説明

画像読取装置

【課題】ロールフィルムの安定した搬送を行い、ロールフィルムの光学的な読み取りを可能とする。
【解決手段】フィルム供給部22にロールフィルム送出手段23を付設し、フィルム排出部24にロールフィルム収納手段25を付設する。ロールフィルム送出手段23及びロールフィルム収納手段25は、ロールフィルムRの撓み検出手段と速度検出手段とを備え、ロールフィルムRの撓み具合に応じて、ロールフィルムRの送出速度及び巻取速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールフィルムに形成された画像を読み取る画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図20は従来の一般的な画像読取装置の断面図を示している。装置本体1の内部において、フィルムFをフィルム供給部2からフィルム排出部3に搬送するための搬送機構4が、フィルム供給部2とフィルム排出部3の間に構設されている。搬送機構4には、上下動自在の吸盤5が付設された吸盤保持部材6が回動自在に設けられている。搬送機構4の終端には副走査機構7が設けられ、副走査機構7の上方には光学ユニット8が設けられている。
【0003】
吸盤5がフィルム供給部2上に積層されたフィルムFを吸着し吸盤保持部材6が上昇すると、爪部材9がフィルムFを次層のフィルムFから確実に分離する。そして、吸盤保持部材6が回動し、フィルムFは副走査機構7の第1のローラ対10に挿し込まれ、第1ローラ対10の回転により開口を有する一対の平面ガイド板11の間を搬送される。
【0004】
このとき、一対の平面ガイド板11の下方にあるランプ12によりフィルムFが露光され、フィルムFを透過した光束は光学ユニット8に向かい、フィルムFの画像は1枚ごとに読み取られる。読み取られたフィルムFは、第1ローラ対10にプーリ13を介して従動する第2ローラ対14によって、フィルム排出部3上に排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の画像読取装置では、画像の読み取りはフィルム1枚ごとに行う断続的な操作であり、ロールフィルムの読み取りに対応しておらず、一度に連続した長い画像の読み取りを行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、ロールフィルムを安定して搬送できる画像読取装置を提供するにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像読取装置の技術的特徴は、フィルム供給部から吸盤を用いてロールフィルムの供給を行い、前記ロールフィルムをフィルム排出部に排出する画像読取装置において、前記フィルム供給部にロールフィルム送出手段を設け、前記フィルム排出部にロールフィルム収納手段を設けたことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る画像読取装置によれば、フィルム供給部にロールフィルム送出手段を、フィルム排出部にロールフィルム収納手段を設けているので、ロールフィルムの読み取りが可能である。
【0009】
また、ロールフィルム送出手段及びロールフィルム収納手段に撓み検出手段を設ければ、ロールフィルム供給時及び収納時に生ずるロールフィルムの撓みを所定の範囲内に抑えられる。これにより、搬送機構の搬送性に悪影響を及ぼすことがないので、安定したロールフィルムの読み取りが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図1〜図19に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は側方から見た側断面図、図2は画像読取装置の上方から見た平面図を示している。装置本体21の下部にフィルム供給部22が斜めに挿着され、このフィルム供給部22にロールフィルムRを供給するロールフィルム送出手段23が設けられている。また、装置本体21の上部にフィルム排出部24が斜めに挿着され、フィルム排出部24にロールフィルムRを巻き取るロールフィルム収納手段25が設けられている。
【0011】
なお、これらのロールフィルム送出手段23、ロールフィルム収納手段25は、従来の1枚ずつフィルムFを読み取る画像読取装置のフィルム供給部22、フィルム排出部24に必要に応じて着脱自在とされている。
【0012】
