説明

画像読取装置と画像形成装置及び光源制御方法

【課題】複数の光源を備えた画像読取装置において、読み取り信号のS/Nの低下や切り貼り原稿の段差による影の発生等による読み取り画像品質の低下を防ぐようにする。
【解決手段】基準白板30を読み取った際の読み取りレベルを所定の基準レベル(D_W12)に調整後に(S102)、2灯の光源50a及び50bを個別に点灯させてそれぞれ基準白板30を読み取り、可変ゲインアンプ84の増幅率を固定して増幅した読み取りレベル(D_W1),(D_W2)をそれぞれ検出して(S104及びS105)、そのバランス度合を算出し(S107)、それら読み取りレベル(D_W1),(D_W2)のバランスをとるように2灯の光源50a及び50bの照度を調整するようにした(S108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の光源を備えた画像読取装置と、その画像読取装置を備えた画像形成装置及びその光源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャリッジなどの走査手段によって原稿を副走査方向に走査させると共に、原稿からの反射光を読取手段としてのリニアイメージセンサ(ラインセンサ)であるCCDのセンサ面上に結像させ、そのCCDから得られる主走査方向の1ライン毎の出力信号に基づいて、原稿の画像情報(以下単に「原稿」ともいう)を読み取るようにした画像読取装置が知られている。
そして近年、画像読取装置の高速化が進んできており、読取画像のノイズを抑えた高いS/N(信号対雑音比)を確保するために、原稿面への照度を大きくする必要がでてきている。
【0003】
このため高速読み取りを行う画像読取装置では、照明用の光源を2灯にして原稿面への必要照度を大きくしているものがある。
また、省電力化のため、LEDを照明用光源として用いる画像読取装置も多くなってきてはいるものの、LEDでは大きな照度が得られず、まだ高照度化に対応できないため複数のLEDを使用する方式が主流である。
【0004】
ここで例えば、特許文献1には、照明用の光源を2灯備えた画像読取装置において、その2灯の光源を同時に点灯させて基準白板を読み取ったときの読み取りレベルである基準レベルと、個別に点灯させて基準白板を読み取ったときの読み取りレベルとを対比して異常を検出し、異常検出した場合には画像読取装置の動作を停止することによって光源の異常による画像品質の低下を防止することが提案されている。
【0005】
このような画像読取装置においては、原稿の読み取りに先立って、AD変換器のダイナミックレンジを有効に利用して階調性の高い画像データを得るために、上述のように予め基準白板を読み取った際の読取レベルが所定の基準レベルとなるように調整が行われる。
具体的には、画像読取装置の電源投入時にキャリッジを基準白板の読取位置に移動して光源を点灯させて基準白板を読み取り、そのときのCCDの出力信号を増幅する可変ゲインアンプの増幅率を増減調整することによって基準白板の読み取りレベルが所定の基準レベルとなるように調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、照明用の光源を2灯備えた画像読取装置の場合、2灯ある光源のうちどちらか一方の照度が低く、配光分布が異常な状態であっても、可変ゲインアンプの増幅率の可変範囲が十分であれば、増幅率を調整することによって基準白板の読み取りレベルを所定の基準レベルに調整できてしまうため、複数の光源の配光分布状態を知ることができず、配光分布のアンバランスによって読み取り信号のS/Nの低下や、切り貼り原稿の段差による影が発生するなど問題が生じていた。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、複数の光源を備えた画像読取装置において、読み取り信号のS/Nの低下や切り貼り原稿の段差による影の発生等による読み取り画像品質の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、この発明による画像読取装置は、原稿に光を照射する複数の光源と、その原稿からの反射光を電気信号に変換する光電変換手段と、上記複数の光源を同時に点灯させて基準部材を読み取った際に上記光電変換手段から出力される電気信号を増幅率を可変して増幅し、その信号レベルを所定の基準レベルに調整する信号レベル調整手段とを備えた画像読取装置であって、上記信号レベル調整手段による調整後に、上記複数の光源を個別に点灯させてそれぞれ上記基準部材を読み取り、上記信号レベル調整手段の増幅率を固定して増幅した信号レベルをそれぞれ検出するレベル検出手段と、そのレベル検出手段により検出した各信号レベルのバランス度合を算出し、上記各信号レベルのバランスをとるように上記複数の光源の照度を調整する照度調整手段とを備えたものである。
【0009】
この画像読取装置において、上記照度調整手段が、上記複数の光源のうち、照度の高い方の光源を低い方に合わせることにより照度調整を行って上記バランスをとるようにするとよい。
また、上記各画像読取装置において、上記照度調整手段による照度調整後に、上記複数の光源を同時に点灯させて上記基準部材を読み取り、その読み取りから得られる読み取り信号のS/Nを検出するS/N検出手段と、そのS/N検出手段により検出したS/Nの値がS/N基準値以上ではない場合に、そのS/Nの値が上記S/N基準値以上となるように上記光電変換手段の光蓄積時間を可変する可変手段とを備えるようにするとよい。
そして、上記可変手段が、上記光電変換手段の光蓄積時間に応じて、上記原稿を読み取る際の読取線速を可変制御するようにするとよい。
また、上記S/N検出手段による上記S/N検出を実行するか否かを、ユーザがユーザインタフェースを介して選択できるようにし、上記S/N検出を実行する場合は、さらに上記読取線速を変更するか否かを選択できるようするとよい。
【0010】
また、上記S/N基準値を変更設定可能にするとよい。
そして、上記S/N基準値を、ユーザインタフェースを介してユーザにより任意の値に設定可能にするとよい。
また、上記各画像読取装置において、上記複数の光源の状態をユーザインタフェースに表示する表示手段を備えるようにするとよい。
また、上記各画像読取装置において、その画像読取装置の状態を、通信回線を介して外部に通知する通知手段を備えるようにするとよい。
【0011】
また、この発明による画像形成装置は、上記いずれかの画像読取装置と、その画像読取装置による読み取りで得たデジタル画像データに基づき画像を形成する画像形成手段とを備えたものである。
