説明

画質補正機能を搭載した画像形成装置

【課題】カラーキャリブレーションに関する情報を、適切なタイミングで、ユーザに通知する印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】出力画像の画質の変動を補正するために行うカラーキャリブレーションを制御する画像形成装置において、カラーキャリブレーション用印刷パターンを印刷する印刷手段と、上記印刷した印刷パターンの濃度を測定する濃度測定手段と、予め記憶されている濃度の目標値と、上記測定した濃度との差分に応じて、カラーキャリブレーション状態のレベルを算出するレベル算出手段と、上記レベルと印刷データの特性に対応する印刷実行条件を示す情報を設定する設定手段とを有し、上記設定手段に設定された情報に従い、ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告またはエラーを表示するかを決定し実行する画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における印刷特性を、安定して、所望のものに保つために行うカラーキャリブレーション機能に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等の印刷媒体に、文字、画像を印刷する印刷装置において、一般に、印刷環境の変化や印刷の進行に伴い、印刷結果における出力濃度特性または階調性等、印刷出力の特性が変化することが知られている。
【0003】
上記印刷環境は、たとえば装置が置かれている周囲の温度や湿度等であり、これらが変化することによって、プリンタでは、プリントヘッドから印刷媒体に吐出されるインクの量が変化し、所望の出力特性とは異なることがある。
【0004】
また、比較的長時間、連続的に印刷を行う場合に、装置各部の温度等が変化し、これによって、出力特性が変化することがある。
【0005】
個々の印刷装置における上記印刷出力特性の変化は、ネットワークを介して、複数の印刷装置を用いる場合に、別の問題を発生する。すなわち、上記種々の要因によって、出力特性が変化し、この結果、複数の印刷装置間で、出力特性が異なることがある。
【0006】
この場合、上記のように、個々のプリンタにおいて、所望の印刷特性が得られないばかりでなく、印刷システムにおいて、ユーザが選択するプリンタによって、その印刷結果が異なる。
【0007】
上記のような印刷出力特性に関する問題を解決するためには、一般的には、カラーキャリブレーションを行うことが知られている。このカラーキャリブレーションを、印刷装置自身が自動的に実行する装置がある。
【0008】
上記カラーキャリブレーションは、たとえばプリンタ装置では、印刷媒体に印刷パターンを形成し、この印刷パターンの濃度を光学的に読み取り、この読み取った結果に基づいて、出力濃度特性に関するガンマ補正テーブルの内容を更新する処理である。
【0009】
また、印刷装置において、上記カラーキャリブレーションを、一定のタイミングで実行する。上記一定のタイミングは、印刷装置において検出された温度や湿度が一定値以上になったタイミング、印刷枚数が一定枚数以上になったタイミング、または、一定の時間が経過したタイミング等である。
【0010】
上記カラーキャリブレーションを実行する場合、一般的に、ある程度の時間を要するので、カラーキャリブレーションを実行すると、印刷等、カラーキャリブレーション以外の操作を実行することができない。したがって、カラーキャリブレーションを行うことが必要であることを、適切なタイミングで、ユーザに知らせる必要がある。
【0011】
このためには、次の方法が知られている。つまり、直前に行ったカラーキャリブレーションからの経過時間を検知し、検知した時間が一定時間以上であれば、キャリブレーションを行うように、印刷装置に警告表示を促し、カラーキャリブレーションタイミングを、ユーザが察知する方法が知られている。
【0012】
また、次の方法も知られている(たとえば、特許文献1参照)。つまり、直前のカラーキャリブレーション実行時における濃度と現在の濃度との濃度差を求め、ネットワークを介した印刷システムにおいて、複数の印刷装置に、濃度差情報を通知する。これによって、カラーキャリブレーション実行のタイミングを調整する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−276278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1記載の発明では、警告が表示されるだけであるので、ユーザがカラーキャリブレーションを実行せずに印刷する可能性がある。