フィルム供給部22には、吸着台22aと突当面22bが付設されており、フィルム供給部22のロールフィルム送出手段23には、駆動モータ26、ロールフィルムRを巻回している供給リール27、ガイド板対28が設けられている。更に、ロールフィルム撓み検出手段である反射型フォトセンサ29、30が装置本体21の開口部近傍に設けられており、反射型フォトセンサ29、30と吸着台22aの間にはローラ対31が設けられている。駆動モータ26にはプーリ26aが付設されており、このプーリ26aを介して動力をベルト32に伝達し、ベルト32はこの動力を供給リール27に伝達するようにされている。図示しない与圧ばねにより、ローラ33がレバー34を介して供給リール27に適度な圧力で押し付けられており、ローラ33にはローラ33の回転速度の検出手段であるロータリエンコーダ33aが付設されている。
【0013】
同様に、フィルム排出部24のロールフィルム収納手段25には、駆動モータ35、ロールフィルムRを巻き取る収納リール36、ローラ対37、ロールフィルム撓み検出手段である反射型フォトセンサ38、39が配置されている。駆動モータ35にはプーリ35aが付設されており、このプーリ35aを介して動力をベルト40に伝達し、ベルト40はこの動力を収納リール36に付設したプーリ36aに伝達するようにされている。また、収納リール36の軸36bにはロールフィルムRの先端部を挿入するスリット36cが形成されている。与圧ばねにより、ローラ41がレバー42を介して収納リール36に適度な圧力で押し付けられており、ローラ41にはローラ41の回転速度の検出手段であるロータリエンコーダ41aが付設されている。
【0014】
装置本体21の内部において、ロールフィルム送出手段23とロールフィルム収納手段25の間には、搬送機構43、副走査機構44が設けられ、副走査機構44の上方には光学ユニット45が配置されている。
【0015】
搬送機構43では、ロールフィルムRの先端部を副走査機構44に搬送する吸盤保持部材46が回転軸47を中心として回動自在に設けられ、吸盤保持部材46には吸盤48が上下動自在に取り付けられている。ロールフィルムRを副走査機構44へ導くガイド板49、50は回転軸47を中心とする円弧状とされ、所定間隔で平行に配置されている。
【0016】
副走査機構44では、搬送機構43により搬送されたロールフィルムRの先端部を受け入れる第1のローラ対51と、この第1のローラ対51により搬送されたロールフィルムRを受け入れる第2のローラ対52が設けられている。第1のローラ対51は図示しない駆動モータにより駆動されるようになっており、上部のローラ間にはそれらに接触するプーリ53が介在され、第2のローラ対52は第1のローラ対51に従動されている。ローラ対51、52間に主走査方向に開口を有する平面ガイド板対54が設けられており、その下側には反射カバー55を有するランプ56とフィルム検知手段57が設けられている。
【0017】
光学ユニット45には光路上に順次に、ランプ56から出射されロールフィルムRを透過した光束が入射する反射ミラー58、反射ミラー58からの光束を結像させるレンズ59、レンズ59からの光束を受光するCCD60が配置されている。
【0018】
図3〜図16はロールフィルムRを読み取る際の動作説明図である。電源の立ち上げ後に搬送初期動作が行われる。先ず、図3に示すようにロールフィルムRの先端部が引き出され、順次にガイド板対28の間、反射型フォトセンサ29、30間、ローラ対31の間を通過し、フィルム供給部22の吸着台22aの上に移動し突当面22bに突き当たる。
【0019】
ここで、図4に示すように吸盤48が下降し、ロールフィルムRの先端部を吸着すると吸盤48は一旦停止し、図5に示すようにローラ対31が離間してロールフィルムRを解放する。ロールフィルムRがローラ対31から解放されると、吸盤48が図6に示すようにロールフィルムRを吸着した状態を保持しながら、ガイド板49、50の間の差込口の位置まで上昇して停止する。その後に、ローラ対51が回転してロールフィルムRの差し込み準備がなされる。
【0020】
次に、図7に示すようにロールフィルムRを吸着した吸盤48が回転軸47を中心にガイド板49、50に沿って回転する。この際に、吸盤48に吸着されていたロールフィルムRの周速度は、副走査機構44のローラ対51の周速度と略一致されている。また、ロールフィルム送出手段23から送り出されるロールフィルムRの周速度も、ローラ対51の周速度と略一致するようにロータリエンコーダ33aによって監視され、図示しない制御手段により制御されている。
【0021】