また、この発明による光源制御方法は、原稿に光を照射する複数の光源と、その原稿からの反射光を電気信号に変換する光電変換手段と、上記複数の光源を同時に点灯させて基準部材を読み取った際に上記光電変換手段から出力される電気信号を増幅率を可変して増幅し、その信号レベルを所定の基準レベルに調整する信号レベル調整手段とを備えた画像読取装置の光源制御方法であって、上記信号レベル調整手段による調整後に、上記複数の光源を個別に点灯させてそれぞれ上記基準部材を読み取り、上記信号レベル調整手段の増幅率を固定して増幅した信号レベルをそれぞれ検出し、その検出した各信号レベルのバランス度合を算出し、上記各信号レベルのバランスをとるように上記複数の光源の照度を調整するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のようなこの発明の画像読取装置と画像形成装置及び光源制御方法によれば、読み取り信号のS/Nの低下や切り貼り原稿の段差による影の発生等による読み取り画像品質の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態である画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示した画像読取装置のハードウェア構成のブロック図である。
【図3】図3は、図2に示したCPUが画像読取装置の電源投入時に行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】PWMのDutyが100%の場合のタイミングチャートである。
【図5】PWMのDutyが50%の場合のタイミングチャートである。
【図6】CPUが画像読取装置の電源投入時に行う別の処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ライン周期を変更した場合のタイミングチャートである。
【図8】CPUが画像読取装置の電源投入時に行うさらに別の処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】画像読取装置の別のハードウェア構成のブロック図である。
【図10】画像読取装置と他の装置とをネットワーク接続した場合の連携例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、この発明の一実施形態である2灯の光源を備えたシートスルー読み取りが可能な画像読取装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、その画像読取装置の概略構成を示す図である。
【0015】
図1において、この画像読取装置1は、自動原稿搬送装置(ADF)10、シートスルー読み取り部20、基準白板30、コンタクトガラス40、第1キャリッジ50、第2キャリッジ60、レンズユニット70、及びCCD81を設けた画像読取回路基板80を備えている。なお、画像読取装置1は、図示しないホームポジションセンサや、原稿検知センサなどのセンサも備えているものとする。また、図中破線は、光路を示している。
【0016】
このうち、ADF10は、原稿台に載置された原稿P1を1枚ずつ順次自動的に給紙して搬送するためのものである。
シートスルー読み取り部20は、ADF10により自動搬送される原稿P1を読み取るための読み取り位置であって、光源50a及び50bからの照射光を透過する部材(例えばガラス)などからなるものである。
基準白板30は、シェーディング補正用のシェーディングデータを生成するために原稿の読み取りに先立って読み取られる基準部材である。また、後述するAD変換器85(図2参照)のダイナミックレンジを有効利用するために、CCD81から出力される電気信号の信号レベルを所定の基準レベルに調整する際にも読み取られるものである。
【0017】
コンタクトガラス40は、原稿P2を載置するためのものである。
第1キャリッジ50は、原稿露光用の2灯の光源50aと50b及び第1反射ミラー51を含んでおり、後述するスキャナモータ140(図2参照)により駆動され、コンタクトガラス40上に載置された原稿P2を矢示A方向(副走査方向)に移動しながら光学走査することができる。また、シートスルー読み取り部20の読み取り位置に停止して、ADF10により自動搬送される原稿P1の画像読み取りに用いることもできる。
なお、光源としては、LEDや蛍光ランプなど公知の照明手段を用いることができる。
第2キャリッジ60は、第2反射ミラー61と第3反射ミラー62とを含んでおり、第1キャリッジ50と同様にスキャナモータ140により駆動され、第1キャリッジ50に追随して矢示A方向に移動するものである。
【0018】
レンズユニット70は、第1反射ミラー51から第3反射ミラー62に順次反射偏向された反射光をCCD81に集光して結像させるためのものである。
画像読取回路基板80は、CCD81をはじめ画像読取に必要な素子をユニット化した回路基板である。なお、この画像読取回路基板80の詳細な構成については後述する。
CCD81は、1次元ライン状のラインイメージセンサであって、反射光を光電変換してアナログ電気信号に変換する光電変換手段である。
【0019】
このような画像読取装置1において、コンタクトガラス40に載置された原稿P2の画像を読み取る場合、光源50aと50bを点灯し、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60をスキャナモータ140により右方向に移動走査して原稿P2を読み取る。
この際、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60は、図中矢印右方向(副走査方向)に一定の関係を維持したまま移動している。このときの各キャリッジの走査速度は、例えば、第1キャリッジ50の速度をVとしたとき、第2キャリッジ60の走査速度はV/2となるように設計されている。
【0020】
一方、ADF10により搬送される原稿P1を読み取る場合、光源50aと50bを点灯し、第1キャリッジ50をシートスルー読み取り部20の読み取り位置にて停止した状態で順次搬送される原稿P1を読み取る。
これら何れの読み取り方式においても、光源50aと50bにより照明された原稿からの反射光を、第1反射ミラー51から第3反射ミラー62へ順次反射偏向させて、レンズユニット70に導き、CCD81の受光面上に縮小結像させ、原稿の画像情報を読み取っている。そして、CCD81からのアナログ電気信号をAD変換器85によりデジタル電気信号に変換する事で、原稿画像をデジタル的に読み取っている。
【0021】
このデジタル的に読み取られた原稿画像の画像情報は、例えば図示しない画像形成装置にて可視画像として用紙等のシート上に画像形成(プリント)して出力したり、あるいはメモリ95(図2参照)に送られ記憶されたり必要に応じて様々な用途に用いられる。