【0015】
また、印刷装置を使用するユーザが出力する画像の種類も様々である。たとえば、あるユーザにとっては、グラフィック画像を印刷する際に、カラーキャリブレーション実行要求警告を必要とする。ところが、CAD画像のような出力濃度があまり気にならない別のユーザにとっては、カラーキャリブレーション実行要求警告を必要とせず、むしろ印刷装置やホスト上の表示を煩わしいと感じることがあるという問題がある。
【0016】
本発明は、カラーキャリブレーションに関する情報を、適切なタイミングで、ユーザに通知する印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、出力画像の画質の変動を補正するために行うカラーキャリブレーションを制御する画像形成装置において、カラーキャリブレーション用印刷パターンを印刷する印刷手段と、上記印刷した印刷パターンの濃度を測定する濃度測定手段と、予め記憶されている濃度の目標値と、上記測定した濃度との差分に応じて、カラーキャリブレーション状態のレベルを算出するレベル算出手段と、上記レベルと印刷データの特性に対応する印刷実行条件を示す情報を設定する設定手段とを有し、上記設定手段に設定された情報に従い、ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告またはエラーを表示するかを決定し実行することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カラーキャリブレーションに関する情報を、適切なタイミングで、ユーザに通知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である画像形成装置100のシステム構成の図である。
【図2】印刷パターン21が印刷されているテストチャートTC1を示す図である。
【図3】カラーキャリブレーション処理過程を示すフローチャートである。
【図4】カラーキャリブレーションの実行を示すフローチャートである。
【図5】カラーキャリブレーション状態のレベル決定のフローチャートである。
【図6】印刷データの実行判定を行うフローチャートである。
【図7】印刷データを判定するための判定テーブルT1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明を実施するための形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1である画像形成装置100の構成を示すブロック図である。
【0022】
画像形成装置100は、出力画像の画質の変動を補正するために行うカラーキャリブレーションを制御する画像形成装置である。また、画像形成装置100は、コネクタを介して、外部のホストコンピュータ1に接続され、ホストコンピュータ1から、ページ記述言語を用いた印刷データを受け取り、印刷データを解析し、印刷出力する。
【0023】
さらに、画像形成装置100は、受信バッファ2と、出力部3と、読み取りセンサ4と、操作パネル5と、CPU6と、RAM7と、ブートROM8と、FlashROM9と、NVRAM10とを有する。
【0024】
CPU6は、ブートROM8に格納されているブートプログラムの制御手順に従い、FlashROM9に格納されている実行プログラムを、RAM7上にロードし、ロードされた実行プログラムの制御手順に従って、画像形成装置100の全体を制御する。
【0025】
受信バッファ2は、ホストコンピュータ1から受信したページ記述言語を用いて、印刷データを、一旦蓄える。
【0026】
ブートROM8は、CPU6の初期動作をCPU6に実行させるために、FlashROM9に格納されている実行プログラムを、RAM7上にロードするプログラムを格納している。
【0027】
RAM7は、CPU6の実行プログラムの格納領域を有し、実行プログラムを実行する際に、ワークエリアとして機能する。
【0028】
図2は、テストチャートTC1の例を示す図である。
【0029】
出力部3は、展開された出力データを、一定のプロセスに準じて画像形成する。さらに、カラーキャリブレーションを実行する毎に、印刷媒体上に、図2に示す一定のテストチャートTC1を出力する。
【0030】
図2において、用紙20は、カラーキャリブレーション実行時に印刷する用紙であり、印刷パターン21は、用紙20に印刷するテストチャートTC1の各色一定の印刷パターン21である。
【0031】
読み取りセンサ4は、印刷パターン21の濃度を検知する。FlashROM9は、実行プログラムを保存する。操作パネル5は、エラーや警告を表示し、カラーキャリブレーションの実行を指示するパネルである。