そして、吸盤48は図8に示すように、ロールフィルムRの先端部を副走査機構44のローラ対51に挿し込んでから、図9に示すようにロールフィルムRの吸着を解除して、ロールフィルムRに干渉しない位置に退避する。
【0022】
ローラ対51に挿し込まれたロールフィルムRはローラ対51の送り動作により、平面ガイド板対54を通ってローラ対52方向に搬送され、フィルム検知手段57がロールフィルムRの先端部を検出する。ロールフィルムRはそのまま所定時間搬送され、図10に示すように反射型フォトセンサ38、39間を通過してローラ対37に挿入された後に停止する。
【0023】
そして、図11に示すようにロールフィルムRの先端部を収納リール36のスリット36cに挿入する。再度スタートボタンを押すと、図12、図13に示すようにロールフィルムRが搬送され、ロールフィルム送出手段23とロールフィルム収納手段25が動作して、ロールフィルムRの送出及び収納が行われる。
【0024】
その間に、光学ユニット45によりロールフィルムRの画像の読み取りが行われる。即ち、ロールフィルムRがガイド板対54を通過する際に、ランプ56から出射され反射カバー55で集光された光束は、平面ガイド板対54の開口、ロールフィルムRを透過し、光学ユニット45に向かう。光学ユニット45内において、その光束は反射ミラー58で反射され、レンズ59で結像されてCCD60に入射する。
【0025】
図14に示すように、フィルム検知手段57がロールフィルムRの終端部を検出すると、図15に示すように所定時間後に副走査機構44、ロールフィルム送出手段23、ロールフィルム収納手段25が停止する。その後に、図16に示すように搬送機構43の吸盤48が初期位置に戻り、一連のロールフィルムRの読み取り動作が終了する。
【0026】
ロールフィルム送出手段23による撓み補正においては、ロータリエンコーダ33aがローラ33の回転数を検知して、ローラ33によるロールフィルムRの送出速度を算出し、制御部により副走査機構44の搬送速度に一致するように制御している。つまり、ロールフィルムRは非常に長いので搬送に長時間を要し、副走査機構44の搬送速度とロールフィルムRの送出速度に誤差が生じて、ローラ対31とガイド板対28の間のロールフィルムRの撓みが変化することは避けられない。この変化の度合いが大きいと、副走査機構44の搬送性に悪影響を及ぼすので、この速度差が所定範囲内に収まるようにされている。
【0027】
図17に示すように、ロールフィルムRの送出速度が搬送機構43の搬送速度よりも遅くなると、ローラ対31とガイド板対28の間のロールフィルムRの撓みが減少して、ロールフィルムRの状態はRaのようになる。そして、反射型フォトセンサ30がフィルムの撓みの減少を検出して駆動モータ26の回転速度を増加させる。
【0028】
また、ロールフィルムRの送出速度が速くなると、ローラ対31とガイド板対28の間のフィルムの撓みが増加してロールフィルムRの状態はRbのようになる。そのときは反射型フォトセンサ29がロールフィルムRの撓みの増加を検出して駆動モータ26の回転速度を減少させる。このような動作によって、ローラ対31とガイド板対28の間のロールフィルムRの撓みが一定の範囲内に保たれることになる。
【0029】
ロールフィルム収納手段25による撓み補正においては、ロータリエンコーダ41aがローラ41の回転数を検知して、ローラ41によるロールフィルムRの送出速度を算出し、制御部により副走査機構44の搬送速度に一致するようにしている。即ち、ロールフィルム送出手段23の場合と同じく、副走査機構44の搬送速度とロールフィルムRの送出速度の速度差を所定範囲内に抑えるための補正がなされている。
【0030】
図18に示すように、ロールフィルムRの巻取速度が速くなると、ローラ対52、ローラ対37の間のロールフィルムRの撓みが減少して、ロールフィルムRの状態はRcのようになる。このとき、反射型フォトセンサ39がロールフィルムRの撓みの減少を検出し、駆動モータ35の回転速度を減少させる。
【0031】
ロールフィルムRの巻取速度が遅くなると、ローラ対52、ローラ対37の間のロールフィルムRの撓みが増加してロールフィルムRの状態はRdのようになる。反射型フォトセンサ38がロールフィルムRの撓みの増加を検出して、駆動モータ35の速度を増加させる。このような動作によって、ローラ対31とガイド板対28の間のロールフィルムRの撓みが一定の範囲内に保たれる。
【0032】