ここで、上述した読み取り方式は、何れの場合も、その読み取りに先立って、まず基準白板30を読み取り、シェーディング補正用のシェーディングデータを生成し後述する図2のシェーディング補正部91の一時記憶用のFIFO(First-In-First-Out)メモリに記憶しておく。
【0022】
そして、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60を移動走査して原稿P2を読み取る場合は、基準白板30を読み取った後に、そのまま第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60を副走査方向に移動させて原稿P2を読み取りながら、それと平行して原稿P2を読み取った部分の画像データに対して順次シェーディング補正処理が実行される。
【0023】
一方、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60を停止したまま、ADF10から搬送される原稿P1を読み取る場合は、シェーディングデータを生成しFIFOメモリに記憶した後、シートスルー読み取り部20の読み取り位置に第1キャリッジ50を復帰させてから原稿P1の搬送を開始し、原稿P1を読み取りながら、それと平行して原稿P1を読み取った部分の画像データに対して順次シェーディング補正処理が実行される。
このように、シェーディングデータを用いて原稿P1又はP2の画像データを正規化することで、光量分布ムラ、CCD81の感度ムラ、光源50a及び50bの出力変動などを補正し、原稿の画像情報を高品質に読み取ることができる。
【0024】
次に、図2に、図1に示した画像読取装置1のハードウェア構成のブロック図を示す。
図2は、そのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、図2において、図1と対応する構成には同一の符号を付している。また、CCD81及び光源50a及び50bについては、上述した通りなので、その説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、画像読取装置1は、画像読取回路基板80、画像処理回路基板90、操作部100、モータドライバ110、光源駆動部120,130、スキャナモータ140及び光源50a,50bを備えている。
このうち、画像読取回路基板80は、CCD81の他に画像読取に必要な素子として、信号処理部82、ドライバ86及びタイミング/CPUIFゲートアレー87を基板上にユニット化して備えている。
【0026】
信号処理部82は、CCD81から供給されるアナログ電気信号に対して種々の信号処理を行って、後段の画像処理回路基板90に供給するためのものである。
信号処理部82のうち、サンプルホールド83は、CCD81からのアナログ電気信号のうち、画像の内容を反映した画像信号成分のみを取り出して可変ゲインアンプ84に供給するための回路である。
【0027】
可変ゲインアンプ84は、サンプルホールド後の信号を、設定したゲイン(増幅率)で増幅するための増幅器である。なお、ゲインは、所定の範囲内において所定のステップ幅で設定可能である。
AD変換器85は、可変ゲインアンプ84によって増幅されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するための回路である。
【0028】
ドライバ86は、CPU96がCCD81を制御するためのインタフェースとなる部分である。
タイミング/CPUIFゲートアレー87は、上述した信号処理部82における各回路の動作タイミングをとるためのものである。また、CPU96がドライバ86にアクセスする際にインタフェースとなる部分でもある。
【0029】
一方、画像処理回路基板90は、シェーディング補正部91、画像処理部92、S/N
検出部93、基準白板読み取りレベル検出部94、メモリ95及びCPU96を基板上にユニット化して備えている。
シェーディング補正部91は、基準白板30の読み取り時にはCCD81から出力される画素毎のアナログ電気信号に平均化処理を行って、シェーディングデータを生成し、図示しないFIFOメモリに格納するものである。また、原稿P1又はP2の読み取り時には、格納したシェーディングデータを用いて、CCD81から信号処理部82を介して得られた画素毎のデジタル電気信号にシェーディング補正を行い、シェーディング補正後のデジタル電気信号である原稿画像データを出力するものでもある。
【0030】
画像処理部92は、シェーディング補正後の原稿画像データに対して種々の画像処理を行い、出力用の画像データを生成するものである。
S/N検出部93は、AD変換器85を介して得られたデジタル画像信号のノイズレベルを検出するためのものである。
基準白板読み取りレベル検出部94は、基準白板30の読み取りレベルを検出するためのものである。なお、基準白板30の読み取りレベルの検出は、シェーディング補正部91によるシェーディング補正前のデジタル電気信号から検出しても、シェーディング補正後の原稿画像データから検出してもどちらであっても構わない。
【0031】
メモリ95は、画像処理部92による画像処理後の原稿画像データや、CPU96が用いる制御プログラムなどを記憶するためのフラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性の大容量記憶手段である。
CPU96は、画像読取装置1全体を制御するためのものであって、原稿搬送、原稿画像の読み取りなどの機能を実現するための処理を行うものである。
操作部100は、液晶ディスプレイ等による表示部と、タッチパネルあるいはボタン等とを備えるものであり、画像読取装置1の状態をユーザに画面表示で通知したり、ユーザからの原稿P1又はP2の読み取り実行指示等の操作を受け付けたりするものである。
【0032】
モータドライバ110は、CPU96がスキャナモータ140を回転駆動するためのインタフェースとなる部分である。
光源駆動部120及び130は、光源50a及び50bをそれぞれ駆動させるための駆動部である。
この光源駆動部120及び130をCPU96が制御することで、光源50a及び50bからの照度調整などを行うことができる。
【0033】
なお、光源50a及び50bの初期状態としては、CPU96がPWM(パルス幅変調)制御を行う場合、デューティ比を100%(以下単に「Duty100%」という)にして、常に光源がONしている状態で光源50a及び50bを駆動するようにし、CPU96が電流制御を行う場合、設定できる最大電流値を流して光源50a及び50bを駆動するようにしている。
スキャナモータ140は、CPU96の制御により、モータドライバ110を介して回転駆動され、第1及び第2キャリッジ50,60をそれぞれ走査移動させるための動力源である。
【0034】