【0032】
読み取りセンサ4は、キャリブレーション実行時に、一定の印刷パターンの濃度を検知する。NVRAM10は、カラーキャリブレーションを実行することによって、生成された各色、各濃度の補正値を記憶する。
【0033】
図3は、画像形成装置100における操作パネル5を介して、ユーザがカラーキャリブレーションを実行したときにおける一連の処理過程を示すフローチャートである。
【0034】
S01で、カラーキャリブレーションを実行し、S02で、カラーキャリブレーション状態のレベル決定処理の順で、処理が行われる。
【0035】
図4は、実施例1において、カラーキャリブレーション実行処理における一連の操作を示すフローチャートである。
【0036】
画像形成装置の操作パネル5を介して、使用者であるユーザが、キャリブレーション実施要求を入力すると、S11で、画像形成装置は、図2に示すテストチャートTC1(印刷パターン21)を出力する。
【0037】
テストチャートTC1(印刷パターン21)の印刷が終了すると、S12で、印刷されたテストチャートTC1の各濃度の印刷パターン21を、画像形成装置100(印刷装置)に標準装備されている読み取りセンサ4が読み取る。S13で、読み取った結果に基づいて、各印刷パターン21における濃度値を検出する。検出した濃度値と、理論濃度値とを比較し、他の補正要素を加味し、S14で、各色、各濃度に対する補正値を算出し、S15で、NVRAM10に保存する。
【0038】
カラーキャリブレーションの実行を終了すると、カラーキャリブレーション状態のレベルを決定する。
【0039】
図5は、キャリブレーション実行後に、画像形成装置100(印刷装置)のカラーキャリブレーション状態のレベルを決定する動作を示すフローチャートである。
【0040】
S21で、NVRAM10に保存した補正データを読み出す。S22で、上記印刷したカラーキャリブレーション用印刷パターンを、今度は、補正データを適用して印刷する。そして、S23で、先ほどと同様に、印刷されたテストチャートTC1の各濃度の印刷パターン21を、読み取りセンサが読み取る。S24で、印刷パターン21を読み取った結果から、各印刷パターン21に対する濃度値を検出する。S25で、検出した濃度値と理論濃度値とを比較し、S26で、比較結果から、画像形成装置のカラーキャリブレーション状態のレベルを決定する。
【0041】
この決定されたカラーキャリブレーション状態のレベル情報を、S27で、NVRAM10に保存する。時間経過や印刷枚数、画像形成装置が設置されている環境に応じて、上記決定されたカラーキャリブレーション状態のレベル情報が遷移する。
【0042】
図6は、実施例1において、カラーキャリブレーションの状態と、印刷データのパラメータとによる印刷データ実行判定の動作を示すフローチャートである。
【0043】
図7は、印刷データを判定するための判定テーブルT1を示す図である。
【0044】
S31で、ホストコンピュータ1から印刷データを受信すると、S32で、保持している現在のカラーキャリブレーション状態のレベルと、印刷データの各パラメータとに応じて、図7に示す判定テーブルT1に基づいて、印刷実行判定結果を取得する。
【0045】
上記パラメータは、“速い”、“普通”、“きれい”等、印刷方法を表す印刷品位や、印刷媒体である印刷用紙種類や、“線画データ”、“イメージデータ”等、印刷データがどのような種類かを示す印刷データ種類等である。
【0046】
たとえば、カラーキャリブレーション状態が“普通”であり、印刷用紙種類が“コート紙”であり、印刷品位が“普通”であり、印刷データ種類が“イメージの印刷データ”を送信すると、カラーキャリブレーション実行要求警告を表示し、印刷動作を開始する。
【0047】
カラーキャリブレーション状態が、“性能低下”であり、印刷用紙種類が、“光沢紙”であり、印刷品位が“きれい”であり、印刷データ種類が、“イメージの印刷データ”であるを送信する。このようにすると、カラーキャリブレーション実行要求エラーを表示し、印刷動作を実行しない。
【0048】
S33で、取得した印刷実行判定結果が“エラー”であると判定されると、S36で、操作パネル5の表示部に“エラー”を表示し、印刷データの印刷実行を行わずに、一時停止する。S34で、判定結果が“警告”であれば、S37で、操作パネル5の表示部に“警告”を表示し、S35で、印刷データを印刷する。“警告”でもなければ、印刷データをそのまま印刷する。
【0049】