本実施例では、撓み検出手段として反射型フォトセンサ29、30、38、39を用いたが、図19に示すようにアクチュエータ付きフォトセンサ61〜64に代えても同様の効果が得られる。つまり、フォトセンサ61〜64はフィルム搬送に影響がないように、駆動モータ26、35の回転速度を制御して、搬送中のロールフィルムRの撓みが適切な量となるように調整する。例えば、送出側のロールフィルムRの撓みが大きくなると、フォトセンサ61が動作して駆動モータ26の回転速度を低くし、撓みが小さくなると、フォトセンサ62が動作して、駆動モータ26の回転速度を高くする。なお、この撓み検出手段以外の構成、動作に関しては本実施例と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の画像読取装置の断面図である。
【図2】平面図である。
【図3】動作説明図である。
【図4】動作説明図である。
【図5】動作説明図である。
【図6】動作説明図である。
【図7】動作説明図である。
【図8】動作説明図である。
【図9】動作説明図である。
【図10】動作説明図である。
【図11】動作説明図である。
【図12】動作説明図である。
【図13】動作説明図である。
【図14】動作説明図である。
【図15】動作説明図である。
【図16】動作説明図である。
【図17】ロールフィルム送出手段の撓み補正の説明図である。
【図18】ロールフィルム収納手段の撓み補正の説明図である。
【図19】撓み検出手段に代替手段を用いた画像読取装置の断面図である。
【図20】従来例の画像読取装置の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
22 フィルム供給部
23 ロールフィルム送出手段
24 フィルム排出部
25 ロールフィルム収納手段
26、35 駆動モータ
28、54 ガイド板対
29、30、38、39 反射型フォトセンサ
31、37、51、52 ローラ対
33a、41a ロータリエンコーダ
43 搬送機構
44 副走査機構
48 吸盤
49、50 ガイド板
61、62、63、64 アクチュエータ付きフォトセンサ
R ロールフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム供給部から吸盤を用いてロールフィルムの供給を行い、前記ロールフィルムをフィルム排出部に排出する画像読取装置において、前記フィルム供給部にロールフィルム送出手段を設け、前記フィルム排出部にロールフィルム収納手段を設けたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ロールフィルム送出手段は前記ロールフィルムを巻回した供給リールと、該供給リールを駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記ロールフィルム収納手段は前記ロールフィルムを巻き取る収納リールと、該収納リールを駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ロールフィルム送出手段は前記ロールフィルムの撓み検出手段と速度検出手段と送出制御手段とを備え、前記ロールフィルムの撓み具合に応じて、前記供給リールから送出する前記ロールフィルムの送出速度を制御することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ロールフィルム収納手段は前記ロールフィルムの撓み検出手段と速度検出手段と巻取制御手段とを備え、前記ロールフィルムを撓み具合に応じて、前記収納リールにより巻き取る前記ロールフィルムの巻取速度を制御することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記ロールフィルムの撓み検出手段は反射型フォトセンサとしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記ロールフィルムの撓み検出手段はアクチュエータ付きフォトセンサとしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記ロールフィルムの速度検出手段はロータリエンコーダとしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−168918(P2007−168918A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364783(P2005−364783)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】