このような画像読取装置1において、例えば原稿P1を読み取る場合、CPU96はタイミング/CPUIFゲートアレー及びドライバ86を介してCCD81を駆動させるとともに、光源駆動部120,130を制御して光源50a及び50bを両方点灯する。そして、モータドライバ110を介してスキャナモータ140を回転駆動させて、第1キャリッジ50をシートスルー読み取り部20の読み取り位置に待機させる。そして、ADF10の内部の搬送ローラを制御して原稿P1を搬送し、読み取り位置にて原稿P1から得られる反射光を、CCD81により読み取る。
【0035】
CCD81から出力されたアナログ電気信号は、CPU96から供給される動作タイミングに従って、サンプルホールド83により読み取り画像部分のみがホールドされ、可変ゲインアンプ84により増幅され、AD変換器85によりデジタル電気信号に変換された後、シェーデイング補正部91に入力される。
そして、このシェーディング補正部91において、シェーディングデータを用いてデジタル電気信号に補正を行い、補正後の原稿画像データに対して画像処理部92にて種々の画像処理を行って、メモリ95に原稿画像データを保存する。
【0036】
また、この画像読取装置1は、原稿読み取り前に(例えば、電源投入時に)、AD変換器85のダイナミックレンジを広く用いるために基準白板30を読み取って、基準白板読み取りレベル検出部94で検出した読み取りレベルを所定の基準レベルまで可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整するようにしている。
そして、この画像読取装置1においては、配光分布のアンバランスから生じる問題を解消するために、この調整時に、あわせて光源50a及び50bの照度も調整するようにしており、このときにCPU96が行う処理の内容を一つの特徴としている。
そこで、以下この点に関連して、画像読取装置1の電源投入時にCPU96が実行する処理について図3を参照しながら説明する。
【0037】
図3は、図2に示したCPU96が画像読取装置1の電源投入時に行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60については、説明の便宜上、単にキャリッジとして説明する。
画像読取装置1において、ユーザにより図示しない主電源ボタンがONされて電源投入がなされると、CPU96は、図3に示す処理を開始する。
【0038】
CPU96はまず、キャリッジのホーミング動作を行って、両方の光源50a及び50bを点灯し、キャリッジを基準白板30の読み取り位置に移動させる(S101)。
ここで、キャリッジのホーミング動作とは、キャリッジ駆動のためのイニシャライズ処理を行うことであって、例えば、キャリッジが所定の待機位置からずれているような場合は、CPU96が、スキャナモータ140を回転させてキャリッジの位置ずれを補正して位置制御を行うようなことをいう。また、キャリッジを所定の待機位置(ホームポジション)に帰還させる処理もホーミング動作という。
【0039】
ステップS101の後、基準白板30を読み取り、基準白板読み取りレベル検出部94にて検出した読み取りレベルが所定の基準レベル(D_W12)になるように、可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整を行う(S102)。この機能が信号レベル調整手段としての機能に相当する。
そして、CPU96は、この調整が正常に終了したか否か判断し(S103)、正常終了しなかった場合は(S103のNo方向)、調整エラーとしてエラー処理を行い、両方の光源50a及び50bを消灯して(S112)、再度キャリッジのホーミング動作を行って(S113)、所定の待機位置にキャリッジを戻して処理を終了する。
【0040】
なお、ここでのエラー処理としては、例えば、読み取りレベルを所定の基準レベルに調整できなかった旨を操作部100の図示しない液晶ディスプレイに表示することが考えられる。また、この段階ではまだ光源50a及び50bの照度調整を行っていないので、あわせて光源異常のおそれもある旨を上記エラー処理に含めてもよい。
【0041】
一方、調整が正常に終了して、基準白板30の読取レベルが所定の基準レベル(D_W12)になった場合(S103のYes方向)、ステップS104に進む。
このステップS102及びS103により、調整が正常に終了すれば、AD変換器85のダイナミックレンジを広く用いることができるようになり、後の原稿P1又はP2の読み取りにおいて階調性の高い画像データを得ることができるようになる。
【0042】
次に、ステップS104において、CPU96は、両方の光源50a及び50bのうち、いずれか一方の光源を消灯して、基準白板30を読み取り、そのときの読み取りレベル(D_W1)を基準白板読み取りレベル検出部94にて検出する(S104)。
そして、CPU96は、両方の光源50a及び50bのうち、点灯中の光源を消灯して、他方の消灯中の光源を点灯させ、基準白板30を読み取り、そのときの読み取りレベル(D_W2)を基準白板読み取りレベル検出部94にて検出して(S105)、両方の光源50a及び50bを消灯する(S106)。
なお、ステップS104及び105では、可変ゲインアンプ84の増幅率を固定して増幅した信号レベルをそれぞれ検出することになる。よって、ステップS104及びS105の機能がレベル検出手段としての機能に相当する。
【0043】
そして、ステップS107において、CPU96は、2灯の光源50a及び50bを交互に1灯ずつ点灯させて得られたそれぞれの読み取りレベル(D_W1),(D_W2)のバランスを算出するために、比((D_W1)/(D_W2))をとるようにし、この比が所定の基準値の範囲内か否か判断する(S107)。
【0044】
ここで、比の値が1(%表記で100%)になる場合は、それぞれの読み取りレベル(D_W1),(D_W2)が等しく、光源50a及び50bの照度配分が50:50のバランスがとれている理想的な状態になっているといえる。
しかし、完全に比の値が1になるのは難しく、多少ずれることも想定して、この実施形態では照度配分が45:55又は55:45の範囲内であれば、バランスがとれているものとしている。すなわち、比の値としては、0.82(45/55≒0.82)〜1.22(55/45≒1.22)を所定の基準値の範囲内として上記ステップS107の判断を行っている。
【0045】
そして、ステップS107の判断において、算出した比の値が0.82〜1.22の範囲内であれば(S107のYes方向)、キャリッジのホーミング動作を行って(S113)、所定の待機位置にキャリッジを戻して処理を終了する。
一方、ステップS107の判断において、算出した比の値が0.82〜1.22の範囲内でなければ(S107のNo方向)、CPU96は、光源50a及び50bのバランスエラーとして光源50a及び50bの照度調整を行う(S108)。この機能が照度調整手段としての機能に相当する。