なお、出力部3は、カラーキャリブレーション用印刷パターンを印刷する印刷手段の例である。読み取りセンサ4とCPU6とは、上記印刷した印刷パターンの濃度を測定する濃度測定手段の例である。CPU6は、予め記憶されている濃度の目標値と、上記測定した濃度との差分に応じて、カラーキャリブレーション状態のレベルを算出するレベル算出手段の例である。CPU6は、上記レベルと印刷データの特性に対応する印刷実行条件を示す情報を設定する設定手段の例である。この場合、上記設定手段に設定された情報に従い、ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告またはエラーを表示するかを決定し実行する。
【0050】
この場合、ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告を表示して上記印刷データの印刷を実行するか、エラーを表示する。また、上記印刷データの特性は、線画またはイメージデータを示す特性である。さらに、上記印刷データの特性は、印刷品位を示す特性である。しかも、上記レベルと、印刷用紙の種類とに応じて、ホストコンピュータから受信した印刷データの印刷を実行するか、警告を表示して上記印刷データの印刷を実行するか、エラーを表示する。
【0051】
上記実施例によれば、画像形成装置のカラーキャリブレーション状態と、印刷データのさまざまな特性とを考慮して、ユーザは、適切なカラーキャリブレーション実行タイミングを知ることができる。
【0052】
上記実施例では、レベル化されたカラーキャリブレーションの状態と、受信した印刷データの種類(グラフィックデータまたはCADデータ)とに応じて、次の切り替えを行う。つまり、印刷動作を実行するか、警告を表示しつつ、印刷するか、エラーを表示して印刷を停止するかを切り替える。したがって、上記実施例によれば、画像形成装置の使い方を考慮した適切なタイミングで、カラーキャリブレーションを行うことが望ましいことを、ユーザに知らせることができる。
【0053】
また、上記実施例によれば、印刷データの判定には、速い、普通、きれい等の印刷品位や、印刷する用紙の種類を考慮した精度の高いタイミングで、カラーキャリブレーションを行うことが望ましいことを、ユーザに知らせることができる。
【符号の説明】
【0054】
100…画像形成装置、
3…出力部、
4…読み取りセンサ、
6…CPU、
7…RAM、
20…印刷用紙、
21…印刷パターン、
T1…判定テーブル、
TC1…テストチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力画像の画質の変動を補正するために行うカラーキャリブレーションを制御する画像形成装置において、
カラーキャリブレーション用印刷パターンを印刷する印刷手段と;
上記印刷した印刷パターンの濃度を測定する濃度測定手段と;
予め記憶されている濃度の目標値と、上記測定した濃度との差分に応じて、カラーキャリブレーション状態のレベルを算出するレベル算出手段と;
上記レベルと印刷データの特性に対応する印刷実行条件を示す情報を設定する設定手段と;
を有し、上記設定手段に設定された情報に従い、ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告またはエラーを表示するかを決定し実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1であって、
ホストコンピュータから受信した印刷データの特性と、上記レベルとに応じて、上記印刷データの印刷を実行するか、警告を表示して上記印刷データの印刷を実行するか、エラーを表示することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2であって、
上記印刷データの特性は、線画またはイメージデータを示す特性であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2であって、
上記印刷データの特性は、印刷品位を示す特性であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1であって、
上記レベルと、印刷用紙の種類とに応じて、ホストコンピュータから受信した印刷データの印刷を実行するか、警告を表示して上記印刷データの印刷を実行するか、エラーを表示することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201901(P2010−201901A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53129(P2009−53129)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】