位置に原稿がない状態で(S21)、光源21を点灯し(S22)、光源21の光量が安定した後、上述と同様の光量調整を行う(S23)。この後、CPU201は、CCD24の出力信号を第3基準画像データとして読み取る(S24)。読取位置に原稿が無い状態で、読取窓32は白基準板33に対向しており、CCD24は光源21の光の白基準板33における反射光を受光する。
【0060】
ここで、CPU201は、第3基準画像データ中に規定値(例えば、840に対して100)以下のデータがあるか否かを判別する(S25)。読取窓32又は白基準板33に紙粉等の塵埃が付着している場合、塵埃が付着している位置に対応するCCD24のピクセルのデータは著しく低下する。CPU201は、第3基準画像データ中に規定値以下のデータがある場合、CPU201は、第3基準画像データの傾きに基づいて読取窓32又は白基準板33の何れに塵埃が付着しているかの判別を行う。
【0061】
CCD24から読取窓32の下面までの距離と白基準板33の上面までの距離との差により、図9(A)及び(B)に示すように、塵埃が読取窓32に付着している場合と白基準板33に付着している場合とで、第3基準画像データの傾きに差異を生じる。そこで、CPU201は、第3基準画像データにおけるデータの低下している範囲の傾きから、読取窓32又は白基準板33の何れに塵埃が付着しているかを判別する。
【0062】
CPU201は、白基準板33が汚損している場合には、原稿画像の読取に大きな影響を与えないため、第3基準画像データの補完処理を行う(S27)。この補完処理は、図7に示した補完処理と同様に行うことができる。CPU201は、読取窓32が汚損している場合には、原稿画像の読取に影響を与えるため、操作パネル210のディスプレイに読取窓32の清掃を促す通知を行う(S28)。
【0063】
第3基準画像データ中に規定値以下のデータが無い場合には、CPU201は、シェーディング補正用の補正値を算出し(S29)、RAM203内の所定のメモリエリアに記憶する(S30)。
【0064】
ステップS29における補正値の算出は、例えば、各ピクセルについて、第3基準画像データを第1基準画像データで乗算し第2基準画像データで除算する。白基準板33の画像データのみにより、CCD24から原稿の画像面までの距離と白基準板33までの距離との差異を考慮したシェーディング補正を、白基準チャート300を用いることなく行うことができる。これによって、原稿読取装置100をユーザの使用場所に設置した後、サービスマンのメンテナンス時以外の任意のタイミングで、正確なシェーディング補正を行うことができる。
【0065】
なお、CPU201は、各ピクセルの第1基準画像データを第2基準画像データで除した値を予め記憶しておき、ステップS29でこの値を第3基準画像データに乗算するようにしてもよい。
【0066】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1−ADF
5−原稿トレイ
30−排紙トレイ
7D,7E−搬送ローラ対(搬送部材)
20−第2画像読取装置(読取手段)
32−読取窓
33−白基準板(白基準部材)
100−原稿読取装置
200−制御部
300−白基準チャート
F−原稿搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取前の原稿を載置する原稿トレイと、
画像読取後の原稿を収容する排紙トレイと、
前記原稿トレイから前記排紙トレイに至る原稿搬送経路に沿って配置された複数の搬送部材と、
前記複数の搬送部材のうち隣接する2つの搬送部材の間に設定された読取位置で原稿の画像面に対向するように配置された読取手段と、
前記読取位置で前記読取手段との間に原稿を挟むように前記読取手段に対向して配置された白基準部材と、
原稿画像の読取時に前記読取手段が前記原稿トレイから搬送された原稿から読み取った画像データを補正するシェーディング補正を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の調整時に前記読取手段が前記読取位置に位置している白基準原稿から読み取った第1の基準画像データ及び前記読取手段が前記白基準部材から読み取った第2の基準画像データ、並びに原稿画像の読取前に前記原稿トレイから搬送された原稿が前記読取位置に達する前に前記読取手段が前記白基準部材から読み取った第3の基準画像データに基づいて前記シェーディング補正用の補正値を決定する画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第3の基準画像データを前記第1の基準画像データで乗算するとともに前記第2の基準画像データで除算して前記補正値を算出する請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の調整時に前記第1の基準画像データ及び前記第2の基準画像データを記憶する記憶手段を有し、前記原稿画像の読取前に前記記憶手段から前記第1の基準画像データ及び前記第2の基準画像データを読み出す請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の基準画像データの一部における規定値以下のデータを、その部分の周りのデータに基づいて補完する第1の補完処理を実行する請求項1乃至3の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3の基準画像データの一部における規定値以下のデータを、その部分の周りのデータに基づいて補完する第2の補完処理を実行する請求項1乃至4の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の基準画像データの一部に規定値以下のデータがある場合に、前記読取手段の清掃を促す処理を行う請求項1乃至5の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の基準画像データの一部に規定値以下のデータがある場合に、前記基準白部材の清掃を促す処理を行う請求項1乃至6の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定の調整時に、前記白基準原稿として原稿搬送方向に沿って白色部と開口部とを形成したシート状の白基準チャートが前記白色部を前記読取手段に対向させて前記原稿搬送路に配置された際に、前記白色部から前記第1の基準画像データを読み取った後、前記開口部が前記読取手段に対向する位置に前記白基準チャートを搬送し、前記開口部が前記読取手段に対向している状態で前記第2の基準画像データを読み取る請求項1乃至7の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の画像読取装置と、前記原稿画像の読取時に前記画像読取装置で読み取られた画像データに基づいて用紙に画像を形成する画像形成部と、を備えた画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れかに記載の画像読取装置における前記所定の調整時に、前記読取位置に前記白基準原稿として配置され、前記隣接する2つの搬送部材の間隔内に前記読取手段に対向する白色部と開口部とを原稿搬送方向に沿って形成したシート状の白基準チャートであって、
前記白色部を、前記開口部が前記読取手段に対向している状態で前記搬送部材に接触しない位置に形成した白基準チャート。
【請求項11】
原稿搬送経路に沿って搬送中の原稿から画像データを読み取る画像読取装置で実行されるシェーディング補正方法であって、
所定の調整時に、読取位置に配置された読取手段により、前記読取位置に位置している白基準原稿から第1の基準画像データを読み取る工程、及び前記読取位置で原稿を挟むように配置された白基準部材から第2の基準画像データを読み取る工程と、
原稿画像の読取前に、原稿が前記読取位置に達する前に前記読取手段が前記白基準部材から第3の基準画像データを読み取る工程、及び前記第1〜第3の基準画像データに基づいて前記読取位置に達した原稿から前記読取手段が読み取った画像データを補正する工程と、を含むシェーディング補正方法。
【請求項12】
前記所定の調整時に、前記白基準原稿として原稿搬送方向に沿って白色部と開口部とが形成されたシート状の白基準チャートを前記白色部が読取位置に配置された読取手段に対向させて位置させる工程を、前記第1の基準画像データを読み取る工程の前に含み、
前記第1の基準画像データを読み取る工程の後に、前記開口部が前記読取位置に位置するように前記白基準チャートを搬送する工程を含む、請求項11に記載のシェーディング補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−151478(P2011−151478A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9245(P2010−9245)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】