【0046】
ここでの照度調整としては、CPU96が、基準白板30を読み取った際の読取レベルが高い方の光源の照度を調整して、読取レベルが低い方の光源の照度に等しくなるように制御を行う。この照度を等しくする制御は、CPU96が、PWM制御を行っている場合は、デューティ比を可変して照度を等しくし、電流制御を行っている場合は、電流を制御して照度を等しくする。なお、照度調整としては、これらの方法に限られず他の公知の方法により照度調整を行っても構わない。
【0047】
このような照度調整を行った後、CPU96は、両方の光源50a及び50bを点灯し(S109)、照度調整後の状態でステップS104乃至106と同じ処理を行う。すなわち、光源50a及び50bを1灯ずつ交互に点灯させて、基準白板30を読み取り、そのときの読み取りレベル(D_W1),(D_W2)をそれぞれ検出して、両方の光源を消灯する。
【0048】
そして、CPU96は、照度調整後の状態で再度(D_W1)/(D_W2)が所定の基準値の範囲内か否か判断して(S110)、照度調整後も所定の基準値の範囲内でなければ(S110のNo方向)、再度照度調整を行って(S108)、所定の基準値の範囲内になるまでステップS109及びS110の処理を繰り返す。
【0049】
照度調整後に、(D_W1)/(D_W2)が所定の基準値の範囲内になれば(S110のYes方向)、CPU96は、両方の光源を点灯して(S111)、ステップS102に戻って、再度基準白板30を読み取り、基準白板読み取りレベル検出部94にて検出した読み取りレベルが所定の基準レベル(D_W12)になるように、可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整を行うようにする。
【0050】
これは、上述した照度調整では、基準白板30を読み取った際の読取レベルが高い方の光源の照度を読取レベルが低い方の光源の照度に等しくなるように制御しているため、照度調整後では、両方の光源50a及び50bを点灯した状態でのトータルの読み取りレベルが下がってしまうことが考えられ、AD変換器85のダイナミックレンジを広くとれないおそれがあるからである。
【0051】
そこで、照度調整後のバランスがとれた状態で再度所定の基準レベル(D_W12)になるように、可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整し(S102)、ステップS103以下の処理を再度行うようにしている。このことにより、AD変換器85のダイナミックレンジを広くとることができるとともに、光源50a及び50bの照度バランスもとることができる。
【0052】
ここで、光源50aを点灯した場合の読み取りレベルを(D_W1)、光源50bを点灯した場合の読み取りレベルを(D_W2)とし、実値を用いて具体的に説明すると、例えば所定の基準レベル(D_W12)が240(8bit/256階調)だった場合、ステップS102において、基準白板30を読み取った際の読み取りレベルが240になるように可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整を行い、正常に終了したとする。(S103のYes方向)。
その後、ステップS104及びS105において検出した読み取りレベル(D_W1),(D_W2)がそれぞれ160及び80だった場合、(D_W1)/(D_W2)の値は2(200%)となる。
【0053】
すなわち、この場合は、光源50aの照度が光源50bの照度の2倍あることになり、0.82〜1.22の範囲内ではないため(S107のNo方向)、光源50aの照度が1/2になるように照度調整が行われる(S108)。この場合、CPU96が、光源50aの電流値を1/2にするか又はPWMを50%のデューティ比にして照度調整を行う。
【0054】
ここで、PWMを50%のDutyにすることについて、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、PWMのDutyが100%の場合のタイミングチャートであり、図5は、PWMのDutyが50%の場合のタイミングチャートである。
VCLKは、CCD81の画素クロックであり、XLSYNCは、ライン同期信号であり、Light_ON1とLight_ON2は、それぞれ光源50a及び50bの光源点灯信号である。
【0055】
図4に示すように、XLSYNCの1ライン周期は100μsecに設定されており、Light_ON1とLight_ON2は、初期状態においてPWMのDutyが100%であり常に光源50a及び50bが点灯している。
そして、上述したステップS108の照度調整において、CPU96が、光源50aのPWMを50%のDutyにすると、図5に示すように、Light_ON1の点灯時間が1ライン周期100μsecの半分の50μsecとなり、光源50aの点灯時間が半分となって、照度を調整することができる。
【0056】
このことにより、(D_W1),(D_W2)の値をそれぞれ80に調整することができ、2灯の光源50a及び50bのバランスが50:50となって、理想的な照度配分とすることができる。
なお、その後の処理としては、ステップS109乃至111の後、ステップS102に戻って、トータルの読み取りレベル160を再度240になるように調整し(S102)、ステップS104及びS105でそれぞれ検出した読み取りレベルがそれぞれ120となって、ステップS107における判断がYesとなって、キャリッジのホーミング動作を行って(S113)、処理を終了する。
【0057】
以上説明した処理においては、所定の基準レベル(D_W12)に調整後に、2灯の光源50a及び50bを個別に点灯させてそれぞれ基準白板30を読み取り、可変ゲインアンプ84の増幅率を固定して増幅した読み取りレベル(D_W1),(D_W2)をそれぞれ検出して、そのバランス度合を算出し、それら読み取りレベル(D_W1),(D_W2)のバランスをとるように2灯の光源50a及び50bの照度を調整するようにしている。
そして、このことにより、配光分布のアンバランスを解消することができ、切り貼り原稿の段差による影の発生を防ぐことができる。従って、読み取り画像品質の低下を防ぐことができるようになる。
【0058】
また、上述した照度調整においては、2灯の光源50a及び50bのうち、照度の高い方の光源を低い方に合わせることにより照度調整を行って照度のバランスをとるようにしている。このことにより、照度のバランスをとると共に、消費電力も抑えることができる。
これは、上述したように、光源50a及び50bの初期状態としては、Duty100%か、最大電流値を流すようにしていることから、照度の低い方を高い方へあわせることは出来ない構成にしていることに基づいている。
【0059】
ただし、初期状態としては、Duty100%か、最大電流値を流すことは必須ではなく、例えば、両方の光源50a及び50bのDutyを100%から低い状態としておき、照度調整を行う際には、照度の高い方のDutyを下げて、照度の低い方のDutyを上げるようにしてもよい。また、初期状態においては、両方の光源50a及び50bに最大電流値は流さないようにして、照度調整を行う際には、照度の高い方の電流値を下げて、照度の低い方の電流値を上げるようにして調整してもよい。
【0060】
また、ステップS107の判断において、算出した比の値が所定の基準値の範囲内でなければ、CPU96は、光源50a及び50bのバランスエラーとして、その旨を操作部100の図示しない液晶ディスプレイに表示するようにしてもよい。
このことにより、ユーザやサービスマンが、光源50a及び50bがバランスエラーであることを認知することができる。
【0061】
次に、図6を参照しながら、CPU96が行う、別の処理について説明する。この処理は、照度調整を行った後にS/Nの低下を防止するための処理をさらに行うものであって、CPU96は、ユーザにより図示しない主電源ボタンがONされて画像読取装置1の電源投入がなされると、図6に示す処理を開始する。
【0062】
まず、CPU96は、上述した図3に係る処理(ステップS101乃至113と同じ処理)を行って、両方の光源50a及び50bを点灯させた際の読み取りレベルを所定の基準レベル(D_W12)に調整し、かつ光源50a及び50bの照度調整を行って照度のバランスをとる。
【0063】
その後CPU96は、消灯している両方の光源50a及び50bを点灯し、キャリッジを基準白板30の読み取り位置に移動する(S201)。そして、基準白板30を読み取った際の読み取り信号のS/N(Dsn_W12)をS/N検出部93にて検出して(S202)、検出したS/N(Dsn_W12)が基準値(SN_lim)以上か否か判断する(S203)。なお、ステップS202の機能が、S/N検出手段としての機能に相当する。
【0064】
ここで、例えばS202で検出したS/N(Dsn_W12)が40.495dB(ノイズ成分σ_lim=2.409、信号ダイナミックレンジ255のとき、S/N=−20×log(2.409/255)=40.495dB)で、基準値(SN_lim)が42dB(ノイズ成分σ_lim=2.026、信号ダイナミックレンジ255のとき、S/N=−20×log(2.026/255)=42dB)の場合、S/N(Dsn_W12)が基準値(SN_lim)以上ではないので、ステップS203の判断がNoになって、ステップS205に進む。
【0065】
そして、ステップS205において、CPU96は、S/N(Dsn_W12)が基準値(SN_lim)以上となるようなライン周期を演算する。すなわち、ここでは、上述した図4の1ライン周期100μsecを、ここで演算する周期に変更して、CCD81の光蓄積時間を可変するようにしている。
【0066】
具体的には、このノイズが光ショットノイズだった場合、光ショットノイズは、入射光量の平方根に効いてくるので、ノイズ量が1.189(2.409/2.026≒1.189)倍となった場合、CCD81に入射されている光量は、1/{(2.409/2.026)×(2.409/2.026)}≒1/1.414倍になっていると考えられる。
【0067】
このため、CCD81の1ライン周期を1.414倍にすることで光蓄積時間を増やして、ノイズ量を削減し、S/N(Dsn_W12)を基準値(SN_lim)と同等にすることができる。なお、同等以上とするため、1ライン周期の倍率をさらに大きくしてもよい。
【0068】
そして、演算したライン周期を設定する(S206)。ここで、このライン周期を設定した際のタイミングチャートについて、図7を参照しながら説明する。図7は、ライン周期を変更した場合のタイミングチャートである。
図7に示すように、1ライン周期が初期状態の100μsecから1.41倍した141μsecになっており、この分主走査方向の1ラインを読み取る際の読み取り時間が延びて、光蓄積時間が増大することになる。
【0069】
この際、光源点灯信号であるLight_ON1が照度調整により50%のDutyになっているような場合は、この50%のDutyを保って照度のバランスをとるために、1ライン周期に同期させて点灯時間を可変するように制御を行う。すなわち、点灯時間を1ライン周期141μsecの半分になるように70.5μsecにして、50%のDutyを保つようにする。なお、Light_ON2は、100%のDutyであるため、1ライン周期を変更すれば、それに対応して光蓄積時間もその分増え、上記のような制御は特に必要ない。
【0070】
このようにして演算したライン周期を設定すると、光蓄積時間が増えてその分光量も増えることから、再度基準白板30を読み取り、基準白板読み取りレベル検出部94にて検出した読み取りレベルが所定の基準レベル(D_W12)になるように、可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて調整を行う(S207)。この調整が正常に終了しなければ(S208のNo方向)、エラー処理を行って(S209)、両方の光源を消灯して、キャリッジのホーミング動作を行って(S204)、処理を終了する。ここでのエラー処理は、図3と同様のものとする。
【0071】
一方、調整が正常に終了すると(S208のYes方向)、ステップS202に戻って再度基準白板30を読み取り、読み取った際の読み取り信号のS/N(Dsn_W12)をS/N検出部93にて検出して(S202)、検出したS/N(Dsn_W12)が基準値(SN_lim)以上であることを確認して(S203のYes方向)、両方の光源を消灯して、キャリッジのホーミング動作を行って(S204)、処理を終了する。
【0072】
以上説明した処理においては、照度調整後に、2灯の光源50a及び50bを同時に点灯させて基準白板30を読み取り、読み取りから得られる読み取り信号のS/Nを検出して、その検出したS/Nの値がS/N基準値以上ではない場合に、そのS/Nの値がS/N基準値以上となるようにCCD81の光蓄積時間を可変するようにしている。
そして、このことにより、照度調整に加えて、読み取り信号のS/Nの低下を防ぐことができ、読み取り画像品質の低下を防ぐことができる。
【0073】
なお、上述したステップS205及びS206において、ライン周期を延ばして光蓄積時間を長くすると、ノイズは低減されてS/Nは上がるものの、主走査方向1ラインの読み取りに時間がかかることになり、キャリッジが通常の線速だった場合は、読み取り分解能が低下してしまうことになる。例えば、上述のように1ライン周期を1.41倍にした場合に、基準読取分解能が600dpiだったとすると、424dpi(600/1.414≒424)になってしまう。
【0074】
そこで、等倍(100%)設定の読み取り動作時は、424dpiの画像から600dpiの画像を電気的に生成する処理を行うようにする。また変倍時は、変倍率に応じて同様の処理を行うようにする。これにより、ライン周期を延ばした場合のトレードオフを補償して、生産性を落とすことなく、読み取り信号のS/Nの低下を防ぐことができる。
なお、このS/Nの低下を防止するための図6の処理を、照度調整を行った後ではなく、照度調整を行う前に実施しても構わない。
【0075】
次に、図8を参照しながら、CPU96が行う、さらに別の処理について説明する。この処理は、図6において説明したS/Nの低下を防止するための処理において新たにステップS307が加わった点のみが異なる。そこで、この異なる点を中心に説明する。
CPU96は、ユーザにより図示しない主電源ボタンがONされて画像読取装置1の電源投入がなされると、図8に示す処理を開始して、ステップS301乃至S306の処理(ステップS201乃至S206と同じ処理)を順次行う。
【0076】
そして、ステップS307において、キャリッジの副走査方向の読み取り線速を変更して設定する。これは、上述したようにライン周期を延ばして光蓄積時間を長くすると、主走査方向1ラインの読み取りに時間がかかることになり、キャリッジが通常の線速だった場合は、読み取り分解能が低下してしまうので、これを防止するための処理である。
【0077】
具体的には、光蓄積時間の変更に応じて、キャリッジの副走査方向への読取線速を可変して、600dpiでの画像読み取りを行うようにする。例えば、上述のように1ライン周期が1.41倍となるような場合、キャリッジの基本読取線速が200mm/secだったとすると、変更後の基本読取線速を、200/1.41≒141.8mm/secに設定する。このようにすると、主走査方向1ラインの読み取り時間が延びても、その分副走査方向のキャリッジの線速も遅くできるので、分解能の低下がおこらない。
【0078】
以上説明した処理においては、CCD81の光蓄積時間に応じて、原稿を読み取る際のキャリッジの読取線速を可変制御するようにしている。これによって、CCD81の光蓄積時間を可変することになり、可変手段としての機能を果たすことになる。
そして、このことにより、原稿を連続で読み取りを行う場合の生産性は落としてしまうものの、本来の分解能で原稿読取りを行うことができるとともに、照度調整及びS/Nの低下をあわせて防止することができる。
【0079】
なお、図3、図6及び図8の処理のうち、いずれを実行するかをユーザに選択させて、選択された処理をCPU96が実行するようにしてもよい。例えば、S/N検出を実行するか否かを、ユーザが操作部100の図示しないタッチパネルあるいはボタン等から選択できるようにしておき、S/N検出を実行しない場合は、図3の処理を行うようにする。
一方で、S/N検出を実行する場合は、さらにキャリッジの線速変更を行うか否かを選択できるようにして、この選択に応じて図6又は図8の処理を行うようにする。
【0080】
このことにより、ユーザはまず、S/Nを優先するか又は分解能を優先するかを選択することでき、分解能を優先する場合はS/N検出を行わない図3の処理を行わせることができる。一方で、S/Nを優先する場合はさらに、線速変更に伴う生産性を低下させるか否かを選択することができ、選択に応じて図6又は図8の処理を行わせることができる。
従って、ユーザの優先順位に応じて実行可否を選択することができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0081】
また、ステップS303(図6のS203)のS/N基準値(SN_lim)を可変可能にして、ユーザが操作部100の図示しないタッチパネルあるいはボタン等から任意の値を設定できるようにしてもよい。
このことにより、ユーザは、S/Nを重視する場合は、S/N基準値(SN_lim)を大きく設定し、分解能を重視する場合は、S/N基準値(SN_lim)を小さく設定することができる。従って、ユーザの使用用途に応じて、S/Nと分解能に優先順位の重み付けをすることができる。
【0082】
〔変形例:図9〕
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、画像読取装置1の構成、CPU96の具体的な処理内容が前述した実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、画像読取装置1のハードウェア構成のブロック図を図9に示すものにすることができる。図9は、画像読取装置1の別のハードウェア構成のブロック図である。この図においては、図2と対応するブロックには、同じ符号を付している。また、図9において、図2と異なる点は、AD変換器85の後段にデジタルゲインアンプ88を備えた点のみのため、この異なる点を中心に説明する。
【0083】
上述した、図3、図6及び図8の処理においては、アナログの可変ゲインアンプ84の増幅率を可変させて基準白板30の読み取りレベルを所定の基準レベルになるように調整していたが、アナログの可変ゲインアンプ84では、その増幅率にばらつきがあり、精度よく調整できずに、調整を正常終了できない場合が考えられる。
【0084】
そこで、図9に示すように、AD変換器85の後段にデジタルゲインアンプ88を設けることにより、アナログ調整でのばらつきをデジタルゲインアンプで微調整することができ、精度よく調整を行うことができる。
【0085】
また、図3、図6及び図8の処理は、画像読取装置1の電源がONされたタイミングでCPU96が実行するようにしたが、そのタイミングに限ることはなく原稿搬送前の所定のタイミング、例えば待機モード復帰時や省エネモード復帰時に行っても構わない。
【0086】
また、画像読取装置1を図10に示すように他の通信装置や管理装置とネットワーク接続させて連携させるような形態も考えられる。図10は、画像読取装置1と他の装置とをネットワーク接続した場合の連携例を示した図である。
【0087】
図10に示すように、画像読取装置1は、データ通信装置2とネットワーク接続されており、データ通信装置2は、ネットワーク網を介して管理装置3と接続されている。その管理装置3は、ネットワーク網を介して複数の端末装置4と相互に接続されている。
そして、このような接続形態においては、例えば、画像読取装置1の状態をネットワークを介して外部の管理装置3に通知することができ、その管理装置3は通知された画像読取装置1の状態の内容に応じて(例えば、エラーの緊急度に応じて)、その内容を複数の端末装置4に通知するようにする。
【0088】
このことにより、複数の端末装置4がある、例えばサービスセンター内のサービスマンが、画像読取装置1の状態を迅速に知ることができ、ユーザサポートを適切かつ迅速に行うことができる。従って、画像読取装置1のダウンタイムを低減することができる。
また、画像読取装置1を、デジタル複写機、ファクシミリ装置、あるいはこれらの機能を複合した複合機等の画像形成装置の画像読取部として設けてもよいことはもちろんである。この場合、画像読取装置1による読み取りで得たデジタル画像データに基づき画像形成手段により画像を形成できるようにするとよい。このことにより、多様な機能(複写機能、ファックス機能など)と組み合わせた使用方法が可能となる。
また、以上説明してきた実施形態及び変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明してきたように、この発明の画像読取装置と画像形成装置及び光源制御方法によれば、読み取り信号のS/Nの低下や切り貼り原稿の段差による影の発生等による読み取り画像品質の低下を防ぐことができる。
従って、この発明を適用することにより、高品質な画像出力を行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
1:画像読取装置、2:データ通信装置、3:管理装置、4:端末装置、10:ADF、20:シートスルー読み取り部、30:基準白板、40:コンタクトガラス、50:第1キャリッジ、60:第2キャリッジ、70:レンズユニット、80:画像読取回路基板、81:CCD、82:信号処理部、83:サンプルホールド、84:可変ゲインアンプ、85:AD変換器、86:ドライバ、87:タイミング/CPUI/Fゲートアレー、88:デジタルゲインアンプ、90:画像処理回路基板、91:シェーディング補正部、92:画像処理部、93:S/N検出部、94:基準白板読み取りレベル検出部、95:メモリ、96:CPU、100:操作部、110:モータドライバ、120,130:光源駆動部、140:スキャナモータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2006−262044号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する複数の光源と、該原稿からの反射光を電気信号に変換する光電変換手段と、前記複数の光源を同時に点灯させて基準部材を読み取った際に前記光電変換手段から出力される電気信号を増幅率を可変して増幅し、その信号レベルを所定の基準レベルに調整する信号レベル調整手段とを備えた画像読取装置であって、
前記信号レベル調整手段による調整後に、前記複数の光源を個別に点灯させてそれぞれ前記基準部材を読み取り、前記信号レベル調整手段の増幅率を固定して増幅した信号レベルをそれぞれ検出するレベル検出手段と、
該レベル検出手段により検出した各信号レベルのバランス度合を算出し、前記各信号レベルのバランスをとるように前記複数の光源の照度を調整する照度調整手段とを備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記照度調整手段が、
前記複数の光源のうち、照度の高い方の光源を低い方に合わせることにより照度調整を行って前記バランスをとることを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像読取装置において、
前記照度調整手段による照度調整後に、前記複数の光源を同時に点灯させて前記基準部材を読み取り、該読み取りから得られる読み取り信号のS/Nを検出するS/N検出手段と、
該S/N検出手段により検出したS/Nの値がS/N基準値以上ではない場合に、該S/Nの値が前記S/N基準値以上となるように前記光電変換手段の光蓄積時間を可変する可変手段とを備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置において、
前記可変手段が、
前記光電変換手段の光蓄積時間に応じて、前記原稿を読み取る際の読取線速を可変制御することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置において、
前記S/N検出手段による前記S/N検出を実行するか否かを、ユーザがユーザインタフェースを介して選択できるようにし、前記S/N検出を実行する場合は、さらに前記読取線速を変更するか否かを選択できるようにしたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記S/N基準値が、変更設定可能であることを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像読取装置において、
前記S/N基準値が、ユーザインタフェースを介してユーザにより任意の値に設定可能であることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記複数の光源の状態をユーザインタフェースに表示する表示手段を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
当該画像読取装置の状態を、通信回線を介して外部に通知する通知手段を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像読取装置と、該画像読取装置による読み取りで得たデジタル画像データに基づき画像を形成する画像形成手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
原稿に光を照射する複数の光源と、該原稿からの反射光を電気信号に変換する光電変換手段と、前記複数の光源を同時に点灯させて基準部材を読み取った際に前記光電変換手段から出力される電気信号を増幅率を可変して増幅し、その信号レベルを所定の基準レベルに調整する信号レベル調整手段とを備えた画像読取装置の光源制御方法であって、
前記信号レベル調整手段による調整後に、前記複数の光源を個別に点灯させてそれぞれ前記基準部材を読み取り、前記信号レベル調整手段の増幅率を固定して増幅した信号レベルをそれぞれ検出し、
その検出した各信号レベルのバランス度合を算出し、前記各信号レベルのバランスをとるように前記複数の光源の照度を調整することを特徴とする光源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−199693(P2012−199693A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61659(P2011−61659)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】